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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095917
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】コンタクト
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/24 20060101AFI20220621BHJP
【FI】
H01R13/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067907
(22)【出願日】2022-04-15
(62)【分割の表示】P 2020084589の分割
【原出願日】2020-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】519252262
【氏名又は名称】株式会社T・P・S・クリエーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】100141092
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 英生
(72)【発明者】
【氏名】高木 孝司
(57)【要約】
【課題】板材を重ねて側壁が形成される折曲式付勢型であり、接触部の可動範囲の制限と板材同士の位置ずれ抑制が簡易に実現可能となるコンタクトを提供する。
【解決手段】上下それぞれの接続対象を電気的に接続するコンタクトであって、上側の前記接続対象に接続される第1要素と、下側の前記接続対象に接続される第2要素と、第1要素と第2要素のそれぞれに連接し、第1要素を上側の前記接続対象に向けて付勢するバネ部と、を有するように導電性板材が折り曲げられて形成されており、第2要素は、前記バネ部の側方において内側側壁部と外側側壁部が重なって形成された重複側壁部と、前記外側側壁部から内側へ折り曲げられて形成されている折り曲げ片部と、を有し、前記折り曲げ片部は、第1要素の上方への可動範囲を規制するとともに、前記外側側壁部と前記内側側壁部の位置ずれを抑制するコンタクトとする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下それぞれの接続対象を電気的に接続するコンタクトであって、
上側の前記接続対象に接続される第1要素と、
下側の前記接続対象に接続される第2要素と、
第1要素と第2要素のそれぞれに連接し、第1要素を上側の前記接続対象に向けて付勢するバネ部と、を有するように導電性板材が折り曲げられて形成されており、
第2要素は、
前記バネ部の側方において内側側壁部と外側側壁部が重なって形成された重複側壁部と、前記外側側壁部から内側へ折り曲げられて形成されている折り曲げ片部と、を有し、
前記折り曲げ片部は、
第1要素の上方への可動範囲を規制するとともに、前記外側側壁部と前記内側側壁部の位置ずれを抑制することを特徴とするコンタクト。
【請求項2】
前記内側側壁部の上縁に窪み部が形成されており、
前記折り曲げ片部は、
前記窪みに嵌るとともに当該窪みよりも内側へ突出する突出部分を有するように、前記外側側壁部の上縁から内側へ折り曲げられて形成されており、
当該突出部分が第1要素に当たることにより、第1要素の上方への可動範囲が規制されることを特徴とする請求項1に記載のコンタクト。
【請求項3】
前記突出部分は、前記窪みよりも幅広に形成された幅広部を有し、
前記幅広部が前記内側側壁部の内面に当たることにより、前記外側側壁部と前記内側側壁部の位置ずれが抑制されることを特徴とする請求項2に記載のコンタクト。
【請求項4】
第2要素は、前記バネ部の左方に設けられた左側壁部、および前記バネ部の右方に設けられた右側壁部を有し、
前記バネ部は、左右へ蛇行しながら伸びる板バネとして形成され、前記左側壁部または前記右側壁部の下端から延出しており、
前記内側側壁部は前記左側壁部および前記右側壁部の一方から折り曲げられて形成されており、前記外側側壁部は前記左側壁部および前記右側壁部の他方から折り曲げられて形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載のコンタクト。
【請求項5】
前記外側側壁部および前記内側側壁部の一方において、折り曲げられた箇所の反対側の端部に凹部が設けられるとともに、他方において、当該凹部に向けて切り曲げられている凹部対応切り曲げ部が設けられ、
前記凹部対応切り曲げ部が前記凹部に嵌り、これらが接触することにより、前記外側側壁部と前記内側側壁部の位置ずれが抑制されることを特徴とする請求項4に記載のコンタクト。
