(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095856
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】増殖分化因子15融合タンパク質
(51)【国際特許分類】
C07K 14/52 20060101AFI20220621BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220621BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20220621BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20220621BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20220621BHJP
A61K 38/19 20060101ALI20220621BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20220621BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20220621BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20220621BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20220621BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20220621BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20220621BHJP
【FI】
C07K14/52
A61P43/00 111
A61P3/00
A61P3/04
A61P3/06
A61K38/19
A61K47/68
A61K47/65
C12N15/12 ZNA
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064965
(22)【出願日】2022-04-11
(62)【分割の表示】P 2019562592の分割
【原出願日】2019-04-08
(31)【優先権主張番号】62/655,108
(32)【優先日】2018-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユイメイ・シオン
(72)【発明者】
【氏名】ケネス・ウィリアム・ウォーカー
(72)【発明者】
【氏名】ミュリエル・マリー・ベニアント・エリソン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】療法剤として投与できる有効なGDF15分子を提供する。
【解決手段】いくつかの実施形態では、GDF15分子は、GDF15領域がFc領域に融合したGDF15-Fc融合体である。いくつかの実施形態では、GDF15領域は、リンカーを介してFc領域に融合している。さらに、本明細書において提供されるのは、GDF15分子を作製及び使用するための方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンカーを介してFc領域に連結されたGDF15領域を含む融合タンパク質であって、前記GDF15領域は、配列番号6のアミノ酸配列及び少なくとも1つの変異を含み、前記変異の少なくとも1つは、5位のアスパルテートである、融合タンパク質。
【請求項2】
前記5位のアスパルテートは、グルタメートに変異している、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記GDF15領域は、配列番号16のアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記GDF15領域は、3位のアスパラギンの変異をさらに含む、請求項1又は2に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
3位のアスパラギンは、グルタミンに変異している、請求項3に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記GDF15領域は、配列番号18のアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記リンカーは、(G4S)nリンカー又は(G4Q)nリンカーであり、nは、0より大きい、請求項1~6のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
nは、1又は2である、請求項7に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
リンカーを介してFc領域に連結されたGDF15領域を含む融合タンパク質であって、前記GDF15領域は、配列番号6のアミノ酸配列及び少なくとも1つの変異を含み、前記変異の少なくとも1つは、3位のアスパラギン又は5位のアスパルテートであり、且つ前記リンカーは、(G4Q)nリンカーであり、nは、2より大きい、融合タンパク質。
【請求項10】
前記nは、3又は4である、請求項7又は9に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
前記GDF15領域は、5位のアスパルテートのグルタメートへの変異を含む、請求項9又は10に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
前記GDF15領域は、配列番号16のアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
前記GDF15領域は、前記3位のアスパラギンのグルタミンへの変異を含む、請求項9~11のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
前記GDF15領域は、配列番号18のアミノ酸配列を含む、請求項13に記載の融合タンパク質。
【請求項15】
前記Fc領域は、電荷対の変異を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項16】
前記Fc領域は、トランケートされたヒンジ領域を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項17】
前記Fc領域は、表3から選択される、請求項1~10のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項に記載の融合タンパク質を投与することを含む、代謝症候又は障害を処置するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、その全体を本明細書に援用する、2018年4月9日に出願された米国仮特許出願第62/655,108号明細書の利益を主張する。
【0002】
配列表
本出願は、電子フォーマットの配列表と共に提出されている。配列表は、2019年3月15日に作成されたA-2239-WO-PCT_SeqList_ST25.txtという名称のファイル(サイズは109kb)として提供される。配列表の電子フォーマットにおける情報は、その全体を本明細書に援用する。
【0003】
発明の属する技術分野
本開示は、GDF15融合タンパク質などのGDF15分子、その組成物、並びにそうしたタンパク質を作製及び使用するための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
増殖分化因子15(GDF15)は、マクロファージ阻害性サイトカイン1(MIC1)(Bootcov MR,1997,Proc Natl Acad Sci 94:11514-9)、胎盤骨形成因子(PLAB)(Hromas R 1997,Biochim Biophys Acta.1354:40-4)、胎盤トランスフォーミング増殖因子β(PTGFB)(Lawton LN 1997,Gene.203:17-26)、前立腺由来因子(PDF)(Paralkar VM 1998,J Biol Chem.273:13760-7)及び非ステロイド系抗炎症剤活性化遺伝子(NAG-1)(Baek SJ 2001,J Biol Chem.276:33384-92)とも呼ばれ、約25kDaのホモ二量体として血漿中を循環する分泌タンパク質である。GDF15は、高親和性でGDNFファミリー受容体α様(GFRAL)に結合する。GDF15誘導性細胞内シグナル伝達は、共受容体RETとGFRALの相互作用を必要とすると考えられる。
【0005】
GDF15は、複数の生物活性との関連性が指摘されている。GDF15の増加は、体重減少と相関関係にあることが示されており、GDF15の投与は、食物摂取量及び体重を減少させることが示されている。したがって、療法剤として投与できる有効なGDF15分子が求められている。本開示は、この要求を満たすGDF15分子を提供し、関連する利点を提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Bootcov MR,1997,Proc Natl Acad Sci 94:11514-9
【非特許文献2】Hromas R 1997,Biochim Biophys Acta.1354:40-4
【非特許文献3】Lawton LN 1997,Gene.203:17-26
【非特許文献4】Paralkar VM 1998,J Biol Chem.273:13760-7
【非特許文献5】Baek SJ 2001,J Biol Chem.276:33384-92
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書において提供されるのは、GDF15分子、その分子を作製する方法及びその分子を使用する方法である。いくつかの実施形態では、GDF15分子は、GDF15-Fc融合タンパク質である。融合タンパク質は、Fc領域に連結されたGDF15領域を含んでもよい。いくつかの実施形態では、GDF15領域は、リンカーを介してFcに連結される。
【0008】
いくつかの実施形態では、GDF15領域は、配列番号6のアミノ酸配列と、少なくとも1つの変異、たとえば3位のアスパラギンの変異(N3)、5位のアスパルテートの変異(D5)又は3位のアスパラギン及び5位のアスパルテートの変異とを含む。いくつかの実施形態では、GDF15領域は、5位のアスパルテートのグルタメートへの変異(D5E)を含む。いくつかの実施形態では、GDF15領域は、配列番号16のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、GDF15領域は、3位のアスパラギンのグルタミンへの変異(N3Q)を含み、たとえば、アミノ酸配列配列番号14を有する。なお他の実施形態では、GDF15領域は、N3Q変異及びD5E変異の両方を含む。いくつかの実施形態では、GDF15領域は、配列番号18のアミノ酸配列を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、G4S(配列番号19)リンカー又はG4Q(配列番号24)リンカーであるリンカー、たとえば(G4S)nリンカー又は(G4Q)nリンカーを有し、nは、0より大きい。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、G4A(配列番号58)リンカーであるリンカー、たとえば(G4A)nリンカーを有し、nは、0より大きい。いくつかの実施形態では、nは、1又は2である。いくつかの実施形態では、nは、3、4、5、6、7又は8など2より大きい。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号19、20、21、22、23、24、25又は58のアミノ酸配列を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、電荷対の変異を含むFc領域を有する。いくつかの実施形態では、Fc領域は、トランケートされたヒンジ領域を有する。いくつかの実施形態では、Fc領域は、表3から選択される。
【0011】
本明細書においてさらに提供されるのは、本明細書に開示された融合タンパク質を含む二量体及び四量体である。一実施形態では、二量体は、配列番号39~57のいずれか1つのアミノ酸配列を含むGDF15-Fc融合体を含む。いくつかの実施形態では、表6に示したように、配列番号39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56又は57のアミノ酸配列を含むGDF15-Fc融合体は、配列番号32、33、34、35、36又は37のアミノ酸配列を含むFcドメインと二量体化する。いくつかの実施形態では、二量体は、四量体を形成する。本明細書に開示されたGDF15分子を産生及び使用する方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】ビヒクル、3mg/kgの陽性対照FGF21-Fc、1.5mg/kgのscFc-GDF15又は1.5mg/kgの二量体FcΔ10(-)-(G4S)4-GDF15:FcΔ10(+、K)を週1回6週間投与し、続いて5週間の休薬期を設けたカニクイザルの体重に対する作用を示すグラフである。
