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特開2022-95872ヒトインスリンまたはそのアナログのアシル化誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095872
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】ヒトインスリンまたはそのアナログのアシル化誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/62 20060101AFI20220621BHJP
   C07D 207/46 20060101ALI20220621BHJP
   A61K 38/28 20060101ALI20220621BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220621BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
C07K14/62 ZNA
C07D207/46 CSP
A61K38/28
A61P3/10
A61K45/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022066071
(22)【出願日】2022-04-13
(62)【分割の表示】P 2019503703の分割
【原出願日】2017-08-01
(31)【優先権主張番号】201610625257.5
(32)【優先日】2016-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201610779132.8
(32)【優先日】2016-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】516174219
【氏名又は名称】江蘇恒瑞医薬股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】劉 徳玉
(72)【発明者】
【氏名】王 宏偉
(72)【発明者】
【氏名】趙 亮
(72)【発明者】
【氏名】王 菲菲
(72)【発明者】
【氏名】曾 翔
(72)【発明者】
【氏名】王 涛
(72)【発明者】
【氏名】王 亜里
(72)【発明者】
【氏名】戴 雨▲ルゥ▼
(57)【要約】      (修正有)
【課題】既存のインスリンアナログ及びそのアシル化誘導体より持続的であり、その血糖低下がより安定しており、貯蔵中より安定である、ヒトインスリンのアシル化誘導体又はそのアナログを提供する。
【解決手段】ヒトインスリンアナログのアシル化誘導体は、式:S-W-X-Y-Z[Sは、B鎖上のアミノ酸30におけるスレオニンが存在しないヒトインスリンであり;-W-X-Y-Zは、インスリンアナログのアシル化修飾基であり;Wは、-OC(CHCO-を有するジアシル構造であり;Xは、カルボン酸基を含むジアミノ化合物であり、アミド結合は、化合物のアミノ基の1つをWにおけるアシル基の1つと結合することにより形成され;Yは、-A(CH-であり;Zは、-COOHである]により表される構造を有する、ヒトインスリンアナログのアシル化誘導体又はその亜鉛錯体である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトインスリンアナログのアシル化誘導体またはその亜鉛錯体であって、ヒトインスリンアナログのアシル化誘導体は、式:
S-W-X-Y-Z
(I)
[式中、
Sは、B鎖上のアミノ酸30におけるスレオニンが存在しないヒトインスリンであり;-W-X-Y-Zは、インスリンアナログのアシル化修飾基であり;
Wは、-OC(CH2)nCO-を有するジアシル構造であり、ここで、nは、2~10の整数であり、アミド結合は、該構造のアシル基の1つにより、親インスリンもしくはそのアナログのA鎖もしくはB鎖のN末端におけるアミノ酸残基のα-アミノ基とまたはB鎖上に存在するリシン残基のε-アミノ基と形成され;
Xは、カルボン酸基を含むジアミノ化合物であり、アミド結合は、該化合物のアミノ基の1つをWにおけるアシル基の1つと結合することにより形成され;
Yは、-A(CH2)m-であり、ここで、mは、6~32の整数、好ましくは10~16の整数、特に好ましくは12~14の整数であり、Aは、存在しないかまたはCO-であり;
Zは、-COOHである]
により表される構造を有する、ヒトインスリンアナログのアシル化誘導体またはその亜鉛錯体。
【請求項2】
アミド結合が、Wにより、B鎖上に存在するリシン残基のε-アミノ基と形成される、請求項1に記載のヒトインスリンアナログのアシル化誘導体またはその亜鉛錯体。
【請求項3】
nが、2~5の整数、好ましくは2である、請求項1に記載のヒトインスリンアナログのアシル化誘導体またはその亜鉛錯体。
【請求項4】
Xが、-HN(CH2)pCH(COOH)NH-であり、pが、2~10の整数、好ましくは2~6の整数、特に好ましくは2~4の整数、最も好ましくは4である、請求項1に記載のヒトインスリンアナログのアシル化誘導体またはその亜鉛錯体。
