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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095785
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】非侵襲的処理中の動きトラッキング
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20220621BHJP
【FI】
A61B5/055 380
A61B5/055 370
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022059569
(22)【出願日】2022-03-31
(62)【分割の表示】P 2018563824の分割
【原出願日】2017-06-05
(31)【優先権主張番号】15/179,181
(32)【優先日】2016-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
(71)【出願人】
【識別番号】503038683
【氏名又は名称】インサイテック リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヴ・レヴィ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】処理中にリアルタイムで標的をトラッキングし、その動きを補償することを容易にする。
【解決手段】集束された超音波処理または他の非侵襲的処理手順中に、処理標的または他の目的の対象の動きは、(i)処理画像と、予想される動き範囲について処理前に取得され、その中の標的または他の対象の位置を識別するために処理された画像のリファレンスライブラリとの比較、ならびに(ii)処理中の標的の動きのステージに関連付けられた補完情報に基づいてリアルタイムでトラッキングすることができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理シーケンス中に少なくとも1つの動く解剖学的対象をトラッキングするための方法であって、
(a)前記処理シーケンスの前に、(i)前記解剖学的対象の動き中に、該解剖学的対象を含んで成る解剖学的領域の、各々のリファレンス画像が前記動きの異なるステージに対応するリファレンス画像のシリーズを取得すること、および(ii)各画像について、前記対象に関連付けられた位置を決定するように前記画像を処理すること、
(b)前記処理シーケンス中に、(i)前記リファレンス画像よりも少ない情報を含む前記解剖学的領域の処理画像を取得すること、(ii)前記処理画像の取得中に補完情報を取得すること、(iii)前記処理画像のうちの少なくとも1つを、それらの間の類似性および前記補完情報に基づいて対応するリファレンス画像と関連付けること、(iv)前記対応するリファレンス画像における前記対象に関連付けられた位置に少なくとも部分的に基づいて前記少なくとも1つの処理画像における該対象をトラッキングすることを含んで成る方法。
【請求項2】
前記補完情報は、前記動きのステージ、動きセンサデータ、または先行する画像に関連する情報のうちの少なくとも1つを含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
先行する処理画像に関連する前記情報は、呼吸サイクル中に画像がいつ取得されたかを特定するメタデータである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記画像はMRI画像であり、前記処理画像に関連するk空間データを取得するためのシーケンスは、各々のk空間位置で符号化された情報のタイプに基づいて決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記処理画像に関連する前記k空間データは、高周波数領域と低周波数領域とで交互に取得される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記処理シーケンスは、前記解剖学的対象の処理を含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記処理シーケンスは、前記トラッキングに基づいて、前記対象へと集束された超音波ビームを導くことを含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記処理シーケンスは、前記解剖学的対象以外の標的の処理を含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記処理中に、前記トラッキングに基づいて前記解剖学的対象を避けるように、前記標的へと集束超音波ビームを形成することをさらに含んで成る、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの解剖学的対象が、処理標的および非処理標的を含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記処理シーケンスが、処理エネルギーに対する解剖学的標的の少なくとも1回の暴露をそれぞれ含んで成る複数の時間的に分離された処理シーケンスを含んで成る処理手順の一部であり、処理シーケンス中に使用される前記取得されたリファレンス画像のうちの少なくとも1つが、先行する処理シーケンス中に得られた処理画像である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
各々の曝露は、前記解剖学的標的を音響エネルギーにさらすことである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記処理画像と前記対応するリファレンス画像との間のベースライン減算を実行することによって、前記解剖学的領域における温度をモニターすることをさらに含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記リファレンス画像を処理することは、前記リファレンス画像の各々において少なくとも1つの解剖学的ランドマークを識別することを含んで成り、前記対象に関連する位置は、前記少なくとも1つの解剖学的ランドマークの位置であり、前記少なくとも1つの解剖学的ランドマークの位置は、前記対象の位置に対して既知である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記標的をトラッキングすることは、前記対応するリファレンス画像における前記解剖学的ランドマークの位置から前記標的の位置を推定することを含んで成る、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記対象に関連付けられた位置は、前記対象の位置である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
類似性は生画像データに基づいて決定される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記シリーズは、少なくとも1つの画像を含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記シリーズは、複数の画像を含んで成る、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記処理シーケンス中に、前記リファレンス画像のシリーズに処理画像を追加することをさらに含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記トラッキングされた対象の動きを前記リファレンス画像のシリーズと比較すること、およびそれに基づいて前記トラッキングされた動きをスムージングすることをさらに含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記トラッキングされた対象の動きを前記リファレンス画像のシリーズと比較すること、およびそれに基づいてトラッキングエラーを検出することをさらに含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
各リファレンス画像は複数の領域を含んで成り、前記処理シーケンスの前に、各領域について前記対象に関連する位置を決定するように、前記リファレンス画像を処理することをさらに含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
各処理画像は少なくとも1つの領域を含んで成り、該少なくとも1つの領域は前記リファレンス画像における対応する領域と比較されて、それらの間の類似性が判定される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記処理画像における前記対象の位置は、前記対応するリファレンス画像における前記対応する領域内の前記対象に関連する位置に少なくとも部分的に基づいて決定される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記リファレンス画像の取得中に、前記補完情報を取得することをさらに含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
処理シーケンス中に少なくとも1つの動く解剖学的対象をトラッキングするためのシステムであって、
(a)(i)前記処理シーケンスの前に、前記解剖学的対象の動き中に、該解剖学的対象を含んで成る解剖学的領域の、各々のリファレンス画像が前記動きの異なるステージに対応するリファレンス画像のシリーズを取得するための、および(ii)前記処理シーケンス中に前記解剖学的領域の処理画像を取得するための、処理装置と共に動作可能なイメージング装置と、
(b)前記処理画像の取得中に補完情報を取得するための手段と、
(b)(i)補完情報を受信するようになっており、(ii)各リファレンス画像について、前記対象に関連する位置を決定するために前記リファレンス画像を処理するようになっており、(iii)前記処理画像のうちの少なくとも1つと対応するリファレンス画像とを、それらの間の類似性および前記補完情報に基づいて関連付けるようになっており、(iii)前記対応するリファレンス画像における前記対象に関連付けられた位置に少なくとも部分的に基づいて前記少なくとも1つの処理画像における該対象をトラッキングするようになっている計算ユニットとを含んで成る、システム。
【請求項28】
前記補完情報を取得するための手段は、画像メタデータを受け取るための入力デバイス、動きセンサ、または先行する処理画像に関連する情報を抽出するため、もしくは直近の処理画像に関連する前記動きのステージの情報を推定するための計算モジュールのうちの少なくとも1つを含んで成る、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記イメージング装置は、MRI装置を含んで成り、前記計算ユニットは、各k空間位置において符号化された情報のタイプに基づいて、前記処理画像に関連するk空間データの取得シーケンスを決定するようにさらになっている、請求項27に記載のシステム。
【請求項30】
前記計算ユニットは、交互の高周波領域と低周波領域とにおいて、前記k空間データを交互に取得するようになっている、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記処理装置は、超音波トランスデューサを含んで成る、請求項27に記載のシステム。
【請求項32】
