(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095761
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】磁気筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 8/22 20060101AFI20220621BHJP
B43L 1/00 20060101ALI20220621BHJP
B43K 23/008 20060101ALI20220621BHJP
H01F 7/02 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
B43K8/22
B43L1/00 C
B43K23/008
H01F7/02 U
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054920
(22)【出願日】2022-03-30
(62)【分割の表示】P 2018059123の分割
【原出願日】2018-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】504462711
【氏名又は名称】Zero Lab株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】古賀 律生
(57)【要約】
【課題】 利便性の高いペン型の磁気筆記具を提供する。
【解決手段】 磁気筆記具1は、ペン型のハウジング10を含み、ハウジング10の内部空間12には、バッテリー20、制御回路25、モータ30、磁石40が配置される。長手方向に延在する円柱状の磁石40は、軸中心C上でモータ30に回転可能に接続され、モータ30は、制御回路25からの駆動信号に応じて回転される。これにより、ハウジング10の長手方向の領域Lで発生された磁界により磁気パネル上の文字等を広い面積で消去することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気パネルに描画された文字、図形等を消去可能な磁気筆記具であって、
一方の端部と、当該一方の端部に対向する他方の端部とを有し、長手方向に延在する内部空間が形成されたハウジングと、
前記内部空間内に長手方向に沿うように配置され、回転軸を中心に回転可能である第1の磁石とを有し、
第1の磁石は、前記回転軸の径方向にS極とN極とが着磁され、少なくとも前記ハウジングの長手方向において磁気パネル上の文字等を消去可能である、磁気筆記具。
【請求項2】
第1の磁石は、前記ハウジングの一方の端部において磁気パネル上の文字等を消去可能である、請求項1に記載の磁気筆記具。
【請求項3】
前記磁気筆記具はさらに、内部空間内の前記一方の端部側に配置され、かつ前記回転軸を中心に回転可能な第2の磁石を含み、
第2の磁石は、前記回転軸の径方向にS極とN極が着磁され、
前記ハウジングの一方の端部において磁気パネル上の文字等を消去可能である、請求項1に記載の磁気筆記具。
【請求項4】
磁気筆記具はさらに、内部空間内の長手方向に延在する筆記用部材を含み、筆記用部材の先端には磁性体部材が取り付けられ、前記磁性体部材は、磁気パネル上に描画するとき、ハウジングの一方の端部から突出可能である、請求項1または2に記載の磁気筆記具。
【請求項5】
前記筆記用部材は、第1および第2の磁石の中央部分を通過可能である、請求項3に記載の磁気筆記具。
【請求項6】
前記筆記用部材がハウジングの一方の端部から突出したとき、第2の磁石と磁気パネルとの間の第1の距離は、第2の磁石の磁界により磁気パネル上の文字等が消去されない距離である、請求項3または4に記載の磁気筆記具。
【請求項7】
前記筆記用部材がハウジングの一方の端部から突出していないとき、第2の磁石と磁気パネルとの第2の距離は、第2の磁石の磁界により磁気パネル上の文字等が消去されない距離である、請求項3ないし5いずれか1つ記載の磁気筆記具。
【請求項8】
前記筆記用部材がハウジングの一方の端部から突出していないとき、第1の磁石と磁気パネルとの第3の距離は、第1の磁石の磁界により磁気パネル上の文字等が消去されない距離である、請求項3ないし6いずれか1つに記載の磁気筆記具。
【請求項9】
ハウジングを磁気パネルに略平行に近接させたとき、第1の磁石は、磁気パネルから第4の距離に配置され、第4の距離は、第1の磁石の磁界により磁気パネル上の文字等を消去することができる距離である、請求項1ないし7いずれか1つに記載の磁気筆記具。
【請求項10】
前記磁気筆記具はさらに、第1の磁石を回転させるためのモータ、およびバッテリーをハウジング内に含む、請求項1ないし8いずれか1つに記載の磁気筆記具。
