(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095575
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】合成石英ガラスの調製方法
(51)【国際特許分類】
C03B 8/04 20060101AFI20220621BHJP
C03B 37/018 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
C03B8/04 J
C03B8/04 D
C03B37/018 Z
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021203000
(22)【出願日】2021-12-15
(31)【優先権主張番号】20214491.1
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】599089712
【氏名又は名称】ヘレウス・クアルツグラース・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディット・ゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quarzglas GmbH & Co. KG
(71)【出願人】
【識別番号】000190138
【氏名又は名称】信越石英株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】マーティン テューラー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルター レーマン
(72)【発明者】
【氏名】マーティン トロマー
【テーマコード(参考)】
4G014
4G021
【Fターム(参考)】
4G014AH12
4G014AH15
4G014AH16
4G021EB06
4G021EB13
4G021EB15
4G021EB18
4G021EB26
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ケイ素含有出発物質の優れた堆積効率が得られる合成石英ガラスの製造方法および装置を提供する。
【解決手段】少なくとも1つの有機ケイ素出発化合物を含む原料を蒸発させ、原料蒸気を形成する工程と、前記原料蒸気を反応部に供給し、前記原料蒸気を酸素の存在下において火炎中で燃焼させ、酸化により及び/又は加水分解によりSiO2スート粒子に変換する方法において、有機ケイ素出発化合物と任意の可燃性バーナー補助ガスから原料蒸気を反応させる合成石英ガラスの製造方法であって、バーナー内の空気数が1.00以下であることを特徴とする合成石英ガラスの製造方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)少なくとも1つの有機ケイ素出発化合物を含む原料を蒸発させ、原料蒸気を形成する工程と、
(2)前記原料蒸気を反応部に供給し、前記原料蒸気を酸素の存在下において火炎中で燃焼させ、酸化により及び/又は加水分解によりSiO2スート粒子に変換する工程と、
(3)工程(2)により生じた前記SiO2スート粒子を堆積表面上に堆積させてスート体を形成する工程と、
(4)必要に応じて、工程(3)により生じた前記SiO2粒子を乾燥及びガラス化し、合成石英ガラスを形成する工程と
を有する合成石英ガラスの製造方法であって、
工程(2)で行われる前記原料蒸気の変換を、前記バーナー内の空気数を1.00以下として行うことを特徴とする合成石英ガラスの製造方法。
【請求項2】
工程(2)で前記原料蒸気の燃焼に用いる火炎が、空気数0.95以下の空気数を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(2)で前記原料蒸気の燃焼に用いる火炎が、空気数0.85以下の空気数を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記有機ケイ素出発化合物を酸素とともに前記バーナーに供給することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記工程(2)は、同心円状の断面を有するバーナーによって行われ、該同心円状の断面の内部において、前記原料蒸気が酸素とともに供給混合体としてバーナー火炎に導入され、前記供給混合体が非酸化性分離ガスによって酸素含有酸化ガスから分離されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記分離ガスが5体積%を超える水素を含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記有機ケイ素出発化合物が、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、デカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン(D7)、ヘキサデカメチルシクロオクタシロキサン(D8)、それらの鎖状同族体及びこれらの化合物の任意の混合物から選択されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記バーナーにおいて前記有機ケイ素出発化合物及び任意の可燃性補助ガスを反応させるために使用される酸素の総量が、前記バーナーに能動的に供給される酸素の量であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