【請求項6】
前記内側側壁部に、外側に向けて切り曲げられている外向き切り曲げ部が設けられ、
前記外側側壁部に、内側に向けて切り曲げられている内向き切り曲げ部が設けられ、
前記外向き切り曲げ部および前記内向き切り曲げ部の端部同士が左右方向に接することにより、前記外側側壁部と前記内側側壁部の左右方向の位置ずれが抑制されることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のコンタクト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続対象と被接続対象の電気的接続に用いられるコンタクトに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などの各種電気機器には、当該機器の機能確保に必要な各種部品が配置される。またこれらの部品同士(接続対象同士)を電気的に接続するために、コンタクトが利用されることがある。
【0003】
このようなコンタクトは種々存在するが、そのコンタクトの一種として、部品点数が最も少ない特許文献1に開示されたものが知られている。このコンタクトは、一枚の導電性板材を所定形状に打ち抜き、折り曲げて形成されるものであり、特許文献1の図1図3に示されるようにハウジング12から逆U字状の接触部14が突出して設けられ、ハウジング12内のバネ部16によって接触部14を突出方向へ付勢するものである。
【0004】
このように、所定形状の導電性板材の折り曲げによって形成され、後退可能な接触部(上側の接続対象に接触する部分)を板バネ(上記の例ではバネ部16)によって上方へ付勢するタイプを以下、便宜的に「折曲式付勢型」と呼ぶ。折曲式付勢型のコンタクトでは、板バネの側方に側壁(上記の例ではハウジング12を形成する壁)を設けることで板バネを保護することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-46229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した側壁は、板材を重ねて形成することにより更に強固にして、板バネをより確実に保護することが可能となる。但しこのように板材を重ねて側壁を形成する場合、これら板材同士の位置ずれを抑制することが重要となる。また折曲式付勢型のコンタクトにおいては、通常、接触部が上方へ移動し過ぎないように、接触部の可動範囲が規制されることが好ましい。
【0007】
本発明は上述した問題に鑑み、板材を重ねて側壁が形成される折曲式付勢型でありながら、接触部の可動範囲の制限と板材同士の位置ずれ抑制を簡易に実現することが可能となるコンタクトの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るコンタクトは、上下それぞれの接続対象を電気的に接続するコンタクトであって、上側の前記接続対象に接続される第1要素と、下側の前記接続対象に接続される第2要素と、第1要素と第2要素のそれぞれに連接し、第1要素を上側の前記接続対象に向けて付勢するバネ部と、を有するように導電性板材が折り曲げられて形成されており、第2要素は、前記バネ部の側方において内側側壁部と外側側壁部が重なって形成された重複側壁部と、前記外側側壁部から内側へ折り曲げられて形成されている折り曲げ片部と、を有し、前記折り曲げ片部は、第1要素の上方への可動範囲を規制するとともに、前記外側側壁部と前記内側側壁部の位置ずれを抑制する構成とする。
【0009】
本構成によれば、板材を重ねて側壁が形成される折曲式付勢型でありながら、接触部の可動範囲の制限と板材同士の位置ずれ抑制を簡易に実現することが可能となる。
【0010】
上記構成としてより具体的には、前記内側側壁部の上縁に窪み部が形成されており、前記折り曲げ片部は、前記窪みに嵌るとともに当該窪みよりも内側へ突出する突出部分を有するように、前記外側側壁部の上縁から内側へ折り曲げられて形成されており、当該突出部分が第1要素に当たることにより、第1要素の上方への可動範囲が規制される構成としても良い。
【0011】
上記構成としてより具体的には、前記突出部分は、前記窪みよりも幅広に形成された幅広部を有し、前記幅広部が前記内側側壁部の内面に当たることにより、前記外側側壁部と前記内側側壁部の位置ずれが抑制される構成としても良い。
【0012】
上記構成としてより具体的には、第2要素は、前記バネ部の左方に設けられた左側壁部、および前記バネ部の右方に設けられた右側壁部を有し、前記バネ部は、左右へ蛇行しながら伸びる板バネとして形成され、前記左側壁部または前記右側壁部の下端から延出しており、前記内側側壁部は前記左側壁部および前記右側壁部の一方から折り曲げられて形成されており、前記外側側壁部は前記左側壁部および前記右側壁部の他方から折り曲げられて形成されている構成としても良い。