【請求項11】
前記筆記用部材は、ハウジング内に複数収容され、複数の筆記用部材は、異なる線種を描画するための磁性体部材を先端に含み、選択された1つの筆記用部材がハウジングの一方の端部から突出可能である、請求項1ないし10いずれか1つに記載の磁気筆記具。
【請求項12】
表示用の磁気パネルに磁界を作用させ、任意の文字、図形、記号等を描画することができる磁気筆記具であって、
前記磁気筆記具の先端部に取り付けられ、磁性体材料から構成されるホルダーと、
前記ホルダー内に配置された少なくとも1つの磁石とを有し、
前記ホルダーは、開口が形成された底部と、当該底部に接続された側部とを有し、前記磁石は、前記底部および側部によって形成された空間内に収容され、
前記磁石の表面は、前記底部の開口によって露出される、磁気筆記具。
【請求項13】
前記底部の開口の大きさは、磁石からの磁力線の半径方向の大きさを調整する、請求項12に記載の磁気筆記具。
【請求項14】
前記底部および開口は円形状であり、前記側部は円筒状である、請求項13に記載の磁気筆記具。
【請求項15】
前記磁石の先端部の表面は、前記底部の厚さの分だけ前記底部の表面から窪んだ位置にある、請求項12ないし14いずれか1つに記載の磁気筆記具。
【請求項16】
前記磁石の先端部の表面は、前記側部から折り曲げられた底部の厚さ分だけ窪んだ位置にある、請求項12ないし14いずれか1つに記載の磁気筆記具。
【請求項17】
前記底部の開口から露出する磁石の表面は、磁気を透過可能な材料から構成された保護部材によって保護されている、請求項12ないし15いずれか1つに記載の磁気筆記具。
【請求項18】
磁気筆記具は、把持用のグリップ部と、
前記グリップ部の一方の端部に設けられた回転機構とを有し、
前記ホルダーは、前記回転機構を介してグリップ部に接続される、請求項12ないし17いずれか1つに記載の磁気筆記具。
【請求項19】
前記ホルダーは、グリップ部の長手方向の軸中心に対して直交する方向において回転可能である、請求項18に記載の磁気筆記具。
【請求項20】
請求項1ないし19いずれか1つに記載の磁気筆記具と、
磁気パネルと、
を有する磁気筆記システム。
【請求項21】
表示用の磁気パネルに磁界を作用させ、任意の文字、図形、記号等を描画することができる磁気筆記具の先端部に取り付けられる磁性体ホルダーの製造方法であって、
磁性体材料からなる部材を加工し、底部と、当該底部に接続された側部とを含むホルダーを形成し、
前記底部に貫通する開口を形成し、
前記ホルダーの開放端から、前記底部と前記側部によって包囲された空間内に磁石を挿入し、当該磁石の先端面を前記底部に当接させる、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性を帯びた表示体を含む磁気パネル上に文字、図形、記号等を描画したり、描画した文字等を消去することができる磁気筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
磁性を帯びた表示体を含む磁気パネルに対して先端部に磁石を取り付けた磁気ペンを描画させ、磁気ペンからの磁界を表示体に作用することで磁気パネル上に所望の文字、図形、記号等を描画することができる。例えば、特許文献1は、磁気パネルにかかる筆圧を緩和する磁気ペンを開示している。また、特許文献2ないし4は、磁性粒子をマイクロカプセルに封入して記録層を作成する磁気パネルを開示している。さらに、特許文献5は、磁界を変化させることで磁気パネルに描画された文字等を消去する磁気消去具を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-935号公報
【特許文献2】特開2007-256891号公報
【特許文献3】特許第2717536号公報
【特許文献4】特許第4089808号公報
【特許文献5】特許第6213886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のペン型の磁気消去具は、ペン先を利用して狭い面積を消去するには適しているが、比較的大きな面積を消去する場合には、磁気消去具を磁気パネル上で何度も移動させなければならない。また、磁気パネルへの描画を行うとき、ユーザーは、描画する線種に応じて磁気ペンを持ち替える必要があり、描画した文字等を訂正する場合には、磁気ペンから磁気消去具に持ち替えなければならず、利便性に欠けるという課題がある。
