(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095587
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】空気分離装置を含む航空機及び同航空機を操作する方法
(51)【国際特許分類】
B64D 37/32 20060101AFI20220621BHJP
B01D 53/22 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
B64D37/32
B01D53/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021203415
(22)【出願日】2021-12-15
(31)【優先権主張番号】20383098.9
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】521548777
【氏名又は名称】エアバス、オペレーションズ、ソシエダッド、リミターダ、ウニペルソナル
【氏名又は名称原語表記】AIRBUS OPERATIONS, S.L.U.
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217836
【弁理士】
【氏名又は名称】合田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】カルロス、カサド、モンテロ
(72)【発明者】
【氏名】パブロ、マヌエル、カルデロン、ゴメス
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006HA01
4D006MA01
4D006PA01
4D006PB17
4D006PB62
4D006PB63
4D006PC80
(57)【要約】
【課題】 空気分離装置を含む航空機及び同航空機を操作する方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、燃焼室を有する燃焼エンジンと燃料を燃焼室内に噴射するための噴射装置とを含む航空機並びに同航空機を操作する方法に関し、前記航空機はまた、空気を酸素エンリッチガス混合物と窒素エンリッチガス混合物とへ分離するようにされた空気分離装置を含み、前記酸素エンリッチガス混合物は燃料と共に燃焼室内へ噴射され、一方、窒素エンリッチガス混合物は前記燃焼エンジンの環境内の航空機の少なくともいくつかの部分を不活性化するために使用される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-次のものを含む燃焼エンジン(38):
-燃焼室(27)、
-燃料取り入れ口を含む噴射装置(12)であって前記燃料取り入れ口において燃料の供給を受けると前記燃焼室内に燃料を噴射するようにされた噴射装置(12)、
-次のものを含む空気分離装置(18):
●少なくとも酸素及び窒素を含む元のガス混合物(31)を取り入れるようにされた空気取り入れ口、
●前記空気取り入れ口において元のガス混合物(31)が導入されると前記空気分離装置(18)が前記元のガス混合物(31)の酸素含有量より高い酸素含有量を含む酸素エンリッチガス混合物(26)を出力するようにされた酸素出力、及び
●前記空気取入れ口において元のガス混合物(31)が導入されると前記空気分離装置(18)が前記元のガス混合物(31)の窒素含有量より高い窒素含有量を含む窒素エンリッチガス混合物(19)を出力するようにされた窒素出力、を含む航空機(1)であって、
-前記空気分離装置の前記窒素出力は不活性化回路へ流体接続され、
-前記空気分離装置の前記酸素出力は前記噴射装置(12)へ流体接続される、ことを特徴とする航空機。
【請求項2】
前記不活性化回路は前記航空機のエンジン室(34)へ流体接続されることをさらに特徴とする、請求項1に記載の航空機。
【請求項3】
前記不活性化回路は前記エンジン室(34)の上部において流体接続されることをさらに特徴とする、請求項2に記載の航空機。
【請求項4】
前記不活性化回路は燃料ホース(16)周りの周囲チャネル(17)へ流体接続されることをさらに特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の航空機。
【請求項5】
前記空気分離装置(18)の前記取り入れ口は乗客の客室空気(31)へ流体接続されることをさらに特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の航空機。
