(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095893
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】単位面積質量の大きい急速崩壊性発泡体ウェハ
(51)【国際特許分類】
A61K 9/20 20060101AFI20220621BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220621BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220621BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220621BHJP
A61K 31/135 20060101ALI20220621BHJP
A61K 31/439 20060101ALI20220621BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220621BHJP
A61P 11/14 20060101ALI20220621BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20220621BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
A61K9/20
A61K45/00
A61K47/32
A61K47/38
A61K31/135
A61K31/439
A61P29/00
A61P11/14
A61P25/22
A61P25/02
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022066677
(22)【出願日】2022-04-14
(62)【分割の表示】P 2019567554の分割
【原出願日】2018-06-07
(31)【優先権主張番号】102017112527.2
(32)【優先日】2017-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BRIJ
(71)【出願人】
【識別番号】300005035
【氏名又は名称】エルテーエス ローマン テラピー-ジステーメ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】マリウス・バウアー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・リン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】口中で不快感のない剤形を提供する。
【解決手段】少なくとも1種の有効成分を体の開口部または体腔に放出するための、水性環境中で崩壊するまたは溶解する平坦な剤形に関し、これは空隙を有する固化発泡体の形態であるポリマーマトリックスおよび少なくとも1種の医薬有効成分から形成され、50~350g/m2の範囲の大きい単位面積質量を有する。該剤形は、その大きい単位面積質量、およびその結果もたらされる投与中の有効成分の充填量の多さにもかかわらず、従来のフィルム剤形に比べ大幅に改善された口当たりを特徴とする。本発明はまた、このタイプの剤形を製造するための方法にも関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の有効成分を体の開口部または体腔に放出するための、水性環境下で崩壊または溶解する平板状剤形であって、
空隙を有する固化発泡体の形態であるポリマーマトリックス、および
少なくとも1種の医薬有効成分
を含み、
50~350g/m2の範囲の単位面積質量を有することを特徴とする、前記平板状剤形。
【請求項2】
50~300g/m2の範囲、好ましくは130~250g/m2、より好ましくは150~220g/m2の範囲、さらにより好ましくは165~210g/m2の範囲の単位面積質量を有することを特徴とする、請求項1に記載の剤形。
【請求項3】
ポリマーマトリックスは、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む群から選択されるポリマーをベースとすることを特徴とする、請求項1または2に記載の剤形。
【請求項4】
空隙は、互いに離れており、好ましくは気泡の形態で存在することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項5】
空隙は、互いに連結しており、好ましくはポリマーマトリックスを貫通するチャネル系を形成することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項6】
空隙は、空気またはガス、好ましくは不活性ガス、特に好ましくは窒素、二酸化炭素、ヘリウム、これらのガスの混合物で、または複数のこれらのガスの混合物で充填されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項7】
前記空隙は、剤形の総体積に基づいて、5~98%、好ましくは50~80%の体積分率を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項8】
ウェハとして形成され、厚さは、好ましくは100μmから5mmの間、特に好ましくは0.5から3mmの間であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項9】
医薬有効成分は、好ましくはS-ケタミンの形態であるケタミン、またはデキストロメトルファン、または医薬として許容されるその塩を含有することを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項10】