前記計算ユニットは、前記トラッキングに基づいて、前記トランスデューサによって生成された超音波ビームを前記対象へと集束させるようにさらになっている、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記処理シーケンスは、前記解剖学的対象以外の標的の処理を含んで成り、前記計算ユニットは、前記トラッキングに基づいて前記対象を回避するように、前記トランスデューサによって生成された超音波ビームをさらに形成するようになっている、請求項31に記載のシステム。
【請求項34】
前記処理シーケンスは、解剖学的標的の処理エネルギーへの少なくとも1回の暴露をそれぞれ含んで成る複数の時間的に分離された処理シーケンスを含んで成る処理手順の一部であり、前記計算ユニットは、処理シーケンスのうちの最初の処理シーケンス中に取得された処理画像を、処理シーケンスのうちの次の処理シーケンスのためのリファレンス画像として使用するようになっている、請求項27に記載のシステム。
【請求項35】
前記計算ユニットは、前記処理画像と前記対応するリファレンス画像との間のベースライン減算を実行することによって、前記解剖学的領域における温度をモニターするようにさらになっている、請求項27に記載のシステム。
【請求項36】
前記計算ユニットは、前記リファレンス画像の各々における少なくとも1つの解剖学的ランドマークを識別するようにさらになっており、前記対象に関連する位置は、前記少なくとも1つの解剖学的ランドマークの位置であり、前記少なくとも1つの解剖学的ランドマークの位置は、前記対象の位置に対して既知である、請求項27に記載のシステム。
【請求項37】
前記計算ユニットは、前記対応するリファレンス画像における前記解剖学的ランドマークの位置から前記標的の位置を推定することによって、該標的をトラッキングするようにさらになっている、請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
前記計算ユニットは、生画像データに基づいて、前記処理画像を前記リファレンス画像と関連付けるようになっている、請求項27に記載のシステム。
【請求項39】
前記計算ユニットは、前記リファレンス画像のシリーズに処理画像を追加するようにさらに構成されている、請求項27に記載のシステム。
【請求項40】
前記計算ユニットは、前記トラッキングされた対象の動きを前記リファレンス画像のシリーズと比較し、それに基づいて前記トラッキングされた動きをスムージングするようにさらになっている、請求項27に記載のシステム。
【請求項41】
前記計算ユニットは、前記トラッキングされた対象の動きを前記リファレンス画像のシリーズと比較し、それに基づいてトラッキングエラーを検出するようにさらになっている、請求項27に記載のシステム。
【請求項42】
各リファレンス画像は複数の領域を含んで成り、前記計算ユニットは、前記処理シーケンスの前に、各領域について、前記対象に関連する位置を決定するために前記リファレンス画像を処理するようにさらになっている、請求項27に記載のシステム。
【請求項43】
各処理画像は、少なくとも1つの領域を含んで成り、前記計算ユニットは、前記少なくとも1つの領域を前記リファレンス画像における対応する領域と比較して、それらの間の類似性を決定するようにさらになっている、請求項42に記載のシステム。
【請求項44】
前記計算ユニットは、前記対応するリファレンス画像における前記対応する領域内の前記対象に関連付けられた位置に少なくとも部分的に基づいて、前記処理画像における前記対象の位置を決定するようにさらになっている、請求項43に記載のシステム。
【請求項45】
前記計算ユニットは、前記リファレンス画像の取得中に前記補完情報を取得するようにさらになっている、請求項27に記載のシステム。
【請求項46】
処理の間に動く解剖学的対象をトラッキングするための方法であって、
(a)前記処理の前に、
(i)前記解剖学的対象の動き中に、該解剖学的対象を含んで成る解剖学的領域の、各々のリファレンス画像が前記動きの異なるステージに対応するリファレンス画像のシリーズを取得すること、および
(ii)各画像について、前記対象に関連付けられた位置を決定するように前記画像を処理すること、
(b)前記処理中に、
(i)前記解剖学的対象に関連付けられた画像データを取得するために、複数の走査線を含んで成る走査シーケンスを実行すること、
(ii)前記画像データの取得中に前記解剖学的対象に関連付けられた補完情報を取得すること、
(iii)少なくとも1つのマッチングするリファレンス画像を識別するように、前記取得された画像データと前記リファレンス画像との間の類似性を計算すること、
(iv)前記マッチングするリファレンス画像の数が閾値を下回っているかどうかを判定すること、ならびに
前記マッチングするリファレンス画像の数が閾値を下回っている場合、前記類似性および前記補完情報に基づいて前記マッチングするリファレンス画像のうちの1つを選択し、該選択されたリファレンス画像における前記解剖学的対象に関連付けられた位置から該解剖学的対象の位置を推測すること、
前記マッチングするリファレンス画像の数が閾値を下回っていない場合、所定の走査シーケンスに基づいて、前記解剖学的対象の前記画像データを取得するように次の走査ラインで前記走査シーケンスを実行すること、ならびにステップ(ii)、(iii)および(iv)を繰り返すことを含んで成る、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、動く組織または器官をトラッキングすることに関し、特に、非侵襲的治療中にその動きをトラッキングすることに関する。
【背景技術】
【0002】
患者の頭蓋または他の身体領域内の良性もしくは悪性の腫瘍または血塊などの組織は、外科的に組織を除去することによって侵襲的に処理することができ、または例えば熱アブレーションを使用して非侵襲的に処理することができる。どちらの方法も身体内の特定の限局性の状態を効果的に処理し得るが、健康な組織を破壊すること、または傷つけることを避けるために繊細な処置が必要である。健康な組織を助けることができないか、またはその破壊が生理学的機能に悪影響を及ぼすことが考えにくい場合を除き、罹患組織が健康な組織内に組み込まれている状態では手術が適切ではない場合がある。
【0003】
集束超音波を使用して達成され得るような熱アブレーションは、超音波エネルギーの影響が明確に定められた標的領域に限定され得るため、健康な組織または器官によって囲まれた疾患組織を処理するための特別な訴求力を有する。超音波エネルギーは、比較的短い波長(例えば、1メガヘルツ(1MHz)での断面積が1.5ミリメートル(mm)と小さい)に起因して、わずか数ミリメートルの断面を有するゾーンに集束することができる。さらに、音響エネルギーは一般に柔らかい組織を十分に貫通するので、介在する組織はしばしば所望の焦点ゾーンを規定するのに障害を及ぼさない。したがって、周囲の健康な組織に著しい損傷を与えることなく、病変組織を切除するために、超音波エネルギーを小さな標的に集中させることができる。
【0004】
超音波集束システムは、一般に、超音波ビームを生成するために音響トランスデューサ表面またはトランスデューサ表面のアレイを利用する。トランスデューサは、幾何学的形状を有してよく、患者内の標的組織塊(mass)に対応する「焦点ゾーン(focal zone)」に超音波エネルギーを集中させるように位置付けられてもよい。組織を通る波の伝播の間、超音波エネルギーの一部は吸収され、温度が上昇し、最終的には、好ましくは、焦点ゾーンにおける標的組織塊で細胞壊死に至る。トランスデューサアレイの個々の表面または「素子(elements)」は、典型的に、個々に制御可能である。すなわち、それらの位相および/または振幅を互いに独立して設定することができ(例えば、連続波および素子用の増幅回路の場合における適切な遅延シフトまたは位相シフトを有する「ビームフォーマ(beamformer)」を用いて)、ビームを所望の方向に導き、所望の距離に集束されること、および焦点ゾーンの特性が必要に応じて形成されることを可能にする。したがって、トランスデューサ素子に入力される電気信号の振幅および位相を独立に調整することにより、焦点ゾーンを迅速に変位および/または再形成することができる。
【0005】
しかし、人体は柔軟性があり、たとえ患者が静止していても(呼吸、例えば、小規模な不随意運動により)動くため、時間の経過とともに複数の超音波処理が施される処理は(数秒以内に施された場合でも)、標的化および/または1または複数の処理パラメータに対する暫定的調整を必要とする場合がある。したがって、超音波ビームを標的に集中させたままにし、周囲の健康な組織に損傷を与えないようにするためには、動きに対する補償が必要である。
【0006】
したがって、磁気共鳴イメージング(MRI)などのイメージングモダリティは、標的組織および超音波焦点の両方の位置をモニターするために非侵襲的治療中の超音波集束と共に使用することができる。一般に、図1に示すようなMRIシステム100は、静磁場磁石102、1以上の傾斜磁場コイル104、高周波(RF)送信機106、およびRF受信機(図示せず)を含む。(いくらかの実施形態では、RF送信機または受信機として同じデバイスが交互に使用される。)磁石は、患者110をその中に収容するための領域108を含み、静的で比較的均一な磁場を患者に供する。傾斜磁場コイル104によって生成された時変磁場勾配は、静磁場と重畳される。RF送信機106は、患者110にRFパルスシーケンスを送り、患者の組織に(時変の)RF応答信号を放射させる。このRF応答信号は、生画像データを構成する時系列の応答信号を生成するために、(2次元または3次元の)イメージング領域全体にわたって統合され、RF受信機によってサンプリングされる。この生データは、計算ユニット112に送られる。時系列の各データポイントは、k空間(すなわち、波ベクトル空間)内の特定の点における位置依存局所磁化のフーリエ変換の値として解釈することができ、波ベクトルkは磁場の時間発展の関数である。したがって、応答信号の時系列をフーリエ変換することによって、計算ユニット112は、組織の実空間画像(すなわち、測定された磁化に影響を及ぼす組織特性を空間座標の関数として示す画像)を生データから再構成することができる。次いで、実空間磁気共鳴(MR)画像をユーザに表示してもよい。MRIシステム100は、医療処理を計画するとともに、処理中の処理進行をモニターするために使用されてよい。例えば、MRIを用いて、解剖学的領域をイメージングし、領域内の標的組織(例えば、腫瘍)を特定し、超音波トランスデューサ114によって生成されたビームを標的組織にガイドし、ならびに/または標的組織および標的組織周囲の温度をモニターしてもよい。
【0007】
MRIガイド集束超音波(MRgFUS)システムなどの画像ガイドシステムにおいて、動き補償は、一般に画像内の標的を(直接的または間接的に)トラッキングし、トラッキングされた位置に基づいて超音波ビームを導くことによって達成される。標的トラッキングの1つのアプローチは、各画像内に位置することができる1以上の識別可能な特徴または「解剖学的ランドマーク」のセットの座標を決定すること、およびこれらの座標に基づいて、ランドマークに対して既知の位置にあると推定される標的の動きを計算するステップとを含む。別のアプローチでは、連続画像間の相対的なシフトは、ある画像を他の画像の多数の計算的にシフトされたコピーと関連付け、最良のマッチングを供するシフトされた画像を選択することによって決定される。いずれの場合も、標的位置を決定するために膨大な画像処理時間が費やされ、有効イメージングレートが低下し、リアルタイムの動き補償が妨げられることが多い。場合によっては、標的の動きを認識して定量化する際の遅延が、許容範囲内でビームターゲッティングの不正確さを引き起こす。しかしながら、しばしば、処理プロセスを停止させ、処理が再開される前に、標的組織または標的器官の変位に起因するミスアライメントを補正することが必要になる。これは、処理プロセスにおいて著しい非効率をもたらし、不都合な遅延を引き起こす可能性がある。
