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  • 特開-関節病態の治療 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095876
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】関節病態の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/495 20060101AFI20220621BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220621BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20220621BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220621BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20220621BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220621BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
A61K31/495
A61K9/08
A61K47/22
A61K47/12
A61K47/14
A61P19/02
A61P25/04
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066206
(22)【出願日】2022-04-13
(62)【分割の表示】P 2020107654の分割
【原出願日】2020-06-23
(31)【優先権主張番号】62/038,682
(32)【優先日】2014-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514022280
【氏名又は名称】アンピオ ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・バー-オー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】関節病態を治療する方法を提供する。
【解決手段】アスパラギン酸およびアラニンのアミノ酸側鎖を有するジケトピペラジン(DA-DKP)を含む医薬組成物の複数回投与レジメンを投与することを含む。また、ヒト血清アルブミンの低分子量画分の複数回投与を用いて変形性関節症を治療する方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変性関節疾患の治療における使用のためのアスパルチル-アラニルジケトピペラジン(DA-DKP)を含む医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、それを必要とする動物に、有効量を複数回投与レジメンで投与するためのものであり、
前記医薬組成物は、N-アセチル-トリプトファン(NAT)、カプリル酸、カプリレートまたはそれらの組合せをさらに含み、
前記複数回投与レジメンは少なくとも3回の投与を含み、
各投与用量が4mLであり;
前記投与が関節内注射によるものであり、
投与により、投与から20週目の動物におけるWOMAC Aスコアが減少する、
医薬組成物。
【請求項2】
前記変性関節疾患が変形性関節症である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記動物が、投与前にケルグレン-ローレンスグレード4疼痛スコアを有する、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
関節内注射によって投与される前記医薬組成物が約50μM~約350μMのDA-DKPの濃度を有する組成物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記DA-DKPが、ヒト血清アルブミン組成物の溶液からアルブミンを除去することによって調製された組成物中にあり、前記除去する工程が、前記ヒト血清アルブミン組成物を、アルブミンを保持する分子量カットオフを有する限外濾過膜に通すことを含み、かつ、得られた濾液がDA-DKPを含んでおり、前記限外濾過膜が50kDa未満、40kDa未満、30kDa未満、20kDa未満、10kDa未満、5kDa未満または3kDa未満の分子量カットオフを有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記複数回投与レジメンが4回、6回、8回または10回の投与を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記WOMAC Aスコアの減少が少なくとも50%である、請求項1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節病態を治療する方法に関する。同方法は、アスパラギン酸およびアラニンのアミノ酸側鎖を有するジケトピペラジン(DA-DKP)を含む医薬組成物の有効量を投与することを含む。本発明はまた、DA-DKPを含む医薬製品の使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
変形性関節症は、米国において2500万~3500万人に影響を与える関節炎の最も一般的な形態である。変形性関節症の慢性疼痛および障害は、最初は関節軟骨および骨での炎症反応によって引き起こされ、時間とともに徐々に悪化する。膝の症候性変形性関節症は60歳以上の人の10~13%で発生する。膝の変形性関節症だけで、65歳以上の人での任意の他の医学的状態ではより大きな、移動性の喪失(歩行または階段上昇の支援が必要であるなど)の危険性が高まる。
【0003】