(a)少なくとも1つの有機ケイ素出発化合物を含む少なくとも1つの原料を蒸発させて原料蒸気を形成するための、少なくとも1つの蒸発器部であって、該蒸発器部は、蒸発ユニットを具備するものと、
(b)工程(a)による前記原料蒸気が供給され、前記原料が熱分解又は加水分解によってSiO2粒子に変換される少なくとも1つの反応部であって、火炎を有するバーナーを含む前記反応部と、
(c)前記反応部(b)により生じたSiO2粒子を堆積させて合成石英ガラスを形成する少なくとも1つの堆積部であって、スート体からなる前記堆積部と
を具備する合成石英ガラスの製造装置であって、
前記バーナーはノズルを具備し、該ノズルは、
・該ノズルから前記原料蒸気を酸素とともに前記反応部に供給し、及び、
・前記装置は、実現すべき前記原料蒸気の反応が前記バーナー内の空気数1.00以下で行われるように、前記有機ケイ素出発化合物に対する酸素の量比を調整する手段を具備する
ように設計されていることを特徴とする合成石英ガラスの製造装置。
【請求項10】
前記装置は、0.95以下の空気数で操作されるバーナーを具備することを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記装置は、0.85以下の空気数で操作されるバーナーを具備することを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記装置は、0.76以下の空気数で操作されるバーナーを具備することを特徴とする請求項9から請求項11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記バーナーは同心円状の断面を有し、該同心円状の断面の内部で前記原料蒸気が酸素とともに供給混合体として前記バーナー火炎に導入され、該供給混合体は分離ガスによって酸素含有酸化剤ガスと分離されるものであることを特徴とする請求項9から請求項12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記分離ガスが5体積%を超える水素を含むものであることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
合成石英ガラスを製造するための請求項9から請求項14のいずれか1項に記載の装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成石英ガラスの製造方法と、本発明による方法を実施するための対応する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
合成石英ガラスを製造するには、CVDプロセスにより、ケイ素を含む出発物質から加水分解又は酸化によってSiO2粒子を生成し、動いている担体上に堆積させる。外部堆積プロセスと内部堆積プロセスに分けることができる。外部堆積プロセスでは、SiO2粒子は、回転する担体の外側に堆積される。このような外部堆積プロセスの例としては、いわゆるOVDプロセス(Out-side Vapour Phase Deposition、外付気相堆積法)、VADプロセス(Vapour Phase Axial Deposition、気相軸堆積法)、PECVDプロセス(Plasma Enhanced Chemical Vapour Deposition、プラズマ支援化学気相堆積法)などがある。内部堆積プロセスの良く知られた例は、外部から加熱した管の内壁にSiO2粒子を堆積するMCVD(Modified Chemical Vapor Deposition、内付化学堆積法)プロセスである。
【0003】
担体表面の領域で、十分に高い温度では、SiO2粒子は直接ガラス化し、これは「直接ガラス化」とも呼ばれる。これに対して、いわゆる「スートプロセス」では、SiO2粒子の堆積時の温度が非常に低いため、多孔質のSiO2スート層が得られ、これを別の工程で焼結して透明な石英ガラスとすることができる。直接ガラス化法、スート法ともに、緻密で透明な高純度合成石英ガラスが得られる。
【0004】
合成石英ガラスの製造のための先行技術のプロセスでは、通常、SiO2粒子の十分な堆積効率を確保するための方法が使用され、ここで、堆積効率は、生成したスート体の重量と、使用したケイ素含有出発化合物からケイ素を完全に変換したと仮定して生成できるSiO2の数学的な最大量との商と理解される。このような一般的な条件としては、まず、所望の目的生成物への実質的な完全変換を確実にするために、酸素の燃料(=ケイ素含有出発化合物+例えば口火用の燃料ガス)に対する比率をできるだけ化学量論的にすることが含まれる。さらに、酸化可能な出発物質に対する酸素の化学量論的な比率、すなわち空気数1のプロセスは、高い変換温度をもたらし、これはプロセスの効率にとっても好ましいと言われている。先行技術では、ケイ素含有出発物質は通常乱流の火炎で燃焼され、これにより個々のガス(特に酸素およびケイ素含有出発化合物)の良好な混合が保証されると同時に、所望の二酸化ケイ素への迅速な変換が引き起こされる。火炎中の炭素スートの形成は、得られるスート体への炭素スートの堆積を防ぐために、可能な限り回避される。最後に、先行技術のプロセスは、SiO2に変換された物質をスート体上にできるだけ完全に集めることができるように、使用されるバーナーの堆積表面からのある最小距離によって特徴付けられる。
【0005】
合成石英ガラスの製造に対応するプロセスは、例えば、WO90/10596Aに記載されており、このプロセスでは、酸素過剰、したがって1より大きい空気数が上記の説明と併用されている。
【0006】