【請求項6】
元のガス混合物の流れ(31)、酸素エンリッチガス混合物の流れ(26)、窒素エンリッチガス混合物の流れ(19)及び前記燃焼エンジン(38)の燃料の流れ(24)から選択される少なくとも1つの流れを制御するようにされたエンジンコントローラ(39)を含むことをさらに特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の航空機。
【請求項7】
前記空気分離装置(18)の前記酸素出力と前記噴射装置(12)との間の油圧回路はポンプ(36)を含むことをさらに特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の航空機。
【請求項8】
前記噴射装置(12)の前記燃料取り入れ口はH2を受け取るようにされることをさらに特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の航空機。
【請求項9】
前記噴射装置(12)は、燃料燃焼が主として発生する前記燃焼室(27)のエリア内に酸素エンリッチガス混合物と燃料との混合物を噴射するようにされることをさらに特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の航空機。
【請求項10】
-酸素エンリッチガス混合物流(26)を受け取るようにされた酸素取り入れ口を含み、
-燃料流(24)を受け取るようにされた燃料取り入れ口を含み、
-前記燃料取り入れ口において燃料及び前記酸素取り入れ口において酸素エンリッチガス混合物が導入されると燃料と酸素エンリッチガス混合物とを混合するようにされ、
-燃料と酸素エンリッチガス混合物との混合物を出力するようにされた出力を含む、前置ミキサー(13)を含むことをさらに特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の航空機。
【請求項11】
前記空気分離装置の前記窒素出力は制御された安全弁(23)を通して前記燃焼室(27)へ流体接続されることをさらに特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の航空機。
【請求項12】
-酸素エンリッチガス混合物流(26)及び窒素エンリッチガス混合物流(19)が空気分離装置(18)により気流(31)から生成され、
-前記酸素エンリッチガス混合物は噴射装置(12)を介し燃焼室(27)内の燃料と共に噴射され、
-前記窒素エンリッチガス混合物は不活性化回路内に噴射されることにより航空機のエンジン(38)を操作する方法。
【請求項13】
前記燃料はH2であることをさらに特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記窒素エンリッチガス混合物の少なくとも一部は燃料パイプ(16)の周囲に導かれることをさらに特徴とする、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記燃焼エンジン(38)は前記エンジンの燃焼室(27)内の燃料流の代わりに窒素エンリッチガス混合物流の導入により遮断され得ることをさらに特徴とする、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は航空機不活性化システムに関する。特に、本発明は、航空機のいくつかのエリアを不活性化するための窒素エンリッチ空気を提供するようにされた空気分離装置を含む航空機に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機安全性の重要な態様は航空機の危険エリアの不活性化を含む。特に、燃焼エンジンを含む航空機において、燃料系及び燃料タンクは、低レベルの酸素を保証するとともにこれにより火事又は爆発を回避するように不活性化され得る。
【0003】
(特許文献1)は、燃料タンクへの窒素エンリッチ供給源を生成するための空気分離モジュールを有する航空機を開示する。これは、燃料タンク内の燃料を囲むガス混合物の酸素含有量を劇的に低減することにより燃料タンクを不活性化することを可能にする。この文献は、その動作寿命を増加するために空気分離モジュールへ供給される空気の温度制御に関する洞察を提供する。
【0004】
このような航空機は航空機に搭載される不活性化システムの使用及び重量を最適化しない。さらに、航空機のいくつかのエリアはこの文献によるとシステムにより不活性化されないかもしれない。
【0005】
さらに、航空機の燃料効率は、低燃料消費を有する航空機が低い環境影響を有し、そしてその運転費用を最適化することを可能にするので、航空機設計における重要な判断基準である。