膝の変形性関節症の現行の薬物治療は、鎮痛薬、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs:nonsteroidal anti-inflammatory drugs)および関節内ステロイド注射に限定され、これらの全ては、有害作用によりかなりの制約がある。これらの医学的な治療にもかかわらず、慢性膝変形性関節症は、関節全置換を必要とする進行性障害を引き起こす場合が多い。老年人口および肥満人口による膝の変形性関節症の有病率の増加は、より包括的な外科的治療の必要性を遅らせるとともに潜在的に排除する、安全かつ有効な局部膝治療の臨床上の必要性の増大を示唆している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施形態は、治療を必要とする動物に、DA-DKPを含む医薬組成物の有効量を複数回投与レジメンで投与することによって関節病態を治療する方法である。この関節病態は、変性関節疾患などの関節疾患、例えば、変形性関節症であり得る。また、この関節病態は、外傷性損傷、術後損傷または反復運動損傷などの関節損傷であり得る。さらに、この関節病態は炎症であり得る。
【0005】
前記方法では、前記組成物は、局部(local)投与、局所(topical)投与、または関節内注射などの注射によって投与され得る。関節内注射によって投与される場合、前記組成物は、約50μM~約350μMのDA-DKPの濃度を有し得る。
【0006】
前記方法では、前記組成物は、N-アセチル-トリプトファン(NAT:N-acetyl-tryptophan)、カプリル酸、カプリレートまたはそれらの組合せをさらに含むことができる。この実施形態では、前記組成物は、約4mM~約20mMの、NAT、カプリル酸、カプリレートまたはそれらの組合せの濃度を有し得る。さらなる実施形態では、前記DA-DKPは、ヒト血清アルブミン組成物の溶液からアルブミンを除去することによって(限外濾過、ショ糖勾配遠心分離、クロマトグラフィー、塩析沈殿、および超音波処理から選択される分離方法によってヒト血清アルブミン組成物を処理することによるなど)調製された組成物中にあり得る。特定の実施形態では、前記除去工程は、ヒト血清アルブミン組成物を、アルブミンを保持する分子量カットオフを有する限外濾過膜に通すことを含むことができ、ここで、例えば、50kDa未満、40kDa未満、30kDa未満、20kDa未満、10kDa未満、5kDa未満または3kDa未満の分子量カットオフを有する限外濾過膜の使用によって得られた濾液はDA-DKPを含む。
【0007】
さらなる実施形態では、前記医薬組成物は、鎮痛薬、抗炎症薬、およびそれらの組合せから選択される第2の薬物をさらに含むことができる。
前記方法では、前記複数回投与レジメンでの投与回数は、2~10回の間、2~8回の間、2~6回の間、2~4回の間または3回であり得る。さらに、投与間の時間は、2日~6週間の間、2日~5週間の間、2日~4週間の間、2日~3週間の間、1週間~3週間の間、または2週間であり得る。
【0008】
好ましい実施形態では、本発明は、罹患関節中への関節内注射を介して、第1の用量、第2の用量、および第3の用量を投与することによって、変形性関節症を治療する方法である。この実施形態では、前記第1の用量、前記第2の用量、および前記第3の用量のそれぞれは、ヒト血清アルブミンの<5000MW画分の4mLを含み、さらに、前記第2の用量は前記第1の用量の2週間後に投与され、前記第3の用量は前記第2の用量の2週間後に投与される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例2に記載の治療に対するWOMAC A疼痛スコアの平均変化率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、DA-DKPを含む組成物を複数回投与レジメンで投与することによって関節病態を治療する方法を提供する。その治療は、アスパルチル-アラニルジケトピペラジン(DA-DKP:aspartyl-alanyl diketopiperazine)を含む医薬組成物の有効量を、それを必要とする個体に投与することを含む。DA-DKPは、転写レベルでの複数の炎症誘発性サイトカイン、ケモカインおよびシグナル伝達分子の阻害、T細胞および単球の遊走および接着の阻害、Gタンパク質共役受容体レベルでの活性、アクチン依存性細胞骨格事象に対する活性、血管透過性の低下ならびに血小板活性化因子によって誘導される炎症の抑制を含む、複数の抗炎症効果および免疫調節効果を有する。以下により詳細に記載するように、関節病態に対するDA-DKPの効果は予想外に長く持続することが見出されており、一部の研究では、ステロイドの使用と比較して時間が増加することが見出された。
【0011】
本発明はまた、DA-DKP組成物を含む医薬製品を提供する。この製品のDA-DKPは、ヒト血清アルブミンの溶液からアルブミンを除去することによって調製することができる。
【0012】
本明細書で使用される場合、「関節病態(joint condition)」という用語は、関節の任意の疾患、病気、または損傷を意味する。関節病態の例としては、限定されるものではないが、急性疾患、慢性疾患、難治性疾患、進行性疾患(変性疾患を含む)、外傷性損傷、反復運動損傷、毒性損傷、術後の状態、および構造的な損傷があるまたはない炎症が挙げられる。
【0013】
変性関節疾患は、関節を覆う関節軟骨の漸進的な劣化である。変性関節疾患(変形性関節症)は荷重関節の非感染性の進行性障害である。正常な関節軟骨は、滑らかで、白く、半透明である。これは、コラーゲン、タンパク質多糖類、および水からできたスポンジ様マトリックスに埋め込まれた軟骨細胞からなる。早期原発性関節炎では、軟骨は黄色く不透明になり、表面が軟化し、粗くなった局部的な領域を有する。変性が進行するにつれて、軟性領域は亀裂を生じて摩滅し、軟骨の下の骨が露出する。骨は、その後、リモデリングし密度が増加し始める一方で、残りの軟骨は擦り減り始める。最終的には、軟骨に覆われた骨棘(新しい骨の棘突起)が関節の端で形成される。機械的摩滅が増加するにつれて、軟骨は修復を必要とする。軟骨細胞は、スポンジ様マトリックスを十分に産生することができないため、損傷した軟骨はそれ自体を修復することができない。軟骨には、治癒を促進するための血液供給がない。変性関節疾患の多くは、機械的な不安定性または関節内の加齢変化の結果である。これには老年期変性関節炎が含まれ、若年者では、例えば、前十字靱帯断裂、膝蓋骨脱臼、または離断性骨軟骨炎からの損傷、挫傷、異常な関節構造(すなわち、股関節形成異常)、または機械的摩滅の結果であり得る。変性関節疾患は、限定されるものではないが、膝、股関節、肩、手および脊椎を含む身体の任意の関節において生じ得る。