EP3549921Aは、出発材上にガラス微粒子を堆積させることによって光ファイバ用多孔質ガラス母材を製造する方法であって、液体状態の有機ケイ素化合物原料とキャリアガスとを気化器に供給する工程と、該気化器において、液体状態の有機ケイ素化合物原料とキャリアガスとを混合し気化して有機ケイ素化合物原料とキャリアガスとを原料混合ガスに変換する工程と、該原料混合ガスと可燃性ガスとをバーナーに供給する工程と、該バーナーで原料混合ガスと可燃性ガスとを燃焼させ、該燃焼により生成したSiO微粒子をバーナーから噴出させる工程と、該気化器とバーナーとが同期し一体となって出発材の長手方向に対して平行に移動を繰り返すことで、バーナーから噴出したSiO微粒子を出発材上に堆積する工程とを有する方法を開示している。
【0007】
EP0622340Aには、合成石英ガラス部材の調製方法として、一般式RnSi(OR)4-nで示されるシラン化合物(ここで、Rは脂肪族1価炭化水素基であり、添え字nは0~4以下の整数である。)を、中心ノズル、並びに、該中心ノズルを取り囲む第1リングノズル、第1リングノズルを取り囲む第2リングノズル、第2リングノズルを取り囲む第3リングノズル、第3リングノズルを取り囲む第4リングノズルからなる少なくとも4つのリングノズルからなる同心の多管状バーナーノズル(その中にシラン化合物の蒸気、酸素ガス及び水素ガスを導入して酸水素火炎を形成し、該酸水素火炎中でシラン化合物の火炎加水分解を行わせる)上で、酸水素火炎中で火炎加水分解を行う方法であり、そのためにこの方法は以下の工程、すなわち、
(a)シラン化合物の蒸気と酸素の混合気体を中心ノズルに導入する工程、
(b)酸素ガスを、第1リングノズルを含む少なくとも2つのリングノズルに導入する工程、及び、
(c)第2リングノズルを含む少なくとも2つのリングノズルに水素ガスを導入する工程、を含む。さらに、この方法では、酸素ガスの総供給量が、水素ガスの完全燃焼及びシラン化合物の完全火炎加水分解に必要な化学量論当量の少なくとも50%、ただし90%を超えない範囲である。
【0008】
WO99/20574Aは、シリカ前駆体をバーナーで燃焼させ、得られたシリカを十分に高い温度でガラス基体の表面に堆積させ、その後の焼成を必要とせずに、孔のないガラス質シリカのコヒーレントな層を形成することにより、高純度合成ガラス質シリカの層を、前記高純度層とは異なる物理特性及び/又は化学特性を有するガラス基体の表面に形成する方法を開示している。
【0009】
US2019/0084866Aには、ケイ素含有出発化合物を酸素と混合し、バーナーに原料として供給する合成石英ガラスの製造方法が記載されている。それによって、ケイ素含有出発化合物との混合物中の酸素は、ケイ素含有出発化合物と酸素との混合物の早期着火が回避されるように、化学量論量よりも低い比で原料中に存在することが記載されている。しかしながら、このケイ素含有出発化合物に対する酸素の化学量論量よりも低い比は、ケイ素含有出発化合物と酸素の混合物の供給流のみを指す。供給される酸素の総量、すなわちケイ素含有出発化合物とともに及び別々にバーナーに供給される酸素の量は、ケイ素含有出発化合物に関して化学量論量を超えた比である。
【0010】
DE 10 2011 121 153 Aにも、合成石英ガラスを製造するためのスートプロセスが記載されており、炭素含有ケイ素化合物を含む原料を反応部で酸素と反応させてSiO2粒子を形成し、次にSiO2粒子を堆積面上に堆積させて炭素と水酸基を含む多孔質SiO2スート体を形成し、多孔質SiO2スート体を乾燥させて、ガラス化することが記載されている。この文脈において、DE 10 2011 121 153 Aは、ケイ素含有出発物質オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)の堆積効率が、1未満の空気数□□で、すなわち0.95の空気数まで酸素の供給不足として動作する場合に向上することを述べている(空気数=全ての可燃性ガスの完全変換に理論的に必要な酸素/バーナーに実際に能動的に供給される酸素)。しかしながら、DE 10 2011 121 153 Aに基づいて、キャリアガスOMCTS流体に更なる酸素を添加した場合、必然的に空気数の増加を招き、当業者はDE 10 2011 121 153 Aに記載の利点が達成されないと推定する。さらに、DE 10 2011 121 153 Aにおけるより高い成長速度は、酸素の添加が少ないために平均ガス速度が低下し、その結果、堆積面の近傍におけるSiO2粒子の滞留時間が長くなることに起因している。
【0011】
全体として、先行技術のプロセスは、ケイ素含有出発物質の堆積効率に関して依然として向上の必要性があり、したがって、ケイ素含有出発物質の堆積効率を向上することができる合成石英ガラスの製造のためのプロセスが必要とされている。蒸着効率の向上は、合成石英ガラスの製造コストの低減と密接に関係している。
【発明の開示】
【0012】
本発明によれば、この課題は、本合成石英ガラスの製造方法によって解決され、このプロセスは、まず、以下の工程によって特徴付けられる。
(1)少なくとも1つの有機ケイ素出発化合物を含む原料を蒸発させ、原料蒸気を形成する工程、
(2)工程(1)からの前記原料蒸気を反応部に供給し、前記原料蒸気を酸素の存在下において火炎中で燃焼させ、酸化により及び/又は加水分解によりSiO2スート粒子に変換する工程、
(3)工程(2)により生じた前記SiO2スート粒子を堆積表面上に堆積させてスート体を形成する工程、及び
(4)必要に応じて、工程(3)により生じた前記スート体を乾燥及びガラス化し、合成石英ガラスを形成する工程。
【0013】
さらに、本発明は、以下の工程を経て合成シリカガラスを製造する方法に関するものである。
