(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095948
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬と組み合わせたデスモプレシンを含む方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/08 20190101AFI20220621BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220621BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220621BHJP
A61K 31/18 20060101ALI20220621BHJP
A61K 31/517 20060101ALI20220621BHJP
A61K 31/568 20060101ALI20220621BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
A61K38/08
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/18
A61K31/517
A61K31/568
A61P13/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069213
(22)【出願日】2022-04-20
(62)【分割の表示】P 2020037385の分割
【原出願日】2015-11-19
(31)【優先権主張番号】62/082,301
(32)【優先日】2014-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】517444702
【氏名又は名称】セレニティ ファーマシューティカルズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】ファイン,シーモア エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】チェン,リンダ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,マリア
(72)【発明者】
【氏名】ハーシュコヴィッツ、サミュエル
(57)【要約】
【課題】アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬と組み合わせたデスモプレシンを含む方法及び組成物を提供すること。
【解決手段】成人ヒト対象の尿意を約2時間~約8時間以下の間隔にわたって抑制する方法であって、それを必要とする成人ヒト対象に有効かつ低用量のデスモプレシン及びアルファ-アドレナリン受容体阻害薬を、オーバーラップ期間中に両方が生理活性を発揮するように投与することを含む、前記方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成人ヒト対象の尿意を約2時間~約8時間以下の間隔にわたって抑制する方法であって、それを必要とする成人ヒト対象に有効かつ低用量のデスモプレシン及びアルファ-アドレナリン受容体阻害薬を、オーバーラップ期間中に両方が生理活性を発揮するように投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
ヒト対象の尿意を約4時間~約7時間の間隔にわたって抑制する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
抗利尿効果が約2時間~約6時間以下の間隔にわたって達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
抗利尿効果が約4時間~約7時間以下の間隔にわたって達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記投与が前記対象において10または15pg/mLを超えないデスモプレシンの血漿濃度を達成する、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記投与が前記対象において約0.5pg/mL~約5pg/mLの範囲のデスモプレシンの血漿濃度を達成する、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記投与が前記ヒト対象において約0.5pg/mL~約2.5pg/mLの範囲のデスモプレシンの血漿濃度を達成する、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
デスモプレシンが、経皮的に、皮内に、または口腔もしくは鼻粘膜を通じて経粘膜的に投与される、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
デスモプレシンが経皮的にまたは皮内に投与される、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
デスモプレシンが経鼻的に投与される、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
デスモプレシンが口腔粘膜を通じて舌下に投与される、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
デスモプレシンが約5ng/時間~約35ng/時間の範囲の流入速度で投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
デスモプレシンが約5ng/時間~約15ng/時間の範囲の流入速度で投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬が、アルフゾシン、アモスラロール、アロチノロール、ダピプラゾール、ドキサゾシン、メシル酸エルゴロイド、フェンスピリド、イダゾキサン、インドラミン、ラベタロール、ナフトピジル、ニセルゴリン、プラゾシン、シロドシン、タムスロシン、テラゾシン、トラゾリン、ヨヒンビン、フェノキシベンザミン、フェントラミン、アチパメゾール、またはそれらの薬学的に許容される塩である、請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬が、アルフゾシン、ドキサゾシン、イダゾキサン、プラゾシン、シロドシン、タムスロシン、テラゾシン、トラゾリン、ヨヒンビン、またはそれらの薬学的に許容される塩である、請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬が、アルフゾシン、ドキサゾシン、プラゾシン、シロドシン、タムスロシン、テラゾシン、トラゾリン、ヨヒンビン、またはそれらの薬学的に許容される塩である、請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬が、経口的に、経皮的に、皮内に、または鼻または口腔粘膜を通じて投与される、請求項1から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬が経口的に投与される、請求項1から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬がデスモプレシン投与開始の前または後の1時間以内に投与される、請求項1から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記対象が夜間頻尿症、尿失禁、遺尿症、または尿崩症にかかっている、請求項1から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記対象が夜間頻尿症にかかっている、請求項1から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記ヒト対象の尿生成がデスモプレシン投与終了後約2時間以内に回復する、請求項1から21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記成人ヒト対象に、アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬を毎日少なくとも1カ月の期間投与することと、デスモプレシンを前記対象の就寝前に投与することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記成人ヒト対象に、アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬を薬物表示におけるBPH治療のための最小推奨用量より低用量レベルで投与することと、デスモプレシンを前記対象の就寝前に投与することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記成人ヒト対象に、デスモプレシン及びアルファ-アドレナリン受容体拮抗薬を混合物として、前記対象の就寝前に、BPH処置のための前記拮抗薬の最小推奨用量より低用量レベルで投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