医薬有効成分は、剤形の総重量に基づいて、38~60重量%、好ましくは42~55重量%、特に好ましくは45~52重量%の範囲の割合を占めることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項11】
好ましくはイオン交換樹脂の形態にある、矯味成分を含有することを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の剤形を製造する方法であって、
- 少なくとも1種のマトリックスポリマーおよび少なくとも1種の医薬有効成分を含有する溶液または分散液を製造する工程;
- 場合により発泡安定剤の予添加後に、ガスもしくはガス混合物の導入によって、または化学ガスの発生によって、または溶解ガスの膨張によって、溶液または分散液を起泡する工程;
- 発泡溶液または分散液をコーティング基材上に延展する工程;および
- 溶媒を乾燥および除去することによって、延展溶液または分散液を固化させる工程を特徴とする、方法。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか1項に記載の剤形を製造するための方法であって、
a)少なくとも1種のマトリックスポリマーおよび少なくとも1種の医薬有効成分を含有する溶液または分散液を製造する工程;
b)ガスの形成が可能な助剤または助剤の組合せを添加する工程;
c)溶液または分散液をコーティング基材上に延展する工程;および
d)溶媒の乾燥および除去によって、延展溶液または分散液を固化させる工程
を特徴とする、方法。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか1項に記載の剤形を製造するための方法であって、
a)少なくとも1種のマトリックスポリマーおよび少なくとも1種の医薬有効成分を含有するポリマー含有メルト(ホットメルト)を製造する工程;
b)場合により発泡安定剤を予添加後に、ガスもしくはガス混合物の導入によって、または化学ガスの発生によって、または溶解ガスの膨張によって、メルトを起泡する工程;
c)コーティング基材上にメルトを延展する工程;および
d)冷却によってフィルムを固化させる工程
を特徴とする、方法。
【請求項15】
工程c)およびd)を、以下の工程e)およびf):
e)溶液もしくは分散液からまたはメルトから出発するブロックの形態にあるポリマーマトリックスを製造する工程;
f)平板状形態を得るために、固化ブロックを切断する工程
で置き換えるまたはにより変更することを特徴とする、請求項12~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
医薬有効成分を口腔内に投与するための、請求項1~11のいずれか1項に記載の剤形または請求項14~16のいずれか1項に記載の方法の生成物の使用。
【請求項17】
医薬有効成分の直腸内投与、膣内投与または鼻腔内投与のための、請求項1~11のいずれか1項に記載の剤形または請求項12~15のいずれか1項に記載の方法の生成物の使用。
【請求項18】
疼痛、好ましくは慢性疼痛、または鬱病の治療的処置または予防的処置のための、ケタミン、S-ケタミンまたは医薬として許容されるその塩を有する、請求項9または請求項9に従属する請求項に記載の剤形。
【請求項19】
咳、感情調節障害、または筋萎縮性側索硬化症の治療的処置または予防的処置のための、デキストロメトルファンまたは医薬として許容されるその塩を有する、請求項9または請求項9に従属する請求項に記載の剤形。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剤形によって特に経口で投与することができ、基材物質として水溶性ポリマーをベースとするマトリックスを有する、有効成分を放出するために水性環境下で崩壊するまたは溶解する平板状剤形に関する。特に本発明は、ウェハの形態に成形された記載している種類の剤形に関する。本発明はまた、そのような剤形を製造する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
口腔粘膜を介して有効成分を投与するために、バッカル錠または舌下錠が通常使用され、これらの錠剤は、口腔内で有効成分を放出する。他の経口の剤形と比べ、口腔粘膜を介した有効成分の吸収は、いくつかの利点をもたらし、例えば嚥下が困難な患者にも経口で薬剤を投与できること、胃腸の通過をバイパスすることにより効果が急速に現れること、および有効成分の活用度が高いことである。
【0003】
ウェハとも称される、平板状ウェハ様の剤形は、既知のバッカル錠および舌下錠に代わる剤形として知られている。
【0004】
例えば、特許文献1は、溶解性ポリマー材料または複合多糖類から形成される迅速溶解性フィルム製品を記載しており、この製品は、主に避妊薬の投与に使用されている。フィルム製品は、3~4.5mmの厚みを有し、かつ投与後5~60秒以内には溶解しているような溶解性を設定することが可能でなければならない。このフィルム製品はまた、ガスで起泡させた空隙(cavity)を有するラミネートの形態で存在しうる。
【0005】
唾液と接触すると迅速に溶解する医薬品を投与するための担体材料は、特許文献2により既知である。この担体材料は、多孔性で脱水された骨格様である担体材料であり、特にタンパク質および多糖類をベースとする。脱水により生じた空隙は、液状の有効成分を導入するために使用される。
【0006】
特許文献3は、液体と接触すると迅速に崩壊する、有効成分を含有し、フィルム様である剤形を記載し、ここで、脂溶性相は、外側の水溶性相中に小滴の形態で分散されている。
【0007】