【0013】
上記構成としてより具体的には、前記外側側壁部および前記内側側壁部の一方において、折り曲げられた箇所の反対側の端部に凹部が設けられるとともに、他方において、当該凹部に向けて切り曲げられている凹部対応切り曲げ部が設けられ、前記凹部対応切り曲げ部が前記凹部に嵌り、これらが接触することにより、前記外側側壁部と前記内側側壁部の位置ずれが抑制される構成としても良い。
【0014】
上記構成としてより具体的には、前記内側側壁部に、外側に向けて切り曲げられている外向き切り曲げ部が設けられ、前記外側側壁部に、内側に向けて切り曲げられている内向き切り曲げ部が設けられ、前記外向き切り曲げ部および前記内向き切り曲げ部の端部同士が左右方向に接することにより、前記外側側壁部と前記内側側壁部の左右方向の位置ずれが抑制される構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係るコンタクトXの斜め上側から見た斜視図である。
図2】コンタクトXの斜め下側から見た斜視図である。
図3】コンタクトXの上方視による外観図である。
図4】コンタクトXの前方視による外観図である。
図5】A-A平面で切断した場合のコンタクトXの前方視による外観図である。
図6】A-A平面で切断した場合のコンタクトXの斜視図である。
図7】B-B平面で切断した場合のコンタクトXの斜視図である。
図8】コンタクトXの使用形態に関する説明図である。
図9】本実施形態の変形例に係るコンタクトX1の斜視図である。
図10】コンタクトX1の製造に用いられる金属板材の外観図である。
図11】当該金属板材におけるコンタクトX1を形成する部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係るコンタクトについて、各図面を使用して以下に説明する。以下の説明における上下、左右、および前後の各方向(互いに直交する方向)は、図1等に示すとおりである。
【0017】
図1は、本実施形態に係るコンタクトXの斜め上側から見た斜視図であり、図2は、コンタクトXの斜め下側から見た斜視図である。図3は、コンタクトXの上方視による外観図であり、図4は、コンタクトXの前方視による外観図である。図5は、A-A平面(図3を参照)で切断した場合のコンタクトXの前方視による外観図であり、図6は、当該A-A平面で切断した場合のコンタクトXの斜視図である。図7は、B-B平面(図4を参照)で切断した場合のコンタクトXの斜視図である。なお図1図7に示されるコンタクトXは、平面部110が下方へ押される前の状態(以下、「初期状態」と称することがある。)のものである。
【0018】
コンタクトXは、上下2つの接続対象を電気的に接続する役割を果たす。例えばコンタクトXは、プリント基板の導体パターン同士を電気的に接続することが可能である。このように使用される場合、一方のプリント基板がリジッド基板、他方のプリント基板がフレキシブル基板となり得る。
【0019】
コンタクトXは、導電性の板材を折り曲げ加工することにより、第1要素100、第2要素200、および板バネ部300(前側板バネ部300aと後側板バネ部300b)が一体的に形成されたコンタクトである。第1要素100は、平面部110、前側ガイド部120、および後側ガイド部130を有する。第2要素200は、後壁部210、前壁部220、右壁部230、左壁部240、後側折り曲げ片部250、および前側折り曲げ片部260を有する。
【0020】
コンタクトXは、第1要素100および板バネ部300の部分については、上下に伸びる中心軸(接点部111を通る軸)を基準として180度回転対称(元の形状と180°回転させた形状が同一)の形状となっており、第2要素200の部分については、図3に示すA-A平面を基準として前後対称の形状となっている。なおコンタクトXの全体形状を、180度回転対称の形状としても良い。
【0021】
本実施形態では、当該導電性の板材として金属板材(例えばステンレス(SUS301など)を材質とする板材)が採用されている。第1要素100、第2要素200、および板バネ部300を一連の金属板材により一体的に形成することにより、コンタクトXの製造工程においてこれら各部同士の接着は不要となり、接着不良等が回避されるとともに、コンタクトXを効率良く形成することができる。コンタクトXは、携帯型通信端末等へ搭載され得るように非常に小型化されており、左右方向の寸法は2mm程度、前後方向の寸法は1.2mm程度、初期状態での上下方向の寸法は1.2mm程度となっており、板材の厚みは0.1mm程度となっている。第1要素100が最も下まで移動した状態では、上下方向寸法は0.8mm程度となる。コンタクトXは上下の接続対象を接続した状態において、上下方向寸法が0.8mm~1.1mmの範囲内となるように使用される。