5-アルファレダクターゼ抑制薬を投与することをさらに含む、請求項1から25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記5-アルファレダクターゼ抑制薬が、デュタステリド、エプリステリド、フィナステリド、イゾンステリド、ツロステリド、AS-601811、FK143、TF-505、またはそれらの薬学的に許容される塩である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記成人ヒト対象が成人男性のヒトである、請求項1から27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
デスモプレシン、アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬、及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項30】
ヒト対象への鼻腔内または舌下投与用に処方される、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬が、アルフゾシン、アモスラロール、アロチノロール、ダピプラゾール、ドキサゾシン、メシル酸エルゴロイド、フェンスピリド、イダゾキサン、インドラミン、ラベタロール、ナフトピジル、ニセルゴリン、プラゾシン、シロドシン、タムスロシン、テラゾシン、トラゾリン、ヨヒンビン、フェノキシベンザミン、フェントラミン、アチパメゾール、またはそれらの薬学的に許容される塩である、請求項29または30に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬と組み合わせたデスモプレシンを使用するための方法及び組成物を提供する。この方法及び組成物は、夜間頻尿症の治療及びその他の頻尿障害において有用である。
【背景技術】
【0002】
夜間頻尿症及び他の頻尿障害は、かなりの割合のヒト集団に影響を及ぼしている。夜間頻尿症を有する患者は、夜間に放尿で起きる必要性があるため睡眠の中断に見舞われる。過活動膀胱にかかっている患者は、急迫性尿失禁、尿意切迫及び高度の頻尿に見舞われることが多い。過活動膀胱は、膀胱の充満期中に膀胱の筋層(排尿筋)を形成している平滑筋線維束の制御されない収縮によって引き起こされる可能性があり、年配の成人により広く見られる。
【0003】
夜間頻尿症及び他の頻尿障害を治療するための諸組成物及び諸方法が記載されてきた。例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3には、低投薬量のデスモプレシンを用いた医薬組成物及び方法が記載されている。特許文献4は、例えばデスモプレシンの経皮的投与を用いた、夜間頻尿症及び他の頻尿障害の治療が記載されている。また、特許文献5も、例えばデスモプレシンの鼻腔内投与を用いた、夜間頻尿症及び他の頻尿障害の治療が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,579,321号
【特許文献2】米国特許第7,799,761号
【特許文献3】米国特許第8,143,225号
【特許文献4】米国特許出願公開第US2009/0042970号
【特許文献5】米国特許出願公開第US2012/0015880号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
デスモプレシンを用いた夜間頻尿症及び他の頻尿障害の治療における課題の1つは、治療効果があると同時に無毒であるデスモプレシンの血漿濃度を達成することである。過度に大量のデスモプレシンを投与すると、発作または患者の死をもたらす恐れのある低ナトリウム血症などの深刻な副作用が生じ得る。そのため、より低い投薬量のデスモプレシンを用いて安全性プロファイルの改善及び/または効能の向上をもたらす組成物及び方法に対する必要性が存在する。本発明は、この必要性に対処し、かつ他の関連する利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬と組み合わせたデスモプレシンを使用するための方法及び組成物を提供する。この併用療法は、望ましくない膀胱からの排尿または頻繁な尿意に関連する障害またはそれを特徴とする障害にかかっているヒト対象に利益を提供する。このようなヒトは、尿の過剰生成、不適切な尿濃度、低い尿オスモル濃度、過剰な頻尿(例えば、中枢性尿崩症に関連する過剰な頻尿)、成人原発性夜尿症、夜間頻尿症、過活動膀胱症候群(OAB)、覚醒時の尿意切迫及び頻尿、尿失禁、あるいは、安静時尿漏出または労作もしくはストレスによる尿漏出をもたらす望ましくない尿生成、に苦しむ可能性がある。デスモプレシン及びアルファ-アドレナリン受容体拮抗薬は、オーバーラップ期間中に両方が生理活性を発揮するように、対象に投与される。代表的なアルファ-アドレナリン受容体拮抗薬として、例えば、アルフゾシン、アモスラロール、アロチノロール、ダピプラゾール、ドキサゾシン、メシル酸エルゴロイド、フェンスピリド、イダゾキサン、インドラミン、ラベタロール、ナフトピジル、ニセルゴリン、プラゾシン、シロドシン、タムスロシン、テラゾシン、トラゾリン、ヨヒンビン、フェノキシベンザミン、フェントラミン、定型及び非定型抗精神病薬、アチパメゾールならびにそれらの薬学的に許容される塩、が挙げられる。ある特定の実施形態では、この方法は、5-アルファレダクターゼ抑制薬を投与することを任意選択でさらに含む。
【0007】
従って、本発明の一態様では、ヒト対象の尿意を約2時間~約8時間以下の間隔にわたって抑制する方法が提供される。この方法は、それを必要とするヒト対象に、有効量のデスモプレシン及びアルファ-アドレナリン受容体拮抗薬を、オーバーラップ期間中に両方が生理活性を発揮するように投与することを含む。デスモプレシン及び拮抗薬構成成分は、別々に投与しても一緒に投与してもよい。通常、デスモプレシン構成成分は、放尿回避期間開始の少し前、例えば約1時間30分前に摂取する。拮抗薬構成成分は、デスモプレシン投与と同時に摂取しても、あるいはある程度前に摂取してもよい。デスモプレシン及び/またはアルファアドレナリン受容体拮抗薬の投薬量ならびに/または投薬レジメンは、この方法によってヒト対象の尿意が約4時間~約7時間の間隔にわたって抑制されるように調整することができる。デスモプレシンは、対象が低ナトリウム血症(対象の血漿中のナトリウム濃度が、例えば約135mmol/L未満と過度に低い有害な状態)に見舞われないような投薬量で投与される。低ナトリウム血症は、血中デスモプレシンの最大用量が10pg/ml未満、好ましくは5pg/ml未満、最も好ましくは5pg/ml未満、例えば2または3pg/mlである場合に回避される。重度の低ナトリウム血症は、心臓の不整脈、心臓麻痺、発作、及び/または脳卒中を起こし得る電解質異常をもたらす恐れがある。好ましくは、拮抗薬は、(認可薬物の)表示上に指示されている投薬量未満で投与するか、またはOABを治療するための診療でこの目的のみに使用する場合に推奨される投薬量で投与する。こうすることで、このようなアルファ-アドレナリン受容体拮抗薬の副作用を減少させる結果につながる。併用療法は、確実かつ安全に夜間頻尿症を効果的に治療することが示された。ある特定の実施形態では、この方法は、5-アルファレダクターゼ抑制薬を投与することを任意選択でさらに含む。本発明の別の態様では、ヒト対象における抗利尿効果を短い間隔にわたって安全に誘発する方法が提供される。この方法は、それを必要とするヒト対象に、有効量のデスモプレシン及びアルファ-アドレナリン受容体拮抗薬を、オーバーラップ期間中に両方が生理活性を発揮するように投与することを含む。ある特定の実施形態では、この方法は、例えば、デスモプレシン、アルファ-アドレナリン受容体、及び5-アルファレダクターゼ抑制薬の各々がオーバーラップ期間中に生理活性を発揮するように、5-アルファレダクターゼ抑制薬を投与することを任意選択でさらに含む。