【0006】
(特許文献2)では、重要な量の酸素がセラミック型空気分離器により生成され、そして緊急の場合に高高度において空気吸い込みエンジンを開始するために冷却され機上に蓄えられるシステムが提供される。しかし、このようなシステムは、特に重く、そして非常にまれな緊急事態をカバーするだけであり、その結果このようなシステムを備えた航空機の燃料効率に重大な影響を与える。
【0007】
加えて、高効率を有し且つ低排出量の汚染物質(特に窒素酸化物(NOx))を有する航空機の必要性がある。
【0008】
これは、航空機のすべての機上電力が将来飛行中に使用され得るということを意味し、一方、これは現在の民間航空機上の場合ではない。現在の航空機は、飛行中に実際に使用するよりはるかに高い発電能力を積み込む。特に、現在の民間航空機は、地上に居る間にだけ又はいくつかの緊急事態にだけ安全性発電機として使用される補助電力ユニット(APU:auxiliary power unit)を有する。このような機上発電手段の最適化は、すべてのエンジンが飛行の様々な段階中に使用され得るということを意味する。
【0009】
さらに、H2は航空宇宙産業における代替燃料として探索されているので、エンジン系は、燃料としてのH2の使用の場合に安全且つ効率的であるように精査されなければならない。
【0010】
H2の使用(特に今まで飛行中に連続的に使用されなかったかもしれない航空機のいくつかのエリア内での)は、航空機の新しいいくつかのエリアの不活性化の必要性だけでなく安全性及び燃料効率の観点での飛行必要要件を満たし得る新しいシステム、操作方法、並びに航空機構成の必要性を生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第9272790号明細書
【特許文献2】米国特許第5131225号明細書
【特許文献3】仏国特許第3011484号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、これらの問題への解を提供する航空機不活性化システム(より一般的には航空機)だけでなく航空機不活性化システムを操作する方法も提供することを目的とする。
【0013】
本発明は高レベルの安全性を提供するシステム及び方法を提供することを目的とする。
【0014】
本発明は高燃料燃焼効率を有する航空機を提供することを目的とする。
【0015】
本発明はまた、非常に低いレベルの窒素酸化物排出を有する航空機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、以下のものを含む航空機を提案する:
-次のものを含む燃焼エンジン:
●燃焼室、
●燃料取り入れ口を含む噴射装置であってその燃料取り入れ口において燃料の供給を受けると燃料を燃焼室内に噴射するようにされた噴射装置、
-次のものを含む空気分離装置:
●少なくとも酸素及び窒素を含む元のガス混合物を取り入れるようにされた空気取り入れ口、
●空気取り入れ口において元のガス混合物が導入されると前記空気分離装置が元のガス混合物の酸素含有量より高い酸素含有量を含む酸素エンリッチガス混合物を出力するようにされた酸素出力、及び
●空気取り入れ口において元のガス混合物が導入されると前記空気分離装置が元のガス混合物の窒素含有量より高い窒素含有量を含む窒素エンリッチガス混合物を出力するようにされた窒素出力。本航空機は、
-空気分離装置の窒素出力が不活性化回路へ流体接続され、
-空気分離装置の酸素出力が噴射装置へ流体接続されるということを特徴とする。
【0017】
全文において、用語「燃焼エンジン」は、燃料又は燃料の混合物が酸素により酸化され、そしてこれにより放出される化学エネルギーが機械力に変換される内燃エンジンのために使用される。
【0018】
空気分離装置は、空気などの少なくとも窒素及び酸素を含む元のガス混合物をその取り入れ口において受け取ると酸素エンリッチガス混合物の流れ及び窒素エンリッチガス混合物の流れを提供するようにされる。空気分離装置は例えば(特許文献3)に記載されたタイプのものであり得る。
【0019】
元のガス混合物は、低高度と高高度と間、大気成分及び吸い込まれた又は再利用された客室空気との間などでの成分のあり得る変動を有する空気であり得る。
【0020】
噴射装置は、燃料を受け取るようにされた燃料取り入れ口及び燃料を燃焼室内に供給するようにされた燃料出力を含む。噴射装置は例えばコントローラなどのコンピュータユニットにより制御され得る。
【0021】