特許文献4は、迅速に溶解しなければならないが、それだけではなく抗微生物物質を投与するために口腔粘膜に良好に付着でき、口腔菌叢中の望ましくない微生物の数を減少させる可食性フィルムを提案している。抗微生物物質は、好ましくは水性相中のマトリックス材料としてのプルランと親油性相として混合される精油である。
【0008】
特許文献5は、水溶性または水膨潤性であり、口腔粘膜に付着しやすい、フィルム様の発泡剤形を開示している。
【0009】
特許文献6は、口腔または他の体の開口部内に有効成分を放出するための、迅速に崩壊する剤形であって、基材物質として少なくとも1種の水溶性ポリマーを含有し、空隙を設けたマトリックスを有する、剤形を記載している。
【0010】
特許文献7は、ポリビニルアルコール-ポリエチレングリコールグラフトコポリマーを基材とする、口腔内で、特にニコチンのような有効成分を放出するための発泡体(foam)ウェハ製造物を記載している。
【0011】
上記のウェハの作用機序は、特定の有効成分用のマトリックスとして使用されるポリマーが水または唾液と接触すると溶解し、そのためウェハが崩壊して、有効成分が放出されるという事実に基づく。有効成分の放出の発生および時間の進行は、ウェハの厚みに大きく依存する。溶媒が剤形の内部により急速に浸透しうるため、ウェハは、薄ければ薄いほど、水性環境下でより速く崩壊する。一方、対応するウェハは、意図した機能を果たし、かつ十分な取扱いやすさを提供できる一定の最小限の厚みをもつ必要がある。さらに、そのような剤形の厚みは、含有し放出するように企図されている有効成分の種類および量に依存する。厚みが増すに従って、ウェハの崩壊または溶解は遅くなる。
【0012】
ウェハが平坦で滑らかな形態であるため、より厚いウェハは特に、しかし比較的厚みの薄いウェハも、崩壊が遅くなり、口蓋に、または口腔の他の粘膜表面上に付着し、はりつく傾向がある。これはとりわけ、粘膜表面で溶解し、べたついて崩れるフィルムを形成するポリマー層によって生じる。このことから、近年では、ウェハ系は、一般にわずか少量使用するだけですむ有効成分で製剤化されることを生じさせた。それは、量の多い有効成分によって厚みが増すことを避けられるからである。したがって、フィルムに必要な物理化学的特性(例えば十分な強度)により、量を多く投与しなければならない有効成分については、錠剤などの従来の送達系への依存が高まりつつある。厚みが増したウェハについてのもう1つの問題は、有効成分または他の成分、特に矯味剤などの放出が遅くなることである。不溶性または難溶性固体の形態で矯味剤が存在する場合、これらの固体は、溶解挙動がより遅いために口中で長く残留し、不快に感じられることがある。前述の特許文献6では、ウェハによって口腔内にもたらされる感覚を改善するために、水性環境下で迅速に崩壊または迅速に溶解し、剤形のポリマーマトリックス内に空間または空隙を有する平板状剤形が提示されたが、空間/空隙の内容は、凝集状態に関してマトリックスの内容とは異なる。
【0013】
しかしながら、試験は、特許文献6の教示による平板状剤形を摂取する場合にも、敏感な人は口腔内に不快または煩わしい感覚を経験することを示している。したがって、有効量に必要な有効成分の量のために大きい単位面積質量を有する必要があるフィルムでの溶解挙動に関して、剤形、特にウェハの溶解によって起きる口中の不快な感覚を生じさせない改良された剤形、特にウェハの改良の必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第5529782号
【特許文献2】欧州特許第0450141B1号
【特許文献3】国際公開第98/26764号
【特許文献4】国際公開第00/18365号
【特許文献5】米国特許出願公開第2001/006677号
【特許文献6】国際公開第02/02085号
【特許文献7】DE102005058569
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明はこの課題を解決する必要性に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するために、請求項1による本発明は、少なくとも1種の有効成分を体の開口部または体腔(body cavity)に放出するための、水性環境下で崩壊または溶解する平板状剤形であって、空隙を有する固化発泡体の形態でポリマーマトリックスおよび少なくとも1種の医薬有効成分を含み、該50~350g/m2の範囲の単位
面積質量を有する、平板状剤形を記載する。本発明による剤形は、ガス、特に空気または窒素などで充填された空間部位を有し、この部位によって剤形に加速された溶解挙動が与えられる。空隙は、ポリマーマトリックス内にのみ位置してもよく、剤形の外縁にまで延在してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明による空隙およびそれに関連してフィルムの表面が大きくなることによって、特に水もしくは唾液または他の体液の剤形内への進入が促進される。そのため、溶解しにくいどの有効成分の粒子も口内および咽頭内で迅速に拡散し、もはやその粒子を感じることがなくなるまでに、剤形の溶解および有効成分の放出が加速する。したがって、そのような粒子は、in situで残留することは妨げられ、放出された有効成分は、素早く嚥下されることができる。これによって、本発明による剤形の「口当たり」が改善されることとなり、結果的に使用者または患者によりよく受け入れられることになる。本発明による剤形は、有効成分を舌下で用いる場合はさらに有効成分がより急速に経粘膜摂取されるように提供することができる。
【0018】