【請求項5】
-W-X-Y-Zが、
【化1】
で示される構造を有し、好ましくは
【化2】
である、請求項1に記載のヒトインスリンアナログのアシル化誘導体またはその亜鉛錯体。
【請求項6】
Nα-(HOOC(CH2)14CO)-Nε-(OCCH2CH2CO-(NεB29-デス(B30)ヒトインスリン))-Lys-OHまたはその亜鉛錯体、好ましくはリシンB29(Nε-(Nα-ヘキサデカン二酸-L-リシン-Nε-オキソブチリル))デス(B30)ヒトインスリンまたはその亜鉛錯体。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載のヒトインスリンアナログのアシル化誘導体またはその亜鉛錯体を製造するための方法であって、B鎖上のアミノ酸30におけるスレオニンが存在しないヒトインスリンと、式(III):
R-W-X-Y-Z
(III)
[式中、Rは、脱離基、好ましくは活性化エステル基であり、より好ましくは
【化3】
からなる群より選択される]
で示される化合物を反応させる工程を含む、方法。
【請求項8】
式(III')で示される化合物からカルボキシル保護基を除去し、式(III)で示される化合物を得る工程:
【化4】
[式中、X'およびZ'が、XおよびZのすべてのカルボキシル基がそれぞれ保護基により保護された形態を表し、該保護基が、好ましくはC1-C6アルキル基、好ましくはC1-C4アルキル基、特に好ましくはメチルまたはtert-ブチルであり;Rが、請求項7に定義されるとおりである]
をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
式(III):
R-W-X-Y-Z
(III)
[式中、W、X、YおよびZは、請求項1~5のいずれか一項に定義されるとおりであり、
Rは、脱離基、好ましくは活性化エステル基であり、より好ましくは
【化5】
からなる群より選択される]
で示される化合物。
【請求項10】
請求項9に記載の式(III)で示される化合物のXおよびZにおけるすべてのカルボキシル基をカルボキシル保護に供することにより得られる、式(III'):
R-W-X'-Y-Z'
(III')
[式中、X'およびZ'は、XおよびZのすべてのカルボキシル基がそれぞれ保護基により保護された形態を表し、該保護基は、好ましくはC1-C6アルキル基、好ましくはC1-C4アルキル基、特に好ましくはメチルまたはtert-ブチルである]
で示される化合物。
【請求項11】
【化6】
好ましくは
【化7】
[式中、Rが、請求項9に定義されるとおりである]
である、請求項9に記載の化合物。
【請求項12】
4個超の亜鉛原子が、6個すべてのアシル化インスリン分子に含まれる、請求項1~6のいずれか一項に記載のヒトインスリンアナログのアシル化誘導体の亜鉛錯体。
【請求項13】
請求項1~5のいずれか一項に記載のヒトインスリンアナログのアシル化誘導体またはその亜鉛錯体;または請求項12に記載のヒトインスリンアナログのアシル化誘導体の亜鉛錯体を含み、医薬的に許容される担体をさらに含む、医薬組成物。
【請求項14】
速効型インスリンをさらに含む、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
糖尿病を処置するための医薬の製造における、請求項1~6のいずれか一項に記載のヒトインスリンアナログのアシル化誘導体またはその亜鉛錯体、または請求項12に記載のヒトインスリンアナログのアシル化誘導体の亜鉛錯体、または請求項13または14に記載の医薬組成物の使用。
【請求項16】
糖尿病を処置するための医薬の製造における、速効型インスリンと組み合せた、請求項1~6のいずれか一項に記載のヒトインスリンアナログのアシル化誘導体またはその亜鉛錯体、または請求項12に記載のヒトインスリンアナログのアシル化誘導体の亜鉛錯体、または請求項13または14に記載の医薬組成物の使用。
【請求項17】
糖尿病を処置するための方法であって、該方法が、請求項1~6のいずれか一項に記載のヒトインスリンアナログのアシル化誘導体またはその亜鉛錯体、請求項12に記載のヒトインスリンアナログのアシル化誘導体の亜鉛錯体、または請求項13または14に記載の医薬組成物を処置を必要とする患者に投与することを含む、方法。
【請求項18】
糖尿病を処置するための方法であって、該方法が、速効型インスリンと組み合せて、請求項1~6のいずれか一項に記載のヒトインスリンアナログのアシル化誘導体またはその亜鉛錯体、請求項12に記載のヒトインスリンアナログのアシル化誘導体の亜鉛錯体、または請求項13に記載の医薬組成物を処置を必要とする患者に投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトインスリンアナログのアシル化誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病(DM)は、体内のインスリンの絶対的もしくは相対的な欠如またはインスリンへの標的組織の非感受性により引き起こされる慢性高血糖を特徴とする一般的な代謝性内分泌疾患であり、DMは、炭水化物、脂肪およびタンパク質代謝における障害を伴う臨床的慢性な全身性代謝異常症候群である。心血管および脳血管、腎臓、眼、神経および他の臓器の合併症を含む人体の様々な系を含む、遺伝的要因と環境的要因との間の相互作用により引き起こされ、これは、ヒトの健康を極めて危険にさらし、DMは、生涯にわたる疾患である。