(1)少なくとも1つの有機ケイ素出発化合物を含む原料を蒸発させ、原料蒸気を形成する工程、
(2)工程(1)からの原料蒸気を、前記原料蒸気を酸素の存在下において前記原料蒸気を酸素の存在下において火炎中で燃焼させ、酸化により及び/又は加水分解によりSiO2スート粒子に変換する同心バーナーの反応部に供給し、そこで、該同心円状の断面の内部において、前記原料蒸気が酸素とともに供給混合体としてバーナー火炎に導入され、前記供給混合体が非酸化性分離ガスによって酸素含有燃料ガスから分離される工程、
(3)工程(2)により生じた前記SiO2スート粒子を堆積表面上に堆積させてスート体を形成する工程、及び
(4)必要に応じて、工程(3)により生じた前記スート体を乾燥及びガラス化し、合成石英ガラスを形成する工程。さらに、本発明による上記両方法は、工程(2)で行われる原料蒸気の変換を、バーナー内の空気数を1.00以下として行うことを特徴とする。
【0014】
本発明の範囲内において、原料蒸気は、任意選択的に、1つ以上の補助ガスを追加して工程(2)で用いられる。
【0015】
本発明によれば、このように、本発明による装置のバーナーにおけるガス流が、すなわち、バーナーに能動的に(すなわち加圧されて)供給される全ての可燃物に対する、バーナーから能動的に(すなわち加圧されて)供給される酸素(供給酸素を含む)の比率が、調整され、バーナーに能動的に(すなわち加圧されて)供給される全てのガスに対する空気数が1以下であることが実現するように調整されていることが、規定される。
【0016】
空気数λは、理論的に化学量論的に完全燃焼に必要な酸素の最小量に対する、実際に利用可能な酸素量の比率として定義される。
【0017】
本発明の範囲内では、バーナーにおける有機ケイ素出発化合物と補助ガス(H2)の反応のために化学量論的に(最大で)使用される酸素の総量は、加圧下でバーナーに能動的に供給される酸素の量であると理解される。この酸素の総量の定義から、バーナーに受動的に(すなわち加圧されずに)供給される酸素の量は、本発明に従って提供される酸素の総量に加えられないことが導かれる。特に、有機ケイ素出発化合物の燃焼中にバーナーの周囲の雰囲気から火炎中に拡散する酸素は除外される。
【0018】
また、バーナーで有機ケイ素出発化合物、及び、必要に応じて可燃性補助ガスを変換するために(最大で)化学量論的に使用される酸素量は、バーナーに集中的に供給される酸素の総量であると理解される。
【0019】
同心バーナーにおけるバーナーに中心的に供給される酸素という用語は、バーナーの火炎側の表面領域においてバーナーから能動的に出て行く全酸素の量を意味し、この表面領域は、半径rを有する実質的に円形の領域によって形成されている。ここで、半径rは、材料ノズルの中心又は材料ノズル群(有機ケイ素出発化合物を供給するためのノズル)の中心からベイトロッド回転軸の方向に垂直に伸び、半径rは、形成されたスート体の堆積面からの材料ノズルの平均間隔の約1/5に相当する。
【0020】
バーナーに集中的に供給される酸素という用語は、線状バーナーでは、バーナーの火炎側で、表面領域において能動的にそれを離れる全酸素の量を意味すると理解され、ここで、該表面領域は、ある表面、すなわち、材料ノズルの中心又は材料ノズル群(有機ケイ素出発化合物を供給するためのノズル(又は複数のノズル))の中心線からベイトロッド回転軸の方向に垂直な距離dを有し、距離dは形成されたスート体の堆積表面からの材料ノズル(又は複数のノズル)の平均距離の約1/5に相当する表面、によって形成されている。
【0021】
酸素の(最大で)化学量論的な使用は、好ましくは、スート体の完全な成長時間の間維持され、ここで、該成長時間とは、有機ケイ素出発化合物を本発明によるプロセスに供給するのに要する時間であると理解される。
t成長時間 = t開始-終了 ケイ素含有出発化合物の供給
【0022】
本発明の範囲内では、堆積効率は、生成したスート体の重量と、使用したケイ素含有出発化合物からケイ素を完全に変換したと仮定して生成できるSiO2の計算上の最大量との商で与えられる。
【0023】
本発明の範囲内では、燃焼時に空気数が1以下となるように適用することで、以下に述べる技術的効果が得られる。
【0024】
濃度の高い燃焼混合物の使用(空気数1以下を伴う)は、外側ノズルからバーナーガスO2が既に十分に拡散している火炎の周辺部のみに、より遅く局所的に着火することになる。火炎の中心部は、混合物が濃すぎるため、より着火しにくくなる。その結果、より少ない量のガスしか同時に着火せず、酸素はまず内拡散しなければならない。これにより、着火した領域から高温の燃焼ガスが他の火炎の領域に膨張することがなくなり、火炎の乱れが少なくなる。
【0025】
本発明による方法では、可燃性混合物を有するガスボリュームは、上方に大きく伸び、横方向の膨張が小さくなる。この結果、より層流の火炎が得られる。これに関連する効果として、より狭く、より層流の火炎が、それ自体をスート体によりよく付着し、スート体の直下に、より安定した滞留点を形成することである。これにより、スート体の堆積面へのSiO2粒子の拡散経路が短くなり、滞留点での滞留時間が長くなるため、全体として堆積効率が高くなる。
【0026】
さらに、酸素を化学量論量より少なく使用することは、追加的に、火炎の中心に酸素欠乏を伴うカーボンブラックの黄色く光る火炎中心をもたらす。
【0027】