【0008】
したがって、処理中にリアルタイムで標的をトラッキングし、その動きを補償することを容易にする改善された動きトラッキングアプローチが必要である。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、画像ガイド処理手順中または画像ガイド処理システムの較正中に、リアルタイムで目的領域における標的(target)または他の対象の動き(または運動、motion)をトラッキングする(または追跡する、tracking)ためのシステムおよび方法を供する。特に、本発明は、画像ガイド処理手順中に、リアルタイムで目的の解剖学的領域(anatomical region)における処理標的または他の対象の動きをトラッキングするためのシステムおよび方法を供する。種々の実施形態では、例えば、処理前にMRI装置を用いてリファレンス画像のライブラリを取得する。リファレンス画像は、周期的動作(例えば、完全な呼吸サイクル)または非周期的動作(例えば、患者の動き)の予測範囲をカバーする。次に、リファレンス画像を処理して(直接的または間接的に)それにおける目的の対象(object of interest)を位置付ける。位置情報は、それぞれのリファレンス画像とともに保存される。リファレンス画像は、生(または未処理の、raw)k空間(k-space)画像データおよび/または再構成された実空間画像データとして保存されてもよい。
【0010】
処理中または較正中に、目的の領域(例えば、目的の解剖学的領域またはブランク内の目的の領域)の動きをリアルタイムでトラッキングするために、生k空間画像データの画像マトリックスまたはサブ画像マトリックス(すなわち、部分データ)は繰り返し取得される。いずれの場合でも、サブ画像マトリックスは、リファレンスライブラリにおけるk空間画像データの対応する部分(すなわち、k空間の実質的に同じ部分に位置するデータ)と比較され、それらの間の画像類似性(または類似度、similarity)を判定することができる。代替的に、または付加的に、サブ画像マトリックスを使用して、縮小されたフレームサイズおよび/または空間解像度を有する実空間サブ画像を再構成することができ、サブ画像は、リファレンスライブラリにおける実空間画像データと比較され、マッチングされる(または一致させる、matched)。識別目的のためにサブ画像マトリックス(または部分生データ)を使用することは、明らかに収集時間および処理時間を減少させるが、曖昧さをもたらす場合がある。場合によっては、複数の画像が部分生データ(または再構成された実空間画像)とマッチングする場合がある。したがって、あまりにも密接にマッチングするリファレンス画像が曖昧さなしに識別された場合(すなわち、1つのリファレンス画像のみが識別される場合)、そのリファレンス画像における各目的の対象の位置は、同様に処理サブ領域におけるそれぞれの対象の位置とみなされる。しかしながら、複数のリファレンス画像が処理サブ画像(またはサブ画像マトリックス)との十分に高い類似性(例えば、所定の閾値以上)を有する場合、種々の実施形態では、補完情報(または補足情報、complementary information)(例えば、追加の画像関連および/または動き関連の情報)を、処理サブ画像またはサブ画像マトリックスに最もマッチングするリファレンス画像を識別するために利用してもよい(すなわち、処理サブ画像またはサブ画像マトリックスが最も対応する可能性が高い)。
【0011】
また、最もマッチングするリファレンス画像が識別されると、最もマッチングするリファレンス画像における目的の対象の位置は、処理サブ画像におけるそれぞれの対象の位置とみなされる。したがって、本発明は、従来のトラッキングアプローチと比較して、部分画像データ(すなわち、部分生k空間データおよび/または実空間サブ画像)のみを取得および処理することによって、処理中に必要とされる画像取得および処理時間を大幅に低減する。部分画像データは、目的の対象の解剖学的領域を含み、したがって、限定された遅延を伴う目的の対象のリアルタイムの動きトラッキングを容易にする。さらに、例えば動きの予想される範囲のステージ、1以上の動きセンサからの読み出し、先行する処理画像に関連する情報などを含む補完情報は、部分データを使用する画像比較に起因する曖昧さを解決し得、それによって、処理中に取得された部分生データおよび/またはサブ画像に最もマッチングするリファレンス画像を正しく識別し得る。
【0012】
いくらかの実施形態では、k空間画像データが連続行単位または連続列単位で取得される従来のアプローチとは異なり、本発明におけるk空間内の画像データは、低周波領域および高周波領域において交互に取得される。取得された画像データは、取得時にライブラリに保存された画像データと比較するために実質的に同時に処理され、リファレンス画像が候補マッチングであるかどうかを決定する。識別されたリファレンス画像の数が所定の閾値未満(例えば、5つ未満のリファレンス画像)である場合には、唯一のリファレンス画像が最良のマッチング画像として識別できるかどうかを判断するための補完情報が供される。そうでない場合、または識別されたリファレンス画像の数が所定の閾値を超える場合、データ取得プロセスは継続する。すなわち、低周波領域および高周波領域における次の画像データを交互に取得する。このステップは、1のリファレンス画像のみが処理サブ画像に最もマッチングする画像として識別されるまで反復的に実施することができる。このアプローチを使用して取得された処理画像データは、高周波情報および低周波情報の両方を含むことが有利であり、いくらかの実施形態では、データ自体または補完情報と組み合わせることは、k空間を埋めるためのデータ全体を取得する必要無しに1の最もマッチングする画像を識別するために十分である。したがって、本発明のアプローチは、画像取得における遅延を低減し、処理中の画像処理時間を大幅に節約することができる。
【0013】
したがって、一実施形態では、本発明は、処理シーケンス中に、目的の1以上の(典型的に動いている)対象(目的の解剖学的対象、例えば、処理標的および/もしくは非処理標的を含む対象)をトラッキングする方法を供する。種々の実施形態では、この方法は、処理シーケンスの前に、目的の対象(例えば、目的の解剖学的対象)を含む領域(例えば、解剖学的領域)のリファレンス画像のシリーズ(もしくは、一連のリファレンス画像、series of reference images)(すなわち、少なくとも1つの画像、および典型的には複数の画像)を、その対象が動いている間に取得すること(各リファレンス画像は動きの異なるステージ(または段階、stage)に対応する)、ならびに/またはリファレンス画像の取得中に補完情報を取得すること、ならびに各画像について、目的の対象に関連付けられたそれらにおける位置を決定するように画像を処理することを含む。オプションとして、動きのステージ、動きセンサデータ、および/または先行する画像に関連する情報(例えば、呼吸サイクル中に画像が取得された時を特定するメタデータ)などの補完情報をリファレンス画像の取得中に取得することができる。この方法は、処理シーケンス中に、解剖学的領域の処理画像を取得すること、および処理画像の取得中に補完情報を取得することをさらに含む。一般に、処理画像はリファレンス画像よりも少ない情報(例えば、より少ない画像データ)を含む。次いで、それらの間の類似性および補完情報に基づいて、1以上の処理画像がリファレンス画像に関連付けられ(correlated)、続いて、目的の対象が、対応するリファレンス画像における対象に関連付けられた位置に少なくとも部分的に基づいて、処理画像においてトラッキングされる。本明細書では、「取得する(acquiring)」という用語は、センサまたはイメージャからデータを取得すること、リファレンスライブラリまたは処理画像などのソースからデータを読み出すこと、および既存のデータから新しい情報を計算もしくは導出することを含む。種々の実施形態では、この方法は、処理画像と対応するリファレンス画像との間のベースライン減算を実行することによって、解剖学的領域内の温度をモニターすることをさらに含む。
【0014】
本出願の開示を通して、「処理シーケンス(treatment sequence)」は、処理(例えば、超音波処理)が実施されるシーケンスであってよく、または「処理シーケンス」は、実施される任意の処理が存在しないシーケンスの実施を指してもよい。同様に、「処理画像(treatment image)」は、「処理された、または処理なしの処理シーケンス」中に得られた画像を指す。
【0015】
したがって、この方法はオプションとして任意の処理を含まない。種々の実施形態では、この方法は、ヒトまたは動物の体の処理方法ではないか、または関わりがない(compromise)。種々の実施形態では、画像はMRI画像であり、処理画像に関連するk空間データを取得するためのシーケンスは、各k空間位置で符号化された情報のタイプに基づいて決定される。例えば、処理画像に関連付けられたk空間データは、高周波領域と低周波領域とで交互に取得される。
【0016】
処理シーケンスは、例えば、トラッキングに基づいて対象に集束超音波ビームを導くことによって、解剖学的対象の処理を含んでよい。あるいは、処理シーケンスは、解剖学的対象以外の標的の処理を含んでもよい(すなわち、処理中に、トラッキングに基づいて解剖学的対象を避けるように、集束された超音波ビームが標的に形成される)。さらに、処理シーケンスは、処理エネルギー(または治療エネルギー、therapeutic energy)に対する解剖学的標的の1回以上の曝露をそれぞれ有する、複数の時間的に分離された処理シーケンスを含む処理手順の一部であってもよい。処理シーケンス中に使用される取得されたリファレンス画像の1以上は、先行する処理シーケンス中に取得された処理画像であってもよい。一実施形態では、各曝露は、解剖学的標的を音響エネルギーにさらすことである。
【0017】
いくらかの実施形態では、リファレンス画像は、リファレンス画像のそれぞれにおいて、1以上の解剖学的ランドマーク(または標識、landmark)を識別するように処理される。対象に関連する位置は、解剖学的ランドマークの位置であり、解剖学的ランドマークの位置は、対象の位置に対して既知である。次いで、標的の位置は、対応するリファレンス画像における解剖学的ランドマークの位置から推測される。
【0018】
対象に関連する位置は、対象の位置であってもよい。類似性は生画像データに基づいて決定されてもよい。画像シリーズは、1以上の画像を含んでもよい。さらに、この方法は、処理シーケンス中に、リファレンス画像のシリーズに処理画像を追加することをさらに含んでもよい。一実施形態では、この方法は、リファレンス画像のシリーズに対してトラッキング対象の動きを比較し、それに基づいて、トラッキングされた動きをスムージングし、および/またはトラッキングエラーを検出することを含む。
【0019】
種々の実施形態では、各リファレンス画像は複数の領域を含み、この方法は、処理シーケンスの前に、各領域について、対象に関連付けられた位置を決定するためにリファレンス画像を処理することをさらに含む。各処理画像は、1以上の領域を含んでもよく、その領域は、リファレンス画像内の対応する領域と比較され、それらの間の類似性が判定される。処理画像における対象の位置は、対応するリファレンス画像内の対応する領域における対象に関連する位置に少なくとも部分的に基づいて決定される。