【0022】
第2要素200が有する後壁部210、前壁部220、右壁部230、および左壁部240は、一体的に見て、板バネ部300を保護するハウジングH(側方を囲む壁)として機能する。ハウジングHは、上方視で板バネ部300の全周を囲む略筒状に形成されている。なお、上記の各壁部の名称は、板バネ部300から見てどの方向に配置されているかを概ね表している。即ち、後壁部210は後側の壁となるよう配置されており、前壁部220は前側の壁となるよう配置されており、右壁部230は右側の壁となるよう配置されており、左壁部240は左側の壁となるよう配置されている。なお第2要素200に関して、「側方」は上下方向と直交する方向であり、「内側」は先述した中心軸に近づく側であり、「外側」は当該中心軸から離れる側である。
【0023】
後壁部210は、内側後壁部211と、内側後壁部211の外側(後側)に配置された外側後壁部212が重なって形成されている。内側後壁部211は、右壁部230の後側の縁から延出した部分が、当該縁において左側へ直角に折り曲げられた形態となっている。この折り曲げ位置では、折り曲げ加工が行い易くなるように、その周辺に比べて幅(上下方向寸法)が小さくされている。外側後壁部212は、左壁部240の後側の縁から延出した部分が、当該縁において右側へ直角に折り曲げられた形態となっている。この折り曲げ位置では、折り曲げ加工が行い易くなるように、その周辺に比べて幅(上下方向寸法)が小さくされている。
【0024】
前壁部220は、内側前壁部221と、内側前壁部221の外側(前側)に配置された外側前壁部222が重なって形成されている。内側前壁部221は、右壁部230の前側の縁から延出した部分が、当該縁において左側へ直角に折り曲げられた形態となっている。この折り曲げ位置では、折り曲げ加工が行い易くなるように、その周辺に比べて幅(上下方向寸法)が小さくされている。外側前壁部222は、左壁部240の前側の縁から延出した部分が、当該縁において右側へ直角に折り曲げられた形態となっている。この折り曲げ位置では、折り曲げ加工が行い易くなるように、その周辺に比べて幅(上下方向寸法)が小さくされている。
【0025】
また、内側後壁部211の左右方向略中央位置における上部には、窪み部211dが設けられている。一方、内側前壁部221の左右方向略中央位置における上部には、窪み部221dが設けられている(図3等を参照)。
【0026】
後側折り曲げ片部250は、外側後壁部212の上側の縁から延出した部分が、当該縁において前側(内側)へ直角に折り曲げられた形態となっている。後側折り曲げ片部250は、窪み部211dに嵌るように折り曲げられている。後側折り曲げ片部250における窪み部211dよりも前側(内側)へ突出した突出部分は、窪み部211dの幅(左右方向寸法)よりも幅広に形成された幅広部250aとなっている。
【0027】
幅広部250aの左右の各部分は、内側後壁部211の内面(前側の面)に対向して近接あるいは接触している。そのため幅広部250aが内側後壁部211の内面に接触することにより(つまり、幅広部250aが当該内面に引っ掛ることにより)、内側後壁部211と外側後壁部212の主に前後方向の位置ずれ(特に、外側後壁部212が外向きへ開くような変形)が抑制される。
【0028】
前側折り曲げ片部260は、外側前壁部222の上側の縁から延出した部分が、当該縁において後側(内側)へ直角に折り曲げられた形態となっている。前側折り曲げ片部260は、窪み部221dに嵌るように折り曲げられている。前側折り曲げ片部260における窪み部221dよりも後側(内側)へ突出した突出部分は、窪み部221dの幅(左右方向寸法)よりも幅広に形成された幅広部260aとなっている。
【0029】
幅広部260aの左右の各部分は、内側前壁部221の内面(後側の面)に対向して近接あるいは接触している。そのため幅広部260aが内側前壁部221の内面に接触することにより(つまり、幅広部260aが当該内面に引っ掛ることにより)、内側前壁部221と外側前壁部222の主に前後方向の位置ずれ(特に、外側前壁部222が外向きへ開くような変形)が抑制される。
【0030】
内側後壁部211の左端(折り曲げられた箇所と反対側の端部)には凹部211a(図11を参照)が設けられており、外側後壁部212の当該凹部211aに対応する位置には、前側に向けて(つまり凹部211aに向けて)切り曲げられている凹部対応切り曲げ部212bが設けられている。凹部対応切り曲げ部212bは、上辺、下辺、および右辺が外側後壁部212から切り離され、左辺が折り曲げられている略矩形状の部分である。