本発明による航空機では、空気分離装置により生成される窒素エンリッチガス混合物及び酸素エンリッチガス混合物の両方が航空機により使用され、その結果、空気分離装置の重量が最適化される。具体的には、窒素が航空機のいくつかのエリアを不活性化するために使用される一方で酸素は燃焼エンジンの燃焼を改善するために使用される。
【0022】
燃焼エンジン内のそして特に噴射装置を介した酸素エンリッチガス混合物の噴射は、より高い比率の酸素を有する燃焼室のいくつかのエリアを標的とすることを可能にする。特に、タービンエンジンでは、エンジンによる酸素取り入れの合計の約20~30%だけが燃焼に寄与する。温度が最も高くそしてその結果NOxの形成もまた最も高い一次燃焼区域の頭において、約10%だけが第1の燃焼段階において消費される。燃料と共に酸素エンリッチガス混合物を噴射することを提案することにより、本発明による航空機のエンジンにおける第1の燃焼区域内の酸素比ははるかに高く、その結果、燃焼が改善され、そして窒素の量が低減される。したがって、本発明は、燃料酸化の第1の段階(燃焼室内での温度が最も高い)における窒素の存在に起因するNOxの形成を低減する。
【0023】
さらに、大気からの直接的なエンジンの空気取り入れは、燃焼室内の酸素エンリッチガス混合物噴射のおかげで若干低減され得、その結果、エンジンのサイズの縮小が考慮され得、これにより、より軽い航空機を提供する。
【0024】
したがって、本発明は非常に低いレベルのNOxを放出する非常に効率的な航空機を提案する。
【0025】
不活性化回路は航空機のエンジン室へ流体接続され得る。エンジン室は燃焼エンジンを収容する。
【0026】
燃焼エンジンは補助電力ユニットであり得る。
【0027】
エンジン室は航空機の後部胴体内に在る分室であり得る。
【0028】
本発明による航空機は、補助電力ユニットを十分に活用することとその効率を最適化することとを可能にする。
【0029】
不活性化回路はエンジン室の上部において流体接続され得る。
【0030】
エンジン室の上部内の窒素エンリッチガス混合物の噴射はエンジン室のこの部分を特に排気することを可能にする。したがって、エンジン室の上部内のH2などの軽いガスの蓄積が回避され得る。実際、補助電力ユニットがH2を少なくとも部分的に供給されれば、エンジン室の又はエンジン室の少なくともいくつかエリアの不活性化は航空機の安全性にとって非常に有益である。
【0031】
したがって空気分離装置は補助電力ユニットの専用装置であり得る。空気分離装置はエンジン室だけの不活性化のために窒素エンリッチガス混合物を提供し得る。空気分離装置は補助電力ユニット燃焼室内だけにおける噴射のために酸素エンリッチガス混合物を提供し得る。
【0032】
航空機は、空気分離装置の窒素出力へ接続される窒素エンリッチガス混合回路を含み得る。窒素エンリッチガス混合物は、このような蒸気が他の要素(例えば熱源など)により点火され得る航空機のいくつかのエリア内のいかなる燃料蒸気も希薄化するために使用され得る。
【0033】
窒素エンリッチガス混合回路は、1つ又は複数の特定位置において窒素エンリッチガス混合物を噴射するために1つ又は複数の窒素口を含み得る。特に、過熱又は火事のリスクを有する場所は、設計中に識別され得、したがって航空機の(エンジンの)公称動作中又は命令を受けるとすぐに窒素を噴射するためのこのような窒素口を備え得る。熱面上の窒素エンリッチガス混合物の標的噴射は、その非常に低いレベルのO2のおかげでこれらの表面を点火リスク無しに冷ますことを可能にする。窒素エンリッチガス混合物のO2レベルは、8%未満、特に約4%以下であることが有益であり得る。
【0034】
窒素エンリッチガス混合物流もまた、高点火リスクを有する部品を不活性な多量の窒素エンリッチガス混合物により囲むために使用され得る。
【0035】
窒素口が制御されてもよいし、弁に至る回路部上の弁が制御されてもよい。
【0036】
したがって、本発明による方法では、窒素は、航空機の標的区域に向かって、より具体的にはエンジン室内の標的区域に向かって噴射される。標的区域は、その周囲に燃料が存在する場合により高い漏れリスク又は火災又は爆発のより高いリスクを有するということが識別され得る特定局所区域である。
【0037】
窒素エンリッチガス混合物はまた、リスクが検出されると火事又は燃焼エンジンを窒息状態にするように噴射され得る。窒素エンリッチガス混合物流は例えば、火事が起きたエリアへ又は火事が検出されると全エンジン室内に完全に向けられ得る。
【0038】
