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特開2022-9591二酸化塩素吸着による亜塩素酸水製造法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022009591
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】二酸化塩素吸着による亜塩素酸水製造法
(51)【国際特許分類】
   A01N 59/08 20060101AFI20220106BHJP
   C01B 11/08 20060101ALI20220106BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
A01N59/08 A
C01B11/08
A01P3/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021175639
(22)【出願日】2021-10-27
(62)【分割の表示】P 2019180146の分割
【原出願日】2014-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2013263945
(32)【優先日】2013-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】394014423
【氏名又は名称】三慶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100118371
【弁理士】
【氏名又は名称】▲駒▼谷 剛志
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】合田 学剛
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA01
4H011AA03
4H011BB18
(57)【要約】
【課題】長時間にわたって水中で亜塩素酸を安定して維持できる亜塩素酸水の新規製造方法の提供。
【解決手段】二酸化塩素ガス(ClO2)を無機酸、無機酸塩、有機酸又は有機酸塩をいずれか単体、または2種類以上の単体もしくはこれらを併用したものにトラップ(trap、捕捉ないし吸着)させることによって、遷移状態を作り出し、分解反応を遅らせることで長時間にわたって亜塩素酸(HClO2)を水に安定して維持する方法。例えば、ガス洗浄装置2にガス洗浄液としてH2O、NaOH、H2O2が充填され、二酸化塩素ガス貯蔵タンク3に二酸化塩素ガスが準備され、亜塩素酸水製造タンク1に、炭酸ナトリウム、リン酸水素二カリウム、4ホウ酸ナトリウムが充填され、エアーポンプ4を稼働させて亜塩素酸水製造タンク1に二塩化塩素を流入させ、亜塩素酸水を製造する方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜塩素酸水の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化塩素吸着による亜塩素酸水製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
亜塩素酸水は、食品添加物として注目されている。しかしながら、亜塩素酸水は製造が難しく、製造できても通常の状態では保存が利かないという問題がある。
【0003】
他方本発明者は、亜塩素酸水の製法を見出し、大腸菌に対する殺菌効果も確認した上で出願している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/026607号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、亜塩素酸水の新規製法に関する技術を見出し、これを提供する。
【0006】
1つの局面では、本発明は、二酸化塩素ガス(ClO)を無機酸、無機酸塩、有機酸または有機酸塩をいずれか単体、または2種類以上の単体もしくはこれらを併用したものにトラップ(trap、捕捉ないし吸着)させることによって、遷移状態を作り出し、分解反応を遅らせることで長時間にわたって亜塩素酸(HClO)を水に安定して維持することができる方法を提供する。これらの方法は好ましい実施形態では、上記水溶液に、さらに、無機酸、無機酸塩、有機酸または有機酸塩を単体または2種類以上の単体もしくは、これらを併用したものを加えることを利用することができる。
【0007】
上記無機酸としては、炭酸、リン酸、ホウ酸または硫酸が挙げられる。また、無機酸塩としては、炭酸塩、水酸化塩のほか、リン酸塩またはホウ酸塩が挙げられ、更に具体的にいえば、炭酸塩は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等、水酸化塩は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等、リン酸塩は、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム等、ホウ酸塩は、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム等を用いるとよい。さらに、上記有機酸としては、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、酢酸または乳酸等が挙げられる。また、有機酸塩では、コハク酸ナトリウム、コハク酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウムまたは乳酸カルシウム等が適している。
【0008】
本発明は以下をも提供する。
(1)二酸化塩素(ClO)を、無機酸、無機酸塩、有機酸もしくは有機酸塩のうちのいずれか単体もしくは2種類以上の単体、またはこれらを併用したものを含む水溶液Aに吸着(Trap)させる工程を包含する、亜塩素酸水の製造方法。
(2)前記二酸化塩素を過酸化水素の共存下で加える工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(3)前記水溶液AのpHは11.0以下6.0以上である、項目1または2に記載の方法。
(4)前記水溶液AのpHは10.8以下10.2以上である、項目1~3のいずれかに記載の方法。
(5)前記水溶液AのTALは、20~2000であり、ここでTALは、pH11.0以下の初発のpHからpH4までの0.1N-HClの滴定量で求められる、項目1~4のいずれかに記載の方法。ここのTALは二酸化塩素ガスを吹き込む前の水溶液のTALであり、吹き込んだ後に出来上がった水溶液は、亜塩素酸水である。このときの水溶液は、水溶液Aと比較してTALが減少してしまう。この水溶液に、本発明で指定されるような特定の緩衝剤(水溶液B)を入れることで、亜塩素酸と亜塩素酸イオンが安定する。な
お、水溶液Aの初発のpHを低く抑え、かつ、TALの範囲を制限する理由は、水酸化ナトリウム特有の強アルカリ性の緩衝力を排除し、その上で弱酸性域~弱アルカリ性域にかけて緩衝力を持たせた水溶液に限定するためである。
