(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095923
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】ベンダムスチン固体分散体及び持続注入
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4184 20060101AFI20220621BHJP
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C07D 235/16 20060101ALN20220621BHJP
【FI】
A61K31/4184
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A61K47/12
A61K47/02
A61K39/395 D
A61K39/395 N
C07D235/16
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068104
(22)【出願日】2022-04-18
(62)【分割の表示】P 2019217619の分割
【原出願日】2015-03-04
(31)【優先権主張番号】61/952,624
(32)【優先日】2014-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516267625
【氏名又は名称】ブードーリス,バシリオス
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブードーリス,バシリオス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】加水分解物を実質的に含まず、再構成の容易なナイトロジェンマスタード類、例えば、ベンダムスチン塩酸塩の固体分散体、およびその調製方法を提供する。
【解決手段】一例として、ベンダムスチンの非水溶液中にpH調整剤、塩素イオン供給薬剤、賦形剤であるマンニトールあるいはポリマーなどを加えて乾燥することで流動性乾燥粉末を得る。本発明の薬学的組成物は、腫瘍性疾患等のベンダムスチン塩酸塩を用いた治療に感受性のある任意の疾患に使用することができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.1つ以上の賦形剤の固体形態と、
b.結晶性ナイトロジェンマスタード化合物及び非晶質ナイトロジェンマスタード化合物、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択されるナイトロジェンマスタード化合物の固体形態と、を含む、固体分散体組成物。
【請求項2】
前記ナイトロジェンマスタード化合物は、シクロホスファミド、ビスルファン、クロラムブシル、カルムスチン、メルファラン、ウラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、ルムスチン、ならびにそれらの塩及び組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の前記固体分散体。
【請求項3】
前記ナイトロジェンマスタード化合物は、ベンダムスチンである、請求項1に記載の前記固体分散体。
【請求項4】
前記ナイトロジェンマスタード化合物は、ベンダムスチン塩酸塩である、請求項1に記載の前記固体分散体。
【請求項5】
前記ベンダムスチン塩酸塩は、形態1のベンダムスチン塩酸塩、形態2のベンダムスチン塩酸塩、形態3のベンダムスチン塩酸塩、形態4のベンダムスチン塩酸塩、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項4に記載の前記固体分散体。
【請求項6】
前記ベンダムスチン塩酸塩は、形態2のベンダムスチン塩酸塩、形態4のベンダムスチン塩酸塩、もしくは非晶質ベンダムスチン、またはそれらの混合物である、請求項4に記載の前記固体分散体。
【請求項7】
前記ベンダムスチン塩酸塩は、結晶性であり、8.3、14、16.8、18.5±0.2度2θの角度でXRPD回折図上にピークを有する形態を実質的に含まない、請求項4に記載の前記固体分散体。
【請求項8】
前記ベンダムスチン塩酸塩は、結晶性であり、7.9、10.6、15.5、及び19.7±0.2度2θの角度でXRPD回折図上にピークを有する形態を実質的に含まない、請求項4に記載の前記固体分散体。
【請求項9】
前記ベンダムスチン塩酸塩は、非晶質である、請求項4に記載の前記固体分散体。
【請求項10】
1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、または担体を固体形態でさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の前記固体分散体。
【請求項11】
噴霧乾燥固体分散体、流動床噴霧乾燥固体分散体、または造粒固体分散体である、請求項1~10のいずれか一項に記載の前記固体分散体。
【請求項12】
糖賦形剤または糖アルコール賦形剤をさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の前記固体分散体。
【請求項13】
前記賦形剤は、マンニトール、マルチトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、ラクチトール、ラクトース、スクロース、グリコース、マルトース、トレハロース、ブドウ糖、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項12に記載の前記固体分散体。
【請求項14】
前記賦形剤は、マンニトールである、請求項13に記載の前記固体分散体。
【請求項15】
前記マンニトールは、斜方晶系多形αマンニトール、斜方晶系多形βマンニトール、単斜晶系多形δマンニトール、非晶質マンニトール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項14に記載の前記固体分散体。
【請求項16】
ナイトロジェンマスタード化合物対賦形剤の重量比は、5:1~約1:20である、請求項12に記載の前記固体分散体。
【請求項17】
ナイトロジェンマスタード化合物対賦形剤の重量比は、1:1.8である、請求項14に記載の前記固体分散体。
【請求項18】
ナイトロジェンマスタード化合物対賦形剤の重量比は、1:1.2である、請求項14に記載の前記固体分散体。
【請求項19】
ポリマー賦形剤を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の前記固体分散体。
【請求項20】
前記ポリマー賦形剤は、ビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC-AS)、エチレングリコール、プロピレングリコール、炭酸プロピレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルカプロラクタム、酢酸セルロース、エチルセルロース、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、それらのポリマー及びコポリマーからなる群から選択される、請求項19に記載の前記固体分散体。
【請求項21】
非水性の水不混和性溶媒をさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の前記固体分散体。
【請求項22】
前記非水性溶媒は、ペルフルオロヘキサン、ペルフレナペント、ヘキサフルオロベンゼン、ペルフルオロメチルシクロヘキサン、フロリナート、ペルフルオロオクタン、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項21に記載の前記固体分散体。
【請求項23】
非水性の水混和性溶媒または非水性の部分水混和性溶媒をさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の前記固体分散体。
【請求項24】
前記非水性溶媒は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソ-プロパノール、n-ブタノール、酢酸エチル、炭酸ジメチル、アセトニトリル、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、1-ペンタノール、酢酸メチル、四塩化炭素、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド、ヘキサフルオロアセトン、クロロブタノール、ジメチルスルホン、酢酸、シクロヘキサン、n-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、tert-ブチルメチルエーテル、エチルエーテル、ギ酸エチル、酢酸イソプロピル、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸プロピル、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項23に記載の前記固体分散体。
【請求項25】
加水分解物を実質的に含まない、請求項1~24のいずれか一項に記載の前記固体分散体。
【請求項26】
ベンダムスチンに対して3.5または3.0または2.5%未満の加水分解物以外の全ベンダムスチン分解生成物を含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の前記固体分散体。
【請求項27】
任意の分解生成物は、高速液体クロマトグラフィーによってベンダムスチンに対する面積率として測定される、請求項25~26のいずれか一項に記載の前記固体分散体。
【請求項28】
結晶マンニトールのマトリックス中に均一に分散した非晶質ベンダムスチンを含む、請求項1に記載の前記固体分散体。
【請求項29】
結晶マンニトール及び非晶質マンニトールの混合物中に均一に分散した非晶質ベンダムスチンを含む、請求項1に記載の前記固体分散体。
【請求項30】
マンニトールのマトリックス中に均一に分散した非晶質ベンダムスチンを含み、8.3、14、16.8、18.5±0.2度2θでXRPDピーク、または7.9、10.6、15.5、19.7±0.2度2θでピークを示すベンダムスチン結晶形態を実質的に含まない、請求項1に記載の前記固体分散体。
【請求項31】
結晶マンニトールのマトリックス中に均一に分散した非晶質ベンダムスチンを含み、8.3、14、16.8、18.5±0.2度2θでXRPDピーク、または7.9、10.6、15.5、19.7±0.2度2θでピークを示すベンダムスチン結晶形態を実質的に含まない、請求項1に記載の前記固体分散体。
【請求項32】
非晶質ポリマー賦形剤のマトリックス中に均一に分散した非晶質ベンダムスチンを含む、請求項19に記載の前記固体分散体。
【請求項33】
非晶質PVPまたは非晶質HPMC-ASのマトリックス中に均一に分散した非晶質ベンダムスチンを含む、請求項19に記載の前記固体分散体。
【請求項34】
請求項1~33のいずれか一項に記載の前記固体分散体を含む、薬学的組成物。
【請求項35】
ベンダムスチン塩酸塩、マンニトール、及び微量のn-メチル-2-ピロリドン(NMP)またはジメチルスルホキシド(DMSO)を含み、ベンダムスチン塩酸塩対マンニトールの重量比は、約1:1.2または1:1.8である、安定な噴霧乾燥調製物。
【請求項36】
ベンダムスチン塩酸塩、マンニトール、及び微量のn-プロパノールを含み、ベンダムスチン塩酸塩対マンニトールの前記重量比は、約1:1.2または1:1.8である、安定な噴霧乾燥調製物。
【請求項37】
ベンダムスチン塩酸塩、マンニトール、及び微量のn-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、またはn-プロパノールを含み、ベンダムスチン塩酸塩対マンニトールの前記重量比は、約1:1.7である、安定な噴霧乾燥調製物。
【請求項38】
ベンダムスチン塩酸塩、マンニトール、及び微量のペルフルオロヘキサン、またはペルフルオロオクタンを含み、ベンダムスチン塩酸塩対マンニトールの前記重量比は、約1:1.2または約1:1.8.である、安定な噴霧乾燥調製物。
【請求項39】
ベンダムスチン塩酸塩、マンニトール、及び微量のペルフルオロヘキサン、またはペルフルオロオクタンを含み、ベンダムスチン塩酸塩対マンニトールの前記重量比は、約1:1.7である、安定な噴霧乾燥調製物。
【請求項40】
請求項1~39のいずれか一項に記載の前記固体形態または薬学的組成物を含む、薬学的剤形。
【請求項41】
約10mg~約200mgのベンダムスチンを含む、請求項40に記載の前記薬学的剤形。
【請求項42】
約25mgのベンダムスチンを含む、請求項40に記載の前記薬学的剤形。
【請求項43】
約100mgのベンダムスチンを含む、請求項40に記載の前記薬学的剤形。
【請求項44】
約1:1.2のベンダムスチン対マンニトールの重量比でマンニトールを含む、請求項40に記載の前記薬学的剤形。
【請求項45】
約1:1.7のベンダムスチン対マンニトールの重量比でマンニトールを含む、請求項40に記載の前記薬学的剤形。
【請求項46】
約1:1.8のベンダムスチン対マンニトールの重量比でマンニトールを含む、請求項40に記載の前記薬学的剤形。
【請求項47】
ベンダムスチン流動性乾燥粉末調製物を調製する方法であって、
a.ベンダムスチンを水溶液中に約1%~約100%(v/v)で溶解して予備乾燥溶液を形成することと、
b.前記予備乾燥溶液を乾燥させることと、を含む、前記方法。
【請求項48】
前記水溶液は、pH調整剤と、加水分解物の形成を最小限に抑える塩素イオンを提供する薬剤と、を含む、請求項47に記載の前記方法。
【請求項49】
前記乾燥ステップは、噴霧乾燥、流動床噴霧乾燥、噴霧造粒、連続凍結乾燥、またはそれらの組み合わせを含む、請求項47に記載の前記方法。
【請求項50】
前記水性溶媒の濃度は、約1%~約99.99%である、請求項47に記載の前記方法。
【請求項51】
前記pH調整剤または塩素イオンを提供する薬剤は、トリフルオロ酢酸、フルオロ酢酸、酢酸、クエン酸、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウムのうちの1つ以上から選択される、請求項47に記載の前記方法。
【請求項52】
賦形剤は、乾燥前に加えられる、請求項47に記載の前記方法。
【請求項53】
前記乾燥粉末調製物中のベンダムスチン対賦形剤の重量比は、5:1~1:20である、請求項52に記載の前記方法。
【請求項54】
前記乾燥粉末調製物中のベンダムスチン対賦形剤の前記重量比は、約1:1.2または約1:1.8である、請求項52に記載の前記方法。
【請求項55】
前記乾燥粉末調製物中のベンダムスチン対賦形剤の前記重量比は、約1:1.7である、請求項52に記載の前記方法。
【請求項56】
前記賦形剤は、マンニトール、ポリビニルピロリドン、HPMC-ASのうちの1つ以上から選択される、請求項52に記載の前記方法。
【請求項57】
ベンダムスチン乾燥粉末調製物を調製する方法であって、:
a.ベンダムスチンを非水溶液中に約1%~約100%(v/v)で溶解して予備乾燥溶液を形成することと、
b.前記予備乾燥溶液を乾燥させることと、を含む、前記方法。
【請求項58】
前記水溶液は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソ-プロパノール、n-ブタノール、酢酸エチル、炭酸ジメチル、アセトニトリル、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、1-ペンタノール、酢酸メチル、四塩化炭素、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド、ヘキサフルオロアセトン、クロロブタノール、ジメチルスルホン、酢酸、シクロヘキサン、n-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、tert-ブチルメチルエーテル、エチルエーテル、ギ酸エチル、酢酸イソプロピル、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸プロピル、ペルフルオロヘキサン、ペルフレナペント、ヘキサフルオロベンゼン、ペルフルオロメチルシクロヘキサン、フロリナート、ペルフルオロオクタン、またはそれらの混合物からなる群から選択される有機溶媒を含む、請求項57に記載の前記方法。
【請求項59】
前記乾燥ステップは、噴霧乾燥、流動床噴霧乾燥、噴霧造粒、連続凍結乾燥、またはそれらの組み合わせを含む、請求項57に記載の前記方法。
【請求項60】
前記水性溶媒の濃度は、約1%~約99.99%である、請求項57に記載の前記方法。
【請求項61】
賦形剤は、乾燥前に加えられる、請求項57に記載の前記方法。
【請求項62】
前記乾燥粉末調製物中のベンダムスチン対賦形剤の重量比は、5:1~1:20である、請求項61に記載の前記方法。
【請求項63】
前記乾燥粉末調製物中のベンダムスチン対賦形剤の前記重量比は、約1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、または1:6である、請求項61に記載の前記方法。
【請求項64】
前記賦形剤は、ポリビニルピロリドンまたはHPMC-ASのうちの1つ以上から選択される、請求項61に記載の前記方法。
【請求項65】
ベンダムスチン乾燥粉末調製物を調製する方法であって、
a.連続動作モードにおいて、ベンダムスチン及び水混和性有機溶媒または水不混和性有機溶媒または部分水混和性有機溶媒を、水を用いたときのその飽和点よりも高い合計濃度で含む非水溶液を、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む水溶液と組み合わせるステップと、