【0003】
糖尿病は、一般的で頻繁に生じる疾患となった。それは、癌および心脳血管疾患に次いで3番に多いヒトの生命を脅かす疾患である。それは、すべてのヒトに対して難題をもたらし、人種および国にかかわらず人々の生活および健康を害する。国際糖尿病連合(IDF)によれば、糖尿病患者の総数は、1980年代半ばから1990年内半ばまでに4倍に増加し、1億2000万人に達した。2007年には、世界中の糖尿病患者数は、2億4600万人となり、そのうち46%が、40~59歳の労働人口であった。2025年までに、世界中の糖尿病患者数は、3億8000万人まで増加し、世界の成人人口の7.1%を占めると推定される。
【0004】
ヒトインスリンの使用は、糖尿病を処置する主要な方法であるが、ヒトインスリンの作用時間が短いため、患者に頻繁に注射する必要があり、これは、極めて不便である。したがって、人々は、人体でより長時間作用し得るインスリンアナログおよびその誘導体を得るよう努力する。それらの中で、アシル基を用いることによるヒトインスリンまたはそのアナログの修飾は、その半減期を延長させるのに有効な方法である。WO2005012347およびWO2013086927には、それぞれ2つの異なる種類のヒトインスリンアナログのアシル化誘導体が開示されている。このような誘導体は、脂肪酸により形成されるアシル基をヒトインスリンアナログのアミノ酸と共有結合させることにより得られ、このような修飾後、それらの半減期は、既存のインスリンアナログと比較して極めて改善される。しかしながら、治療効果を向上させ、安定な血糖を維持するため、より長い半減期を有するインスリンアナログまたはそのアシル化誘導体を提供することが未だ必要とされている。また、既存のアシル化インスリンは、不安定性を抱えており、極めて安定なインスリンアナログまたはそのアシル化誘導体を提供することも必要とされている。
【0005】
他方、インスリンの生理学的必要性は、基本時間および食事時間(速効性)を指し、前者は、終日血糖コントロールを提供し、後者は、主に食後血糖の増加に応答する。生理学的特徴によれば、理想的な食事時インスリン製剤は、食事後すぐにピークに達し得て、血糖を基礎レベルまで低下させるとき、次の食事前の低血糖を避けるために血糖を正常レベルまで低下させ得る。理想的な基礎インスリンは、極めて長い作用時間(全患者で24時間超)、最小のインスリン可変幅(低血糖を軽減するため)および安全性を有するべきであり、速効型インスリンと組み合わせ得る(便宜のため)。血糖低下に対する速効型インスリンの急速な作用のため、それらが一緒に作用したときに低血糖の危険性を回避するように、基礎インスリンと組み合せたとき比較的緩やかな血糖降下作用を提供することが必要とされる。したがって、十分に長い作用時間を有し、最初の作用にて緩やかに血糖を低下させる基礎インスリンを提供することが極めて早急に必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の一課題は、より持続的な血糖低下作用を有し、より高い安定性を有する、新規なヒトインスリンアナログのアシル化誘導体を提供することである。
【0007】
本発明は、ヒトインスリンアナログのアシル化誘導体またはその亜鉛錯体であって、該ヒトインスリンアナログのアシル化誘導体が、式:
S-W-X-Y-Z
(I)
[式中、
Sは、B鎖上のアミノ酸30におけるスレオニンが存在しないヒトインスリンであり;-W-X-Y-Zは、インスリンアナログのアシル化修飾基であり;
Wは、-OC(CH2)nCO-を有するジアシル構造であり、ここで、nは、2~10の整数であり、アミド結合は、該構造のアシル基の1つにより、親インスリンもしくはそのアナログのA鎖もしくはB鎖のN末端におけるアミノ酸残基のα-アミノ基とまたはB鎖上に存在するリシン残基のε-アミノ基と形成され;
Xは、カルボン酸基を含むジアミノ化合物であり、アミド結合は、該化合物のアミノ基の1つをWにおけるアシル基の1つと結合することにより形成され;
Yは、-A(CH2)m-であり、ここで、mは、6~32の整数、好ましくは10~16の整数、特に好ましくは12~14の整数であり、Aは、存在しないかまたはCO-であり;
Zは、-COOHである]
により表される構造を有する、ヒトインスリンアナログのアシル化誘導体またはその亜鉛錯体を提供する。
【0008】
好ましくは、アミド結合は、Wにより、B鎖上に存在するリシン残基のε-アミノ基と形成される。好ましくは、nは、2~5の整数、好ましくは2である。
【0009】
B鎖上のアミノ酸30におけるスレオニンが存在しないヒトインスリンは、ヒトインスリンアナログであり、そのAおよびB鎖のアミノ酸配列を、次に示す:
A鎖:GIVEQCCTSICSLYQLENYCN 配列番号1
B鎖:FVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTPK 配列番号2
【0010】
Xにより表されるカルボン酸基を含むジアミノ化合物は、-HN(CH2)pCH(COOH)NH-であり、ここで、pは、2~10の整数、好ましくは2~6の整数、特に好ましくは2~4の整数、最も好ましくは4である。
【0011】
本発明の好ましい実施態様において、-W-X-Y-Zは、
【化1】
で示される構造を有し、好ましくは
【化2】
である。
【0012】
本発明において特に好ましいヒトインスリンアナログのアシル化誘導体は、慣習的にNα-(HOOC(CH2)14CO)-Nε-(OCCH2CH2CO-(NεB29-デス(B30)ヒトインスリン))-Lys-OHと命名され得て、式(Ia):
【化3】
で示される特定の構造を有する。
【0013】
好ましくは、リシンB29(Nε-(Nα-ヘキサデカン二酸-L-リシン-Nε-オキソブチリル))デス(B30)ヒトインスリンであり、式(Ib):
【化4】
で示される構造を有する。
【0014】
本発明はまた、上記ヒトインスリンアナログのアシル化誘導体またはその亜鉛錯体を製造するための方法であって、B鎖上のアミノ酸30におけるスレオニンが存在しないヒトインスリンと、式(III):
R-W-X-Y-Z
(III)
[式中、Rは、脱離基、好ましくは活性化エステル基であり、より好ましくは
【化5】
からなる群より選択される]
で示される化合物を反応させる工程を含む方法を提供する。
【0015】
好ましくは、式(III)で示される化合物の特定の構造は、(IIIa)または(IIIb):
【化6】
で示され得る。
【0016】
該製造方法は、式(III')で示される化合物からカルボキシル保護基を除去し、式(III)で示される化合物を得る工程:
【化7】
[式中、X'およびZ'は、XおよびZのすべてのカルボキシル基がそれぞれ保護基により保護された形態を表し、該保護基は、好ましくはC1-C6アルキル基、好ましくはC1-C4アルキル基、特に好ましくはメチルまたはtert-ブチルであり;Rは、式(III)に定義されるとおりである]
をさらに含む。
【0017】
本発明の特に好ましい実施態様において、ヒトインスリンアナログのアシル化誘導体の亜鉛錯体は、ヒトインスリンアナログのアシル化誘導体のヘキサマーであり、ここで、各ヘキサマーは、4個超の亜鉛原子を含み、すなわち、アシル化インスリンは、6個のアシル化インスリン分子当たり4個超の亜鉛原子を含み;より好ましくは5~8個の亜鉛原子、特に好ましくは5個の亜鉛原子を含む。
【0018】
本発明はまた、上記ヒトインスリンアナログのアシル化誘導体またはその亜鉛錯体、および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0019】
本発明はまた、糖尿病を処置するための医薬の製造のための、上記ヒトインスリンアナログのアシル化誘導体もしくはその亜鉛錯体またはその医薬組成物の使用を提供する。
【0020】
本発明はまた、上記ヒトインスリンアナログのアシル化誘導体またはその亜鉛錯体に加えて、速効型インスリンも含む医薬組成物を提供する。
【0021】
本発明はまた、糖尿病を処置するための医薬の製造のための、上記ヒトインスリンアナログのアシル化誘導体またはその亜鉛錯体、またはそれを含む医薬組成物の使用に関する。
【0022】
本発明はまた、糖尿病を処置するための医薬の製造のための、速効型インスリンと組み合せた、上記ヒトインスリンアナログのアシル化誘導体またはその亜鉛錯体、またはそれを含む医薬組成物の使用に関する。
【0023】
また、本発明は、上記ヒトインスリンアナログのアシル化誘導体またはその亜鉛錯体、またはそれを含む医薬組成物を処置を必要とする患者に投与することを含む糖尿病を処置するための方法を提供する。
【0024】
本発明は、上記ヒトインスリンアナログのアシル化誘導体またはその亜鉛錯体、またはそれを含む医薬組成物、および速効型インスリンを処置を必要とする患者に投与することを含む糖尿病を処置するための別の一方法を提供する。本発明はまた、糖尿病を処置するための医薬としての、上記ヒトインスリンアナログのアシル化誘導体またはその亜鉛錯体、またはそれを含む医薬組成物に関する。
【0025】
本発明はまた、糖尿病を処置するための医薬としての、速効型インスリンと組み合せた、上記ヒトインスリンアナログのアシル化誘導体またはその亜鉛錯体、またはそれを含む医薬組成物に関する。
【0026】
本発明における糖尿病は、I型糖尿病およびII型糖尿病を含む。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、STZラットにおける投与後の血糖値変化を示す曲線である(*P<0.05、**P<0.01対モデル対照群;#P<0.05対インスリンデグルデク)。
図2図2は、STZラットにおける投与後0~6時間内の血糖値変化を示す曲線である。