【0020】
別の実施形態では、本発明は、処理シーケンス中に1以上の動く対象(処理標的および/または非処理標的を含む対象)をトラッキングするためのシステムに関する。種々の実施形態では、システムは、処理装置(例えば、超音波トランスデューサ)と共に動作可能であり、(i)前記処理シーケンスの前に、動き中の対象(例えば、目的の解剖学的対象)を有する領域(例えば、解剖学的領域)のリファレンス画像のシリーズを取得するように(各々のリファレンス画像は動きの異なるステージに対応する)、また(ii)処理シーケンス中に解剖学的領域の処理画像を取得するように適用された、イメージング装置(例えば、MRI装置)を含む。さらに、システムは、処理画像および/またはリファレンス画像の取得中に補完情報を取得するための手段と、(i)補完情報を受信するようになっており、(ii)各リファレンス画像について、対象に関連する位置を決定するためにリファレンス画像を処理するようになっており、(iii)処理画像の1以上と対応するリファレンス画像とを、それらの間の類似性および補完情報に基づいて関連付けるようになっており、(iii)対応するリファレンス画像における対象に関連付けられた位置に少なくとも部分的に基づいて処理画像における対象をトラッキングするようになっている計算ユニットとを含む。一実施形態では、計算ユニットは、リファレンス画像の取得中に補完情報を取得するようにさらになっている。
【0021】
補完情報を取得するための手段は、画像メタデータを受信するための入力デバイス、動きセンサ、および/または先行する処理(または、リファレンス)画像に関連する情報を抽出するため、もしくは直近の処理画像に関連する動きのステージの情報を推定するための計算モジュールを含んでもよい。さらに、計算ユニットは、各k空間位置において符号化された情報のタイプに基づいて処理画像に関連するk空間データの取得シーケンスを決定するようにさらになっていてもよい。例えば、計算ユニットは、高周波領域と低周波領域とでk空間データを交互に取得するようになっていてもよい。
【0022】
計算ユニットは、トラッキングに基づいてトランスデューサによって生成された超音波ビームを対象に集束させるようにさらになっていてもよい。処理シーケンスは、解剖学的対象以外の標的の処理を含んでもよい。計算ユニットは、トラッキングに基づいて対象を回避するように、トランスデューサによって生成された超音波ビームを形成するようにさらになっている。いくらかの実施形態では、処理シーケンスは、処理エネルギーに対する解剖学的標的の1以上の曝露をそれぞれ含む、複数の時間的に分離された処理シーケンスを含む処理手順の一部である。計算ユニットは、処理シーケンスのうちの最初の処理シーケンス中に取得された処理画像を、処理シーケンスのうちの次の処理シーケンスのためのリファレンス画像として使用するようにさらになっている。
【0023】
さらに、計算ユニットは、処理画像と対応するリファレンス画像との間のベースライン減算を実行することによって、解剖学的領域における温度をモニターするようにさらになっていてもよい。種々の実施形態では、計算ユニットは、リファレンス画像の各々における1以上の解剖学的ランドマークを識別するようにさらになっている。対象に関連する位置は、解剖学的ランドマークの位置であり、解剖学的ランドマークの位置は、対象の位置に対して既知である。さらに、計算ユニットは、対応するリファレンス画像における解剖学的ランドマークの位置から標的の位置を推定することによって標的をトラッキングするようにさらになっている。
【0024】
計算ユニットは、生画像データに基づいて処理画像をリファレンス画像と関連付けるようになっていてもよい。また、計算ユニットは、リファレンス画像のシリーズに処理画像を追加するようになっていてもよい。さらに、計算ユニットは、リファレンス画像のシリーズに対してトラッキングされた対象の動きを比較し、それに基づいて、トラッキングされた動きをスムージングし、および/またはトラッキングエラーを検出するようになっている。種々の実施形態では、各リファレンス画像は複数の領域を含み、計算ユニットは、各領域について、処理シーケンスの前に対象に関連付けられた位置を決定するためにリファレンス画像を処理するようになっている。各処理画像は1以上の領域を含み、計算ユニットは、その領域をリファレンス画像における対応する領域と比較して、それらの間の類似性を判定し、続いて、対応するリファレンス画像における対応する領域内の対象に関連付けられた位置に少なくとも部分的に基づいて、処理画像における対象の位置を決定するようにさらになっている。
【0025】
別の実施形態では、本発明は、処理中に動く解剖学的対象をトラッキングする方法に関する。種々の実施形態では、この方法は、処理の前に、動き中の解剖学的対象を有する解剖学的領域のリファレンス画像のシリーズ(各リファレンス画像は動きの異なるステージに対応する)を取得すること、および各画像について対象に関連付けられた位置を決定するように画像を処理することを含む。さらに、この方法は、処理中に、(i)解剖学的対象に関連付けられた画像データを取得するために、複数の走査線を含む走査シーケンスを実行すること、(ii)画像データの取得中に解剖学的対象に関連付けられた補完情報を取得すること、(iii)1以上のマッチングするリファレンス画像を識別するように、取得された画像データとリファレンス画像との間の類似性を計算すること、(iv)マッチングするリファレンス画像の数が閾値を下回っているかどうかを判定すること、ならびに、マッチングするリファレンス画像の数が閾値を下回っている場合、類似性および補完情報に基づいてマッチングするリファレンス画像のうちの1つを選択し、選択されたリファレンス画像における解剖学的対象に関連付けられた位置から解剖学的対象の位置を推測すること、マッチングするリファレンス画像の数が閾値を下回っていない場合、所定の走査シーケンスに基づいて、解剖学的対象の画像データを取得するように次の走査ラインで走査シーケンスを実行すること、ならびにステップ(ii)、(iii)および(iv)を繰り返すことを含む。
【0026】
本明細書で使用する「実質的に(substantially)」という用語は、約10%を意味し、ある実施形態において約5%を意味する。本明細書を通して、「一例(one example、またはan example)」、「一実施形態(one embodiment、またはan embodiment)」とは、例に関連して記載される特定の特徴、構造、または特性が、本技術の少なくとも一例を含むことを意味する。したがって、本明細書全体の様々な箇所における「一例において(in one example、またはin an example)」、「一実施形態(one embodiment、またはan embodiment)」という語句は必ずしも全て同じ例を指しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、ルーチン、ステップ、または特性は、技術の1以上の例において、あらゆる適切な方法で組み合わせてもよい。本明細書で供される見出しは、便宜上のものであり、請求される技術の範囲または意味を限定または解釈することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図面において、同様の参照符号は、概して、異なる図を通して同じ部分を指す。また、図面は必ずしも原寸に比例するものではなく、その代わりに本発明の原理を例示することに重点が置かれている。以下の記載では、本発明の種々の実施形態を以下の図面を参照して記載する。
【0028】
図1図1は、種々の実施形態によるMRIガイド焦点式超音波システムを示す図である。
図2図2は、種々の実施形態によるトラッキング方法を示すフローチャートである。
図3図3は、種々の実施形態による補間アプローチを使用して標的位置をk空間画像データの種々の部分と関連付けることを示す。
図4図4Aおよび図4Bは、種々の実施形態によるリファレンスライブラリにおける部分的なk空間画像データを保存することを示す図である。
図5図5A図5Dは、種々の実施形態による処理中にk空間データを取得するためのシーケンスを示す図である。
図6図6は、種々の実施形態による処理中に取得された画像データとマッチングするリファレンス画像を識別する方法を示すフローチャートである。
図7図7A図7Cは、種々の実施形態による処理中の部分的なk空間画像データを取得することを示す。
図8図8は、種々の実施形態による処理画像およびライブラリにおけるリファレンス画像を示す図である。
図9A図9Aは、k空間画像データを取得する従来の方法を示す。
図9B図9Bは、種々の実施形態による処理中にk空間データを取得するための様々なシーケンスを示す。
図9C図9Cは、種々の実施形態による処理中にk空間データを取得するための様々なシーケンスを示す。
図9D図9Dは、k空間画像データを取得する別の従来の方法を示す。
図10A図10Aは、従来の温度測定方法を示すフローチャートである。
図10B図10Bは、種々の実施形態による標的トラッキングと併用した温度測定の方法を示すフローチャートである。
図11図11は、種々の実施形態による画像処理および制御機能を示すブロック図である。
【発明の実施するための形態】
【0029】
本発明は、画像ガイド手順の間にリアルタイムで目的の対象(例えば、処理対象)の動きをトラッキングするためのシステムおよび方法を供する。この手順は、例えば、物質、組織または器官を加熱する目的のために、それらへの集束超音波の適用(すなわち、その超音波処理)を含んでよく、例えば癌性であるか、または痛みの改善または温熱の制御された誘発などの非破壊的処理のために、組織を壊死させ、切除し、またはそうでなければ破壊するように使用してもよい。超音波は、例えば神経変性などの他の非熱的タイプの処理にも使用してもよい。あるいは、この手順は、例えば高周波(RF)放射、X線もしくはガンマ線、または荷電粒子などの異なる形態の処理エネルギーを使用してよく、または凍結切除などの他の処理様式を含んでもよい。様々な処理手順における動きトラッキングは、処理エネルギービームを標的ならびに/または他の非標的組織および器官の周辺に導くように、すなわち、影響される解剖学的領域の画像に基づいてビームの焦点、輪郭および/もしくは方向を調整するように供されてよい。いくらかの実施形態では、ビーム焦点を視覚化してもよい。MRIは、このような画像ベースの動きトラッキングのために広く使用されている技法である。しかしながら、例えば、X線イメージング、X線コンピュータ断層撮影(CT)、または超音波イメージングを含む他のイメージング技術をも使用してよく、これは本発明の範囲内である。さらに、動きトラッキングは、1以上の2次元画像および/または3次元画像を使用して達成されてもよい。種々の実施形態による方法を実施するための例示的なシステムは、図1に示されるようなMRgFUSシステムである。このシステムは、図4を参照して以下に詳細に記載するように、適切な画像処理および制御機能を有する。
【0030】