【0005】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、消去機能を改善し、利便性の高い磁気筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る磁気筆記具は、磁気パネルに描画された文字、図形等を消去可能なものであって、一方の端部と、当該一方の端部に対向する他方の端部とを有し、長手方向に延在する内部空間が形成されたハウジングと、前記内部空間内に長手方向に沿うように配置され、回転軸を中心に回転可能である第1の磁石とを有し、第1の磁石は、前記回転軸の径方向にS極とN極とが着磁され、少なくとも前記ハウジングの長手方向において磁気パネル上の文字等を消去可能である。
【0007】
ある実施態様では、第1の磁石は、前記ハウジングの一方の端部において磁気パネル上の文字等を消去可能である。ある実施態様では、前記磁気筆記具はさらに、内部空間内の前記一方の端部側に配置され、かつ前記回転軸を中心に回転可能な第2の磁石を含み、第2の磁石は、前記回転軸の径方向にS極とN極が着磁され、前記ハウジングの一方の端部において磁気パネル上の文字等を消去可能である。ある実施態様では、磁気筆記具はさらに、内部空間内の長手方向に延在する筆記用部材を含み、筆記用部材の先端には磁性体部材が取り付けられ、前記磁性体部材は、磁気パネル上に描画するとき、ハウジングの一方の端部から突出可能である。ある実施態様では、前記筆記用部材は、第1および第2の磁石の中央部分を通過可能である。ある実施態様では、前記筆記用部材がハウジングの一方の端部から突出したとき、第2の磁石と磁気パネルとの間の第1の距離は、第2の磁石の磁界により磁気パネル上の文字等が消去されない距離である。ある実施態様では、前記筆記用部材がハウジングの一方の端部から突出していないとき、第2の磁石と磁気パネルとの第2の距離は、第2の磁石の磁界により磁気パネル上の文字等が消去されない距離である。ある実施態様では、前記筆記用部材がハウジングの一方の端部から突出していないとき、第1の磁石と磁気パネルとの第3の距離は、第1の磁石の磁界により磁気パネル上の文字等が消去されない距離である。ある実施態様では、ハウジングを磁気パネルに略平行に近接させたとき、第1の磁石は、磁気パネルから第4の距離に配置され、第4の距離は、第1の磁石の磁界により磁気パネル上の文字等を消去することができる距離である。ある実施態様では、前記磁気筆記具はさらに、第1の磁石を回転させるためのモータ、およびバッテリーをハウジング内に含む。ある実施態様では、前記筆記用部材は、ハウジング内に複数収容され、複数の筆記用部材は、異なる線種を描画するための磁性体部材を先端に含み、選択された1つの筆記用部材がハウジングの一方の端部から突出可能である。また、本発明に係る磁気筆記システムは、上記構成の磁気筆記具と、磁気パネルとを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ハウジングの内部空間内に長手方向に第1の磁石を回転可能に収容したことにより、ハウジングの長手方向に沿った比較的大きな面積で磁気パネル上の文字等を一括して消去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1(A)は、本発明の第1の実施例に係る磁気筆記具の斜視図、
図1(B)は、そのA-A線断面図である。
【
図2】
図2は、本実施例による磁石の他の取り付け例を説明する図である。
【
図3】磁気パネルに描画された文字等を消去する一例を示す図である。
【
図4】本発明の第2の実施例に係る磁気筆記具の断面図である。
【
図5】本発明の第3の実施例に係る磁気筆記具の斜視図を示す図である。
【
図7】本発明の第3の実施例による筆記用部材が押し出された状態を示す図である。
【
図8】本発明の第3の実施例による磁気筆記具で描画を行うときの例を示す図である。
【
図9】本発明の第3の実施例に係る磁性体ホルダーの詳細を説明する図である。
【
図9A】本発明の第3の実施例に係る磁性体ホルダーの変形例を示す図である。
【
図10】第3の実施例に係る磁気筆記具の使用例を示す図である。
【
図11】第3の実施例に係る磁気筆記具の使用例を示す図である。
【
図12】第3の実施例に係る磁気筆記具の使用例を示す図である。
【
図13】本発明の第4の実施例に係る磁気筆記具の構成を示す断面図である。
【
図14】第4の実施例に係る磁気筆記具の使用例を示す図である。
【
図15】本発明の第5の実施例に係る磁気筆記具の使用例を示す図である。
【
図16】第6の実施例に係る磁気筆記具の構成を示す図である。
【
図17】第7の実施例に係る磁気筆記具の構成を示す図である。
【
図18】第7の実施例に係る磁気筆記具の先端部拡大図である。
【