【
図2】ビヒクル、3mg/kgの陽性対照FGF21-Fc、1.5mg/kgのscFc-GDF15又は1.5mg/kgの二量体FcΔ10(-)-(G4S)4-GDF15:FcΔ10(+、K)を週1回6週間投与し、続いて5週間の休薬期を設けたカニクイザルのトリグリセリドレベルに対する作用を示す図表である。
【
図3】カチオン交換後のFcΔ10(-)-(G4S)4-GDF15のプロファイルを示す。
【
図4】FcΔ10(+)-(G4)-GDF15のペプチドマップである。
【
図5】マウスにおける、二量体FcΔ10(-)-GDF15(Δ3):FcΔ10(+、K)(配列番号41及び32);FcΔ10(-)-GDF15(N3D):FcΔ10(+、K)(配列番号42及び32);FcΔ10(-、CC)-GDF15(Δ3):FcΔ10(+、K、CC)(配列番号43及び34);FcΔ10(-、CC)-GDF15(N3D):FcΔ10(+、K、CC)(配列番号44及び34))及びFcΔ10(-)-(G4S)4-GDF15:FcΔ10(+、K)(配列番号39及び32)の用量の関数としての、食物摂取量に対する作用を示すグラフである。
【
図6】マウスにおける、時間の関数としての、FcΔ10(-)-GDF15(Δ3)(配列番号41);FcΔ10(-)-GDF15(N3D)(配列番号42);FcΔ10(-、CC)-GDF15(Δ3)(配列番号43);及びFcΔ10(-、CC)-GDF15(N3D)(配列番号44))の血清中濃度のグラフである。
【
図7】ビヒクル、3mg/kgの陽性対照FGF21-Fc、0.5mg/kg若しくは3.0mg/kgのFcΔ16(-、CC)-GDF15(Δ3/D5E):FcΔ16(+、K、CC)(配列番号45及び35)、0.5mg/kg若しくは3.0mg/kgのFcΔ16(-、CC)-GDF15(N3Q/D5E):FcΔ16(+、K、CC))(配列番号46及び35)又は0.5mg/kg若しくは3.0mg/kgのFcΔ16(-)-GDF15(N3Q/D5E):FcΔ16(+、K)(配列番号47及び36)を週1回4週間投与し、続いて4週間の休薬期を設けたカニクイザルの体重に対する作用を示すグラフである。
【
図8】ビヒクル、1.5mg/kgのFcΔ10(-)-(G4S)4-GDF15:FcΔ10(+、K)(配列番号39及び32)、1.5mg/kgのFcΔ16(-)-(G4Q)4-GDF15(N3Q):FcΔ16(+、K)(配列番号49及び36);1.5mg/kgのFcΔ16(-)-(G4Q)4-GDF15(N3Q/D5E):FcΔ16(+、K)(配列番号50及び36)、1.5mg/kgのFcΔ16(-)-G4S-GDF15(N3Q/D5E):FcΔ16(+、K)(配列番号54及び36)又は1.5mg/kgのFcΔ10(-、L234A/L235A)-(G4Q)4-GDF15(N3Q/D5E):FcΔ10(+、K、L234A/L235A)(配列番号57及び37)を週1回2週間投与したカニクイザルの体重に対する作用を示すグラフである。
【
図9】FcΔ16(-)-(G4Q)4-GDF15(N3Q/D5E):FcΔ16(+、K)(配列番号50及び36)を投与したob/obマウスにおける、用量の関数としての食物摂取量のグラフである。
【
図10】FcΔ10(-、L234A/L235A)-(G4Q)4-GDF15(N3Q/D5E):FcΔ10(+、K、L234A/L235A)(配列番号57及び37)を投与したob/obマウスにおける、用量の関数としての食物摂取量のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において提供されるのは、GDF15分子、その分子を作製する方法及びその分子を使用する方法である。いくつかの実施形態では、GDF15分子は、GDF15-Fc融合タンパク質である。融合タンパク質は、Fc領域に連結されたGDF15領域を含んでもよい。いくつかの実施形態では、GDF15領域は、リンカーを介してFcに連結される。
【0014】
いくつかの実施形態では、GDF15領域は、野生型GDF15を含む。ヒトGDF15及びマウスGDF15はどちらも、シグナルペプチド及びプロドメインを有する。全長ヒトGDF15のヌクレオチド配列は、下記である。
【化1】
【0015】
全長ヒトGDF15(308アミノ酸)のアミノ酸配列は、下記である。
【化2】
【0016】
そのシグナル配列を含まないヒトGDF15のヌクレオチド配列は、下記である。
【化3】
【0017】
その29アミノ酸のシグナル配列を含まないヒトGDF15(279アミノ酸)のアミノ酸配列は、下記である。
【化4】
【0018】
そのシグナルペプチド又はプロドメインを含まないヒトGDF15のヌクレオチド配列は、下記である。
【化5】
【0019】
そのシグナルペプチド又はプロドメインを含まないヒトGDF15(112アミノ酸のGDF15の活性ドメイン)のアミノ酸配列は、下記である。
【化6】
【0020】
全長マウスGDF15のヌクレオチド配列は、下記である。
【化7】
【0021】
全長マウスGDF15(303アミノ酸)のアミノ酸配列は、下記である。
【化8】
【0022】
そのシグナル配列を含まないマウスGDF15のヌクレオチド配列は、下記である。
【化9】
【0023】
その32アミノ酸のシグナル配列を含まないマウスGDF15(271アミノ酸)のアミノ酸配列は、下記である。
【化10】
【0024】
そのシグナル配列又はプロドメインを含まないマウスGDF15のヌクレオチド配列は、下記である。
【化11】
【0025】
そのシグナルペプチド又はプロドメインを含まないマウスGDF15(115アミノ酸の活性ドメイン)のアミノ酸配列は、下記である。
【化12】
【0026】
いくつかの実施形態では、GDF15分子は、GDF15の活性ドメイン、たとえば、そのシグナルペプチド又はプロドメインを含まないGDF15を含むGDF15領域を含む。いくつかの実施形態では、GDF15領域は、配列番号6又は12のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、GDF15領域は、GDF15の活性ドメインにおける少なくとも1つの変異など1つ又は複数の変異を有するGDF15配列を含む。特定の実施形態では、1つ又は複数の変異は、GDF15の活性を低下又は消失させない。いくつかの実施形態では、GDF15領域は、ヒトGDF15の活性ドメイン内に変異を含む。一実施形態では、変異は、最初の3個のアミノ酸が除去されているヒトGDF15の活性ドメインである「GDF15(Δ3)」(すなわち、配列番号13)など活性ドメインの最初の3個のアミノ酸の欠失である。
【0027】
いくつかの実施形態では、GDF15領域は、ヒトGDF15の活性ドメインの3位のアスパラギン(N3)の変異(配列番号6)を含む。N3変異は、配列番号6の3位のアスパラギン残基の変異をいっても、或いはGDF15アミノ酸配列において配列番号6の3位のアスパラギンに相当するアスパラギン残基の変異をいってもよい。いくつかの実施形態では、3位のアスパラギンは、グルタミン(N3Q)又はアスパルテート(N3D)に変異する。したがって、いくつかの実施形態では、GDF15分子は、配列番号14のアミノ酸配列を有するGDF15(N3Q)のGDF15領域を含む。他の実施形態では、GDF15分子は、配列番号15のアミノ酸配列を有するGDF15(N3D)のGDF15領域を含む。いくつかの実施形態では、GDF15領域は、ヒトGDF15の活性ドメイン(配列番号6)の5位のアスパルテート(D5)の変異を含む。D5変異は、配列番号6の5位のアスパルテート残基の変異をいっても、或いはGDF15アミノ酸配列において配列番号6の5位のアスパルテートに相当するアスパルテート残基の変異をいってもよい。一実施形態では、5位のアスパルテートは、グルタメート(D5E)に変異する。したがって、いくつかの実施形態では、GDF15分子は、配列番号16のアミノ酸配列を有するGDF15(D5E)のGDF15領域を含む。
【0028】
なお他の実施形態では、GDF15領域は、Δ3及びD5変異の組み合わせ、たとえば、GDF15(Δ3/D5E)(配列番号17)又はN3及びD5変異の組み合わせ、たとえば、GDF15(N3D/D5E)若しくはGDF15(N3Q/D5E)など変異の組み合わせを含む。GDF15領域は、配列番号18のアミノ酸配列を含む。
【0029】
表1は、GDF15分子に使用できるGDF15領域の例を提供する。
【0030】
【0031】
いくつかの実施形態では、GDF15分子は、Fcに直接融合される。他の実施形態では、Fcは、リンカーを介してGDF15分子に融合される。いくつかの実施形態では、リンカーは、G4S(配列番号19)リンカーを含む。他の実施形態では、リンカーは、G4Q(配列番号24)リンカーを含む。他の実施形態では、リンカーは、G4A(配列番号58)リンカーを含む。リンカーは、(G4S)nリンカーでも或いは(G4Q)nリンカーでもよく、nは、0より大きい。リンカーは、(G4A)nリンカーでもよく、nは、0より大きい。いくつかの実施形態では、nは、1又は2である。いくつかの実施形態では、nは、3、4、5、6、7又は8など2と同等又はそれ以上である。いくつかの実施形態では、リンカーは、表2に示すような配列番号19、20、21、22、23、24、25又は58のアミノ酸配列を含む。
【0032】
【0033】
いくつかの実施形態では、GDF15分子は、Fc領域を含む。Fc領域は、抗体の重鎖のFcドメインを含んでも、或いは抗体の重鎖のFcドメインに由来してもよい。いくつかの実施形態では、Fc領域は、電荷対の変異、グリコシル化部位における変異又は非天然型アミノ酸の付加などの変異を有するFcドメインを含んでもよい。Fc領域は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のヒトIgG定常ドメインに由来してもよい。いくつかの実施形態では、Fc領域は、IgA重鎖、IgD重鎖、IgE重鎖及びIgM重鎖の定常ドメインを含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、Fc領域は、電荷対の変異を有するFcドメインを含む。電荷を持つFc領域が得られる変異を導入することにより、GDF15分子は、反対電荷を持つ対応するFc分子と二量体化することができる。たとえば、アスパルテートからリジンへの変異(E356K、356は、EUナンバリングによる位置であり、表3~5に示した位置に相当する)及びグルタメートからリジンへの変異(D399K、399は、EUナンバリングによる位置であり、表3~5に示した位置に相当する)を、任意選択的にリンカーを介してGDF15領域に連結されたFc領域に導入して、GDF15分子に正電荷を持つFc領域を得てもよい。リジンからアスパルテートへの変異(K392D、K409D;392及び409は、EUナンバリングによる位置であり、表3~5に示した位置に相当する)を、別の分子のFcドメインに導入して、負電荷を持つFc分子を得てもよい。負電荷を持つFc分子におけるアスパルテート残基は、静電気力によりGDF15分子の正電荷を持つFc領域のリジン残基と結合し、GDF15分子のFc領域とFc分子との間のFcヘテロ二量体の形成を促進する一方、GDF15分子のFc領域間又はFc分子間のFcホモ二量体の形成を減少又は防止することができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数のリジンからアスパルテートへの変異(K392D、K409D)を、任意選択的にリンカーを介してGDF15領域に連結されたFc領域に導入し、アスパルテートからリジンへの変異(E356K)及びグルタメートからリジンへの変異(D399K)をもう1つの分子のFcドメインに導入する。GDF15分子のFc領域におけるアスパルテート残基は、静電気力によりFc分子のリジン残基と結合し、GDF15分子のFc領域とFc分子との間のFcヘテロ二量体の形成を促進して、GDF15分子のFc領域間又はFc分子間のFcホモ二量体の形成を減少又は防止することができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、GDF15分子は、変異したヒンジ領域を有するFcドメインを含むFc領域を含む。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、ヒンジに欠失を含む。いくつかの実施形態では、ヒンジから10アミノ酸が欠失される(たとえば、FcΔ10)。