【0014】
関節病態に対する従来の薬物療法としては、アセトアミノフェン、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDS)、麻薬、およびコルチコステロイドが挙げられる。
「治療する」とは、本明細書において、病態の症状、持続時間または重篤度を(全体的または部分的に)減少させることを意味するために使用される。
【0015】
本発明のDA-DKPを含む医薬組成物は、治療を必要とする動物に投与される。好ましくは、この動物は、ウサギ、ヤギ、イヌ、ネコ、ウマまたはヒトなどの哺乳類である。有効な投与量は、疾患または病態の重篤度、投与経路、治療期間、動物に投与される任意の他の薬物の種類、動物の年齢、大きさおよび種、ならびに医学および獣医学の分野で知られている同様の因子によって変動し得る。
【0016】
DA-DKPを含む本発明の組成物は、局部(locally)、非経口(例えば、注射、関節内注射、静脈内、脊髄内、腹膜内、皮下、または筋肉内)、経皮、および局所を含む任意の好適な投与経路による療法のために動物患者に投与され得る。好ましい投与経路は関節内注射である。
【0017】
本発明の組成物は、約10μM、約20μM、約30μM、約40μM、約50μM、約60μM、約70μM、約80μM、約90μM、約100μM、約110μM、約120μM、約130μM、約140μM、約150μM、約160μM、約170μM、約180μM、約190μM、約200μM、約210μM、約220μM、約230μM、約240μM、約240、約250μM、約260μM、約270μM、約280μM、約290μM、約300μM、約310、約320μM、約330μM、約340μM、約350μM、約360μM、約370μM、約380μM、約390μM、または約400μMの下端点を有するDA-DKP濃度範囲を有する医薬溶液であり得る。本発明の組成物は、約600μM、約580μM、約570μM、約560μM、約550μM、約540μM、約530μM、約520μM、約510μM、約500μM、約490μM、約480μM、約470μM、約460μM、約450μM、約440μM、約430μM、約420μM、約410μM、約400μM、約390μM、約380μM、約370μM、約360μM、約350、約340μM、約330μM、約320μM、約310μM、約300μM、約290μM、約280、約270μM、約260μM、約250μM、約240μM、約230μM、約220μM、約210μM、または約200μMの上端点を有するDA-DKP濃度範囲を有する医薬溶液であり得る。
【0018】
関節病態を治療するための本発明の組成物におけるDA-DKPの有効な量は、約10μg、約15μg、約20μg、約25μg、約30μg、約35μg、約40μg、約45μg、約50μg、約55μg、約60μg、約65μg、約70μg、約75μg、約80μg、約85μg、約90μg、約95μg、約100μg、約110μg、約120μg、約130μg、約140μg、約150μg、約160μg、約170μg、約180μg、約190μg、約200μg、約210μg、約220μg、約230μg、約240μg、約250μg、約260μg、約270μg、約280μg、約290μg、約300μg、約310μg、約320μg、約330μg、約340μg、約350μg、約360μg、約370μg、約380μg、約390μg、約400μg、約425μg、約450μg、約475μgまたは約500μgの下端点を有する範囲であり得る。加えて、関節病態を治療するための本発明の組成物におけるDA-DKPの有効な量は、約500μg、約490μg、約480μg、約470μg、約460μg、約450μg、約440μg、約430μg、約420μg、約410μg、約400μg、約390μg、約380μg、約370μg、約360μg、約350μg、約340μg、約330μg、約320μg、約310μg、約300μg、約290μg、約280μg、約270μg、約260μg、約250μg、約240μg、約230μg、約220μg、約210μg、約200μg、約190μg、約180μg、約170μg、約160μg、約150μg、約140μg、約130μg、約120μg、約110μg、約100μg、約90μg、約80μg、約70μg、約60μg、約50μg、約40μg、約30μg、または約20μgの上端点を有する範囲であり得る。
【0019】
DA-DKPが投与される実施形態、ヒト血清アルブミンの低分子量画分、例えば、下に記載する、アンピオン(Ampion)(商標)によって例示される<5000MW画分などでは、患者に投与される投与量は、約1mL~約20mLの間、約1mL~約15mLの間、約1mL~約10mLの間、約1mL~約8mLの間、約2mL~約6mLの間、約3mL~約5mLの間または約4mLであり得る。
【0020】
本発明の化合物の局所または経皮投与のための投与剤形には、散剤、噴霧剤、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、液剤、パッチ剤および点眼剤が含まれる。前記有効成分は、無菌条件下で、医薬上許容される担体、および必要とされ得る任意のバッファー、または噴射剤と混合し得る。この軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤およびゲル剤は、前記有効成分に加えて、賦形剤、例えば、動物性および植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカントガム、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、またはそれらの混合物などを含有し得る。散剤および噴霧剤は、前記有効成分に加えて、賦形剤、例えば、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末またはこれらの物質の混合物などを含むことができる。噴霧剤は、加えて、慣用の噴射剤、例えば、クロロフルオロ炭化水素などおよび揮発性非置換炭化水素、例えば、ブタンおよびプロパンなどを含むことができる。