図19】第7の実施例に係る磁気筆記具の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。本発明の磁気筆記具は、ペン型のハウジング内に回転可能に取り付けられた磁石を有し、磁気パネルまたは磁気シート上に描画された文字、図形、絵等を消去する機能を有する。さらに本発明の磁気筆記具は、磁気パネル上に文字、図形、絵等を描画する機能を備える。なお、図面に記載された各部の構成は、説明を容易にするために例示されたものであり、実際の製品とは大きさ等が異なる点に留意すべきである。
【実施例0011】
図1(A)は、本発明の第1の実施例に係る磁気筆記具の全体を表す斜視図を示す図、
図1(B)は、そのA-A線断面図である。本実施例に係る磁気筆記具1は、ペン型の細長い形状のハウジング10を有する。ハウジング10は、ユーザーによって把持される部分を提供し、例えば、円筒形状を有する。但し、ハウジングの外形は、三角形状、その他の多角形状であってもよい。また、ハウジング10は、ユーザーが持ち易くなるように、一部の凹部や凸部などを含むものであってもよい。
【0012】
ハウジング10は、磁界を透過可能な材料、例えば、プラスチックなどから構成される。ハウジング10は、一方の端部10Aと、他方の端部10Bとを有し、一方の端部10Aから他方の端部10Bに向けて長手方向に延在する。ハウジング10の内部には、
図1(B)に示すように、長手方向に沿って内部空間12が形成され、内部空間12には、バッテリー20、制御回路25、モータ30、磁石40が収容される。
【0013】
ある実施態様では、磁石40は円柱状でありし、N極とS極とがその径方向に着磁される。磁石40は、軸方向に長さLを有し、その一方の端部が、ハウジング10の一方の端10Aに近接され、他方の端部が、モータ30の回転軸32に直接またはギアを介して接続される。モータ30の回転軸32は、ハウジング10の長手方向の軸中心Cと一致してもよいし、あるいは軸中心Cと略平行である。磁石40もまた、ハウジング10の長手方向の軸中心Cと一致してもよいし、あるいは軸中心Cからオフセットされていてもよい。
【0014】
制御回路25は、モータ30の動作を制御するための回路素子を含む。ある実施態様では、制御回路25は、ハウジング10に設けられた入力スイッチ(図示省略)に応答してモータ30の起動、停止を行うことができる。また、ある実施態様では、制御回路25は、マイクロコントローラを含み、マイクロコントローラは、ユーザー入力に応答して、自身のROM等に格納されたプログラムによりモータ30の起動、停止、回転速度、回転時間を制御することができる。
【0015】
バッテリー20は、制御回路25およびモータ30を動作させるための電力を供給する。ハウジング10の他方の端部10Bには、バッテリー20の挿入、または交換をするための開閉蓋22が形成される。開閉蓋22は、例えば、ネジやフック等によりハウジング10に開閉可能に取り付けられる。
【0016】
次に、磁石40の他の取り付け例について説明する。
図1に示す態様では、磁石40は、モータ30の回転軸32に接続されるが、これ以外にも、
図2(A)に示すように、磁石40をリンク状(環状)に構成し、磁石40の中心に筒状の支持部材41が挿入され、支持部材41がモータ30によって回転される。支持部材41は、例えば、金属等の磁性体材料、あるいはプラスチック等の非磁性体材料から構成される。磁石40と支持部材41とは、嵌合により固定されてもよいし、あるいは接着剤により磁石40と支持部材41とを固定してもよい。磁石40および支持部材41を中空にすることにより重量を減らし、モータ30の駆動負荷を軽減させることができる。
【0017】
また、
図2(B)に示すように、円筒状の支持部材41の対向する側に一対の磁石40A、40Bを取り付けるようにしてもよい。磁石40A、40Bは、例えば矩形状を有し、S極およびN極が厚さ方向に着磁されている。磁石40A、40Bは、例えば、接着剤により支持部材41の外周に固定される。
【0018】
次に、磁気筆記具1による消去例を
図3に示す。同図に示すように、磁気パネル100は、磁界を透過可能な透明なシートであって、かつ磁気パネルの表示面を構成する表面シート110、表面シート110と対向する裏面シート120、表面シート110と裏面シート120との間の空間内に2次元的または3次元的に配置された複数のマイクロカプセル130を含んで構成される。
【0019】
磁気パネル100は、表面シート110側から磁界を作用させて描画した文字等を消去することができるタイプ、あるいは裏面シート120側から磁界を作用させて描画した文字等を消去することができるタイプのいずれであってもよい。
【0020】