航空機はさらに、緊急の場合に使用される窒素エンリッチガス混合物蓄えを構成するように、空気分離装置の窒素出力へ流体接続された窒素エンリッチガス混合物タンクを含み得る。したがって、多量の窒素エンリッチガス混合物が火事を防止する又は火事を窒息状態にするために放出され得る。
【0039】
いくつかのエリアの引火可能性を制限するための及び/又は火事を窒息状態にするための窒素エンリッチガス混合物の使用は、航空機に搭載される消火機器の必要性を低減しこれにより航空機の重量をさらに低減することを可能にし得る。
【0040】
不活性化回路は燃料ホース周りの周囲チャネルへ流体接続され得る。周囲チャネルはまた、パイプを囲む「外壁」と呼ばれることがある。燃料ホースの不活性化はこのように取得され得る。本発明のこの特徴は特にH2などの軽い燃料にとって重要である。実際、H2は非常に小さな分子サイズを有する。したがって、H2を含む燃料ホースは、漏れ、発汗又は拡散に対しより脆弱であり得る。
【0041】
窒素エンリッチガス混合物などの不活性化ガスにより満たされた周囲チャネルを有するホースはH2のこのような特殊性に起因するいかなるハザードも除去する。
【0042】
本発明による方法では、窒素エンリッチガス混合物の少なくとも一部は燃料パイプの周囲に導かれ得る。
【0043】
したがって、窒素エンリッチガス混合物の流れは周囲チャネル内に維持され得る。次に、窒素エンリッチガス混合物流は、いかなる燃料蒸気も排気されるように航空機の外側へ(大気内に)噴出され得る。したがって、周囲チャネルの少なくとも一部を含む不活性化回路は航空機の外側に向かう出力を有し得る。したがって、燃料ホースからその周囲チャネルへ漏れるいかなる燃料も安全に含まれそして航空機の外側へ排除され得る。
【0044】
空気分離装置の取り入れ口は乗客の客室空気へ流体接続され得る。
【0045】
ポンプ、弁などの1つ又は複数の油圧装置が乗客の客室空気と前記取り入れ口間の客室空気回路上に位置し得る。
【0046】
空気分離装置はより高い大気層内に存在するオゾンに敏感である。このため、不活性化燃料タンクへ捧げられた空気分離装置は通常、オゾン変換器に関連付けられる。客室空気はその中に存在するオゾンを既に奪われているので、本発明の空気分離装置はオゾン変換器へ関連付けられる必要がない。これにより、本発明による航空機の複雑性及び重量が最小に維持される。
【0047】
代替的に又は組み合わせて、いくつかの実施形態では、空気分離装置の取り入れ口は大気へ流体接続され得る(特に低高度において)。
【0048】
ポンプ、弁などの1つ又は複数の油圧装置は客室などの元の空気源と空気分離装置の前記取り入れ口との間の空気回路上に位置し得る。元の空気はまた、空気分離装置の動作及び動作寿命を最適化するように温度の点で調整され得る。
【0049】
航空機は、元のガス混合物の流れ、酸素エンリッチガス混合物の流れ、窒素エンリッチガス混合物の流れ、及び前記燃焼エンジンの燃料の流れから選択された少なくとも1つの流れを制御するようにされたエンジンコントローラを含み得る。
【0050】
エンジンコントローラは処理装置内の任意のタイプのものであり得る。
【0051】
コントローラは、各ガス流の噴射をエンジン動作へチューニングし得るように元のガス混合物、窒素エンリッチガス混合物又は酸素エンリッチガス混合物の流れのうちの1つ又は複数を制御し得る。緊急の場合又は識別されたリスクの場合の窒素エンリッチガス混合物の使用に関して説明したように、コントローラは、窒素エンリッチガス混合物の使用をこの状況へ適合させるように窒素エンリッチガス混合物の流れを制御し得る。
【0052】
同じやり方で、コントローラは燃焼エンジン内に噴射される酸素エンリッチガス混合物の量を適合化し得る。
【0053】
空気分離装置の酸素出力と噴射装置との間の油圧回路はポンプを含む。
【0054】
ポンプは酸素エンリッチガス混合物の圧力を増加するようされる。
【0055】
ポンプはより具体的には、酸素エンリッチガス混合物が高圧により前置ミキサー内に噴射されるように空気分離装置の酸素出力と混合室又は前置ミキサーとの間の油圧回路上に置かれる。
【0056】
燃料はH2であり得る。
【0057】
噴射装置の燃料取り入れ口はH2を受け取るようにされ得る。
【0058】
H2酸化は主として水及びNOxを放出する。第1の燃焼段階から窒素を除去することにより(すなわち、H2を有する燃焼室内の空気分離装置から酸素エンリッチガス混合物を噴射することにより)、本発明者らはH2燃料エンジンのNOx生成がほぼ零まで低減されるということを理解した。
【0059】
噴射装置は、燃料燃焼が主として発生する燃焼室のエリア内に酸素エンリッチガス混合物と燃料との混合物を噴射するようにされ得る。
