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特開2022-95592難聴の評価においてユーザを対話式に支援するためのシステム、方法、及びコンピュータプログラム
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  • 特開-難聴の評価においてユーザを対話式に支援するためのシステム、方法、及びコンピュータプログラム 図1
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  • 特開-難聴の評価においてユーザを対話式に支援するためのシステム、方法、及びコンピュータプログラム 図3B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095592
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】難聴の評価においてユーザを対話式に支援するためのシステム、方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04R 25/00 20060101AFI20220621BHJP
   A61B 5/12 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
H04R25/00 L
A61B5/12
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021203747
(22)【出願日】2021-12-15
(31)【優先権主張番号】20214521.5
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】508115093
【氏名又は名称】シバントス ピーティーイー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】305001401
【氏名又は名称】ワイデックス エーエス
【住所又は居所原語表記】Nymoellevej 6 DK-3540 Lynge Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【弁理士】
【氏名又は名称】林 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】コルネリア ヴィーデンブリュク
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ ギーゼ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン アショフ
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン ヴィティング アナスン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】特に初心者ユーザのための、補聴器の設定、特に初期構成を簡素化するシステム、方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】補聴器4の初期設定中にユーザを対話式に支援するシステム2は、表示要素8、入力ユニット10及び処理ユニット12A、12Bを備え、環境状況を表示要素8上に示し、ユーザ入力に基づいて、環境状況の選択された区画を特定し、ハイライトし、ユーザが行った選択に基づいて特定の音状況を提示し、評価スケールを表示する。それによってユーザは特定の音状況に関する自分の聴力の自己査定の値を入力でき、システムは、ユーザが入力した値を、異なる特定の音状況について繰り返し記録し、ユーザが入力した値に基づいて、補聴器4のための設定値Eが特定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
難聴の評価においてユーザを対話式に支援するためのシステム(2)であって、
-少なくとも1つの環境状況を含む画像(14)を提示するための表示要素(8)と、
-ユーザ入力を検出するため、及び特に前記提示された環境状況の中のある区画(16)を選択するための入力ユニット(10)と、
-前記表示要素(8)を制御するため、及び前記ユーザ入力を処理するための処理ユニット(12A、12B)と、を含み、前記処理ユニット(12A、12B)は、
a)前記少なくとも1つの環境状況が前記表示要素(8)上に表示され、
b)ユーザ入力に基づいて、前記環境状況の選択された区画(16)が特定されてハイライトされ、
c)特定の音状況が前記ユーザにより行われた前記選択に基づいて提示され、
d)評価スケール(20)が表示され、それによって前記ユーザは前記特定の音状況に関する自分の聴力の自己査定の聞こえ値(H)を入力することができ、前記ユーザが入力した前記聞こえ値(H)が記録され、
e)異なる特定の音状況についてステップa)~d)が繰り返されて、聞こえ値(H)が記録され、任意選択により、
f)前記ユーザが入力した前記聞こえ値(H)に基づいて、補聴器(4)のための少なくとも1つの設定値(E)が特定される
ように構成されるシステム(2)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの設定値(E)の前記特定のために音声サンプルは提示されない、請求項1に記載のシステム(2)。
【請求項3】
前記表示要素(8)、前記入力ユニット(10)、及び前記処理ユニット(12A、12B)の少なくとも一部を含むローカルデバイス、特に例えばタブレット(6)又はスマートフォンを含む、請求項1又は2に記載のシステム(2)。