【0021】
経皮パッチ剤は、体内への本発明の化合物の制御された送達を提供するというさらなる利点を有する。このような投与剤形は、1種以上の本発明の化合物を適切な媒体、例えば、弾性マトリックス材料などに溶解させるか、分散させるか、または組み入れることによって作製することができる。また、皮膚を超えて化合物の流入を増加させるために吸収促進剤も使用することができる。このような流入の速度は、速度制御膜を提供するかまたはポリマーマトリックスもしくはゲル中に化合物を分散させることによって制御することができる。
【0022】
非経口投与に好適な本発明の医薬組成物は、酸化防止剤、バッファー、処方物を意図されたレシピエントの血液と等張にするための溶質、または懸濁剤または増粘剤を含有し得る、1種以上の医薬上許容される滅菌等張水性または非水性溶液、分散液、懸濁液またはエマルション、または使用直前に滅菌注射用溶液もしくは分散液で再構成し得る滅菌粉末と組み合わせて、1種以上の本発明の化合物を含む。
【0023】
本発明の医薬組成物において使用できる好適な水性および非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール類(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの好適な混合物、植物油、例えば、オリーブ油など、ならびに注射用有機エステル、例えば、オレイン酸エチルなどが挙げられる。適切な流動性は、例えば、コーティング材料、例えば、レシチンなどの使用により、分散液の場合、必要な粒径の維持により、および界面活性剤の使用により、維持することができる。
【0024】
また、これらの組成物は、湿潤剤、乳化剤および分散剤などの補助剤を含有し得る。組成物中に等張剤、例えば、糖類、塩化ナトリウムなどを含むことが望ましい場合がある。加えて、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅らせる薬剤を含めることにより、注射用剤形の持続的吸収をもたらし得る。
【0025】
いくつかの場合において、薬物の効果を延長させるために、皮下または筋肉内注射からの薬物の吸収を緩徐化することが望ましい。このことは、水溶解性の低い結晶質または非晶質の材料の液体懸濁液を用いることにより達成し得る。それによって、薬物の吸収速度は、その溶解速度に依存し、次に、その溶解速度は、結晶サイズおよび結晶の形態に依存し得る。あるいは、非経口投与される薬物の吸収遅延は、薬物を油性ビヒクルに溶解または懸濁させることによって達成される。
【0026】
注射用デポー形態は、ポリラクチド-ポリグリコリドなどの生体分解性ポリマー中に薬物のマイクロカプセル化マトリックスを形成することにより作製される。薬物とポリマーとの比率、および使用される特定のポリマーの性質に応じて、薬物放出速度を制御することができる。他の生体分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射用処方物はまた、体組織に適合するリポソームまたはマイクロエマルション中に薬物を封入することによっても調製される。注射用材料は、例えば、細菌保持フィルターによる濾過によって滅菌することができる。
【0027】
処方物は、単回または複数回投与用の密封容器、例えば、アンプルおよびバイアルで提供し得、使用直前に、液体担体、例えば、注射用水の添加のみを必要とする凍結乾燥状態で保存され得る。即席注射溶液および懸濁液は、上記のタイプの滅菌粉末、顆粒および錠剤から調製し得る。
【0028】
本発明の医薬製品を含むキットもまた提供される。キットは、注射による投与のために処方されたDA-DKP組成物を含むことができる。DA-DKPは、本明細書において記載されるとおりに、例えば、ヒトアルブミン組成物の溶液からアルブミンを除去することにより、調製することができる。キットは、単回または複数回投与用の密封容器、例えば、アンプルおよびバイアルを含み得、使用直前に、液体担体、例えば、注射用水の添加のみを必要とする凍結乾燥状態で保存され得る。また、キットは、内容物が直接使用または注射用に準備されている状態で保存され得る。
【0029】
本発明の化合物は単独で投与することが可能であるが、化合物を医薬処方物(組成物)として投与することが好ましい。本発明の医薬組成物は、有効成分としての本発明の1または複数の化合物を、1種以上の医薬上許容される担体と、所望により、1種以上の他の化合物、薬物または他の材料と混合して含む。各担体は、処方物の他の成分と適合性があり、かつ、動物に有害ではないという意味で「許容される」ものでなければならない。医薬上許容される担体は当技術分野で周知である。選択された投与経路にかかわらず、本発明の化合物は、当業者に公知の従来の方法により医薬上許容される投与剤形に処方される。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciencesを参照。
【0030】
本発明の組成物は、N-アセチル-トリプトファン(NAT)、カプリル酸、カプリレートまたはそれらの組合せをさらに含むことができる。好ましくは、この組成物は、NATを含むことができる。NAT、カプリル酸、カプリレートまたはそれらの組合せを有する本発明の組成物は、約1mM、約2mM、約3mM、約4mM、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約11mM、約12mM、約13mM、約14mM、約15mM、約16mM、約17mM、約18mM、約19mM、または約20mMの下端点を有する、NAT、カプリル酸、カプリレートまたはそれらの組合せの濃度範囲を有する医薬組成物であり得る。加えて、NAT、カプリル酸、カプリレートまたはそれらの組合せを有する本発明の組成物は、約40mM、約39mM、約38mM、約37mM、約36mM、約35mM、約34mM、約33mM、約32mM、約31mM、約30mM、約29mM、約28mM、約27mM、約26mM、約25mM、約24mM、約23mM、約22、または約21mMの上端点を有する、NAT、カプリル酸、カプリレートまたはそれらの組合せの濃度範囲を有する医薬組成物であり得る。好ましくは、その濃度範囲は約4mM~約20mMである。
【0031】