【0060】
酸素エンリッチガス混合物は燃焼エンジンの一次燃焼室内においてだけ消費され、一次燃焼室は燃料と酸素との燃焼のほとんどが発生する最高温度を有する燃焼室のエリアである。燃焼室のこのエリアは、NOxの生成を低減するように窒素の存在を回避することが最も必要とされる場所である。本発明者らは、生成されるNOxの量を劇的に低減するためには酸素だけを燃焼室内に噴射することは必要ではないが逆にエンジンの残り部分に空気が供給され続ける一方で酸素エンリッチガス混合物を燃焼室の標的エリア内に噴射することがこのような結果を可能にするということを理解した。
【0061】
これにより、空気分離装置は、エンジン全体に供給するために多量の酸素エンリッチガス混合物を生成する必要がなく、エンジンの全酸素取り入れの極一部だけを生成するので重要な容積及び質量のものである必要がない。
【0062】
航空機はさらに、
-酸素エンリッチガス混合物流を受け取るようにされた酸素取り入れ口を含み、
-燃料流を受け取るようにされた燃料取り入れ口を含み、
-その燃料取り入れ口において燃料がそしてその酸素取り入れ口において酸素エンリッチガス混合物が導入されると燃料と酸素エンリッチガス混合物とを混合するようにされ、そして
-燃料と酸素エンリッチガス混合物との混合物を出力するようにされた出力部を含む前置ミキサーを含み得る。
【0063】
前置ミキサーは混合室を含み、ここでは燃料と酸素エンリッチガス混合物との混合が、その燃料取り入れ口において燃料が導入され、そしてその酸素取り入れ口において酸素エンリッチガス混合物が導入されると発生する。
【0064】
燃料取り入れ口は、燃料回路及びポンプを通して燃料タンクなどの燃料源へ流体接続される。
【0065】
前置ミキサーの出力は噴射装置へ流体接続される。
【0066】
空気分離装置の窒素出力は制御された安全弁を通して燃焼室へ流体接続され得る。燃焼エンジンは、エンジンの燃焼室内の燃料流の代わりに窒素エンリッチガス混合物流の導入により遮断され得る。
【0067】
制御された安全弁は公称使用時に閉じられる。しかし、緊急の場合、窒素エンリッチガス混合物は、いかなる燃焼も窒息状態にしてそれを迅速に停止するようにエンジン内に直接噴射され得る。
【0068】
同様に、空気分離装置の酸素出力は制御された弁を介し燃焼室へ流体接続され、前記制御弁は、公称動作中に解放されるが、エンジンへの酸素エンリッチガス混合物供給源が緊急の場合に切断され得るように緊急の場合は閉じられ得る。
【0069】
航空機は、窒素エンリッチガス混合物流及び/又は酸素エンリッチガス混合物流を制御するために他の弁を含み得る。例えば、燃料パイプはまた、いかなる燃料も燃料パイプ内に残らないということを保証するように窒素エンリッチガス混合物の流れにより不活性化され排気され得る。これは、燃焼エンジンの燃焼室に至る燃料パイプにおいて特に有益であり得る。具体的には、H2などの軽い燃料により、燃料パイプを排気することは、H2がそうでなければ航空機の駐機の長い期間中にパイプを通り抜けこれによりリスクを誘起し得るので、必須かもしれない。
【0070】
したがって、窒素エンリッチガス混合物流は、パイプ内のいかなる燃料も窒素エンリッチガス混合物により置換されるということとエンジンが窒息により遮断するとパイプ内には残余燃料が無いということとを保証するように、エンジン停止に先立ってエンジンに至る主燃料パイプ内の比較的上方へ噴射され得る。これは、エンジンの安全な遮断段階だけでなくその後のエンジン室内の安全動作も提供する。
【0071】
本発明はまた、次のようにすることにより航空機のエンジンを操作する方法に拡張する:
-酸素エンリッチガス混合物流及び窒素エンリッチガス混合物流が空気分離装置により空気流から生成される、
-酸素エンリッチガス混合物が噴射装置を介し燃焼室内の燃料と共に噴射される。
【0072】
窒素エンリッチガス混合物は不活性化回路内に噴射される。
【0073】
本発明による方法は、高効率、低レベルのNOx排出又は零NOx排出、及び非常に高い安全性でもって航空機(特に航空機の補助電力ユニット)を操作することを可能にする。
【0074】
本発明はまた、上記明細書に記載された特徴及び添付図面に関する以下の明細書に記載される特徴の他のあり得る組み合せへ拡張する。特に、本発明は航空機に関連して説明される特徴を含む方法へ拡張し;本発明は本方法に関連して説明される特徴を含む航空機へ拡張する。
【0075】
本発明のいくつかの特定例示的実施形態及び態様は添付図面を参照して以下の明細書において説明される。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【