他の実施形態では、ヒンジから16アミノ酸が欠失される(たとえば、FcΔ16)。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、ヒンジ欠失(たとえば、FcΔ10又はFcΔ16)及び電荷対の変異を含むため、Fcドメインは、正電荷又は負電荷を持つ。たとえば、Fcドメインは、FcΔ10(-)などヒンジにおける10アミノ酸欠失及びリジンからアスパルテートへの変異(K392D、K409D)を含んでもよい。別の実施形態では、Fcドメインは、FcΔ10(+)などヒンジにおける10アミノ酸欠失と、アスパルテートからリジンへの変異(E356K)及びグルタメートからリジンへの変異(D399K)とを含んでもよい。別の実施形態では、Fcドメインは、FcΔ16(-)などヒンジにおける16アミノ酸欠失及びリジンからアスパルテートへの変異(K392D、K409D)を含んでもよい。別の実施形態では、Fcドメインは、FcΔ16(+)などヒンジにおける16アミノ酸欠失と、アスパルテートからリジンへの変異(E356K)及びグルタメートからリジンへの変異(D399K)とを含んでもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、ヒンジ欠失及び電荷対の変異を含むFc分子は、そうしたGDF15分子とヘテロ二量体化する。たとえば、Fc分子は、GDF15分子のFc領域のヒンジ欠失及び電荷対の変異に相補するヒンジ欠失及び電荷対の変異を有してもよい。たとえば、Fc分子は、FcΔ10(-)などヒンジにおける10アミノ酸欠失及びリジンからアスパルテートへの変異(K392D、K409D)を有するFcドメインを含んでもよく、任意選択的にC末端リジンを含んでもよい(たとえば、FcΔ10(-、K))。このFc分子は、FcΔ10(+)を含むGDF15分子とヘテロ二量体化することができる。別の実施形態では、Fc分子は、FcΔ10(+)などヒンジにおける10アミノ酸欠失とアスパルテートからリジンへの変異(E356K)及びグルタメートからリジンへの変異(D399K)とを含んでもよく、任意選択的にC末端リジンを含んでもよい(たとえば、FcΔ10(+、K))。このFc分子は、FcΔ10(-)を含むGDF15分子とヘテロ二量体化することができる。別の実施形態では、Fc分子は、FcΔ16(-)などヒンジにおける16アミノ酸欠失及びリジンからアスパルテートへの変異(K392D、K409D)を含んでもよく、任意選択的にC末端リジンを含んでもよい(たとえば、FcΔ16(-、K))。FcΔ16(+)を含むGDF15分子とヘテロ二量体化することができるFc分子。別の実施形態では、Fc分子は、FcΔ16(+)などヒンジにおける16アミノ酸欠失とアスパルテートからリジンへの変異(E356K)及びグルタメートからリジンへの変異(D399K)とを含んでもよく、任意選択的にC末端リジンを含んでもよい(たとえば、FcΔ16(-、K))。このFc分子は、FcΔ16(-)を含むGDF15分子とヘテロ二量体化することができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、Fc領域又はFc分子は、L234A変異及び/又はL235A変異を有するFcドメインを含み、234及び235は、EUナンバリングによる位置であり、表3~5に示した位置に相当する。Fcドメインは、L234A変異、L235A変異、電荷対の変異、ヒンジ欠失又はこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、L234A変異及びL235A変異の両方を含む。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、ヒンジ欠失、L234A変異、L235A変異及び電荷対の変異、たとえばFcΔ10(+、L234A/L235A)、FcΔ10(-、L234A/L235A)、FcΔ16(+、L234A/L235A)又はFcΔ16(-、L234A/L235A)を含む。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、任意選択的なC末端リジン、たとえば、FcΔ10(+、K、L234A/L235A)、FcΔ10(-、K、L234A/L235A)、FcΔ16(+、K、L234A/L235A)又はFcΔ16(-、K、L234A/L235A)を含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、Fc領域又はFc分子は、「システインクランプ」を有するFcドメインを含む。システインクランプ変異は、変異により特定の位置でシステインをFcドメインに導入することを含むので、やはり変異により特定の位置で導入されたシステインを有するもう1つのFcドメインとインキュベートすると、2つのFcドメイン間で(たとえば、「システインクランプ」変異を有するFcΔ16(+)ドメインと「システインクランプ」変異を有するFcΔ16(-)ドメインとの間で)ジスルフィド結合(システインクランプ)が形成され得る。システインは、FcドメインのCH3ドメインに導入してもよい。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、1つ又は複数のそうしたシステインクランプ変異を含んでもよい。一実施形態では、システインクランプは、セリンからシステインへの変異(S354C、354は、EUナンバリングによる位置であり、表3~5に示した位置に相当する)を第1のFcドメインに、チロシンからシステインへの変異(Y349C、349は、EUナンバリングによる位置であり、表3~5に示した位置に相当する)を第2のFcドメインに導入することにより生じる。一実施形態では、GDF15分子は、システインクランプ、負電荷対の変異及び16アミノ酸ヒンジ欠失を有するFcドメイン(たとえば、GDF15-FcΔ16(-、CC))を含むFc領域を含み、システインクランプ、正電荷対の変異及び16アミノ酸ヒンジ欠失、さらに任意選択的なC末端リジンを含むFcドメイン(たとえば、FcΔ16(+、K、CC))を含むFc分子。システインクランプは、GDF-Fc分子のFc分子とのヘテロ二量体化を増大させ得る。
【0040】
GDF15分子に使用してもよいFc領域の例を表3に示す。
【0041】
【0042】
【0043】
Fc分子の例を表4に示すが、C末端リジンは、任意選択である。
【0044】
【0045】
【0046】
Fc分子は、相補的Fcドメインを含む分子と二量体化するのに使用してもよい。たとえば、FcΔ10(+、K)のFc分子は、FcΔ10(-)など10アミノ酸ヒンジ欠失及び負電荷対の変異を含むFc領域を含む分子(たとえば、FcΔ10(-)のFc領域を含むGDF15分子)と二量体化してもよい。FcΔ10(-、K)のFc分子は、FcΔ10(+)など10アミノ酸ヒンジ欠失及び負電荷対の変異を含むFc領域を含む分子(たとえば、FcΔ10(+)のFc領域を含むGDF15分子)と二量体化してもよい。
【0047】
FcΔ10(+、K、CC)のFc分子は、FcΔ10(-、CC)など10アミノ酸ヒンジ欠失及び負電荷対の変異を含むFc領域を含む分子(たとえば、FcΔ10(-、CC)のFc領域を含むGDF15分子)と二量体化することができる。FcΔ16(+、K、CC)のFc分子は、FcΔ16(-、CC)など10アミノ酸ヒンジ欠失及び負電荷対の変異を含むFc領域を含む分子(たとえば、FcΔ16(-、CC)のFc領域を含むGDF15分子)と二量体化することができる。FcΔ16(+、K)のFc分子は、FcΔ16(-)など10アミノ酸ヒンジ欠失及び負電荷対の変異を含むFc領域を含む分子(たとえば、FcΔ16(+)のFc領域を含むGDF15分子)と二量体化することができる。FcΔ10(+、K、L234A/L235A)のFc分子は、FcΔ10(-、L234A/L235A)など10アミノ酸ヒンジ欠失及び負電荷対の変異を含むFc領域を含む分子(たとえば、FcΔ10(-、L234A/L235A)のFc領域を含むGDF15分子)と二量体化することができる。
【0048】
GDF15-Fc融合タンパク質であるGDF15分子の例を表5に示す。
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、GDF15領域が2つのFc領域に連結されたscFc-GDF15である。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号38と少なくとも85%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号38のアミノ酸配列を含む。パーセント配列同一性を計算する際は、比較されている配列を配列間で最大のマッチを与える方法で整列させる。パーセント同一性を決定するのに使用できるコンピュータープログラムは、GAP(Devereux et al.,(1984)Nucl.Acid Res.12:387;Genetics Computer Group,University of Wisconsin,Madison,Wis.)を含むGCGプログラムパッケージである。コンピューターアルゴリズムGAPを使用して、パーセント配列同一性を決定することになっている2つのポリペプチド又はポリヌクレオチドを整列することができる。配列は、そのそれぞれのアミノ酸又はヌクレオチドの最適なマッチングが得られるように整列される(「マッチドスパン(matched span)」、アルゴリズムにより決定される)。アルゴリズムと共に、ギャップ開始ペナルティー(平均ダイアゴナル(diagonal)の3倍として計算され、「平均ダイアゴナル」は、使用している比較マトリックスのダイアゴナルの平均であり;「ダイアゴナル」は、特定の比較マトリックスによりそれぞれの完全なアミノ酸マッチに割り当てられたスコア又は数字である)及びギャップ伸長ペナルティー(通常、ギャップ開始ペナルティーの1/10倍である)のほか、PAM250又はBLOSUM62などの比較マトリックスが使用される。ある種の実施形態では、標準的なマトリックス((PAM250比較マトリックスではDayhoff et al.,(1978)Atlas of Protein Sequence and Structure 5:345-352);(BLOSUM62比較マトリックスではHenikoff et al.,(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.9:10915-10919)を参照)は、アルゴリズムでも使用される。GAPプログラムを用いたパーセント同一性の決定に使用できるパラメーターは、以下である:
アルゴリズム:Needleman et al.,1970,J.Mol.Biol.48:443-453;
比較マトリックス:Henikoff et al.,1992,supraによるBLOSUM62;
ギャップペナルティー:12(但し、エンドギャップにペナルティーはない)
ギャップ長ペナルティー:4
類似性の閾値:0
【0062】
2つのアミノ酸配列を整列させるためのある種のアライメントスキームでは、2つの配列の短い領域のみのマッチングが生じることがあり、この整列された小さな領域は、2つの全長配列間で顕著な関係がない場合でも、非常に高い配列同一性を有することがある。したがって、選択したアライメント法(たとえば、GAPプログラム)は、望ましい場合、標的ポリペプチドの少なくとも連続する50アミノ酸にわたるアライメントが生じるように調整してもよい。
【0063】
いくつかの実施形態では、GDF15分子は、FcΔ10(-)-(G4S)4-GDF15、FcΔ10(+)-(G4)-GDF15、FcΔ10(-)-GDF15(Δ3)、FcΔ10(-)-GDF15(N3D)、FcΔ10(-、CC)-GDF15(Δ3)、FcΔ10(-、CC)-GDF15(N3D)、FcΔ16(-、CC)-GDF15(Δ3/D5E)、FcΔ16(-、CC)-GDF15(N3Q/D5E)、FcΔ16(-)-GDF15(N3Q/D5E)、FcΔ16(-)-(G4Q)4-GDF15、FcΔ16(-)-(G4Q)4-GDF15(N3Q)、FcΔ16(-)-(G4Q)4-GDF15(N3Q/D5E)、FcΔ16(-)-(G4S)2-GDF15(N3Q)、FcΔ16(-)-(G4S)2-GDF15(N3Q/D5E)、FcΔ16(-)-G4S-GDF15(N3Q)、FcΔ16(-)-G4S-GDF15(N3Q/D5E)、FcΔ16(-)-GDF15(N3Q)、FcΔ10(-、L234A/L235A)-(G4Q)4-GDF15(N3Q)又はFcΔ10(-、L234A/L235A)-(G4Q)4-GDF15(N3Q/D5E)である。
【0064】