【0008】
本発明の別の態様では、デスモプレシン、アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が提供される。ある特定の実施形態では、この医薬組成物は、ヒト対象への経粘膜的投与用に、例えば頬側または鼻の投与用に、処方される。他の実施形態では、この組成物は経皮的または皮内パッチとして処方される。他の実施形態では、アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬は経口摂取され、一方デスモプレシンは経粘膜的に、例えば舌下または鼻腔内に、摂取される。
【0009】
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕成人ヒト対象の尿意を約2時間~約8時間以下の間隔にわたって抑制する方法であって、それを必要とする成人ヒト対象に有効かつ低用量のデスモプレシン及びアルファ-アドレナリン受容体阻害薬を、オーバーラップ期間中に両方が生理活性を発揮するように投与することを含む、前記方法、
〔2〕ヒト対象の尿意を約4時間~約7時間の間隔にわたって抑制する、〔1〕に記載の方法、
〔3〕抗利尿効果が約2時間~約6時間以下の間隔にわたって達成される、〔1〕に記載の方法、
〔4〕抗利尿効果が約4時間~約7時間以下の間隔にわたって達成される、〔1〕に記載の方法、
〔5〕前記投与が前記対象において10または15pg/mLを超えないデスモプレシンの血漿濃度を達成する、〔1〕から〔4〕のいずれか1項に記載の方法、
〔6〕前記投与が前記対象において約0.5pg/mL~約5pg/mLの範囲のデスモプレシンの血漿濃度を達成する、〔1〕から〔4〕のいずれか1項に記載の方法、
〔7〕前記投与が前記ヒト対象において約0.5pg/mL~約2.5pg/mLの範囲のデスモプレシンの血漿濃度を達成する、〔1〕から〔4〕のいずれか1項に記載の方法、
〔8〕デスモプレシンが、経皮的に、皮内に、または口腔もしくは鼻粘膜を通じて経粘膜的に投与される、〔1〕から〔7〕のいずれか1項に記載の方法、
〔9〕デスモプレシンが経皮的にまたは皮内に投与される、〔1〕から〔7〕のいずれか1項に記載の方法、
〔10〕デスモプレシンが経鼻的に投与される、〔1〕から〔7〕のいずれか1項に記載の方法、
〔11〕デスモプレシンが口腔粘膜を通じて舌下に投与される、〔1〕から〔7〕のいずれか1項に記載の方法、
〔12〕デスモプレシンが約5ng/時間~約35ng/時間の範囲の流入速度で投与される、〔9〕に記載の方法、
〔13〕デスモプレシンが約5ng/時間~約15ng/時間の範囲の流入速度で投与される、〔9〕に記載の方法、
〔14〕前記アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬が、アルフゾシン、アモスラロール、アロチノロール、ダピプラゾール、ドキサゾシン、メシル酸エルゴロイド、フェンスピリド、イダゾキサン、インドラミン、ラベタロール、ナフトピジル、ニセルゴリン、プラゾシン、シロドシン、タムスロシン、テラゾシン、トラゾリン、ヨヒンビン、フェノキシベンザミン、フェントラミン、アチパメゾール、またはそれらの薬学的に許容される塩である、〔1〕から〔13〕のいずれか1項に記載の方法、
〔15〕前記アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬が、アルフゾシン、ドキサゾシン、イダゾキサン、プラゾシン、シロドシン、タムスロシン、テラゾシン、トラゾリン、ヨヒンビン、またはそれらの薬学的に許容される塩である、〔1〕から〔13〕のいずれか1項に記載の方法、
〔16〕前記アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬が、アルフゾシン、ドキサゾシン、プラゾシン、シロドシン、タムスロシン、テラゾシン、トラゾリン、ヨヒンビン、またはそれらの薬学的に許容される塩である、〔1〕から〔13〕のいずれか1項に記載の方法、
〔17〕前記アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬が、経口的に、経皮的に、皮内に、または鼻または口腔粘膜を通じて投与される、〔1〕から〔16〕のいずれか1項に記載の方法、
〔18〕前記アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬が経口的に投与される、〔1〕から〔16〕のいずれか1項に記載の方法、
〔19〕前記アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬がデスモプレシン投与開始の前または後の1時間以内に投与される、〔1〕から〔18〕のいずれか1項に記載の方法、
〔20〕前記対象が夜間頻尿症、尿失禁、遺尿症、または尿崩症にかかっている、〔1〕から〔19〕のいずれか1項に記載の方法、
〔21〕前記対象が夜間頻尿症にかかっている、〔1〕から〔19〕のいずれか1項に記載の方法、
〔22〕前記ヒト対象の尿生成がデスモプレシン投与終了後約2時間以内に回復する、〔1〕から〔21〕のいずれか1項に記載の方法、
〔23〕前記成人ヒト対象に、アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬を毎日少なくとも1カ月の期間投与することと、デスモプレシンを前記対象の就寝前に投与することとを含む、〔1〕に記載の方法、
〔24〕前記成人ヒト対象に、アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬を薬物表示におけるBPH治療のための最小推奨用量より低用量レベルで投与することと、デスモプレシンを前記対象の就寝前に投与することとを含む、〔1〕に記載の方法、
〔25〕前記成人ヒト対象に、デスモプレシン及びアルファ-アドレナリン受容体拮抗薬を混合物として、前記対象の就寝前に、BPH処置のための前記拮抗薬の最小推奨用量より低用量レベルで投与することを含む、〔1〕に記載の方法、
〔26〕5-アルファレダクターゼ抑制薬を投与することをさらに含む、〔1〕から〔25〕のいずれか1項に記載の方法、
〔27〕前記5-アルファレダクターゼ抑制薬が、デュタステリド、エプリステリド、フィナステリド、イゾンステリド、ツロステリド、AS-601811、FK143、TF-505、またはそれらの薬学的に許容される塩である、〔26〕に記載の方法、
〔28〕前記成人ヒト対象が成人男性のヒトである、〔1〕から〔27〕のいずれか1項に記載の方法、
〔29〕デスモプレシン、アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬、及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物、
〔30〕ヒト対象への鼻腔内または舌下投与用に処方される、〔29〕に記載の医薬組成物、
〔31〕前記アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬が、アルフゾシン、アモスラロール、アロチノロール、ダピプラゾール、ドキサゾシン、メシル酸エルゴロイド、フェンスピリド、イダゾキサン、インドラミン、ラベタロール、ナフトピジル、ニセルゴリン、プラゾシン、シロドシン、タムスロシン、テラゾシン、トラゾリン、ヨヒンビン、フェノキシベンザミン、フェントラミン、アチパメゾール、またはそれらの薬学的に許容される塩である、〔29〕または〔30〕に記載の医薬組成物