【請求項4】
別の表示要素(13)を含むリモートデバイスを含み、前記処理ユニット(12A、12B)は、前記表示要素(8)上及び前記別の表示要素(13)上で同じものが表示されるように構成される、請求項3に記載のシステム(2)。
【請求項5】
前記処理ユニット(12A、12B)は、前記ユーザにより選択された前記選択された区画(16)が前記画像(14)内でハイライトされるように構成される、請求項1~4のいずれか1項に記載のシステム(2)。
【請求項6】
前記処理ユニット(12A、12B)は、前記画像(14)内で幾つかの異なる環境状況が表現され、前記異なる環境状況は異なる音シナリオの特徴であって、前記ユーザにより選択可能であるように、及び前記選択された区画(16)は新たな詳細画像(14)として表示され、好ましくは異なる特定の音状況が前記ユーザによる選択のためにその中に提示されるように構成される、請求項1~5のいずれか1項に記載のシステム(2)。
【請求項7】
前記処理ユニット(12A、12B)は、
-前記選択された特定の音状況について、別の評価スケール(22)が表示され、それによって前記ユーザは前記特定の音状況の前記ユーザにとっての関連性を示す関連性の値(R)を入力することができ、前記ユーザが入力した関連性の値(R)が記録され、及び/又は
-前記ユーザが選択した前記少なくとも1つの区画(16)に基づいて、前記ユーザにとっての前記異なる特定の音状況の前記関連性に関する結論が引き出される
ように構成される、請求項1~6のいずれか1項に記載のシステム(2)。
【請求項8】
前記処理ユニット(12A、12B)は、定義されたユーザクラス(N)が提供されるように、及び前記ユーザが前記ユーザにより行われた前記選択に基づいて、保存された前記ユーザクラス(N)のうちの1つに割り当てられるように構成される、請求項1~7のいずれか1項に記載のシステム(2)。
【請求項9】
前記処理ユニット(12A、12B)は、難聴クラス(L)が定義されるように、及び前記ユーザが前記聞こえ値(H)に基づいて前記難聴クラス(L)のうちの1つに割り当てられるように構成される、請求項1~8のいずれか1項に記載のシステム(2)。
【請求項10】
前記処理ユニット(12A、12B)は、前記難聴クラス(L)への割当のために、
-前記各種の特定の音状況に関する前記聞こえ値(H)が加算されて全体値が形成され、前記難聴クラス(L)のうちの1つへの前記割当が前記全体値に基づいて行われるように、又は
-特定の音状況の各々が幾つかの難聴クラス(L)に割り当てられ、各難聴クラス(L)は重み係数で重み付けされ、各音状況について、前記難聴クラス(L)はこの音状況に関して前記ユーザが入力した前記聞こえ値(H)で重み付けされ、それゆえ、特定の音状況の各々について、各難聴クラス(L)のためのユーザ特定のクラス値が得られ、前記難聴クラス(L)のうちの1つへの前記割当が、前記ユーザ特定のクラス値に基づいて行われる
ように構成される、請求項9に記載のシステム(2)。
【請求項11】
前記処理ユニット(12A、12B)は、前記設定値(E)が難聴クラス(L)への前記割当に基づいて導出されるように構成される、請求項9又は10に記載のシステム(2)。
【請求項12】
前記処理ユニット(12A、12B)は、前記割り当てられたユーザクラス(N)に基づいて、及び/又は前記ユーザが危機的であると評価した特定の音状況に基づいて、危機的音状況が特定され、それについて特定の聴覚プログラムが、定義された聴覚プログラム群から選択され、前記補聴器(4)に保存されるように構成される、請求項1~11のいずれか1項に記載の、及び請求項8に記載のシステム(2)。
【請求項13】
前記処理ユニット(12A、12B)は、前記ユーザの入力に基づいて、特に請求項8に記載の前記割り当てられたユーザクラス(N)に基づいて、及び/又は請求項10に記載の前記割り当てられた難聴クラス(L)に基づいて、前記ユーザにとって適当な補聴器(4)を選択するように構成され、前記補聴器(4)のための初期設定が前記ユーザにより行われた前記入力に基づいて自動的に行われるように構成される、請求項1~12のいずれか1項に記載のシステム(2)。
【請求項14】
難聴(4)の評価においてユーザを対話式に支援するための方法であって、
-少なくとも1つの環境状況を含む画像(14)を提示するための表示要素(8)と、
-ユーザ入力を検出するため、及び特に前記提示された環境状況の中のある区画(16)を選択するための入力ユニット(10)と、
-前記表示要素(8)を制御するため、及び前記ユーザ入力を処理するための処理ユニット(12A、12B)と、を含み、
a)前記環境状況が前記表示要素(8)上に表示され、
b)ユーザ入力に基づいて、前記環境状況の選択された区画(16)が特定されてハイライトされ、
c)特定の音状況が前記ユーザにより行われた前記選択に基づいて提示され、
d)評価スケール(20)が表示され、それによって前記ユーザは前記特定の音状況に関する自分の聴力の自己査定の聞こえ値(H)を入力することができ、前記ユーザが入力した前記聞こえ値(H)が記録され、
e)異なる特定の音状況についてステップa)~d)が繰り返されて、聞こえ値(H)が記録され、任意選択により、
f)前記ユーザが入力した前記聞こえ値(H)に基づいて、補聴器(4)のための設定値(E)が特定される方法。
【請求項15】
難聴の評価においてユーザを対話式に支援するためのコンピュータプログラムであって、請求項1に記載のシステムであって、表示要素(8)、入力ユニット(10)、及び処理ユニット(12A、12B)を含むシステムにより実行されると、前記システム(2)に、ユーザ入力に応答して:
a)環境状況が前記表示要素(8)上で提示され、
b)ユーザ入力に基づいて、前記環境状況の選択された区画(16)が特定されてハイライトされ、
c)特定の音状況が前記ユーザが行った選択に基づいて提示され、
d)評価スケール(20)が表示され、それによって前記ユーザは前記特定の音状況に関する自分の聴力の自己査定の聞こえ値(H)を入力することができ、前記ユーザが入力した前記聞こえ値(H)が記録され、
e)異なる特定の音状況についてステップa)~d)が繰り返されて、聞こえ値(H)が記録され、任意選択により、
f)前記ユーザが入力した前記聞こえ値(H)に基づいて、補聴器(4)のための設定値(E)が特定される
ステップを実行させる命令を含むコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザ、特に聴覚障害を有するユーザを、難聴の評価において、及び特に補聴器の設定、とりわけ初期設定のために対話式に支援するためのシステム、方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
補聴器は一般に、聴覚障害者の聴力低下を補償する機器と理解される。特に、このような補聴器はユーザ特定の周波数依存増幅機能を有し、これは個々の聴力障害に依存する。現代の補聴器には、他にも多くの機能がある。
【0003】
満足できる聴力獲得結果を実現するために、各補聴器をユーザに合わせて個別に調整しなければならない。その設計の点で異なる補聴器のタイプの違いに加えて、補聴器は、その聴覚補助機能に関して、特に個々の周波数依存増幅機能に関してパラメータ化しなければならない。したがって、調整パラメータの設定値を個別に特定して、補聴器に伝達しなければならない。
【0004】
近年、補聴器は通常、オーディオロジストにより調整される。個々の聴覚障害を識別するために、それはユーザ、すなわち聴覚障害者に対して異なる聴覚サンプルが提供されるような方法で行われることが多い。ユーザは、これらの音声サンプルを自分がどのように認識するかを評価する。これらの音声サンプルは例えば、会話サンプル、音楽サンプル、又はその他の音声若しくはノイズである。
【0005】
概して、個々の聴覚障害の特定と補聴器を調整するために必要な設定の特定は複雑で時間がかかる。これが多くの場合、補聴器を使ったことのない初心者ユーザにとっての抑制閾値となる。これは、その初心者ユーザが聴覚障害があるにもかかわらず、補聴器を使用しないことにつながることが多く、それがその人達の社会的関係にマイナスの影響を与えかねない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上に基づき、本発明は、特に初心者ユーザのための、補聴器の設定、特に初期構成を簡素化しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この課題は、ユーザ、特に聴覚障害のあるユーザを、その聴覚障害のあるユーザの難聴の評価において、及び特に補聴器の(初期)設定において支援するためのシステム、方法、及びコンピュータプログラムにより解決される。システムに関連して後述する利点と好ましい構成は、方法及びコンピュータプログラムにも同様に当てはまる。システムは一般に、特に手順を実行するように設計された1つ又は複数の機器を含む。システムは以下を含む:
-環境状況を示す画像を表示するための表示要素。この画像は特に、実際の環境の表現である。実際の環境の画像は例えば、写真だけでなく、その環境、特に人、建物、街路、車等が自然に再現された動画表現であると理解される。
-ユーザ入力を検出するため、及び特に提示された環境状況の中のある区画をユーザ入力に基づいて選択するための入力ユニット。この入力ユニットは例えば、タッチスクリーンとして、キーボード若しくはマウス等の別個の入力機器として設計されるか、又は音声コマンド若しくはジェスチャコマンドを受けるように設計される。
-表示ユニットを制御するため、及びユーザ入力を処理するための処理ユニット。処理ユニットは通常、コンピュータユニット、すなわちメモリ、表示要素を制御するためのグラフィックカード、ユーザ入力用インタフェース等の一般的な関連コンポーネントを備えるプロセッサである。処理ユニットはまた、幾つかの異なるハードウェアデバイスに分散させることもできる。
処理ユニットは、プロセスも特徴付ける以下のステップを行うように構成される。コンピュータプログラムは、そのプログラムがシステムにより実行されると、このシステムにユーザ入力に応じて:
a)環境状況が表示要素上に表示され、
b)ユーザ入力に基づいて、環境状況のうちの選択された区画(16)が特定され、ハイライトされ、
c)特定の音状況がユーザの行った選択に基づいて表示され、
d)評価スケールが表示され、それに基づいてユーザは特定の音状況に関する自分の聴力の自己査定の聞こえ値を入力でき、ユーザが入力した聞こえ値が記録され、
e)異なる特定の音状況についてステップa)~d)が繰り返され、聴力がその都度記録され、任意選択により、
f)補聴器のための設定値が、ユーザが入力した聞こえ値に基づいて特定される
ステップを行わせるコマンドを有する。
【0008】
この手順の利点は、ユーザが直感的且つ遊び感覚で操作できる、絵を用いた環境状況の自然な表現及びグラフィクス動画によるユーザインタラクションによって、対話式インタフェースが提供されることである。それと同時に、ユーザの聴覚障害に関する第一の関連情報が、特に異なる環境状況及びしたがって音状況に応じて記録される。
【0009】
評価スケールは、選択された特定の、絵を用いて表現された音状況の画像内に表示され、例えば顔文字の形態の絵文字、等級付けスケール、又はコントロールパネルの表示を含む。好ましくは絵文字が使用される。