b.前記得られた組み合わせ溶液を乾燥させるステップと、を含む、前記方法。
【請求項66】
組み合わせた後の前記非水性溶媒の濃度は、約1%~約100%(v/v)である、請求項65に記載の前記方法。
【請求項67】
前記乾燥ステップは、噴霧乾燥、流動床噴霧乾燥、噴霧造粒、連続凍結乾燥、またはそれらの組み合わせを含む、請求項65に記載の前記方法。
【請求項68】
前記ベンダムスチンの濃度は、前記非水性溶媒中で約0.25~200mg/mLである、請求項65に記載の前記方法。
【請求項69】
前記非水溶液及び水溶液は、5:1~1:20の前記乾燥粉末中のベンダムスチン対賦形剤の比を提供する割合で組み合わせられる、請求項65に記載の前記方法。
【請求項70】
前記非水溶液及び水溶液は、約1:1.2、約1:1.7、または約1:1.8の前記乾燥粉末中のベンダムスチン対賦形剤の比を提供する割合で組み合わせられる、請求項65に記載の前記方法。
【請求項71】
前記薬学的に許容される賦形剤は、マンニトールである、請求項65に記載の前記方法。
【請求項72】
前記乾燥ステップは、
a.1つ以上の噴霧器ノズルを通して乾燥チャンバ内に前記予備乾燥溶液(複数可)を連続的に供給することと、
b.高エンタルピーの空気または不活性ガスまたはそれらの組み合わせを、真空を適用してまたは適用せずに、前記乾燥チャンバ内に連続的に吹き込むことと、を含む、請求項47または57または65に記載の前記方法。
【請求項73】
請求項47~72のいずれか一項に記載の前記方法から得られる、乾燥粉末。
【請求項74】
約0.25~約300mg/mLの濃度のベンダムスチン、約0.25mg/mL~約500mg/mLの濃度の賦形剤、及び水不混和性または部分水混和性の非水性溶媒を含む、連続乾燥のための予備乾燥製剤。
【請求項75】
約0.25~約300mg/mLの濃度のベンダムスチン、約0.25mg/mL~約500mg/mLの濃度の賦形剤、pH調整剤、及び水を含む、連続乾燥のための予備乾燥製剤。
【請求項76】
0.25mg/ml~300mg/mlの濃度の水混和性または水不混和性または部分水混和性の非水性溶媒中のベンダムスチンの第1の製剤、及び0.25mg/ml~500mg/mlの濃度の水溶液中のマンニトールの第2の製剤を含む、連続乾燥のための予備乾燥製剤のセット。
【請求項77】
患者における医学的状態を治療するための方法であって、請求項1~76のいずれか一項に記載の前記調製物を薬学的に許容される溶媒に溶解させて薬学的に許容される溶液を生成するステップと、前記患者に治療有効量の前記溶液を投与するステップと、を含み、前記状態は、前記調製物を用いた治療に適している、前記方法。
【請求項78】
前記状態は、慢性リンパ性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、乳癌、小細胞肺癌、及び/または自己免疫疾患からなる群から選択される、請求項77に記載の前記治療方法。
【請求項79】
1つ以上の抗腫瘍剤と併用して投与することを含む、請求項78に記載の前記治療方法。
【請求項80】
前記抗腫瘍剤は、CD20に特異的な抗体である、請求項79に記載の前記治療方法。
【請求項81】
薬学的に許容される容器内にベンダムスチンの量に対してHP1を実質的に含まないベンダムスチンを含み、HP1の量は、製造開始の時点で測定される、非経口投与のための薬学的剤形。
【請求項82】
前記薬学的に許容される容器は、約10~約500mg/容器のベンダムスチンを含む、請求項81に記載の前記薬学的剤形。
【請求項83】
5、3、2、1分以内、または1分未満で薬学的に許容される形態に再構成され得る、請求項81に記載の前記薬学的剤形。
【請求項84】
約1:1.8、約1:1.7、または約1:1.2のベンダムスチン対マンニトールの重量比でマンニトールをさらに含有する、請求項83に記載の前記薬学的剤形。
【請求項85】
前記HP1の量は、製造開始の時点で測定される、請求項4に記載の前記固体分散体を含む経口薬学的剤形。
【請求項86】
ベンダムスチン生成物に関する行政庁の認可を得るための方法であって、改善は、製造開始の時点でHP1を実質的に含まないベンダムスチン生成物について3.5%(ベンダムスチンの面積率)未満のベンダムスチン分解物の出荷規格を設定することを含む、前記方法。
【請求項87】
最終生成物中のベンダムスチン分解物の濃度を、それらが製造開始の時点でHP1を実質的に含まないように、またベンダムスチン分解物の前記濃度が有効期限切れの時点で6.0%未満となるように制御することを含む、ベンダムスチンの乾燥粉末調製物を製造するためのプロセスであって、前記生成物は、5℃~25℃で保存される、前記プロセス。
【請求項88】
ナイトロジェンマスタード化合物を患者に投与するための方法であって、
a.静脈内輸液の流れを、ナイトロジェンマスタード化合物を含む第2の溶液と30、20、10、5秒以下の期間にわたって接触させるステップと、
b.前記溶液を連続動作モードで混合して混合溶液を提供するステップと、
c.前記混合溶液を前記患者に投与し、それによって前記ナイトロジェンマスタード化合物の用量を5、10、15、20、30、45、60分の期間にわたって送達するステップと、を含む、前記方法。
【請求項89】
前記第2の溶液は、約30、15、10、5、2.5、1mg/mlの濃度のベンダムスチン塩酸塩と、ベンダムスチンに対して3.5または3.0または2.5%未満の加水分解物以外の全ベンダムスチン分解生成物と、を含む、請求項88に記載の前記方法。
【請求項90】
第2の溶液は、マンニトールまたはPVPをさらに含む、請求項88に記載の前記方法。
【請求項91】
a.前記静脈内輸液を含む第1の貯留器と、
b.前記第2の溶液を含む第2の貯留器と、
c.前記静脈内輸液と前記第2の溶液とを混合することが可能な混合デバイスと、
d.前記混合溶液を患者の血流に送達することが可能な送達デバイスと、
e.前記貯留器を前記混合デバイスと動作可能に連結する第1の槽と、
f.バイアルを前記混合デバイスと動作可能に連結する第2の槽と、
g.前記混合デバイスを前記送達デバイスと動作可能に連結する第3の槽と、を備える、請求項88に記載の前記方法のための、装置。
【請求項92】
前記静脈内輸液の流量を制御する事が可能な第1のポンプと、前記第2の溶液の流量を制御する事が可能な第2のポンプと、をさらに備える、請求項91に記載の前記装置。
【請求項93】
約0.9%の塩化ナトリウム、約0.8、0.6、0.4、0.2mg/mlのベンダムスチン塩酸塩、及びベンダムスチンに対して3.5または3.0または2.5%未満の全ベンダムスチン分解生成物を含み、加水分解物を実質的に含まない、輸液。
【請求項94】
約0.9%塩化ナトリウム、約0.8、0.6、0.4、0.2mg/mlのベンダムスチン塩酸塩、及びベンダムスチンに対して3.5または3.0または2.5%未満の全ベンダムスチン分解生成物を含み、HP1を実質的に含まない、輸液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年3月13日に出願された米国仮特許出願第61/952,624号の利益を主張するものであり、参照により、その内容全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
種々の病態、例えば、腫瘍性疾患及び自己免疫疾患の治療のための薬学的組成物、それらの使用方法、及びそれらの調製方法が、本明細書に提供される。有用な薬学的組成物は、ナイトロジェンマスタード、例えば、ナイトロジェンマスタードベンダムスチン、例えば、ベンダムスチン塩酸塩を含む。
【背景技術】
【0003】
以下の説明は、本発明の実施形態を理解する上で有用であり得る情報を含む。これは、いずれかのそのような情報が、本明細書において請求される実施形態の先行技術であるか、もしくはそれに関連しているということ、または具体的にもしくは暗示的に参照されるいずれかの刊行物が先行技術であるということを認めるものではない。
【0004】
ナイトロジェンマスタードは、水溶液中におけるそれらの高い反応性のために、医薬品として調合することが困難である場合があり、また、それらはしばしば、通常、投与前に熟練の病院職員による水中での再構成を必要とする凍結乾燥形態での投与のために供給される。水溶液に入れられると、ナイトロジェンマスタードは加水分解による分解に供される:したがって、再構成された生成物は、その再構成後はできるだけ迅速に患者に投与されるべきである。
【0005】
ベンダムスチン、4-{5-[ビス(2-クロロエチル)アミノ]-1-メチル-2-ベンズイミダゾリル}酪酸は、式Iによるベンズイミダゾール環及び活性ナイトロジェンマスタードを含む。
【0006】
【化1】
また、ベンダムスチンは、以下によっても特定される:5-(Bis(2-クロロエチル)アミノ)-1-メチル-2-ベンズイミダゾール酪酸;HSDB 7763;SDX-105;及びUNII-9266D9P3PQ。ベンダムスチンは、Chemical Abstracts Service登録番号16506-27-7及び3543-75-7(塩酸塩)によってさらに特定される。
【0007】
ベンダムスチンは、ドイツ共和国(GDR)で1963年に最初に合成され、1971~1992年には、その地域でCytostasan(登録商標)の名称で入手可能であった。その時以来、ドイツでは商品名Ribomustin(登録商標)として販売されてきた。これは、慢性リンパ性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、及び乳癌を治療するために、ドイツで広く使用されてきた。
【0008】
(他のナイトロジェンマスタードと同様に)水溶液中で分解するため、現在、ベンダムスチンは、凍結乾燥生成物として供給されている。現在のベンダムスチンの凍結乾燥製剤(Ribomustin(登録商標)、Treanda(登録商標))は、無菌凍結乾燥形態のベンダムスチン塩酸塩及びマンニトールを、再構成後の静脈内使用のための白色粉末として含有する。最終凍結乾燥物は、光に曝露されたときに不安定であり得る。したがって、生成物は、褐色または琥珀色のガラス瓶に保存される。現在のベンダムスチンの凍結乾燥製剤は、原体の製造中及び/または最終製剤を作製するための凍結乾燥プロセス中に生じ得る分解生成物を含有する。
【0009】
現在、ベンダムスチン製剤Ribomustin(登録商標)は、50mLバイアル当たり100mgの薬物、または20mLバイアル当たり25mgの薬物を含む、注射用の凍結乾燥粉末として調合される。バイアルは、できる限り患者の投与時間近くに開けられ、再構成される。生成物は、40mL(100mg表示の場合)または10mL(25mg表示の場合)の滅菌注射用水で再構成される。再構成された生成物は、適量の0.9%注射用塩化ナトリウムで500mLにさらに希釈される。投与経路は、30~60分にわたる静脈内注入によるものである。
【0010】
滅菌注射用水を用いた再構成後、Ribomustin(登録商標)のバイアルは、室温保存下で7時間、または2~8℃の保存下で6日間の期間安定である。500mL混合液は、(混合物の室温保存であると仮定して)バイアル再構成の7時間以内に患者に投与されなければならない。
【0011】
現在、ベンダムスチン製剤Treanda(登録商標)は、50mLバイアル当たり100mgの薬物または20mLバイアル当たり25mgの薬物を含む注射用の凍結乾燥粉末として調合されている。バイアルは、できる限り患者の投与時間近くに開けられ、再構成される。生成物は、20mL(100mg表示の場合)または5mL(25mg表示の場合)の滅菌注射用水で再構成される。再構成された生成物は、適量の0.9%注射用塩化ナトリウムで500mLにさらに希釈される。0.9%注射用塩化ナトリウムの代替として、2.5%ブドウ糖/0.45%注射用塩化ナトリウムが考慮され得る。投与経路は、30~60分にわたる静脈内注入によるものである。
【0012】
滅菌注射用水を用いた再構成後、Treanda(登録商標)のバイアルは、室温保存下(15~30℃)で3時間、または2~8℃の保存下で24時間の期間安定である。500mL混合液は、この期間内に患者に投与されなければならない。
【0013】
Ribomustin(登録商標)凍結乾燥粉末の再構成は困難である。臨床からの報告は、再構成が少なくとも15分を必要とし得ること、及び30分もの長さを必要とし得ることを示している。Treanda(登録商標)の再構成もまた困難である。Treanda(登録商標)の表示は、再構成に5分間必要であることを示している。生成物を再構成する責任のある医療従事者にとって煩雑で時間がかかること以外にも、再構成プロセス中のベンダムスチンの水への長期曝露が、水による生成物の加水分解に起因する効力の損失および不純物形成の可能性を増大させる。
【0014】
よって、再構成しやすく、現在のベンダムスチンの凍結乾燥物(凍結乾燥粉末)製剤よりも良好な不純物プロファイルを有する、ベンダムスチンの固体分散体の必要性が存在する。また、例えば、再構成または注入プロセス中に、ベンダムスチンの水への曝露を低減させ、したがって、水による化合物の加水分解に起因する潜在的な効力の損失および/または不純物形成を最小限に抑えるかまたは排除する必要性も存在する。
【発明の概要】
【0015】
ベンダムスチン塩酸塩の固体分散体、及びそれらの調製方法が、本明細書に提供される。ベンダムスチンの固体分散体は、種々の病態、例えば、腫瘍性疾患及び自己免疫疾患の治療に有用である。
【0016】
一態様において、1つ以上の賦形剤の固体形態と、ナイトロジェンマスタード化合物の固体形態とを含む固体分散体が、本明細書に提供される。有用な賦形剤及びナイトロジェンマスタード化合物を以下に記載する。特定の実施形態において、ナイトロジェンマスタード化合物は、ベンダムスチン、例えば、ベンダムスチン塩酸塩である。特定の実施形態において、賦形剤はマンニトールである。
【0017】
特定の実施形態において、マンニトールの固体形態と、ベンダムスチン塩酸塩の固体形態とを含む固体分散体が、本明細書に提供される。特定の実施形態において、マンニトールの固体形態は、斜方晶系多形αマンニトール、斜方晶系多形βマンニトール、単斜晶系多形δマンニトール、非晶質マンニトール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の実施形態において、ベンダムスチン塩酸塩は、結晶性ベンダムスチン塩酸塩及び非晶質ベンダムスチン塩酸塩から選択される。特定の実施形態において、ベンダムスチン塩酸塩は、形態1のベンダムスチン塩酸塩、形態2のベンダムスチン塩酸塩、形態3のベンダムスチン塩酸塩、形態4のベンダムスチン塩酸塩、およびそれらの混合物から選択される。特定の実施形態において、ベンダムスチン塩酸塩は、非晶質ベンダムスチン塩酸塩である。特定の実施形態において、ベンダムスチン塩酸塩は、非晶質ベンダムスチン塩酸塩と、ベンダムスチン塩酸塩の1つ以上の結晶形態との混合物である。特定の実施形態において、固体分散体は、1つ以上の加水分解物を実質的に含まない。
【0018】
別の態様において、ベンダムスチン塩酸塩の固体形態と、非水溶液中に溶解させることができる1つ以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む固体分散体が、本明細書に提供される。特定の実施形態において、固体分散体は、結晶性賦形剤もしくは非晶質賦形剤、またはそれらの組み合わせを含む。特定の実施形態において、ベンダムスチン塩酸塩は、形態1のベンダムスチン塩酸塩、形態2のベンダムスチン塩酸塩、形態3のベンダムスチン塩酸塩、形態4のベンダムスチン塩酸塩、及びそれらの混合物から選択される。特定の実施形態において、ベンダムスチン塩酸塩は、非晶質ベンダムスチン塩酸塩である。特定の実施形態において、ベンダムスチン塩酸塩は、非晶質ベンダムスチン塩酸塩と、ベンダムスチン塩酸塩の1つ以上の結晶形態との混合物である。特定の実施形態において、固体分散体は、1つ以上の加水分解物を実質的に含まない。
【0019】
別の態様において、ナイトロジェンマスタード化合物を含む固体分散体が、本明細書に提供される。特定の実施形態において、ナイトロジェンマスタード化合物は、ベンダムスチン以外である。特定の実施形態において、化合物は、シクロホスファミド、ベンダムスチン、ビスルファン、クロラムブシル、カルムスチン、メルファラン、ウラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、ルムスチン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。また、固体分散体を作製する方法も提供される。そのような方法は、限定されないが、噴霧乾燥、凍結乾燥、溶融押出、エレクトロスピニング、超臨界流体技術、融解凝集、界面活性剤(複数または単数)の使用、溶媒蒸発、及び融解蒸発を含む。本発明は、これらの固体分散体を得るための噴霧乾燥の使用を教示するが、これは、当業者によって他の方法に拡張されてもよい。
【0020】
別の態様において、ナイトロジェンマスタード化合物の固体分散体の調製方法が、本明細書に提供される。本明細書の他の実施形態は、連続予備乾燥混合、乳化、コロイド懸濁に続く連続乾燥法、例えば、噴霧乾燥、流動床噴霧乾燥、連続凍結乾燥の使用を必要とする、薬学的に許容される賦形剤(複数可)を含む、ベンダムスチン以外のナイトロジェンマスタード系抗腫瘍剤の固体分散体の調製方法を対象とする。得られた乾燥粉末粒子は、加水分解物を本質的に含まず、化学的及び物理的安定性ならびに粉末流動性等の望ましい粉末粒子の属性を示す。
【0021】