図1】燃焼エンジン及び空気分離装置をホストするエンジン室を有する後部胴体部を含む本発明による航空機の概略図である。
【
図2】本発明による航空機のエンジン室の概略図である。
【
図3】本発明による航空機のシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0077】
図1では、航空機1が表される。航空機は燃焼エンジン38(より具体的には補助電力ユニット)が設置される後部胴体部2を含む。補助電力ユニットは空気分離装置と共にエンジン室内に設置される。
【0078】
図2では、
図1によるエンジン室34が表される。補助電力ユニットエンジン38はこのエンジン室34内に収容される。エンジンは以下の様々な部分を含む:大気37を取り入れそして大気37を圧縮するためのコンプレッサ28;燃料酸化が発生する燃焼室27;燃焼中に形成されるガスにより推進されるタービン29;及び大気中の燃焼から生じる排出ガスの排気。
【0079】
エンジン室はまた、本発明による安全性/効率装置11を収容する。安全性/効率装置11は少なくとも1つの空気分離装置を含む。安全性/効率装置11は、燃料タンクなどの燃料源から燃料流24及び客室空気31などの空気源から元のガス混合物流を取り入れる。安全性/効率装置11が含む1つ又は複数の空気分離装置は空気流を酸素エンリッチガス混合物流及び窒素エンリッチガス混合物流に分離する。安全性/効率装置11はまた、燃焼室27の噴射装置12へ供給し得る混合物を取得するように燃料と酸素エンリッチガス混合物とを混合する。
【0080】
本発明の他のいくつかの実施形態では、安全性/効率装置11のいくつかの部分はエンジン室の外に在り得る。特に、空気分離装置はエンジン室の外に設置され得る。
【0081】
図3はこのような安全性/効率装置11をより詳細に概略的に表す。
【0082】
この実施形態では、安全性/効率装置11は1つの空気分離装置18を含む。空気分離装置18は取り入れ口において客室空気を受け取る。客室空気は、コンプレッサ35により圧縮され、そして制御された圧力で空気分離装置18へ供給される。空気分離装置は、その取り入れ口において受け取った客室空気流を、酸素出力における酸素エンリッチガス混合物流26と窒素エンリッチガス混合物流19とへ分離するようにされる。空気分離装置18は例えば、酸素がその壁を通り抜けることを可能にする中空線維膜を含むタイプのものであり、一方、窒素はこれを通り抜けることができずしたがって中空繊維穴に流れ落ちる。
【0083】
酸素エンリッチガス混合物流26は、酸素エンリッチガス混合物流を前置ミキサー13内に供給するために、制御された圧力で酸素エンリッチガス混合物流を加圧するようにされたポンプ36へ導かれる。前置ミキサー13はまた、燃料流ライン24から燃料を受け取る。前置ミキサー13は酸素エンリッチガス混合物と燃料とを混合するようにされた混合室を含む。前置ミキサー13の出力は、燃料と酸素エンリッチガス混合物との混合物が噴射装置12へ導かれ得るように噴射装置12の入力へ接続される。噴射装置12は、燃料と酸素エンリッチガス混合物との混合物を燃焼室27の一次燃焼室32内に直接噴射するように適合化され、そして設置される。燃焼室の一次燃焼室32は、燃料と酸素との間の燃焼が発火する場所であり、最高温度に到達する場所である。実際、大気から引き出されタービンエンジンのコンプレッサ28により圧縮されるより多くの空気が一次燃焼室32及び二次区域33内に噴射される。燃料と酸素との燃焼混合物は一次燃焼室から二次区域へタービン方向に移動し、そしてタービンから出る。したがって、燃焼室27の二次区域33内の温度は一次燃焼室32内の温度より低い。一次燃焼室の先頭における噴射装置12による燃料及び酸素エンリッチ空気の噴射は低レベルの窒素を有する非常に純粋な混合物を提供し、これにより燃焼中にNOx副産物を劇的に低減する。
【0084】
前置ミキサー13へ持って来られる前に、燃料はタンクから抽出され、そして燃料パイプ16により前置ミキサー13へ持って来られる。燃料パイプ16は燃料パイプ16周りの周囲チャネル17を形成する二重壁を含み得る。
図3上で、二重壁燃料パイプ16の一部だけが表される。しかし、このような燃料パイプは燃料又は燃料を含む混合物を運ぶために任意のパイプ部上で使用され得る。
【0085】