図3図3は、投与0~2、0~4および0~6時間後の血糖AUC比較を示す(*P<0.05、**P<0.01対INS-C)。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明を実施例と共に以下にさらに説明する。
【実施例0029】
実施例1:リシンB29(Nε-(Nα-ヘキサデカン二酸-L-リシン-Nε-オキソブチリル))デス(B30)ヒトインスリンの製造
【0030】
1. Nα-(ヘキサデカン二酸)-Nε-(3-アシルプロピオン酸-OSu)リシンの製造
【化8】
【0031】
X01(150 g、524.5 mmol)を取り;乾燥THF(2.5 L)を室温にて加え、その後、触媒量のDMF(1.0 mL)を加え;塩化オキサリル(49 mL)を100 mL定圧滴下漏斗へ加え;塩化オキサリルを反応フラスコに約2時間ゆっくり滴下して加え、その間ガスが生じ、それを連続的に脱気する必要があった。滴下完了後、混合物を室温にて1.5時間撹拌し、その後THFを真空ロータリーエバポレーターに供し;DCM(800 mL)およびtert-ブタノール(500 mL)を反応フラスコに加え、室温にて一晩撹拌した。tert-ブタノールおよびジクロロメタンを真空ロータリーエバポレーターに供し、ジクロロメタン(1 L)を加え、ろ過して、不溶性固体を除去した。ろ液を真空ロータリーエバポレーターに供し、その後カラムに流した。所望のフラクションを回収し、ロータリーエバポレーターにより乾燥し、石油から再結晶させ;54 gの生成物X02を回収し、その間にジ-tert-ブチルエステル生成物X03を除去した。
【0032】
X02(28.5g、83.3 mmol)をDCM(200 mL)に溶解させた。N-ヒドロキシ-スクシンイミド(5.54 g、48.1 mmol)およびジ-イソプロピル-カルボジイミド(7.6 mL)を室温にて加え、室温にて1日間撹拌した。TLCが反応の実質的完了を示した。反応混合物をろ過して、不溶性固体を除去した。溶媒を真空ロータリーエバポレーターにより除去した。精製をカラムクロマトグラフィーにより実施し、28.5 gのX04を得た。
【0033】
X04(22 g、50.1 mmol)を乾燥THF(250 mL)に溶解させ、室温にて撹拌した。リシン誘導体(20.5 g、55 mmol)およびトリ-エチルアミン(21 mL)を反応系にそれぞれ加え、室温にて24時間撹拌した。混合物を珪藻土によりろ過し、THFにより3回洗浄した。溶媒を真空ロータリーエバポレーターにより除去した。精製をカラムクロマトグラフィーにより実施し、31 gのX11を得た。
【0034】
X11(30.6 g、46.3 mmol)を無水エタノール(200 mL)に溶解させ、室温にて撹拌した。その後6.0 gの10%Pd/Cを加え、水素を加え;反応を激しく撹拌しながら室温にて一晩実施した。混合物を珪藻土によりろ過し、無水エタノールにより3回洗浄した。ろ液を真空ロータリーエバポレーターに供した。24.5 gの粗生成物X12を得て、次の反応に直接用いた。
【0035】
X12(24 g、45.6 mmol)を乾燥THF(200 mL)に溶解させ、トリ-エチルアミン(12.7 mL)を加えた。その後温度を0℃に低下させた。コハク酸無水物(5.2 g、52 mmol)をバッチ中の反応系に加え、さらに30分間0℃にて撹拌した。その後、反応系を室温に移し、一晩撹拌した。THFを真空ロータリーエバポレーターにより除去した。残渣をジクロロメタン(500 mL)に溶解させ、5%クエン酸溶液により2回(500 mL×2)洗浄し、飽和食塩水により1回洗浄した。混合物を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を真空ロータリーエバポレーターにより除去した。29.0 gの粗製物X13を得て、次の反応に直接用いた。
【0036】
X13(28.5 g、45.5 mmol)をDCM(200 mL)に溶解させた。N-ヒドロキシ-スクシンイミド(5.54 g、48.2 mmol)およびジ-イソプロピル-カルボジイミド(7.6 mL)を室温にて加え、室温にて1日間撹拌した。TLCが反応の実質的完了を示した。反応混合物をろ過して、不溶性固体を除去した。溶媒を真空ロータリーエバポレーターにより除去した。精製をカラムクロマトグラフィーにより実施し、28.5 gのX14を得た。
【0037】
X14(3.0 g、4.1 mmol)をトリフルオロ酢酸(15 mL)に溶解させ、室温にて45分間撹拌し、その後トリフルオロ酢酸を真空ロータリーエバポレーターにより低温にて除去した。無水ジエチルエーテルを加えると、固体が沈殿し、ろ過した。フィルターケーキを無水ジエチルエーテルにより3回洗浄した。固体を乾燥し、1.8 gの生成物X15を得た。
【0038】
2. リシンB29(Nε-(Nα-ヘキサデカン二酸-L-リシン-Nε-オキソブチリル))デス(B30)ヒトインスリンの製造