迅速に有効成分が吸収されると、剤形の急速な溶解によって、例えば舌下で使用される場合などの経粘膜吸収がさらに改善できる。一方、例えば記載の空隙は固化された気泡を表しているため、その空隙の壁の厚みは薄く、したがって迅速に溶解するかまたは崩壊する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明による剤形のさらなる利点は、比較的大きい単位面積質量でありながら、発泡形態の製剤であることによって、同等の発泡形態でない組成物の場合よりも速い乾燥を実現することができることにある。
【0020】
50~300g/m2の範囲、特に100~280g/m2の範囲、好ましくは130~250g/m2の範囲、さらに好ましくは150~220g/m2の範囲、最も好ましくは165~210g/m2の範囲が、本発明による剤形の好ましい単位面積質量として特定することができる。
【0021】
水溶性ポリマーまたはそのようなポリマーの混合物が、マトリックスポリマーとして使用される。この点に関しては、皮膜形成性で水溶性であり、かつ/または発泡体を形成するのに適切である、乳化性の合成もしくは半合成(partially synthetic)ポリマーまたは天然由来のバイオポリマーを使用することが好ましい。代替的に、それ自体が乳化性ではないポリマーは、界面活性剤と組み合わせて使用することができる。適切な合成ポリマーは、例えばポリビニルアルコール、ポリアクリレートおよびポリビニルピロリドンである。これらのうち、ポリビニルアルコールが特に適切である。特に最適なポリビニルアルコールは、15,000~60,000の範囲、特に25,000~50,000の範囲の重量平均分子量を有する。商業的に適切なポリビニルアルコールの例は、Mowiol 4-88であり、これは例えば、Sigma Aldrichによって販売されている。
【0022】
上記のホモポリマーに加え、コポリマーもまた合成ポリマーとして使用することができる。適切なコポリマーは、例えば、BASFから入手可能な商品名Kollicoat(登録商標)IRなどのポリビニルアルコールポリエチレングリコールグラフトコポリマー、またはBASFから入手可能な商品名Kollidon VA 64などのポリビニルピロリドン-ポリビニルアセテートコポリマーである。
【0023】
適切な半合成ポリマーは、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメ
チルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、およびメチルセルロースなどのセルロース誘導体、ならびに他の置換されたセルロース誘導体である。特に適切なセルロース誘導体は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、特にメトキシ置換度が約28~30%であり、ヒドロキシプロポキシ置換度が約7~12%であるヒドロキシプロピルメチルセルロースである。そのようなヒドロキシプロピルメチルセルロースは、例えばDow Chemicalから商品名Methocel Eを入手できる。植物、微生物、または合成由来の水溶性多糖類、特にセルロース誘導体ではない多糖類、例えばプルラン、キサンタン、アルギネート、デキストラン、寒天、ペクチン、およびカラギーナンなどもまた、好ましい。さらに、タンパク質、好ましくはゼラチンまたは他のゲル形成タンパク質、およびタンパク質加水分解物もまた適切である。適切なタンパク質加水分解物には、なかでも、カゼイネート、乳清、植物のタンパク質、ゼラチン、(鶏)卵白、およびその混合物がある。好ましいタンパク質は、カゼイネートであり、これは噴霧乾燥粉乳製品に由来する。
【0024】
本発明の範囲の中で特に好まれるマトリックスポリマーは、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール-ポリエチレングリコールグラフトコポリマーおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースである。ポリビニルアルコールが最も好ましい。ポリビニルアルコールは、好ましくはポリビニルアセテートホモポリマーの加水分解物である。この加水分解物は、好ましくは、加水分解されていないポリビニルアセテートの20mol%以下、特に15mol%以下の残存量を(ビニルアルコールおよびビニルアセテートモノマーの総モル量に基づいて)含有することがある。上記の好ましいマトリックスポリマーは、固化発泡体の製造に、界面活性成分も界面活性剤もさらに添加する必要がないという点が有利である。
【0025】
本発明による剤形におけるマトリックスポリマーは、医薬有効成分を構成するだけでなく、剤形の主成分を構成する。乾燥重量に基づいて、20~65重量%、特に30~60重量%、最も好ましくは32~52重量%の含有量を適切なマトリックスポリマーの割合と特定することができる。
【0026】
上記の通り、本発明による剤形内の空隙は、ポリマーマトリックス内で互いに離れて、好ましくは固化気泡の形態で存在してよい。
【0027】
別の実施形態によると、空隙は、好ましくはマトリックスを貫通する凝集チャネル系を形成することによって、互いに連結することが提示されている。
【0028】
前述の空隙は、ガスまたはガス混合物で、特に空気または窒素で充填されていることが好ましい。しかしながら、空隙が、剤形の他の成分と反応しない、他のガスまたはガス混合物を含有していることも有利でありうる。特に好ましいガスは、窒素、二酸化炭素、およびヘリウム、ならびにこれらのガスの混合物または複数のこれらのガスも好ましい。
【0029】
前述の空隙は、剤形の総体積に基づいて、好ましくは5~98%、好ましくは50~80%の体積分率を有する。剤形の溶解を加速させる意図した効果は、このように好都合に影響する。
【0030】