(6)前記二酸化塩素(ClO)は気体として提供される、項目1~5のいずれかに記載の方法。
(7)前記加える工程の後、無機酸、無機酸塩、有機酸もしくは有機酸塩のうちのいずれか単体もしくは2種類以上の単体、またはこれらを併用したものを含む水溶液Bをさらに加える工程を包含する、項目1~6のいずれかに記載の方法。
(8)前記無機酸は、炭酸、リン酸、ホウ酸または硫酸である、項目1~7のいずれかに記載の方法。
(9)前記無機酸塩は、炭酸塩、水酸化塩、リン酸塩またはホウ酸塩である、項目1~8のいずれかに記載の方法。
(10)前記炭酸塩は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムまたは炭酸水素カリウムである、項目9に記載の方法。
(11)前記水酸化塩は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムまたは水酸化バリウムである、項目9に記載の方法
(12)前記リン酸塩は、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウムまたはリン酸二水素カリウムである、項目9に記載の方法。
(13)前記ホウ酸塩は、ホウ酸ナトリウムまたはホウ酸カリウムである、項目9に記載の方法。
(14)前記有機酸塩は、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、酢酸または乳酸である、項目1~13のいずれかに記載の方法。
(15)前記有機酸塩は、コハク酸ナトリウム、コハク酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウムまたは乳酸カルシウムである、項目1~14のいずれかに記載の方法。
(16)前記水溶液Bを加えた後の液のpHは3.2以上7.0未満である、項目4~15のいずれかに記載の方法。
(17)前記水溶液Bを加えた後の液のpHは4.0以上7.0未満である、項目4~16のいずれかに記載の方法。
(18)前記水溶液Bを加えた後の液のpHは5.0以上7.0未満である、項目4~17のいずれかに記載の方法。
(19)前記二酸化塩素ガスは、0.8~1.0%で存在する、項目1~18のいずれかに記載の方法。
(20)二酸化塩素(ClO)を、無機酸、無機酸塩、有機酸もしくは有機酸塩のうちいずれか単体もしくは2種類以上の単体、またはこれらを併用したものを含む水溶液Aにトラップ(Trap)させる工程を包含する方法によって製造される、亜塩素酸水。
(21)前記方法が、前記二酸化塩素を過酸化水素の共存下で加える工程をさらに包含する、項目20に記載の亜塩素酸水
(22)前記水溶液AのpHは11.0以下6.0以上である、項目20または21に記載の亜
塩素酸水。
(23)前記水溶液AのpHは10.8以下10.2以上である、項目20~22のいずれかに記載の亜塩素酸水。
(24)前記二酸化塩素(ClO)は気体として提供される、項目20~23のいずれかに記載の亜塩素酸水。
【0009】
本発明のさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解していただければ、当業者に認識される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、有用な物質である亜塩素酸を長期間水溶液中に安定させる技術が提供され、取り扱いに便利な亜塩素酸水として、食品産業に留まらず、福祉や介護施設、更には、医療施設等、多くの現場で幅広く活用できる可能性が高まった。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施例で使用した製造プラントの模式図を示す。それぞれの符号は以下のとおりである。1:亜塩素酸水製造タンク、2:ガス洗浄装置、3:二酸化塩素ガス貯蔵タンク、4:エアーポンプ、5:エアー流入コック。
図2】実施例1におけるUVスペクトルを示す。双瘤が見られる。
図3】実施例2におけるUVスペクトルを示す。双瘤が見られる。
図4】実施例3におけるUVスペクトルを示す。双瘤が見られる。
図5】実施例4におけるUVスペクトルを示す。双瘤が見られる。
図6】実施例5におけるUVスペクトルを示す。双瘤が見られる。
図7】実施例6におけるUVスペクトルを示す。双瘤が見られる。
図8図8は、実施例7で行った実施例2と実施例4で製造した亜塩素酸水製剤の安定性をコントロールと比較して示したものである。横軸は日数、縦軸は亜塩素酸濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられている意味で用いられることが理解されるべきである。従って、他に定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
本明細書において、「亜塩素酸水」とは、殺菌剤として使用される亜塩素酸(HClO)を含む水溶液のことをいう。本発明の亜塩素酸水は、遷移状態を作り出し、分解反応を遅らせることで長時間にわたって亜塩素酸(HClO)を安定的に維持することができる。亜塩素酸水の検体を分光光度計により測定すると、UVスペクトルにおいて波長240~420nmの間に260nm付近でピークを表す酸性亜塩素酸イオン(H+ClO )を含む吸収部と350nm付近にピークを表す二酸化塩素(ClO)を含む吸収部を2つ同時に確認できる場合、すなわち、双瘤を示す場合、亜塩素酸水の存在を認めることができる。この際に亜塩素酸(HClO)を主体として、二酸化塩素(ClO)、および酸性亜塩素酸イオン(H+ClO )のサイクル反応が同時進行していると考える。
【0013】
本明細書において、用語「亜塩素酸水」は「亜塩素酸水製剤」を包含し得る。本発明の製法で製造した亜塩素酸水を用いて、水溶液Bを配合することによって亜塩素酸水製剤を製造することができる。亜塩素酸水製剤の代表的な組成として、これに限定されることはないが、亜塩素酸水(5%品)60.00%(w/v)(亜塩素酸の濃度としては50000ppmである。)、リン酸二水素カリウム1.70%(w/v)、水酸化カリウム0.5
0%(w/v)および精製水37.8%(w/v)のものを配合し、使用することができる(出願人より「オウトゥロックスーパー」という名称で販売されている。)が、この配合組成の場合は、亜塩素酸水は、0.25%(w/v)~75%(w/v)、リン酸二水素カリウムは、0.70%(w/v)~13.90%(w/v)、水酸化カリウムは、0.10%(w/v)~
5.60%(w/v)であっても良い。リン酸二水素カリウムの代わりにリン酸二水素ナト
リウムを、水酸化カリウムの代わりに水酸化ナトリウムを使用しても良い。
【0014】
本明細書において亜塩素酸水の「安定」とは、亜塩素酸(HClO)が維持されている状態のことをいう。
【0015】
本明細書において「抗菌(作用)」とは病原性や有害性や感染性を有する糸状菌、細菌、ウイルスなどの微生物の増殖を抑制することをいう。抗菌作用を有するものを抗菌剤という。
【0016】
本明細書において「殺菌(作用)」とは病原性や有害性や感染性を有する糸状菌、細菌、ウイルスなどの微生物を死滅させることをいう。殺菌作用を有するものを殺菌剤という。