本発明による方法は、特に、外付気相堆積法(Outside Vapor Deposition Method)(OVD)プロセス、気相軸堆積法(Vapor Axial Deposition)(VAD)プロセス、又はスートブール(Soot-Boule)プロセスである。対応するOVDプロセス及びVADプロセスは、当業者に十分に知られており、スートブール(Soot-Boule)プロセスは、例えばUS8,230,701から知られている。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明による方法の個々の工程を、以下により詳細に説明する。
【0029】
[工程(1) - 供給原料の蒸発]
工程(1)において、少なくとも1つの有機ケイ素出発化合物を含む原料を気化させて、原料蒸気を形成する。有機ケイ素出発化合物は、好ましくは、ポリアルキルシロキサン化合物である。
【0030】
原則として、合成石英ガラスの製造に適した任意のポリアルキルシロキサン化合物を本発明に従って使用することができる。本発明の範囲内では、ポリアルキルシロキサンという用語は、直鎖(分岐構造を含む)と環状の分子構造の両方を包含する。
【0031】
特に好適な環状代表物は、一般実験式
SipOp(R)2p
で表されるポリアルキルシロキサンである。ここで、pは3以上の整数であり、基「R」はアルキル基であり、最も単純な場合はメチル基である。
【0032】
ポリアルキルシロキサンは、重量分率あたりのケイ素含有量が特に高いことが特徴で、合成石英ガラスの製造に使用する際の経済性に寄与する。
【0033】
ポリアルキルシロキサン化合物は、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン(D7)、ヘキサデカメチルシクロオクタシロキサン(D8)、それらの鎖状同族体及びこれらの化合物の任意の混合物からなる群から選択されることが好ましい。D3、D4、D6、D7及びD8という表記は、General Electric Inc.によって導入された表記法を採用したものであり、「D」は基[(CH3)2Si]-O-を表す。
【0034】
本発明の範囲内で、上記のポリアルキルシロキサン化合物の混合物も使用することができる。
【0035】
高純度で大量に入手できることから、現在ではオクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)が好ましい。したがって、本発明の範囲内では、ポリアルキルシロキサン化合物がオクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)であれば、特に好ましい。
【0036】
原則として、工程(1)に導入される前に、原料が精製に供されることが可能である。このような精製プロセスは当業者に知られている。しかしながら、好ましい実施形態では、原料は、予め上流の精製プロセスに供されない。
【0037】
原料の蒸発は、キャリアガス成分の存在下でも存在しなくても行うことができる。好ましくは、有機ケイ素出発化合物の沸点を下回る温度で蒸発を行うことができるため、原料の蒸発はキャリアガスの存在下で行う。これは、原料蒸気は、好ましくはさらにキャリアガスを含むことを意味する。このようなアプローチは、原料の蒸発がその沸点未満で行われる場合に好ましい。不活性ガスは、化学的に不活性であることが好ましく、窒素又はアルゴンであることがより好ましい。この場合、有機ケイ素出発化合物のキャリアガスに対するモル比は、好ましくは0.01~2の範囲であり、特に好ましくは0.02~1.5の範囲であり、最も好ましくは0.05~1.25の範囲である。特に、キャリアガスとして水分含有量<40体積ppmの窒素を使用し、有機ケイ素出発化合物としてOMCTSを使用することが好ましい。さらに、OMCTSの窒素に対する分子比が0.015~1.5の範囲であることが好ましい。
【0038】
蒸発工程は、当業者に知られている。有機ケイ素出発化合物とキャリアガスの選択された分子比に応じて、有機ケイ素出発化合物は、好ましくは120~200℃の温度で、蒸気相に変換される。蒸発チャンバーでの蒸発温度は、常に有機ケイ素出発化合物の露点より少なくとも数度高いことが好ましい。露点は、同様に、有機ケイ素出発化合物とキャリアガスの選択された分子比に依存する。好ましい実施形態では、これは、蒸発前に有機シリコン出発化合物を40~120℃の温度に予熱し、その後、原料の予熱よりも高い温度を有する蒸発チャンバーに噴霧することによって達成される。好ましい実施形態では、不活性キャリアガスは、さらに、蒸発チャンバーに供給される前に250℃までの温度に予熱することができる。蒸発チャンバー内の温度は、有機ケイ素出発化合物とキャリアガスの混合物の露点温度よりも常に平均的に高いことが有利である。好適な蒸発プロセスは、例えば、国際出願WO2013/087751A及びWO2014/187513A並びにドイツ特許出願DE 10 2013 209 673 Aに記載されている。
【0039】
本発明の範囲内では、「露点」という用語は、凝縮する液体と蒸発する液体の間で平衡状態に達する温度を記述するものである。
【0040】
原料の沸点を下回る温度を用いる場合、蒸発は不活性キャリアガスとともに起こることが好ましい。
【0041】
本発明の範囲内では、「蒸発」は、原料が本質的に液相から気相に変換されるプロセスであると理解される。これは、好ましくは、上述のように、原料の主成分としての有機ケイ素出発化合物の露点以上である温度を使用することによって行われる。当業者は、プロセス工学の観点から、原料の小さな液滴が同伴される可能性が否定できないことを認識する。したがって、工程(1)において、好ましくは97mol%以上、好ましくは98mol%以上、特に好ましくは99mol%以上、非常に特に好ましくは99.9mol%以上のガス状成分を含む原料蒸気が生成される。
【0042】