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬と組み合わせたデスモプレシンを含む方法及び組成物が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】デバイス及び方法の7時間運用を例示している、デスモプレシン血中濃度及び可変流入速度の対時間グラフである。
【
図2】代替の実施形態によるデバイス及び方法の7時間運用を例示している、デスモプレシン血中濃度及び一定流入速度の対時間グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬と組み合わせたデスモプレシンを使用するための方法及び組成物を提供する。この併用療法は、望ましくない膀胱からの排尿または頻繁な尿意に関連する障害またはそれを特徴とする障害にかかっている対象に利益を提供する。このような対象は、尿の過剰生成、不適切な尿濃度、低い尿オスモル濃度、過剰な頻尿(例えば、中枢性尿崩症に関連する過剰な頻尿)、成人原発性夜尿症、覚醒時の尿意切迫及び頻尿、夜間頻尿症、過活動膀胱症候群(OAB)、尿失禁、あるいは、安静時尿漏出または労作もしくはストレスによる尿漏出をもたらす望ましくない尿生成、に苦しむ可能性がある。デスモプレシン及びアルファ-アドレナリン受容体拮抗薬は、オーバーラップ期間中に両方が生理活性を発揮するように、対象に投与される。拮抗薬は、現在の診療でBPHの治療のために使用される用量未満の用量で投与することができる。
【0013】
本発明の種々の態様を以下の複数のセクションで説明するが、特定の1つのセクションに記載されている本発明の態様は、特定のいかなるセクションに制限すべきものではない。
【0014】
定義
本発明の理解を容易にするために、複数の用語及び表現を以下に定義する。
【0015】
用語「a」、「an」及び「the」は、本明細書で使用される場合、「1つまたは複数」を意味し、文脈上不適当でなければ複数形も含む。
【0016】
本明細書で使用される場合、用語「有効量」は、有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な化合物(例えば、その本発明の化合物)の量を指す。ある有効量は、1つまたは複数の投与、貼付または投薬量で投与することができ、特定の製剤または投与経路に限定することは意図されない。本明細書で使用される場合、用語「treating(治療する)」は、状態、疾患、障害などの改善、またはそれらの症状の緩和をもたらす任意の効果、例えば、減らすこと、減少させること、調節すること、緩和することまたは除去することを含む。
【0017】
本明細書で使用される場合、用語「医薬組成物」は、組成物が生体内または生体外での治療用途に特に好適であるようにする、活性薬剤と不活性または活性の担体との組合せを指す。
【0018】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される塩」は、対象に投与したときに本発明の化合物もしくは活性代謝物またはそれらの残渣を提供することができる、本発明の化合物の薬学的に許容される任意の塩(例えば、酸または塩基)を指す。当業者には公知であるが、本発明の化合物の「塩」は、無機または有機の酸及び塩基から誘導することができる。酸の例としては、限定するものではないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン-p-スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン-2スルホン酸、ベンゼンスルホン酸などが挙げられる。シュウ酸などの他の酸は、それ自身は薬学的に許容されないが、本発明の化合物及びその薬学的に許容される酸付加塩を得る上での中間生成物として有用な塩を調製する際に用いてもよい。
【0019】
塩基の例としては、限定するものではないが、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)水酸化物、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)、水酸化物、アンモニア、及び式NW4
+の化合物(式中、WはC1~4アルキルである)などが挙げられる。
【0020】
塩の例としては、限定するものではないが、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、ウンデカン酸塩などが挙げられる。塩の他の例としては、Na+、NH4
+、及びNW4
+(式中、WはC1~4アルキル基である)などの好適なカチオンと配合された本発明の化合物のアニオンが挙げられる。
【0021】
治療用途については、本発明の化合物の塩は薬学的に許容されることが見込まれている。しかし、薬学的に許容されない酸及び塩基の塩も、例えば薬学的に許容される化合物の調製または精製においては有用となり得る。
【0022】
用語「対象」及び「患者」は互換的に使用され、ヒト、特に成人男性のヒトを指す。
【0023】
発明を実施するための形態の全体において、組成物及びキットが具体的な構成成分を有する、含む、または備えると記載されている場合、またはプロセス及び方法が具体的なステップを有する、含む、または備えると記載されている場合、列挙されている構成成分から本質的になる、またはそれからなる本発明の組成物及びキットが存在することと、列挙されている処理のステップから本質的になる、又はそれからなる本発明に従うプロセス及び方法が存在することとが、加えて見込まれている。
【0024】
I.治療方法
本発明は、アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬と組み合わせたデスモプレシンを使用する治療方法を提供する。この併用療法は、望ましくない頻繁な膀胱からの排尿衝動に関連するまたはそれを特徴とする障害にかかっている対象に利益を提供する。上述のように、このような対象は、尿の過剰生成、不適切な尿濃度、低い尿オスモル濃度、OAB、過剰な頻尿(例えば、中枢性尿崩症に関連する過剰な頻尿)、成人原発性夜尿症、覚醒時の尿意切迫及び頻尿、夜間頻尿症、尿失禁、あるいは、安静時尿漏出または労作もしくはストレスによる尿漏出をもたらす望ましくない尿生成、に苦しむ可能性がある。デスモプレシン及びアルファ-アドレナリン受容体拮抗薬は、オーバーラップ期間中に両方が生理活性を発揮するように、対象に投与される。アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬及びデスモプレシンの投与が相乗効果をもたらすことが望ましい。このような相乗効果からの利益の代表例として、対象の尿意の減少強化、ならびに/または、治療効果の達成に必要なデスモプレシン及び/または拮抗薬の減量が挙げられる。さらに、アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬を、BPH治療のために臨床的に使用される用量に比べて少量で投与することは、これらの薬物の副作用が減少することを意味する。ある特定の実施形態では、この方法は、5-アルファレダクターゼ抑制薬を投与することを任意選択でさらに含む。
【0025】
本発明の一態様では、ヒト対象の尿意を約2時間~約8時間以下の間隔にわたって抑制する方法が提供される。この方法は、それを必要とするヒト対象に、有効量のデスモプレシン及びアルファ-アドレナリン受容体拮抗薬を、オーバーラップ期間中に両方が生理活性を発揮するように投与することを含む。デスモプレシン及び/またはアルファアドレナリン受容体拮抗薬の投薬量ならびに/または投薬レジメンは、この方法によってヒト対象の尿意がある特定の間隔にわたって抑制されるように調整することができる。例えば、ある特定の実施形態では、この方法はヒト対象の尿意を約4時間~約6または7時間の間隔で抑制する。この方法の種々の実施形態(例えば、デスモプレシン、アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬の投薬量及び投与経路、標的患者集団、ならびに併用療法における利益の代表例)を、以下のセクションに記載する。ある特定の実施形態では、この方法は、例えば、デスモプレシン、アルファ-アドレナリン受容体、及び5-アルファレダクターゼ抑制薬の各々がオーバーラップ期間中に生理活性を発揮するように、5-アルファレダクターゼ抑制薬を投与することを任意選択でさらに含む。