【0017】
本明細書において「除菌(作用)」とは病原性や有害性や感染性を有する糸状菌、細菌、ウイルスなどの微生物を除去することをいう。除菌作用を有するものを除菌剤という。
【0018】
本明細書において「消毒(作用)」とは病原性や有害性や感染性を有する糸状菌、細菌、ウイルスなどの微生物を消毒することをいう。消毒作用を有するものを消毒剤という。
【0019】
抗菌作用、殺菌作用、除菌作用、消毒作用を総称して、殺傷(作用)と呼び、本明細書では特に限定しない限り、抗菌(作用)、殺菌(作用)、除菌(作用)、消毒(作用)をも含む広い概念で用いる。したがって、抗菌作用や、殺菌作用や、除菌作用や、消毒作用を有するものを総称して本明細書における「殺菌剤」といい、本明細書において通常使用する場合は、抗菌作用や、殺菌作用や、除菌作用や、消毒作用に該当する内容をも有する薬剤と理解される。
【0020】
本明細書において、製造される亜塩素酸水とともに用いられる物品は、亜塩素酸水を含浸させて殺菌等の目的に使用されうる任意の物品であり、医療デバイス等も含まれ、シート、フィルム、パッチ、ブラシ、不織布、ペーパー、布、脱脂綿、スポンジ等をあげることができるが、あくまでもそれらに限定されない。また、亜塩素酸水を含浸させることができる限りどのような材料を用いてもよい。
【0021】
本明細書において「TAL」とは試料中のアルカリ度を測定する為に、試料をpH4.0になるまで0.1mol/L塩酸-酸標準液を滴定し、試料100gのpHを4.0にする為に必要な0.1mol/L塩酸が1mLの時、アルカリ度(TAL)を1とする。pH4.0は炭酸ナトリウムの第二中和点である。
【0022】
(亜塩素酸水およびその製造例)
本発明で使用される亜塩素酸水は、本発明者らが見出した特徴や機能を有するものである。
【0023】
本発明は、特許文献1に記載されるような既知の製法等とは異なる方法に関するものである。
【0024】
すなわち、本発明の特徴は、従来塩素酸ナトリウム水溶液に、該水溶液のpH値を2.3から3.4内に維持させることができる量及び濃度の硫酸またはその水溶液を加えて反応させることにより、塩素酸を発生させ、次いで該塩素酸の還元反応に必要とされる量と同等、もしくはそれ以上の量の過酸化水素を加えていたが、塩素酸に過酸化水素を加えるのではなく、二酸化塩素ガス(ClO)を、無機酸、無機酸塩、有機酸もしくは有機酸塩のうちのいずれか単体もしくは2種類以上の単体、またはこれらを併用したもの(水溶液A)に加える工程を包含する、亜塩素酸の製造方法を提供することによって、達成したものである。二酸化塩素のガス(気体)を原料に用いることで、高いアルカリ度をもって、亜塩素酸イオンを発生させ、その際に、pHが中性以下にまで下がることから、亜塩素酸イオンの一部が亜塩素酸の状態に移行することで、遷移状態を作り出し、その結果、分解反応を遅らせることで長時間にわたって亜塩素酸(HClO)を安定して維持させることができるというメリットを享受することができる。二酸化塩素(ClO)は、無機酸、無機酸塩、有機酸もしくは有機酸塩のうちのいずれか単体もしくは2種類以上の単体、またはこれらを併用したものを含む水溶液Aにトラップ(Trap)させることによってこのような効果が達成される。トラップとの表現は、吸着ないし捕捉等、好ましくは気体の二酸化塩素が無機酸、無機酸塩、有機酸もしくは有機酸塩のうちのいずれか単体もしくは2種類以上の単体、またはこれらを併用したものと共存するような状態になる限りどのような操作を行ってもよい。そのような操作としては、一般的に、水溶液Aに直接吹き込む方法、もしくは、上部から水溶液Aを霧状に噴霧し、下部から二酸化塩素ガスを放出することで、吸着する方法、吹付等が挙げられるが、あくまでもそれらに限定されない。理論に束縛されることを望まないが、図1で示されるような製造プラントを用いて製造した本発明の亜塩素酸水(実施例1~6を参照)は、実施例7に示されるように、少なくとも冷蔵(4℃)で10日間、安定した殺菌効果を示すことが証明されており、本発明は水溶液中で亜塩素酸が安定しているもの、いわゆる亜塩素酸水の製造法を提供することが理解される。
【0025】
本発明の製法で製造された亜塩素酸水に、水溶液Bを配合することによって、亜塩素酸水製剤を製造することができる。そのような製剤の代表的な組成として、あくまでもこれに限定されることはないが、例えば、亜塩素酸水(5%品)60.00%(w/v)(亜塩
素酸の濃度としては50000ppmである。)、リン酸二水素カリウム1.70%(w/v)、水酸化カリウム0.50%(w/v)および精製水37.8%(w/v)のものを配合し
、使用することができる。(出願人より「オウトゥロックスーパー」という名称で販売されている。)しかも、この配合組成の場合は、亜塩素酸水は、0.25%(w/v)~75
%(w/v)、リン酸二水素カリウムは、0.70%(w/v)~13.90%(w/v)、水酸
化カリウムは、0.10%(w/v)~5.60%(w/v)であっても良い。リン酸二水素カリウムの代わりにリン酸二水素ナトリウムを、水酸化カリウムの代わりに水酸化ナトリウムを使用しても良い。この薬剤は、酸性条件下で、有機物との接触による亜塩素酸の減衰を低減させているが、殺菌効果は維持している。かつ、塩素ガスの発生が軽微であり、塩素と有機物とが反応する際に発生する塩素臭の増幅をおさえるという特徴を有する。
【0026】
従来の製法では、亜塩素酸水は、塩素酸ナトリウム水溶液に、該水溶液のpH値を3.4以下に維持させることができる量および濃度の硫酸またはその水溶液を加えて反応させることにより、塩素酸を発生させ、次いで該塩素酸の還元反応に必要とされる量と同等、もしくはそれ以上の量の過酸化水素を加えることにより、生成するとされていた。本発明は、二酸化塩素ガスを用いることが大きく異なり、また、それにより、遷移状態を作り出し、分解反応を遅らせることで長時間にわたって亜塩素酸(HClO)を安定的に維持することができるようになった点に相違点が見られるものである。このほか、二酸化塩素を原料として利用することで、二酸化塩素ガスを発生させるための原料を特定する必要がないという特徴がある。例えば、亜塩素酸ナトリウムに酸を加えると、酸性化亜塩素酸ナトリウム(ASC)のほかに二酸化塩素ガスが発生する。しかしながら、この二酸化塩素ガスを利用して亜塩素酸水を製造することができる。亜塩素酸ナトリウムは、アルカリ度が高く、アルカリ物質と一体化して安定している物質であり、殺菌剤として利用するには、酸性化亜塩素酸ナトリウム(ASC)の状態にしなければ効果は得られない。しかし、この方法を用いることで、液体品である酸性化亜塩素酸ナトリウムとは別に発生した、二酸化塩素のガス化物を原材料に用いることで、液体品の亜塩素酸水の製造につなげることもできる。また更に、食塩から亜塩素酸水を製造する際には、電気分解を行う過程があるために、食塩中の臭化物イオンが、発がん性物質である臭素酸に変化し、この時に発生する臭素酸が亜塩素酸水に混入してしまう恐れがあった。しかし、本発明の製法を用いれば、気体である二酸化塩素ガスを用いるため、このような発がん性物質が混入する恐れがなくなった。二酸化塩素ガスを原料として用いれば、それ以前の過程を考慮する必要がなくなるために、より亜塩素酸水を製造しやすくなるという特徴もある。加えて、亜塩素酸ナトリウムからの製造方法では、二酸化塩素ガスの発生が好ましくないため、アルカリ度を高めることが望ましいとされており、pHは14に近ければ近い方が好ましいとされていた。したがって、中性から弱アルカリ、例えば、本発明で示されているpH6.0~11.0台までの水溶液Aを使用して亜塩素酸水を製造する本方法と正反対のことを、亜塩素酸ナトリウムの製造法では行われていたといえる。