いくつかの実施形態では、GDF15分子は、配列番号39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56又は57のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、GDF15分子は、配列番号39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56又は57と80~99%、85%~99%、90~99%又は95~99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、GDF15分子は、配列番号39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56又は57と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、GDF15分子は、配列番号39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56又は57と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、GDF15分子は、配列番号39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56又は57と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、GDF15分子は、配列番号39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56又は57と少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、GDF15分子は、FcΔ10(-)-(G4S)4-GDF15分子、FcΔ10(+)-(G4)-GDF15分子、FcΔ10(-)-GDF15(Δ3)分子、FcΔ10(-)-GDF15(N3D)分子、FcΔ10(-、CC)-GDF15(Δ3)分子、FcΔ10(-、CC)-GDF15(N3D)分子、FcΔ16(-、CC)-GDF15(Δ3/D5E)分子、FcΔ16(-、CC)-GDF15(N3Q/D5E)分子、FcΔ16(-)-GDF15(N3Q/D5E)分子、FcΔ16(-)-(G4Q)4-GDF15分子、FcΔ16(-)-(G4Q)4-GDF15(N3Q)分子、FcΔ16(-)-(G4Q)4-GDF15(N3Q/D5E)分子、FcΔ16(-)-(G4S)2-GDF15(N3Q)分子、FcΔ16(-)-(G4S)2-GDF15(N3Q/D5E)分子、FcΔ16(-)-G4S-GDF15(N3Q)分子、FcΔ16(-)-G4S-GDF15(N3Q/D5E)分子、FcΔ16(-)-GDF15(N3Q)分子、FcΔ10(-、L234A/L235A)-(G4Q)4-GDF15(N3Q)分子又はFcΔ10(-、L234A/L235A)-(G4Q)4-GDF15(N3Q/D5E)分子である。いくつかの実施形態では、GDF15分子は、そのFc領域及び/又はGDF15領域と80~99%、85%~99%、90~99%又は95~99%の配列同一性を有するFcΔ10(-)-(G4S)4-GDF15分子、FcΔ10(+)-(G4)-GDF15分子、FcΔ10(-)-GDF15(Δ3)分子、FcΔ10(-)-GDF15(N3D)分子、FcΔ10(-、CC)-GDF15(Δ3)分子、FcΔ10(-、CC)-GDF15(N3D)分子、FcΔ16(-、CC)-GDF15(Δ3/D5E)分子、FcΔ16(-、CC)-GDF15(N3Q/D5E)分子、FcΔ16(-)-GDF15(N3Q/D5E)分子、FcΔ16(-)-(G4Q)4-GDF15分子、FcΔ16(-)-(G4Q)4-GDF15(N3Q)分子、FcΔ16(-)-(G4Q)4-GDF15(N3Q/D5E)分子、FcΔ16(-)-(G4S)2-GDF15(N3Q)分子、FcΔ16(-)-(G4S)2-GDF15(N3Q/D5E)分子、FcΔ16(-)-G4S-GDF15(N3Q)分子、FcΔ16(-)-G4S-GDF15(N3Q/D5E)分子、FcΔ16(-)-GDF15(N3Q)分子、FcΔ10(-、L234A/L235A)-(G4Q)4-GDF15(N3Q)分子又はFcΔ10(-、L234A/L235A)-(G4Q)4-GDF15(N3Q/D5E)分子である。
【0066】
いくつかの実施形態では、GDF15分子は、そのFc領域及び/又はGDF15領域と少なくとも85%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するFcΔ10(-)-(G4S)4-GDF15分子、FcΔ10(+)-(G4)-GDF15分子、FcΔ10(-)-GDF15(Δ3)分子、FcΔ10(-)-GDF15(N3D)分子、FcΔ10(-、CC)-GDF15(Δ3)分子、FcΔ10(-、CC)-GDF15(N3D)分子、FcΔ16(-、CC)-GDF15(Δ3/D5E)分子、FcΔ16(-、CC)-GDF15(N3Q/D5E)分子、FcΔ16(-)-GDF15(N3Q/D5E)分子、FcΔ16(-)-(G4Q)4-GDF15分子、FcΔ16(-)-(G4Q)4-GDF15(N3Q)分子、FcΔ16(-)-(G4Q)4-GDF15(N3Q/D5E)分子、FcΔ16(-)-(G4S)2-GDF15(N3Q)分子、FcΔ16(-)-(G4S)2-GDF15(N3Q/D5E)分子、FcΔ16(-)-G4S-GDF15(N3Q)分子、FcΔ16(-)-G4S-GDF15(N3Q/D5E)分子、FcΔ16(-)-GDF15(N3Q)分子、FcΔ10(-、L234A/L235A)-(G4Q)4-GDF15(N3Q)分子又はFcΔ10(-、L234A/L235A)-(G4Q)4-GDF15(N3Q/D5E)分子である。たとえば、そのFc領域及び/又はGDF15領域と80~99%、85%~99%、90~99%又は95~99%の配列同一性を有するFcΔ10(-)-(G4S)4-GDF15分子は、ヒンジ領域の10アミノ酸欠失及び負電荷対の変異を有し、且つ配列番号26と80~99%、85%~99%、90~99%又は95~99%の配列同一性を有するFc領域、及び/又は、配列番号6と80~99%、85%~99%、90~99%又は95~99%の配列同一性を有するGDF15領域を有するGDF15分子を含む。たとえば、そのFc領域及び/又はGDF15領域と少なくとも85%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するFcΔ10(-)-(G4S)4-GDF15分子は、ヒンジ領域の10アミノ酸欠失及び負電荷対の変異を有し、且つ配列番号26と少なくとも85%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するFc領域、及び/又は、配列番号6と少なくとも85%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するGDF15領域を有するGDF15分子を含む。
【0067】
別の例では、そのFc領域及び/又はGDF15領域と80~99%、85%~99%、90~99%又は95~99%の配列同一性を有するFcΔ16(-)-(G4Q)4-GDF15(N3Q/D5E)分子は、ヒンジ領域の16アミノ酸欠失及び負電荷対の変異を有し、且つ配列番号30と80~99%、85%~99%、90~99%又は95~99%の配列同一性を有するFc領域、及び/又は、配列番号18と80~99%、85%~99%、90~99%又は95~99%の配列同一性を有するGDF15領域を有するGDF15分子を含む。別の例では、そのFc領域及び/又はGDF15領域と少なくとも85%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するFcΔ16(-)-(G4Q)4-GDF15(N3Q/D5E)分子は、ヒンジ領域の16アミノ酸欠失及び負電荷対の変異を有し、且つ配列番号30と少なくとも85%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するFc領域、及び/又は、配列番号18と少なくとも85%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するGDF15領域を有するGDF15分子を含む。
【0068】
なお別の例では、そのFc領域及び/又はGDF15領域と80~99%、85%~99%、90~99%又は95~99%の配列同一性を有するFcΔ10(-、L234A/L235A)-(G4Q)4-GDF15(N3Q/D5E)分子は、ヒンジ領域の10アミノ酸欠失、負電荷対の変異並びに234位及び235位のロイシンからアラニンへの変異を有し、且つ配列番号31と80~99%、85%~99%、90~99%又は95~99%の配列同一性を有するFc領域、及び/又は、配列番号18と80~99%、85%~99%、90~99%又は95~99%の配列同一性を有するGDF15領域を有するGDF15分子を含む。なお別の例では、そのFc領域及び/又はGDF15領域と少なくとも85%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するFcΔ10(-、L234A/L235A)-(G4Q)4-GDF15(N3Q/D5E)分子は、ヒンジ領域の10アミノ酸欠失、負電荷対の変異並びに234位及び235位のロイシンからアラニンへの変異を有し、且つ配列番号31と少なくとも85%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するFc領域、及び/又は、配列番号18と少なくとも85%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するGDF15領域を有するGDF15分子を含む。
【0069】
さらに本明細書において提供されるのは、本明細書で提供されるGDF15分子を含む二量体及び四量体である。一実施形態では、二量体は、配列番号39~57のいずれか1つのアミノ酸配列を含むGDF15-Fc融合体を含む。いくつかの実施形態では、配列番号39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56又は57のアミノ酸配列を含むGDF15-Fc融合体は、たとえば表6に示したように、配列番号32、33、34、35、36又は37(C末端リジンは、任意選択である)のアミノ酸配列を含むFc分子と二量体化する。たとえば、いくつかの実施形態では、二量体は、FcΔ10(-)-(G4S)4-GDF15:FcΔ10(+、K)である。別の実施形態では、二量体は、FcΔ10(-、L234A/L235A)-(G4Q)4-GDF15(N3Q):FcΔ10(+、K、L234A/L235A)である。なお別の実施形態では、二量体は、FcΔ10(-、L234A/L235A)-(G4Q)4-GDF15(N3Q):FcΔ10(+、K、L234A/L235A)である。
【0070】
【0071】
一実施形態では、配列番号39のアミノ酸配列を含むGDF15-Fc融合体は、配列番号32(C末端リジンは任意選択)を含むFc分子と二量体化する。別の実施形態では、配列番号40のアミノ酸配列を含むGDF15-Fc融合体は、配列番号33(C末端リジンは任意選択)を含むFc分子と二量体化する。別の実施形態では、配列番号41のアミノ酸配列を含むGDF15-Fc融合体は、配列番号32(C末端リジンは任意選択)を含むFc分子と二量体化する。別の実施形態では、配列番号42のアミノ酸配列を含むGDF15-Fc融合体は、配列番号32(C末端リジンは任意選択)を含むFc分子と二量体化する。別の実施形態では、配列番号43のアミノ酸配列を含むGDF15-Fc融合体は、配列番号34(C末端リジンは任意選択)を含むFc分子と二量体化する。別の実施形態では、配列番号44のアミノ酸配列を含むGDF15-Fc融合体は、配列番号34(C末端リジンは任意選択)を含むFc分子と二量体化する。別の実施形態では、配列番号44のアミノ酸配列を含むGDF15-Fc融合体は、配列番号34(C末端リジンは任意選択)を含むFc分子と二量体化する。別の実施形態では、配列番号45のアミノ酸配列を含むGDF15-Fc融合体は、配列番号35(C末端リジンは任意選択)を含むFc分子と二量体化する。別の実施形態では、配列番号46のアミノ酸配列を含むGDF15-Fc融合体は、配列番号35(C末端リジンは任意選択)を含むFc分子と二量体化する。別の実施形態では、配列番号47のアミノ酸配列を含むGDF15-Fc融合体は、配列番号36(C末端リジンは任意選択)を含むFc分子と二量体化する。別の実施形態では、配列番号48のアミノ酸配列を含むGDF15-Fc融合体は、配列番号36(C末端リジンは任意選択)を含むFc分子と二量体化する。別の実施形態では、配列番号49のアミノ酸配列を含むGDF15-Fc融合体は、配列番号36(C末端リジンは任意選択)を含むFc分子と二量体化する。別の実施形態では、配列番号50のアミノ酸配列を含むGDF15-Fc融合体は、配列番号36(C末端リジンは任意選択)を含むFc分子と二量体化する。別の実施形態では、配列番号51のアミノ酸配列を含むGDF15-Fc融合体は、配列番号36(C末端リジンは任意選択)を含むFc分子と二量体化する。別の実施形態では、配列番号52のアミノ酸配列を含むGDF15-Fc融合体は、配列番号36(C末端リジンは任意選択)を含むFc分子と二量体化する。別の実施形態では、配列番号53のアミノ酸配列を含むGDF15-Fc融合体は、配列番号36(C末端リジンは任意選択)を含むFc分子と二量体化する。別の実施形態では、配列番号54のアミノ酸配列を含むGDF15-Fc融合体は、配列番号36(C末端リジンは任意選択)を含むFc分子と二量体化する。別の実施形態では、配列番号55のアミノ酸配列を含むGDF15-Fc融合体は、配列番号36(C末端リジンは任意選択)を含むFc分子と二量体化する。別の実施形態では、配列番号56のアミノ酸配列を含むGDF15-Fc融合体は、配列番号37(C末端リジンは任意選択)を含むFc分子と二量体化する。別の実施形態では、配列番号57のアミノ酸配列を含むGDF15-Fc融合体は、配列番号37(C末端リジンは任意選択)を含むFc分子と二量体化する。