【0026】
本発明の別の態様では、ヒト対象における抗利尿効果を誘発する方法が提供される。この方法は、それを必要とするヒト対象、例えば成人の男性または女性に、有効量のデスモプレシン及びアルファ-アドレナリン受容体拮抗薬を、オーバーラップ期間中に両方が生理活性を発揮するように投与することを含む。この方法は、抗利尿効果が提供される間隔に応じてさらに特徴づけることができる。例えば、ある特定の実施形態では、抗利尿効果が約4時間~約7時間(または8時間)以下の間隔にわたって達成される。ある特定の他の実施形態では、抗利尿効果が約4時間~約6時間の間隔にわたって達成される。この方法の種々の実施形態(例えば、デスモプレシンの投薬量及び投与経路、アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬の投薬量及び投与経路、患者集団、ならびに併用療法における利益の代表例)を、以下のセクションに記載する。ある特定の実施形態では、この方法は、例えば、デスモプレシン、アルファ-アドレナリン受容体、及び5-アルファレダクターゼ抑制薬の各々がオーバーラップ期間中に生理活性を発揮するように、5-アルファレダクターゼ抑制薬を投与することを任意選択でさらに含む。
【0027】
ある特定の実施形態では、この方法は、尿意を終夜回避するために、アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬を毎日(例えば、少なくとも1カ月の期間)対象に投与することと、デスモプレシンを対象の就寝前に投与することとを含む。ある特定の他の実施形態では、この方法は、アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬を、薬物表示におけるBPH処置のための最小推奨用量より低用量レベルで対象に投与することと、デスモプレシンを対象の就寝前に投与することとを含む。さらに他の実施形態では、この方法は、対象の就寝前に、デスモプレシン及びアルファ-アドレナリン受容体拮抗薬を混合物として、BPH処置のための前記拮抗薬の最小推奨用量より低用量レベルで対象に投与することを含む。
【0028】
デスモプレシン
用語「デスモプレシン」は、1-デスアミノ-8-D-アルギニンバソプレシンを指し、遊離塩基形態及びその薬学的に許容される塩及び水和物を含む。商業的に入手可能な塩形態の代表例は、酢酸塩である。DDAVPとしても知られている、デスモプレシン、1-デスアミノ-8-D-アルギニンバソプレシンモノアセタートは、例えば米国特許第3,497,491号に記載されており、例えばDesmoMelt、Stimate、Minirin(登録商標)及びDESMOSPRAY(登録商標)の品名で販売されている処方薬として商業的に入手可能である。活性医薬成分としてのデスモプレシンも、新薬の剤形及び組成物への製剤用に商業的に入手可能である。ヒト対象に投与するデスモプレシンの投薬量は、対象の体重及び治療効果が望まれる所望の期間に基づいて選択することができる。投薬量は、達成されるデスモプレシンの血漿濃度に応じて特徴づけることができる。
【0029】
従って、本明細書に記載の治療方法は、達成されるデスモプレシンの血漿濃度に応じて特徴づけることができる。ある特定の実施形態では、投与によって、ヒト対象において15pg/mLを超えないデスモプレシンの血漿濃度が達成される。ある特定の他の実施形態では、投与によって、ヒト対象において約0.2pg/mL~約5pg/mLの範囲のデスモプレシンの血漿濃度が達成される。さらに他の実施形態では、投与によって、ヒト対象において約0.5pg/mL~約2.5pg/mLの範囲のデスモプレシンの血漿濃度が達成される。さらに他の実施形態では、投与によって、ヒト対象において約0.5pg/mL~約1.5pg/mLの範囲のデスモプレシンの血漿濃度が達成される。概して、所与の剤形の投与から血流に到達するデスモプレシンの量は、2ng/kg体重を超えるべきではなく、0.5ng/kg、1.0ng/kg、または1.5ng/kgという低い量でありうる。
【0030】
デスモプレシンは、従来的な投与経路を使用して投与することができる。例えば、ある特定の実施形態では、デスモプレシンは、経皮的に、皮内に、経粘膜的に、あるいはおそらく経口的にも投与されるが、経口用量における生体内利用率の変動性が大きいため、非常に低い血中濃度を一貫して再現可能なように達成することは困難であるかまたは不可能である。ある特定の他の実施形態では、デスモプレシンは、経皮的に、皮内に、または経粘膜的に投与される。さらに他の実施形態では、デスモプレシンは経皮的に投与される。さらに他の実施形態では、デスモプレシンは鼻腔内に投与される。
【0031】
デスモプレシンを経皮的または皮内に投与する場合、この方法はデスモプレシンがヒト対象の皮膚を通過する速度に応じて特徴づけることができる。例えば、ある特定の実施形態では、デスモプレシンは、所望のデスモプレシン血漿濃度(例えば、5pg/ml未満、好ましくは2pg/ml未満)を迅速に達成するのに十分な第1の流入速度で投与され、次に最初に得た血漿濃度を所望の間隔(例えば、6時間)で維持するのに十分な第2のより低い流入速度で投与される。ある特定の実施形態では、この方法は、デスモプレシンが約5ng/時間~約35ng/時間の範囲の流入速度で投与されるような流入範囲によってさらに特徴づけられる。さらに他の実施形態では、デスモプレシンは約5ng/時間~約35ng/時間の範囲の流入速度で投与される。さらに他の実施形態では、デスモプレシンは約5ng/時間~約15ng/時間の範囲の流入速度で投与される。
【0032】
本発明では、過去に記載されたデスモプレシン投与用の種々のデバイス及び方法を使用することが見込まれている。例えば、各々が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第US2009/0042970号及び第US2012/0015880号を参照。デスモプレシンの投与に使用してもよいデバイスの1つは、薬学的に許容される担体のデスモプレシン溶液を含有するデポーを有する。患者の皮膚への貼付用のインターフェース部材、例えば皮膚貼付用の浸透性パッドまたは1つもしくは1配列の極小針がデポーと流体的に連絡している。このデバイスは、デスモプレシン溶液をデポーからインターフェース部材及び下流へと患者の血液に皮内にまたは経皮的に送達するための種々の手段を備える。デスモプレシンの流入速度は、デポーからの溶液の流れ速度、インターフェース部材への溶液の流れ速度、インターフェース部材から患者身体への溶液の流れ速度のいずれかを制御することと併せてデポー中のデスモプレシン濃度を設定することによって、またはこれらの制御ポイントの何らかの組合せを利用して、制御される。いずれにしても、内向き流入速度は、水チャネル活性化閾値を少し上回る患者の血中デスモプレシン濃度(例えば、0.1~約2.5pg/mlの範囲、1、1.5、2、または2.5pg/ml以下が有利である)が十分に確立するように制御される。いかなる場合における流入速度も、患者の血中デスモプレシン濃度を約10pg/mlを超えるレベルに誘発するのは不適切である。患者またはデバイスがデスモプレシンの流れを遮断する前に合理的な所定の時間で所望の血中濃度を確立するために、流入速度は、約5、10、15、20、25、または30~35ng/hr(すなわち、5000、10,000、15,000、20,000、25,000、または30,000~35,000pg/hr)、有利には約10~20ng/hrまたは20~35ng/hr、より有利には約5~15ng/hrとすることができる。
【0033】