本明細書の他の実施形態は、分解物を実質的に含まない固体分散体を提供するために、そのような少量のベンダムスチン分解生成物をさらに含有するベンダムスチン塩酸塩の固体分散体を含む組成物を対象とする。当業者には既知であるように、たとえ少量の分解生成物であっても、固体熱力学、物理的特性、機械的特性、物理的及び化学的安定性、溶解度、溶解速度、固体及び粉末形態、粒子流動特性等に多大な影響を与え得る。
【0022】
別の態様において、ナイトロジェンマスタード化合物、例えばベンダムスチンの持続注入のためのシステム及び方法が、本明細書に提供される。この方法では、静脈内注射溶液が、ナイトロジェンマスタード化合物を含む溶液と接触させられる。溶液は、好ましくは制御された流量で接触させられる。特定の実施形態において、溶液は、混合デバイスによって混合される。特定の実施形態において、ナイトロジェンマスタード化合物の用量は、30分以下で送達される。さらなる実施形態において、該方法のための組成物および装置も提供される。特定の実施形態において、(バッチの代わりに)連続動作モードによって提供される、静脈内輸液とナイトロジェンマスタード化合物溶液との短い接触時間は、ナイトロジェンマスタード化合物の加水分解物の形成を最小限に抑えることができる。特定の実施形態において、ナイトロジェンマスタード化合物は、ベンダムスチン、例えばベンダムスチン塩酸塩である。
【0023】
当業者によれば、本明細書に提供される組成物は、ベンダムスチン等のナイトロジェンマスタードが有効であり得る任意の状態の治療に有用である。特定の実施形態において、状態は、腫瘍性疾患及び/または自己免疫性疾患の治療に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】分解物を実質的に含まない、マンニトールを含むベンダムスチン塩酸塩の固体分散体であるバッチ1の熱重量分析(TGA)のサーモグラムを提供する。噴霧乾燥粉末は、非常に低い水分及び残留溶媒を有する。
【
図2】分解物を実質的に含まない、マンニトールを含むベンダムスチン塩酸塩の固体分散体であるバッチ2の熱重量分析(TGA)のサーモグラムを提供する。噴霧乾燥粉末は、非常に低い水分及び残留溶媒を有する。
【
図3】分解物を実質的に含まない、マンニトールを含むベンダムスチン塩酸塩の固体分散体であるバッチ1からの粒子の偏光顕微鏡画像を提供する。
【
図4】分解物を実質的に含まない、マンニトールを含むベンダムスチン塩酸塩の固体分散体であるバッチ2からの粒子の偏光顕微鏡画像を提供する。
【
図5】分解物を実質的に含まない、マンニトールを含むベンダムスチン塩酸塩の固体分散体であるバッチ1のX線粉末回折図(XRPD)を提供する。
【
図6】米国特許第8445524号に報告されるようなベンダムスチン塩酸塩及びマンニトールを含有する凍結乾燥ケーキのX線粉末回折図(XRPD)を提供する。
【
図7】分解物を実質的に含まない、PVPを含むベンダムスチン塩酸塩の固体分散体であるバッチ3のX線粉末回折図(XRPD)を提供する。
【
図8】分解物を実質的に含まない、PVPを含むベンダムスチン塩酸塩の固体分散体であるバッチ3からの粒子の偏光顕微鏡画像を提供する。
【
図9】分解物を実質的に含まない、HPMC/ASを含むベンダムスチン塩酸塩の固体分散体であるバッチ4のX線粉末回折図(XRPD)を提供する。
【
図10】水混和性有機溶媒が使用される場合に、ベンダムスチン塩酸塩の固体分散体を得るために使用され得る噴霧乾燥システムの図を提供する。
【
図11】水不混和性または部分混和性の有機溶媒が使用される場合に、ベンダムスチン塩酸塩の固体分散体を得るために使用され得る噴霧乾燥システムの図を提供する。
【
図12】注入中に、ならびに注入ポンプ及びインライン(または静的)ミキサーを用いる間に、加水分解物の形成を最小限に抑える持続注入システムの図を提供する。インラインミキサーは、ポンプと一体化されるか、またはポンプの下流にあるかのいずれかであり得る。
【
図13】注入中、及びその動作が重力によって駆動される間に、加水分解物の形成を最小限に抑える持続注入システムの図を提供する。望ましい滴定特性は、点滴用バルブによって得られる。
【0025】
例示的な実施形態の説明
ナイトロジェンマスタード化合物の固体分散体を含む組成物、それらの調製方法、及びそれらの使用方法が、本明細書に提供される。
【0026】
定義
本明細書に提供される組成物に言及する場合、別途指定のない限り、以下の用語は以下の意味を有する。別途定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書の1つの用語に対して複数の定義が存在する場合、別途記載のない限り、本節における定義が優先されるものとする。
【0027】
用語「固体分散体」は、ポリマーマトリックス及び薬物を含む固体生成物を指す。マトリックスは、結晶性または非晶質のいずれかであり得る。薬物は、非晶質粒子、例えばクラスター中に、または結晶粒子中に、分子状に分散させることができる。特定の実施形態において、固体分散体は、以下の形態のうちのいずれかであるか、またはそれらの任意の組み合わせである:a)単純な共融混合物、b)固溶体(連続、不連続、置換、侵入型、非晶質)、c)ガラス溶液、及びd)結晶担体中の非晶質沈殿物。特定の実施形態において、特定のより複雑な組み合わせに遭遇する場合があり、すなわち、同じ試料中で、ある分子はクラスターとして存在するが、ある分子は分子状に分散する。
【0028】
冶金、地質学、化学及び化学工学の分野の当業者には、固体分散体の物理的特性、形態学的特性、機械的特性、及び他の特性が、組成のみならず、分散体が得られる方法(例えば、溶融からの急速冷却を介して、またはエージングサイクルによって)にも依存し得ることは周知である。これは、主として、これらの動的事象がその後の分散体の固体格子及び表面熱力学に与える影響によるものである。例えば、同じ組成を有するが、異なる生成方法によって得られた製剤の固体分散体は、より熱力学的に安定した固体分散体が、あまり熱力学的に安定していない固体分散体よりも溶解度が低くなるように異なる溶解度を有し得る。また固体分散体は、保存期間、生体学的利用能、形態、密度、色、及び圧縮率等の特性において異なる可能性がある。したがって、製剤の固体分散体の特性の多様化は、その物理的及び薬理学的特性を調整する多くの方法のうちの1つである。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「結晶性」は、分子または外部平面の規則的に繰り返す配置を有することを意味する。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「結晶組成物」は、X線粉末回折によって分析された場合にピークの特徴的パターンを提供する固体化合物または化合物の混合物を指し、これは、限定されないが、多形、溶媒和物、水和物、共結晶、及び脱溶媒和された溶媒和物を含む。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される賦形剤」は、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張性および吸収遅延剤等を含む。薬学的活性物質のためのそのような媒体及び薬剤の使用は周知であり、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th ed.;Gennaro,A.R.,Ed.;Lippincott Williams&Wilkins:Philadelphia,PA,2000等に見られる。いずれかの従来の媒体または薬剤が活性成分と不適合性である場合を除いて、治療生成物におけるその使用が企図される。補助的な活性成分も、組成物中に組み込まれ得る。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「溶液」は、少なくとも1つの溶媒と、溶媒中に少なくとも部分的に溶解された少なくとも1つの化合物とを含有する混合物を指す。本明細書で使用される場合、用語「溶媒」は、本明細書に定義されるような溶質及び有機溶媒によって形成される種々の化学量論の結晶組成物を意味する。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「連続動作モード」は、指定期間内のシステム/装置への流入およびそこからの流出が非ゼロ値であるシステム及び/または装置を操作するモードを指す。例えば、「連続ミキサー」は、2つの異なる流入物を、それらを混合する/組み合わせる目的でミキサー内に供給する連続的に動作する2つのポンプ(複数可)と、組み合わされた流出物をミキサーから受け取る連続噴霧乾燥機との間に画定される装置を指し得る。「連続動作モード」は、同じ時間枠内で、システム/装置への流入およびそこからの流出の断続的動作によって特徴付けられる「バッチ動作モード」とは異なる。例えば、「バッチミキサー」は、最初に2つの異なる流入物を1つの槽に供給し、次いで、停止して、(例えば、撹拌によって)混合を引き起こすことが可能な、非連続的に動作する2つのポンプ間に画定される装置を指し得る。混合が達成されたら、(これまでゼロの値を維持していた)混合槽からの流出が非ゼロ値をとり、槽の内容物が噴霧乾燥機内に空けられる。2つの異なる動作モード間の主な違いの1つは、これらが混合効率に関しては同じ結果を得ることができるのに対し、組み合わされた2つの流入流間の全体的な接触時間は、連続動作モードにおいて著しく短いということである。混合による静脈内注入の場合、「連続動作モード」は、混合チャンバ内への少なくとも2つの溶液の途絶えることのない流れが存在し、得られた混合流が患者への投与のためであることを意味する。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「エマルション」は、通常は不混和性であるか、または非常に低い混和性を示す2つの液体の混合物を指す。そのようなエマルションは、例えば、水と、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロオクタン、ペルフレナペント、ヘキサフルオロベンゼン、またはペルフルオロメチルシクロヘキサン等の水不混和性溶媒とを混合することによって得ることができる。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「溶媒」は、典型的には固体である別の物質を完全にまたは部分的に溶解させることが可能な物質、典型的には液体を意味する。有用な溶媒は、限定されないが、水、酢酸、アセトン、アセトニトリル、ベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、1,4-ジオキサン、エタノール、酢酸エチル、ブタノール、tert-ブタノール、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、ギ酸、ヘプタン、ヘキサン、イソプロパノール、メタノール、メチルエチルケトン(ブタノン)、1-メチル-2ピロリジノン、メシチレン、ニトロメタン、ポリエチレングリコール、プロパノール、2-プロパノン、プロピオニトリル、ピリジン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、ペルフルオロヘキサン、ペルフレナペント、ヘキサフルオロベンゼン、ペルフルオロメチルシクロヘキサン、フロリナート、ペルフルオロオクタン、tert-ブチルメチルエーテル、エチルエーテル、ギ酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸プロピル、それらの混合物等を含む。
【0036】
用語「実質的に含まない」は、特定の形態のベンダムスチン塩酸塩を含有する一方で、該化合物の他の形態を「実質的に含まない」組成物に関して本明細書で使用される場合、列挙される形態が、他の列挙される形態のベンダムスチン塩酸塩の10%未満、好ましくは5%未満、特に2%未満、及び最も好ましくは1%未満と関連していることを意味する。用語「実質的に含まない」は、ベンダムスチン塩酸塩を含有する一方で、該化合物の分解物を「実質的に含まない」組成物に関して本明細書で使用される場合、列挙される形態が、水溶液及び非水溶液中でベンダムスチン塩酸塩の分解物の2%未満、好ましくは1%未満、より好ましくは0.5%未満、特に0.1%未満、及び最も好ましくは0.05%未満と関連していることを意味する。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「噴霧乾燥または均等物」は、連続的または断続的に乾燥チャンバ内に導入される溶液からなる乾燥ユニットの動作を指す。溶液は、限定的ではないが、通常、乾燥チャンバの上部または底部のいずれかに位置する1つ以上の噴霧ノズルを通して通常導入されるが、限定的ではない。溶液の液滴は、チャンバ内の熱勾配、質量勾配、または運動量勾配によって乾燥される。これらの勾配は、高温のプロセスガス流及び/または流動床形態の粒子のいずれかによって提供される。溶液の液滴を乾燥させることによって形成される粒子は、特定の粒子特性または乾燥レベルを得るために乾燥チャンバ内に再循環されてもまたはされなくてもよい。乾燥チャンバの動作圧力は、大気圧より高いか、同じか、または低くてもよい。結果として、乾燥チャンバ内の動作温度プロファイルは、100℃超(1atm超の動作温度の場合)~0℃未満(高真空の場合)の範囲であり得る(水系溶液の場合)。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語「治療有効量」は、所与の投与経路について、確立された薬物動態学的方法および技術にしたがって測定された場合に、所与の薬物で意図される及び該薬物と関連する生理的効果をもたらすために必要であると判断される量を示す。適切なかつ特定の治療有効量は、従来の技術を使用することにより、当業者としての担当診断医によって容易に決定され得る。有効用量は、疾患または障害の進行の種類及び程度、特定の患者の全体的な健康状態、選択される化合物の相対的な生物学的有効性、活性薬剤と適切な賦形剤との調合、ならびに投与経路を含む多数の要因に依存して変化する。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「分解物」は、ベンダムスチンを含む薬学的組成物の調製中に得られたベンダムスチンの化学副反応の生成物を指す。これらは、限定されないが、ベンダムスチンの加水分解の生成物を含む。
【0040】
用語「HP1」は、式IIの化合物を指す。
【0041】
【0042】
用語「ベンダムスチン二量体」は、式IIIの化合物を指す。
【0043】
【0044】
用語「ベンダムスチンエチルエステル」及び「BM1EE」は、式IVの化合物を指す。
【0045】
【0046】
用語「des-クロロエチルベンダムスチン」及び「BM1DCE」は、式Vの化合物を指す。
【0047】
【0048】
用語「HP2」は、式VIの化合物を指す。
【0049】
【0050】
「ベンダムスチン結晶多形形態1」(形態1)という用語は、8.3、14、16.8、18.5±0.2度2θのうちの少なくとも2つ、3つ、または4つでXRPD回折図上に反射を示すベンダムスチンの結晶多形を指す。
【0051】
「ベンダムスチン結晶多形形態2」(形態2)という用語は、10.6、15.1、18.9、23.1±0.2度2θのうちの少なくとも2つ、3つ、または4つでXRPD回折図上に反射を示すベンダムスチンの結晶多形を指す。
【0052】
「ベンダムスチン結晶多形形態3」(形態3)という用語は、7.9、10.6、15.5、19.7±0.2度2θのうちの少なくとも2つ、3つ、または4つでXRPD回折図上に反射を示すベンダムスチンの結晶多形を指す。
【0053】
「ベンダムスチン結晶多形形態4」(形態4)という用語は、10.8、15.5、19.6、及び23.5±0.2度2θのうちの少なくとも2つ、3つ、または4つでXRPD回折図上に反射を示すベンダムスチンの結晶多形を指す。
【0054】
用語「約」は、特定の値を上回る及び下回る許容度を指す。当業者は、ある値に関する範囲がその値から実質的に逸脱しない数量を包含することを認識するであろう。特定の実施形態において、用語「約」は、ある値からの1標準偏差を包含する範囲を指す。特定の実施形態において、用語「約」は、ある値の±2%を包含する範囲を指す。特定の実施形態において、用語「約」は、ある値の±1%を包含する範囲を指す。特定の実施形態において、用語「約」は、その値の最後の有効数字の後の±2単位を包含する範囲を指す。例えば、「約1.5」は、1.5±0.02を指すことができる。特定の実施形態において、用語「約」は、その値の最後の有効数字の後の±1単位を包含する範囲を指す。例えば、「約1.5」は、1.5±0.01を指すことができる。
【0055】
組成物
薬学的に許容される賦形剤を含むベンダムスチン塩酸塩の固体分散体が、本明細書に提供される。これらのベンダムスチン塩酸塩の固体分散体に関するスペクトルデータおよび顕微鏡データは、
図1~9に示され、これらの形態の各々を調製する方法が提供される。
【0056】
一態様において、1つ以上の賦形剤の固体形態と、ナイトロジェンマスタード化合物の固体形態とを含む固体分散体が、本明細書に提供される。有用な賦形剤及びナイトロジェンマスタード化合物を以下に記載する。特定の実施形態において、ナイトロジェンマスタード化合物は、ベンダムスチン、例えば、ベンダムスチン塩酸塩である。特定の実施形態において、賦形剤はマンニトールである。
【0057】