図3に提示された実施形態では、窒素エンリッチガス混合物流19は複数の窒素エンリッチガス混合物流へ分離される。第1の窒素エンリッチガス混合物流20は燃料パイプ16周りの周囲チャネル17方向に向けられる。これにより、浸透から生じるだろういかなる燃料蒸気又はパイプ16の壁を通る漏れは、窒素エンリッチガス混合物流により排気されるだけでなく、高い窒素含有量の窒素エンリッチガス混合物により不活性化もされる。次に、窒素エンリッチガス混合物流は例えばポートを排気することを通して航空機の外側の大気へ排気され得る。
【0086】
第2の窒素エンリッチガス混合物流21は、制御された安全弁又は燃料流遮断弁23方向に向けられる。この燃料流遮断弁23は、燃料流供給源を燃料タンクから前置ミキサー13方向へ切断することを可能にする。加えて、この燃料流遮断弁23は、燃料の代わりに窒素エンリッチガス混合物流21を燃料パイプ16内へ噴射することを可能にし、例えば、窒素エンリッチガス混合物流は前置ミキサー13方向へ燃焼室27まで流れる。窒素エンリッチガス混合物が燃焼室に到達すると、燃焼はタービンエンジンの安全な遮断が得られるように窒息状態にされる。
【0087】
さらに、エンジンが窒息により停止すると、燃料流遮断弁23と燃焼室との間のパイプ16もまた燃料が取り除かれ、そして窒素エンリッチガス混合物流21により不活性化される。
【0088】
燃料流遮断弁23が燃料供給することを閉じられ、そして窒素エンリッチガス混合物に対し開かれる場合、別の遮断弁14は前置ミキサーが噴射系(そして延いては燃焼室)に窒素エンリッチガス混合物だけを供給するように前置ミキサー13への酸素エンリッチガス混合物流を閉じ得る。
【0089】
第3の窒素エンリッチガス混合物流22は、点火リスクを軽減するために冷却することを必要とする高温部分などのエンジン室内の特定所定区域(燃料又は例えばグリースなどの他の可燃性生成物の漏れが発生し得そして不活性化されなければならないエリア:
図3では詳述されない)へ向けられる。第3の窒素エンリッチガス混合物流22はまた、排気するためにエンジン室の上部方向に向けられ得る。これは、空気燃料又はH
2などの可燃物より軽いものの場合に特に有益である。したがって、エンジン室34の上部は窒素エンリッチガス混合物流22により不活性化され、そして排気され得る。
【0090】
図1~3に提示される航空機例はまた補助電力ユニット燃料系15を含む。燃料系15は
図3では詳述されない。補助電力ユニット燃料系15は、航空機の動作環境内の任意の環境温度、圧力又は高度において燃料を補助電力ユニットへ供給するように設計される。補助電力ユニット燃料系15は燃料流フィルタ、燃料ポンプ、圧力調整装置、燃料遮断弁、燃料制御ユニット、及びいくつかのセンサ(例えば温度センサ、圧力センサ)を含む。補助電力ユニット燃料系は、低温において氷を含む燃料、添加剤を含む燃料、及び汚染物質と共に正しく動作するようにされる。
【0091】
図1~3に提示される航空機例はまたコントローラ39を含む。コントローラ39は酸素エンリッチガス混合物ポンプ36を制御することにより酸素エンリッチガス混合物26の流れを制御するようにされる。コントローラ39はまた燃料系15を制御することにより前記燃焼エンジン38の燃料24の流れを制御するようにされる。コントローラ39はまた燃料と酸素エンリッチガス混合物との混合率を制御するように前置ミキサー13を制御し得る。
【0092】
本発明の他のいくつかの実施形態では、コントローラ39はまた、空気分離装置18への給気を制御するようにコンプレッサ35を制御するようにされ得る。コントローラはまた、燃料遮断弁23及び/又は酸素エンリッチガス混合物遮断弁14を制御するようにされ得る。
【0093】
本発明は一例として開示された本明細書における特定実施形態に制限されない。本発明はまた、本明細書において明示的に説明されない他の実施形態であって本明細書において説明された特徴の様々な組合せを含み得る他の実施形態を包含する。
【符号の説明】
【0094】
1 航空機
2 後部胴体部
11 安全性/効率装置
12 噴射装置
13 前置ミキサー
14 酸素エンリッチガス混合物遮断弁
15 燃料系
16 燃料パイプ
17 周囲チャネル
18 空気分離装置
19 窒素エンリッチガス混合物流
20 第1の窒素エンリッチガス混合物流
21 第2の窒素エンリッチガス混合物流
22 第3の窒素エンリッチガス混合物流
23 燃料遮断弁
24 燃料流
26 酸素エンリッチガス混合物流
27 燃焼室
28 コンプレッサ
29 タービン
31 元のガス混合物
32 一次燃焼室
33 二次区域
34 エンジン室
35 コンプレッサ
36 酸素エンリッチガス混合物ポンプ
37 大気
38 燃焼エンジン
39 エンジンコントローラ
【外国語明細書】