加えて、本発明の組成物はまた、鎮痛薬(リドカインまたはパラセタモール(paracetoamol)など)、抗炎症薬(ベタメタゾン(bethamethasone)、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセンなど)、および/または他の好適な薬物などの第2の薬物を含み得る。
【0032】
DA-DKPなどのジケトピペラジン類を作製する方法は当技術分野で周知であり、これらの方法は、本発明のジケトピペラジン類を合成するために採用し得る。例えば、米国特許第4,694,081号明細書、同第5,817,751号明細書、同第5,990,112号明細書、同第5,932,579号明細書および同第6,555,543号明細書、米国特許出願公開第2004/0024180号明細書、国際公開第96/00391号パンフレットおよび同第97/48685号パンフレット、ならびにSmith他、Bioorg.Med.Chem.Letters,8,2369-2374(1998)を参照されたい。これらの完全な開示は、引用することにより本明細書の一部とされる。
【0033】
例えば、DA-DKPなどのジケトピペラジン類は、まずジペプチド類を合成することによって調製することができる。ジペプチド類は、L-アミノ酸、D-アミノ酸またはD-アミノ酸およびL-アミノ酸の組合せを用いて、当技術分野で周知の方法によって合成することができる。好ましいのは固相ペプチド合成法である。当然、ジペプチド類はまた、DMI Synthesis Ltd.(カーディフ、UK)(カスタム合成)、Sigma-Aldrich(セントルイス、MO)(主にカスタム合成)、Phoenix Pharmaceuticals,Inc.(ベルモント、CA)(カスタム合成)、Fisher Scientific(カスタム合成)およびAdvanced ChemTech(ルイヴィル、KY)を含む数多くの供給源から市販されている。
【0034】
ジペプチドを合成または購入したら、それを環化してジケトピペラジンを形成する。これは、様々な技術によって達成することができる。例えば、米国特許出願公開第2004/0024180号明細書には、ジペプチド類を環化する方法が記載されている。簡潔に述べると、蒸留により水を除去しながら有機溶媒中でジペプチドを加熱する。好ましくは、有機溶媒は、アセトニトリル、アリルアルコール、ベンゼン、ベンジルアルコール、n-ブタノール、2-ブタノール、t-ブタノール、酢酸ブチルエステル、四塩化炭素、クロロベンゼン、クロロホルム、シクロヘキサン、1,2-ジクロロエタン、ジエチルアセタール、ジメチルアセタール、酢酸エチルエステル、ヘプタン、メチルイソブチルケトン、3-ペンタノール、トルエンおよびキシレンなどの、水との低沸点共沸混合物である。温度は、環化が起こる反応速度および使用される共沸剤のタイプに依存する。この反応は、好ましくは、50℃~200℃で、より好ましくは、80℃~150℃で実施される。環化が起こるpH範囲は、当業者ならば容易に決定することができる。それは、有利には、2~9、好ましくは、3~7である。
【0035】
ジペプチドのアミノ酸の一方または両方が、その側鎖(例えば、アスパラギン酸またはグルタミン酸)上にカルボキシル基を有するかまたは有するように誘導体化された場合、そのジペプチドは、好ましくは、米国特許第6,555,543号明細書に記載されているとおりに環化される。簡潔に述べると、側鎖カルボキシルがまだ保護されているジペプチドを中性条件下で加熱する。典型的には、ジペプチドは、約80℃~約180℃で、好ましくは、約120℃で加熱されることになる。溶媒は中性溶媒とする。例えば、溶媒はアルコール(ブタノール、メタノール、エタノール、および高級アルコールなどであるがフェノールではない)および共沸共溶媒(トルエン、ベンゼン、またはキシレンなど)を含み得る。好ましくは、アルコールはブタン-2-オールであり、共沸共溶媒はトルエンである。加熱は、反応が完了するまで続け、このような時間は経験的に決定することができる。典型的には、ジペプチドは約8~24時間、好ましくは約18時間還流することによって環化される。最後に、ジケトピペラジンから保護基を除去する。その際、最終化合物のキラリティーを維持するために、強酸(無機酸、例えば、硫酸または塩酸など)、強塩基(アルカリ性塩基、例えば、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムなど)、および強力な還元剤(水素化アルミニウムリチウム)の使用を避ける必要がある。
【0036】
固相樹脂上で作製されたジペプチド類は、1段階で環化と樹脂からの解放ができる。例えば、米国特許第5,817,751号明細書を参照されたい。例えば、N-アルキル化ジペプチドが結合した樹脂を、酢酸(例えば、1%)またはトリエチルアミン(例えば、4%)の存在下でトルエンまたはトルエン/エタノール中に懸濁させる。典型的には、それらの環化時間を速めるためには塩基性の環化条件が好ましい。
【0037】
ジペプチド類の環化およびジケトピペラジン類の作製についての他の方法は当技術分野で公知であり、本発明の実施に有用なジケトピペラジン類の調製に使用することができる。例えば、上記の参照文献を参照。加えて、本発明における使用に好適な多くのジケトピペラジン類を、タンパク質およびペプチドから下記のとおりに作製することができる。さらに、本発明の実施における使用のためのジケトピペラジン類は、例えば、DMI Synthesis Ltd.(カーディフ、UK)(カスタム合成)から商業的に入手することができる。
【0038】
本発明のDA-DKP組成物および/または製品は、DA-DKPを含有する溶液から(ヒト血清アルブミンなどのアルブミンを含む市販の医薬組成物からを含む)、溶液中の一部または全てのアルブミンを除去する、限外濾過、サイズ排除クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー(例えば、所望のジケトピペラジンに対する1つまたは複数の抗体または末端切断型タンパク質もしくはペプチドに対する1つまたは複数の抗体が結合しているビーズのカラムを使用)、陰イオン交換または陽イオン交換)、ショ糖勾配遠心分離、クロマトグラフィー、塩析沈殿、または超音波処理などの周知の方法によって調製することができる。得られたDA-DKP含有組成物および/または製品は、上記のように、使用し、医薬組成物に組み込むことができる。