【0010】
画像から、特定の音状況に関する特定の区画を繰り返し選択することによって、ユーザは様々な音状況に関する自己査定を行う。これに基づいて、システムは、特に個々の周波数依存振幅機能に関する設定値を特定し、するとそれを用いて補聴器がさらに設定される。
【0011】
提案されるシステム及び提案される方法は、
a)ユーザの難聴の評価においてユーザを支援するために(のみ)使用され、
b)任意選択的に、ステップa)における難聴の評価に基づいて補聴器の設定に加えて使用され、
c)設定は、補聴器、例えば購入する補聴器の最初の基本設定のための(初期)設定入力であってよく、
d)代替的又は追加的に、設定は、ユーザ(装用者)が既に使用している設定済みの補聴器の、例えばその補聴器を新しい聴取状況に適応させるため、特にその補聴器をその装用者の新しい聴取挙動に適応させるための微調整であってよい。
【0012】
システムと方法は例えば、オーディオロジストからの購入プロセス中の試し段階においても使用される。追加的又は代替的に、システムと方法は補聴器の評価及び補聴器の研究に使用される。
【0013】
好ましくは、このシステムと手順では音声サンプルは提供されない。これは、絵を用いて表現される様々な特定の音状況に関してユーザが行う自己査定だけが設定の特定に使用されることを意味する。これに関して、会話、音楽、音、騒音等の音声サンプルを提示し、評価することによるユーザの聴覚障害の「測定」は行われない。
【0014】
好ましくは、システムはローカルデバイス、特にタブレット又はスマートフォン等のポータブル機器を含む。代替的に、機器はローカルPCとすることができる。タブレット、スマートフォン、又はPCにはコンピュータプログラムがインストールされていてよく、それがプロセスを制御する。一般に、ユーザ入力はこのローカルデバイスを介して行われる。ローカルデバイスは、入力要素、表示要素のほか、入力ユニットと処理ユニットの少なくとも一部を含む。第一の実施形態によれば、アプリケーション(コンピュータプログラム)がローカルデバイスにインストールされて、ユーザを支援するための全てのステップを実行する。この場合、ローカルデバイスの処理ユニットがシステムの唯一の処理ユニットである。
【0015】
ローカルデバイスへのインストールの代わりに、ローカルデバイスとリモートデバイスを用いるスプリットシステムが提供される。例えば、ウェブベースのソリューションが使用され、ユーザはこれをインタネットブラウザを介して制御できる。この場合、アプリケーションはリモートデバイス上にインストールされ、又はそこでホストされる。一般に、このようなスプリットシステムの場合、処理ユニットはローカル部とリモート部に物理的に分割される。
【0016】
好ましくは、ユーザの支援は、人、例えばオーディオロジストのような医療従事者の介入なく、電子システムのみによって行われる。
【0017】
好ましい代替案によれば、ユーザは人、例えばオーディオロジストのような医療従事者によって支援される。好ましくは、ユーザと医療従事者は相互に離れた場所にいる。リモートデバイスは別の表示要素を含む。特にこの状況では、表示要素上及び別の表示要素上に同じものが表示される。それによって確実に、オーディオロジストはユーザインタラクションをフォローでき、ユーザとオーディオロジストは同じ絵を見る。
【0018】
好ましくは、画像内でユーザにより選択された区画がハイライトされる。1つの設計変形型によれば、この目的のために例えばいわゆる「スポット方式」が使用され、その場合、選択された領域は光錐によりハイライトされる。
【0019】
好ましくは、表示された画像の中に幾つかの環境状況が描かれ、これらの描かれた環境状況の各々は異なる音シナリオにより特徴付けられる。個々の音シナリオは、ユーザにより選択可能である。したがって、画像は、様々な音シナリオを代表する典型的な実生活の状況を表現する幾つかのエリアを含む。これらの異なるエリア又は環境状況は視覚的に、例えば会話の状況、遊び場、コンサートホール、スポーツアリーナ、レストラン等を表示することによって表現される。これらの異なるエリア/環境状況は様々な音シナリオをカバーする。例えば、4種類以上、好ましくは6種類以上の音シナリオが画像内で示される。
【0020】
音シナリオとは、幾つかの特定の音シナリオが典型的に発生し得る複雑な音環境と理解されたい。特定の音状況は典型的に、1つ又は複数の特定の音源又は1つ又は複数の種類の音源により定義される。
【0021】
音シナリオには、「オフィス」、「コンサートホール」、「子供の遊び場」、「スポーツ施設」、「レストラン」等の音環境が含まれる。
【0022】
音状況の例は、「子供の声」、「会話」、「鳥の鳴き声」、「交通騒音」等である。
【0023】
好ましくは、ユーザが選択した区画、特にユーザが選択した音シナリオが新しい詳細画像として表示される。この詳細画像では、ユーザが選択するための異なる様々な音状況が提供される。ユーザがこれらの特定の音状況のうちの1つを選択すると、この状況は好ましくは再びハイライトされる。特に、この選択された特定の音状況のための評価スケールが表示され、ユーザが入力した聞こえ値が記録される。したがって、この形態のシステムは、特定の音状況のための評価スケールが表示される前にユーザによる多段階選択が行われるように設計される。
【0024】
この方式は、典型的な音シナリオ、例えば子供の遊び場の中で様々な特定の音状況、すなわち特に様々な音源が発生する可能性があること、及びこれらが個別に査定されることに基づく。このようにして、より精密な設定が実現される。これらの様々な特定の音状況には例えば、「会話」、鳥や交通等の「環境音」、又は「子供達の声」が含まれる。