【0027】
1つの実施形態では、前記二酸化塩素ガス(ClO)は気体として提供される。具体的な実施形態では、二酸化塩素ガス(ClO)は気体であり、0.8~1.0%の濃度(たとえば、許容範囲は、0.9%±0.1%)で存在するものが使用される。1つの好ましい濃度は0.88%であるがこれに限定されない。高濃度のものは、爆発性があるため、危険であり、窒素ガスなどを流入し、希釈して使用する。
【0028】
1つの実施形態では、前記二酸化塩素ガスは、過酸化水素(H)の共存下で加えられる。別の実施形態では、前記水溶液Aは過酸化水素を含んでもよく、前記二酸化塩素ガスは過酸化水素を含む水溶液Aにトラップされる。二酸化塩素ガスを過酸化水素(H)と共存させることにより、塩素酸イオンの発生を抑え、亜塩素酸イオン、亜塩素酸および水性二酸化塩素が同時に存在する、いわゆる「サイクル反応」を経て、亜塩素酸(HClOが生成される。
【0029】
好ましい実施形態では、前記加える工程の後、無機酸、無機酸塩、有機酸もしくは有機酸塩のうちのいずれか単体もしくは2種類以上の単体、またはこれらを併用したものをさらに加える工程を包含する。このように、さらなる工程を加えることにより、pH等を調整し遷移状態を調整することができるからである。
【0030】
また、別の実施形態では、上記方法において無機酸は、炭酸、リン酸、ホウ酸または硫酸を用いることができるが、リン酸が好ましい。理論に束縛されることを望まないが、本発明では、特にリン酸を用いることで、適切なpHの範囲内で、緩衝効果が高く、亜塩素酸の状態で、しかも、殺菌効果を保ったまま維持することができると示されている。
【0031】
さらにまた、別の実施形態では、無機酸塩が、炭酸塩、水酸化塩、リン酸塩またはホウ酸塩を用いることができるが、リン酸塩が好ましい。理論に束縛されることを望まないが、本発明では、特にリン酸塩を用いることで、適切なpHの範囲内で、緩衝効果が高く、亜塩素酸の状態で、しかも、殺菌効果を保ったまま維持することができると示されている。
【0032】
また、別の実施形態では、炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムまたは炭酸水素カリウムを用いることができる。炭酸ナトリウムが好ましい。pHが弱アルカリ域および弱酸性域の2箇所で緩衝力をもつため、この領域で亜塩素酸をより有利に安定させることができるからである。
【0033】
さらに、別の実施形態では、水酸化塩としては、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムを用いることができる。水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムが好ましい。理論に束縛されることを望まないが、これらの水酸化塩は亜塩素酸含量を上げる際に用いることができる。他方、二価の塩を用いれば、リン酸と併用することで、脱塩することができ、亜塩素酸及び亜塩素酸イオンに対する塩量を低減させることができるため、有利であり得る。
【0034】
さらにまた、別の実施形態では、リン酸塩としては、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウムまたはリン酸二水素カリウムを用いることができる。好ましくは、リン酸水素二カリウムを用いることができる。理論に束縛されることを望まないが、これらのリン酸塩は最も殺菌力を発揮する有用なpH域であるpH5台~pH6台の間で緩衝力を持たせることができるからである。このpH域で亜塩素酸を安定して存在させることができるため有利であり得る。
【0035】
また、別の実施形態では、ホウ酸塩としては、ホウ酸ナトリウムまたはホウ酸カリウムを用いることができる。
【0036】
さらに、別の実施形態では、有機酸としては、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、酢酸または乳酸を用いることができる。好ましくは、コハク酸を用いることができる。理論に束縛されることを望まないが、コハク酸は、pH5台からpH4台の間で緩衝力を持たせることができる。このpHの範囲内であれば二酸化塩素の急速なガス化を押さえることができる。ただし、pH5台よりも下回ると、急激にpHが低下する傾向にあり、その場合は、クエン酸などのpH3台で緩衝力のある有機酸を利用することが望ましい。
【0037】
さらにまた、別の実施形態では、有機酸塩としては、コハク酸ナトリウム、コハク酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウムまたは乳酸カルシウムを用いることができる。
【0038】
1つの実施形態では、二酸化塩素を吹き込む緩衝剤の初期pHは、通常、11.0以下6.0以上であり、より好ましくは10.8以下10.2以上であることが有利であるが、あくまでもこれに限定されない。初期pHが10.8以下10.2以上である場合に、亜塩素酸塩の生成を抑制しながら、最終的に得られる有効塩素濃度も上がり、収率も改善される。なお、本明細書においては、pHの値は四捨五入して有効数字1桁で示している。例えば、実測値がpH10.83の場合は、pH10.8として示される。
【0039】
本来は、このpHは、pH11.0以上であってもよく、最終的に得られる有効塩素濃度も上がり、収率も改善されるが、水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)等を用いることにより、亜塩素酸ナトリウムが生成してしまうため、本発明の目的と相反することになるため、好ましくない。理論に束縛されることは望まないが、亜塩素酸ナトリウムを製造する場合、高濃度の水酸化ナトリウムに過酸化水素を加えた水溶液に二酸化塩素ガスを吸着させているが、二酸化塩素ガスに吸着させる前の水溶液のpHは、pH11.3以上の強アルカリ性のものであり、実態はpH12以上である。なお、回収率は100%に近くなる。従って、吸着槽も1槽(通常、亜塩素酸水は回収率が低くなるので、吸着槽も2槽以上必要になる。)あればよく、この場合の生成物は、亜塩素酸水ではなく、亜塩素酸ナトリウムとなる。したがって、このような本発明の目的に適切なpHは、二酸化塩素ガスが含包しうる条件であればよく、例えば、pH6.0~11.0が代表的に挙げることができ、好ましくは、10.2~10.8であるが、あくまでもこれに限定されない。好ましいpHの例としては、上限として、11.2、11.1、11.0、10.9、10.8、10.7、10.6、10.5、10.4、10.3、10.2、10.1、10.0、9.9、9.8、9.7、9.6、9.5、9.4、9.3、9.2、9.1、9.0等を挙げることができるが、あくまでもこれに限定されない。