53 mgのヒトインスリン(B鎖上の30番目のアミノ酸におけるスレオニンが存在しない)(8 mg/mL、50 mMトリスHCl pH8.5緩衝液)を取り、pHを1.5 M Na2CO- 3で約10.75に調節し、その後濃度を、緩衝液(50 mMトリスHCl pH8.5緩衝液)を用いて4 mg/mLに調節した。Nα-(ヘキサデカン二酸)-Nε-(3-アシルプロピオン酸-OSu)リシン(18 mg)を7 mLのアセトニトリルに分散させ;1.75 mLのこの溶液を上記ヒトインスリン(B鎖上のアミノ酸30におけるスレオニンが存在しない)に15分間毎に加え、反応を開始し;この溶液の添加は撹拌しながら4回に分けて完了した。添加完了後、時間測定を開始した。反応の1時間後、溶液pHを酢酸で約7.5に調節し、反応を終了させて、粗溶液を得た。反応プロセスをRP-HPLCにより工程内管理した。
【0039】
3. リシンB29(Nε-(Nα-ヘキサデカン二酸-L-リシン-Nε-オキソブチリル))デス(B30)ヒトインスリンの製造
上記粗製前駆体溶液を水で希釈して、有機相の含有量を約15%(v:v)にし、0.45μmフィルターによりろ過し、RP-HPLCにより精製して、精製液体を得た。
【0040】
4. リシンB29(Nε-(Nα-ヘキサデカン二酸-L-リシン-Nε-オキソブチリル))デス(B30)ヒトインスリンの限外ろ過および凍結乾燥
上記精製溶液に含まれる試料を限外ろ過膜パッケージシステムを用いて注射用水に置き換え、凍結乾燥して、26 mgの凍結乾燥物を得た。得られた分子の構造式は次のとおりである:
【化9】
【0041】
5. リシンB29(Nε-(Nα-ヘキサデカン二酸-L-リシン-Nε-オキソブチリル))デス(B30)ヒトインスリンの構造決定
リシンB29(Nε-(Nα-ヘキサデカン二酸-L-リシン-Nε-オキソブチリル))デス(B30)ヒトインスリンの測定されたマススペクトル分子量は、6203.37 Daであり、これは、6203.21 Daの理論分子量と一致する。
【0042】
INSをV8プロテアーゼでの酵素加水分解に供し、加水分解物をLC-MS分析により分析し、その結果は、416.23 Da(A1-A4)、2968.29 Da(A5-A17、B1-B13)、1376.57 Da(A18-A21、B14-B21)および1510.84 Da(B22-B29)の分子量をそれぞれ有する合計4つのペプチドフラグメントが生成されたことを示し、これは、理論ペプチドフラグメント分子量に対応し、ここで、ペプチドフラグメントB22-B29は、脂肪酸鎖修飾ペプチドフラグメントである。修飾部位が実験と一致することが証明されている。
【0043】
実施例2:STZ-誘導I型糖尿病モデルにおける試験薬剤の血糖降下作用の研究
【0044】
1. 試験検体
【表1】
【0045】
これらのうち、INS-1およびINS-2は、リシンB29(Nε-(Nα-ヘキサデカン二酸-L-リシン-Nε-オキソブチリル))デス(B30)ヒトインスリンから製造した2つの異なる錯体を表し、各インスリン誘導体ヘキサマーは、それぞれ5つのZnおよび8つのZnを含む。製造方法は、当該技術分野における従来の方法であり、インスリンデグルデク中の各ヘキサマーは、5つのZnを含む。
【0046】
2. 試験検体の製剤
試験検体を4℃にて暗所で保存し、各試験検体の600 nmol/mLストック溶液の適切な量を取った。各検体を1.5 nmol/mLに達するまで溶媒で400倍に希釈して、用量は7.5 nmol/kgであった。薬剤を使用前に室温に戻した。
【0047】
3. 実験動物
【表2】
【0048】
4. 実験方法
SPFグレードラットを実験室環境で7日間維持し、標準飼料、20~25℃の温度で40~60%湿度の標準ケージを与えた。モデルが確立される1日前に、ラットを16時間絶食させ、STZ(65 mg/kg)を迅速に腹腔内に注射した。1時間後、ラットに飼料を与えた。モデルが確立された後、毎日多量の水(通常より2~3倍多い量の飲用水を与える)および飼料を与え;乾燥したままにするため敷料を1日1~2回交換した。空腹時血糖を5日目(6時間空腹)に測定し、血糖値>16.7 mmol/Lを有するラットを選択した。血糖値に従って、ラットを4群に分けた。
【0049】
動物群分けおよび投与情報は次のとおりである:
【表3】
【0050】
ラットを投与前に絶食させず、各薬剤の単回投与を皮下注射した。対照群には、同容量の溶媒を注射した。すべてのラットを投与後実験終了まで絶食させた。ラットの血糖値を投与後1、2、4、6、8、10、12および24時間にて測定した。24時間での血糖値測定後、血液を採取し、血清を調製した。
【0051】
すべてのデータをExcelドキュメントに入力し、平均±SEMでとして表した。有意差の基準としてP<0.05を有する、一元配置または二元配置分散分析によりGraphpad Prism 6.0ソフトウェアを用いてデータの統計分析を実施した。
【0052】
5. 結果
STZの注射後5日目に、SDラットを6時間絶食させ、血糖を測定して、モデル確立の成功率80%を確認した。
【0053】