気化した有機ケイ素出発化合物、又はキャリアガスと気化した有機ケイ素出発化合物の混合物は、通常、蒸発チャンバーから取り出されてバーナーへ供給される。バーナーに供給される前に、気化性物質又は気化性物質とキャリアガスの混合物は、好ましくは酸素と混合される。火炎の中で、有機ケイ素出発化合物はSiO2に酸化される。微粒子の非晶質SiO2(SiO2スート)が形成され、これは多孔質塊の形で、最初は担体の表面上に、その後は形成中のスート体の表面上に堆積される。
【0043】
[工程(2) - 原料蒸気を反応部に供給し、原料蒸気を酸素の存在下において火炎中で燃焼させ、酸化により及び/又は加水分解によりSiO2スート粒子に変換する]
工程(2)では、工程(1)で得られたガス状の原料蒸気を反応部に供給し、原料蒸気を酸化及び/又は加水分解することによりSiO2粒子に変換させる。
【0044】
この工程は、特に、公知のスートプロセスに対応するものである。この一般的なプロセスの可能な設計は、当業者に知られている。
【0045】
原料蒸気の燃焼には、バーナー口の中心を中心に円形に複数のガス出口ノズルが配置された、同心バーナーが、通常使用される。
【0046】
本発明によれば、通常、空気数を下げることは、所望の堆積効率を達成し、同時に、炭素堆積物を実質的に含まないスート体を得るためには、十分でないことが判明した。例えば、DE 10 2011 121 153 Aによるプロセスにおける空気数が、その実施形態において適用される空気数よりも低くされる場合、過剰な量の炭素堆積物を有するスート体が得られる。したがって、本発明は、(DE 10 2011 121 153 Aの開示とは根本的に異なり、)好ましくは、少なくとも1つのさらなるプロセスの変更を提案し、これは以下に説明される。
【0047】
本発明に従って好ましく使用されるバーナーにおける中心ノズル(内側ノズル)は、通常、原料蒸気を供給するために使用され、この原料蒸気は、本発明の範囲内においてキャリアガスと予め混合されて用いられるのが一般的である。さらに、好ましくは、酸素が原料蒸気に添加され、その結果、通常使用される同心バーナーの中心ノズルから、原料蒸気に加えて、キャリアガス及び酸素も含む供給流が生じる。
【0048】
本発明の好ましい実施形態では、有機ケイ素出発化合物は、酸素とともに供給してバーナーに投入される。
【0049】
DE 10 2011 121 153 Aの開示と比較したこの修正された方法によって、汎用プロセスにおける空気数を先行技術で定義された範囲未満に低減することができ、したがって、過剰量の炭素堆積物を同時に有するスート体を得ることなく、歩留まり効率を向上させることが可能である。
【0050】
したがって、本発明によるこの好ましい方法は、DE 10 2011 121 153 Aに記載された方法(濃度が高い燃料混合物、すなわち過剰なSiO2出発化合物及びそれによる供給不足の酸素を用いることを推奨するが、同時に生じるスート体上の炭素堆積の増加を回避する方法に関するいかなる開示も含んでいない方法)とはかなり異なる。DE 10 2011 121 153 Aの教示から出発して、汎用プロセスの堆積効率を向上させたいと考える当業者は、バーナー酸素をさらに減少させるが、その後、スート体中の未燃焼の炭素の過剰量のために失敗するであろう。本発明による低空気数の実現は、全体的に減少した酸素の総量で、供給流に追加の酸素を加えることによってのみ可能である。
【0051】
本発明の範囲内では、同心バーナー以外のバーナー形状も使用可能であり、これらの場合、前述の新たな知見に従って、有機ケイ素出発化合物を酸素と、任意にキャリアガスとともに混合してバーナーチャンバーに供給することが好ましい(有機ケイ素出発化合物の供給位置は問わない)。
【0052】
バーナーの中心ノズル(内側ノズル)は、通常、該中心ノズルの周囲に同心円状に配置された、第2ノズル(ここから分離ガスがバーナー内に導入される)に取り囲まれる。この分離ガスは、中心ノズル及び分離ガスノズルの周囲に同心円状に配置された別の同心円状ノズルからバーナーに入るさらなる酸素流から、酸素を含むSiO2出発化合物を分離する。
【0053】
好ましくは、ガスは、一般に5体積%を超える水素、特に10体積%を超える水素、特に20体積%を超える水素、特に30体積%を超える水素、特に40体積%を超える水素、特に50体積%水素を超える水素を含むガスが使用される。特に60体積%を超える水素、特に70体積%を超える水素、特に80体積%を超える水素、特に90体積%を超える水素、特に95体積%を超える水素、特に98体積%を超える水素、特に99体積%を超える水素を含む分離ガスとして、用いる。
【0054】
好ましくは、本質的に純粋な水素が分離ガスとして使用される。
【0055】
本発明の範囲内において、バーナーとスート体の表面との間の距離が堆積プロセス中に調整されることが規定されてもよい。この目的のために、バーナー及び/又はスート体の位置を変えることが原則として可能であり、それによって好ましい実施形態では、スート体の回転軸の位置が静止したまま、バーナーを移動させる。
【0056】
ノズルがトーチ口と同一平面上にある堆積トーチの場合、堆積トーチとスート粒子の堆積面との距離は、トーチ口と形成されるスート体の表面との最短距離と定義される。その他、この距離は、量的に最も重要なガラス出発原料が通過するノズルのノズル口と形成されるスート体の表面との間の最短距離と定義される。これは、通常、好ましく用いられる同心バーナー形状の中心ノズル(中間ノズル)である。
【0057】