本発明による剤形の特性に影響するさらに重要なパラメータは、空隙または気泡の直径である。気泡または空隙は、好ましくは発泡性機械を使用して製造され、気泡の直径は、その機械を使用して広範囲内にほぼ恣意的に設定することができる。したがって、空隙または気泡の直径は、0.01~60μmの範囲でありうる。直径は、特に10~50μmの範囲であることが好ましい。
【0031】
剤形の表面は平坦であってよいが、その表面は、平坦でないか、または凸凹があることも可能であり、例えば波打っているかまたはレリーフ状などでありうる。そのような凸凹面構造は、例えば、ポリマーマトリックス内で形成される気泡状空隙、および/またはその後の乾燥処理によって生じさせることができる。
【0032】
本発明による剤形は、好ましくは薄いデザインで、例えばウェハの形態で提供されることが好ましい。剤形の厚みは、好ましくは100μmから5mmの間であり、特に好ましくは、0.5から3mmの間である。
【0033】
医薬有効成分に関して、本発明は、経口吸収、例えば経粘膜、舌下または歯肉からの有効成分の吸収、および/または胃腸での吸収が可能でなければならないことを除いて、いかなる制約も受けるものではない。
【0034】
したがって、適切な有効成分は、とりわけ感染を処置する薬剤;ウイルス静止剤;フェンタニル、スフェンタニル、ブプレノルフィンなどの鎮痛剤;麻酔薬;食欲抑制剤;テルブタリンなどの関節炎および喘息の処置のための有効成分;抗けいれん薬;抗うつ剤;抗糖尿病薬;抗ヒスタミン剤;下痢剤;偏頭痛、掻痒、悪心および吐気の薬剤;スコポラミンおよびオンダンセトロンなどの乗り物酔いおよび船酔い薬;パーキンソン病薬、抗精神病薬;解熱剤、鎮けいれん薬、抗コリン作用薬、ラニチジンなどの抗潰瘍薬、交感神経作動薬;ニフェジピンなどのカルシウムチャネルブロッカー;β遮断薬;ドブタミンなどのβアゴニスト;抗不整脈薬:狭心症などの抗高血圧症;エナラプリルなどのACE阻害薬;フルマゼニルなどのベンゾジアゼピンアゴニスト;心血管、末梢血管、および脳血管拡張剤;中枢神経系刺激剤;ホルモン;睡眠剤;免疫抑制剤;筋弛緩剤;N-メチルDアスパルテート(NMDA)受容体アンタゴニスト;副交感神経遮断薬;副交感神経刺激薬;プロスタグランジン;タンパク質、ペプチド;覚醒剤;鎮静剤;トランキライザー;アドレナリンである。
【0035】
本発明の範囲で特に好ましい有効成分は、N-メチル-D-アスパルテート(NMDA)受容体アンタゴニスト、特にデキストロメトルファンもしくはケタミン、またはその医薬として有効な誘導体の形態であることが好ましい。ケタミンは、ラセミ体として使用することができるが、本発明による剤形でS-ケタミンとして組み込まれることが好ましい。適切な医薬として有効なケタミンの誘導体は、例えば、S-ケタミンではなくS-デヒドロノルケタミンまたは(S,S)-6-ヒドロキシノルケタミンである。記載の有効成分の、医薬として許容されるその塩の使用もまた、本発明によって含まれる。
【0036】
投与単位ごとの有効成分の含有量は、最大100mg、好ましくは最大50mg、特に好ましいのは最大30mg、最も好ましいのは最大20mgである。一方、投与単位ごとの有効成分の最小含有量は、好ましくは5mg、より好ましくは10mg、最も好ましいのは12mgとなるべきである。適用に応じて有効成分量は、上記の数値の高い範囲にあり、例えば50~100mgまたは30~50mgを超える範囲でありうる。
【0037】
有効成分量は、剤形面積と関連して設定され、便宜上1~15mg/cm2であり、好ましくは2.8~10mg/cm2である。
【0038】
本発明による剤形中の有効成分含有量は、比較的広範囲に変動してよい。20~60重量%の範囲の含有量は、剤形の乾燥重量に基づいて適切であると特定される。1つの実施形態において、剤形における有効成分の割合は、むしろより低い範囲で、例えば、有効成分が強く不快な味を有している場合には、その味はより多い量の矯味剤で補われなれければならない。この場合、21~30重量%、特に22~28重量%の範囲は、適切な有効成分の割合として特定することができる。別の実施形態では、本発明による剤形における
有効成分の割合は、やや高い範囲にあり、42~55重量%の含有量、特に45~52重量%の含有量が特に好まれるものとして特定される。
【0039】
本発明による剤形は、医薬有効成分に加えて例えば剤形が摂取されるときに色および味の感覚に影響するように、さらに添加剤も含有することができる。
【0040】
この点に関して特に適切な添加剤は、例えば苦い味の有効成分を摂取するときに改善された味覚を与える矯味剤である。より好ましい矯味剤は、好ましくはイオン交換樹脂である。
【0041】
本発明による剤形において使用するのに好ましいイオン交換樹脂は、不水溶性であり、pH値が適切な状況下でイオン性であるかまたはイオン化できる共有結合官能基を含有する、薬理学的に不活性な有機または無機のマトリックスからなる。有機マトリックスは、合成(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルホン酸、ジビニルベンゼンスルホン酸のポリマーまたはコポリマー)または半合成(例えば、改変されたセルロースおよびデキストラン)であってよい。マトリックスも、例えば、イオン基の付加によって改変されたシリカゲルなどの無機であってよい。共有結合されるイオン基は、強酸性であっても(例えばスルホン酸)、弱酸性であっても(例えばカルボン酸)、強アルカリ性であっても(例えば第四級アンモニウム)、弱アルカリ性であっても(例えば第一級アミン)または酸性基およびアルカリ基の組み合わせであってもよい。イオン交換クロマトグラフィーにおける使用、および水の脱イオン化などの用途に適切なそれらの種類のイオン交換体は、一般に、本発明による剤形における使用に適切である。
【0042】