【0039】
限外濾過分離方法を用いて、ヒト血清アルブミン組成物を、アルブミンを保持する一方でDA-DKPを得られる濾液または画分中へと通過させる分子量カットオフを有する限外濾過膜に通すことができる。この濾液は、約50kDA未満、約40kDa未満、30kDa未満、約20kDa未満、約10kDa未満、約5kDa未満、または約3kDa未満の分子量を有する成分を含み得る。好ましくは、この濾液は、約5Da未満の分子量を有する成分を含む(「<5000MW」とも呼ばれる)。この<5000MW画分または濾液は、アルブミンからジペプチドアスパルテート-アラニンが切断され、その後、ジケトピペラジンへと環化された後に形成されたDA-DKPを含有する。
【0040】
本発明のDA-DKPの生理学上許容される塩もまた、本発明の実施において使用され得る。生理学上許容される塩としては、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸など)、有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、安息香酸、サリチル酸、シュウ酸、アスコルビン酸など)または塩基(例えば、N,N-ジベンジルエチレンジアミン、D-グルコサミン、またはエチレンジアミンから誘導される医薬上許容される金属陽イオンまたは有機陽イオンの水酸化物、炭酸塩または重炭酸塩など)から誘導される塩などの通常の非毒性塩が挙げられる。これらの塩は、従来の方法で、例えば、化合物の遊離塩基形態を酸で中和することにより、調製される。
【0041】
本発明は、それを必要とする動物に、DA-DKPを含む医薬組成物の有効量を複数回投与レジメンで投与することを含む関節病態を治療する方法を含む。驚くべきことに、本発明の医薬組成物を投与するための複数回投与レジメンの使用によって、単回投与レジメンと比較して、疼痛軽減の大幅な向上および機能の改善が達成され得ることが見出された。アンピオ ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド(Ampio Pharmaceuticals,Inc.)に譲渡された、Bar-Or他の米国特許第8,980,834号明細書(「Bar-Or」)には、ヒト血清アルブミンの<5000MW画分(アンピオン(商標)とも呼ばれている)の注射による変形性関節症の治療が開示されている。Bar-Orには複数回投与レジメンは開示されておらず、実際には、治療の効果が長続きすることから、6ヶ月までの期間にわたって単回投与で十分であることを示唆している。特定の理論に縛られることを意図するものではないが、複数回投与レジメンの効果の向上は、投与される活性組成物の量の単なる増加以上に達成されると考えられる。以下の実施例1に示すように、アンピオン(商標)4mLから10mLへの単回投与の増加による利益は見られなかった。しかしながら、アンピオン(商標)の4mL用量を3回(合計12mL)、2週間間隔で投与すると、実施例2に示すように、有意な利益が見られた。従って、投与される活性組成物の総量とは無関係の延長した複数回投与レジメンによる治療を関節が長期に受けることによって達成される少なくとも何らかの効果があると考えられている。
【0042】
複数回投与レジメンとは、時間間隔をおいた複数回投与で本発明の医薬組成物を患者へ投与することを意味する。複数回投与レジメンでの2つの重要な変数は、投与回数と投与間の時間である。本発明では、投与回数は、3回以上であり、2~10回、2~8回、2~6回、2~4回、または3回であり得る。本発明では、任意の2回の投与間の時間は、2日~6週間、2日~5週間、2日~4週間、2日~3週間、1週間~2週間であり得、または約2週間であり得る。
【0043】
本発明は、治療の単回投与と比較して、関節病態、例えば、変形性関節症など(特に、膝関節)からの疼痛の大幅な改善を提供することができる。疼痛は、数値尺度で評価することができ、1つの好適な疼痛スケールはWOMAC Aである。本発明は、WOMAC Aスコアまたは他の疼痛スケールを、ベースラインスコアよりも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%改善することができる。
【0044】
本発明のこの実施形態は、関節機能、特に、膝関節の機能の大幅な改善を提供することができる。関節の機能は、数値尺度で評価することができ、1つの好適なスケールはWOMAC Cである。本発明は、WOMAC Cスコアまたは他の関節機能スケールを、ベースラインスコアよりも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%改善することができる。
【0045】
本明細書で使用される場合、「1つ(a)」または「1つ(an)」は、1以上を意味する。
本明細書で使用される場合、「含む(comprises)」および「含む(comprising)」は、「含む(comprises)」および「含む(comprising)」によって本明細書において特徴付けられる本発明の代替実施形態として「から本質的になる(consisting essentially of)」および「からなる(consisting of)」などの全てのより狭い用語をそれらの範囲内に含む。「から本質的になる(consisting essentially of)」の使用に関しては、このフレーズは、請求項の範囲を、指定された工程および材料、ならびに本明細書に開示される本発明の基本的かつ新規な特徴に重大な影響を与えないものに限定する。
【0046】
本発明のさらなる目的、利点および新規な特徴は、以下の限定されない実施例を考慮することにより当業者には明らかになるであろう。以下の実験結果は、例示のために提供し、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例0047】
膝の変形性関節症(OAK:osteoarthritis of the knee)による疼痛を有する成人において2つの用量のアンピオン(商標)の関節内(IA:intra-articular)注射の有効性および安全性を評価するために、無作為化プラセボ対照二重盲検試験を行った。
【0048】
主目的