図2は、種々の実施形態によるリアルタイムの動きトラッキングのための方法を示す。参照を容易にするために、以下の記載は標的トラッキングのみを参照する。しかしながら、同じ方法が一般に、目的の他の器官または組織(例えば、処理ビームからの傷害を受けやすい臓器)または物質のトラッキングにも同様に適用されることを理解すべきである。この方法は、目的のある手順の前に実行される準備ステップと、手順中に実行されるステップとを含む。第1準備ステップ200において、標的を含む解剖学的領域の画像のシリーズが、それらが動いている間(または、その動きの間、during motion thereof)に取得される。各画像は、典型的には動きの異なるステージに対応し、このステージは、動きの予想される範囲を包括的にカバーする。例えば、画像のシリーズは、定期的な呼吸の動きまたは非周期的な動きの完全なサイクル中に規則的な間隔で採取されてもよい。別の例として、目的の領域(例えば、患者内の目的の解剖学的領域)は、不注意な散発的な動きから生じる位置の範囲を捕捉するために、一定の時間にわたってモニターされてもよい。MRIベースの方法では、典型的には、画像を取得するには、まず、生k空間MR信号を取得し(ステップ202)、次に生データから実空間画像を再構成する(ステップ204)。k空間画像データおよび実空間画像データの双方は、複素値である(すなわち、大きさおよび位相を有するか、または異なるように実数部および虚数部を有する)。オプションとして、いくらかの実施形態では、生k空間画像データ202の取得中に補完情報(例えば、以下にさらに記載するような追加の画像関連情報および/または動き関連情報)を取得してもよい。補完情報は、部分データを使用する画像比較に起因する曖昧さを解決するために、処理中に取得された補完情報と比較されてよく、それによって、処理中に取得された部分生データおよび/またはサブ画像を最もマッチングさせるリファレンス画像を正しく識別してもよい。
【0031】
次のステップ206では、実空間画像が処理されて、標的に関連する座標(例えば、標的座標自体、および/または標的に対して既知の(例えば、固定された)位置に配置された解剖学的ランドマークの座標など)が決定される。このステップは、当業者に既知のいくらかの特徴検出またはトラッキング方法のいずれかによって実施してもよい。いくらかの実施形態では、画像フレーム内の絶対座標(例えば、行番号および列番号に関する座標)において、またはエッジ検出もしくはブロブ検出などを用いるイメージングシステムの座標系において、標的および/またはランドマークの位置は、別個に各画像のために決定される。他の実施形態では、異なる画像間における標的および/またはランドマークの位置における関連する変化(例えば、座標差または変換/動きベクトルで表現される変化)が決定される。例えば、シリーズの第1画像における標的の位置は、任意に原点として指定されてもよく、後続の画像における標的の位置は、その原点に対して測定されてもよい。ブロックマッチングアルゴリズム、位相相関および周波数領域法、ピクセル再帰アルゴリズム、ベイジアン推定(例えば、最大事後確率(MAP)推定値もしくはマルコフのランダムフィールドモデル)および/またはオプティカルフロー法などのピクセルベースの「直接的な」方法、ならびに/または画像間の対応する特徴(例えば、ハリスコーナーなど)をマッチングさせる特徴ベースの「間接的な」方法によって、動きベクトルを取得することができる。ブロックマッチングアルゴリズムは、例えば、多数の既知のベクトルによって第1画像の一部分(または「ブロック」)を計算的にシフトさせること、およびブロックの結果のコピーを後続の画像と関連付けて最良のマッチングを識別することを含む。重要なことに、画像処理ステップ206は、一般に、リアルタイムで標的トラッキングと共にではなく、その前に実行されるので、標的位置を決定することに関連する計算コストは、適切な方法の選択において重要性が低い。
【0032】
この方法は、リファレンス画像および処理画像を取得するためのMRI走査を含んで成ってよく、イメージング装置は、MRI走査を実行するようになっていてもよい。典型的には、MRI走査の間に、k空間データが1行ずつ取得される。図3を参照して、例えば、ライブラリの1つのリファレンス画像(例えば、x番目の画像)において、k空間画像データの上2列(領域Aとラベルされる)は、時間間隔t~tの間において、単一ショット中に、またはMRI手順の最初の2つのショット中に取得されてよく、次の2つのデータ行(領域Bとラベルされる)は、時間間隔t~tの間において、次の2つのショット中に取得することができ、Cとラベルされた領域の画像データは、間隔t~tの間において、次の2つのショットによって取得することができ、最後の2つのショットは、間隔t~tにDとラベルされた領域における画像データを取得することができる。同様に、次のリファレンス画像(例えば、(x+1)番目の画像)では、領域Aから領域Dの順にk空間画像データが取得される。2つのリファレンス画像から得られた標的の位置情報は、データ取得中の中央時間または平均時間における標的の位置を表す(すなわち、それぞれ第x番目の画像におけるtおよび(x+1)番目の画像におけるt)。標的の動きが連続的で安定している場合、tとtとの間の取得時間に、標的位置を補間する(interpolate)ことができる。例えば、図示されているように、標的位置の1座標が、x番目のリファレンス画像において30の値(例えば、mmまたはピクセル)、および(x+1)番目のリファレンス画像において70の値を有するように決定された場合、x番目の画像の領域Cおよび領域Dにおける画像データを取得する際の標的座標の値は、それぞれ35および45として補間されてもよい。同様に、(x+1)番目のリファレンス画像の領域Aおよび領域Bにおけるデータを取得する場合の標的座標の値は、それぞれ55および65として補間されてもよい。補間プロセスは、各リファレンス画像におけるk空間データの各領域がその関連する標的位置を有するように、ライブラリ全体にわたって、リファレンス画像の様々な領域に対して実行されてもよい。以下にさらに記載するように、部分k空間画像データが処理中に取得された場合に、この補間アプローチは、より正確な標的情報を供することができるという利点がある。なお、リファレンス画像の各領域は、k空間画像データの量が同じであっても異なっていてもよく、各領域における画像データを取得するために必要な時間の長さに基づいて補間が計算されることに留意されたい。さらに、それらの領域は重なり合っていてもよい。
【0033】
それぞれの取得されたリファレンス画像の全k空間画像データおよび/または全実空間画像データは、リファレンスライブラリに保存されてもよい。あるいは、保存要件を軽減するために、目的の対象に関連する取得されたk空間画像データの一部分(すなわち、サブ画像マトリックス)および/または実空間画像データの一部分(すなわち、サブ画像)のみを保存することが可能である。保存されたリファレンス画像は、ステップ202、204で最初に取得された(または再構成された)リファレンス画像よりも空間分解能が低く、および/または画像フレームサイズがより小さくてもよい。本明細書における、「全k空間データ(entire k-space data)」または「ステップ200で最初に取得されたk空間データ(k-space data initially acquired in step 200)」という用語は、標準的なMRI走査手順を使用して得られる、例えば16×16、32×32、64×64、128×128、128×256、192×256または256×256のデータマトリックスを意味し、「部分k空間データ(partial k-space data)」という用語は、「全k空間データ」よりも小さい次元を有する任意のマトリックス(すなわち、順序付けられたデータ配列)を意味する。
【0034】
一実施形態では、k空間における位相符号化方向(すなわち行)および/または周波数符号化方向(すなわち列)のいくらかの生データは省略され、リファレンスライブラリに保存されない。例えば、図4Aを参照すると、ライブラリは、全ての単一列に生データを含んでよい一方、1行おきに位置付けられた生データを含んでよい。これにより、そこから再構成された実空間画像の垂直方向におけるフレームサイズ(サブ画像)を50%低減し得る。いくらかの実施形態では、サブ画像もリファレンスライブラリに保存される。このアプローチを使用して構築されたリファレンスライブラリは、サブ画像を含むが、サブ画像の空間解像度は妥協されない。すなわち、サブ画像は、最初に取得された生データから再構成される画像と同じ解像度を有する。
【0035】
別の実施形態では、k空間における最も周辺の走査線(または「外側領域」)における生データは切り捨てられ、k空間中心(または「中央領域」)に近い部分におけるデータのみが保存される。例えば、図4Bを参照すると、ライブラリは、位相符号化方向においてk空間中央領域に近い生データの50%のみを保存してよく、外側領域における生データの残りの50%を破棄する。このアプローチの利点は、例えば、実空間画像のフレームサイズを保持することを含むことである。しかし、高い空間周波数におけるデータが省略されているため、実空間画像におけるエッジおよび詳細についての情報が失われる可能性がある。したがって、このアプローチは、再構成された実空間画像の解像度を低下させる可能性がある。本明細書における「中心領域(center region)」は、k空間における周辺部を形成する生データのシーケンスを除く、全ての生k空間データを含んでもよい。あるいは、「中心領域」は、半径方向範囲の一部、例えば10%、20%、50%などを含んでもよい。「外側領域(outer region)」は、典型的に、中央領域の外側の全ての生データを含む。
【0036】
全生画像データまたはその一部のみをライブラリに保存するかどうかを決定するためには、保存容量、目的の対象の形状およびサイズ、画像の必要最小限の解像度などを含む、種々の要素を見積もる必要がある。例えば、目的の対象がその長さおよび幅において非対称形状(例えば、長方形もしくは楕円形の形状)を有し、および/またはその空間分解能が重要な事項である場合、図4Aに示すように、位相符号化方向における部分データおよび周波数符号化方向における全データを保存することが適切であってもよい。しかしながら、目的の対象がその長さおよび幅において同等のサイズを有し、および/またはその詳細の重要性がそれほど重要でない場合、図4Bに示すように、リファレンスライブラリは、k空間中心により近い生データの一部分を保存してもよい。
【0037】
再び図2を参照して、ステップ208において、ステップ206における画像から得られた位置情報(k空間データの各領域に関連する補間された標的位置を含む情報)および/または生k空間画像の取得中に取得された補完情報は、リファレンスライブラリにおけるそれぞれの(k空間および/または実空間の)画像に沿って、およびそれに関連して保存されてもよい。例えば、各リファレンス画像は、それに関連付けられた位置情報と組み合わされて(1以上のデータファイルを含むことができる)リファレンスレコードになり得る。あるいは、リファレンス画像および位置情報は、異なるデータ構造および/または異なるメモリ位置に保存されてもよく、追加のデータベースは、関連する位置情報とともに各画像をリンクしてもよい。
【0038】