堆積トーチによって製造されたSiO2スート粒子は、通常、その長手軸を中心に回転するキャリア管上に、スート体が層ごとに構築されるように、堆積される。この目的のために、堆積トーチは、2つの転換点の間でキャリア管の長手方向軸に沿って前後に移動させることができる。さらに、それぞれ1つの火炎を有する複数の堆積バーナーが配置されたバーナーブロックを使用することが好ましい。バーナーブロックを使用する場合、バーナーの少なくとも1つ、好ましくはバーナーの全てが、本発明に従って運転され、すなわち、バーナーの少なくとも1つ、好ましくはバーナーの全てについて本発明による空気数が維持されること、及び、バーナーのそれぞれとスート体の表面との距離が、バーナーの少なくとも1つ、好ましくはバーナーの全てについて本発明による考察に従って調節される。
【0058】
既に始めに記載したように、本発明の範囲内において、空気数、すなわち酸素の原料に対する比が、1以下であると、堆積に有利であることを見出した。したがって、本発明によれば、工程(2)において、加水分解及び/又は重合される原料蒸気及び任意の可燃性補助ガスに対して、酸素が好ましくは化学量論量より少ない関係で使用されることがさらに好ましい。
【0059】
特に、本発明による方法における好ましい空気数は、0.95以下、さらに好ましくは0.90以下、さらに好ましくは0.85以下、さらに好ましくは0.80以下、さらに好ましくは0.78以下、さらに好ましくは0.76以下である。
【0060】
上記空気数は、本発明による方法において、先に定義された成長時間の少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、さらに好ましくは少なくとも40%、さらに好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも60%、さらに好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも97%、さらに好ましくは少なくとも98%、さらに好ましくは少なくとも99%において維持されることが望ましい。
【0061】
DE 10 2011 121 153 Aは、そこに記載された石英ガラス製造における最小の具体的な空気数として0.952を開示している。したがって、当業者は、DE 10 2011 121 153 Aに開示されているよりも著しく大きな酸素不足を伴う低い空気数が、本発明によるSiO2粒子の堆積における効率上昇につながること、及び、バーナーに供給される有機ケイ素出発化合物の流れが追加的に酸素を豊富に含むようにされても効率上昇が達成され得ることを期待しないであろう。
【0062】
全体的により濃厚なガス構成における着火能力の低下は、同時に着火するガス領域の平均直径を小さくする(より小さい「小火炎」)。熱膨張と、分解によるモル増加(例えば、1モルのOMCTSガスがx倍の燃焼ガスのモル数を生成する)による体積増加を抑制することにより、火炎をより乱れにくくする小さな圧力波を生成する。その結果、より層流の火炎となり、前述したような利点を有する燃焼長が長くなる。本発明による方法におけるバーナー及び火炎中心では、供給流及び水素のみが存在し、これらはともに、迅速に着火するには高濃度すぎること、及び外側ノズルからの酸素は、より低い乱流性のために、より長い距離に分散して、より遅く中心に達することを考慮する必要がある。
【0063】
本発明の範囲内において、原料は、好ましくは同心バーナーの中心ノズルからキャリアガス及び酸素とともに燃焼部中に放出されるので、空気数の計算に用いられる酸素量は、原料の流れへの酸素の混合及び燃料ガスで用いられる追加の酸素の混合から生じることを考慮に入れなければならない。
【0064】
本発明による方法の範囲内で、空気数をDE 10 2011 121 153 Aで定義される値よりも大幅に低減することができ、同時に、堆積効率を大幅に向上させることができる。
【0065】
0.85の例示的な空気数では、本発明によるプロセスにおける酸素不足は、0.95の空気数及び5%のみの酸素不足を有するDE 10 2011 121 153から知られるプロセスよりも、3倍高く(15%)、0.75の例示的な空気数では5倍高い(25%)。
【0066】
さらに、本発明による方法は、好ましくは、過剰なスートの一定の粒度分布を有することを特徴とし、それにより、好ましくは、二次製品に使用することができる。
【0067】
[工程(3)-SiO2粒子の堆積]
工程(3)では、工程(2)で生じたSiO2粒子を堆積面に堆積させる。この工程の設計は、当業者の技能と知識の範囲内である。
【0068】
この目的のため、工程(2)で形成したSiO2粒子を回転する担体上に一層ずつ堆積させ、多孔質スート体を形成する。
【0069】
スート粒子の堆積中、前述の条件を満たすために、必要に応じてトーチと支持体との間の距離を変更する。
【0070】
[工程(4) - 乾燥とガラス化(必要な場合)]
工程(4)では、必要に応じて、工程(3)により生じたSiO2粒子を乾燥させ、ガラス化することにより、合成石英ガラスを形成する。この工程は、先に行われた工程がスートプロセスに従って行われた場合に特に必要となる。この工程の設計は、当業者の技能と知識の範囲内である。
【0071】
本発明による方法は、外部堆積プロセスまたは内部堆積プロセスとして実施される合成石英ガラスの製造に適している。本発明による方法を外部堆積プロセスとして実施する場合、好ましくは、OVDプロセス(外付気相堆積法)、VADプロセス(気相軸堆積法)、またはスートブールプロセスである。
【0072】
本発明によるプロセスは、石英ガラスの製造コストを低減することができる。
【0073】
本発明のさらなる目的は、合成石英ガラスを製造するための装置を提供することであり、本発明による該装置は、以下を備える。