【0072】
いくつかの実施形態では、二量体は、四量体を形成する。たとえば、表6の二量体は、四量体を形成することができる。いくつかの実施形態では、四量体は、同じ二量体から形成される。いくつかの実施形態では、FcΔ10(-)-(G4S)4-GDF15:FcΔ10(+、K);FcΔ10(+)-(G4)-GDF15:FcΔ10(-、K);FcΔ10(-)-GDF15(Δ3):FcΔ10(+、K);FcΔ10(-)-GDF15(N3D):FcΔ10(+、K);FcΔ10(-、CC)-GDF15(Δ3):FcΔ10(+、K、CC);FcΔ10(-、CC)-GDF15(N3D):FcΔ10(+、K、CC);FcΔ16(-、CC)-GDF15(Δ3/D5E):FcΔ16(+、K、CC);FcΔ16(-、CC)-GDF15(N3Q/D5E):FcΔ16(+、K、CC);FcΔ16(-)-GDF15(N3Q/D5E):FcΔ16(+、K);FcΔ16(-)-(G4Q)4-GDF15:FcΔ16(+、K);FcΔ16(-)-(G4Q)4-GDF15(N3Q):FcΔ16(+、K);FcΔ16(-)-(G4Q)4-GDF15(N3Q/D5E):FcΔ16(+、K);FcΔ16(-)-(G4S)2-GDF15(N3Q):FcΔ16(+、K);FcΔ16(-)-(G4S)2-GDF15(N3Q/D5E):FcΔ16(+、K);FcΔ16(-)-G4S-GDF15(N3Q):FcΔ16(+、K);FcΔ16(-)-G4S-GDF15(N3Q/D5E):FcΔ16(+、K);FcΔ16(-)-GDF15(N3Q):FcΔ16(+、K);FcΔ10(-、L234A/L235A)-(G4Q)4-GDF15(N3Q):FcΔ10(+、K、L234A/L235A);又はFcΔ10(-、L234A/L235A)-(G4Q)4-GDF15(N3Q/D5E):FcΔ10(+、K、L234A/L235A)のうち2つの二量体が、2つのGDF15領域の二量体化などにより四量体を形成する。
【0073】
本明細書においてさらに提供されるのは、本明細書に開示されたGDF15分子及びFc分子を産生させるための核酸及びベクターを含む宿主細胞である。種々の実施形態では、ベクター又は核酸は、宿主細胞ゲノムに組み込まれ、他の実施形態ではベクター又は核酸は、染色体外にある。
【0074】
そうした核酸、ベクター又はそのどちらか一方若しくは両方の組み合わせを含む酵母細胞、細菌細胞(たとえば、大腸菌(E.coli)及び哺乳動物細胞(たとえば、不死化した哺乳動物細胞)などの組換え細胞を提供する。種々の実施形態では、GDF15分子及び/又はFc分子の発現をコードする配列を含む、プラスミド、コスミド、ファージミド又は線形発現エレメントなど組み込まれていない核酸を含む細胞。いくつかの実施形態では、細胞は、GDF15分子を産生するための核酸を含み、もう1つの細胞が、GDF15分子との二量体化のためのFc分子を産生するための核酸(たとえば、第1の細胞内にGDF15分子をコードするためのベクター及び第2の細胞内にFc分子をコードするための第2のベクター)を含む。他の実施形態では、宿主細胞は、GDF15分子及びFc分子を産生するための核酸(たとえば、両方の分子をコードするベクター)を含む。別の実施形態では、宿主細胞は、GDF15分子を産生するための核酸、及びFc分子を産生するためのもう1つの核酸(たとえば、単一の宿主細胞内に2つの別のベクター、GDF15分子をコードするベクター及びFc分子をコードするベクター)を含む。
【0075】
GDF15分子及び/又はFc分子をコードする核酸配列を含むベクターは、当該技術分野において公知の方法などによって、形質転換又はトランスフェクションにより宿主細胞に導入することができる。
【0076】
GDF15分子をコードする核酸は、ウイルスベクターを介して宿主細胞又は宿主動物に配置及び/又は送達することができる。ウイルスベクターは、単独で又は所望の宿主細胞において本発明の核酸の送達、複製及び/又は発現を促進する1つ又は複数のウイルスタンパク質と組み合わせて、どのようなウイルスポリヌクレオチドを含んでもよい。ウイルスベクターは、ウイルスゲノムの全部若しくは一部を含むポリヌクレオチド、ウイルスタンパク質/核酸コンジュゲート、ウイルス様粒子(VLP)、又はウイルス核酸とGDF15領域を含むポリペプチドをコードする核酸とを含むインタクトなウイルス粒子であってもよい。ウイルス粒子のウイルスベクターは、野生型ウイルス粒子又は改変ウイルス粒子を含んでもよい。ウイルスベクターは、アデノウイルスベクター単位複製配列など複製及び/又は発現のためにもう1つのベクター又は野生型ウイルスの存在を必要とするベクターであってもよい(たとえば、ウイルスベクターは、ヘルパー依存ウイルスであってもよい)。この点において好適なウイルスベクター粒子として、たとえば、アデノウイルスベクター粒子(アデノウイルス科の又はアデノウイルス科のウイルスに由来する、任意のウイルスを含む)、アデノ随伴ウイルスベクター粒子(AAVベクター粒子)又は他のパルボウイルス及びパルボウイルスベクター粒子、パピローマウイルスベクター粒子、フラビウイルスベクター、アルファウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、レンチウイルスベクターを含むレトロウイルスベクターが挙げられる。
【0077】
GDF15分子は、標準的なタンパク質精製法を用いて単離することができる。GDF15領域を含むポリペプチドは、GDF15領域を含むポリペプチドを発現するように設計された細胞、たとえばネイティブなGDF15を自然に発現しない細胞から単離することができる。当該技術分野において公知のタンパク質精製法を採用して、GDF15分子のほか、関連材料及び試薬を単離することができる。GDF15分子を精製する方法も、本明細書の実施例において提供される。GDF15分子を単離するのに有用であり得る追加の精製法は、Bootcov MR,1997,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:11514-9,Fairlie WD,2000,Gene 254:67-76などの参考文献で確認することができる。
【0078】
GDF15分子(及び任意選択的に、本明細書に開示された二量体又は四量体などのFc分子)を含む医薬組成物も提供される。そうしたポリペプチド医薬組成物は、投与モードとの適合性で選択された薬学的又は生理学的に許容される製剤用剤又はキャリアと混合した治療有効量のGDF15分子を含んでもよい。薬学的又は生理学的に許容される製剤用剤は、ヒト又は非ヒト被検体の体内へのGDF15分子の送達を達成又は促進するのに好適な1種又は複数種の製剤用剤であってもよい。GDF15分子の有効期間又は有効性を大きくする湿潤剤又は乳化剤、防腐剤又は緩衝液などの薬学的に許容される物質はさらに、製剤キャリアとして働いてもよく、或いは製剤キャリアの構成要素を形成してもよい。許容可能な薬学的に許容されるキャリアは、好ましくは採用された投与量及び濃度でレシピエントに無毒である。医薬組成物は、たとえば、組成物のpH、モル浸透圧濃度、粘度、清澄度、色、等張性、匂い、無菌性、安定性、溶解若しくは放出速度、吸着又は浸透性を変更、維持又は保護するため製剤用剤(単数又は複数)を含んでもよい。
【0079】
治療的に使用しようとするGDF15分子を含む医薬組成物の有効量は、たとえば、治療の背景及び目的によって異なる。したがって、当業者は、処置に適切な投与量レベルが、送達される分子、GDF15分子が使用されている徴候、投与経路並びに被検体の大きさ(体重、体表面積又は臓器の大きさ)及び状態(年齢及び一般的な健康状態)によってある程度異なることを理解するであろう。投薬頻度は、使用されている製剤におけるGDF15分子の薬物動態パラメーターによって異なる。
【0080】
医薬組成物の投与経路は、経口であっても;静脈内経路、腹腔内経路、脳内(実質内)経路、脳室内経路、筋肉内経路、眼内経路、動脈内経路、門脈内経路又は病巣内経路による注射によっても;徐放システム(やはり注射されてもよい)によっても;或いは埋め込み装置によってもよい。望ましい場合、組成物は、ボーラス注射により投与しても、或いは注入若しくは埋め込み装置により連続的に投与してもよい。組成物はまた、所望の分子が吸収又は封入された膜、スポンジ又は他の適切な材料の埋め込みにより局所投与してもよい。埋め込み装置を使用する場合、装置は、任意の好適な組織又は臓器に埋め込んでもよく、所望の分子の送達は、拡散、徐放性ボーラス(timed-release bolus)又は連続投与によるものであってもよい。
【0081】
GDF15分子は、代謝症候又は障害を処置、診断又は軽減するのに使用することができる。一実施形態では、代謝障害は、糖尿病、たとえば、2型糖尿病である。別の実施形態では、代謝症候又は障害は、肥満である。他の実施形態では、代謝症候又は障害は、脂質代謝異常、高グルコースレベル、高インスリンレベル又は糖尿病性ニューロパチーである。たとえば、GDF15分子を用いて処置又は軽減できる代謝症候又は障害は、ヒト被検体が、125mg/dL又はそれより高い、たとえば130mg/dL、135mg/dL、140mg/dL、145mg/dL、150mg/dL、155mg/dL、160mg/dL、165mg/dL、170mg/dL、175mg/dL、180mg/dL、185mg/dL、190mg/dL、195mg/dL、200mg/dL又は200mg/dL超の空腹時血糖レベルを有する状態を含む。血糖レベルは、摂食若しくは絶食状態で又は無作為に測定してもよい。代謝症候又は障害は、被検体が代謝症候を示すリスクが高い症候をさらに含んでもよい。ヒト被検体では、そうした症候は、100mg/dLの空腹時血糖レベルを含む。GDF15分子を含む医薬組成物を用いて処置できる症候は、American Diabetes Association Standards of Medical Care in Diabetes Care 2011,American Diabetes Association,Diabetes Care Vol.34,No.Supplement 1,S11-S61,2010でも確認することができる。
【0082】
投与は、たとえば静脈内(IV)注射、腹腔内(IP)注射、皮下注射、筋肉内注射により行っても、或いは錠剤若しくは液状の形態で経口的に行ってもよい。GDF15分子の治療有効用量は、投与スケジュール、投与される作用物質の単位用量、GDF15分子が他の治療薬と組み合わせて投与されるかどうか、免疫状態及びレシピエントの健康状態によって異なる。治療有効用量は、処置されている疾患又は障害の症状の緩和又は軽減を含む、研究者、医師又は他の臨床医が求めている、組織系、動物又はヒトにおける生物学的反応又は薬効反応を惹起するGDF15分子の量、すなわち、観察可能なレベルの1つ又は複数の所望の生物学的反応又は薬効反応、たとえば、血糖レベル、インスリンレベル、トリグリセリドレベル又はコレステロールレベルの低下;体重の減少;耐糖能、エネルギー消費又はインスリン感受性の改善;或いは食物摂取量の減少を助けるGDF15分子の量である。GDF15分子の治療有効用量はさらに、所望の成果によって異なってもよい。
【0083】
本明細書においてさらに提供されるのは、被検体においてグルコース、インスリン、コレステロール、脂質などの1つ又は複数の代謝関連化合物のベースラインレベルを測定すること、GDF15分子を含む医薬組成物を被検体に投与すること、及び所望の期間後、被検体において1つ又は複数の代謝関連化合物(たとえば、血糖、インスリン、コレステロール、脂質)のレベルを測定することを含む方法である。次いで2つのレベルを比較して、被検体における代謝関連化合物の相対的変化を判定してもよい。その比較の結果に応じて、別の用量の医薬組成物を投与して、1つ又は複数の代謝関連化合物の所望のレベルを達成してもよい。