ユーザーは、ハウジング10の軸中心Cが磁気パネル100の表面と略平行になるように、かつハウジング10からの磁界が作用して文字等を消去できるような表面シート110との距離になるように、磁気筆記具1を把持し、次いで、磁石40を回転させる。磁石40の回転により磁界が変化し、変化した磁界が磁気パネル100に作用し、消去が可能になる。このとき、磁石40は、ハウジング10の長手方向に距離Lで延在するため、消去可能な範囲は距離Lで規定される。次いで、ユーザーは、磁気筆記具1を水平方向に移動させることで、磁気パネル上の所望のエリアを消去することができる。
【0021】
図1(C)は、第1の実施例の変形例である。同図に示すように、軸中心Cの長手方向の延在する磁石40の端部を、ハウジング10の一方の端部10Aが近接される。この場合、磁石40の径を、
図1(B)のときよりも小さくすることで、磁石40の端部をハウジング10の一方の端部10Aにより近接させることができる。その結果、磁石40の端部からの磁力線40Aがハウジング10の一方の端部10Aから発生し、ハウジング10の端部10Aを利用した小範囲の消去を行うことが可能になる。この場合、
図3に示すように、ハウジング10の一方の端部を磁気パネル100に当接させ、磁気筆記具を水平方向に移動させることで、比較的小範囲の消去を行うことができる。
【0022】
次に、本発明の第2の実施例に係る磁気筆記具について説明する。
図4(A)は、第2の実施例に係る磁気筆記具の断面図(第1の実施例のときと同じ断面)である。本実施例に係る磁気筆記具1は、磁石40に加え、磁石42を備えている。磁石42は円柱状であり、N極とS極とがその径方向に着磁される。磁石42は、磁石40よりも径が小さく、磁石40と同軸上に配置され、磁石40と同時に回転される。
【0023】
磁石42の一方の端面が磁石40の端面に接触され、他方の端面がハウジング10の一方の端部10Aに近接するように配置される。但し、磁石42は、磁石40に必ずしも接触する必要はなく、回転軸等を介して磁石40から離間されて配置されてもよい。
【0024】
磁石42のN極からS極に向かう磁力線42Aは、ハウジング10の一方の端部10Aから扇状に突出する。モータ30により磁石40、42が回転されたとき、磁石42の磁力線42A、つまり磁界が変化する。
【0025】
ユーザーは、例えば、
図4(B)に示すように、ハウジング10の一方の端部10Aを磁気パネル100上に接触させることで、磁石42の磁力線42Aが磁気パネル100に作用し、ハウジング10の先端部の小さな範囲内で文字等を消去することができる。このとき、磁石40からの磁界は、磁気パネル100からの距離が一定以上であるため、磁気パネル100には事実用影響を及ぼさない。
【0026】
次に、本発明の第3の実施例に係る磁気筆記具について説明する。
図5は、第3の実施例に係る磁気筆記具の斜視図、
図6は、そのA1-A1線断面図である。第3の実施例に係る磁気筆記具1Aはさらに、ハウジング10の外側から操作可能なツマミ50と、磁石40の速度調整用のギア60、70と、筆記用部材80を含む。
【0027】
ハウジング10の一方の端部10Aには、内部空間12に連結され、かつハウジング10の軸中心Cの方向に円形状の開口14が形成されている。開口14には、例えば、
図2(A)、(B)に示すような円筒状の支持部材41の一方の端部が挿入され、支持部材41の他方の端部は、図示しない軸受部によって回転可能に支持されている。支持部材41の内部には、細長い軸方向に延在する円柱状の筆記用部材80が挿入される。筆記用部材80は、公知の押出しロック機構により、ハウジング10の開口14から突出したり、あるいは開口14内に収容される。磁気パネル上に文字等を描画するとき、筆記用部材80は、押出しロック機構により、
図7に示すように開口14から一定の長さで突出する。ツマミ50は、押出しロック機構の一部であり、押出し部を操作することにより筆記用部材80が開口14から突出した状態にあるとき、ツマミ50を操作することで筆記用部材80を開口14内に収容させることができる。
【0028】
筆記用部材80は、任意の材料で構成することができるが、その先端には、筆記用の磁性体ホルダー82が取り付けられる。磁性体ホルダー82の詳細は、後述する。
【0029】
モータ30の回転軸には、ギア60が接続され、ギア60は、磁石40の端部に接続されたギヤ70に噛合する。ギア60、70のギア比を適宜選択することで、磁石40、42の回転速度を調整することができる。ある実施態様では、モータ30の回転軸の回転速度が低速になるようなギア比が選択される。また、モータ30と磁石40の回転軸との間にギアを介在させることでモータ30のレイアウトの自由度を高めることができる。
【0030】