【0025】
好ましくは、別の評価スケールが表示され、それによってユーザは、選択された音状況の自分にとっての関連性を参照値で査定することができる。このようなそれぞれの音状況の関連性の評価により、ユーザの挙動に関する結論を引き出すことができる。
【0026】
代替的に、又はそれに加えて、様々な特定の音状況のユーザにとっての関連性は、ユーザが選択した区画に基づいて、特にユーザが選択した音シナリオに基づいて自動的に導出される。これは、ユーザは表示された全体的画像の中から自分にとって関連性の高い環境状況及び環境シナリオだけを選択するであろうとの考えに基づく。
【0027】
ユーザ入力が評価される。この目的のために、特に以下のステップが実行される。
【0028】
好ましくは、定義されたユーザクラスが保存され、ユーザはユーザの入力に基づいて、特にユーザが選択した区画に基づいて、保存されたユーザクラスのうちの1つに割り当てられる。この割当は、特にユーザが選択した音シナリオに基づいて行われる。選択を通じて、ユーザは自分の総体的挙動に関する、及び自分のライフスタイルに関する何かに気付く。それにより、ユーザを例えば活動的又は内向的人物に分類でき、それもまた設定の選択に影響を与える。
【0029】
好ましくは、ユーザの入力に基づいて、どの特定の音状況において聴力低下が存在し、またそれはどの程度かが自動的に特定される。すると、これに基づいて、このユーザのための設定、特に周波数依存増幅率が導出される。
【0030】
さらに、好ましくは難聴クラスが定義され、ユーザは特定の音状況に関する聞こえ値に基づいて所定の難聴クラスのうちの1つに割り当てられる。難聴クラスは一般に、聴覚障害の種類を分類するものである。これは、各難聴クラスが異なる種類の聴覚障害を定義することを意味する。難聴の考え得るクラスは例えば:
-広帯域高周波数難聴(250Hz~1kHzの周波数範囲と、それに加えて1kH~4kHzの間の高周波数範囲における聴力低下であり、これは特に会話の理解に当てはまる)、
-高周波数急減衰(1kHz~8kHzの高周波数範囲における聴力低下であり、より高い周波数での減衰が強い)、
-伝音性難聴
である。
【0031】
したがって、難聴クラスは異なる周波数範囲における聴力低下を具体的に定義する。
【0032】
特定の音状況の各々に関する聞こえ値により、一般に、多くの場合は特定の音源である選択された特定の音状況と自己査定の聞こえ値からなる数値ペアが特定される。それぞれの特定の音状況は、1つ又は複数の難聴クラスに割り当てることができる。
【0033】
ユーザをある聴覚低下クラスに割り当てるために、第一の方法は、各種の特定の音状況に関する聞こえ値を加算して全体値を形成し、この全体値に基づいてユーザを難聴クラスに割り当てることを含む。
【0034】
より精密な分類のために、以下の方式が好まれる。
【0035】
幾つかの難聴クラスがある音状況に割り当てられ、各難聴クラスは、選択された音状況に特定の重み係数で重み付けされる。特定の音状況の各々はしたがって、その特定の音状況にとっての当該の難聴クラスの重要性を表す重み付けされた難聴クラスにより定義される。重み係数は0~1である。
【0036】
さらに、異なる音状況に関して割り当てられ、重み付けされた難聴クラスは、異なる音状況に関してユーザが入力した聞こえ値で重み付けされる。それゆえ、各音状況について、割り当てられた難聴クラスの各々に関するユーザごとのクラス値が得られる。最後に、各難聴クラスの個々のクラス値が各種の特定の音状況にわたり加算されて、それぞれの難聴クラスの全体的クラス値が得られる。したがって、各難聴クラスについて全体的クラス値が得られる。すると、特定された全体的クラス値に基づいて割当が行われる。
【0037】
例えば、特定の音状況である「会話」は、「広帯域高周波数難聴」の難聴クラスに重み係数1で、また、「高周波数急減衰」の難聴クラスに重み係数0.2で割り当てられる。それに対して、特定の音状況である「子供達の声」は、「広帯域高周波数聴力低下」及び「高周波数急減衰」の難聴クラスに各々重み係数0.5で割り当てられる。
【0038】
この割当はまた、ベクトルとしても理解でき、それによって各特定の音状況は幾つかの要素を有するベクトルにより表現される。各要素はある難聴クラスに対応し、各要素に重み係数が割り当てられる。するとベクトルには、この特定の音状況について入力された聞こえ値が乗じられる。それによって、特定の音状況に関する各難聴クラスのクラス値が得られる。その後、ベクトルを加算することによって、各難聴クラスの全体的クラス値が得られる。その結果は、全体的クラス値又は、ある難聴クラスへの重み付けされた割当の尺度としての結果的な全体的ベクトルである。それによって、より細分化された方式が得られ、その結果、補聴器のより精密な調整が可能となる。
【0039】
難聴クラスのうちの1つへの割当に基づいて、設定値、特に周波数に依存する利得値群が最終的に導出される。これらの設定は例えば、割り当てられた難聴クラスに依存するルックアップテーブル又はアルゴリズムから特定される。
【0040】