OAKに罹患している患者に投与した場合に、膝疼痛の改善におけるIA注射の、プラセボ10mLに対するアンピオン(商標)10mLの有効性が、プラセボ4mLに対するアンピオン(商標)4mLの有効性よりも高いかどうかを評価することを目的とする。
【0049】
被験者
被験者は40歳以上85歳以下の男女の成人患者(包括的な)であった。適格患者は歩行可能であるが、スクリーニング時のWOMAC Index 3.1、5段階のリッカート疼痛サブスケール(five-point Likert Pain Subscale)での少なくとも1.5点の評点からも明らかなように、指標となる膝においてOAKによる中等度から中程度の重度までの疼痛を受けていた。患者は、スクリーニング前の6ヶ月以内に得られた放射線学的証拠(ケルグレン-ローレンス(KG:Kellgren-Lawrence)グレード2~4)によって裏づけられた、OAKの臨床診断を受けて6ヶ月以上にわたって症状があった指標膝を有していなければならなかった。患者はまた、スクリーニング前の4週間にNSAIDの長期間投与を受けた場合でも、指標膝に中等度から中程度の重度のOAK疼痛を有する必要があった。患者は、有効性測定前の12時間は鎮痛(アセトアミノフェンを含む)を受けることができなかった。
【0050】
治療
試験製品は、膝への1回のIA注射として投与したアンピオン(商標)、4mLまたは10mLであった。対照製品は、膝への1回のIA注射として投与した生理食塩水プラセボ、4mLまたは10mLであった。試験登録基準を満たした患者を、次の4つの試験群:アンピオン(商標)4mL、プラセボ4mL、アンピオン(商標)10mL、およびプラセボ10mLに、1:1:1:1の比率で無作為に割り付けた。
【0051】
OAK疼痛に対する治療の臨床効果を、6週間および12週間の時点、場合によって、20週間の時点での訪問時に、ならびに2週間、4週間、8週間、および10週間の時点での電話連絡時にWOMACおよび患者の総合評価(PGA:the Patient’s Global Assessment)を用いて評価した。全試験期間は、0日目の前の最大4週間のスクリーニング期間を除いて、12週間、場合によって、最大20週間であった。
【0052】
主要有効性エンドポイント
この試験の主要有効性エンドポイントは、ベースライン(0日目)と12週目との間での5段階リッカートスケールによるWOMAC A疼痛サブスコアの変化であった。
【0053】
副次有効性エンドポイント
この試験の副次有効性エンドポイントは以下であった:
・ベースラインと、2週、4週、6週、8週、および10週目、場合によって、20週目との間でのWOMAC A疼痛サブスコアの変化;
・ベースラインと、2週、4週、6週、8週、10週、および12週目との間でのWOMAC B硬直サブスコアの変化;
・ベースラインと、2週、4週、6週、8週、10週、および12週目、場合によって、20週目との間でのWOMAC C身体機能サブスコアの変化;
・ベースラインと、6週、8週、10週、および12週目、場合によって、20週目との間でのPGAの変化;
・2週、4週、6週、8週、10週、および12週目でのOMERACT-OARSI基準に基づく応答状況;
・ベースラインと、2週、4週、6週、8週、10週、および12週目との間での質問1および2(運動時の疼痛)のWOMAC A疼痛サブスコア平均の変化;
・ベースラインと、2週、4週、6週、8週、10週、および12週目との間での質問3~5(安静時の疼痛)のWOMAC A疼痛サブスコア平均の変化;
・救援鎮痛の使用(アセトアミノフェン使用量);および
・TEAEの発生率および重篤度。
【0054】
安全性評価
安全性評価には、併用薬データの収集、身体診察、バイタルサイン測定、臨床検査測定、およびTEAEのモニタリングを含めた。
【0055】
人口学的特性および基本特性
試験対象母集団は、アンピオン(商標)での治療を受けることが予想される集団の代表であった。基本特性は、治療群を通じて類似していた:各群の患者の大多数は白人および女性であり、年齢中央値は約62歳であった。
【0056】
有効性の結果
アンピオン(商標)を受けた被験者は、プラセボを受けた被験者と比較して、ベースラインからの疼痛のおよそ42%の軽減を示す、ベースラインから12週目までのWOMAC A疼痛サブスコアにおける有意に大きな減少(改善)を達成した(P=0.0038)。さらに、疼痛のこの改善は、より重篤なOAK疾患を有する患者においてより顕著であった;例えば、KGグレード3および4の疾患を有する患者は、12週目にプラセボと比較して、疼痛のより大きな改善があった。アンピオン(商標)を受けた患者はまた、プラセボを受けた患者と比較して、ベースラインから12週目までの機能(WOMAC C)における有意に大きな改善を達成した(P=0.04)。加えて、アンピオン(商標)を受けた患者はまた、プラセボを受けた患者と比較して、ベースラインから12週目までの、PGAによって測定される全体的な生活の質(QOL)の指標における有意に大きな改善を経験した(P=0.01)。膝への1回のみのアンピオン(商標)IA注射だけで、疼痛、機能、および全体的な生活の質の指標におけるこれらの臨床的および統計的に有意な改善が観察された。
【0057】
【表1】
【0058】
20週目の訪問に参加した被験者の群全体において、WOMAC A疼痛サブスコアにおけるベースラインからの平均変化に統計的有意差はなかった;しかしながら、KLグレード4サブセットにおいて統計的に有意な改善があった(P=0.036)。
【0059】
【表2】
【0060】
結論
この試験の結果は、OAKを有する患者の膝への1回のIA注射後12週間の時点での疼痛の軽減についてアンピオン(商標)の安全性および有効性を確立している。アンピオン(商標)の4mLおよび10mLの両方の用量は、安全かつ有効であり、耐容性が良好である。アンピオン(商標)用量4mLおよび10mLについての有効性に差がない場合、低い方の用量4mLをさらなる試験で評価した。20週間の時点での4mLおよび10mL組合せ治療群におけるKLグレード4の患者の平均WOMAC A疼痛サブスコアの減少は約34%であった。KLグレード4に加えて患者を含む20週目に評価した患者の群全体において、統計的に有意な変化はなかった。
【実施例0061】
膝の変形性関節症による疼痛を有する成人において2週間間隔で投与されたアンピオン(商標)(4mL)の3回の関節内注射の安全性および有効性を評価するために、前向き(prospective)第I/II相試験を行った。