図8は、筆記状態を示す図である。ハウジング10の一方の端部10Aから筆記用部材80が突出され、筆記用部材80が磁気パネル100上に接触または近接される。このとき、筆記用部材80の先端の磁性体ホルダー82からの磁界が磁気パネル100に作用し、筆記用部材80の移動軌跡に応じた文字や図形等が描画される。
【0031】
次に、筆記用磁性体ホルダー82の詳細について
図9ないし
図9Cを参照して説明する。
図9(A)は、磁性体ホルダーの概略断面図、
図9(B)は、磁性体ホルダーを底面側から見た図である。磁性体ホルダー82は、概ね円筒状のホルダー本体84と、ホルダー本体84内に収容される磁石86とを有する。ホルダー本体84は、鉄等の磁性体材料から構成され、円形状の底面84Aと、円形状の底面84Aに接続された円形状の側面84Bとを有する。底面84Aおよび側面84Bは、円柱状の内部空間を形成し、この内部空間内に磁石86を保持する。磁石86の形状は、例えば、内部空間の形状に倣うような円柱状であり、その軸方向にS極とN極とが着磁されている。ホルダー84の底面84Aには、開口84Cが形成され、磁石86の一部を露出させる。開口84Cは、例えば、筆記用部材80の軸中心と同心の円形状である。
【0032】
次に、磁性体ホルダーの製造方法の一例を示す。前駆体として厚さTの金属部材90が用意され、金属部材90は、
図9(C)に示すように、塑性加工(曲げ加工、押出し成形、絞り加工、切削加工など)によりカップ形状に加工される。加工された金属部材90の底部92および側部94は、概ね厚さTである。但し、切削加工を行った場合には、底部92の厚さを、側部94の厚さと異ならせることが可能である。次に、
図9(D)に示すように、直径Wの大きさで底部92打ち抜き加工またはドリル加工し、底部92に円形状の開口94を形成する。次に、
図9(E)に示すように、金属部材90の上方の開放端から、底部92と側部94とによって形成された内部空間内に円柱状の磁石86が挿入される。こうして、
図9(A)に示すような磁性体ホルダー82が得られる。
【0033】
磁気パネル上に文字等を描画するとき、筆記用部材80は、
図7、
図8に示すように、ハウジング10の一方の端部10Aから突出される。このとき、ホルダー本体84の底面84Aに形成された開口84Cの大きさによって、磁石86が磁気パネルに作用する磁力線または磁界が調整される。つまり、ホルダー本体84は、磁性材材料から構成されるため、底面84Aが磁気シールドとして作用し、開口84CのサイズWが大きくなれば、それだけ、磁石86の磁力線は、半径方向に広がることができ、他方、開口84CのサイズWが小さくなれば、それだけ、磁石86の磁力線は、半径方向に広がることができなくなる。開口84CのサイズWを適切にすることで、磁気パネル上に描画される文字や図形等の線幅、線種を調整することができる。
【0034】
さらに、磁石を微細化することは非常に困難であるが、本実施例によれば、ホルダー本体84の開口84CのサイズWを小さくすることで、事実上、微細化された磁石を得ることができるという利点がある。
【0035】
また、磁石86の表面は、底面84Aの表面から厚さTだけオフセットされる。磁石86の表面を底面84Aの表面からオフセットさせることで、磁石86の磁力線が必要以上に半径方向に広がるのが抑制され、これにより、描画された文字や図形の輪郭のエッジが不鮮明なるのが防止される。本実施例では、磁石86のオフセット量の調整、または磁石86の位置決め作用は、実質的に不要である。上記したように、前駆体の底部92と側部94とによって形成された内部空間内に磁石86を挿入すれば、底部92の厚さTによって磁石86のオフセット量を保証することができる。
【0036】
図9(F)は、磁気ホルダーの変形例である。上記の例では、磁石86の表面が底面84Aの開口84Cによって露出されるが、磁石86の表面を保護する場合には、開口84Cが、磁界を透過可能な材料によって構成された保護部材88によって充填される。磁石86の表面が露出された状態であると、例えば、空気中の磁性を帯びた粉塵、塵、ほこり等が磁石86の表面または開口84C内に付着し、これにより、開口84CのサイズWから生じる磁力線または磁界が弱まってしまい、結果として、鮮明が文字等を描画することができなくなる可能性がある。また、そのような磁性を帯びた粉塵等を磁石86の表面から取り除くのは非常に手間がかかる。描画時、磁性体ホルダー82は磁気パネル上を摺動されるため、保護部材88は、底面84Aと同一平面からそれよりも幾分窪むことが望ましく、これにより、磁気パネルの上面シート110が損傷するのが防止され、また、磁気筆記具1を滑らかに摺動させることができる。なお、ホルダー本体84は、塑性加工する以外にも、金型成形や切削加工により形成されるものであってもよい。
【0037】
次に、磁性体ホルダーの用いる磁石の変形例を