【0084】
GDF15分子を含む医薬組成物は、もう1つの化合物又は治療薬と併用投与してもよい。GDF15分子(及び任意選択的に、その対応するFc分子)は、血糖レベル、インスリンレベル、トリグリセリドレベル又はコレステロールレベルを低下させる作用物質;体重を減少させる作用物質;食物摂取量を減少させる作用物質;耐糖能、エネルギー消費又はインスリン感受性を改善させる作用物質;或いはこれら(たとえば、抗糖尿病薬、高脂血症薬、抗肥満薬、降圧薬又はペルオキシソーム増殖剤活性化受容体のアゴニスト)の任意の組み合わせなどもう1つの治療薬と組み合わせて投与してもよい。GDF15分子と併用投与される化合物の種類及び特性は、処置又は軽減されようとする症候の性質によって異なる。本明細書に開示されたGDF15分子と一緒に投与される作用物質は、GLP-1若しくはそのアナログ;又はエクセンディン、エクセンディンアナログ若しくはエクセンディンアゴニストなどのGLP-1Rアゴニストであってもよい。医薬組成物と組み合わせて投与してもよい化合物の例の非限定的なリストとして、リラグルチド、ロシグリチゾン、ピオグリチゾン、レパグリニド、ナテグリチニド、メトホルミン、エクセナチド、スチアグリプチン、プラムリンチド、グリピジド、グリメプリリデアカルボース、オーリスタット、ロルカセリン、フェンテルミネトピラマート、ナルトレクソンブプロピオン、セトメラノチド、セマグルチド、エフペグレナチド(efpeglenatide)、カナグリフロジン、LIK-066、SAR-425899、Tt-401、FGFR4Rx、HDV-ビオチン及びミグリトールが挙げられる。
【0085】
一実施形態では、配列番号39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56又は57のアミノ酸配列を含むGDF15分子は、もう1つの化合物又は治療薬、たとえばリラグルチドと一緒に投与される。
【0086】
別の実施形態では、それぞれ配列番号39及び32(C末端リジンは任意選択);配列番号40及び33(C末端リジンは任意選択)、それぞれ配列番号41及び32(C末端リジンは任意選択);それぞれ配列番号42及び32(C末端リジンは任意選択);それぞれ配列番号43及び34(C末端リジンは任意選択);それぞれ配列番号44及び34(C末端リジンは任意選択);それぞれ配列番号45及び35(C末端リジンは任意選択);それぞれ配列番号46及び35(C末端リジンは任意選択);それぞれ配列番号47及び36(C末端リジンは任意選択);それぞれ配列番号48及び36(C末端リジンは任意選択);それぞれ配列番号49及び36(C末端リジンは任意選択);それぞれ配列番号50及び36(C末端リジンは任意選択);それぞれ配列番号51及び36(C末端リジンは任意選択);それぞれ配列番号52及び36(C末端リジンは任意選択);それぞれ配列番号53及び36(C末端リジンは任意選択);それぞれ配列番号54及び36(C末端リジンは任意選択);それぞれ配列番号55及び36(C末端リジンは任意選択);それぞれ配列番号56及び37(C末端リジンは任意選択);又はそれぞれ配列番号57及び37(C末端リジンは任意選択)のアミノ酸配列を含むGDF15分子及び対応するFc分子は、もう1つの化合物又は治療薬、たとえばリラグルチドと一緒に投与される。
【0087】
別の実施形態では、それぞれ配列番号50及び36(C末端リジンは任意選択)のアミノ酸配列を含むGDF15分子及び対応するFc分子は、もう1つの化合物又は治療薬、たとえばリラグルチドと一緒に投与される。別の実施形態では、それぞれ配列番号57及び37(C末端リジンは任意選択)のアミノ酸配列を含むGDF15分子及び対応するFc分子は、もう1つの化合物又は治療薬、たとえばリラグルチドと一緒に投与される。
【0088】
もう1つの治療薬と一緒に投与されるGDF15分子は、治療有効量のGDF15分子(及び任意選択的に、その対応するFc分子)と治療有効量の他方の治療薬との同時投与を含んでもよい。もう1つの治療薬と一緒に投与されるGDF15分子は、治療有効量のGDF15分子(及び任意選択的に、その対応するFc分子)及び治療有効量の他方の治療薬の連続投与、たとえば、治療有効量のGDF15分子(及び任意選択的に、その対応するFc分子)、続いて治療有効量の他方の治療薬の投与、又は治療有効量の他方の治療薬の投与、続いて治療有効量のGDF15分子(及び任意選択的に、その対応するFc分子)の投与を含んでもよい。治療有効量のGDF15分子(及び任意選択的に、その対応するFc分子)の投与は、治療有効量の他方の治療薬の投与から少なくとも1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後又は7日後であってもよい。別の実施形態では、治療有効量の治療有効量の他方の治療薬の投与は、治療有効量のGDF15分子(及び任意選択的に、その対応するFc分子)の投与から少なくとも1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後又は7日後の少なくとも1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後又は7日後であってもよい。
【0089】
もう1つの治療薬と同時に投与されるGDF15分子は、GDF15分子(及び任意選択的に、その対応するFc分子)及び他方の治療薬の両方を含む組成物の投与を含んでもよく、たとえば、治療有効量のGDF15分子(及び任意選択的に、その対応するFc分子)は、投与前に治療有効量の他方の作用物質と一緒にしてもよい。別の実施形態では、GDF15分子(及び任意選択的に、その対応するFc分子)及びもう1つの治療薬の同時投与は、GDF15分子を含む第1の組成物及び他方の治療薬を含む第2の組成物の同時投与を含んでもよい。
【0090】
いくつかの実施形態では、もう1つの治療薬とのGDF15分子の投与は、相乗効果を有する。一実施形態では、効果は、GDF15分子(及び任意選択的に、その対応するFc分子)単独又は他方の作用物質より大きい。別の実施形態では、効果は、両方の作用物質(GDF15分子、及び任意選択的に、その対応するFc分子と、他方の作用物質)の相加効果より大きい。一実施形態では、併用療法(すなわち、もう1つの治療薬と、任意選択的に、その対応するFc分子と、GDF15分子の投与)は、GDF15単独療法(GDF15分子、及び任意選択的に、その対応するFc分子)より1.1倍超、1.2倍超、1.3倍超、1.4倍超、1.5倍超、1.6倍超、1.7倍超、1.8倍超、1.9倍超、2.0倍超、2.5倍超、3.0倍超、3.5倍超、4.0倍超、4.5倍超、5.0倍超、5.5倍超、6.0倍超、6.5倍超、7.0倍超、7.5倍超、8.0倍超、8.5倍超、9.0倍超、9.5倍超、10倍超、11倍超、12倍超、13倍超、14倍超、15倍超、16倍超、17倍超、18倍超、19倍超、20倍超、21倍超、22倍超、23倍超、24倍超、25倍超、26倍超、27倍超、28倍超、29倍超又は30倍超の効果を有する。別の実施形態では、併用療法(すなわち、もう1つの治療薬と、任意選択的に、その対応するFc分子と、GDF15分子の投与)は、他方の作用物質の単独療法より1.1倍超、1.2倍超、1.3倍超、1.4倍超、1.5倍超、1.6倍超、1.7倍超、1.8倍超、1.9倍超、2.0倍超、2.5倍超、3.0倍超、3.5倍超、4.0倍超、4.5倍超、5.0倍超、5.5倍超、6.0倍超、6.5倍超、7.0倍超、7.5倍超、8.0倍超、8.5倍超、9.0倍超、9.5倍超、10倍超、11倍超、12倍超、13倍超、14倍超、15倍超、16倍超、17倍超、18倍超、19倍超、20倍超、21倍超、22倍超、23倍超、24倍超、25倍超、26倍超、27倍超、28倍超、29倍超又は30倍超の効果を有する。効果は、体重減少の量(たとえば、総重量又は重量変化率の減少);血糖レベル、インスリンレベル、トリグリセリドレベル又はコレステロールレベルの減少;耐糖能、エネルギー消費又はインスリン感受性の改善;或いは食物摂取量の減少であってもよい。相乗効果は、投与から約1日後、約2日後、約3日後、約4日後、約5日後、約6日後、約7日後、約8日後、約9日後、約10日後、約11日後、約12日後、約13日後、約14日後、約21日後、約28日後、約35日後、約42日後、約49日後、約56日後、約63日後又は約70日後であってもよい。
【0091】
一実施形態では、GLP-1Rアゴニスト(たとえば、リラグルチド若しくはエクセンディン又はそのアナログ若しくはアゴニスト)と一緒に投与され、それぞれ配列番号39及び32(C末端リジンは任意選択);配列番号40及び33(C末端リジンは任意選択)、それぞれ配列番号41及び32(C末端リジンは任意選択);それぞれ配列番号42及び32(C末端リジンは任意選択);それぞれ配列番号43及び34(C末端リジンは任意選択);それぞれ配列番号44及び34(C末端リジンは任意選択);それぞれ配列番号45及び35(C末端リジンは任意選択);それぞれ配列番号46及び35(C末端リジンは任意選択);それぞれ配列番号47及び36(C末端リジンは任意選択);それぞれ配列番号48及び36(C末端リジンは任意選択);それぞれ配列番号49及び36(C末端リジンは任意選択);それぞれ配列番号50及び36(C末端リジンは任意選択);それぞれ配列番号51及び36(C末端リジンは任意選択);それぞれ配列番号52及び36(C末端リジンは任意選択);それぞれ配列番号53及び36(C末端リジンは任意選択);それぞれ配列番号54及び36(C末端リジンは任意選択);それぞれ配列番号55及び36(C末端リジンは任意選択);それぞれ配列番号56及び37(C末端リジンは任意選択);又はそれぞれ配列番号57及び37(C末端リジンは任意選択)のアミノ酸配列を含むGDF15分子及び対応するFc分子は、GDF15単独療法より1.1倍超、1.2倍超、1.3倍超、1.4倍超、1.5倍超、1.6倍超、1.7倍超、1.8倍超、1.9倍超、2.0倍超、2.5倍超、3.0倍超、3.5倍超、4.0倍超、4.5倍超、5.0倍超、5.5倍超、6.0倍超、6.5倍超、7.0倍超、7.5倍超、8.0倍超、8.5倍超、9.0倍超、9.5倍超、10倍超、11倍超、12倍超、13倍超、14倍超、15倍超、16倍超、17倍超、18倍超、19倍超、20倍超、21倍超、22倍超、23倍超、24倍超、25倍超、26倍超、27倍超、28倍超、29倍超又は30倍超の効果を有し;GLP-1Rアゴニスト単独療法(すなわち、GLP-1Rアゴニスト単独の投与)より1.1倍超、1.2倍超、1.3倍超、1.4倍超、1.5倍超、1.6倍超、1.7倍超、1.8倍超、1.9倍超、2.0倍超、2.5倍超、3.0倍超、3.5倍超、4.0倍超、4.5倍超、5.0倍超、5.5倍超、6.0倍超、6.5倍超、7.0倍超、7.5倍超、8.0倍超、8.5倍超、9.0倍超、9.5倍超、10倍超、11倍超、12倍超、13倍超、14倍超、15倍超、16倍超、17倍超、18倍超、19倍超、20倍超、21倍超、22倍超、23倍超、24倍超、25倍超、26倍超、27倍超、28倍超、29倍超又は30倍超の効果を有し;又は両方、作用物質の投与から約1日後、約2日後、約3日後、約4日後、約5日後、約6日後、約7日後、約8日後、約9日後、約10日後、約11日後、約12日後、約13日後、約14日後、約21日後、約28日後、約35日後、約42日後、約49日後、約56日後、約63日後又は約70日後有する。
【0092】
詳細な説明及び以下の例は、本発明を説明するものであり、本発明をそれに限定するものと解釈してはならない。本発明の説明に基づき当業者により様々な変更及び修正がなされ得、そうした変更及び修正も本発明に含まれる。
【実施例0093】
実施した実験及び得られた結果を含む以下の例は、説明のみを目的として提供するものであり、本発明を限定するものと解釈してはならない。
【0094】
実施例1:GDF15(WT)-リンカー-Fc分子
scFc-GDF15(配列番号38)及びFcΔ10(-)-(G4S)4-GDF15(配列番号39)のGDF15分子を産生し、分子の活性を試験した。
【0095】
FcΔ10(-)-(G4S)4-GDF15(配列番号39)を無血清浮遊培養に適応したCHO-K1細胞株で安定発現させた。それをピューロマイシン耐性を持つ安定な発現ベクターにクローニングする一方、FcΔ10(-)-(G4S)4-GDF15とヘテロ二量体を形成するためのFc鎖、FcΔ10(+、K)(配列番号32)を、ハイグロマイシンを含む発現ベクター(Selexis,Inc.)にクローニングした。これらのプラスミドを、リポフェクタミンLTXを用いて1:1の割合でトランスフェクトし、トランスフェクションの2日後に10ug/mLのピューロマイシン及び600ug/mLのハイグロマイシンを含む独自の増殖培地で細胞を選択した。選択中に週2回培地を交換した。細胞の生存率が約90%になったとき、それらをバッチ培養生産工程用にスケールアップした。細胞を生産培地に2×106/mLで播種した。細胞により作られたコンディション培地(CM)を7日目に回収し、清澄化した。エンドポイントの生存率は、典型的には90%超であった。