イオン交換樹脂は、好ましくは架橋ポリスチレンを基本とする樹脂である。ポリスチレンは、ポリスチレンを架橋することができる二官能性化合物から選択される架橋剤で架橋される。架橋剤は、好ましくはジビニルまたはポリビニル化合物である。架橋剤は、最も好ましくはジビニルベンゼンである。
【0043】
一般的に、ポリスチレンは、総ポリスチレンに基づいて、便宜上、約3~約20重量%、好ましくは約4~約16重量%、より好ましくは、約6~約10重量%の範囲、最も好ましくは約8重量%に架橋される。ポリスチレンは、既知の手段による架橋剤を使用して架橋される。
【0044】
本発明の範囲内において、矯味剤として特に適切なイオン交換樹脂は、1グラムあたり約6ミリ当量(meq/g)より小さい、好ましくは約5.5meq/gより小さい交換容量を有している。
【0045】
イオン交換粒子の大きさは、好ましくは約20~約200マイクロメートルの範囲に収まるべきである。下限値かなり低い粒子サイズは、加工のあらゆる工程で取扱いが困難である。上限値よりかなり大きい粒子、例えば球形で直径が最大約1000マイクロメートルである市販のイオン交換樹脂は、液状剤形でざらざらし、乾燥脱水サイクルを受けると破損する傾向がある。
【0046】
本発明において使用される代表的な樹脂には、AMBERLITE IRP-69(Dow Chemicalより入手可能)およびDow XYS-40010.00(Dow Chemical Companyより入手可能)を含む。双方ともポリスチレンから形成された、8%ジビニルベンゼンで架橋されたスルホン酸ポリマーであり、約4.5~5.5meq/g乾燥樹脂(H+形)のイオン交換容量を有する。それらの主な相違点は、その物理学的形態にある。AMBERLITE IRP-69は、上位製品であるAMBERLITE IRP-120のより大きい面積の球面をミリングすることによって
製造された、47~149マイクロメートルの範囲の寸法の不規則な形状の粒子を含む。Dow XYS-40010.00製品は、45~150マイクロメートルの範囲の寸法を有する球状粒子を含む。さらに使用可能な交換樹脂である、Dow XYS-40013.00は、8%ジビニルベンゼンで架橋され、第四級アンモニウム基で官能化されたポリスチレンからなるポリマーである。その交換容量は、通常約3~4meq/g乾燥樹脂の範囲内である。さらに適切な樹脂は、AMBERLITE IRP-64である。
【0047】
しかしながら、それほど好ましくない実施形態では、矯味剤は、イオン交換樹脂でなくてもよい。これらの実施形態では、矯味剤は、三ケイ酸マグネシウムまたはEUDRAGIT E(Evonik)などのポリマー、および/またはエチルセルロースなどのセルロースであってよい。
【0048】
本発明による剤形に組み込まれる矯味剤の含有量は、医薬有効成分が不快な、例えば苦味を有するかどうかに基づく。矯味剤の含有量は、一般的に0.3~45重量%の範囲内で、特に0.5~27重量%の範囲内で、それぞれの場合、剤形の乾燥重量に基づいて変動する。
【0049】
本発明による剤形は、味覚を変えるために矯味剤に加えて、または代替的に甘味料を含有することができる。適切な合成甘味料は、例えばスクラロース、アスパルテーム、シクラメート、サッカリン、ネオヘスペリジン、ソーマチン、ステビア、およびアセスルファム、ならびにその塩である。
【0050】
本発明による剤形はまた、1つまたはそれ以上の香味料、精油、またはメンソールを含有してもよい。
【0051】
本発明による剤形の製造の場合に、発泡体に心地よい酸味風味を与えるため、1種またはそれ以上の酸をさらに混合することができる。そのような酸の例には、なかでも、クエン酸、乳酸、酢酸、安息香酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、および酒石酸などがある。酸の添加は、さらに、発泡体のpH値を軽減させるために必要であるかまたは望ましい場合がある。これは、この剤形に含有される有効成分がアルカリ状態で比較的非水溶性である場合、または有効成分がアルカリ状態で安定的でない場合に特に望ましい。
【0052】
乾燥発泡体の審美特性を改善し、乾燥発泡体の脆弱性または脆性を軽減させるために、本発明による剤形に、特に発泡剤、減衰性付与剤もしくは湿潤剤および/または可塑剤を添加することもできる。例えば、そのような薬剤には、とりわけグリセリン、プロピレングリコール、およびポリグリセリンエステルがある。可塑剤の含有量は、便宜的に剤形の乾燥重量に基づいて、2~10重量%、特に3~8重量%、最も好ましくは4~6重量%の範囲で変動する。
【0053】
一つの実施形態において、発泡体形成のためのマトリックスポリマーもしくはポリマーマトリックス、または乾燥前後の得られた発泡体に、乾燥前後の発泡体の安定を改善させるための、界面活性成分と界面活性剤のどちらも添加することができる。置換されたソルビタン誘導体、とりわけ「Tween」(ICI)領域または「Span」領域(TCI)からの置換されたソルビタン誘導体は、適切な界面活性成分の例と考えることができる。また、界面活性成分は発泡安定剤ポリマーの形態で存在するか、(例えばマトリックスポリマーとして挙げられていなかった、セルロース系ポリマーまたはポリアクリレート系ポリマー)またはカゼインもしくはゼラチンの形態で存在することができる。
【0054】
本発明による剤形における界面活性剤の割合は、主にマトリックスポリマーが発泡体の
安定のために界面活性剤を必要とするかどうかに依存し、例えばポリビニルアルコールなどの乳化するマトリックスポリマーの場合には、あてはまらない。剤形の乾燥重量に基づいて、0~15重量%の範囲を本発明による剤形に、適切な界面活性剤の割合として特定することができる。
【0055】