図9Aに示す。同図(A)、(B)に示す磁性体ホルダーは、N極とS極とが径方向に着磁する磁石86Aを用いた例である。
同図(C)、(D)は、円柱状の2つの磁石86C-1、86C-2をホルダー本体84内に収容する例を示し、同図(E)、(F)は、円柱状の4つの磁石86D-1、86D-2、86D-3、86D-4をホルダー本体84内に収容する例を示している。なお、磁石の形状、数、配置は、上記に限定されるものではなく、これ以外の形状、数、配置であってもよい。
【0038】
第3の実施例によれば、磁気筆記具1Aは、磁石40および40による消去機能に加えて、筆記用部材80による描画機能を備えている。
図10ないし
図12に、第3の実施例による磁気筆記具1Aの使用例について説明する。
【0039】
磁気パネル100上への描画を行うとき、筆記用部材80の先端の磁性体ホルダー82がハウジング10の一方の端部から突出される。このとき、磁石42は、磁気パネル100に磁気作用を及ぼすことがない高さh3に維持される。言い換えれば、磁性体ホルダー82が突出する距離は、磁石42の高さh3を維持することができるように設計される。
【0040】
図11は、ハウジング10のペン先を利用して磁石42による消去を行う場合を示している。このとき、磁性体ホルダー82は、開口14よりも内部に収容された状態にあり、例えば、磁性体ホルダー82の表面は、ハウジング10の一方の端部10Aの表面からΔkだけオフセットする。オフセット量Δkにより、磁性体ホルダー82からの磁力線または磁界が十分に表示パネル100に作用されなくなる。一方、磁石42から磁気パネル100までの高さh1は、磁石42の磁界または磁力線が磁気パネル100に十分に作用することができる距離である。この状態で磁石42を回転させると、ハウジング100のペン先の一定範囲内で文字等を消去することができる。また、磁石40から磁気パネル100からまでの高さh2は、磁石40の磁力線が磁気パネル100に十分作用することができない距離である。
【0041】
図12は、ハウジング10の長手方向の領域を利用して磁石40による消去を行う場合を示している。ハウジング10の軸中心Cが磁気パネル100の表面に略平行にかつ高さh4に維持される。高さh4は、磁石40の磁界または磁力線が磁気パネル100に十分に作用することができる距離である。この状態で磁石40を回転させると、磁石40の長手方向の距離Lの範囲で文字等を消去することができる。
【0042】
なお、上記の使用例では、磁石40、42を回転させる場合を説明したが、磁石40、42を回転させなくても文字等を消去することができることに留意すべきである。勿論、磁石40、42を回転させた方が磁界が変化することで、万遍なく均一に消去を簡単に行うことができるが、ユーザーが磁気筆記具を適宜移動させれば、それと同等の消去を行うことも可能である。
【0043】
次に、本発明の第4の実施例に係る磁気筆記具の断面図を
図13に示す。上記実施例と同一構成には、同一参照番号を付してある。第4の実施例に係る磁気筆記具1Bは、筆記用部材80の先端の磁性体ホルダー82の向きが変化できる可変機構を含む。同図に示すように筆記用部材80と磁性体ホルダー82の間には、自在継手98が介在される。自在継手98の構成は任意であるが、例えば、バネやゴム等の弾性部材を利用したジョイントなどを用いることができる。
【0044】
さらに、磁性体ホルダー82は、磁気パネル100に接触したときに、磁性体ホルダー82が磁気パネル100の面に倣うようにするための台座99を含む。台座99は、例えば、磁界を透過可能なプラスチック部材から構成され、磁性体ホルダー82の全体を収容し、その底面は、磁性体ホルダー82の底面の面積よりも大きい平坦な面である。また、ある実施態様では、台座99が開口14の径よりも大きい場合には、台座99をハウジング内に収容することができない。このため、台座99を保護するためのキャップ16をハウジング100の先端に設けるようにしてもよい。
【0045】
図14は、第4の実施例に係る磁気筆記具の使用例を示す図である。上記した実施例と同様に、図示しない押出しロック機構により筆記用部材80がハウジング10の開口14から突出され、磁気パネル100への文字等の描画が可能になる。
【0046】
本実施例によれば、磁気パネル100に描画するとき、ユーザーが磁気パネル100に対して磁気筆記具を傾斜させたとしても、自在継手98により台座85が磁気パネル100に対して倣うことができ、つまり、磁性体ホルダー82からの磁力線が磁気パネル100に対してほぼ垂直方向から作用させることができる。これにより、ユーザーは、描画をし易くなると同時に、文字、図形等をより鮮明に描画することができる。
【0047】