【0031】
凹部対応切り曲げ部212bは凹部211aに嵌っており、凹部対応切り曲げ部212bの上縁は凹部211aの上縁に対向して近接あるいは接触し、凹部対応切り曲げ部212bの下縁は凹部211aの下縁に対向して近接あるいは接触し、凹部対応切り曲げ部212bの右縁は凹部211aの右縁に対向して近接あるいは接触している。そのため、凹部対応切り曲げ部212bと凹部211aが接触することにより、内側後壁部211と外側後壁部212の位置ずれが抑制される。
【0032】
外側後壁部212の右端(折り曲げられた箇所と反対側の端部)には凹部212aが設けられており、内側後壁部211の当該凹部212aに対応する位置には、後側に向けて(つまり凹部212aに向けて)切り曲げられている凹部対応切り曲げ部211bが設けられている。凹部対応切り曲げ部211bは、上辺、下辺、および左辺が内側後壁部211から切り離され、右辺が折り曲げられている略矩形状の部分である。
【0033】
凹部対応切り曲げ部211bは、凹部212aに嵌っており、凹部対応切り曲げ部211bの上縁は凹部212aの上縁に対向して近接あるいは接触し、凹部対応切り曲げ部211bの下縁は凹部212aの下縁に対向して近接あるいは接触し、凹部対応切り曲げ部211bの左縁は凹部211aの左縁に対向して近接あるいは接触している。そのため、凹部対応切り曲げ部211bと凹部212aが接触することにより、内側後壁部211と外側後壁部212の位置ずれが抑制される。
【0034】
上述した凹部対応切り曲げ部212bと凹部211aとの接触、および凹部対応切り曲げ部211bと凹部212aとの接触により、特に、内側後壁部211および外側後壁部212の上下の動きが抑えられる。そのため、内側後壁部211および外側後壁部212の底面同士(下側の接続対象に固定される面)を精度良く同一平面上に位置させることが可能となる。
【0035】
内側前壁部221の左端(折り曲げられた箇所と反対側の端部)には凹部221a(図11を参照)が設けられており、外側前壁部222の当該凹部221aに対応する位置には、後側に向けて(つまり凹部221aに向けて)切り曲げられている凹部対応切り曲げ部222bが設けられている。凹部対応切り曲げ部222bは、上辺、下辺、および右辺が外側前壁部222から切り離され、左辺が折り曲げられている略矩形状の部分である。
【0036】
凹部対応切り曲げ部222bは、凹部221aに嵌っており、凹部対応切り曲げ部222bの上縁は凹部221aの上縁に対向して近接あるいは接触し、凹部対応切り曲げ部222bの下縁は凹部221aの下縁に対向して近接あるいは接触し、凹部対応切り曲げ部212bの右縁は凹部221aの右縁に対向して近接あるいは接触している。そのため、凹部対応切り曲げ部222bと凹部221aが接触することにより、内側前壁部221と外側前壁部222の位置ずれが抑制される。
【0037】
外側前壁部222の右端(折り曲げられた箇所と反対側の端部)には凹部222aが設けられており、内側前壁部221の当該凹部222aに対応する位置には、前側に向けて(つまり凹部222aに向けて)切り曲げられている凹部対応切り曲げ部221bが設けられている。凹部対応切り曲げ部221bは、上辺、下辺、および左辺が内側前壁部221から切り離され、右辺が折り曲げられている略矩形状の部分である。
【0038】
凹部対応切り曲げ部221bは、凹部222aに嵌っており、凹部対応切り曲げ部221bの上縁は凹部222aの上縁に対向して近接あるいは接触し、凹部対応切り曲げ部221bの下縁は凹部222aの下縁に対向して近接あるいは接触し、凹部対応切り曲げ部221bの左縁は凹部221aの左縁に対向して近接あるいは接触している。そのため、凹部対応切り曲げ部221bと凹部222aが接触することにより、内側前壁部221と外側前壁部222の位置ずれが抑制される。
【0039】
上述した凹部対応切り曲げ部222bと凹部221aとの接触、および凹部対応切り曲げ部221bと凹部222aとの接触により、特に、内側前壁部221および外側前壁部222の上下の動きが抑えられる。そのため、内側前壁部221および外側前壁部222の底面同士(下側の接続対象に固定される面)を精度良く同一平面上に位置させることが可能となる。
【0040】
内側後壁部211の左右方向略中央部には、後側(外側)に向けて切り曲げられている外向き切り曲げ部211cが設けられている。外向き切り曲げ部211cは、上辺、下辺、および右辺が内側後壁部211から切り離され、左辺が折り曲げられている略矩形状の部分である。一方、外側後壁部212の左右方向略中央部には、前側(内側)に向けて切り曲げられている内向き切り曲げ部212cが設けられている。内向き切り曲げ部212cは、上辺、下辺、および左辺が外側後壁部212から切り離され、右辺が折り曲げられている略矩形状の部分である。