【0062】
主目的
第I相の主目的は、ベースラインから20週目まで、膝のOAKに罹患している患者において、2週間間隔で、3回のIA注射として投与されたアンピオン(商標)4mLの安全性を評価することであった。
【0063】
第II相の主目的は、膝のOAKに罹患している患者において膝痛の改善に、3回のIA注射として投与された場合に、ベースラインから20週目まで、アンピオン(商標)4mLとプラセボ注射の安全性および有効性を評価することであった。
【0064】
被験者
第I相および第II相試験の両方において、被験者は、OAK膝痛を有する40歳以上85歳以下の男女の成人患者(包括的な)であった。適格患者は歩行可能である必要があり、指標となる膝は、スクリーニング時に得られた放射線学的証拠(KLグレード2~4)によって裏づけられたOAKの臨床診断を受けて6ヶ月以上にわたって症状がある必要があった。患者は、指標膝に中等度から中程度の重度のOAK疼痛を有する必要があり(WOMAC Index 3.1 5段階リッカート疼痛サブスケールで少なくとも1.5点の評点)、スクリーニング時に評価され、無作為化時に確認された。指標膝における中等度から中程度の重度のOAK疼痛は、NSAIDの長期間投与(スクリーニング前の4週間では変更しなかった)を行ったかまたは使用されている場合でも存在する必要があった。患者は、有効性測定前の12時間は鎮痛を受けることができなかった。患者は、スクリーニング時に評価された、対側膝における1.5点未満のWOMAC 5段階リッカート疼痛サブスケールスコアを有することが推奨された。
【0065】
第I相では、合計7名の患者が登録され、KLグレード2の患者の登録は2名以下の患者に制限された。7名の患者全てが4週目のフォローアップ評価を完了した後、医療モニターは安全性評価を行った。深刻な薬物関連のAEまたは予期しない薬物関連のAEが観察されなかった場合、第II相で登録を開始した。安全性審査が保留されている間、7名の患者は52週目まで第I相試験を継続した。
【0066】
第II相では、およそ40名の患者が登録され、2つの試験群にわたって1:1に無作為化された(1試験群当たり20名の患者)。KLグレード2の患者の登録は、第II相における全登録の25%、すなわち、合計8名の患者に制限され、2つの試験群にわたって、1:1に無作為化された。
【0067】
治療
第I相および第II相の両方の試験製品はアンピオン(商標)であり、第II相試験の対照製品は生理食塩水プラセボであった。
【0068】
第I相では、試験登録基準を満たした患者は、ベースライン(0日目)時点および2週および4週目に膝へのアンピオン(商標)4mLの3回のIA注射を受けた。第II相では、試験登録基準を満たした患者をアンピオン(商標)4mL試験群またはプラセボ4mL試験群に1:1の比率で無作為に割り付けた。被験者は、ベースライン(0日目)時点および2週および4週目に試験薬(アンピオン(商標)またはプラセボ)の膝への3回のIA注射を受けた。
【0069】
被験者は、6週、12週、20週、24週、および52週目のクリニック内訪問に参加した。各患者の最大試験期間は、4週間のスクリーニング期間を除いて、52週間であった。
【0070】
エンドポイント
第I相ではTEAEおよびSAEの発生率および重篤度を決定した。
第II相の主要有効性エンドポイントは、ベースライン(0日目)から20週目までの5段階リッカートスケールによるWOMAC A疼痛サブスコアの変化である。第II相の副次エンドポイントは以下である:
・ベースライン(0日目)から2週、4週、6週、12週、24週、および52週目までのWOMAC A疼痛サブスコアの変化;
・ベースライン(0日目)から2週、4週、6週、12週、20週、24週、および52週目までのWOMAC C身体機能サブスコアの変化;
・ベースライン(0日目)から2週、4週、6週、12週、20週、24週、および52週目までのPGAの変化;
・20週目を通じた救援鎮痛の使用(アセトアミノフェン使用量);および
・TEAEの発生率および重篤度。
【0071】
安全性評価
安全性評価には、全てのクリニック内訪問時および注射の24時間後の電話連絡でのTEAEの記録;ベースライン時(0日目)および2週、4週、6週、12週、20週、24週、および52週目のクリニック内訪問時の身体診察およびバイタルサイン記録;ならびに標準的な実験室試験を含めた。
【0072】
投与(Exposure)
第I相では、7名の被験者が登録され、アンピオン(商標)の3回全ての注射を受けた。第II相では、40名の被験者(アンピオン(商標)20名、プラセボ20名)が登録され、試験薬物の3回全ての注射を受けた。
【0073】
人口学的特性および基本特性
基本特性は治療群を通じて類似していた:各治療群の患者の大多数は白人および女性であり、年齢中央値は62.5歳であり、KLグレード3(58%)またはグレード4(38%)を示した。
【0074】
有効性の結果
アンピオン(商標)を受けた被験者は、プラセボを受けた被験者と比較して、ベースラインから20週目までのWOMAC A疼痛サブスコアにおいて有意に大きな減少(改善)を達成した(P=0.0231)。これは、図1に示すように、プラセボ治療群におけるおよそ40%の減少と比較して、アンピオン(商標)治療群におけるベースラインからのおよそ64%の平均疼痛の軽減を示す(P=0.0313)。
【0075】
【表3】
【0076】
アンピオン(商標)を受けた患者は、プラセボを受けた患者と比較して、2週、4週、6週、12週、または24週目にベースラインからのWOMAC A疼痛サブスコアにおいて有意差を示さなかった。
【0077】
結論
この試験の結果は、OAKを有する患者の膝への、2週間間隔で、3回のIA注射後20週間の時点での疼痛の軽減についてアンピオン(商標)の安全性および有効性を確立している。アンピオン(商標)の4mL用量は、安全かつ有効であり、耐容性が良好であった。
【0078】
本発明の様々な実施形態を詳細に説明してきたが、当業者にはこれらの実施形態の修飾および適応に想到することは明らかである。しかしながら、以下の例示的な請求項に記載されているように、このような修飾および適応が本発明の範囲内にあることは明白に理解されるべきである。
図1