【0096】
FcΔ10(-)-(G4S)4-GDF15(配列番号39)(及び対をなした任意のFc)を清澄化した。コンディション培地を、2段階クロマトグラフィー手順を用いて精製した。約5LのCMを、ダルベッコのリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)ですでに平衡化してあったGE MabSelect SuReカラムに直接アプライした。結合したタンパク質に以下の3つの洗浄ステップを行った。最初に、3カラム体積(CV)のPBS;次に、1CVの20mMのトリス、pH7.4の100mMの塩化ナトリウム;最後に、3CVの500mMのL-アルギニン、pH7.5。これらの洗浄ステップにより、非結合又は軽く結合した培地成分及び宿主細胞の不純物が除去される。次いでカラムを、5CVの20mMのトリス、pH7.4の100mMの塩化ナトリウムで再平衡化し、UV吸光度をベースラインに戻した。所望のタンパク質をpH3.6の100mMの酢酸にて溶出し、大量に集めた。タンパク質プールを1Mのトリス-HCl、pH9.2で5.0~5.5のpH範囲にすぐに滴定した。次にpH調整したタンパク質プールを、pH6.0の20mMの2-エタンスルホン酸(MES)ですでに平衡化してあったGE SP セファロース(登録商標)HPカラムに充填した。次いで結合したタンパク質を5CVの平衡化緩衝液で洗浄し、最後にpH6.0の20mMのMES中、0~400mMの塩化ナトリウムの20CV、0~50%のリニアグラジエントで溶出した。溶出中に画分を集め、分析用サイズ排除クロマトグラフィー(Superdex(登録商標)200)により解析して均一な産物のためプールするのに適切な画分を決定した。SP HPクロマトグラフィーにより、遊離Fc、切除された種及びFc-GDF15多量体などの産物関連不純物が除去される。次いで透析によりSP HPプールの緩衝液を10mMの酢酸ナトリウム、5%プロリン、pH5.2にした。それを、Sartorius Vivaspin(登録商標)20 10キロダルトン分子量カットオフ遠心装置を用いて約15mg/mlに濃縮した。最後に、それを濾過滅菌し、精製されたFc-GDF15分子を含む得られた溶液を5℃で保存した。最終産物について、質量スペクトル解析、硫酸ドデシルナトリウムポリアクリルアミド電気泳動及びサイズ排除高速液体クロマトグラフィーを用いて同一性及び純度を評価した。
【0097】
同様にしてScFc-GDF15(配列番号38)を産生した。このGDF15分子をCHO/CS9細胞株で安定発現させた。分子を安定な発現ベクターにクローニングした。プラスミド(直線化)を、エレクトロポレーションを用いて1:1の割合でトランスフェクトし、トランスフェクションの2日後に細胞を選択した。選択中に週3回培地を交換した。細胞の生存率が約90%になったとき、それらを流加培養生産工程用にスケールアップした。細胞を生産培地中、1×106/mLで播種し、細胞数が4~5×106/mlになったとき1回流加した。細胞により作られたコンディション培地(CM)を10日目に回収し、清澄化した。エンドポイントの生存率は、典型的には90%超であった。ScFc-GDF15を清澄化し、コンディション培地を、2段階連結クロマトグラフィー手順を用いて精製した。複数の回収物由来のコンディション培地をプールし、タンジェンシャルフロー濾過による1sq ftのPellicon(登録商標)2 10kD再生セルロース膜(Millipore)を用いた限外濾過により約5倍に濃縮した。約5Lの濃縮CMを、ダルベッコのリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)ですでに平衡化してあったGE MabSelect SuReカラムに直接アプライした。非特異的に結合したタンパク質を、12CVのPBS洗浄ステップにより除去した。所望のタンパク質を、3CVのpH3.5の0.5%酢酸、150mMのNaClで溶出し、ストレージループ(storage loop)に集めた。集めたタンパク質プールを、pH5.0の30mMのアセテート、150mMのNaClですでに平衡化してあったGE HiLoad 26/60 Superdex 200 Prep Gradeサイズ分離カラムに直接充填した。サイズ分離実行中に集められたピーク画分を硫酸ドデシルナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動により解析し、均一な産物用のプールに適切な画分を決定した。最終的なサイズ分離プールのpHを、10%氷酢酸を添加してpH4.5に調整し、次いで透析により緩衝液を10mMの酢酸ナトリウム、9%(w/v)スクロース、pH4.5にした。それを、10キロダルトン分子量カットオフ遠心装置を用いて15mg/ml超に濃縮した。凍結に対するタンパク質安定性を3サイクルの凍結及び解凍により試験した。最後に、最終ロットを濾過滅菌し、精製されたGDF15分子を含む得られた溶液を-80℃で保存した。最終産物について、質量スペクトル解析、n末端シーケンシング、硫酸ドデシルナトリウムポリアクリルアミド電気泳動及びサイズ排除高速液体クロマトグラフィーを用いて同一性及び純度を評価した。
【0098】
次いでscFc-GDF15及びFcΔ10(-)-(G4S)4-GDF15の活性について、インビボ活性を解析した。カニクイザル(各群n=10)にビヒクル、3mg/kgの陽性対照FGF21-Fc、1.5mg/kgのscFc-GDF15又は1.5mg/kgのFcΔ10(-)-(G4S)4-GDF15:FcΔ10(+、K)を週1回6週間投与し、続いて5週間の休薬期を設けた。体重及びトリグリセリドレベルを測定した。自然発症肥満のナイーブな雄カニクイザルについて、健康を事前スクリーニングし、ボディマスインデックスは>41であった。サルを処置の6週間前に個別飼育、実験手順及び取り扱いに慣れさせた。サルを4群に分け、同様のベースラインを有するように各群にSC注射を週1回6週間(0日目、7日目、14日目、21日目、28日目及び35日目)を行った。夜間絶食後の血液サンプルを、投与24日前、17日前及び10日前、並びに処置期中の6日目、13日目、20日目、27日目、34日目及び41日目(各々週1回の投与の6日後)に集めた。休薬期中の血液サンプルは48日目、55日目、62日目、69日目及び76日目に集めた。本試験を通してサルごとに体重を週1回測定し、餌摂取量を毎日モニターした。各サルに約8時間間隔を置いた朝及び夕の給餌時に、限られた時間(1時間)無制限の餌を与えた。食間に限られた時間(1時間)150gのリンゴの軽食を与えた。毎回の食事又は軽食後、残った餌又はリンゴを除去し体重を測って食物摂取量を計算した。
【0099】
GDF15-Fc融合タンパク質は、FGF21-Fcと同様に体重(
図1)及びトリグリセリドレベル(
図2)を減少させた。
【0100】
実施例2:GDF15(WT)-リンカー-Fc分子の属性
実施例1に記載されているようなFcΔ10(-)-(G4S)4-GDF15(配列番号39)分子及びFcΔ10(+)-(G4)-GDF15(配列番号40)について、その安定性及び製造性(たとえば、商業生産のため)に影響を与え得る属性を解析した。GDF15分子(たとえば、FcΔ10(-)-(G4S)4-GDF15及びFcΔ10(+)-(G4)-GDF15)は、分子の製造性に望ましくない特徴、非常に不均一であること(たとえば、FcΔ10(-)-(G4S)4-GDF15のイオン交換カラム画分の解析から、分子が非常に不均一であることが示される、
図3)が確認された。非常に不均一な集団が生じるGDF15分子の属性を決定するため、サイズ排除クロマトグラフィー、SDS PAGEゲル及び質量分析法による分子の解析を行った。サイズ排除クロマトグラフィーによる保持時間に差がないことから、凝集又は著しい分解が不均一性の原因ではなさそうであることが示された。SDS PAGEゲルにも差がなかったことから、ジスルフィド対の誤り又は著しい分解も不均一性の原因ではなさそうであることが示された。
【0101】
FcΔ10(-)-(G4S)4-GDF15(配列番号39)の不均一性を評価するため、MS解析も行った。GDF15分子をmono S、1mlカラムを用いて精製し、画分番号25(P1)、画分番号28(P2)及び画分番号31(P3)(
図3)を集め、MS解析に供した。約50μgの画分を乾燥させ、25μLの150mMのトリス、pH7.5/8Mの尿素/40mMのヒドロキシルアミン/10mMのDTTに再懸濁し、次いで37℃で1時間インキュベートした。サンプルを室温、暗所で30分間、20mMのヨードアセトアミド(IAM)でアルキル化した。次いでサンプルを水及び2μgのトリプシン(1:25)で100μLに希釈し、37℃で一晩消化させた。消化物を酸性化し、続いてWaters(Milford,MA)NanoAcquity UPLC systemに注入した。サンプルを最初に15μL/minで180μm×20mm Symmetry C18トラップカラムに充填し、続いてAgilent(Santa Clara,CA)Zorbax 0.5mm×250mm 300SB-C18カラムでペプチドの分離を行った。緩衝液Aは、0.1%ギ酸/水で、一方緩衝液Bは、0.1%ギ酸/99.9%アセトニトリルであった。グラジエントは、1%Bを初期条件をとし、続いて85分かけて45%Bに増加させ、1分かけて97%Bにし、97%Bで6分間イソクラティックとし、3分かけて1%Bにし、次いで20分間1%Bでイソクラティックとした。UPLCカラム溶出物を、標準的な加熱エレクトロスプレーイオン化II(HESI II)イオン化源を用いてThermo Fisher Scientific(San Jose,CA)Orbitrap Velos Pro質量分析計に噴霧した。質量分析計法は、30K分解能でのm/z[300~2000]のフルスキャンMS、続いて最も豊富な上位10のプリカーサーイオンMS/MS(CIDの実行)からなった。解析には以下の装置パラメーターを使用した:ソース電圧=3.5kV;キャピラリー温度=275℃;SレンズRFレベル=50%;実行時間=10msec;補正コリジョンエネルギー=35;単離幅=2.0Da;及び閾値=1.0E4。高分解能MSデータのデコンボリューションには、Thermo Xcalibur2.1ソフトウェアのXtractコンポーネントを使用した。1.2のS/N閾値及びm/z400における分解能100,000を用いて、[300~2000]からの平均データをデコンボリューションした。デコンボリューションしたペプチド質量(グリコシル化及び非グリコシル化)をモノアイソトピック[M+H]
+として示した。グリカンサブユニットの段階的な消失及びCID実行後の最も強いフラグメントとしての非グリコシル化プリカーサーイオンの存在により、様々なグリコシル化種が確認された。
【0102】
MS結果から、様々な程度の脱アミド化種(たとえば、P1の70%、P2の47%及びP3の24%)及びリンカー上のグリコシル化の分布(主に単糖及び三糖)が、そのCEXプロファイル(
図3)に示すようにGDF15分子の非常に不均一な性質に寄与することが示された。(G4S)4リンカー(たとえば、FcΔ10(-)-(G4S)4-GDF15に存在する)は、様々な程度及び種類のグリコシル化及び/又はリン酸化を伴い高度にグリコシル化及びリン酸化されること、及び野生型ヒトGDF15の活性フラグメントのN末端は、脱アミド化及び異性化の影響を非常に受けやすいこと(たとえば、
図4を参照、
図4は、3位にアスパラギンを含むペプチドの非修飾種、脱アミド化種及び異性化種に相当する、フルマススペクトルデータから抽出されたいくつかの質量を示す。抽出された質量は、ペプチドの二価体由来のm/z[590.25~590.75]であった)が確認された。3位のアスパラギン(hGDF15の活性フラグメントをコードするアミノ酸配列、配列番号6の場合)は、脱アミド化及び異性化の影響を非常に受けやすく、5位のアスパルテート(hGDF15の活性フラグメントをコードするアミノ酸配列、配列番号6の場合)は、異性化の影響を非常に受けやすかった。
【0103】
これらの属性に基づき、Fc領域へのリンカーと共に野生型ヒトGDF15の活性フラグメントを有するGDF15-Fc融合タンパク質の全体に均一な集団を製造すること(たとえば、商業生産のため)は、困難であると考えられる。
【0104】
実施例3:リンカーを用いないGDF15-Fc融合タンパク質の活性
実施例2に記載した不均一性問題に対応するため、1)GDF15領域とFc領域との間のリンカーを除去し、2)野生型ヒトGDF15の活性フラグメントのN末端残基を除去又は置換した新規なGDF15-Fc融合タンパク質(たとえば、野生型ヒトGDF15の活性フラグメントの最初の3アミノ酸が欠失されるGDF15(Δ3)(配列番号13)、又は野生型ヒトGDF15の活性フラグメントの5位のアスパルテートがグルタメートに変異されたGDF15(D5E)(配列番号16))。