一態様において、1つ以上の結晶性または非晶質形態(複数可)のマンニトールと、ナイトロジェンマスタード化合物の1つ以上の結晶性または非晶質形態(複数可)とを含む固体分散体が、本明細書に提供される。ナイトロジェンマスタード化合物は、当業者に既知の任意のナイトロジェンマスタード化合物であり得る。特定の実施形態において、ナイトロジェンマスタード化合物は、ベンダムスチン、シクロホスファミド、ビスルファン、クロラムブシル、カルムスチン、メルファラン、ウラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、ルムスチン、ならびにそれらの塩及び組み合わせからなる群から選択される。特定の実施形態において、ナイトロジェンマスタード化合物は、しばしばベンダムスチンである。特定の実施形態において、ナイトロジェンマスタード化合物は、シクロホスファミド、ビスルファン、クロラムブシル、カルムスチン、メルファラン、ウラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、ルムスチン、ならびにそれらの塩及び組み合わせからなる群から選択される。
【0058】
特定の実施形態において、ナイトロジェンマスタード化合物はベンダムスチンである。ベンダムスチンは、当業者に既知の任意の形態のベンダムスチンであり得る。特定の実施形態において、ベンダムスチンは、ベンダムスチンの薬学的に許容される塩である。特定の実施形態において、ベンダムスチンは、ベンダムスチン塩酸塩である。特定の実施形態において、ベンダムスチン塩酸塩は、非晶質である。特定の実施形態において、ベンダムスチン塩酸塩は、非晶質であり、結晶性ベンダムスチン塩酸塩を実質的に含まない。
【0059】
特定の実施形態において、ベンダムスチン塩酸塩は、形態1のベンダムスチン塩酸塩、形態2のベンダムスチン塩酸塩、形態3のベンダムスチン塩酸塩、形態4のベンダムスチン塩酸塩、及びそれらの混合物から選択される結晶形態である。特定の実施形態において、結晶形態は、非晶質ベンダムスチン塩酸塩を実質的に含まない。特定の実施形態において、結晶形態は、非晶質ベンダムスチン塩酸塩と混合される。
【0060】
ベンダムスチン塩酸塩の固体形態のいずれも、ベンダムスチン塩酸塩を含む組成物の構成成分であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるベンダムスチン塩酸塩の固体形態のうちの少なくとも1つを含むこれらの組成物は、ベンダムスチン塩酸塩の他の固体形態を実質的に含まない。
【0061】
特定の実施形態において、固体分散体は、ベンダムスチンを含み、8.3、14、16.8、18.5±0.2度2θでXRPDピーク、または7.9、10.6、15.5、19.7±0.2度2θでピークを示すベンダムスチン結晶形態を実質的に含まない。特定の実施形態において、固体分散体は、非晶質ベンダムスチンを含み、8.3、14、16.8、18.5±0.2度2θでXRPDピーク、または7.9、10.6、15.5、19.7±0.2度2θでピークを示すベンダムスチン結晶形態を実質的に含まない。
【0062】
特定の実施形態において、固体分散体は、ベンダムスチン塩酸塩を含み、8.3、14、16.8、及び18.5±0.2度2θのうちのいずれか1つ、2つ、3つ、または4つでXRPDピークを示すベンダムスチン結晶形態を実質的に含まない。特定の実施形態において、固体分散体は、ベンダムスチン塩酸塩を含み、8.3、14、16.8、18.5、22、22.9、25.1、及び28.3±0.2度2θのうちのいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つでXRPDピークを示すベンダムスチン結晶形態を実質的に含まない。特定の実施形態において、固体分散体は、非晶質ベンダムスチンを含み、7.9、10.6、15.5、及び19.7±0.2度2θのうちのいずれか1つ、2つ、3つ、または4つでXRPDピークを示すベンダムスチン結晶形態を実質的に含まない。特定の実施形態において、固体分散体は、非晶質ベンダムスチンを含み、7.9、10.6、15.5、19.7、23.3、及び26.1±0.2度2θのうちのいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つでXRPDピークを示すベンダムスチン結晶形態を実質的に含まない。特定の実施形態において、固体分散体は、非晶質ベンダムスチンを含み、10.2、10.6、13.7、15.1、23.1、及び23.4±0.2度2θのうちのいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つでXRPDピークを示すベンダムスチン結晶形態を実質的に含まない。特定の実施形態において、固体分散体は、非晶質ベンダムスチンを含み、10.3、10.8、15.5、19.6、及び23.5±0.2度2θのうちのいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、または5つでXRPDピークを示すベンダムスチン結晶形態を実質的に含まない。
【0063】
特定の実施形態において、固体分散体は、ベンダムスチン塩酸塩を含み、25.12、24.85、22.92、21.97、及び14.05±0.2度2θのうちのいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、または5つでXRPDピークを示すベンダムスチン結晶形態を実質的に含まない。特定の実施形態において、固体分散体は、ベンダムスチン塩酸塩を含み、16.82、17.51、18.45、24.85、及び28.33±0.2度2θのうちのいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、または5つでさらなるXRPDピークを示すベンダムスチン結晶形態を実質的に含まない。
【0064】
特定の実施形態において、固体分散体は、非晶質ベンダムスチンを含み、10.64、20.12、及び20.45±0.2度2θのうちのいずれか1つ、2つ、または3つでXRPDピークを示すベンダムスチン結晶形態を実質的に含まない。特定の実施形態において、固体分散体は、非晶質ベンダムスチンを含み、10.17、15.06、18.82、20.95、25.20、26.54、及び29.05±0.2度2θのうちのいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、または7つでさらなるXRPDピークを示すベンダムスチン結晶形態を実質的に含まない。
【0065】
特定の実施形態において、固体分散体は、ベンダムスチン塩酸塩を含み、26.08、27.85、及び28.11±0.2度2θのうちのいずれか1つ、2つ、または3つでXRPDピークを示すベンダムスチン結晶形態を実質的に含まない。特定の実施形態において、固体分散体は、ベンダムスチン塩酸塩を含み、10.58、15.55、及び19.75±0.2度2θのうちのいずれか1つ、2つ、または3つでさらなるXRPDピークを示すベンダムスチン結晶形態を実質的に含まない。
【0066】
特定の実施形態において、固体分散体は、非晶質ベンダムスチンを含み、10.83、15.52、20.45、及び23.58±0.2度2θのうちのいずれか1つ、2つ、3つ、または4つでXRPDピークを示すベンダムスチン結晶形態を実質的に含まない。特定の実施形態において、固体分散体は、非晶質ベンダムスチンを含み、10.27、19.64、20.73、21.23、25.81、及び27.63±0.2度2θのうちのいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つでさらなるXRPDピークを示すベンダムスチン結晶形態を実質的に含まない。
【0067】
特定の実施形態において、固体分散体は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、または担体を固体形態で含む。当業者は、好適な賦形剤、希釈剤、及び担体が、後述の方法に従って固体形態に乾燥され得ることを認識するであろう。
【0068】
賦形剤は、当業者に有用であると考えられるいずれの量であってもよい。特定の実施形態において、ナイトロジェンマスタード化合物対賦形剤の比は、約1:1.0~約1:2.0である。特定の実施形態において、ナイトロジェンマスタード化合物対賦形剤の比は、約1:1.1である。特定の実施形態において、ナイトロジェンマスタード化合物対賦形剤の比は、約1:1.2である。特定の実施形態において、ナイトロジェンマスタード化合物対賦形剤の比は、約1:1.3である。特定の実施形態において、ナイトロジェンマスタード化合物対賦形剤の比は、約1:1.4である。特定の実施形態において、ナイトロジェンマスタード化合物対賦形剤の比は、約1:1.5である。特定の実施形態において、ナイトロジェンマスタード化合物対賦形剤の比は、約1:1.6である。特定の実施形態において、ナイトロジェンマスタード化合物対賦形剤の比は、約1:1.7である。特定の実施形態において、ナイトロジェンマスタード化合物対賦形剤の比は、約1:1.8である。特定の実施形態において、ナイトロジェンマスタード化合物対賦形剤の比は、約1:2.0である。
【0069】
特定の実施形態において、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤をさらに含む薬学的組成物が、本明細書に提供される。好ましい賦形剤は、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、塩化ナトリウム、クエン酸、酒石酸、ゼラチン、グリシン、マンニトール、ラクトース、スクロース、マルトース、グリセリン、ブドウ糖、デキストラン、トレハロース、ヘタスターチ、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリメタクリレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースシクロデキストリン、またはそれらの混合物を含む。より好ましい薬学的賦形剤は、マンニトール、ポリビニルピロリドン、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0070】
特定の実施形態において、固体分散体は、糖賦形剤または糖アルコール賦形剤を含む。特定の実施形態において、賦形剤は、マンニトール、マルチトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、ラクチトール、ラクトース、スクロース、グリコース、マルトース、トレハロース、ブドウ糖、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の実施形態において、賦形剤は、マンニトールである。特定の実施形態において、賦形剤は、マンニトールであり、ナイトロジェンマスタード化合物は、ベンダムスチン塩酸塩である。
【0071】
特定の実施形態において、ベンダムスチン塩酸塩対マンニトールの比は、約1:1.0~約1:2.0である。特定の実施形態において、ベンダムスチン塩酸塩対マンニトールの比は、約1:1.1である。特定の実施形態において、ベンダムスチン塩酸塩対マンニトールの比は、約1:1.2である。特定の実施形態において、ベンダムスチン塩酸塩対マンニトールの比は、約1:1.3である。特定の実施形態において、ベンダムスチン塩酸塩対マンニトールの比は、約1:1.4である。特定の実施形態において、ベンダムスチン塩酸塩対マンニトールの比は、約1:1.5である。特定の実施形態において、ベンダムスチン塩酸塩対マンニトールの比は、約1:1.6である。特定の実施形態において、ベンダムスチン塩酸塩対マンニトールの比は、約1:1.7である。特定の実施形態において、ベンダムスチン塩酸塩対マンニトールの比は、約1:1.8である。特定の実施形態において、ベンダムスチン塩酸塩対マンニトールの比は、約1:2.0である。
【0072】
マンニトールは、当業者に既知の任意の形態であり得る。特定の実施形態において、マンニトールは、斜方晶系多形αマンニトール、斜方晶系多形βマンニトール、単斜晶系多形δマンニトール、非晶質マンニトール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される形態である。特定の実施形態において、マンニトールは非晶質である。さらなる実施形態において、マンニトールは結晶形態である。さらなる実施形態において、マンニトールは、結晶形態と非晶質形態との混合物である。
【0073】
特定の実施形態において、賦形剤は、ポリマー賦形剤である。特定の実施形態において、賦形剤は、ビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC-AS)、エチレングリコール、プロピレングリコール、炭酸プロピレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルカプロラクタム、酢酸セルロース、エチルセルロース、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、それらのポリマー及びコポリマーからなる群から選択される。
【0074】
特定の実施形態において、固体分散体は、溶媒をさらに含む。本明細書に提供される溶媒は、製造プロセスの間にベンダムスチンをはっきり分かるほど分解することなく、ベンダムスチン塩酸塩との安定な溶液を形成し、また乾燥によって本質的に完全に蒸発することが可能な、水及び有機溶媒を含む。特定の実施形態において、そのような溶媒は、水混和性であり得る。
【0075】
特定の実施形態において、固体分散体は、非水性の水不混和性溶媒をさらに含む。特定の実施形態において、賦形剤は、ペルフルオロヘキサン、ペルフレナペント、ヘキサフルオロベンゼン、ペルフルオロメチルシクロヘキサン、フロリナート、ペルフルオロオクタン、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0076】
特定の実施形態において、固体分散体は、非水性の水混和性溶媒または非水性の部分水混和性溶媒をさらに含む。好適な水混和性有機溶媒の例は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソ-プロパノール、n-ブタノール、酢酸エチル、炭酸ジメチル、アセトニトリル、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、1-ペンタノール、酢酸メチル、四塩化炭素、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ヘキサフルオロアセトン、クロロブタノール、ジメチルスルホン、酢酸、シクロヘキサン、n-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、及びそれらの混合物を含む。部分水混和性の好適な有機溶媒の例は、tert-ブチルメチルエーテル、エチルエーテル、ギ酸エチル、酢酸イソプロピル、トルエン、メチルエチルケトン、及び酢酸プロピルである。特定の実施形態において、賦形剤は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソ-プロパノール、n-ブタノール、酢酸エチル、炭酸ジメチル、アセトニトリル、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、1-ペンタノール、酢酸メチル、四塩化炭素、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ヘキサフルオロアセトン、クロロブタノール、ジメチルスルホン、酢酸、シクロヘキサン、n-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、tert-ブチルメチルエーテル、エチルエーテル、ギ酸エチル、酢酸イソプロピル、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸プロピル、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0077】
好ましい有機溶媒は、エタノールである。別の好ましい有機溶媒は、ペルフルオロヘキサンまたはペルフルオロオクタンである。別の好ましい有機溶媒は、n-プロパノールである。別の好ましい有機溶媒は、NMPまたはDMSOである。
【0078】
好ましい添加剤は、マンニトール、ポリビニルピロリドン、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。さらにより好ましい薬学的賦形剤は、マンニトールである。本明細書に提供される好ましい噴霧乾燥組成物は、非晶質ベンダムスチン塩酸塩、1つ以上のベンダムスチン塩酸塩の結晶形態、及び好ましくはマンニトールである少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤の混合物を含む。本明細書に提供されるさらにより好ましい噴霧乾燥組成物は、非晶質ベンダムスチン塩酸塩、多形形態1及び形態3の非ベンダムスチン塩酸塩の結晶形態、ならびに好ましくはマンニトールである少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤の混合物を含む(例えば、
図1~5及び表4~5を参照)。本明細書に提供される別の好ましい噴霧乾燥組成物は、非晶質ベンダムスチン塩酸塩と、好ましくはポリビニルピロリドンまたは酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースである少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤との混合物を含む(例えば、
図7~9を参照)。マンニトールを含むベンダムスチン塩酸塩の固体分散体は、細長い粒子からなる良好な流動特性を有する白色粉末として特徴付けられた(