好ましいpHの上限としては、11未満の値、10.5未満の値、10未満の値、9.5未満の値、9未満の値、8.5未満の値、8未満の値、7.5未満の値、7未満の値、6.5未満の値等も挙げられる。好ましいpHの下限としては、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、10.0、10.1、10.2等を挙げることができるが、あくまでもこれらに限定されない。好ましいpHの下限としては、6より大きい値、6.5より大きい値、7より大きい値、7.5より大きい値、8より大きい値、8.5より大きい値、9より大きい値、9.5より大きい値、10より大きい値等も挙げられる。これらの上限、下限の任意の組み合わせが適切であり得、本発明において使用することができる。好ましい上限および下限の組み合わせとしては、6.0~6.5、6.0~6.5未満の値、6.0~9.0、6.0~9.0未満の値、6.0~10.0、6.0~10.0未満の値、6.0~11.0、6.0~11.0未満の値、6.0より大きい値~6.5の値、6.0より大きい値~9.0の値、6.0より大きい値~10.0の値、6.0より大きい値~11.0の値、6.0より大きい値~6.5未満の値、6.0より大きい値~9.0未満の値、6.0より大きい値~10.0未満の値、6.0より大きい値~11.0未満の値、7.0~9.0、7.0~9.0未満の値、7.0~10.0、7.0~10.0未満の値、7.0~11.0、7.0~11.0未満の値、7.0より大きい値~9.0の値、7.0より大きい値~11.0の値、7.0より大きい値~9.0未満の値、7.0より大きい値~11.0未満の値、等が挙げられる。
【0040】
亜塩素酸水を製造する際に、二酸化塩素ガスを低濃度のアルカリ水溶液に吸着させると、pH6~pH8の間に僅かな緩衝帯が発生する(通常の亜塩素酸ナトリウムにはこのような緩衝帯はない。)。この緩衝域にあるものが、亜塩素酸もしくは亜塩素酸イオンの状態であり、これを長く維持させるために、このpH域に強い緩衝力を保持するための緩衝剤が必要となり、この条件に当てはまるように緩衝剤およびpHの範囲を選定することが好ましい。
【0041】
なお、pH14~pH10台の緩衝力が強いほど、亜塩素酸ナトリウムの含量を引き上げることができるが、本発明の製造方法は、あくまでも、亜塩素酸と二酸化塩素及び亜塩素酸イオンのサイクル反応を維持する水溶液を製造することにあるため、亜塩素酸ナトリウムを製造するために必要な強アルカリ性である水溶液Aの初期pHをpH11.0以上に引き上げる必要はなく、本発明は、亜塩素酸ナトリウムの製造方法ではないため、亜塩素酸ナトリウムができる条件を回避することが好ましい。理論に束縛されることを望まないが、本発明は、中性域から弱酸性域の緩衝力を強化することが重要であり、その指標としてTAL(ただし、初発はpH11.0以下)を採用した。出来上がった亜塩素酸水のpHが低い場合は、新たに緩衝剤を加えることでpHを引き上げてもよい。1つの実施形態では、出来上がった亜塩素酸水を用いて、緩衝剤を配合する場合は、pHの範囲は、3.2から7.0であってもよい。
【0042】
吹き込む二酸化塩素ガスの濃度に必ずしも最適である濃度は現時点ではないが、1つの実施形態では、0.8~1.0%で存在するもの、1つの具体的な例では、0.88%のものを用いることができる。理論に束縛されることを望まないが、高濃度のものは、爆発性があるため、危険であるからであり、通常窒素ガスなどを流入し、希釈して使用することができる。
【0043】
殺菌剤として使用されうる亜塩素酸(HClO)を含む水溶液(亜塩素酸水)の製造方法では、従来、塩素酸ナトリウム(NaClO)の水溶液に、硫酸(HSO)またはその水溶液を加えて酸性条件にすることで得られた塩素酸(HClO)を、還元反応により亜塩素酸とするために必要な量の過酸化水素(H)を加えることにより、亜塩素酸(HClO)を生成するようなことが行われている。この製造方法の基本的な化学反応は、下記のA式、B式で表わされる。
【0044】
[化1]
2NaClO+HSO→2HClO+NaSO (A式)
HClO+H→HClO+HO+O↑ (B式)
A式では塩素酸ナトリウム(NaClO)水溶液のpH値が酸性内に維持できる量および濃度の硫酸(HSO)またはその水溶液を加えることで塩素酸を得ると同時にナトリウムイオンを除去することを示している。次いで、B式では、塩素酸(HClO)は、過酸化水素(H)で還元され、亜塩素酸(HClO)が生成されることを示している。
【0045】
【化2】
【0046】
その際に、二酸化塩素ガス(ClO)が発生するが(C式)、過酸化水素(H)と共存させることにより、D~F式の反応を経て、亜塩素酸(HClO)を生成する。本発明は、この二酸化塩素ガス(ClO)以降の反応を利用するものである。理論に束縛されることを望まないが、この反応を取り出して利用したところ、予想外に遷移状態を作り出し、分解反応を遅らせることで長時間にわたって亜塩素酸(HClO)を安定的に維持することができることを見出した。
【0047】
ところで、生成された亜塩素酸(HClO)は、複数の亜塩素酸分子同士が互いに分解反応を起こしたり、塩化物イオン(Cl)や次亜塩素酸(HClO)およびその他の還元物の存在により、早期に二酸化塩素ガスや塩素ガスへと分解してしまうという性質を有している。そのため、殺菌剤として有用なものにするためには、亜塩素酸(HClO)の状態を長く維持できるように調製する必要がある。
【0048】
そこで、上記方法により得られた亜塩素酸(HClO)、二酸化塩素ガス(ClO)またはこれらを含む水溶液に無機酸、無機酸塩、有機酸または有機酸塩をいずれか単体、または2種類以上の単体もしくはこれらを併用したものを加えることによって、遷移状態を作り出し、分解反応を遅らせることで長時間にわたって亜塩素酸(HClO)を安定して維持することができる。理論に束縛されることを望まないが、本発明ではさらに、例えば、リン酸緩衝剤を用いることで、遷移状態を作り出し、分解反応を遅らせることで長時間にわたって亜塩素酸(HClO)を安定して維持することができると示された。さらにまた、理論に束縛されることを望まないが、本発明では、金属としてカリウム塩(水酸化カリウム、リン酸カリウム塩(例えば、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウムまたはリン酸二水素カリウム))を用いる方が、金属としてナトリウム塩(例えば、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム塩(リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム))を用いるよりも、長く安定した遷移状態を作り出すことができ、しかも、分解反応を遅らせることで長時間にわたって亜塩素酸(HClO)を維持することができるということが示された。
【0049】