【0105】
Fc分子がGDF15-Fc融合タンパク質のFc領域に非共有結合的に会合してヘテロ二量体を形成するのに適した、GDF15-Fc融合タンパク質のFc領域及びFc分子における電荷対の変異に加えて、GDF-Fc分子のFc分子とのヘテロ二量体化を増大させるため、新規な分子のいくつかは、CH3領域に鎖間ジスルフィド結合、又は「システインクランプ」(その記号内に「CC」を含む分子)をさらに含むように設計した。
【0106】
1)GDF15領域とFc領域との間のリンカーを欠失させ、2)GDF15のN末端残基を消失させた又は置換させた4つの新規なGDF15-Fc融合タンパク質を生成した。4分子のうち2つでは、GDF15-Fc融合タンパク質のFc領域のCH3ドメイン(さらにはヘテロ二量体化のためその対応するFc分子)に鎖間ジスルフィド結合も導入した。これらの分子(FcΔ10(-)-GDF15(Δ3)(配列番号41);FcΔ10(-)-GDF15(N3D)(配列番号42);FcΔ10(-、CC)-GDF15(Δ3)(配列番号43);FcΔ10(-、CC)-GDF15(N3D)(配列番号44))の効力及び薬物動態学的(PK)特性を、マウスにおいて前世代FcΔ10(-)-(G4S)4-GDF15(配列番号39)と比較した。
【0107】
分子の効力を判定するため、食物摂取量を測定した。個別飼育した7~8週齢雄ob/obマウスを、各群が同程度の処置前体重レベル及び食物摂取レベルを有する種々の処置群に分けた。動物を皮下注射により0.32ug/kg、1.6ug/kg、8ug/kg、40ug/kg、0.2mg/kg、1mg/kg又は5mg/kgのGDF15-Fc融合タンパク質(FcΔ10(-)-GDF15(Δ3):FcΔ10(+、K)(配列番号41及び32);FcΔ10(-)-GDF15(N3D):FcΔ10(+、K)(配列番号42及び32);又はFcΔ10(-、CC)-GDF15(Δ3):FcΔ10(+、K、CC)(配列番号39及び32)の二量体)で処置し、夜間の食物摂取量を測定した。示したデータは、2~4回の独立した試験の平均である(
図5)。4つの新規な分子、FcΔ10(-)-GDF15(Δ3)(配列番号41);FcΔ10(-)-GDF15(N3D)(配列番号42);FcΔ10(-、CC)-GDF15(Δ3)(配列番号43);及びFcΔ10(-、CC)-GDF15(N3D)(配列番号44)は、前世代GDF15-Fc融合タンパク質、FcΔ10(-)-(G4S)4-GDF15(配列番号39)と同程度の効力を有した。
【0108】
分子の薬物動態を判定するため、18週齢雄の食餌性肥満C57Bl/6マウスに1mg/kgのタンパク質を皮下投与し、投与1時間後、4時間後、8時間後、24時間後、72時間後、168時間後、240時間後及び336時間後に連続サンプリングを行った。4つの新規な分子、FcΔ10(-)-GDF15(Δ3)(配列番号41);FcΔ10(-)-GDF15(N3D)(配列番号42);FcΔ10(-、CC)-GDF15(Δ3)(配列番号43);及びFcΔ10(-、CC)-GDF15(N3D)(配列番号44)は、前世代GDF15-Fc融合タンパク質、FcΔ10(-)-(G4S)4-GDF15(配列番号39)と同程度の薬物動態特性を有した(
図6)。
【0109】
実施例4:リンカーを用いないGDF15-Fc融合タンパク質のさらなる操作
製造性及び安定性の属性が改善された新設計の分子が前世代分子と同様の効力特性及びPK特性を有したため、起こり得る不均一性を低下させ、Fcエフェクター機能を低下させて効力を増大させるように分子をさらに操作した。
【0110】
GDF15領域の不均一性をさらに低下させるため、3位のアスパラギンをアスパルテートで置換する代わりに、アスパラギンをグルタミンで置換した。さらに、天然のGDF15タンパク質の高い脱アミド化率及び異性化率を排除するため、GDF15のN末端に2つの変化、たとえば、GDF15(Δ3/D5E)(配列番号17)、GDF15(N3Q/D5E)(配列番号18)が導入されるように分子を操作した。Fcエフェクター機能を低下させて効力を向上させるため、Fcヒンジ領域から追加の6アミノ酸を欠失させること(たとえば、FcΔ10ではなくFcΔ16)によりFc領域のヒンジ領域がさらに欠失してFcγRへの結合を減少させるように分子をさらに操作した。ヒンジ領域の同じ操作は、GDF15-Fc融合タンパク質がヘテロ二量体化する対応するFc分子についても行った。
【0111】
さらに操作したGDF15-Fc融合タンパク質、FcΔ16(-、CC)-GDF15(Δ3/D5E)(配列番号45)、FcΔ16(-、CC)-GDF15(N3Q/D5E)(配列番号46)及びFcΔ16(-)-GDF15(N3Q/D5E)(配列番号47)の活性を、カニクイザルにおいて試験した。自然発症肥満のナイーブな雄カニクイザルに、処置開始の前の10週間手順上の操作(たとえば、血液採取、皮下注射、体重測定、給餌スケジュール)への馴化/訓練を行った。馴化/訓練期中に収集したデータ(血液化学検査及び体重)に基づき、80匹のサルを各々n=サル10匹の8つの処置群に分けた。各処置群にビヒクル、3mg/kgの陽性対照FGF21-Fc、0.5mg/kgのFcΔ16(-、CC)-GDF15(Δ3/D5E)(そのヘテロ二量体化パートナー、FcΔ16(+、K、CC)(配列番号35)と共に)、3.0mg/kgのFcΔ16(-、CC)-GDF15(Δ3/D5E)(そのヘテロ二量体化パートナー、FcΔ16(+、K、CC)(配列番号35)と共に)、0.5mg/kgのFcΔ16(-、CC)-GDF15(N3Q/D5E)(そのヘテロ二量体化パートナー、FcΔ16(+、K、CC)と共に)、3.0mg/kgのFcΔ16(-、CC)-GDF15(N3Q/D5E)(そのヘテロ二量体化パートナー、FcΔ16(+、K、CC)と共に)、0.5mg/kgのFcΔ16(-)-GDF15(N3Q/D5E)(そのヘテロ二量体化パートナー、FcΔ16(+、K)(配列番号36)と共に)又は3.0mg/kgのFcΔ16(-)-GDF15(N3Q/D5E)(そのヘテロ二量体化パートナー、FcΔ16(+、K)(配列番号36)と共に)を投与した。各々の皮下注射を処置期中の4週間週1回行い、続いて4週間の休薬期を設け;処置期及び休薬期中に血液採取及び体重のモニタリングを週1回行い、食物摂取を毎日行った。グラフは、n=5~6/群を表し、データは群平均+SEMで表される。統計解析は、ANCOVAにより行った。統計学的有意性は、*p<0.05、**p<0.01及び***p<0.001対ビヒクルとして示される。薬剤の急速なクリアランスを示したサルは、抗薬物抗体(ADA)の疑いがあり、解析から除外した。
【0112】
意外にも、新たに操作したGDF15-Fc融合タンパク質は、ほとんどすべての効力を失った(
図7)。前に生成したGDF15-Fc融合タンパク質とは異なり、新たに操作したGDF15-Fc融合タンパク質で、FGF21-Fcと同程度まで体重を減少させたものはなかった(実施例1、
図1を参照)
【0113】
実施例5:カニクイザルにおけるGDF15-Fc融合タンパク質活性の回復
実施例4のGDF15-Fc融合タンパク質は、実施例1のGDF15-Fc融合タンパク質と比較して、表7に示すような以下の相違を有した。
【0114】
【0115】
効力を回復させるため、サルにおいて有効であった分子の様々な態様を、新規なGDF15-Fc融合タンパク質に再導入した。FcΔ16(-)-(G4Q)4-GDF15(N3Q)(配列番号49);FcΔ16(-)-(G4Q)4-GDF15(N3Q/D5E)(配列番号50)及びFcΔ16(-)-G4S-GDF15(N3Q/D5E)(配列番号54)では、システインクランプ(CH3鎖間のジスルフィド結合)を排除し、リンカーを再導入した。しかしながら、本実施例で使用したリンカーは、グリコシル化を減少させるため、グリコシル化され得ないものであるか(たとえば、G4Q)、或いはより短いものであった((G4S)4ではなくG4S)。さらに、FcΔ16(-)-(G4Q)4-GDF15(N3Q)では、5位の変異を排除した。最後に、新規な分子FcΔ10(-、L234A/L235A)-(G4Q)4-GDF15(N3Q/D5E)(配列番号57)では、Fc領域のヒンジ領域の小さい方の欠失を再導入したが、但しFcγR結合を排除すると考えられるFc領域のL234A/L235A変異と共に再導入した。
【0116】
これらの新規な分子を、実施例1でカニクイザルにおいて有効であることが示されたFcΔ10(-)-(G4S)4-GDF15と比較した。自然発症肥満のナイーブな雄カニクイザルに、処置開始の前の2週間手順上の操作(たとえば、血液採取、皮下注射、体重測定、給餌スケジュール)への馴化/訓練を行った。馴化/訓練期中に収集したデータ(血液化学検査及び体重)に基づき、42匹のサルを各々n=サル7匹の6つの処置群に分けた。各処置群にビヒクル、1.5mg/kgのFcΔ10(-)-(G4S)4-GDF15(そのヘテロ二量体化パートナー、FcΔ10(+、K)と共に)、1.5mg/kgのFcΔ16(-)-(G4Q)4-GDF15(N3Q)(そのヘテロ二量体化パートナー、FcΔ16(+、K)と共に)、1.5mg/kgのFcΔ16(-)-(G4Q)4-GDF15(N3Q/D5E)(そのヘテロ二量体化パートナー、FcΔ16(+、K)と共に)、1.5mg/kgのFcΔ16(-)-G4S-GDF15(N3Q/D5E)(そのヘテロ二量体化パートナー、FcΔ16(+、K)と共に)又は1.5mg/kgのFcΔ10(-、L234A/L235A)-(G4Q)4-GDF15(N3Q/D5E)(そのヘテロ二量体化パートナー、FcΔ10(+、K、L234A/L235A)(配列番号37)と共にを投与した。皮下注射を処置期中の2週間週1回行い;処置期中、血液採取及び体重モニタリングを週1回行い、食物摂取量を毎日モニターした。グラフは、n=7/群を表し、データは、群平均+SEMで表される。統計解析は、ANCOVAにより行った。統計学的有意性は、*p<0.05、**p<0.01及び***p<0.001対ビヒクルとして示される。新規な分子は効力を回復した(
図8)。
【0117】
これらの結果に基づき、N3Q変異は、サルにおいてGDF15活性に影響を与えず、GDF15の二重変異(N3Q/D5E)もサルにおいてGDF15活性に影響を与えないと判定された。さらに16アミノ酸Fcヒンジ欠失(Δ16)は、サルにおいて10アミノ酸Fcヒンジ欠失(Δ10)と同様の作用を有することも示された。最後に、リンカーが、サルにおいて活性の決定的な成分であることが示された。リンカーがG4SかそれともG4Qであるかは活性に影響を与えないけれども、リンカーの長さは、活性にとって重要である。より長いリンカー(たとえば、
図8における(G4S)4及び(G4Q)4)は、より短いリンカー(たとえば、G4S)と比較してより強力である。
【0118】
実施例6:ob/obマウスを用いたFcΔ16(-)-(G4Q)4-GDF15(N3Q/D5E)及びFcΔ10(-、L234A/L235A)-(G4Q)4-GDF15(N3Q/D5E)の食物摂取量アッセイ
食物摂取量アッセイを用いて、2つの異なるGDF15-Fc融合タンパク質の有効性を評価した。7~8週齢の個別飼育した雄ob/obマウスを、各群が同程度の処置前体重レベル及び食物摂取レベルを有する種々の処置群(各群n=5)に分けた。動物を皮下注射により0.32ug/kg、1.6ug/kg、8ug/kg、40ug/kg、0.2mg/kg、1mg/kg又は5mg/kgのヘテロ二量体FcΔ16(-)-(G4Q)4-GDF15(N3Q/D5E):FcΔ16(+、K)又はFcΔ10(-、L234A/L235A)-(G4Q)4-GDF15(N3Q/D5E):FcΔ10(+、K、L234A/L235A)で処置し、夜間の食物摂取量を測定した。各GDF15-Fc融合タンパク質の代表的な実験の結果を、FcΔ16(-)-(G4Q)4-GDF15(N3Q/D5E)(
図9)及びFcΔ10(-、L234A/L235A)-(G4Q)4-GDF15(N3Q/D5E)(
図10)の用量反応曲線で示す。結果から、どちらのGDF15-Fc融合タンパク質も、急性ob/obマウスにおいて食物摂取量を減少させることが示される。本アッセイにおけるED50を表8に示す。
【0119】
【0120】
種々の実施形態によって本発明を記載してきたが、当業者ならば変形及び修正を思いつくことが理解されよう。したがって、添付の特許請求の範囲は、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲内にある、そうしたすべての等価な変形を包含することを意図している。さらに、本明細書に使用するセクション見出しは、整理することのみを目的とするものであり、記載された主題を限定するものと解釈してはならない。
【0121】
本出願に引用された参考文献はすべて、いかなる目的においても明示的に本明細書に援用する。