図3~4を参照)。これらの良好な流動特性は、適切な容器への薬学的用量の正確な分注を可能にする。ポリビニルピロリドンを含むベンダムスチン塩酸塩の固体分散体は、その回折図によって明らかにされるように、非晶質ポリビニルピロリドン及びベンダムスチンを含む白色粉末として特徴付けられた(
図7)。酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むベンダムスチン塩酸塩の固体分散体は、その回折図によって明らかにされるように、非晶質酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びベンダムスチンを含む白色粉末として特徴付けられた(
図9)。
【0079】
有利な実施形態において、固体分散体は、分解物を実質的に含まない。他の有利な実施形態において、固体分散体は、加水分解物を実質的に含まない。分解物は、固体分散体の任意の構成成分の加水分解物を含む。特定の実施形態において、分解物は、ナイトロジェンマスタード化合物の加水分解物である。特定の実施形態において、分解物は、ベンダムスチンの分解物である。特定の実施形態において、分解物は、HP1、ベンダムスチン二量体、ベンダムスチンエチルエステル(BM1EE)、des-クロロエチルベンダムスチン(BM1DCE)、HP2、ならびにそれらの塩、組み合わせ、及び多量体からなる群から選択される。特定の実施形態において、固体分散体は、ベンダムスチンに対して3.5または3.0または2.5%未満の、加水分解物以外の全ベンダムスチン分解生成物を含む。
【0080】
特定の実施形態において、固体分散体は、賦形剤中に均一に分散したナイトロジェンマスタード化合物を含む。「均一に分散した」とは、固体分散体がUSPの用量均一性ガイド(905)(参照により、その内容が本明細書に組み込まれる)に準拠していることを意味する。特定の実施形態において、分散体は、賦形剤中に均一に分散したベンダムスチンを含む。特定の実施形態において、分散体は、賦形剤中に均一に分散したベンダムスチン塩酸塩を含む。特定の実施形態において、分散体は、マンニトール中に均一に分散したベンダムスチン塩酸塩を含む。特定の実施形態において、分散体は、結晶マンニトール中に均一に分散したベンダムスチン塩酸塩を含む。特定の実施形態において、分散体は、結晶及び非晶質マンニトール中に均一に分散したベンダムスチン塩酸塩を含む。特定の実施形態において、分散体は、非晶質ポリマー賦形剤中に均一に分散したベンダムスチン塩酸塩を含む。特定の実施形態において、分散体は、非晶質ポリビニルピロリドンまたは非晶質酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース中に均一に分散したベンダムスチン塩酸塩を含む。
【0081】
特定の実施形態において、固体分散体は、微量の溶媒を含む。微量の溶媒は、調製ステップの残留物であり得る。特定の実施形態において、微量とは、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.2%未満、または0.1%未満である。特定の実施形態において、固体分散体は、微量の水、エタノール、N-メチル-ピロリドン、n-プロパノール、またはペルフルオロヘキサンを含む。
【0082】
特定の実施形態において、固体分散体は、約1:1.2の比のベンダムスチン塩酸塩及びマンニトールと、微量のN-メチル-ピロリドンまたはジメチルスルホキサンとを含む。特定の実施形態において、固体分散体は、約1:1.7の比のベンダムスチン塩酸塩及びマンニトールと、微量のN-メチル-ピロリドンまたはジメチルスルホキサンとを含む。特定の実施形態において、固体分散体は、約1:1.8の比のベンダムスチン塩酸塩及びマンニトールと、微量のN-メチル-ピロリドンまたはジメチルスルホキサンとを含む。
【0083】
特定の実施形態において、固体分散体は、約1:1.2の比のベンダムスチン塩酸塩及びマンニトールと、微量のn-プロパノールとを含む。特定の実施形態において、固体分散体は、約1:1.7の比のベンダムスチン塩酸塩及びマンニトールと、微量のn-プロパノールとを含む。特定の実施形態において、固体分散体は、約1:1.8の比のベンダムスチン塩酸塩及びマンニトールと、微量のn-プロパノールとを含む。
【0084】
特定の実施形態において、固体分散体は、約1:1.2の比のベンダムスチン塩酸塩及びマンニトールと、微量のペルフルオロヘキサンまたはペルフルオロオクタンとを含む。特定の実施形態において、固体分散体は、約1:1.7の比のベンダムスチン塩酸塩及びマンニトールと、微量のペルフルオロヘキサンまたはペルフルオロオクタンとを含む。特定の実施形態において、固体分散体は、約1:1.8の比のベンダムスチン塩酸塩及びマンニトールと、微量のペルフルオロヘキサンまたはペルフルオロオクタンとを含む。
【0085】
特定の実施形態において、本明細書に記載される任意の固体分散体を含む薬学的組成物が、本明細書に提供される。薬学的組成物は、固体分散体と、1つ以上の薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、または担体とを含むことができる。希釈剤、賦形剤、または担体は、乾燥、乾燥済み、固体、ゲル等を含む、適していると考えられるいずれの形態であってもよい。これらの薬学的組成物は、溶液または懸濁液のいずれかの注射剤として、また固体形態、例えば、カプセル、錠剤、ロゼンジ、トローチ、粉末、懸濁液等として、調製されてもよい。
【0086】
特定の実施形態において、本明細書に提供される任意の固体形態または薬学的組成物を含む薬学的剤形が、本明細書に提供される。薬学的剤形は、単回用量または複数回用量の活性ナイトロジェンマスタード化合物を、それを必要とする患者に提供するために、ある量の活性ナイトロジェンマスタード化合物を含むことができる。特定の実施形態において、剤形は、約1~約1000mg、約5~約500mgのナイトロジェンマスタード化合物、約10~約200mgのナイトロジェンマスタード化合物、約25mgのナイトロジェンマスタード化合物、約100mgのナイトロジェンマスタード化合物、または約200mgのナイトロジェンマスタード化合物であり得る。特定の実施形態において、剤形は、本明細書に記載される純度及び/または安定性を有する。さらなる実施形態において、薬学的剤形は、上記量のうちの1つの整数倍を含む。特定の実施形態において、剤形は、5、4、3、2、または1分以内に薬学的に許容される注射用形態に再構成することができる。特定の実施形態において、剤形は、経口剤形である。
【0087】
特定の実施形態において、剤形のナイトロジェンマスタード化合物は、ベンダムスチン、例えば、ベンダムスチン塩酸塩である。特定の実施形態において、剤形は、約1:1.2の比でベンダムスチン塩酸塩及びマンニトールを含む。特定の実施形態において、剤形は、約1:1.3の比でベンダムスチン塩酸塩及びマンニトールを含む。特定の実施形態において、剤形は、約1:1.4の比でベンダムスチン塩酸塩及びマンニトールを含む。特定の実施形態において、剤形は、約1:1.5の比でベンダムスチン塩酸塩及びマンニトールを含む。特定の実施形態において、剤形は、約1:1.6の比でベンダムスチン塩酸塩及びマンニトールを含む。特定の実施形態において、剤形は、約1:1.7の比でベンダムスチン塩酸塩及びマンニトールを含む。特定の実施形態において、剤形は、約1:1.8の比でベンダムスチン塩酸塩及びマンニトールを含む。特定の実施形態において、剤形は、約1:2の比でベンダムスチン塩酸塩及びマンニトールを含む。
【0088】
特定の実施形態において、加水分解物を実質的に含まない、本明細書において参照される薬学的に許容される注入希釈剤、本明細書において参照される薬学的に許容される再構成溶媒(WFIを含む)、本明細書において参照される薬学的に許容される添加剤または賦形剤、本明細書において参照される薬学的に許容される予備乾燥非水性溶媒、及び0.2、0.3、0.4、0.6、0.8、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、4.0mg/mlのベンダムスチン濃度のベンダムスチン塩酸塩を含む薬学的組成物が、本明細書に提供される。特定の実施形態において、加水分解物を実質的に含まない、0.9%塩化ナトリウム注入希釈剤、ジメチルスルホキシド再構成溶媒、マンニトール、n-プロパノール、及び約0.25、0.32、0.5、0.6、1.0、1.5、2.0、4.0mg/mlのベンダムスチン濃度のベンダムスチン塩酸塩を含む薬学的組成物が、本明細書に提供される。特定の実施形態において、加水分解物を実質的に含まない、0.9%塩化ナトリウム注入希釈剤、再構成及び予備乾燥溶媒としてのエタノール、PVP、及び約0.2、0.25、0.35、0.5、0.6、1.0、1.5、2.0、4.0mg/mlのベンダムスチン濃度のベンダムスチン塩酸塩を含む薬学的組成物が、本明細書に提供される。
分析
【0089】
実施形態のうちのいくつかは、少なくとも一部、X線粉末回折によって特徴付けられ得る。当該技術分野で既知であるように、結晶性固体は、回折図と称されるものにおいて表される、独特の回折パターンのピークを形成する。所与の結晶性材料に対するピーク割り当て、例えば、度数2Θの値は、回折図を得るために使用される機器、及び特定の他の要因、例えば、試料調製に依存して、若干異なり得る。それにもかかわらず、これらの変動は、+/-0.2度2Θを超えるべきではなく、使用される機器または試料調製等の方法にかかわらず、回折図におけるピーク間の相対的空間は、同じであるべきである。特定の実施形態において、固体分散体は、40kV及び44mAで動作する、長距離高精度光源を用いて生成されるCu Kα放射線の入射ビームを使用したRigaku Smart-LabX線回折システム、または長距離高精度光源及びニッケルフィルタを用いて生成されるCu Kα放射線の入射ビームを使用したPANalytical X’Pert PRO MPD回折計上のXRPDによって特徴付けられる。
【0090】
本明細書に記載される噴霧乾燥手順に従って調製され、ベンダムスチン塩酸塩-マンニトール、ベンダムスチン塩酸塩-ポリビニルピロリドン、及びベンダムスチン塩酸塩-酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、そのような3つの固体分散体のX線粉末回折図を、
図5、7、及び9にそれぞれ示す。
【0091】
他の実施形態は、実質的に
図5に示されるようなX線粉末回折パターンを有するベンダムスチン塩酸塩の固体分散体を提供する。
【0092】
他の実施形態は、実質的に表4に示されるようなX線粉末回折ピークプロファイルを有するベンダムスチン塩酸塩の固体分散体を提供する。
【0093】
他の実施形態は、実質的に
図7に示されるようなX線粉末回折パターンを有するベンダムスチン塩酸塩の固体分散体を提供する。
【0094】
他の実施形態は、実質的に
図9に示されるようなX線粉末回折パターンを有するベンダムスチン塩酸塩の固体分散体を提供する。
【0095】
他の実施形態は、一水和物以外のベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を含む噴霧乾燥組成物を提供する。
【0096】
他の実施形態は、8.3、14、16.8、18.5±0.2度2θの角度でXRPD回折図上にピーク(形態1)、または7.9、10.6、15.5、19.7±0.2度2θでピーク(形態3)を示す形態以外のベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を含む噴霧乾燥組成物を提供する。
【0097】
また、非晶質ベンダムスチン塩酸塩をさらに含む、本明細書に記載される噴霧乾燥組成物も提供される。本明細書に提供される好ましい実施形態は、非晶質ベンダムスチン塩酸塩、結晶性ベンダムスチン塩酸塩、及び薬学的に許容される賦形剤を含む、本明細書に記載されるような噴霧乾燥組成物を含む。本明細書に提供されるさらにより好ましい実施形態は、非晶質ベンダムスチン塩酸塩及び薬学的に許容される賦形剤を含む、本明細書に記載されるような噴霧乾燥組成物を含む。
調製方法
【0098】
別の態様において、固体分散体、薬学的組成物、及び薬学的剤形を調製する方法が、本明細書に提供される。固体分散体は、標準的な技術に従って調製され得る。特定の実施形態において、固体分散体は、当業者に既知であるかまたは本明細書に記載される、噴霧乾燥固体分散体、流動床噴霧乾燥固体分散体、または噴霧造粒固体分散体の技術によって調製される。
【0099】
ベンダムスチン塩酸塩の固体分散体を調製する好ましい方法は、ベンダムスチン塩酸塩を少なくとも1つの溶媒と組み合わせて溶液を形成し、次いで、噴霧乾燥または均等物によって溶液を乾燥させることを含む。いくつかの実施形態において、噴霧乾燥は、2014年8月22日に出願された同時係属中の米国特許出願第14/466,765号(参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)に開示されるような連続予備乾燥ステップと組み合わせて連続動作モードで行われる。
【0100】
噴霧乾燥に好適な薬学的に許容される賦形剤は、水相に溶解させることができる。有用な賦形剤の例は、限定されないが、リン酸ナトリウムまたはリン酸カリウム、塩化ナトリウム、クエン酸、酒石酸、ゼラチン、グリシン、及び炭水化物、例えば、ラクトース、スクロース、マルトース、グリセリン、ブドウ糖、デキストラン、トレハロース、及びヘタスターチ等を含む。マンニトールは、好ましい賦形剤である。必要に応じて使用され得る他の賦形剤は、抗酸化剤、例えば、限定されないが、アスコルビン酸、アセチルシステイン、システイン、亜硫酸水素ナトリウム、ブチル-ヒドロキシアニソール、ブチル-ヒドロキシトルエン、もしくはα-トコフェロール酢酸、またはキレート剤を含む。
【0101】
噴霧乾燥に好適な薬学的に許容される賦形剤は、ベンダムスチンを含有する非水相にも溶解させることができる。有用な賦形剤の例は、限定されないが、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリメタクリレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、シクロデキストリン、またはそれらの混合物を含む。より好ましい薬学的賦形剤は、ポリビニルピロリドン、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0102】
本明細書による有用な典型的な調合及び噴霧乾燥運転を以下に記載する。噴霧乾燥は、噴霧乾燥に使用される標準的な機器を使用して実行され得る。乾燥運転は、製造に用いられる機器及び設備に依存して変化し得る。
【0103】
本明細書に提供される典型的な実施形態によれば、ベンダムスチンを含有する非水性の予備乾燥溶液、エマルション、または分散体が、水混和性、水不混和性、または部分水混和性のいずれかである有機溶媒を用いて、薬学的に許容される配合槽内で最初に調合される。許容される賦形剤を含有する水性の予備乾燥溶液、エマルション、または分散体も、別の薬学的に許容される配合槽内で調合される。次いで、両方の溶液は、無菌的に濾過され、両方の流れを組み合わせる連続デバイスによって混合され、次いで、噴霧乾燥機に連続的に供給される。両方の流れを組み合わせる連続デバイスは、インラインミキサー(当該技術分野において静的ミキサーとしても知られる)(
図10)、連続高せん断ミキサー、連続乳化機(
図11)、連続ホモジナイザー、連続分散器、またはそれらの組み合わせである。非水相に用いられる溶媒が水混和性である場合、インラインミキサーが好ましい。溶媒が水不混和性である場合、連続乳化機及び連続高せん断ミキサーが好ましい。溶媒が部分水混和性であり、部分混和性溶媒の濃度が水を用いたときの飽和点よりも高い場合、連続乳化機及び連続高せん断ミキサーもまた好ましい。この場合、水リッチ相及び溶媒リッチ相の2つの異なる層が形成される。連続乳化機の使用は、水リッチ相内における溶媒リッチ液滴の均一かつ良好な分散を促進する。望ましい結果は、USP(905)による用量均一性を維持する一方で、乾燥粒子の再構成及び流動特性を最適化する、粒子の表面及び本体にわたってAPI及び賦形剤の濃度プロファイルが異なる乾燥粒子の確立である。本明細書に提供される実施形態において、2014年8月22日に出願された米国特許出願第14/466,765号(全体が本明細書に組み込まれる)に提示されるような噴霧乾燥機の2液相ノズル内で水溶液と非水溶液とが混合される。本明細書に記載される噴霧乾燥技術を用いて、約0.01~約8.0パーセントの含水量が達成されるまで溶液が噴霧乾燥される。さらに低い含水量も、当該技術分野で既知の二次乾燥によって達成され得る。高度に水混和性の溶媒及びインラインミキサーが使用される場合、得られた乾燥粉末粒子は、それらの表面及び本体にわたってより高い濃度均一性を有するであろう。水不混和性溶媒及び連続乳化機が使用される場合、得られた乾燥粉末粒子は、それらの表面及び本体にわたって、高いベンダムスチン濃度/低い賦形剤濃度、及び低いベンダムスチン濃度/高い賦形剤濃度の異なる領域を有するであろう。得られた乾燥粉末は、USP(905)に従って均一であり、約5℃~約25℃で約6ヶ月~約2超、好ましくは約3年超安定であり、例えば、非経口注射による内服投与に好適なベンダムスチンの液体製剤を提供するために、滅菌注射用水または他の好適な担体で容易に再構成することができる。静脈内投与の場合、再構成された液体製剤、すなわち薬学的組成物は、好ましくは溶液である。
【0104】