デスモプレシンをアルファ-アドレナリン受容体拮抗薬と共に使用する場合には、治療効果の達成に必要なデスモプレシンの投薬量及び/またはデスモプレシンの治療的血漿濃度の期間が、デスモプレシンを単独で投与する場合よりも少ないことが望ましく、排尿衝動はアルファ-アドレナリン受容体拮抗薬を単独で投与する場合に比べて減少する。例えば、ある特定の実施形態では、アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬は、デスモプレシンの血漿濃度が抗利尿(腎臓における水チャネル活性化)の達成に必要な閾値未満に下がった後の一定期間、尿意を減少させることができる。別の例として、アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬の生理的効果は、誘発される抗利尿の間隔の間に膀胱を満たす尿が少なくなることと併せて、患者の尿意を低下させる効果をもたらす。
【0034】
皮内または経皮的投与に関しては、デスモプレシンの所望の血中濃度及び公知のクリアランス速度(半減期は約1.5~2.0時間)を考慮すると、デスモプレシンの流入速度は、所望の低いながらも閾値を上回る血中濃度に患者が合理的な時間で、例えば1時間未満(概して早いほうがよい)で達するように設定し、かつ、活性化閾値を少し上回る低用量の範囲内(およそ0.5~1.5pg/mlの範囲内)に所望の期間(例えば、試用に2時間、または夜間頻尿症の治療用に4~6時間もしくは5~8時間)維持することが好ましい。デバイス内蔵の自動もしくは手動の始動機序による、またはデバイスの皮膚接触を解除することによる流入終了によって、患者の身体に正常な薬物クリアランス機序がもたらされ、低い濃度が活性化閾値未満のさらに低い濃度へと減少する。
【0035】
デバイスのインターフェース部材は、患者の皮膚に接触する面を画定するデスモプレシン溶液浸透膜を含むことができる。デスモプレシン溶液浸透面は、デポーから患者の皮膚を通過するまたは皮膚までのデスモプレシンの送達を可能にする。最も高い生体内利用率及び送達の正確さを得るためには、皮内送達が好ましい。皮内送達は血管化された区画への直接的送達を可能にし、体循環への迅速な吸収及びそれに対応した迅速なオン/オフ効果をもたらす。経皮的送達が見込まれているが、薬物が表皮に到達することに対する、そして薬物のデポーが表皮内に作成されることに対する物理的バリアとして機能する角質層が原因で、経皮的送達の使用は変動し得る生体内利用率の影響をより多く受けやすい。
【0036】
従って、経皮的送達方法及びデバイスは、薬物の侵入に対するバリアとしての角質層の効能を減少させる手法から利益を得ることができる。皮膚は、例えば以下に記載されるように1つまたは複数の極小針によって後続の経皮的送達を増強するために、「微小穿刺」して角質層を横断する「極小通路」または「極小裂」を導入することもできる。
【0037】
角質層の浸透性は、以下の化学的浸透増強剤の使用を介しても増強することができる:ジメチルスルホキシド、ドデシルメチルスルホキシド、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ラウリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、レシチン(例えば、全てが参照によって本明細書に組み込まれている米国特許No.4,783,450号を参照)、1-n-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン(例えば、全てが参照によって本明細書に組み込まれている米国特許第3,989,816号;第4,316,893号;第4,405,616号;及び第4,557,934号を参照)、エタノール、プロパノール、オクタノール、ベンジルアルコール、ラウリン酸、オレイン酸、吉草酸、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、プロピオン酸メチル、オレイン酸エチル、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセロール、ブタンジオール、ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、尿素、水酸化物(例えば、参照によって本明細書に組み込まれている米国特許第6,558,695号を参照)、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、2-ピロリドン、1-メチル-2-ピロリドン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、サリチル酸、クエン酸、コハク酸、及び浸透性強化ペプチド(例えば、参照によって本明細書に組み込まれている米国特許第5,534,496号を参照)など。
【0038】
デポーから皮膚までの効率的なデスモプレシン送達手段は、患者の角質層を貫通しデポーと表皮との間の流体連絡を可能にする、またはデスモプレシンでコーティングされた極小針もしくはデスモプレシンを含有する極小針の表面もしくは空洞部との直接接触を可能にする、1つまたは複数の極小針を備えるインターフェース部材を介した皮内投与である。極小針の長さ及びサイズは、角質層貫通に適切であると同時に患者の感覚を(あるとしても)ほとんど生じさせない程度に十分小さいものである。例えば、好適な長さが約0.3~1.5mmであり、約0.8~1.1mmが有利である。単一の針デバイスの一例は、参照によって本明細書に組み込まれている米国特許第6,939,324号で提供されている。
【0039】
送達のためにより多くの表面積またはより柔軟なパッチが望まれる場合は、複数の(例えば、1配列の)極小針が望ましいものとなり得る。各々の極小針は、流体をデポーから針末端まで輸送するチャネルを有することができ、あるいはそうでなければ極小針は穿孔壁または有孔壁でデポーからの流体送達を可能にすることができる。代替的に、極小針はデスモプレシン調製物でコーティングするか、または極小針自身の空洞もしくは材料構造内にデスモプレシンのフィルムまたはマトリックスを含有することができ、それにより閾値活性化濃度の迅速な達成を促せるように、また任意選択で、所望濃度の達成を助けるかまたは所望濃度を維持するためにデスモプレシン液を針から通過させて、貼付と同時に一気にデスモプレシンを提供する。
【0040】
溶解可能な極小針を使用することで、場合によっては金属針または穿孔要素が引き起こす痛み及び/または刺激が回避されることから、その使用も見込まれている。例えば米国特許第7,182,747号には、本明細書に開示している発明品での使用に適合し得る「固溶体穿孔器」が開示されている。従来の中空針技術とは対照的に、これらの極小針は、1つまたは複数の選択された薬物を任意選択で保持し1つまたは複数の穿孔器に形成される、溶解可能または生分解性の材料の固体マトリックスから作られている。
【0041】
デスモプレシンを送達するための別のデバイスは、寝る前に、または患者が尿生成の中断を望む何らかの他の活動の間隔の前に使用者が貼付するパッチである。このパッチは、必ずしもその必要はないが、例えば使用者が選択可能なタイミング機能によって活性液の流れ制御機序を含めてもよく、それにより使用者は正常な尿生成の抑止を希望する時間(すなわち、睡眠の場合は所望の睡眠時間とほぼ等しいかまたはそれより短い時間)を選択することができる。患者は包装からパッチを取り出し、必要な場合は送達時間を設定し、パッチを皮膚の一部位に貼る。デスモプレシン送達が本明細書に記載のレベル及び速度で開始し、尿生成が所望の時間の間抑止される。流れ制御が遮断されたとき、パッチが取り外されたとき、またはデスモプレシンデポーが枯渇したときに、正常な尿生成が速やかに回復する。デバイスの好ましいシンプルなバージョンでは、デポー中のデスモプレシンの量及びデポーの枯渇を通じて設計される流入速度は、例えば5~7時間といった送達時間を固定し、流入の終了は単にパッチ送達の枯渇に対応している。従って、患者は睡眠時間中におそらくは繰り返し目を覚ます必要なく眠ることができ、あるいは不本意な排尿を懸念することなく他の活動に従事することができる。
【0042】
図面を参照しながら、代表的なデバイスの運用について記載する。
【0043】