それに加えて、危機的音状況が特定され、それに関して状況ごとの聴覚プログラムが事前に定義された聴覚プログラム群から選択され、補聴器に適用される。特に、事前に定義されたパラメータ差値群が選択される。危機的音状況は、割り当てられたユーザクラスに基づいて、及び/又はユーザが自分の聴力が低いと考える特定の音状況に基づいて特定される。これに関して、低いとは、ユーザが自分の聴力が自己査定のために提示された評価スケールの低い方の半分に入ると表明することを意味すると理解されたい。これは一般に、聴力低下によりユーザにとって危機的である音状況を識別するために使用される。より精密なフィッティングは、そのような音状況のために特に設計されたそのような聴覚プログラムを保存することによって、補聴器の動作中に実現される。このような危機的音状況が発生すると、補聴器は特にこの特定の危機的音状況のための特別な聴覚プログラムに切り替えられる。これは典型的に、通常設定からの逸脱を示す差値を提供することによって行われる。聴覚プログラムは標準化された聴覚プログラムであり、特定のユーザに依存しない。好ましくは、補聴器はいわゆる分類器を含み、これは音状況を自動的に区別し、認識することができる。このような危機的音状況が分類器によって認識されると、システムは自動的に特定の聴覚プログラムに切り替わる。
【0041】
好ましくは、ユーザにとって適当な補聴器がそのユーザの入力に基づいて、特に、割り当てられたユーザクラス及び/又は特定された難聴クラスに基づいて選択される。特に、適当な補聴器は、各種の補聴器タイプ(ITE、BTH、RIC、CIC等)から選択される。ライフスタイル情報のほかに、聴覚障害に関する情報も勘案され、それによって、例えばそのユーザにITE(In The Ear:耳介内)型補聴器、RIC/CIC(Receiver/Completely in Canal:レシーバ/完全外耳道挿入)型補聴器、又はBTH(Behind The Ear:耳介背後引掛け)型補聴器の何れを提供すべきかに関する決定を下すことができる。
【0042】
最後に、選択された補聴器が設定され、すなわち特定された設定値でパラメータ化される。補聴器はそれによって自動的に初期設定される。
【0043】
その後、補聴器はそのユーザにより使用可能となる。これは例えば、それをユーザに直接引き渡すことによって行われる。
【0044】
要約すると、本願で提示するコンセプトによれば、特に初心者ユーザのための補聴器の初回設定が容易となり、抑制閾値ができるだけ低く保たれる。このような初心者ユーザは、例えばウェブベースのアプリケーションを介して、適当な補聴器を容易に特定して設定し、試験のためにそれが送信されるようにすることができる。
【0045】
さらなる詳細事項と実施例を、図面に関して以下に説明する。これらは簡略的表現で以下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】補聴器の初期設定中にユーザを対話式に支援するためのシステムのごく簡略化された提示。
図2A】幾つかの環境状況を含む(全体的)画像による表示要素の簡略化表現。
図2B】ユーザの選択にしたがって詳細な画像を表示する、図2Aに示される表示要素。
図3A】第二の変形型による図2Aと同様の表現。
図3B】ユーザにより選択後の、ハイライトされた区画を有する図3Aによる表現。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1に示されるシステム2は、補聴器4の初期設定中にユーザを対話式に支援するために使用される。図1による1つの実施形態において、システム2はタブレット6等のローカルユーザデバイスを含み、これは表示要素8としてのディスプレイを有し、それによって表示要素8はタッチスクリーンとして設計され、それゆえ入力ユニット10を形成する。タブレット6の演算能力により、それは(第一の)処理ユニット12Aも有し、それがユーザ入力を処理する。図1に示される実施形態において、別の処理ユニット12Bを有するリモートデバイス11とのインタネットを介した接続がある。これは、補聴器の製造者又は補聴器の販売店のコンピュータとすることができる。2つの処理ユニット12A、12Bは共同で、方法を実行し、ユーザを対話式に支援するための共通の処理ユニットを形成する。第一の実施形態によれば、人による支援はない。
【0048】
代替的に、人、特にオーディオロジストによる支援がある。特にこの場合、リモートデバイスは別の表示要素13(破線で示される)を有する。表示要素8に示される絵は別の表示要素13にも表示され、それによってオーディオロジストはユーザ入力をフォローできる。
【0049】
ユーザ入力に基づいて、設定値Eが特定され、それが設定のために補聴器4に伝送される。その後、補聴器4はユーザに引き渡される。設定値の特定は、処理ユニット12A、12B側の各々で実行できる。
【0050】
図2A、2Bは、単純なグラフィクス援用支援の第一の実施形態を示す。第二の実施形態は図3A、3Bに示されている。両方の例に共通するのは、少なくとも1つの環境状況を含む画像14が表示要素8に示されることである。どちらの実施形態においても、ユーザは異なる環境状況を選択することができる。
【0051】
図2Aによる第一の実施形態において、画像14は概観画像としてユーザに提示され、その中に様々な環境状況が示され、その各々が特定の音シナリオに関係する。概観画像は実際の画像又は少なくとも実際の動画であり、その中に典型的な日常の状況が示される。これらは、遊び場、コンサートホール、スタジアム、レストラン、オフィス、道路交通等の様々な音シナリオの自然な描写により表現される。
【0052】
図3Aに示される第二の実施形態はドロップダウンメニューを提供し、それによってユーザは異なる環境状況及びそれゆえ、異なる音シナリオを選択できる。図3Aは、ユーザが既に選択を行った状況を示している。この場合、ユーザは「家族の夕食」の音シナリオを選択した。
【0053】