本明細書に提供される別の実施形態によれば、水性の予備乾燥溶液は用いられない。ベンダムスチンを含有する非水性の予備乾燥溶液、エマルション、または分散体は、薬学的に許容される配合槽内で最初に調合される。非水性の予備乾燥溶液、エマルション、または分散体は、充分な量の非水溶液に溶解させることができる1つ以上の許容される賦形剤を含有し得る。好ましい賦形剤は、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリメタクリレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースシクロデキストリン、またはそれらの混合物を含む。より好ましい薬学的賦形剤は、ポリビニルピロリドン、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。次いで、溶液は、無菌的に濾過され、噴霧乾燥機に連続的に供給される。本明細書に記載される噴霧乾燥技術を用いて、約0.01~約8.0パーセントの含水量が達成されるまで溶液が噴霧乾燥される。さらに低い含水量も、当該技術分野で既知の二次乾燥によって達成され得る。得られた乾燥粉末は、USP(905)に従って均一であり、約5℃~約25℃で約6ヶ月~約2超、好ましくは約3年超安定であり、例えば、非経口注射による内服投与に好適なベンダムスチンの液体製剤を提供するために、滅菌注射用水または他の好適な担体で容易に再構成することができる。静脈内投与の場合、再構成された液体製剤、すなわち薬学的組成物は、好ましくは溶液である。別の実施形態において、得られた乾燥粉末は、例えば、錠剤またはカプセルによる経口投与に好適なベンダムスチンの固形製剤を提供するために用いられ得る。
【0105】
別の実施形態によれば、有機予備乾燥溶液は用いられない。ベンダムスチンを含有する水性の予備乾燥溶液、エマルション、または分散体は、薬学的に許容される配合槽内で最初に調合される。加水分解物の形成を最小限に抑えるために、水溶液のpH及び/または塩素イオン濃度が調整される。水性の予備乾燥溶液、エマルション、または分散体は、充分な量の水溶液に溶解させることができる1つ以上の許容される賦形剤を含有し得る。好ましい賦形剤は、例えば、リン酸ナトリウムまたはリン酸カリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、クエン酸、酒石酸、ゼラチン、グリシン、及び炭水化物、例えば、ラクトース、スクロース、マルトース、グリセリン、ブドウ糖、デキストラン、トレハロース、マンニトール、ヘタスターチ、またはそれらの組み合わせを含む。マンニトールは、好ましい賦形剤である。次いで、溶液は、無菌的に濾過され、噴霧乾燥機に連続的に供給される。本明細書に記載される噴霧乾燥技術を用いて、約0.01~約8.0パーセントの含水量が達成されるまで溶液が噴霧乾燥される。さらに低い含水量も、当該技術分野で既知の二次乾燥によって達成され得る。得られた乾燥粉末は、USP(905)に従って均一であり、約5℃~約25℃で約6ヶ月~約2超、好ましくは約3年超安定であり、例えば、非経口注射による内服投与に好適なベンダムスチンの液体製剤を提供するために、滅菌注射用水または他の好適な担体で容易に再構成することができる。静脈内投与の場合、再構成された液体製剤、すなわち薬学的組成物は、好ましくは溶液である。別の実施形態において、得られた乾燥粉末は、例えば、錠剤またはカプセルによる経口投与に好適なベンダムスチン固形製剤を提供するために用いられ得る。
【0106】
予備乾燥水溶液、エマルション、または分散体は、通常、1)マンニトール等の賦形剤を混合しながら水に加えることによって、薬学的に許容される容器内で調合される。予備乾燥非水溶液、エマルション、または分散体は、1)ベンダムスチンHClを混合しながら所望の濃度まで加え、2)溶液を約1℃~約30℃、好ましくは約5℃まで冷却することによって、薬学的に許容される容器内で調合される。別の実施形態において、予備乾燥非水溶液または分散体は、1)ポリビニルピロリドンまたは酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の1つ以上の薬学的に好適な賦形剤を混合しながら所望の濃度まで加え、2)ベンダムスチンHClを混合しながら所望の濃度まで加え、2)溶液を約1℃~約30℃、好ましくは約5℃まで冷却することによって、薬学的に許容される容器内で調合される。上記ステップは特定の順序で示されているが、当業者は、必要に応じてステップの順序および量を変更することができることを理解されたい。量はまた、体重に基づいて調製され得る。
【0107】
予備乾燥非水溶液及び/または予備乾燥水溶液、エマルション、または分散体は、噴霧乾燥の前に滅菌することができる。滅菌は、一般的に、無菌濾過によって、例えば、0.22ミクロン以下のフィルタを通して行われる。複数の滅菌フィルタが使用されてもよい。溶液または分散体の滅菌は、当該技術分野で既知の他の方法、例えば、照射によって達成され得る。
【0108】
この場合、滅菌後に、溶液(複数可)または分散体(複数可)は噴霧乾燥できる状態となる。特定の実施形態において、溶液は、濾過され、組み合わされ、混合され、そして連続動作モードの噴霧乾燥機に導入される。通常、製剤は、回収容器内で効果的かつ効率的に噴霧乾燥され、そこから生成物は、本明細書に記載されるように、また当該技術分野で既知であるように、限定されないが、バイアル等の生成物が市販される容器に無菌的に充填される。
【0109】
特定の実施形態は、限定されないが、乾燥粉末の所望の物理的特性、化学的特性、安定特性、及び流動特性(例えば、水分量、粉末の形態)を維持する一方で、規制当局の認可を得ることができ、かつ乾燥動作の性能を最適化することができるような賦形剤/API重量比で噴霧乾燥固体分散体を含むバイアル等の、市販形態の生成物を含む容器を対象とする。好ましい実施形態は、重量比1~4のマンニトール/ベンダムスチンの使用を対象とする。さらにより好ましい実施形態は、重量比約1.2~約2.0のマンニトール/ベンダムスチンを対象とする。さらにより好ましい実施形態は、重量比約1.7のマンニトール/ベンダムスチンを対象とする。最も好ましい実施形態は、重量比約1.8または約1.2のマンニトール/ベンダムスチンを対象とする。
【0110】
無菌性を確保するために、回収容器は、限定されないが、バイアル等の生成物が市販される容器に生成物を充填する前に、最終的な滅菌を経てもよい。最終的な滅菌は、当該技術分野で既知の方法、例えば、照射によって達成され得る。
【0111】
予備乾燥溶液、エマルション、または分散体を噴霧乾燥する際に使用される典型的な手順を、以下に記載する。しかしながら、当業者は、限定されないが、予備乾燥溶液、エマルション、または分散体、及び噴霧乾燥機器等に依存して、手順またはプロセスに対して変更が行われ得ることを理解するであろう。
【0112】
最初に、噴霧乾燥機の気流を所望の動作速度に設定する。この速度は、噴霧乾燥される所望の量、噴霧乾燥システムにわたる所望の圧力降下、ならびに噴霧乾燥装置の形状及びサイズに依存し、当該技術分野で既知のように、熱とエネルギーのバランスによって算出することができる。空気は、熱交換器によって加熱される。熱交換器の熱負荷は、噴霧チャンバの流出口で標的温度を得るように適切に調整される。この温度の好ましい範囲は、約40℃~約120℃である。さらにより好ましい温度は、約45℃~約90℃である。さらにより好ましい温度は、約50℃~約80℃である。
【0113】
次に、噴霧乾燥機の噴霧ノズルに入る噴霧器の空気流量を所望の動作値に設定する。この流量は、ノズルの種類及び形状、ならびに得られた乾燥粉末粒子の所望の特性に依存する。
【0114】
水性の予備乾燥溶液の供給量は、それが用いられる場合、所望の流量まで増加される。供給量は、噴霧チャンバの流出口で標的温度を得るように適切に調整される。この温度の好ましい範囲は、約40℃~約120℃である。さらにより好ましい温度は、約45℃~約90℃である。さらにより好ましい温度は、約50℃~約80℃である。
【0115】
次いで、非水性の予備乾燥溶液の供給量を所望の流量まで増加させる。水溶液及び非水溶液の両方が用いられる場合、ベンダムスチン対マンニトールの所望の比を得るように、また噴霧チャンバの流出口で標的温度を得るように、供給量が適切に調整される。マンニトール対ベンダムスチンの好ましい重量比は、約1~約5である。マンニトール対ベンダムスチンのより好ましい重量比は、約1.1~約3である。マンニトール対ベンダムスチンのより好ましい重量比は、約1.2~約2である。マンニトール対ベンダムスチンのより好ましい重量比は、約1.7である。マンニトール対ベンダムスチンのさらにより好ましい重量比は、約1.8である。マンニトール対ベンダムスチンのさらにより好ましい重量比は、約1.2である。非水性の予備乾燥溶液のみ、または水性の予備乾燥溶液のみが用いられる場合、ベンダムスチン対賦形剤の所望の比は、予備乾燥溶液に適切な量を溶解させることによって制御される。賦形剤対ベンダムスチンの好ましい重量比は、その場合、約1~約10である。流出口温度の好ましい範囲は、約40℃~約120℃である。さらにより好ましい温度は、約45℃~約90℃である。さらにより好ましい温度は、約50℃~約80℃である。
【0116】
特定の実施形態は、固気分離システム(例えば、サイクロン)の温度及び/または回収容器の温度が、賦形剤のガラス転移温度の付近かまたはそれよりも低い温度に維持される噴霧乾燥システムを対象とする。マンニトールの場合、ガラス転移温度はセ氏10~18度の範囲である。よって、好ましいシステムは、サイクロン及び/または回収器の温度を10~18℃に維持するシステムである。さらにより好ましいシステムは、サイクロン及び/または回収器の温度を10℃未満に維持するシステムである。
【0117】
(噴霧乾燥システムの他の動作変数の中でも)賦形剤対ベンダムスチンの重量比を最適化することにより、粒径、残留水分、残留有機溶媒、粒子の表面及び内部に及ぶ種々の濃度プロファイル、粒子硬度、粒子多孔性等の特性の最適なトレードオフを有する粒子を得ることが可能である。
【0118】
乾燥粒子が、いったん噴霧乾燥チャンバから出ると、それらは固体-蒸気分離器によって分離される。そのような分離器の1つは、限定されないが、サイクロンである。サイクロンによって分離された乾燥粒子は、通常、サイクロンの底部に位置する回収器内で回収される。サイクロン及び回収器の動作温度の好ましい範囲は、周囲温度である。さらにより好ましい温度範囲は、回収器内で回収された乾燥粒子の物理的特性を最適化する目的で使用される賦形剤(例えば、マンニトール)のガラス転移温度未満である。
【0119】
システムが過渡的動作条件にある場合、得られた乾燥粉末は、粉末回収システムの流出口で適切な容器内に回収される。この段階の間に回収される乾燥粉末は、所望の生成物ではない。いったんシステムが定常状態に達すると、回収容器は、回収容器として機能する適切な薬学的容器に変更される。ここで回収された乾燥粉末は、所望の乾燥粉末ベンダムスチンである。
【0120】
いったん所望の量の乾燥粉末ベンダムスチンが生成されると、再び回収容器を切り替え、逆の順序でシステムを立ち下げる。この段階の間に回収される乾燥粉末は、所望の生成物ではない。
【0121】
噴霧乾燥後、ベンダムスチン乾燥粉末は、バイアル等の容器に充填されてもよい。典型的には、機械を充填する無菌粉末は、当該技術分野で既知であるように使用される。典型的には、バイアルは、約10~500mg/バイアル、好ましくは約100mg/バイアルのベンダムスチン、及び約5mg~2g/バイアル、好ましくは約170mg/バイアルのマンニトールを含む乾燥粉末を含む。別の実施形態において、バイアルは、約25mg/バイアルのベンダムスチン、及び約42.5mg/バイアルのマンニトールを含む乾燥粉末を含む。より好ましい実施形態において、バイアルは、約10~500mg/バイアル、好ましくは約100mg/バイアルのベンダムスチン、及び約5mg~2g/バイアル、好ましくは約120mg/バイアルのマンニトールを含む乾燥粉末を含む。別の好ましい実施形態において、バイアルは、約25mg/バイアルのベンダムスチン、及び約30mg/バイアルのマンニトールを含む乾燥粉末を含む。生成物の品質を分析するために種々の物理的、化学的、及び微生物学的試験を行う目的で、いくつかの代表的な試料が除去されてもよい。
【0122】
乾燥粉末ベンダムスチン製剤は、典型的には、薬学的剤形として市販される。薬学的剤形は、典型的にはバイアルの形態であるが、無菌環境を維持することが可能な、アンプル、注射器、補助バイアル(co-vial)等の任意の好適な容器であってもよい。そのような容器は、材料がベンダムスチン製剤と相互作用しないように、ガラスまたはプラスチックであってもよい。密閉は、典型的には栓であり、より典型的には滅菌ゴム栓、好ましくは、気密シールを提供するブロモブチルゴム栓である。
【0123】
乾燥粉末製剤は、水、好ましくは滅菌注射用水、または適切な静脈内混合容器内にさらに希釈した後、非経口注射による投与のためのベンダムスチンの適切な溶液を提供するための共溶媒等の他の無菌流体、例えば、生理食塩水で再構成され得る。
【0124】
また、ベンダムスチン塩酸塩と少なくとも1つの溶媒とを組み合わせて混合物を形成するステップと、該混合物を噴霧乾燥するステップとを含む、ベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を含む噴霧乾燥組成物を調製するための方法も、本明細書に提供される範囲内である。好ましくは、方法は、溶液が賦形剤をさらに含む方法を含む。好ましくは、賦形剤は、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸、酒石酸、ゼラチン、グリシン、マンニトール、ラクトース、スクロース、マルトース、グリセリン、ブドウ糖、デキストラン、トレハロース、ヘタスターチ、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリメタクリレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースシクロデキストリン、またはそれらの混合物である。より好ましい薬学的賦形剤は、ポリビニルピロリドン、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはそれらの混合物である。最も好ましくは、賦形剤はマンニトールである。好ましくは、方法は、溶媒が、水、有機溶媒、またはそれらの混合物である方法を含む。好ましくは、有機溶媒は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソ-プロパノール、n-ブタノール、酢酸エチル、炭酸ジメチル、アセトニトリル、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、1-ペンタノール、酢酸メチル、四塩化炭素、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ヘキサフルオロアセトン、クロロブタノール、ジメチルスルホン、酢酸、シクロヘキサン、n-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ペルフルオロヘキサン、ペルフレナペント、ヘキサフルオロベンゼン、ペルフルオロメチルシクロヘキサン、フロリナート、ペルフルオロオクタン、tert-ブチルメチルエーテル、エチルエーテル、ギ酸エチル、酢酸イソプロピル、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸プロピル、またはそれらの混合物である。より好ましくは、有機溶媒は、エタノールまたはペルフルオロヘキサンまたはペルフルオロオクタンである。さらにより好ましくは、有機溶媒はn-プロパノールである。最も好ましくは、有機溶媒はNMPまたはDMSOである。
使用方法
【0125】
また、本明細書に提供される薬学的組成物を用いて、例えば、慢性リンパ性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、再発性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、または乳癌等の疾患を治療する方法も、本明細書に提供される。好ましくは、ベンダムスチンの固体分散体は、慢性リンパ性白血病を治療するために使用される。また、無痛性B細胞非ホジキンリンパ腫、特に、例えば、リツキシマブまたはリツキシマブを含む治療計画を用いた治療の最中または6ヶ月以内に進行した無痛性B細胞非ホジキンリンパ腫を治療するために、本明細書に提供される固体分散体を使用する方法も好ましい。
【0126】
特定の実施形態において、本方法は、治療有効量の本明細書に提供される薬学的組成物を患者に直接投与することを含む(例えば、薬学的組成物が錠剤またはカプセルである場合)。他の実施形態において、本方法は、本明細書に提供される薬学的組成物を、投与前に水または別の溶媒に組成物を溶解させること等によって、投与前に調整することを含む。これらの実施形態において、本方法は、本明細書に提供される薬学的組成物から調製される調製物の治療有効量を患者に投与することを含む。好ましくは、調製物は、注射可能な調製物である。注射可能な調製物は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、くも膜下腔内、病巣内、頭蓋内に、または注入によって投与されてもよい。本明細書に提供される組成物および注射可能な調製物を用いた治療に適した他の状態は、小細胞肺癌、過増殖性疾患、及び自己免疫疾患、例えば、関節リウマチ、多発性硬化症、及びループスを含む。いくつかの実施形態は、例えば、錠剤及びカプセル等の薬学的な経口固形剤形を対象とする。
【0127】
好ましくは、投与される注射剤の用量は、約100mg/m2である。静脈内に投与される約25mg/m2、60mg/m2、50mg/m2、90mg/m2、及び約120mg/m2の投与量も、本明細書に提供される範囲内である。好ましくは、投与量は、約30分かけてまたは約60分かけて静脈内に投与される。また、28日周期の1日目及び2日目に投与量が投与される投与の方法も好ましい。いくつかの実施形態において、投与量は、1~6または1~8周期で投与される。