(a)少なくとも1つの有機ケイ素出発化合物を含む少なくとも1つの原料を蒸発させて原料蒸気を形成するための、少なくとも1つの蒸発器部であって、該蒸発器部は、蒸発ユニットを具備するものと、
(b)工程(a)による前記原料蒸気が供給され、前記原料が熱分解又は加水分解によってSiO2粒子に変換される少なくとも1つの反応部であって、バーナーを含む前記反応部と、
(c)前記反応部(b)により生じたSiO2粒子を堆積させて合成石英ガラスを形成する少なくとも1つの堆積部であって、スート体からなる前記堆積部。
【0074】
本発明による装置は、さらに、バーナーが、以下のように設計されているノズルを有することを特徴とする。
・該ノズルから前記原料蒸気を酸素とともに前記反応部に供給すること、及び、
・前記装置は、実現すべき前記原料蒸気の反応が前記バーナー内の空気数1.00以下で行われるように、前記ケイ素含有出発化合物に対する酸素の量比を調整する手段を具備すること。
【0075】
本発明による方法に関する上記の説明に従って、本発明による装置のバーナー内のガス流、特に燃料としての酸素の量及び有機ケイ素出発化合物の量並びに場合により可燃性の補助ガスの量は、好ましくは0.95以下の空気数が実現するように調節される。
【0076】
空気数の定義については、上記の説明を参照されたい。
【0077】
本発明の範囲内では、原料蒸気は、さらに、キャリアガスとともに用いてもよい。
【0078】
本発明による方法に関する上記説明に従って、本発明による装置のバーナー内のガス流、特に燃料としての酸素の量及び有機ケイ素出発化合物の量並びに場合により可燃性の補助ガスの量は、好ましくは0.90以下の空気数が実現するように調節される。
【0079】
本発明による方法に関する上記説明に従って、本発明による装置のバーナー内のガス流、特に燃料としての酸素の量及び有機ケイ素出発化合物の量並びに場合により可燃性の補助ガスの量は、好ましくは0.85以下の空気数が実現するように調節される。
【0080】
本発明による方法に関する上記説明に従って、本発明による装置のバーナー内のガス流、特に燃料としての酸素の量及び有機ケイ素出発化合物の量並びに場合により可燃性の補助ガスの量は、好ましくは0.80以下の空気数が実現するように調節される。
【0081】
本発明による方法に関する上記説明に従って、本発明による装置のバーナー内のガス流、特に燃料としての酸素の量及び有機ケイ素出発化合物の量並びに場合により可燃性の補助ガスの量は、好ましくは0.78以下の空気数が実現するように調節される。
【0082】
本発明による方法に関する上記説明に従って、本発明による装置のバーナー内のガス流、特に燃料としての酸素の量及び有機ケイ素出発化合物の量並びに場合により可燃性の補助ガスの量は、好ましくは0.76以下の空気数が実現するように調節される。
【0083】
本発明による装置は、好ましくは、空気数が、先に定義された成長時間の少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、さらに好ましくは少なくとも40%、さらに好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも60%、さらに好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも97%、さらに好ましくは少なくとも98%、さらに好ましくは少なくとも99%の間において維持されることが望ましい。
【0084】
本発明による装置のバーナーは、好ましくは同心円状の断面を有し、同心円状の断面の内部において、原料蒸気が酸素(及びキャリアガスとしての不活性ガス)とともに供給混合体としてバーナー火炎に導入され、供給混合体が分離ガスによって酸素含有燃料ガスから分離される。
【0085】
最後に、本発明は、合成石英ガラスの製造のための本装置の使用に関する。
【実施例0086】
以下、本発明を以下の実施例及び図面を参照しながら、より詳細に説明する。
【0087】
本発明による実施例
【0088】
国際特許出願PCT/EP2012/075346の実施形態による蒸発器において、180℃に予熱されたキャリアガスとしての窒素と共に液体原料OMCTSを170℃で気化させる。窒素-OMCTS蒸気混合物は、酸素(混合O2)と共に同心バーナーに導入され、実験は以下の条件下で行われる。
【0089】
実験1~3では、1時間あたり同一量のOMCTSをバーナーに導入し、混合O2量と燃焼O2量を調整して、下表の空気数を実現した。H2、N2の量も同一とした。また、バーナーと本体との距離もすべての実験で同一とした。
【0090】
【表1】
意味:
-: 悪い堆積効率
+: 向上した堆積効率
++: 大幅に向上した堆積効率
+++: 非常に向上した堆積効率
【0091】
試験1~3及び比較例は、空気数を減少させることによって、すなわち、ケイ素含有出発化合物及び場合によっては可燃性補助ガスに対する、酸素のますます低い化学量論比によって、汎用プロセスの収率効率が増加し得ることを示している。特に、空気比は、DE 10 2011 121 153 Aから公知のケイ素含有出発化合物及び場合により可燃性の補助ガスに対する酸素の比よりも著しく低いものが好ましい。
【0092】
上記の実験では、同心バーナーが使用され、いわゆる原料混合物は、内側ノズルからバーナー領域に導入される。原料混合物は、重合性ポリアルキルシロキサン化合物OMCTS、N2キャリアガス、及び混合O2から構成される。バーナーの内側ノズルは、該内側ノズルと同心の中心ノズル(ここからH2ガスが分離ガスとしてバーナー領域に入る)に取り囲まれている。外側の同心円ノズルでは、燃焼剤として酸素が導入される(O2燃焼物)。