図1は、尿生成の遮断を望む患者の治療における、例えば夜間頻尿症の治療における、本発明の代表的な実施形態の運用を図示している。本発明に従った、低い投薬量/低い可変流入量のデスモプレシンを患者に送達するデバイスを患者の皮膚に貼り、患者が排尿してから午後10時00分にデバイスを作動させる。
図1は、デバイスの貼付及び作動後の種々の時間におけるこの患者の例示的かつ代表的な血液デスモプレシン濃度及び流入速度を示している。1時間(午後11時00分)で、デスモプレシン流入速度は約20ng/hrのピークに達し、患者の血液デスモプレシン濃度は約1.0pg/ml超、すなわち腎臓水チャネルを活性化するのに十分なかつ抗利尿効果を誘発するのに十分な濃度に上昇した(ここは約0.8pg/mlの血中濃度として示されている)。2時間(真夜中)で、流入速度はわずかに低下しているが依然20ng/hrの範囲にあり、血液デスモプレシン濃度は約1.5pg/mlまで上昇している。これらの値はゆっくりと低下するが、この後の2.5~3時間の間は比較的一定である。約5時間後(午前3時00分)、流入速度はデスモプレシンの活性化濃度を持続できないレベルに低下した。流入速度が下がり続けるにつれて、血液デスモプレシン濃度は水チャネル活性化レベル未満に低下し、尿生成が開始する(ここではおよそ午前3時45分)。午前5時00分までに血中濃度は約0.5pg/ml未満になり、流入速度はゼロに下がった。午前6時00分までに患者は目を覚まし、睡眠の終わりの1時間半程度の間に尿が生成されたために正常な排尿衝動を感じた。睡眠中は抗利尿間隔が持続し、尿生成はないか少量であり、煩わしいまたは睡眠を中断する排尿衝動はない。デスモプレシンの流入速度及びデスモプレシンの血中濃度は、患者に投与されるアルファ-アドレナリン受容体拮抗薬の投薬量にある程度依存している可能性がある。デスモプレシン及びアルファ-アドレナリン受容体拮抗薬が別々の製剤で患者に投与されてもよいこと、あるいはデスモプレシン及びアルファ-アドレナリン受容体拮抗薬を共に混合して単一の製剤を形成し患者に投与してもよいことは理解される。
【0044】
図2は、患者の尿生成を遮断する治療、例えば夜間頻尿症の治療のための、本発明の別の代表的な実施形態を示している。本発明に従った、低い投薬量で一定な流入のデスモプレシンを送達するデバイスを患者の皮膚に貼る。午後10時00分に(必要な場合)デバイスを作動し、患者は放尿する。
図2は、デスモプレシンの抗利尿効果がもたらされる閾値血中濃度と比較しての、午後10時00分から午前3時00分までの約5時間にわたる約10ng/hrの流量の注入から生じた例示的かつ代表的な血液デスモプレシン濃度を示している。流入開始から約1時間以内に血液デスモプレシン濃度が閾値レベルを超過し、抗利尿効果を発揮し始める。血中濃度は約2~3時間以内にある程度安定性の範囲に近づき(約1.0~1.5pg/ml)、これは午前3時00分までの残り5時間の流入中持続する。このときに流入が中止される(例えば、タイムアウトまたは枯渇して)。ここで、血液デスモプレシン濃度は薬物の除去半減期に従ってクリアランス機序から低下し、およそ2時間後(午前5時00分)に閾値未満に下がる。午前7時00分までに患者は尿を生成し、排尿するために目を覚ます。デスモプレシンの流入速度及びデスモプレシンの血中濃度は、患者に投与されるアルファ-アドレナリン受容体拮抗薬の投薬量にある程度依存している可能性がある。
【0045】
以上の例は、単に例示目的のためである。活性化濃度はもちろん、血液量と同様、個人間で異なるであろう。このデバイスの運用における重要な原理は、薬物の連続的な低い内向き流入によって低いデスモプレシン濃度を維持することによって抗利尿作用が維持され、内向き流入の中断によって身体における薬物の迅速なクリア及び正常な尿生成の再確立を可能にすることから、抗利尿効果の安全な制御ができることである。このことは、パッチデバイスが、指示通りに使用した場合に、水毒の発症のリスクをほとんど伴わないかまたは全く伴わずにデスモプレシン投与の安全性を増強することを意味する。
【0046】
本発明によれば、アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬は、上述のパッチデバイスにおいてデスモプレシンとの混合薬で存在してもよく、あるいは以下に開示する鼻腔内用剤形で存在してもよいが、毎日の経口用量として供給されかつデスモプレシンが存在する時間中に血漿内に活性で存在することが好ましい。
【0047】
デスモプレシンの鼻腔内投与用の代表的なデバイスは、標的患者集団のメンバーに抗利尿効果を誘発しその一方で患者集団のメンバーが低ナトリウム血症を発症するリスクを減少させる、安全ディスペンサーである。このディスペンサーは、複数回の薬物用量を構成するのに十分な量のデスモプレシンの調製物及び鼻粘膜浸透増強剤を含む組成物を中に配置した貯蔵器を備える。貯蔵器はアウトレットと連絡し、ポンプ(好ましくは使い捨てポンプ)を装備し、スクイーズボトル作動ディスペンサーまたはガラス瓶に取り付けられたプランジャーポンプなどの、手動で作動できるものが好ましい。ポンプは、貯蔵器からアウトレットを通じて複数回の定量用量を噴霧形態で患者の片鼻孔または両鼻孔に連続的に分配し、一貫したサイズの用量を鼻腔内粘膜または他の面に付着させることを可能にする。
【0048】
各々の噴霧は多数の液滴を含み、好ましくはD10について20μm~D90について約300μmの範囲の平均体積分布を有する。これは、液滴の約10%の直径が約20μmより小さく、90%の直径が300μmより小さいことを意味する。各々の噴霧用量は、患者体重1キログラム当たりデスモプレシン0.5ng~患者体重1キログラム当たりデスモプレシン75ngを含むような重量及びデスモプレシン濃度であることが好ましい。噴霧は、約5%超のデスモプレシン生体内利用率によって特徴付けられ、すなわち、組成物中の活性物質の約5%~25%が実際に患者の血流に入り、薬物効果に寄与し、残りは通常は消化によって分解される。概して、噴霧の生体内利用率が高いほど、鼻腔内に送達する必要がある1噴霧当たりのデスモプレシンは少なくなり、逆もまた同様であるが、目標は、患者集団のメンバーにおける標的デスモプレシン最大血中濃度(Cmax)をより一貫して達成することである。
【0049】
噴霧ディスペンサーとそれが含有する組成物との特性の組合せによって、噴霧の各用量が、患者の血流中に生成される1キログラム当たりのデスモプレシンの濃度を比較的狭い範囲に効果的に限定することが可能になり、それによって比較的一貫した、時間が限定された抗利尿期間の達成が可能になる。言い換えると、それぞれの経時的噴霧用量が鼻腔内粘膜を通じた薬物輸送によって、患者において比較的一貫したデスモプレシンCmaxを確立する。同じディスペンサーから同じ人物に反復用量で血流に送達された薬物の量は、100%以下、好ましくは50%未満異なるべきである。ディスペンサーの変動係数は、同じ標的Cmaxを達成するように設計されたデスモプレシンの連続的皮下用量によって生成されるCmaxの変動係数に類似している。鼻腔内送達によるそれぞれの経時的噴霧用量は、同じ標的Cmaxを達成するように設計されたデスモプレシンの皮下ボーラスによって生成されるCmax変動係数の約50%以内、より好ましくは約25%以内の変動係数を有するデスモプレシンCmaxを患者において十分に確立できることが好ましい。
【0050】
標的Cmaxの値は、分配される組成物が誘発するように設計されている抗利尿間隔の期間及びアルファ-アドレナリン受容体拮抗薬の投薬量に応じて様々であり得る。例えば、7~8時間の尿生成抑制間隔で設計される製品であれば、15+/-3pg/ml以下のCmaxを送達するように設計され得る。従って、例として、7時間用製品は、10%の生体内利用率及び1噴霧当たり0.75μgすなわち750ngのデスモプレシン装填量を有し得る。これは、約75ngの薬物が患者の血流に到達することになることを意味し、70kg(約155ポンド)の成人が血流内に約1.0ng/kgの用量を摂取し、約5pg/ml未満の標的Cmaxを達成することになることを意味する。同じ製品の別の実施形態では、8%の生体内利用率及び1噴霧当たり2.0μgすなわち2000ngのデスモプレシン装填量を有し得て、患者の血流に160ng/75kgまたは2ng/kgをわずかに上回る有効用量としての約160ngの薬物と、約10pg/ml未満の標的Cmaxとを送達し得る。別の代表的な製品は3~4時間の尿抑制のために設計され得て、約3pg/ml以下のCmaxを送達し得る。