【0128】
本明細書に記載される注射可能な調製物は、例えば、当該技術分野で既知の技術に従って調合される、無菌の注射可能な水性または油性の懸濁液または溶液としての、無菌の注射可能な調製物の形態である。典型的には、本明細書に提供される薬学的組成物は、加水分解物を実質的に含まず、噴霧乾燥粉末として調合され、例えば、80mLまたは50mLまたは20mLバイアル当たり100mgの薬物を含むバイアル内に提供され得る。注射可能な調製物は、噴霧乾燥固体分散体を滅菌注射用水で再構成し、次いで、薬学的に許容される静脈内注射溶液、例えば、0.9%塩化ナトリウム、5%ブドウ糖液(D5W)、乳酸リンゲル液、または0.45%塩化ナトリウム/2.5%ブドウ糖でさらに希釈することによって調製されてもよい。
【0129】
好ましくは、本明細書に記載されるベンダムスチン塩酸塩の薬学的組成物は、例えば、滅菌水で、約20分未満で注射可能な調製物に再構成される。より好ましくは、再構成は、約10分未満、より好ましくは約5分で起こる。さらにより好ましくは、約2分である。さらにより好ましくは、約1分である。最も好ましくは、1分未満である。
【0130】
特定の実施形態は、バイアルに含まれる25mgまたは100mgのベンダムスチン塩酸塩を、糖アルコール賦形剤、例えば、マンニトール、またはポリマー賦形剤、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、または本明細書に提供される他の賦形剤のうちのいずれかと一緒に、好ましくは無菌的に再構成することを含む再構成プロセスを対象とする。再構成は、5もしくは10もしくは20もしくは40mlのいずれかのエタノール、または5もしくは10もしくは20もしくは40mlのいずれかのDMSO等の好適な量の好適な有機溶媒を用いて行われる。他の好適な溶媒は、本明細書に提供される溶媒である。これにより、1.0または2.5または5または10または15mg/mlのベンダムスチンHCL濃度を有する透明な溶液が生じる。
【0131】
噴霧乾燥ベンダムスチン塩酸塩が再構成される場合、ベンダムスチン塩酸塩は、2または5または10分未満で完全に溶解するべきである。
図12または
図13に示すような持続注入システムが用いられない場合、1.0、2.5、5、10、15mg/mLの希釈前濃度に基づいて、希釈後の0.2、0.3、0.4、0.6、0.8、1.0、1.2、及び1.5mg/mLの所要投薬濃度に必要な体積を無菌的に取り出し、注射のために0.9%塩化ナトリウム(または本明細書に記載される他の薬学的に許容される静脈内注射溶液)の100、200、250、500mL輸液バッグに移すことができる。
【0132】
別の態様において、本明細書に提供される固体分散体、薬学的組成物、または剤形を投与するための持続注入システム及び方法が提供される。持続注入システムの例を
図12または
図13に提供する。持続注入システム及び方法では、ナイトロジェンマスタード化合物は輸液バッグに加えられない。代わりに、該化合物は、患者の血流に輸液を送達する輸液ラインに直接的かつ連続的に加えられる。患者の血流に進入する前に2つの流れを完全に混合することは、インラインミキサー(静的ミキサーとしても知られる)によって達成され得る。本明細書に記載される予備乾燥溶液を連続的に組み合わせるという概念と同様に、ベンダムスチンと水との接触時間が最小限に抑えられ、非常に少量の加水分解物の発生につながる。
【0133】
特定の実施形態において、ナイトロジェンマスタード化合物を投与するための方法が、本明細書に提供される。この方法では、静脈内輸液が、それを必要とする患者に連続動作モードで送達される。ナイトロジェンマスタード化合物を含む第2の溶液が、静脈内輸液と接触させられ、同じく連続動作モードで送達される。第2の溶液は、混合溶液を提供するために混合される。ある用量のナイトロジェンマスタード化合物を患者に送達するために、混合溶液が患者に投与される。
【0134】
特定の実施形態において、ナイトロジェンマスタード化合物は、本明細書に記載される任意の形態のいずれのナイトロジェンマスタード化合物であってもよい。特定の実施形態において、ナイトロジェンマスタード化合物は、ベンダムスチン塩酸塩である。さらなる実施形態において、ナイトロジェンマスタード化合物は、本明細書に記載されるように、マンニトールを含むベンダムスチン塩酸塩である。
【0135】
ナイトロジェンマスタード化合物を含む溶液は、任意の固体形態の化合物を好適な溶媒で溶解させることによって得ることができる。特定の実施形態において、固体形態は、本明細書に記載されるような固体分散体である。溶媒は、化合物を溶解すること及び患者に投与することに好適な任意の溶媒であり得る。特定の実施形態において、溶媒はDMSOである。他の実施形態において、溶媒は、注射用水(WFI)、n-プロパノール、エタノール、イソ-プロパノール、n-ブタノール、酢酸エチル、炭酸ジメチル、アセトニトリル、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、1-ペンタノール、酢酸メチル、四塩化炭素、ジメチルアセトアミド、ヘキサフルオロアセトン、クロロブタノール、ジメチルスルホン、酢酸、シクロヘキサン、n-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、またはそれらの混合物である。
【0136】
ナイトロジェンマスタード化合物は、当業者によって適していると考えられるいずれの濃度で提供されてもよい。特定の実施形態において、ナイトロジェンマスタード化合物は、本明細書に言及されるように、約1.0、2.0、2.5、5.0、7.5、10.0、15.0mg/mlの濃度で再構成される。当業者は、これが静脈内輸液と混合する前のナイトロジェンマスタード化合物の濃度であることを認識するであろう。
【0137】
静脈内輸液は、適していると考えられるいずれの静脈内輸液であってもよい。特定の実施形態において、静脈内輸液は、注射用水中の0.9%塩化ナトリウムであってもよい。当業者には明白であるように、静脈内輸液は、輸液バッグ等の適していると考えられるいずれの貯留器内で提供されてもよい。
【0138】
2つの溶液は、適していると考えられるいずれの技術によって混合されてもよい。特定の実施形態において、溶液は、重力によって、または撹拌によって、または対流によって混合することができる。好ましい実施形態において、溶液は、インラインミキサーによって連続動作モードで混合される。インラインミキサーは、当業者に適していると考えられるいずれのインラインミキサーであってもよい。
【0139】
特定の実施形態において、静脈内注射溶液は、第1のチューブによってミキサーに送達される。静脈内注射溶液は、適していると考えられるいずれの技術によって送達されてもよい。特定の実施形態において、静脈内注射溶液は、重力によって送達される。特定の実施形態において、静脈内注射溶液は、点滴によって、例えば、1つ以上の点滴用バルブによって送達される。特定の実施形態において、静脈内注射溶液は、1つ以上のポンプによって送達される。
【0140】
特定の実施形態において、ナイトロジェンマスタード化合物溶液は、第2のチューブによってミキサーに送達される。ナイトロジェンマスタード化合物溶液は、適していると考えられるいずれの技術によって送達されてもよい。特定の実施形態において、ナイトロジェンマスタード化合物溶液は、重力によって送達される。特定の実施形態において、ナイトロジェンマスタード化合物溶液は、点滴によって、例えば、1つ以上の点滴用バルブによって送達される。特定の実施形態において、ナイトロジェンマスタード化合物溶液は、1つ以上のポンプによって送達される。
【0141】
特定の実施形態において、一方または両方の溶液の流量は、混合溶液の構成成分の濃度を調整するように制御される。特定の実施形態において、静脈内輸液の流量は、約0.8~約50.0ml/分である。特定の実施形態において、静脈内輸液の流量は、約16.67ml/分である。特定の実施形態において、ナイトロジェンマスタード化合物溶液の流量は、約0.08~約8.0ml/分である。特定の実施形態において、ナイトロジェンマスタード化合物溶液の流量は、約0.334ml/分である。第2の溶液中のナイトロジェンマスタード化合物の濃度が約10mg/mlである場合、第1の流量が約16.67ml/分であり、第2の流量が約0.334ml/分であるとき、混合溶液中のナイトロジェンマスタード化合物の濃度は約0.2mg/mlであるべきであり、組み合わせた注入量は約17ml/分である。これは、100mgのベンダムスチンを、500mlの輸液と組み合わせたときに、約30分の期間内に患者内に注入されることを意味する。他の実施形態において、静脈内輸液の流量は、約30.0ml/分である。ナイトロジェンマスタード化合物溶液の流量は、約1.8ml/分である。第2の溶液中のml/分であり、第2の流量が約1.8ml/分であるとき、混合溶液中のナイトロジェンマスタード化合物の濃度は約0.57mg/mlであるべきであり、組み合わせた注入量は約31.8ml/分である。これは、180mgのベンダムスチン(健常成人の用量100mg/m2に対応する)を、300mlの輸液と組み合わせたときに、約10分の期間内に患者内に注入されることを意味する。当該技術分野で既知のように、ベンダムスチン及び/または静脈内注射溶液の注入量の増加は、血管外漏出、局所的紅斑、疼痛、及び腫脹等の患者への副作用によって制限される。またそれは、沈殿及び用量の非一貫性を引き起こし得る、最終輸液に溶解させたベンダムスチンの飽和点の超過によっても制限される。したがって、特定の注入プロトコルのために上記2つのパラメータがいったん確立されると、再構成濃度、再構成量、輸液のサイズ、再構成ベンダムスチンの注入量、及び静脈内注射溶液の注入量(全て、本発明の範囲内である)等の注入変数の多数の組み合わせが存在する。
【0142】
さらなる実施形態において、ナイトロジェンマスタード化合物の持続注入のための装置が、本明細書に提供される。特定の実施形態において、持続注入装置は、静脈内輸液を含む第1の貯留器、静脈内輸液をインラインミキサーに送達するように構成される第1の槽、ナイトロジェンマスタード化合物溶液を含む第2の貯留器、ナイトロジェンマスタード化合物溶液をインラインミキサーに送達するように構成される第2の槽、及び2つの供給流の混合を達成するように構成されるインラインミキサー、ならびに混合溶液を患者の血流に送達することが可能な送達デバイスに混合溶液を送達するように構成される第3の槽を備える。
【0143】
送達デバイスは、患者に輸液を送達するのに適したいずれの送達デバイスであってもよい。特定の実施形態において、送達デバイスは、カテーテル、静脈内チューブもしくは槽、または針である。
【0144】
ナイトロジェンマスタード化合物溶液は、本明細書に記載される任意のそのような溶液であってもよい。特定の実施形態において、ナイトロジェンマスタード化合物溶液は、本明細書に記載される再構成された固体分散体である。特定の実施形態において、ナイトロジェンマスタード化合物溶液は、本明細書に記載されるような再構成ベンダムスチン塩酸塩である。特定の実施形態において、溶液は、ナイトロジェンマスタード化合物分解物等の分解物を実質的に含まない。特定の実施形態において、溶液は、ナイトロジェンマスタード化合物の加水分解物等の分解物を実質的に含まない。
【0145】
本方法及び装置において、当業者は、患者の血流に進入する前の最小限の時間で、ナイトロジェンマスタード化合物溶液が静脈内注射溶液と混合することを認識するであろう。
【0146】
図12に示すシステムにおいて、700ml、500ml、300ml、200ml、または100mlの0.9%塩化ナトリウム(または他の薬学的に許容される注入希釈剤)を含む輸液バッグの内容物が、多重チャネル注入ポンプを介して、インラインミキサーを通して連続的にポンプ輸送され、そこで本明細書に記載されるように再構成された再構成ベンダムスチンの内容物と混合される。再構成ベンダムスチンもまた、同じ多重チャネル注入ポンプの代替チャネルを介して、インラインミキサー内に連続的にポンプ輸送される。注入ポンプの供給チャネルの流量を適切に制御することにより、注入のための所望の溶液の適切な濃度が得られるであろう。希釈後の所望の濃度は、約0.2、0.3、0.4、0.6、0.8、1.0、1.5、2.0、3.0、4.0mg/mlのベンダムスチン塩酸塩である。
【0147】
図13に示すシステムにおいて、700ml、500ml、300ml、200ml、または100mlの0.9%塩化ナトリウム(または他の薬学的に許容される静脈内注射溶液)を含む輸液バッグの内容物が、点滴制御バルブを介して、点滴チャンバ内に、そしてインラインミキサーを通して連続的に滴下され、そこで再構成ベンダムスチンの内容物と混合される。再構成ベンダムスチンもまた、別の点滴制御バルブを介して、別の点滴チャンバ内に、次いで同じインラインミキサーを通して連続的に滴下される。注入ポンプを通る流量を適切に制御することにより、注入のための所望の溶液の適切な滴定が得られるであろう。流れは、重力によって、または上流に圧力を印加することによってのいずれかで持続させることができる、希釈後の所望の濃度は、0.2、0.3、0.4、0.6、0.8、1.0、1.5、2.0、3.0、4.0mg/mlのベンダムスチン塩酸塩である。
【0148】
有利には、持続注入は、ベンダムスチンと水との接触時間を最小限に抑え、よって、加水分解物の形成を著しく低減することができる。本明細書に提供される薬学的組成物は、1つ以上の抗腫瘍剤と併用して投与され得、その場合、抗腫瘍剤は、本明細書に提供される組成物の投与の前に、それと同時に、またはその後に投与されることが想定される。薬学的に許容される抗腫瘍剤は、当該技術分野で既知である。好ましい抗腫瘍剤は、2014年8月22日に出願された同時係属中の米国特許出願第14/466,765号(参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)に開示されるものである。
【0149】
また、加水分解物の形成を最小限に抑えるために、薬学的に許容される水性の注入希釈剤をナイトロジェンマスタード系抗腫瘍剤の非水溶液と連続的に組み合わせるための、例えば、
図12または
図13に示すような持続注入システムの使用も、本明細書に提供される。そのような抗腫瘍剤は、シクロホスファミド、ベンダムスチン、ビスルファン、クロラムブシル、カルムスチン、メルファラン、ウラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、ルムスチン、またはそれらの組み合わせを含む。非水溶液は、有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソ-プロパノール、n-ブタノール、酢酸エチル、炭酸ジメチル、アセトニトリル、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、1-ペンタノール、酢酸メチル、四塩化炭素、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド、ヘキサフルオロアセトン、クロロブタノール、ジメチルスルホン、酢酸、シクロヘキサン、n-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、tert-ブチルメチルエーテル、エチルエーテル、ギ酸エチル、酢酸イソプロピル、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸プロピル、またはそれらの混合物等を含有する。
【0150】
好ましくは、本明細書に記載されるベンダムスチン塩酸塩の薬学的組成物は、例えば、滅菌水または非水性溶媒で、粒子を含まない透明な溶液である注射可能な調製物に再構成される。その結果として、患者に注射される薬学的用量は、投与を通じて均一であり、一貫している。
【0151】
特定の実施形態は、100mgのベンダムスチン塩酸塩を20mLの滅菌注射用水で、好ましくは無菌的に再構成することを含む再構成プロセスを提供する。これに代わるのは、100mgのベンダムスチン塩酸塩を40mLの滅菌注射用水で再構成することである。これによって、5mg/mL(または代替の再構成プロトコルの場合2.5mg/mL)のベンダムスチンHCl濃度を有する、無色から短黄色の溶液がもたらされる。噴霧乾燥ベンダムスチン塩酸塩が再構成される場合、ベンダムスチン塩酸塩は、2分未満で完全に溶解するべきである。(5mg/mL及び2.5mg/mLの両方の濃度に基づく)所要投薬量に必要な体積を、無菌的に取り出し、注射のために0.9%塩化ナトリウム(または他の薬学的に許容される静脈内注射溶液)の500mL輸液バッグに移すことができる。
【0152】
好ましくは、持続注入方法が用いられない場合、再構成された溶液は、再構成の30分以内に輸液バッグに移される。移した後、輸液バッグの内容物が徹底的に混合される。静脈内注入による投与は、典型的には約30~約60分の期間にわたって提供される。特定の実施形態において、注入は、5、10、15、20分の時間にわたって提供される。本明細書に提供される薬学的組成物は、1つ以上の抗腫瘍剤と併用して投与され得、その場合、抗腫瘍剤は、本明細書に提供される組成物の投与の前に、それと同時に、またはその後に投与されることが想定される。薬学的に許容される抗腫瘍剤は、当該技術分野で既知である。好ましい抗腫瘍剤は、2014年8月22日に出願された同時係属中の米国特許出願第14/466,765号(参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)に開示されるものである。