【0041】
なお、内側後壁部211には、内向き切り曲げ部212cとの前後方向の干渉を防ぐ孔が設けられ、外側後壁部212には、外向き切り曲げ部211cとの前後方向の干渉を防ぐ孔が設けられている。また、外向き切り曲げ部211cの右端部と内向き切り曲げ部212cの左端部は、左右方向に対向して近接あるいは接触している。そのため、これらの端部同士が左右方向に接することにより、外側後壁部212と内側後壁部211の左右方向への開き(外側後壁部212の左方への位置ずれ、および、内側後壁部211の右方への位置ずれ)が抑制される。
【0042】
内側前壁部221の左右方向略中央部には、前側(外側)に向けて切り曲げられている外向き切り曲げ部221cが設けられている。外向き切り曲げ部221cは、上辺、下辺、および右辺が内側前壁部221から切り離され、左辺が折り曲げられている略矩形状の部分である。一方、外側前壁部222の左右方向略中央部には、後側(内側)に向けて切り曲げられている内向き切り曲げ部222cが設けられている。内向き切り曲げ部222cは、上辺、下辺、および左辺が外側前壁部222から切り離され、右辺が折り曲げられている略矩形状の部分である。
【0043】
なお、内側前壁部221には、内向き切り曲げ部222cとの前後方向の干渉を防ぐ孔が設けられ、外側前壁部222には、外向き切り曲げ部221cとの前後方向の干渉を防ぐ孔が設けられている。また、外向き切り曲げ部221cの右端部と内向き切り曲げ部222cの左端部は、左右方向に対向して近接あるいは接触している。そのため、これらの端部同士が左右方向に接することにより、外側前壁部222と内側前壁部221の左右方向への開き(外側前壁部222の左方への位置ずれ、および、内側前壁部221の右方への位置ずれ)が抑制される。
【0044】
板バネ部300は、前側板バネ部300aと後側板バネ部300bからなる。後側板バネ部300bは、各箇所で曲げられた帯状(幅方向が前後方向に一致する)となっており、右壁部230の下端の後寄り位置から延出して、左右に蛇行しながら上方へ伸びて平面部110の右端の後寄り位置に連接している。すなわち後側板バネ部300bは、右壁部230の下端から伸びており、先述したハウジングHの内側において、幅方向に見て蛇行するように形成されている。
【0045】
より具体的に説明すると、後側板バネ部300bは幅方向に見て、右壁部230の下端から斜め左上方向に伸び、左壁部240の近傍で概ねUターンして斜め右上方向に伸び、右壁部230の近傍で平面部110の右端に連接している。なお、後側板バネ部300bを右壁部230の下端から伸ばしたことにより、右壁部230の上端から伸ばしたと仮定した場合に比べ、コンタクトXの低背化(上下方向寸法の小型化)等において有利となっている。
【0046】
前側板バネ部300aは、各箇所で曲げられた帯状(幅方向が前後方向に一致する)となっており、左壁部240の下端の前寄り位置から延出して、左右に蛇行しながら上方へ伸びて平面部110の左端の前寄り位置に連接している。すなわち前側板バネ部300aは、左壁部240の下端から伸びており、ハウジングHの内側において、幅方向に見て蛇行するように形成されている。
【0047】
より具体的に説明すると、前側板バネ部300aは幅方向に見て、左壁部240の下端から斜め右上方向に伸び、右壁部230の近傍で概ねUターンして斜め左上方向に伸び、左壁部240の近傍で平面部110の左端に連接している。なお、前側板バネ部300aを左壁部240の下端から伸ばしたことにより、左壁部240の上端から伸ばしたと仮定した場合に比べ、コンタクトXの低背化(上下方向寸法の小型化)等において有利となっている。
【0048】
第1要素100が有する平面部110は、概ね、上下方向を厚み方向とする平面状になっている。平面部110は、少なくとも初期状態においてハウジングHの上側の開口より上側に突出しており、上側表面の中心に上側の接続対象と接触する接点部111が設けられている。接点部111は、その中心を頂点とする小さな山型になっている。接点部111は、平面部110におけるプレス加工により形成可能である。
【0049】
後側ガイド部120は、平面部110の後側の縁から下方へ折り曲げられて形成されており、後側ガイド部120の後側の表面は、内側後壁部211の前側の表面よりも僅かに前方に位置する。後側ガイド部120の左右方向中央領域には、後側折り曲げ片部250を挿通させ得る孔部121が設けられている。更に後側ガイド部120の後側の表面には、孔部121の左側と右側それぞれにおいて、後方へ僅かに突出した突起部122が形成されている。初期状態において突起部122は後壁部210の上端より上側に位置するが、後側ガイド部120が下方へ所定量以上移動すると、突起部122の先端は内側後壁部211の前側の表面と摺接する。