準備ステップ200~208で構築されたリファレンスライブラリは、リアルタイム標的トラッキングのための目的の手順の間に続いて使用される。これは、いくらかの実施形態において、標的の処理が始まる前に準備工程が完了したことを意味する。別の実施形態では、特定の処理シーケンスのための準備ステップは、より早い処理シーケンス中に行われる。例えば、腫瘍の集束超音波アブレーションは、2以上のフェーズ(すなわち、腫瘍の中心領域が標的化される第1フェーズと、腫瘍の末梢領域が超音波に曝露される1以上の後続フェーズ)において実施されてよい。処理が進むにつれて腫瘍を取り囲む健康な組織へのリスクが増大するので、正確なリアルタイムのイメージングの必要性がある。したがって、第1フェーズ中の動きトラッキングは、従来の手段(すなわち、リファレンスライブラリに依存しない手段)による標的位置特定を可能にするのに十分低いイメージングレートで進行し、後続フェーズの動きトラッキングは、第1フェーズからの処理画像をリファレンス画像として使用して、より高いイメージングレートを可能にする。一般に、処理が複数の別個の処理シーケンスを含む場合、同じリファレンスライブラリを全てのシーケンスに使用してもよいし、または1以上の先行するシーケンス中に得られた画像を新しいリファレンス画像として使用して、各シーケンスのためにリファレンスライブラリをリセットしてもよい。さらに、いくらかの実施形態では、取得されたリファレンス画像のサブセット(例えば、呼吸サイクル中に得られた1つおきの画像)のみが、目的の処理シーケンスの前に処理され、標的トラッキングのための初期リファレンスライブラリとして使用され、目的の処理シーケンス中に、残ったリファレンス画像が続いて処理され、リファレンスライブラリを精緻化する。
【0039】
種々の実施形態では、標的の処理中に、目的の解剖学的領域が、例えば100msごとに繰り返してイメージングされ(ステップ210)、処理画像シーケンスが作成される。種々の実施形態では、画像取得時間を短縮するための処理中に、部分的な生k空間画像データ(または、ステップ202で取得された全k空間画像データとは対照的な「サブ画像マトリックス」)のみが取得される。処理中に取得された部分生画像データとリファレンスライブラリに保存された画像データの対応する部分とを比較することにより、各画像フレームにおける目的の対象(一般に動く対象)の位置が決定され、最もマッチングしたリファレンス画像が、画像類似性の適切なメトリック(ステップ212)を使用して識別される。例えば、図5Aおよび図5Bを参照して、処理画像の領域A、B、CおよびDにおけるk空間データは、リファレンスライブラリにおけるリファレンス画像(図3参照)の領域A、B、CおよびDそれぞれにおけるk空間画像データと比較してもよい。
【0040】
同様に、比較が実空間画像に対して実行される場合、処理サブ画像は、リファレンス画像に保存された実空間画像のそれぞれの対応する部分とのみ比較されてもよい。あるいは、各画像内の処理サブ画像または部分生データを最もマッチングさせる領域を識別するために、処理サブ画像または部分生データと、(リファレンス画像は、処理サブ各画像よりも大きなフレームサイズを有し得るため)リファレンス画像における様々な部分との間の類似性を計算するように、画像解析(例えば、パターンマッチング)を実行してもよい。続いて、最もマッチングしたリファレンス画像が、その中の最もマッチングした部分の類似性に基づいて、選択される。
【0041】
画像比較は、例えば、k空間または実空間画像データに基づいてもよい。すなわち、画像比較は、処理中に取得される部分生データからの実空間処理サブ画像の再構成を、必ずしも必要ではないが、含んでもよい。典型的には、比較はピクセル単位で行われる。ここで、「ピクセル」は、画像データアレイの要素(element)を指し、一般に、実空間座標またはk空間座標の関数として、振幅値および位相値をそれぞれ保存する。適切な類似性メトリックは、例えば、相互相関係数、二乗強度差の合計、相互情報(確率理論および情報理論で使用されるような情報)、比率画像一様性(すなわち、対応するピクセル値の標準偏差の標準化)、平均平方誤差、絶対差の合計、平方誤差の合計、(2つの画像における対応するピクセル間の差のアダマールもしくはは他の周波数変換を使用する)絶対的な変換された差の合計、または(MRI画像などの複雑な画像の場合での)複雑な相互相関、および画像登録に関連して、当業者に既知の他の技術が含まれる。
【0042】
いくらかの実施形態では、選択された類似性メトリックによって測定されるような、処理サブ画像(または部分生データ)と最も近いリファレンス画像との間の類似性が(メトリック固有の)類似性閾値と比較され、類似性のレベルが閾値のレベルを超える場合(典型的には、差異を測定するメトリックの場合、すなわち、画像間の、メトリックの値が閾値を下回る非類似性を意味する)にのみ、リファレンス画像が処理サブ画像に対するマッチングとみなされる。他の実施形態では、処理画像に最も類似するリファレンス画像は、絶対的な類似性にかかわらずマッチングしているとみなされる。
【0043】
図5A図5Dを参照して、処理中、k空間は複数の領域、(例えば、領域A~D)に分割されてもよい。領域Aの画像データを取得すると、マッチングプロセス(すなわち、対応する画像データ(つまり、ライブラリに保存されたリファレンス画像の領域Aにおける画像データ)に対する取得された画像データの比較)が実質的に同時に実行され、取得された処理画像データと「マッチングする(match)」1以上のリファレンス画像を識別する。識別されたリファレンス画像の数が、所定の閾値(例えば、5つ未満のリファレンス画像がマッチングする処理画像として識別される閾値)を下回る場合、さらに以下に記載するような、補完情報(例えば、追加の画像関連情報および/または動き関連情報)が、処理画像に最もよくマッチングする1つのリファレンス画像を決定するために供されてもよい。しかし、識別されたリファレンス画像の数が所定の閾値を超える場合、データ取得プロセス(すなわち、領域Bにおける画像データの取得)が継続される。処理画像データとマッチングするように識別されたリファレンス画像の数が所定の閾値を下回るまで、データ取得プロセスをさらに継続してもよい(例えば、図5Cに示す領域Cにおけるデータを取得してから、図5Dに示す領域Dにおけるデータを取得する)。もちろん、図5A図5Dに示すk空間データ取得のための例示的なシーケンスは、記載目的のみのためであり、処理画像の品質を最適化し、データ収集時間を短縮するために、あらゆる取得シーケンスを使用してもよい。
【0044】
さらに、処理画像における各領域のサイズは、1以上のデータ行を含んでよく、動的に変化してもよい。例えば、「マッチングした」リファレンス画像の数を所定の閾値よりも少なくするために、先行する処理画像が領域Aおよび領域Bにおける画像データの取得を必要とする場合、直近の処理画像における領域A内の面積は、先行する処理画像における領域Bの面積の半分を含むように拡張してもよい。しかし、先行する処理画像の領域Aにおける画像データが、所定の閾値よりも少ないリファレンス画像の数を識別するのに十分である場合、直近の画像における領域Aの面積は、先行する処理画像の領域Aにおける面積のサイズの半分に低減されてもよい。さらに、画像データの取得および処理は、順次または同時に実行されてもよい。例えば、領域Aにおける画像データは、ライブラリ内のリファレンス画像を識別するために処理されるが、領域Bにおける画像データは同時に取得されてもよい。
【0045】
図6は、種々の実施形態による処理画像内の画像データの取得および処理を示すフローチャート600である。第1ステップ602では、第1領域におけるk空間画像データが処理中に取得される。第2ステップ604では、(k空間または実空間における)取得された画像データは、実質的に同時に処理されて、1以上のマッチングするリファレンス画像を識別する。識別されたリファレンス画像の数が所定の閾値を下回る場合、補完情報が供されて、処理画像に最もよくマッチングする1つのリファレンス画像を決定する(ステップ606)。しかし、識別されたリファレンス画像の数が所定の閾値を超えている場合、データ取得プロセスは継続する。すなわち、次の領域の画像データを取得する(ステップ608)。ステップ602、604、608は、ステップ604で識別されたリファレンス画像の数が所定の閾値を下回るまで反復的に実施することができる。この場合も、処理中に取得された各領域における生k空間データの量および位置は、動的に変化し得る。
【0046】
k空間画像データの取得が2つの画像マトリックス間の類似性を計算することに比べて比較的長いプロセスであるので、このアプローチは、処理中の(トラッキングのための)画像取得時間を、取得された処理データと最もよくマッチングするリファレンス画像を識別する間に、部分k空間画像データのみを取得することによって低減することができ、それによって、以下にさらに記載するように、マッチングするリファレンス画像から直近の処理画像における目的の対象の位置を供することができる。
【0047】
一般に、上述したように、リファレンスライブラリは、ステップ200で最初に取得された全生データを保存するが、部分k空間データのみが処理中にトラッキングするために必要とされる。いくらかの実施形態では、リファレンスライブラリは部分生データを保存し、処理中に、生k空間データがリファレンスライブラリに保存された部分データに基づいて取得される。リファレンスライブラリに保存された画像データの量にかかわらず、処理中に部分k空間データを取得するために様々なアプローチを実施することができる。例えば、図7Aを参照して、位相符号化方向における少ない(例えば、1行おきに取得される)走査線数でトラッキングに用いるk空間画像データを取得してよく、一方で、列毎に周波数符号化方向におけるデータを取得し、画像取得時間を低減する。低減された生データ量から再構成された実空間画像のフレームサイズは、垂直方向に50%減少するが、実空間画像の空間解像度は、全ての行からの画像データを有する画像の空間解像度と同じである。したがって、このアプローチは、非対称形状を有する(すなわち、幅と著しく異なる長さを有する)解剖学的領域をイメージングするのに適している。しかし、解剖学的領域が同等の長さおよび幅を有する場合でさえ、このアプローチを使用して部分生データを取得することが可能であることに留意されたい。解剖学的領域の幅が画像の垂直視野よりも大きい場合、折り返しアーチファクトが現れることがある。種々の実施形態では、このアーチファクトは、あらゆる適切な技術(例えば、目的領域を囲む面積を選択的に飽和させるMRIシーケンスを適用すること)を使用して除去される(または少なくとも低減される)。
【0048】
別の実施形態では、画像走査のパーセンテージが低減される。すなわち、処理中の画像取得時間を短縮するように、k空間の一部のみが走査される。例えば、図7Bを参照して、位相符号化方向におけるk空間の中央領域に位置するデータ点のみを取得し、一方で位相符号化方向における外側領域に位置する残りのデータは取得しない。このアプローチは、高い空間周波数でのデータの省略に起因する実空間画像における解像度低下をもたらす場合があるが、実空間画像のフレームサイズは、有利には変化しないままである(高周波数データおよび低周波数データの両方を含む画像のフレームサイズに対応する)。
【0049】
図7Cを参照して、さらに別の実施形態では、k空間画像データは、図7Aおよび図7Bで記載したアプローチの組合せを使用して取得される。すなわち、k空間の中心領域に位置するデータのみを取得し、位相符号化方向における少ない走査線数で中心領域におけるデータを取得し、毎列ごとに周波数符号化方向におけるデータを取得する。
【0050】
k空間マトリックスにおける全てのデータ点には、完全な実空間画像を再構成するために必要な情報の一部が含まれているため、k空間データを小さくすると、実空間画像の空間解像度および/またはフレームサイズが小さくなる場合がある。例えば、高い空間周波数でより小さいk空間データを取得すると、再構成された画像における、境界および輪郭ならびに構造の詳細に関する情報が少なくなる場合があり、一方で、低い空間周波数でより小さいk空間データを取得すると、より小さい画像コントラストをもたらす場合がある。処理画像がより小さい解像度および/またはより小さいフレームサイズを有する場合、最もマッチングするリファレンス画像を識別しようとするときに、結果が曖昧となる場合がある。すなわち、複数のリファレンス画像が識別される場合がある。