【0153】
本明細書に提供される特定の実施形態は、500mL未満の体積の0.9%塩化ナトリウム(または他の薬学的に許容される静脈内注射溶液)を含む輸液バッグに再構成された溶液を移すこと、及び30分未満の期間にわたって静脈内注入により投与することを必要とする、注入プロトコルを対象とする。例えば、200mLの体積の0.9%塩化ナトリウムの使用、及び12分の注入時間である。
【0154】
ベンダムスチンの治療有効量は、従来の技術を使用することにより、担当診断医によって容易に決定され得る。有効用量は、疾患または障害の進行の種類及び程度、特定の患者の全体的な健康、ベンダムスチンの生物学的有効性、ベンダムスチンの調合、ならびにベンダムスチンの形態の投与経路を含む多数の要因に依存して変化し得る。また、ベンダムスチンは、所望の硬化が達成されるまで徐々に増加させながら、より低い投与量レベルで投与されてもよい。
【0155】
また、本明細書に記載されるような組成物から調製される調製物の治療有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む、慢性リンパ性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、または乳癌を治療する方法も、明細書に提供される範囲内である。
【実施例0156】
以下の実施例は、本明細書の特定の態様を例示し、当業者が本明細書を実施する際に助けとなるように提供される。これらの実施例は、いかなる方法においても決して本明細書の範囲を限定すると見なされるべきではない。
【0157】
材料:ベンダムスチンHCL(Tianjin Pharmacn Medical Technology Co,Ltd、バッチ番号130801);マンニトール、Pearlitol 160C(Roquette、ロット番号52305973);PVP,Plasdone K-17(Ashland、製品コード1172625、ロット番号052305973);HPMCAS,Aquasolve HPMC-AS MF(Ashland、製品コード834121、ロット番号ASHMA 1004F);Ethyl Alcohol,USPグレード UN1170(200プルーフ)(Koptec,PN V1001);n-プロパノール(Macron Fine Chemicals、バッチ番号0000040691);Methanol(Omnisolv,MX0488-6)
【0158】
機器:UV検出器を装備したAgilent 1100シリーズ;Zorbax SB-C18、4.6×250mm、5um;Rigaku Smart-Lab X-ray回折システム、TA Instruments Q2000 DSCシステム、TA Instruments Q50 TGシステム、PAXcam3デジタルカメラ付きLeica M80実体顕微鏡、Buchi B-191噴霧乾燥機、長距離高精度光源及びニッケルフィルタを用いて生成されるCu Kα放射線の入射ビームを使用したPANalytical X’Pert PRO MPD回折計。Spot Insightカラーカメラを装備したLeica DM LP顕微鏡。別途記述のない限り、一次赤色用補償板を有する交差偏光子を使用した。
【0159】
実施例1:HPLC手順
以下の方法1または方法2に従って、高速液体クロマトグラフィーによりベンダムスチン及びベンダムスチン分解生成物を測定した。
方法1
パラメータ 値
カラム Zorbax SB-C18、4.6×250mm、5um
(C18 4×3mm Phenomenex
Security Guard付き)
カラム温度 30℃
検出器波長 230nm
移動相A: 水中0.1% TFA
移動相B: 水中0.1% TFA:ACN(1:1)
勾配: 0分、20%B
1分、20%B
24分、90%B
30分、90%B
31分、20%B
注射量: 10uL
流量: 1.0mL/分
実行時間: 36分
結果:
【0160】
上記方法1を使用した場合のいくつかのベンダムスチン不純物の滞留時間を表1に示す。
【0161】
【0162】
HP2は、式Vに見られるHP1のさらなる加水分解から生じる化合物である。
【0163】
【0164】
実施例2: 加水分解物を含まないベンダムスチン/マンニトールに基づく組成物
各々が、乾燥粉末の形態で固体分散体を含み、加水分解物を実質的に含まない異なる薬学的組成物である、2つのバッチ(バッチ1及びバッチ2)を生成した。各バッチにつき、2つの予備乾燥中間組成物を別々の容器内で調合した。バッチ1では、70mlの水に溶解させた2380mgのマンニトールからなる水性の予備乾燥組成物を調合した。70mlのn-プロパノールに1400mのベンダムスチンを溶解させることによって、非水性の予備乾燥組成物を調合した。バッチ2では、水性の予備乾燥組成物は、70mlの水に溶解させた1190mgのマンニトールからなっていた。非水性の予備乾燥組成物は、700mgのベンダムスチン塩酸塩を70mlのエタノールに溶解させることによって調合した。エタノール/ベンダムスチン溶液は、潜在的な副反応の程度を最小限に抑えるために冷却することができる。両方の供給ポンプ(
図10を参照)は、賦形剤対APIの比が、バッチ1では1.8、バッチ2では1.9になるように設定した。表2及び3は、バッチ1及びバッチ2のプロセスパラメータを示す。
【0165】
得られた噴霧乾燥粉末は、白色の微粒子からなっていた。残留水分、残留溶媒(TGAによる)、及び分解物の濃度についてバッチを調べた。(HP2関連化合物、HP1関連化合物、ベンダムスチンの二量体、メチルエーテル、およびエチルエーテル)。その結果を、表4に見ることができる。
【0166】
バッチ1のXRPDピークデータを含む表5に見られるように、この固体分散体における著しい結晶ピークは、マンニトール多形δ及びαに起因し得る。ベンダムスチン形態1またはベンダムスチン形態3に対応するピークは観察されなかった。(すなわち、形態1の場合は8.3、14、16.8、18.5±0.2度2θのピーク、または形態3の場合は7.9、10.6、15.5、19.7±0.2度2θのピーク)。
【0167】
Spot Insightカラーカメラを装備したLeica DM LP顕微鏡を使用して光学顕微鏡検査を行った。別途記述のない限り、一次赤色用補償板を有する交差偏光子を使用した。5×、10×、20×、及び40×の対物レンズを使用して試料を観察した。試料を顕微鏡スライドガラスに載せ、1.5カバーガラスを試料の上に載せ、カバーガラスの縁部に鉱油を加えて毛管現象により試料を覆った。図を参照すると、ドライマウントが用いられている。Spot Advancedソフトウェア(v.4.5.9)を使用して周囲温度で画像を取得した。粒径の参考として画像上にマイクロメートルのバーを挿入した。
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
図3は、偏光顕微鏡を通して観察されたバッチ1からの粒子を示す。我々は、粒子及び粒子凝集体が、複屈折、均一性、及び20~200マイクロメートルの直径を示すことに注目した。複屈折の性質は、XRPDデータと併せると、固体分散体が結晶マンニトールのマトリックスに埋め込まれた非晶質ベンダムスチンから主に構成されることを示している。
【0173】
バッチ2のXRPDピークデータを示す表6に見られるように、この固体分散体における著しい結晶ピークは、マンニトール多形δ及びαに起因し得る。ベンダムスチン形態3に対応するいくつかのピークが観察された(すなわち、7.9、10.6、15.5、19.7±0.2度2θのピーク)。このように、我々は、意外にもバッチ2とバッチ1との間での実験条件の変更が、マンニトール及び他の形態のベンダムスチンに加えてベンダムスチン形態3を含有する固体分散体の生成を可能にするのに充分であったことを発見した。
【0174】
上記に基づいて、我々は、特定のセットのプロセスパラメータ下で、加水分解物を実質的に含まず、非晶質ベンダムスチン及び結晶マンニトールを含む、ベンダムスチンの結晶形態を実質的に含まない乾燥粉末形態の均一な固体分散体を生成することが可能であることを予期せず発見した。本明細書に記載される特定の実施形態は、非晶質ベンダムスチンに加えて、微量の結晶性ベンダムスチンを含むが、これには、いずれの場合にもベンダムスチン結晶多形形態1または形態3が実質的に含まれない。
【0175】
【0176】
バッチ1及びバッチ2で生成された固体分散体は、
図3及び
図4に見ることができるように、結晶マンニトール(複屈折を示す)と非晶質ベンダムスチン(複屈折を示さない)との間に分布均一性を示す。この均一性は、バッチ内で、及びDSCを通して、複数の試料を回収して分析することによっても検証された。
【0177】
図5は、バッチ1のXRPD回折図を示す。これを、米国特許第8445524号に報告され、また
図6に示される凍結乾燥組成物のXRPD回折図と比較すると、バッチ1の固体分散体が、7.9、10.6、15.5、及び19.7±0.2度2θでベンダムスチン形態3と関連する顕著なピークを示さないということが分かるだけではなく、固体混合物中に含有されるマンニトール多形が異なるということにも気付く(例えば、マンニトール多形αと関連する角度13.74±0.2度2θでのピークは、
図6には存在しない)。このことは、2つの回折図によって特徴付けられた組成物が、異なる物理的及び化学的特性を示すことに加えて、特有かつ独特であることを裏付けている。
【0178】
実施例3非晶質固体分散体.
各々が、乾燥粉末の形態で固体分散体を含み、加水分解物を含まない異なる薬学的組成物である、2つのバッチ(バッチ3及びバッチ4)を生成した。各バッチにつき、1つの予備乾燥中間組成物を許容される容器内で調合した。この予備乾燥中間組成物は、有機溶媒、ベンダムスチン塩酸塩、及び有機溶媒に溶解可能な賦形剤を含んでいた。水性の予備乾燥溶液は使用されなかった。バッチ3は、600mgのベンダムスチンHCL及び3000mgのPlasdone K-17(ポリビニルピロリドン、PVP)を120mlの純粋なエタノールに溶解させることによって得た。PVP対ベンダムスチンの比は5:1であった。よって、このバッチの全固形分の割合は3.0%であった。バッチ4は、300mgのベンダムスチンHCL及び900mgのHPMC-ASを40mlの純粋なメタノールに溶解させることによって得た。HPMC-AS対ベンダムスチンの比は3:1であった。バッチ4の全固形分の割合は3.8%であった。
【0179】
【0180】
得られた噴霧乾燥粉末は、白色の微粒子からなっていた。残留水分、残留溶媒(TGAによる)、及び分解物の濃度についてバッチを調べた。その結果を、表8に見ることができる。
【0181】
バッチ3及び4について固相特性化試験を行った。バッチ3及び4について、それぞれ
図7及び9にXRPD回折図を見ることができる。これらの回折図から、ベンダムスチンHCLは結晶化する傾向を有するが、PVP及びHPMC-ASを含む両方の固体分散体が非晶質であり、結晶形態を実質的に含まないということが、意外にも発見された。
【0182】
【0183】
図8は、バッチ3の偏光顕微鏡写真を示す。いずれの複屈折も認められないことから、固体分散体が、非晶質PVPマトリックス中に非晶質ベンダムスチンを含む乾燥粉末粒子の形態であることが裏付けられる。
【0184】
実施例4:持続注入プロセス
100mgのベンダムスチン及び500mgのポリビニルピロリドン(PVP)を含むバイアルを、39.6mlのエタノールを加えることにより構成する。振盪させ、10分かけて完全に溶解させることにより、非水溶液が注入できる状態となる。再構成された溶液は、透明で、粒子を含まない。得られた溶液の体積は、約40mlである。得られた溶液中のベンダムスチン濃度は、約2.5mg/mlである。再構成ベンダムスチンを含むバイアルは、
図12に示す持続注入システムに取り付けられる。
【0185】
500mlの注射用0.9%塩化ナトリウム水溶液を含む輸液バッグが、
図12に示す持続注入システムに取り付けられる。輸液バッグ及び再構成されたバイアルは、薬学的に許容されるチューブを介して多重チャネル注入ポンプに接続される。注入ポンプは、ごくわずかな体積流量で流量を正確に制御することが可能な少量注入機能を有する。
【0186】
約30分の所望の注入時間を得るために、水性塩化ナトリウム溶液専用チャネルの流量を約16.67ml/分に設定する。非水性ベンダムスチン溶液の流量は、約1.334ml/分に設定される。再構成されたバイアル中の2.5mg/mlのベンダムスチン濃度を考慮すると、非水性ベンダムスチン溶液の質量流量は、ベンダムスチンの約3.334mg/分に対応する。
【0187】
水性0.9%塩化ナトリウム溶液及び非水性エタノール/ベンダムスチン溶液の両方を、
図12に示すようなインラインミキサーを通して連続的に混合する。インラインミキサーを設計する技術分野で周知のように、充分な滞留時間、乱流、および設計特性を適切に提供することにより、両方の流入物が完全に混合され、ミキサーの流出口の溶液が均一になる。患者に注入される溶液中のベンダムスチン濃度は、約0.2mg/mlである。
【0188】
インラインミキサーの流出口と患者への進入点との間のチューブの管内容積は0.1mlであり、インラインミキサー容積は0.5mlである。これは、約18ml/分の合計流量の場合、ベンダムスチンが水溶液と直接接触する期間が約0.033分または約2秒であることを意味する。秒ではなく時間で測定される反応半減期を有するベンダムスチン加水分解反応の速度論と併せて、この短い期間を考慮すると、持続注入システムは、加水分解物を実質的に含まないベンダムスチン溶液を患者に送達すると結論付けられる。
【0189】
実施例5:マンニトール/ベンダムスチン製剤の持続注入プロセス
100mgのベンダムスチン及び120mgのマンニトールを含むバイアルを、10mlのDMSOを加えることにより再構成する。代替として、DMSOの代わりに、NMP、DMA、DMI、PEG、PG、またはグリセリンが使用されてもよい。DMSO中のマンニトールの溶解度は水中とほぼ同じであり(約36mg/ml)、これは、得られた溶液が飽和点及び沈殿点から大幅に離れている(すなわち、飽和点の約30%)ことを意味する。振盪させ、10分かけて完全に溶解させることにより、非水溶液が注入できる状態となる。再構成された溶液は、透明で、粒子を含まない。得られた溶液の体積は、10mlである。得られた溶液中のベンダムスチン濃度は、約10.0mg/mlである。再構成ベンダムスチンを含むバイアルは、
図12に示す持続注入システムに取り付けられる。
【0190】
300mlの注射用0.9%塩化ナトリウム水溶液を含む輸液バッグが、
図12に示す持続注入システムに取り付けられる。輸液バッグ及び再構成されたバイアルは、薬学的に許容されるチューブを介して多重チャネル注入ポンプに接続される。注入ポンプは、ごくわずかな体積流量で流量を正確に制御することが可能な少量注入機能を有する。
【0191】
約10分の所望の注入時間を得るために、水性塩化ナトリウム溶液専用チャネルの流量を約30ml/分に設定する。非水性ベンダムスチン溶液の流量は、約1.0ml/分に設定される。再構成されたバイアル中の10.0mg/mlのベンダムスチン濃度を考慮すると、非水性ベンダムスチン溶液の質量流量は、ベンダムスチンの約10.0mg/分に対応する。
【0192】
水性0.9%塩化ナトリウム溶液及び非水性DMSO/ベンダムスチン溶液の両方を、
図12に示すようなインラインミキサーを通して連続的に混合する。インラインミキサーを設計する技術分野で周知のように、充分な滞留時間、乱流、および設計特性を適切に提供することにより、両方の流入物が完全に混合され、ミキサーの流出口の溶液が均一になる。患者に注入される溶液中のベンダムスチン濃度は、約0.32mg/mlである。
【0193】
インラインミキサーの流出口と患者への進入点との間のチューブの管内容積は約0.1mlであり、インラインミキサー容積は約0.5mlである。これは、約31ml/分の合計流量の場合、ベンダムスチンが水溶液と直接接触する期間が約0.0193分または1.16秒であることを意味する。秒ではなく時間で測定される反応半減期を有するベンダムスチン加水分解反応の速度論と併せて、この短い期間を考慮すると、持続注入システムは、加水分解物を実質的に含まないベンダムスチン溶液を患者に送達すると結論付けられる。
【0194】
本明細書で述べた全ての特許、特許出願、及び刊行物は、当業者の水準を示している。全ての特許、特許出願、及び刊行物は、各個々の刊行物が、参照により具体的かつ個別に組み込まれると示されているのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0195】
本明細書に例示的に記載される説明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素(複数可)の非存在下で適切に実施され得る。よって、例えば、本明細書における各例において、用語「~を含む」、「~から本質的になる」、及び「~からなる」のいずれも、他の2つの用語のいずれかで置き換えることができる。用いられてきた用語及び表現は、限定ではなく説明の用語として使用されており、そのような用語および表現の使用において、示される及び記載される特徴またはその一部の任意の均等物を排除するという意図はなく、特許請求の範囲の範囲内で種々の修正が可能であることを認識されたい。したがって、本明細書は好ましい実施形態および任意選択的な特徴によって具体的に開示されてきたが、当業者によって本明細書に開示される概念の修正例及び変形例が用いられ得ること、また、そのような修正例及び変形例が、添付の特許請求の範囲によって定義される本明細書の範囲内であると見なされることを理解されたい。