STZ溶媒群の基礎血糖値は、投与前に27.3 mmol/Lであり、血糖値は、投与後徐々に低下し、24時間後15.1 mmol/Lに達し、血糖値変化は、12.1 mmol/Lであったことが図1から分かる。インスリンデグルデク投与の陽性群における投与前後の血糖値変化は、16.8 mmol/Lであった。陽性薬剤インスリンデグルデク群における血糖値は、投与後6、8、10、12および24時間にて陰性対照の溶媒群と著しく異なり、これは、動物モデルおよび実験方法の有効性を示している。
【0054】
陰性対照の溶媒群と比較して、試験薬剤のINS-1およびINS-2いずれも、投与後24時間以内で動物の血糖値を著しく低下させ、6、8、10、12および24時間の時点にて有意差が観察された;また、血糖値は、継続して低下しており、これは、薬剤が良好な長時間作用型血糖降下作用を有することを示している。
【0055】
試験薬剤INS-1およびINS-2に関して、STZラットにおける投与後の時間と共に血糖値変化を示す曲線は、基本的に一致しており、これは、2つの薬剤の血糖降下作用が同様であることを示している。24時間の時点で、INS-1およびINS-2の血糖降下作用は、インスリンデグルデク群より良好であり、これは、INS-1およびINS-2が良好な長時間作用型作用を有することを示している。
【0056】
実施例3:STZ-誘導I型糖尿病モデルにおける様々な長時間作用型インスリンの血糖降下作用の研究
【0057】
1. 試験検体
【表4】
【0058】
ここで、INS-Aは、WO2013086927におけるHS061を表し、INS-Bは、WO2013086927におけるHS067を表し、INS-Cは、リシンB29(Nε-(Nα-ヘキサデカン二酸-L-リシン-Nε-オキソブチリル))デス(B30)ヒトインスリンを表し、すべての試験検体は、同じ処方を使用し、亜鉛錯体の形態であり、各インスリンヘキサマーは、5つのZnを含むものである。
【0059】
2. 試験検体の製剤
試験検体を4℃にて暗所で保存し、試験検体の600 nmol/mLストック溶液の適切な量を取った。各検体を7.5 nmol/mLまで溶媒で80倍に希釈し、用量は7.5 nmol/kgであった。薬剤を使用前に室温に戻した。
【0060】
3. 実験動物
【表5】
【0061】
4. 実験方法
SPFグレードラットを実験室環境で7日間維持し、標準飼料、20~25℃の温度で40~60%湿度の標準ケージを与えた。モデルが確立される1日前に、ラットを16時間絶食させ、STZ(65 mg/kg)を迅速に腹腔内に注射した。1時間後、ラットに飼料を与えた。モデルが確立された後、毎日多量の水(通常より2~3倍多い量の飲用水を与える)および飼料を与え;乾燥したままにするため敷料を1日1~2回交換した。空腹時血糖を5日目(6時間空腹)に測定し、血糖値>16.7 mmol/Lを有するラットを選択した。血糖値に従って、ラットを5群に分けた。
【0062】
動物群分けおよび投与情報は次のとおりである:
【表6】
【0063】
ラットを投与前に絶食させず、各薬剤の単回投与を皮下注射した。対照群には、同容量の溶媒を注射した。すべてのラットを投与後実験終了まで絶食させた。ラットの血糖値を投与後1、2、4、6、8、10、12および24時間にて測定した。
【0064】
すべてのデータをExcelドキュメントに入力し、平均±SEMでとして表した。有意差の基準としてP<0.05を有する、一元配置または二元配置分散分析によりSPSSソフトウェアを用いてデータの統計分析を実施した。
【0065】
5. 結果
STZ溶媒群の基礎血糖値は、投与前に27.01 mmol/Lであり、血糖値は、投与後徐々に低下し、24時間後11.64 mmol/Lに達し、血糖値変化は、15.37 mmol/Lであった。インスリンデグルデク投与の陽性群における投与前後の血糖値変化は、19.78 mmol/Lであった。陽性薬剤インスリンデグルデク群における血糖値は、投与後1、2、4、6、8、10および12時間にて陰性対照の溶媒群と著しく異なり、これは、動物モデルおよび実験方法の有効性を示している。
【0066】
陰性対照の溶媒群と比較して、試験薬剤のINS-A、INS-BおよびINS-Cは、投与後24時間以内で動物の血糖値を著しく低下させた。血糖値から分かるように、試験薬剤群の血糖値(それぞれ7.03±1.15、3.57±0.44および4.20±0.72 mmol/L)は、溶媒陰性対照群(11.64±3.94 mmol/L)より低い。これは、3つすべての薬剤が相対的に良好な長時間作用型血糖降下作用を有することを示している。差異を特に0~6時間における群間で比較した。具体的な値を表1および表2に示す。
【0067】
【表7】
【0068】
【表8】
【0069】
INS-Cおよびインスリンデグルデクに関して、INS-C群におけるSTZラットの血糖値は、投与後、インスリンデグルデク群より小さな低下であり、投与1時間後、インスリンデグルデク群より著しく高かった(図2および表1参照)。具体的な値を表1に示す。図3および表2から分かるように、INS-Cの投与後0~2、0~4および0~6時間以内の血糖-時間曲線下面積(AUC)は、インスリンデグルデクよりすべて著しく高かった。これは、速効型インスリンと組み合せてまたは化合物の組成物として製剤化されて投与されるとき、INS-C+速効型インスリンでは、投与後0~6時間以内(速効型インスリンが血糖降下作用を発揮する時間中)でインスリンデグルデク+速効型インスリンより低血糖の危険性が著しく低いことを示唆する。