1つの実施形態では、上記方法により得られた亜塩素酸(HClO)、二酸化塩素ガス(ClO)またはこれらを含む水溶液に無機酸または無機酸塩、具体的にはリン酸塩、炭酸塩や水酸化塩、特にリン酸塩および水酸化塩を単体もしくは2種類以上の単体またはこれらを併用して加えたものを利用することができる。
【0050】
別の実施形態では、無機酸または無機酸塩、具体的にはリン酸塩、炭酸塩や水酸化塩、特にリン酸塩および水酸化塩を単体もしくは2種類以上の単体またはこれらを併用して加えた水溶液に、無機酸、無機酸塩、有機酸または有機酸塩を単体もしくは2種類以上の単体で、またはそれらを併用して加えるものを利用することができる。
【0051】
加えて、さらに別の実施形態では、上記方法によって製造された水溶液に、無機酸、無機酸塩、有機酸または有機酸塩を単体または2種類以上の単体で、またはそれらを併用して加えたものを利用することができる。
【0052】
上記無機酸としては、炭酸、リン酸、ホウ酸または硫酸が挙げられるが、リン酸が好ましいが、あくまでもこれに限定されない。また、無機酸塩としては、炭酸塩、水酸化塩のほか、リン酸塩またはホウ酸塩が挙げられ、リン酸塩が好ましいが、あくまでもこれに限定されない。更に具体的にいえば、炭酸塩は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等、水酸化塩は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等、リン酸塩は、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム等、ホウ酸塩は、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム等を用いるとよく、カリウム塩が好ましいが、あくまでもこれに限定されない。さらに、上記有機酸としては、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、酢酸または乳酸等が挙げられる。また、有機酸塩では、コハク酸ナトリウム、コハク酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウムまたは乳酸カルシウム等が適している。
【0053】
酸および/またはその塩を加えた場合においては、一時的にNa+ClO ⇔Na-ClOやK+ClO ⇔K-ClOやH+ClO ⇔H-ClOといった遷移の状態が作り出され、亜塩素酸(HClO)の二酸化塩素(ClO)への進行を遅らせることができる。これにより、亜塩素酸(HClO)を長時間維持し、二酸化塩素(ClO)の発生が少ない亜塩素酸を含む水溶液を製造することが可能となる。理論に束縛されることを望まないが、本発明では、リン酸緩衝剤を用いることで、このような維持の効果が増強されることが示された。理論に束縛されることを望まないが、本発明ではさらに、カリウム塩を用いることで、ナトリウム塩等を使用した場合に比べてこのような維持の効果をさらに増強することが示された。
【0054】
以下に、上記化学式2での亜塩素酸塩の酸性溶液中の分解を表わす。
【0055】
【化3】
【0056】
この式で表されるように、亜塩素酸塩水溶液のpHにおける分解率は、そのpHが低くなるほど、すなわち酸が強くなるほど、亜塩素酸塩水溶液の分解率が大きくなる。すなわち、上記式中の反応(a)(b)(c)の絶対速度が増大することになる。例えば、反応(a)の占める割合はpHが低くなるほど小さくなるが、全分解率は大きく変動し、すなわち大となるため、二酸化塩素(ClO)の発生量もpHの低下とともに増大する。このため、pH値が低ければ低いほど殺菌や漂白は早まるが、刺激性の有害な二酸化塩素ガス(ClO)によって作業が困難になったり、人の健康に対しても悪い影響を与えることになる。また、亜塩素酸の二酸化塩素への反応が早く進行し、亜塩素酸は不安定な状態になり、殺菌力を維持している時間も極めて短い。
【0057】
そこで、亜塩素酸(HClO)を含む水溶液に上記無機酸、無機酸塩、有機酸もしくは有機酸塩を加える場合には、二酸化塩素の発生の抑制や殺菌力とのバランスの観点から、pH値を3.2~8.5の範囲内、目的に応じpH3.2~7.0、pH5.0~7.0等の好ましい範囲内で調整する。
【0058】
検体を分光光度計により測定すると、波長240~420nmの間に260nm付近でピークを表す酸性亜塩素酸イオン(H+ClO )を含む吸収部と350nm付近にピ-クを表す二酸化塩素(ClO)を含む吸収部を2つ同時に確認できる場合、本発明の亜塩素酸水が存在していると認識できる。すなわち、亜塩素酸(HClO)の存在を認めることができる。なぜならば、下記化学式4に示したように、亜塩素酸(HClO)を主体として、二酸化塩素(ClO)、および酸性亜塩素酸イオン(H+ClO )のサイクル反応が同時に進行しているからである。
【0059】
【化4】
【0060】
亜塩素酸(HClO)が二酸化塩素(ClO)へと変化してしまうと、ほぼ350nmのみの単一ピークになる。
【0061】
この際に、直接緩衝剤を加えるか、もしくは炭酸ナトリウム等で一度pHを調製したあとに他の緩衝剤を加えることで、よりpHを安定化させることができるということも従前判明している。
【0062】
したがって、1つの局面では、本発明は亜塩素酸水と、水酸化金属と、リン酸金属とを含む、殺菌剤を提供する。
【0063】
理論に束縛されることを望まないが、本発明では、二酸化塩素と、無機酸、無機酸塩、有機酸もしくは有機酸塩のうちのいずれか単体もしくは2種類以上の単体、またはこれらを併用したものとを組み合わせることで、遷移状態を作り出し、分解反応を遅らせることで長時間にわたって亜塩素酸(HClO)を安定的に維持することができるため、予想外に、殺菌効果を維持しつつ長期保存・安定効果を奏することが見出された。好ましいpHの範囲は、3.2以上7.0未満、約5.0~約7.5、約5.0~約7.0、約5.5~約7.0、約5.0~約6.0等を挙げることができ、下限としては、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5等を挙げることができ、上限としては、約7.5、約7.4、約7.3、約7.2、約7.1、約7.0、約6.9、約6.8、約6.7、約6.5、約6.4、約6.3、約6.2、約6.1、約6.0、約5.9、約5.8、約5.7、約5.6、約5.5等を挙げることができるが、あくまでもこれらに限定されない。最適なpHとしては、約5.5を挙げることができるが、あくまでもこれらに限定されない。本明細書においてpHの値について「約」というときは、小数点一桁を有効数字とするときは、前後0.05の範囲にわたることを意味する。たとえば、約5.5とは、5.45~5.55を意味することが理解される。亜塩素酸ナトリウムとの峻別という意味では本発明はpH7.0未満とすることが好ましいが、あくまでもこれに限定されない。
【0064】
別の局面において、理論に束縛されることを望まないが、本発明は、リン酸緩衝液において、金属としてカリウムを用いることによって、ナトリウム等と比較して水溶液において解離しやすい性質が亜塩素酸の維持にとって有効であることを見出し、作り出された遷移の状態が長期に維持され、亜塩素酸(HClO)の二酸化塩素(ClO)への進行を遅らせる効果が増強されるため、カリウム塩を用いることが好ましい。