一つの実施形態において、マトリックスポリマーは、発泡体を安定させるための、界面活性成分と界面活性剤のどちらも必要としない。この場合、本発明による剤形における界面活性成分および/または界面活性剤の割合は、剤形の乾燥重量に基づいて、好ましくは0.5重量%未満、特に好ましくは0.1重量%未満である。マトリックスポリマーとして先に挙げた物質は、これらのうちの一部は界面活性特性を有しているが、本発明の文脈において界面活性成分であると考慮されないことに注目されたい。このことは、先に挙げた界面活性成分または界面活性剤を発泡体組成物に組み込む必要がこの場合にないので、有利でさえある。
【0056】
剤形に所望の色を与えるために、剤形に染料または着色料を組み込むことができる。適切な染料は、例えば、FD&C Red 40の商品名でも入手可能な、Allurarot ACのようなアゾ染料である。
【0057】
とりわけ、以下の群の物質は、さらに可能な添加剤である:カルボキシメチルセルロース、アラビアゴム、メチルセルロース、ペクチン、加工および未加工デンプン、ゼラチン、動物および/または植物タンパク質、鶏卵白、アルギネート、Brij(乳化剤)、クエン酸エチル、オクチルガレート、1,2-プロピレングリケート(1,2-propylene glycate)、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、結晶セルロース、アエロジル(Aerosil)、レシチン、トゥイーン(Tween)、プロピルガレート、アミロガム(amylogam)。
【0058】
さらに、糖(または糖類の混合物)または別の炭水化物材料を発泡体中に溶解させることができる。糖および炭水化物は、乾燥後、発泡体が有する質量を増加させる。さらに、糖または別の炭水化物の乾燥物および結晶は、乾燥させた発泡体に強度と安定性を加える。糖および他の炭水化物は、乾燥させた発泡体に甘みをもたらすか、または、そうでなければ発泡体の感覚刺激特性を改善することができる。本目的に使用可能な糖の例には、とりわけ、マルトース、ラクトース、スクロース、デキストロース(グルコース)、およびトレハロース、ならびにマニトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトールなどの糖アルコールがある。他の炭水化物の例は、マルトデキストリン、グルコースシロップ(トウモロコシ由来)、可溶性デンプンなどである。
【0059】
添加剤の含有量は、明確な含有数値が上記に特定されていない限りにおいて、剤形の乾燥重量に基づいて、0.01~10重量%、特に0.1~8重量%の範囲にあるべきである。
【0060】
前述の成分に加え、本発明による剤形は、水分(水)を含有していてよい。2~15重量%、特に5~12重量%の範囲の割合が、適切な含水率として特定される。
【0061】
本発明は、口腔部位において有効成分を放出する経口剤形としての使用を主に意図している。しかしながら、この剤形は、他の体の開口部または体腔に導入される剤形としても使用され、その部位で有効成分を放出することもできる。この点に関して、例えば、直腸内投与、膣内投与、鼻腔内投与への剤形が可能である。
【0062】
剤形から放出される有効成分は、例えば口腔粘膜などを介して適用部位で吸収されるか、または、さらに送達され、別の部位で(例えば、口腔内で放出された有効成分を嚥下す
ると、胃腸管で)吸収されるかのいずれかである。本発明による剤形が、適用部位(例えば口腔)で残留する時間または崩壊する時間は、好ましくは1秒~5分の範囲、より好ましくは2秒~1分の範囲、さらにより好ましくは、3~10秒の範囲、最も好ましくは3~5秒の範囲である。
【0063】
剤形が、有効成分としてケタミンまたはS-ケタミンを含有する場合、この剤形を、ケタミンまたはS-ケタミンが軽減を与える愁訴の処置のために便宜上使用することができる。したがって、本発明におけるもう一つの態様は、痛み、好ましくは慢性痛、およびさらに好ましくは、慢性突破痛、複合性局所疼痛症候群、耐性腫瘍痛(resistant
tumor pain)、神経因性痛、外傷後症候群痛、虚血肢痛(ischamic
limb pain)および急性痛を含む群から選択される痛みの治療的処置または予防的処置のための、ケタミンもしくはS-ケタミン、または医薬として許容されるその塩を含有する、上記の仕様による剤形に関する。代替的に、本発明は、鬱病の治療的処置または予防的処置のための、ケタミンもしくはS-ケタミン、または医薬として許容されるその塩を含有する、前述の仕様による剤形に関する。これらの剤形には、舌下錠の適用が特に好ましい。なぜならケタミンを経粘膜摂取するよう迅速に利用できるからである。
【0064】
剤形が、有効成分としてデキストロメトルファンを含有する場合、この剤形は、デキストロメトルファンが軽減を与える愁訴の処置のために、便宜上使用することができる。したがって、本発明におけるもう一つの態様は、咳、感情調節障害、または筋萎縮性側索硬化症の治療的処置または予防的処置のための、デキストロメトルファン、または医薬として許容されるその塩を含有する前述の仕様による剤形に関する。
【0065】
剤形が、有効成分としてアドレナリンを含有する場合、この剤形は、アドレナリンが軽減を付与する愁訴の処置のために、便宜上使用することができる。したがって、本発明におけるもう一つの態様は、アナフィラキシーショックの治療的処置または予防的処置のための、アドレナリンまたは医薬として許容されるその塩を含有する前述の仕様による剤形に関する。
【0066】
本明細書による剤形は、便宜上、本明細書の以下に記載の方法を使用して製造することができる。
【0067】