【0051】
例えば、図8を参照して、リファレンスライブラリは、呼気ステージ804および吸入ステージ806を含む、呼吸サイクル中に時分割されたインターバルで得られた目的の解剖学的領域のリファレンス画像のシリーズ802を含んでよい。処理中にサブ画像またはより解像度の低い画像808が取得された場合、処理画像との、高く、また比較的同等の類似性を有する2つのリファレンス画像(例えば、呼気ステージ804中に得られた1の画像810、および吸入ステージ806中に得られた別の画像812)があってよい。
【0052】
再び図2を参照して、種々の実施形態では、補完情報(例えば、画像関連情報および/または動き関連情報)を供するために、目的の対象は、処理画像の取得中に他の手段によって実質的に同時にトラッキングされる。これによって、リファレンス画像中の曖昧さを解決できる(ステップ214)。一実施形態では、補完トラッキングシステム120が、MRI装置100に実装されるか、または補完情報を供するために患者に取り付けられる(図1参照)。例えば、動きセンサ(例えば、呼吸モニタベルト)を患者の胸部の周りに巻き付けて、呼吸サイクルのステージに関する情報を供することができる。この情報を使用して、先行するステップ210、212で識別された複数のリファレンス画像の中から最もマッチングしたリファレンス画像を選択する(ステップ216)。例えば、呼吸モニタベルトが、患者が吸入ステージにあることを示す場合、図8における画像812は、処理画像に最もよくマッチングするリファレンス画像であると決定される。これは、例えば、呼吸サイクル中にいつ取得されたかを示す画像を伴うメタデータを含むことによって達成されてよい。他の実施形態では、処理中に取得された補完情報は、リファレンスライブラリに保存された補完情報と比較される。補完情報と画像類似性との比較に基づいて、部分生データ(および/またはサブ画像)および処理中に取得された補完情報に最もマッチングするリファレンス画像が識別される。
【0053】
あるいは、補完情報は、先行する画像において識別された標的の動きによって供されてもよい。例えば、先行する少数の処理画像の分析が、標的が吸入していることを示す場合、マッチングするリファレンス画像は、吸入ステージのみに対応する(例えば、特定されるメタデータでマークされた)画像から選択される。したがって、図8の状況において、曖昧さは解決され、リファレンス画像812は最もマッチングしたリファレンス画像であると判定される。
【0054】
補完情報を考慮した後であっても直近の処理画像とマッチングすると識別された2つ以上のリファレンス画像が存在する場合、処理手順は、いくらかの実施形態では、短期間の場合(例えば、1または2の画像フレームの場合)、継続されてもよく、マッチングしたリファレンス画像がその後に取得された処理画像のために識別された場合、手順の遅延が回避される。その間に、超音波ビームは、直近の解決されたトラッキング点に基づいて、静止しているか、または(例えば、予測アルゴリズムによって)方向づけられてもよい。しかし、画像をスキップすることが安全でない場合、または多くの連続する処理画像がリファレンスライブラリ画像のいずれともマッチングできない場合、手順は、標的位置が確認されるまで(例えば、従来の、計算上より高価な手段によって)停止または中断され、その後に再開される。
【0055】
図9Aを参照して、典型的にはMRI走査の間、k空間データは連続的な行単位で取得される。しかし、この取得シーケンスは、目的の動く解剖学的対象をリアルタイムでトラッキングするのに効率的ではない場合がある。種々の実施形態では、処理中のk空間におけるデータ取得のシーケンスは、各k空間位置に符号化された情報のタイプに基づいて決定される。例えば、図9Bを参照して、一実施形態では、k空間画像データは、大きな位相符号化領域および小さな位相符号化領域において交互に取得される。別の実施形態では、図9Cを参照して、高周波領域と低周波領域とでk空間の画像データを交互に1行ずつ取得する。
【0056】
種々の実施形態において、図9Dを参照して、k空間データを螺旋状に取得する。上述のような処理中の部分k空間データの取得は、この走査アプローチにも同様に適用されてもよい。例えば、第1ショットから取得された画像データを、リファレンスライブラリに保存された対応する画像データ(すなわち、同じ螺旋軌道上に位置する画像データ)と比較し、1以上のマッチングするリファレンス画像を識別してもよい。さらに、処理標的または目的の他の対象の位置をリアルタイムでトラッキングすることを可能にしつつ、走査ショットの数および位置をデータ取得の遅延を低減するために変化させてもよい。
【0057】
再び図2を参照して、一旦マッチングするリファレンス画像が識別されると、そのリファレンス画像に関連する前に決定された位置情報から、標的の位置を容易に推測することができる(ステップ218)。例えば、保存された位置情報が標的座標自体を含むか、または標的座標自体からなる場合、これらの座標は、直近の処理画像における標的の座標であると解釈される。したがって、再構成された処理画像における標的または他のランドマークを識別する必要なしに、標的をリアルタイムでトラッキングすることができる。さらに、いくらかの実施形態では、各処理画像が、両方の画像の生データまたはその一部に基づいて、リファレンス画像の1つに関連付けられる場合、処理画像の再構成自体は不要である。例えば、再び図3および図5Aを参照して、(x+1)番目の画像の領域Aにおけるk空間データ(図3参照)が、処理画像の領域Aにおける画像データ(図5参照)と最もマッチングするように識別される場合、(x+1)番目のリファレンス画像において、領域Aに関連する標的位置の座標から処理画像における標的位置の座標が推測される。したがって、図5Aの処理画像における標的位置の1の座標は、(x+1)番目のリファレンス画像の領域Aに関連する値55を有する。補間アプローチは、特に、部分k空間データのみが取得され、リファレンスライブラリにおける部分生データとの比較に使用される場合に、処理中に標的位置をより正確に識別することを有利に可能し得る。
【0058】
トラッキングされた標的座標に基づいて、任意の標的の動きを補償するように、超音波(または他の処理エネルギー)ビームを処理手順中に導いてよい(ステップ220)。同様に、非標的器官または非標的組織がトラッキングされる場合、それらの座標は、処理エネルギーへのそれらの暴露を回避または最小限に抑えるように、超音波(または他のエネルギー)ビームを導き、および/または形成するために使用されてもよい。特に、音響ビームによる損傷を受け易い器官は、高い考慮がしばしば必要であり、そのような器官の位置は、エネルギービームが標的を加熱するように形成され、一方でセンシティブな動く隣接器官への損傷を回避するようにビーム形成中に考慮されてもよい。
【0059】
いくらかの実施形態では、リファレンスライブラリは、手順中にリアルタイムで得られる画像に基づいて拡張される。例えば、新たに取得された画像が、初期リファレンスライブラリに集合的に表された領域の外に標的(または他の目的の対象)の位置があることを明らかにする場合、新たに取得された画像を分析して標的の位置を決定し、位置情報と共にリファレンスライブラリに追加される。オプションとして、画像処理中に処理を一時停止し、画像分析が完了した後に再開してもよい。極端な場合では、手順の開始時にリファレンスライブラリが空であってもよく、手順が実行されるときにリファレンス画像が連続的に追加されてもよい。これは、正確さの低下が臨床的に許容可能である場合、計算のオーバーヘッド(例えば、ライブラリが大きい、また先行するセッションからの画像を含む場合)、または計算の効率性を犠牲にして精度間の設計上のトレードオフを容易にする(例えば、先行するセッションからのリファレンス画像が直近の処理画像シーケンスと関連する可能性が低い場合、この場合においてリファレンスライブラリは直近のシーケンス中に構築される)。
【0060】
トラッキングされた標的動きが周期的(例えば、呼吸サイクル中)である用途では、リファレンス画像は、典型的には、動きのサイクル中に連続的に採取され、したがって、処理手順中のトラッキング精度は、トラッキングの結果をリファレンスライブラリに対してフィルタリングすることによって改善することができる。例えば、処理中の経時的な標的動きを示す曲線は、リファレンスライブラリの取得中の経時的な標的動きに基づいて比較され、スムージングされてもよい。さらに、リファレンスライブラリの画像に反映された標的動きは、誤ったトラッキング結果を検出するように供することができる(例えば、ある時点で、トラッキングされた標的がサイクルにおけるその期間中の動きの傾向に逆らって動くようにみえる)。
【0061】
いくらかの実施形態では、手順中のイメージングは、インビボ温度を定量的にモニタするために共に使用される。これは、処理の進行を評価するため、ならびに処理領域の周囲の組織への損傷を回避するように、熱伝導およびエネルギー吸収における局所的な差を補正するために、処理領域(例えば、熱によって破壊される腫瘍)の温度を連続的にモニターする必要があるMRガイド熱療法(例えば、MRgFUS処理)において特に有用である。MRイメージングによる温度のモニタリング(例えば、測定および/またはマッピング)は、一般に、MRサーモメトリーまたはMRサーマルイメージングと呼ばれる。
【0062】
MRサーモメトリーに利用可能な様々な方法の中で、プロトン共鳴周波数(PRF)シフト法は、温度変化に対する優れた線形性、組織タイプからの近独立性、ならびに高い空間的解像度および時間的解像度を有する温度マップ取得のためにしばしば選択される方法である。PRFシフト法は、水分子中のプロトンのMR共鳴周波数が温度と共に線形的に変化する(比例定数が有利には組織タイプ間で比較的一定である)現象に基づいている。温度による周波数変化は小さいので、バルク水については0.01ppm/℃、組織では約-0.0096~-0.013ppm/℃であり、PRFシフトは、典型的に、イメージングが2回行われる位相感受性イメージングで検出される。位相感受性イメージングでは、まず、温度変化の前にベースラインPRF位相画像を取得すること、次いで、温度変化の後に第2位相画像(すなわち、処理画像)を取得すること、それによって、温度変化に比例する小さな位相変化を捕捉することができる。次いで、静磁場の強度およびエコー時間(TE)(例えば、グラジエントリコールドエコー)などのイメージングパラメータを考慮しつつ、(再構成された、すなわち実空間の)画像から、ピクセルごとにベースライン画像と処理画像との間の位相差を決定し、その位相差をPRF温度依存性に基づいて温度差に変換することによって、温度変化のマップを計算することができる。
【0063】
ベースライン画像の取得時のイメージング面積における温度分布が分かっている場合、処理画像に対応する絶対温度分布を得るために、そのベースライン温度に温度差マップを加えることができる。いくらかの実施形態では、ベースライン温度は、イメージング領域全体にわたって単純に均一な体温である。いくらかの実施形態では、より複雑なベースライン温度分布は、数学的適合(例えば、滑らかな多項式フィット)に基づく補間および/または外挿と組み合わせて、様々な位置での直接温度測定による処理の前に決定される。
【0064】