【0065】
好ましい水酸化金属は、水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムを含むものであり、好ましいリン酸金属はリン酸ナトリウム(例えば、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム)および/またはリン酸カリウム(例えば、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム;特にリン酸二水素カリウム)を含むものであり、さらに好ましくは、水酸化カリウムおよびリン酸カリウム(例えば、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム;特にリン酸二水素カリウム)を含むものであるが、あくまでもこれらに限定されない。
【0066】
好ましい実施形態では、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムは、0.1N~1.0Nであり、リン酸ナトリウムおよびリン酸カリウムの緩衝pHは5.0~7.5、特にpH5.0~7.0である。これらの組成およびpHにおいて、従前予想されていた範囲より予想外に長期保存安定効果が改善されているからである。
【0067】
1つの局面では、本発明は、二酸化塩素(ClO)を、無機酸、無機酸塩、有機酸もしくは有機酸塩のうちいずれか単体もしくは2種類以上の単体、またはこれらを併用したものを含む水溶液Aにトラップ(Trap)させる工程を包含する方法によって製造される、亜塩素酸水を提供する。好ましい実施形態では、前記亜塩素酸水は、前記二酸化塩素を過酸化水素の共存下で加える工程をさらに包含する前記方法によって製造される。別の好ましい実施形態では、前記方法において、前記水溶液AのpHは11.0以下6.0以上であ
る。さらに別の好ましい実施形態では、前記方法において、前記水溶液AのpHは10.8以下10.2以上である。別の実施形態では、前記方法において、前記二酸化塩素(ClO)は気体として提供される。
【0068】
1つの局面では、本発明は、本発明の殺菌剤を含浸させた物品を提供する。本発明の物品として使用されうる物品は、亜塩素酸水を含浸させて殺菌等の目的に使用されうる任意の物品であり、医療デバイス等も含まれ、シート、フィルム、パッチ、ブラシ、不織布、ペーパー、布、脱脂綿、スポンジ等をあげることができるが、あくまでもそれらに限定されない。
【0069】
したがって、本発明は、1つの局面において、亜塩素酸水を製造するキットであって、(1)二酸化塩素を含む容器と、(2)無機酸、無機酸塩、有機酸もしくは有機酸塩のうちのいずれか単体もしくは2種類以上の単体、またはこれらを併用したものを含む容器とを備えるキットを提供する。
【0070】
1つの好ましい実施形態では、このキットは、さらに別の(3)無機酸、無機酸塩、有機酸もしくは有機酸塩のうちのいずれか単体もしくは2種類以上の単体、またはこれらを併用したものを含む容器を備える。(2)および(3)は同じであっても異なっていても良い。
【0071】
本発明によれば、長時間にわたって亜塩素酸(HClO)を安定的に維持することができる。理論に束縛されることを望まないが、二酸化塩素を用いることにより、遷移状態を作り出し、分解反応を遅らせることができると考えられるからである。したがって、本製法で製造された亜塩素酸水は寿命が従来に比べて、更に長くなると考えられる。
【0072】
本発明によれば、高い殺菌力を有する亜塩素酸を長期間安定させることができるようになった為、商品として一般に流通させることが難しかった亜塩素酸を含む水溶液、いわゆる亜塩素酸水を、流通に乗せることが可能となり、しかも安全性が高く、有用で簡便な殺菌剤として社会に普及させることができる。
【0073】
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0074】
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したものではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例0075】
必要な場合、以下の実施例で用いる動物の取り扱いは、ヘルシンキ宣言に基づいて行った。試薬類は具体的には実施例中に記載した製品を使用したが、他メーカー(Sigma、和光純薬、ナカライ、等)の同等品でも代用可能である。本明細書中亜塩素酸水は「亜水」と省略して表示することがあるが、これは同義である。
【0076】
(亜塩素酸水の生産条件)
以下の実施例で使用される亜塩素酸水は、以下に説明するように生産される。
【0077】
(製造プラント例)
使用した製造用のプラントの例を図1に示す。
【0078】
図1において、各番号は、以下の表に示す部材である。
【0079】
【表1】
【0080】
使用した二酸化塩素ガス(自社製)は、0.88%であり、許容範囲は、0.9%±0.1%のものが良い。高濃度のものは、爆発性があるため、危険であり、窒素ガスなどを流入し、希釈して使用する。また、流速は、5で調節することができ、本実施例では、210ppm/分(210ppm/min±40ppm/min(660mg・ClO2/min~530mg・ClO2/min))に設定する。
【0081】
(各溶液の配合例)
以下に、本製造例において使用されうる各溶液の配合例を記載する。
【0082】
【表2】
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】
【0085】
【表5】
【0086】
(実施例1:亜塩素酸水の製造例1(亜水A-1))
実施例1では、(亜塩素酸水の生産条件)の亜水A-1の条件に基づき、以下の手順に従って、亜塩素酸水を製造した。
【0087】
(方法)
(1)2に配合表dを充填した。
(2)1に配合表aを充填した。この水溶液AのpHは、10.8であった。
(3)3には、0.9%±0.1%の二酸化塩素ガスが入っているタンクを用意した。
(4)4を稼動させた。
(5)5を開放し、流速210ppm/分(210ppm/min±40ppm/min(660mg・ClO2/min~530mg・ClO2/min))で、1に二酸化塩素ガスを流入させた。
(6)15分間流入したあと、5を閉めた。
(7)4をとめた。
(8)15分間静置させた。
(9)再び、4を稼動させ、(4)~(8)を3回~4回(実質二酸化塩素ガス総流入時間45~60分)繰り返した。
(10)1の液体を亜塩素酸水A-1とした。
【0088】
(結果)
以下に製造物の試験結果を示す。
【0089】
【表6】
【0090】
また、UVスペクトルは図2に示す。UVスペクトルに示すように、双瘤状の状態となっており、殺菌効果が保持されている亜塩素酸水が正しく製造されていることを確認した。
【0091】
(実施例2:亜塩素酸水製剤の製造例1(亜水製剤A-1))