【0050】
前側ガイド部130は、平面部110の前側の縁から下方へ折り曲げられて形成されており、前側ガイド部130の前側の表面は、内側前壁部221の後側の表面よりも僅かに後方に位置する。前側ガイド部130の左右方向中央領域には、前側折り曲げ片部260を挿通させ得る孔部131が設けられている。更に前側ガイド部130の前側の表面には、孔部131の左側と右側それぞれにおいて、前方へ僅かに突出した突起部132が形成されている。初期状態において突起部132は前壁部220の上端より上側に位置するが、前側ガイド部130が下方へ所定量以上移動すると、突起部132の先端は内側前壁部221の後側の表面と摺接する。
【0051】
平面部110は、板バネ部300によって上方に付勢される。また、後側ガイド部120(孔部121の下側の縁部分)が後側折り曲げ片部250(幅広部250a)に当たり、前側ガイド部130(孔部131の下側の縁部分)が前側折り曲げ片部260(幅広部260a)に当たることにより、平面部110の上方への可動範囲が規制される。このように、前後の各幅広部250a,260aが第1要素100に当たることにより、第1要素100の上方への可動範囲が規制される。初期状態では、前後の各折り曲げ片部250,260は、平面部110から上方へ僅かな荷重(初期荷重)を受けている。そのため初期状態でのプリロードにより、平面部110は各折り曲げ片部250,260に密着し、平面部110の位置は安定している。
【0052】
左壁部240の下端の後寄り位置には、下方へ突出した部分241が設けられている。一方、右壁部230の下端の前寄り位置には、下方へ突出した突出部231が設けられている。そしてこれらの突出した部分部231,241の下端部、内側前壁部221と外側前壁部222それぞれの下端部、および、内側後壁部211と外側後壁部212の下端部は同一平面上に位置している。これにより、コンタクトXを下側の接続対象に接続する際、当該平面上に位置するこれら全体(何れも第2要素200に含まれる)を下側の接続対象の平面にはんだ付けし、強固に固定することが可能である。
【0053】
コンタクトXは、上述したように下側の接続対象Ydに固定しておき、この固定された状態のコンタクトXに対して、平面部110の接点部111を押下するように上側の接続対象Yuを近づけることにより、上下それぞれの接続対象Yd,Yuを電気的に接続することが可能である。なお、エンボステープ(梱包資材)に収容されているコンタクトXを取出す際には、平面部110の中央領域を吸着ノズルに吸着させて取出すようにすれば良い。
【0054】
図8はコンタクトXの使用形態を概略的に示しており、図8(a)は、平面部110が移動する前(上側の接続対象Yuが接点部111を押下する前)の初期状態を示す図であり、図8(b)は、平面部110が移動した後の状態を示す図である。上側の接続対象Yuが接点部111を押下すると、板バネ部300の付勢に抗して、図8に白抜き矢印で示すように平面部110を下方へ移動させることができる。なおこの際、平面部110は、下側の接続対象の平面との平行を維持したまま下方へ移動する。
【0055】
平面部110を移動させた状態においては、板バネ部300の弾性力によって上側の接続対象Yuと接点部111は押し合う状態(接触力が生じた状態)となっており、これらを安定的に接触させて、上下の接続対象Yd,Yu同士の電気的接続を安定させることが可能である。本実施形態の例では、平面部110を最大で約0.3mm下方へ移動させることができ、このとき接触力(接点部111が接続対象Yuから受ける力)は、約1.0N(最大移動時)まで徐々に増大する。
【0056】
また、平面部110とともに前後の各ガイド部120,130が下方へ所定量移動すると、これらに設けられた各突起部122,132が、内側前壁部221と内側後壁部211それぞれの内面に接する。これにより、接点部111とハウジングHが板バネ部300のみを介して電気的に繋がると仮定した場合に比べ、上下の接続対象Yd,Yuの間の電気的な物理長を短くすることができ、高周波特性を向上させることができる。また、各突起部122,132を計4個設けた多点接点の形態により、低インピーダンスが実現され、例えばグランドの電位を安定させることが可能である。
【0057】
更にコンタクトXでは、第1要素100および板バネ部300が、接点部111を通る軸を基準として180度回転対称の形状となっており、これらの位置や特性等の偏りは抑えられている。そのため上側の接続対象Yuによって接点部111が押下される際、第1要素100は殆ど傾くことなく下方へ真直ぐに移動し、接続対象Yuは平面部110の上面(接点部111の箇所を除く)に接触しない。また、上下の接続対象Yd,Yuを接続済みとしたコンタクトXを備える製品(携帯電話など)において、振動や衝撃等によって接続対象Yuが上下に振れても、接点部111は上下方向以外に動いたり回転したりしないため、接続対象Yuとの摺動による摩耗(微摺動摩耗)は抑えられる。