次に、本発明の第5の実施例に磁気筆記具の断面図を
図15に示す。第5の実施例は、ハウジング100の支持部材41内に、複数の筆記用部材80-1、80-2を収容する。筆記用部材80-1、80-2の先端には、それぞれ磁性体ホルダー82-1、82-2が取り付けられる。磁性体ホルダー82-1、82-2は、それぞれ線幅の異なる文字等を描画することができるようにするため、例えば、ホルダー本体84の底面84Aの開口84CのサイズWを異ならせたり、ホルダー本体84内に収容される磁石の形状、大きさ、数を異ならせている。押出しロック機構は、複数の筆記用部材のいずれかをユーザー操作によって選択的にハウジングの先端から押し出すことができる。これにより、ユーザーは、所望の線幅にて文字等を容易に描画することができる。
【0048】
次に、本発明の第6の実施例に係る磁気筆記具の構成を
図16に示す。第6の実施例は、ハウジング100の外部に、磁石40と磁気パネル100との高さh8を生成するためのスペーサ200を設けたものである。スペーサ200は、磁力を透過可能な材料、例えばプラスチック等から構成される。高さh8を適宜選択することで、磁石40の位置を最適化し、消去を容易にすることができる。同時に、スペーサ200が設けられていない側では、
図12に示すように磁石40と磁気パネル100との間に高さh4が形成される。
【0049】
次に、本発明の第7の実施例について説明する。
図17は、第7の実施例に係る磁気筆記具の断面図を示す図である。第7の実施例に係る磁気筆記具600は、長手方向に延在する内具空間が形成された把持用のハウジング(グリップ部)602、ハウジング602に含まれる電池604、制御回路606、モータ608、磁石610を有する。制御回路606は、電池604から電力が供給され、ハウジング602の側壁に取り付けられたスイッチ612が押下されることにより、モータ608を駆動させる。磁石610は、ハウジング602内の長手方向に一定の長さで延在する円柱状を有しており、N極およびS極が径方向に着磁されている。モータ608の駆動により磁石610が回転すると、磁石610の長手方向の範囲、および磁石610の一方の端部622において磁界が変化し、ハウジング602の長手方向において、あるいは端部622において、磁気パネル上に描画された文字等を消去することができる。また、磁気筆記具600の軸方向に可動する、磁性体材料からなる円筒状のスライド部材624を設け、スライド部材624をスライドさせることで、磁石610の磁界を変化させ、消去範囲を変化させることができる。
【0050】
磁気筆記具600は、ハウジング602の一端に先端部614を有し、先端部614の一端には、回転機構616が取り付けられている。また、回転機構616には、描画部618が取り付けられており、描画部618は、磁石を有するペン先620を含んでいる。回転機構616は、その中心Cを軸として時計回りや反時計回りに回転可能であり、その駆動範囲は、制限なく回転可能なものであっても良いし、0度~任意の角度まで回転可能なものであっても良い。
図18は、第7の実施例に係る磁気筆記具の描画部の拡大図である。磁気筆記具600を磁気パネル100に押し付けると、磁気ペンを握る使用者の手の角度θ、押し付けた角度などによって、回転機構616は、描画部618と先端部614との間の成す角度θ1、θ2を柔軟に変化させ、ペン先620を磁気パネル100の表面に対して傾斜させたり(
図18(A))、ペン先620を磁気パネル100の表面に対して垂直にすることができる(
図18(B))。
【0051】
図19は、第7の実施例に係るペン先の変形例を示す図である。同図に示す描画部618は、太字を描画するためのペン先620Aと、細字を描画するためのペン先620Bとを含む。描画部618は、回転機構616の中心Cを軸として回転可能であり、先端部614内にペン先620Aまたは620Bを収納可能である。
図19(A)は、ペン先620Bが先端部614に収納されている様子を示しており、手動または自動により、回転機構616を回転させることにより、ペン先620Bを出現させることができる(
図19(B))。図示しないが、ペン先620Bが
図19(A)で示すような直線状態になった場合、ペン先620Aは、先端部614内に収納される。先端部614とハウジング602は、ネジ機構626によって着脱可能であり、
図17に示すような描画部や、
図18に示すような描画部を取り換えることができる。
【0052】
上記第1ないし第7の実施例をそれぞれ説明したが、本発明は、第1ないし第7の実施例の組合せを包含するものである。
【0053】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。