【0070】
INS-CおよびINS-Aに関して、INS-C群におけるSTZラットの血糖値は、投与後、INS-A群より小さな低下であり、投与1、2および4時間後、INS-A群より著しく高い;しかしながら、投与10および12時間後、INS-A群より著しく低く;投与24時間後の血糖値はまた、INS-A群より低い傾向があった。これは、INS-Cが、INS-Aより遅い血糖降下速度を有するが、INS-Aより良好な長時間作用型作用を有し、INS-Cが、長時間作用型インスリンの特性により適することを示している。また、図3から分かるように、INS-Cの血糖AUCは、投与後0~2、0~4および0~6時間以内でINS-Aより著しく高かった。これは、速効型インスリンと組み合せてまたは化合物の組成物として製剤化されて投与されるとき、INS-C+速効型インスリンでは、投与後0~6時間以内でINS-A+速効型インスリンより低血糖の危険性が著しく低いことを示唆する。
【0071】
INS-CおよびINS-Bに関して、INS-C群におけるSTZラットの血糖値は、投与後、INS-B群より小さな低下であり、投与1および2時間後、INS-B群より著しく高く、これは、INS-Cが、INS-Bより遅い血糖降下速度を有することを示している。また、図3から分かるように、INS-Cの血糖AUCは、投与後0~2、0~4および0~6時間以内でINS-Bより著しく高かった。これは、速効型インスリンと組み合せてまたは化合物の組成物として製剤化されて投与されるとき、INS-C+速効型インスリンでは、投与後0~6時間以内でINS-B+速効型インスリンより低血糖の危険性が著しく低いことを示唆する。
【0072】
24時間以内と0~6時間以内の血糖降下作用を組み合わせると、INS-Cは、持続的な血糖降下作用および緩やかな初期の血糖降下作用により特徴付けられる。それは、最も理想的な長時間作用型インスリンであり、注射回数を減少させ、患者のコンプライアンスを向上させるために、速効型インスリンと組み合せてまたは化合物の組成物として製剤化された投与に特に適する。
【0073】
実施例4:イヌのPK試験(INS-BおよびINS-Cは、実施例3のものと同じ意味を有する)
【0074】
6匹の雄性ビーグル犬(各群3匹)にINS-BまたはINS-C(3 nmol/kg)の単回皮下注射で投与した。種々の時点で血液を採取し、血清を単離して、血清中のINS-BまたはINS-Cの濃度を検出した。その結果は、INS-Bは、4.7±1.2時間(3匹の動物でそれぞれ4、4および6時間)にてピークに達し、一方INS-Cは、8時間(3匹すべての動物で8時間)にてピークに達することを示した。INS-BおよびINS-Cの半減期は、それぞれ6.0±1.2および7.8±1.1時間であった。これは、INS-Cの作用は、より緩やかで、より長時間継続することを示唆する。
【0075】
実施例5:安定性比較
【0076】
INS-A、INS-B、INS-C(各コードは、実施例3のものと同じ意味を有する)およびインスリンデグルデクをインスリンデグルデクの市販処方に従って製剤化した。その後、安定性を試験し、開始時およびその後の時点における主ピークの純度および不純物含有量をHPLCにより決定した。具体的な値を表3に示す。表3から分かるように、INS-Cの安定性は、INS-AおよびINS-Bより著しく良好であり;インスリンデグルデクより極めて良好であった。
【0077】
【表9】
図1
図2
図3
【配列表】
2022095872000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-05-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトインスリンアナログのアシル化誘導体またはその亜鉛錯体であって、ヒトインスリンアナログのアシル化誘導体は、式:
S-W-X-Y-Z
(I)
[式中、
Sは、B鎖上のアミノ酸30におけるスレオニンが存在しないヒトインスリンであり;-W-X-Y-Zは、インスリンアナログのアシル化修飾基であり;
Wは、-OC(CH2)nCO-を有するジアシル構造であり、ここで、nは、2~10の整数であり、アミド結合は、該構造のアシル基の1つにより、親インスリンもしくはそのアナログのA鎖もしくはB鎖のN末端におけるアミノ酸残基のα-アミノ基とまたはB鎖上に存在するリシン残基のε-アミノ基と形成され;
Xは、カルボン酸基を含むジアミノ化合物であり、アミド結合は、該化合物のアミノ基の1つをWにおけるアシル基の1つと結合することにより形成され;
Yは、-A(CH2)m-であり、ここで、mは、6~32の整数、好ましくは10~16の整数、特に好ましくは12~14の整数であり、Aは、存在しないかまたはCO-であり;
Zは、-COOHである]
により表される構造を有する、ヒトインスリンアナログのアシル化誘導体またはその亜鉛錯体。
【外国語明細書】