図2Aによる第一の実施形態では、ユーザは概観画像14内に示される音シナリオのうちの1つをクリックすることによって特定の音シナリオを選択する。これを行うために、ユーザは区画16を選択する。選択された区画16は、図2Bに示されるように新たな詳細画像18の中に示される。図の例は、「子供の遊び場」の音シナリオである。この音シナリオには、幾つかの特定の音状況が含まれ、ユーザはこれを選択できる。表示要素はまた評価スケール20も示し、この例ではこれは異なる顔文字で表現されている。ユーザはこれらの顔文字を使って、選択された特定の音状況に関する自分の聴力の自己査定を入力する。選択に応じて、選択された音状況に関する聞こえ値Hが記録される。例えば、各絵文字に数値が割り当てられる。例えば、より高い数値はより低い聞こえを示す。
【0054】
ユーザは、特定の音状況の選択と、好ましくは選択された音シナリオ内の異なる音状況(音源)についての自己査定を繰り返す。追加的に、又は代替的に、ユーザは別の音シナリオに関する自己査定を繰り返す。したがって、多数の数値ペアが得られ、各数値ペアは特定の音状況及び関連する聞こえ値も表す。これらの数値ペアに基づいて、補聴器4の初期設定のための設定値Eが導出される。
【0055】
図3A、3Bによる第二の実施形態において、第一のステップは音シナリオを選択することである。図3Aによる表現において、ユーザは区画16を選択し、それが画像の中でハイライトされる。第二の実施形態では、これはスポット方式により行われ、すなわち選択された区画が光錐により照明されるか、又は画像の残りの部分が暗くされる。評価スケール20がこの実施形態でも表示され、ユーザはこれを使って特定の音状況に関する自己査定を行い、その聞こえ値を記録することができる。図3において、「家族の夕食」という音シナリオの一部として特定の音状況である「男性の声」が選択されている。
【0056】
第二の実施形態において、別の評価スケール22が表示され、ユーザはこれを使って追加の関連性の値Rを入力することができる。ユーザの査定に応じて、関連性の値Rはこの特定の音状況の重要性、すなわち例えば男性の声を理解することがユーザにとってどれだけ重要であるかを示す。
【0057】
第一の実施形態では、このような関連性の値Rもまた、少なくとも黙示的に、すなわち概観画像14の中でユーザが別の音シナリオを選択することによって記録される。選択された音シナリオと、選択されなかった音シナリオにも基づいて、関連性の値Rを黙示的に導出できる。
【0058】
以下の手順がユーザの入力の評価に用いられる。
【0059】
a)ユーザクラスN
第一のステップで、ユーザには事前に定義されたユーザクラスからのユーザクラスNが割り当てられる。この割当は、ユーザが選択した音シナリオに、及び/又は個々の音状況についてユーザが入力した関連性の値Rに基づく。ある特定の音状況は概して典型的な音源、例えば大人の会話、子供達の声、交通騒音、音楽、鳥の鳴き声等に対応する。この情報から、ユーザの習慣に関する結論を引き出すことができ、それによってユーザをあるユーザクラスに割り当てることができる。単純な細分は、例えば「活発な人物」と「内向的な人物」のクラスに行うことができる。
【0060】
b)難聴クラスL
ユーザはまた、難聴クラスLにも割り当てられる。この割当は、ユーザ入力から得られた数値ペア(聞こえ値が割り当てられた音状況)に基づく。
【0061】
単純な割当手順に続き、ユーザが入力した個々の聞こえ値が加算され、全体値が得られる。これは、その人物の聴覚障害の尺度である。
【0062】
難聴クラスLへの割当のためのより精密な手順により重み付けが適用される:ベクトルが特定の音状況(音源)の各々に割り当てられる。このベクトルは、重み係数である個々の要素からなり、その各々が難聴クラスに割り当てられる。例えば、このようなベクトルは2つの要素からなる
v=(L1,L2)
ただし、
L1は難聴クラス1、例えば広帯域高周波数難聴の重み値であり、
L2は難聴クラス2、例えば高周波数急減衰の重み値である。
【0063】
異なる音状況(音源)を例えば以下のベクトルに割り当てることができる:
音状況1、例えば「会話」のV1=(1.0,0.2)
音状況2、例えば「子供達の声」のV2=(0.5,0.5)及び
音状況3、「鳥の鳴き声」のV3=(0.2,1.0)。
【0064】
例えば、広帯域高周波数でのある程度の聴力減衰を来し、それによって250Hz~1kHzの範囲での聴力低下と1kHz~4kHzの範囲での聴力低下を有する初心者ユーザは典型的に、会話についていくことに問題があり、それは人間の声が1~4kHzの範囲内にあるからである。子供達の声にはより高周波数の成分が含まれ、鳥の鳴き声はさらに高い。この初心者ユーザはしたがって、人との会話において最も強い制約を体験することになる。したがって、この人物は例えば、音状況1(会話)に聞こえ値H1=4、音状況2(子供達の声)に聞こえ値H2=3、及び音状況3(「鳥の鳴き声」)に聞こえ値H3=2を割り当てるであろう。個々のベクトルは重み付けされ、特にこれらの聞こえ値H1、H2、H3が乗じられる。それゆえ、以下のベクトル加算の結果、全体的ベクトルが得られ、その個々の要素は各々、それぞれの難聴クラスの全体的クラス値により形成される:
V1+3V2+2V3=(5.9;4.2)
割り当てられた聴取値は、広帯域高周波数難聴を有するユーザの査定の典型的な結果であることがわかる。これに関して、このユーザには「広帯域高周波数難聴」の難聴クラスが割り当てられる。
【0065】
それに対して、第二のユーザは例えば「高周波数急減衰」を来し、250Hz~1kHzの範囲内ではほとんど聴力低下がないものの、1kHz~8kHzの範囲では重度の聴力低下を有する。この人物には、上記のユーザより大人とのコミュニケーションにおける問題は少ない。それに対して、この人物には子供達の声が聞こえにくく、その難聴は鳥の鳴き声の聞こえにおいて特に顕著である。したがって、この人物は例えば以下の聞こえ値、すなわちH1=0、H2=4、H3=5を選択することになり、その結果、以下のようにベクトル加算による全体的ベクトルが得られる:
V1+4V2+5V3=(3.0;7.0)。
したがって、広帯域高周波数難聴クラスの全体的クラス値3.0と、高周波数急減衰難聴クラスの全体的クラス値7.0がある。この結果は、高周波数急減衰を有する人物の査定の典型的な結果である。
【0066】
聞こえクラスのこの重み付け加算により、難聴クラスのためのより細分化された査定が可能となる。何れのユーザも、全体値(個々の聞こえ値の合計)は9であるが、聴覚障害は異なる。
【0067】
c)設定値E
最後に、設定値Eが難聴クラスL及び/又はユーザクラスNに基づいて特定される。特に、利得設定と、必要であれば圧縮設定の、周波数に依存する群が特定される。これは例えば、ルックアップテーブルによって、又は他の方法、例えばアルゴリズムによって行われ、そのためこの方法はユーザが使用するオーディオシステムにより左右されない。
【0068】
この方法の重要な特徴はまた、事前に定義された標準設定値E(のみ)が使用され、これは異なるユーザクラスN及び/又は異なる難聴クラスLのみのために設計される。それに加えて、設定値の選択は専らユーザが行うユーザ入力に基づく。例えば音声サンプルを提示し、評価することによる聴力低下の測定は行われない。
【0069】
d)聴覚プログラム
このようにして得られた設定値Eに加えて、好ましくは1つ又は複数の特定の聴覚プログラムが、特にユーザが危機的と査定した音シナリオ又は音状況について選択される。例えば、ユーザが特定の音シナリオ、例えば「オフィス」又は「コンサートホール」の音状況にマイナスの査定を行った場合、この音シナリオのための特定の聴覚プログラムが予め定義された聴覚プログラムの群から選択され、保存される。音シナリオ又は音状況は、ユーザがその音状況についてマイナスの自己査定を行った場合、例えば聞こえ値が閾値を超えた場合に、マイナスであると考えられる。音シナリオの場合、マイナスの査定は、例えば、この音シナリオに関してユーザが入力した1つ若しくは複数の聞こえ値又はそれらの総計が明示された全体値を超えた場合に与えられる。特定の聴覚プログラムは典型的に、差値群により定義される。これらは、標準設定Eに差値を提供する。このような聴覚プログラムがアクティベートされると、標準設定はその差値によって調整される。聴覚プログラムはまた、ユーザに個別に適応されていない、事前に定義された標準聴覚プログラムでもある。
【0070】
補聴器4は典型的に、いわゆる分類器を備え、これは異なる音シナリオ又は音状況を識別して、その後、対応する、割り当てられる聴覚プログラムを選択することができる。
【0071】
e)補聴器
その後のステップで、1つの適当な補聴器又は複数の適当な補聴器がユーザ入力に基づいて特定される。好ましくは、特定されたユーザクラスNと難聴クラスLの両方が考慮される。最も単純なケースでは、補聴器はルックアップテーブルを使って選択される。特に、補聴器4の以下の要素が考慮される:デザイン、大きさ(フォームファクタ)、増幅、複雑さ、及び使いやすさ。それゆえ、難聴クラスLによって、候補となる補聴器の種類の選択肢が限定される。重度の難聴を有する人の場合、強力な補聴器が必要である。ユーザクラスNはまた、ユーザのライフスタイルに関する情報も提供する。
【0072】
様々な種類の補聴器4は典型的に、異なる顧客グループ及びそれゆえユーザクラスNに合わせて調整され、これらの特定の顧客グループのための特別な特徴を有する。したがって、ユーザクラスNの割当に基づき、基本的セットアップに加えて例えば以下の特徴が考慮される:
-適応型指向性マイクロフォン、
-雑音抑圧(マイクロフォン雑音抑圧、風雑音抑圧等)
-音声スムージング、すなわち、短い干渉ピーク(例えば、スプーンがコーヒーカップに当たった場合)を排除する音響エッジスムージングの一種、
-高周波数会話成分をより低周波数範囲に変換する周波数圧縮(これによって、高周波数範囲において非常に重度の聴力低下を有する人々はこれらの成分をより低い周波数範囲で聞くことができる)。
【0073】
信号処理以外の特徴には、特に以下の要素が含まれる:
-補聴器の種類(ITE、ITE、RIC、CIC等)
-筐体の形状とデザイン
-色、汚れ防止コーティング、防沫、防水等の筐体特性、
-リモートコントロールによる操作、補聴器のリモートコントロールとしてのスマートフォンの使用等の通信機能;電話をかける、音楽を再生するため等のスマートフォン等のオーディオストリーミングデバイスとの通信、及びヘッドセット/ヘッドフォンとしての補聴器の使用。
【0074】
f)設定と引き渡し
すると、以前に特定された設定値Eと、該当する場合は選択された聴覚プログラムが、選択された補聴器4(又は複数の補聴器4)に伝送される。これは、選択された補聴器4が、ユーザがその補聴器4を使用できるようにする初期設定で設定されることを意味する。
【0075】
選択され、予備設定された補聴器がユーザに引き渡される。原則として、選択のために幾つかの異なる補聴器を供給することができる。
【符号の説明】
【0076】
2 システム
4 補聴器
6 タブレット
8 表示要素
10 入力ユニット
11 リモートデバイス
12A、12B 処理ユニット
13 別の表示要素
14 画像
16 区画
18 詳細画像
20 評価スケール
22 別の評価スケール
E 設定値
H 聞こえ値
R 関連性の値
N ユーザクラス
L 難聴クラス
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
【外国語明細書】