実施例2では、実施例1の亜水A-1を用いて、以下の手順に従って、亜塩素酸水製剤を製造した。
【0092】
以下の配合に基づき水溶液Bを混合した。
【0093】
【表7】
【0094】
このときのpHは6.4であった。
【0095】
【表8】
【0096】
また、UVスペクトルは図3に示す。UVスペクトルに示すように、双瘤状の状態となっており、殺菌効果が保持されている亜塩素酸水製剤が正しく製造されていることを確認した。
【0097】
(実施例3:亜塩素酸水の製造例2(亜水A-2))
実施例3では、(亜塩素酸水の生産条件)の亜水A-2の条件に基づき、以下の手順に従って、亜塩素酸水を製造した。
【0098】
(方法)
(1)2に配合表dを充填した。
(2)1に配合表bを充填した。この水溶液AのpHは8.0であった。
(3)3には、0.9%±0.1%の二酸化塩素ガスが入っているタンクを用意した。
(4)4を稼動させた。
(5)5を開放し、流速210ppm/分(210ppm/min±40ppm/min(660mg・ClO2/min~530mg・ClO2/min))で、1に二酸化塩素ガスを流入させた。
(6)15分間流入したあと、5を閉めた。
(7)4をとめた。
(8)15分間静置した。
(9)再び、4を稼動させ、(4)~(8)を2回~3回(実質二酸化塩素ガス総流入時間30~45分)繰り返した。
(10)1の液体を亜塩素酸水とした。
【0099】
以下に製造物の試験結果を示す。
【0100】
【表9】
【0101】
また、UVスペクトルは図4に示す。UVスペクトルに示すように、双瘤状の状態となっており、殺菌効果が保持されている亜塩素酸水が正しく製造されていることを確認した。(実施例4:亜塩素酸水製剤の製造例2(亜水製剤A-2))
実施例4では、実施例3の亜水A-2を用いて、以下の手順に従って、亜塩素酸水製剤を製造した。
【0102】
以下の配合に基づき水溶液Bを混合した。
【0103】
【表10】
【0104】
このときのpHは6.0であった。
【0105】
【表11】
【0106】
また、UVスペクトルは図5に示す。UVスペクトルに示すように、双瘤状の状態となっており、殺菌効果が保持されている亜塩素酸水製剤が正しく製造されていることを確認した。
【0107】
(実施例5:亜塩素酸水の製造例3(亜水A-3))
実施例5では、(亜塩素酸水の生産条件)の亜水A-3の条件に基づき、以下の手順に従って、亜塩素酸水を製造した。
【0108】
(方法)
(1)2に配合表dを充填した。
(2)1に配合表cを充填した。この水溶液AのpHは11.0であった。
(3)3には、0.9%±0.1%の二酸化塩素ガスが入っているタンクを用意した。
(4)4を稼動させた。
(5)5を開放し、流速210ppm/分(210ppm/min±40ppm/min(660mg・ClO2/min~530mg・ClO2/min))で、1に二酸化塩素ガスを流入させた。
(6)15分間流入したあと、5を閉めた。
(7)4をとめた。
(8)15分間静置した。
(9)再び、4を稼動させ、(4)~(8)を1回~2回(実質二酸化塩素ガス総流入時間15~30分)繰り返した。
(10)1の液体を亜塩素酸水とした。
【0109】
以下に製造物の試験結果を示す。
【0110】
【表12】
【0111】
また、UVスペクトルは図6に示す。UVスペクトルに示すように、双瘤状の状態となっており、殺菌効果が保持されている亜塩素酸水が正しく製造されていることを確認した。
【0112】
(実施例6:亜塩素酸水製剤の製造例3(亜水製剤A-3))
実施例6では、実施例5の亜水A-3を用いて、以下の手順に従って、亜塩素酸水製剤を製造した。
以下の配合に基づき水溶液Bを混合した。
【0113】
【表13】
【0114】
この時のpHは6.8であった。
【0115】
以下に製造物の試験結果を示す。
【0116】
【表14】
【0117】
また、UVスペクトルは図7に示す。UVスペクトルに示すように、双瘤状の状態となっており、殺菌効果が保持されている亜塩素酸水が正しく製造されていることを確認した。
【0118】
(実施例7:殺菌力試験・安定性試験)
実施例2と実施例4で製造した亜水製剤A-1~A-2の効果を確認するため、以下の実験を行った。
【0119】
安定性については、コントロールとして、6%亜塩素酸ナトリウムに1N塩酸を加えpH2.3~pH2.9に調整したもの(本明細書において「ASC」と称する)を用いた。このASCと、実施例2と実施例4で製造した2種類の亜塩素酸水と共に、4℃、暗室、密閉状態にし、保管し、安定性を確認した。
【0120】
殺菌効果確認試験では、製造直後、5日目及び10日目の殺菌効果の経時変化を確認し、大腸菌(E. coli)の殺菌効果を石炭酸係数によって評価した。
【0121】
亜塩素酸濃度の確認では、ASCと実施例2と実施例4で製造した2種類の亜塩素酸水を、1日目、5日目、10日目にヨウ素滴定を行い、亜塩素酸濃度を求めた。
【0122】
その結果を以下に示す。
【0123】
【表15-1】
【0124】
【表15-2】
【0125】
【表15-3】

【0126】
【表16-1】
【0127】
【表16-2】
【0128】
【表16-3】
【0129】
【表17-1】
【0130】
【表17-2】
【0131】
【表17-3】
【0132】
二酸化塩素のガス(気体)を用いるメリットとしては、遷移状態を作り出し、分解反応を遅らせることで長時間にわたって亜塩素酸(HClO)を安定し、維持させることができるということを挙げられる。
【0133】
これらをまとめた結果をグラフとして表示したものを図8に示す。
【0134】
表15-1~表15-3および図8に示すように、コントロールであるASCの亜塩素酸濃度は5日目には、ほぼ消失しており、大腸菌による殺菌効果もなくなっていた。その一
方で、表16-1~表16-3、表17-1~表17-3および図8に示すように、亜塩素酸水製剤A-1と亜塩素酸水製剤A-2の亜塩素酸濃度は製造直後から、急激に低下したものの、その後は目減りしながらも安定しており、大腸菌に対する殺菌効果も維持できていた。製造直後と10日目とのデータを比較すると、殺菌効果においてほとんど遜色ないことから、少なくとも10日間は安定して殺菌効果を示すことができる亜塩素酸水の製造法であると理解される。このことは理論に束縛されることを望まないが、本発明の製造法で製造された亜塩素酸水は、遷移状態を作り出し、分解反応を遅らせることで長時間にわたって亜塩素酸(HClO)を水溶液中に安定して維持することができるということを証明した。
【0135】
以上のように、本発明の好ましい実施形態および実施例を用いて本発明を例示してきたが、本発明はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載した構成の範囲内において様々な態様で実施することができ、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明によって得られた亜塩素酸水を含む水溶液は、殺菌剤の他、消臭剤や漂白剤や血ぬき剤等の用途にも利用できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8