【0058】
またコンタクトXは、ハウジングHの上下方向寸法を変更することにより、板バネ部300の弾性力等の特性を変えることなく、上下方向サイズを変更することが可能である。図9に示すコンタクトX1は、ハウジングHの上下方向寸法を大きくして、コンタクトXよりも上下方向サイズを大きくしたものを例示している。このように本実施形態に係るコンタクトは、簡易な寸法変更を実施するだけで、板バネ部300の弾性力や第1要素100の可動量(ワーキングエリアの大きさ)などの特性を変えることなく、用途等に応じて上下方向サイズを調節することができる。
【0059】
図10は、コンタクトX1の製造に用いられる、折り曲げ等の加工前の金属板材の概略的な外観図である。また図11は、当該金属板材におけるコンタクトX1を形成する部分X1aの拡大図である。コンタクトX1は、第1要素100、第2要素200、および板バネ部300が一続きに形成された金属板材の部分X1aに対し、折り曲げ加工等を施すことにより形成可能である。
【0060】
以上に説明したとおり、コンタクトXは、上下それぞれの接続対象を電気的に接続するものであって、上側の接続対象に接続される第1要素100と、下側の接続対象に接続される第2要素200と、第1要素100と第2要素200のそれぞれに連接し、第1要素100を上側の接続対象に向けて付勢する板バネ部300と、を有するように導電性板材が折り曲げられて形成されている。
【0061】
また、第2要素200は、板バネ部300の後方(側方の一例)において内側後壁部211(内側側壁部の一例)と外側後壁部212(外側側壁部の一例)が重なって形成された後壁部210(重複側壁部の一例)、および、板バネ部300の前方(側方の一例)において内側前壁部221(内側側壁部の一例)と外側前壁部222(外側側壁部の一例)が重なって形成された前壁部220(重複側壁部の一例)を有する。このようにコンタクトXは、二枚の板材(内側側壁部と外側側壁部)を重ねて形成された重複側壁部を有するため高剛性となっており、強度が非常に高く、板バネ部300をより確実に保護することが可能である。
【0062】
更に第2要素200は、外側後壁部212から内側へ折り曲げられて形成されている後側折り曲げ片部250、および、外側前壁部222から内側へ折り曲げられて形成されている前側折り曲げ片部260を有する。後側折り曲げ片部250は、第1要素100の上方への可動範囲を規制するとともに、外側後壁部212と内側後壁部211の位置ずれを抑制する。前側折り曲げ片部260は、第1要素100の上方への可動範囲を規制するとともに、外側前壁部222と内側前壁部221の位置ずれを抑制する。
【0063】
このようにコンタクトXでは、第1要素100(接点部111を含む)の可動範囲の制限と板材同士(内側側壁部と外側側壁部)の位置ずれ抑制が、折り曲げ片部を設けることで簡易に実現される。そのためコンタクトXは、比較的簡素な構成でありながら高性能となっており、製造工程の簡素化においても有利となっている。このようにコンタクトXは、板材を重ねて側壁が形成される折曲式付勢型であって、接点部111(上側の接続対象に接触する部分)の可動範囲の制限と板材同士の位置ずれ抑制が簡易に実現可能となっている。
【0064】
本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0065】
100 第1要素
110 平面部
111 接点部
120 前側ガイド部
121 孔部
122 突起部
130 後側ガイド部
131 孔部
132 突起部
200 第2要素
210 後壁部
211 内側後壁部
211a 凹部
211b 凹部対応切り曲げ部
211c 外向き切り曲げ部
211d 窪み部
212 外側後壁部
212a 凹部
212b 凹部対応切り曲げ部
212c 内向き切り曲げ部
220 前壁部
221 内側前壁部
221a 凹部
221b 凹部対応切り曲げ部
221c 外向き切り曲げ部
221d 窪み部
222 外側前壁部
222a 凹部
222b 凹部対応切り曲げ部
222c 内向き切り曲げ部
230 右壁部
240 左壁部
250 後側折り曲げ片部
260 前側折り曲げ片部
300 板バネ部
300a 前側板バネ部
300b 後側板バネ部
H ハウジング
X、X1 コンタクト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11