最初に、少なくとも1種の水溶性皮膜形成性ポリマーおよび少なくとも1種の有効成分を含有する溶液または分散液を製造する。この溶液または分散液は、濃縮液または粘稠マスであってもよく、次いで、ガスおよびガス混合物(例えば空気)を導入することによって発泡する。これは、分散機構または発泡機段だけでなく、他の方法、例えば超音波によっても得ることができる。特に、不活性ガス、例えば窒素、二酸化炭素、もしくはヘリウム、またはその混合物なども、ガスとして適切である。
【0068】
このように製造した発泡体または気泡含有(またはガス気泡含有)マスを安定させるために、発泡体製造の前もしくは発泡体製造中に、発泡安定剤を加えることができる。この目的のために適切な薬剤、例えば界面活性剤は、当業者に既知である。最後に、気泡含有マスまたは発泡体を適切な基材上でフィルムの形態または層の形態で延展(spread)し、次いで乾燥させる。
【0069】
「乾燥」は、溶媒、特に水を剤形から除去するという意味で理解されるべきである。この目的のために、水などのすべての溶媒が剤形から除去される必要はなく、むしろ発泡体が固化するまでに溶媒の大部分が剤形から除去されれば、十分である。したがって剤形は、乾燥後に、本発明による剤形のために前述された通りの残留水分量を有していてもよい。
【0070】
溶媒除去の結果、乾燥中に発泡体は固化し、形成された空隙は、恒久的な構造を維持する。所望の表面寸法または幾何学的形状を有するウェハは、乾燥前に発泡したコーティングマスを適切なモールドに注入することによって、またはより大きな二次元ピースから個々のウェハを型抜きすることによって得られる。
【0071】
こうして得られた、有効成分を含有する剤形は、本発明による特性および適応性を有する。
【0072】
作製された空隙の形状、数、およびサイズは、異なる方法パラメータの手段によって、例えばポリマーのタイプおよび濃度、ポリマーマスの粘度、発泡プロセスの制御、発泡安定剤の選択などによって影響されることがある。
【0073】
前述の方法の代わりに、記載された溶液または分散液の製造に使用される溶媒と混和性ではない疎水性溶媒を導入することによって、ポリマーマトリックス内部の空隙を形成する方法によって、本発明による剤形を製造することが可能である。
【0074】
本明細書によって乳剤が製造され、その乳剤は微細に分散された小滴の形態で疎水性溶媒を含有する。
【0075】
その後の乾燥中に溶媒を除去することによって、ポリマーマトリックス内に、小滴形状または気泡形状の空隙が残留する。二相系の場合、溶媒は最初に内相から除去されなければならない。
【0076】
前述の方法を変形形態では、助剤を、ポリマー含有および有効成分含有の溶液または分散液に添加すると、1種のガスまたは複数のガスが形成され、それによりマスを起泡させるという方法でも前述の空隙を製造することができる。ガスの発生によるこの発泡は、ポリマーマスの製造中、または基材上にこのマスをコーティングする、またはその後の乾燥プロセスの間にのみに起こり得る。ガス形成に適切な材料、または材料の混合物は、当業者に既知である。起泡はまた、既に溶解しているガスの膨張によってももたらすことができる。特に、窒素、二酸化炭素、もしくはヘリウム、またはその混合物などの不活性ガスをガスとして使用することができる。
【0077】
本発明による剤形を製造する場合に、代替的に、マトリックスポリマーまたはポリマー混合物のメルトから始めることができる。原則的に、従来の技術で既知のホットメルトコーティングマスの場合と同様に、加工を行う。
【0078】
ガス、またはガス混合物は、前述の方法の1つによって、メルトを発泡させるように記載のポリマーメルトの中に導入される。次にメルトを適切な基材の上に延展するもしくは押し出すか、または型に注入し、次いで静置して冷却または固化させる。供給された有効成分が、ポリマーメルトの融点において不安定であるかまたは揮発性である場合には、メルトを加工することはできない。必要であれば、融点を下げる助剤をポリマーメルトに添加してもよい。原則的に請求項1に記載の条件を満たすのであれば、従来の技術である既知のホットメルトコーティングマスを使用してもよい。
【0079】
前述の製造方法のさらなる変更によって、ポリマーマトリックスは最初にブロックの形態で製造される。次いで、すなわち乾燥後または固化後に所望の剤形は、カッティングによってこのブロックから分離される。
【0080】
本発明による剤形が、口腔における薬剤の投与、または直腸内投与、膣内投与、もしく
は鼻腔内投与に適切であることは、有利である。薬剤は、ヒト用および動物用の薬物にも使用することができる。
【実施例0081】
製造例
デキストロメトルファンを含む発泡したウェハを、以下の組成物を用いて製造した:
ポリビニルアルコール(Mowiol 4-88) 38.00重量%
赤染料 0.20重量%
サッカリンナトリウム(甘味料) 1.0重量%
スクラロース(甘味料) 2.0重量%
グリセリン(可塑剤) 4.5重量%
香味料 6.0重量%
有効成分 19.7重量%
矯味剤 28.6重量%
【0082】
固化発泡体を製造するために、まず水中のポリビニルアセテートのプレ溶液を製造し、その溶液に有効成分を分散させた。次いで、空気を含ませて分散液を起泡し、分散液をドクターブレード/コーティングボックスを使用してポリエチレン担体フィルムに塗布した。次いで発泡体を乾燥キャビネット内で約70℃で15分間乾燥し、固化発泡体を得た。こうして製造した発泡体は200g/m2の単位面積質量を有した。
Ketamine HCLを有効成分として使用し、以下の表1の特定の組成物を実施例1に記載の仕様に従って加工し、固化発泡体を形成した。並行して組成物を起泡せずに加工し、比較フィルムを形成した。
製造された発泡体および比較フィルムの崩壊を決定した。発泡体は、約13秒(6回の測定値の平均値)の崩壊時間を測定した。比較フィルムは、はるかに長い約38秒の崩壊時間を有した。