MRサーモメトリーの状況では、動きトラッキングは、上述のように、周期的または非周期的動作の予想範囲をカバーするリファレンス画像のライブラリを取得することによって、また処理に先行する解剖学的領域における温度に対応するベースライン位相マップを供することによって達成することができる。処理画像の温度マップを決定するために、(上述の方法のいずれかを使用して)空間的に整列されたベースライン画像が識別され、次いで、選択されたベースラインおよび処理画像が処理されて温度の変化が決定される。この方法は、しばしばマルチベースライン・サーモメトリーと呼ばれる。図10Aに示される従来の実装では、マルチベースライン・サーモメトリーは、超音波処理または他の温度影響処理(ステップ1000、1002)の前に(実空間の)ベースライン画像のライブラリを取得すること、超音波処理を実行すること(ステップ1004)、処理領域、およびそこから実空間画像の再構成のための生画像データを取得する(ステップ1006、1008)、例えば、画像類似性基準および/または他のトラッキング手段によって供される補完的な情報に基づいて、ベースラインライブラリから適切なリファレンス画像を選択すること(ステップ1010)、ならびに処理画像およびリファレンス画像から熱マップを計算すること(ステップ1012)を含む。ベースライン画像が処理画像に十分に一致しない場合(例えば、標的が画像によってカバーされる領域外に移動したため)、処理は停止されるか(ステップ1014)、あるいは、上述のようにライブラリ拡張処理が開始される。さもなければ、温度は、反復画像取得、リファレンス選択、および処理によってモニターされ続けることができる。
【0065】
図10Bは、本発明の一実施形態による、ビーム調整およびサーモメトリーの目的のための動作トラッキングを組み合わせた方法を示す。再び、周期的または非周期的な動きの予測範囲をカバーするリファレンス/ベースライン画像のライブラリが、異なる動きステージ中に生画像データを取得することによって処理の前に生成され(ステップ1020)、オプションとして、そこから実空間リファレンス/ベースライン画像を再構成する(ステップ1022)。標的(および/または目的の解剖学的対象または特徴)は、それらの画像において(例えば、容易に識別可能な解剖学的ランドマークに対して)、先行する画像の計算的にシフトされたコピーに対する画像、他のトラッキング手段によって、または上述した方法のいずれかによって供される補足的な情報の関連付けを手段として、トラッキングされる(ステップ1024)。識別された標的位置(例えば、画像内の行番号および列番号または他の座標系の座標)は、それぞれのリファレンス画像に沿って、またはそれぞれのリファレンス画像に関連して(例えば、ジョイントデータレコードにおいて、要素がリファレンス画像にリンクされている分離したデータベースにおいて)保存される。処理中、処理領域について画像データが取得され(ステップ1028)、類似性に基づいてリファレンス/ベースライン画像が選択される(ステップ1030)。図示するように、ベースラインライブラリとの比較に使用される画像データは、再構成された実空間画像を構成する必要はない。むしろ、より典型的には、適切なリファレンス画像を識別するために(処理画像およびベースライン画像の両方の)生(k空間)データを使用してもよい。いくらかの実施形態では、完全なk空間画像を収集する必要はない。その代わりに、リファレンス選択の目的で部分生データが使用される。
【0066】
選択されたリファレンス画像およびそれに関連する標的座標に基づいて、(例えば、ビーム焦点を標的上に確実に保持するように、ビーム形成および/またはビームステアリングによって)超音波処理または他の処理手順を開始してよく、または調整してもよい(ステップ1032)。さらに、サーモメトリーを容易にするために、処理領域の生画像データの取得を(完了していない場合、)完了してもよく(ステップ1034)、また実画像を再構成してもよく(ステップ1036)、さらに温度マップを得るように当業者に既知の方法を用いて処理してもよい(ステップ1038)。さらに、ステップ1034で取得されたデータを使用して、よりアップデートされたトラッキングのための追加情報を供することができる。次いで、イメージングプロセスおよび温度マッピングプロセスは、同じまたは別のサブ超音波処理(すなわち、全体的な超音波処理の内の超音波処理のシーケンスの1つ)のために繰り返されてもよい。図示するように、実空間画像の再構成(ステップ1036)の前に、処理用エネルギービームを再形成または再方向付けをすること(ステップ1032)ができる。

このようにして、処理(例えば、超音波処理)、イメージングおよび画像処理を並行して実施することができ、全体の処理時間を短縮することができる。
【0067】
本明細書による動きトラッキング方法は、図1に示すMRgFUSシステム100などの(それ以外は従来の)画像ガイド処理システムを使用して、処理装置(例えば、超音波トランスデューサアレイの位相および振幅を設定するビームフォーマ)およびイメージング装置と連通する、補完トラッキングシステム120および適切な画像処理設備および制御設備(例えば、計算ユニット112と統合された設備)と組み合わせて実施することができる。画像処理設備および制御設備は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはハードワイヤリングのあらゆる適切な組合せで実装することができる。図11は、設備が適切にプログラムされた汎用コンピュータ1100によって供される例示的な実施形態を示す。コンピュータは、中央処理ユニット(CPU)1102、システムメモリ1104、および不揮発性大容量保存デバイス1106(例えば、1以上のハードディスクおよび/または光学保存ユニットなど)を含む。コンピュータ1100は、双方向システムバス1108をさらに含み、双方向システムバス1108にわたってCPU1102、メモリ1104および保存デバイス1106は、互いに連通し、また内部または外部のインプット/アウトプットデバイス(例えば、従来のユーザインタフェースコンポーネント1110(例えば、スクリーン、キーボードおよびマウスを含むコンポーネント)、処理装置1112、イメージング装置1114、補完トラッキングシステム1116、および(オプションとして)絶対温度測定を容易にする温度センサ1118を含むデバイス)と連通している。
【0068】
システムメモリ1104は、CPU1102の動作および他のハードウェアコンポーネントとの相互作用を制御する、モジュールのグループとして概念的に示された指示を含む。オペレーティングシステム1120は、大容量保存デバイス1106のメモリ割り当て、ファイル管理およびオペレーションなどの低レベル基本システム機能の実行を指示する。より高いレベルでは、1以上のサービスアプリケーションが、画像処理、動きトラッキング、および(オプションとして)サーモメトリーに必要な計算機能を供する。例えば、図示するように、システムは、イメージング装置1114から受信した生画像データから実空間画像を再構成するための画像再構成モジュール1122と、(生画像または再構成された画像いずれの)処理画像とリファレンス画像との間の類似性を測定する類似性測定モジュール1124と、測定した類似性、ならびにオプションとして補完トラッキングシステム1116から受信した補完情報、および/または画像分析モジュール1128によって供される位置情報および/またはステージ情報に基づいて、適切なリファレンス画像を選択するためのリファレンス選択モジュール1126とを含む。画像解析モジュール1126は、再構成されたリファレンス画像から目的の標的および/または他の対象の位置情報および/またはステージ情報を抽出する。さらに、システムは、検出された動きを補償するために、処理装置の位相シフトまたは他のパラメータを計算するためのビーム調整モジュール1130と、処理画像からリファレンスを減算して温度差マップを得る熱マップモジュール1132とを含んでもよく、選択されたリファレンスベースラインに対応する絶対温度が分かっている場合には、処理画像の絶対温度マップを取得する。様々なモジュールは、限定する訳ではないが、C/C++、C#、Ada、Basic、Cobra、Fortran、Java、Lisp、Perl、Python、Ruby、もしくはObject Pascalなどの高レベル言語、または低レベルのアセンブリ言語を含む、あらゆる適切なプログラム言語においてプラグラムされてもよい。いくらかの実施形態では、異なるモジュールが異なる言語でプログラムされる。
【0069】
本発明は、処理前にリファレンスライブラリを確立すること、処理中に新しい画像シーケンスを取得すること、および処理画像とライブラリに保存されたリファレンス画像との間の画像マッチングを実行することによって動く解剖学的対象をトラッキングすることを参照して記載されているが、解剖学的対象の動きトラッキングが処理中にのみ行われるべきであることを意図していない。むしろ、上述のアプローチは、2段階の手順が含まれている場合に、動く標的をトラッキングするためのあらゆるアプリケーションで実施されてもよい。リファレンスライブラリは、画像レートがあまり重要でないか、重要でない1段階で構成されてよく、新しい画像シーケンスは、リアルタイムの画像レートが好ましい別のステージで取得される。
【0070】
本明細書で使用される用語および表現は、説明としての用語および表現として使用され、限定ではなく、そのような用語および表現の使用において、示され記載された特徴またはその一部分の均等物を排除することを意図するものではない。さらに、本発明の特定の実施形態を記載したが、本発明の主旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に開示された概念を組み込んだ他の実施形態を使用することができることは、当業者には明らかであろう。したがって、記載された実施形態は、全ての点において、例示的なものであって制限的でないとみなされるべきである。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図11
【手続補正書】
【提出日】2022-04-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理の間に動く解剖学的対象をトラッキングするための方法であって、
(a)前記処理の前に、
(i)前記解剖学的対象の動き中に、該解剖学的対象を含んで成る解剖学的領域の、各々のリファレンス画像が前記動きの異なるステージに対応するリファレンス画像のシリーズを取得すること、および
(ii)各画像について、前記対象に関連付けられた位置を決定するように前記画像を処理すること、
(b)前記処理中に、
(i)前記解剖学的対象に関連付けられた画像データを取得するために、複数の走査線を含んで成る走査シーケンスを実行すること、
(ii)前記画像データの取得中に前記解剖学的対象に関連付けられた補完情報を取得すること、
(iii)少なくとも1つのマッチングするリファレンス画像を識別するように、前
記取得された画像データと前記リファレンス画像との間の類似性を計算すること、
(iv)前記マッチングするリファレンス画像の数が閾値を下回っているかどうかを判定すること、ならびに
前記マッチングするリファレンス画像の数が閾値を下回っている場合、前記類似性および前記補完情報に基づいて前記マッチングするリファレンス画像のうちの1つを選択し、該選択されたリファレンス画像における前記解剖学的対象に関連付けられた位置から該解剖学的対象の位置を推測すること、
前記マッチングするリファレンス画像の数が閾値を下回っていない場合、所定の走査シーケンスに基づいて、前記解剖学的対象の前記画像データを取得するように次の走査ラインで前記走査シーケンスを実行すること、ならびにステップ(ii)、(iii)および(iv)を繰り返すことを含んで成る、方法。
【外国語明細書】