【0051】
代替的に、例えば1噴霧当たり200ngまたは500ngを送達する単一のディスペンサーは、添付文書または医師の指示に従って使用する場合、単に1投与事象当たりに送達させる噴霧回数を変えることによって、例えば同じ人物で抗利尿期間を変えることや、あるいは異なる体重の成人間で抗利尿期間を同じにすることを達成するように機能し得る。通常は、本発明の医薬組成物の投与から約20分~1時間後に治療を受けている個人における1分当たりの平均尿量が約4ml/分未満、好ましくは約1ml/min未満に低下し、所望の期間、例えば180分、240分、300分、360分、または420分の間、この低い範囲でとどまる。投与から約20分後には、平均尿オスモル濃度は約300mOsmol/kg超であり、180分、240分、300分、360分、または420分以下の範囲の期間、高濃度のまま留まる。
【0052】
鼻腔内投与の重要な特性の1つは、1噴霧ごとに比較的狭い時間及び用量範囲で最大血中濃度を一貫して送達するため、想定より長い抗利尿効果及び低ナトリウム血症を誘発する可能性をもたらす偶発的な多量送達を、回避するかまたは最小限にすることである。一貫した送達、という表現が本明細書で使用される場合、非常に低用量のデスモプレシンを皮下注射によって投与する場合に観察される範囲と同様の範囲内、または場合によっては幾分それより大きい範囲内で反復可能であることを意味すると解釈されるべきである。このような一貫性は、生体内利用率がより高い製剤を利用することでより容易に達成され、従って少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは15%、好ましくはさらに高い生体内利用率が好ましい。より高い生体内利用率は、製剤技術、特に浸透増強剤の使用、を利用することによって、及び本明細書に開示の噴霧組成物の化学的なエンジニアリングによって、達成される。
【0053】
一実施形態では、ディスペンサーは、第1の用量の分配後の所定の時間間隔の間、一定用量を超える、例えば約10~12pg/mlを超える血中濃度をもたらすのに十分な用量をおおよそ超える、第2のデスモプレシン噴霧または一連の噴霧分配を遮断する手段をさらに備えてもよい。これは、例えば、その開示が参照によって本明細書に組み込まれている、米国特許第7,335,186号に開示されているような噴霧機序の設計の結果として、受動的に達成することができる。代替的に、ディスペンサー内の電池、機械的バネ、または圧縮ガスを動力とする能動的タイマーを、例えば8時間、または6~24時間のいずれかの所定の間隔が過ぎるまで第2の分配を妨げるように設計されている、それ自体は公知の機序と共に、含めてもよい。このような機序は製品の濫用を防止し、さらには患者が偶発的にまたは意図的に過度に長時間の抗利尿を自己誘発し得る可能性を最小限にすることができる。
【0054】
製剤で使用するための代表的な浸透増強剤は、Exeter、New HampshireのCPEX Pharmaceuticals(旧Bentley)から商業的に入手可能な「Hsieh増強剤」(US5,023,252を参照)である。製造に関して有用なHsieh増強剤のクラス内で好ましいのはUS7,112,561に開示されているものであり、現状最も好ましいのは、US7,244,703に開示されている、例えばCPE-215として業界内で知られているシクロペンタデカノリドなどである。多数ある他の増強剤を使用してもよい。
【0055】
一部の実施形態では、本発明は抗利尿効果を誘発するための安全ディスペンサーの使用を提供する。このディスペンサー及びデスモプレシン製剤は、本明細書に記載の任意の特性を含むことができる。例えば、一実施形態では、デスモプレシンCmaxは約0.5pg/ml~約10.0pg/mlの範囲のCmaxにわたって、経鼻的に投与されるデスモプレシンの量に直接比例している。標的Cmaxの値は、分配される組成物が誘発するように設計されている抗利尿間隔の期間及びアルファ-アドレナリン受容体拮抗薬の投薬量に応じて様々であり得る。例えば、本明細書に記載の安全ディスペンサーの使用によって、約8時間未満、約6時間未満、約2~4時間、または約4~7時間の抗利尿をもたらすことができる。製品の別の代表的な使用は、患者に約15pg/ml、10pg/ml、7pg/ml、または3pg/ml以下のCmaxを送達するように設計され得る。
【0056】
アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬
アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬は、アルファ-アドレナリン受容体の拮抗薬である医療用薬剤のクラスである。アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬は、時にアルファ遮断薬と称されることもある。代表的なアルファ-アドレナリン受容体拮抗薬として、アルフゾシン、ドキサゾシン、イダゾキサン、プラゾシン、シロドシン、タムスロシン、テラゾシン、トラゾリン、ヨヒンビン、及びそれらの薬学的に許容される塩が挙げられる。これらの潜在的に好適なアルファ-アドレナリン受容体拮抗薬の各々について、以下に簡潔に説明する。
【0057】
アルフゾシン
アルフゾシンは、化学名N-[3-[(4-アミノ-6,7-ジメトキシ-2-キナゾリニル)メチルアミノ]プロピル]テトラヒドロ-2-フランカルボキサミドを有する。アルフゾシンの薬学的に許容される塩を使用してもよい。例えば、アルフゾシンの塩酸塩は商標UROXATRAL(登録商標)の下、錠剤形態で商業的に入手可能である。アルフゾシンは、経口投与などの当技術分野で公知の経路を介して投与することができる。アルフゾシンまたはその薬学的に許容される塩の患者への投与量は、例えば、1日当たり約1mg~約100mgの範囲であり得る。ある特定の実施形態では、アルフゾシンは、1日当たりの投薬量が約1mg~約5mg、約5mg~約10mg、約10mg~約20mg、約20mg~約30mg、約30mg~約40mg、約40mg~約50mg、約50mg~約60mg、約60mg~約70mg、約70mg~約80mg、約80mg~約90mg、または約90mg~約100mgの範囲で(例えば、経口で)投与される。ある特定の他の実施形態では、アルフゾシンは1日当たりの投薬量が約7.5mg~約12.5mg、約9mg~約11mg、または約9.5mg~約10.5mgの範囲で(例えば、経口で)投与される。
【0058】
ドキサゾシン
ドキサゾシンは、化学名1-(4-アミノ-6,7-ジメトキシ-2-キナゾリニル)-4-[(2,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジオキシン-2-イル)カルボニル]ピペラジンを有する。ドキサゾシンの薬学的に許容される塩(例えば、ドキサゾシン塩酸塩またはドキサゾシンメシル酸塩)を使用してもよい。例えば、ドキサゾシンのメシル酸塩は商標CARDURA(登録商標)の下、錠剤形態で商業的に入手可能である。ドキサゾシンは、経口投与などの当技術分野で公知の経路を介して投与することができる。ドキサゾシンまたはその薬学的に許容される塩の患者への投与量は、例えば、1日当たり約0.1mg~約50mgの範囲であり得る。ある特定の実施形態では、ドキサゾシンは、1日当たりの投薬量が約0.1mg~約0.5mg、約0.5mg~約1.0mg、約1.0mg~約1.5mg、約1.5mg~約2.0mg、約2.0mg~約2.5mg、約2.5mg~約3.0mg、約3.0mg~約3.5mg、約3.5mg~約4.0mg、約4.0mg~約4.5mg、約4.5mg~約5.0mg、約5.0mg~約5.5mg、約5.5mg~約6.0mg、約6.0mg~約6.5mg、約6.5mg~約7.0mg、約7.0mg~約7.5mg、約7.5mg~約8.0mg、約8.0mg~約9.0mg、約9.0mg~約10mg、約10mg~約12mg、約12mg~約14mg、約14mg~約16mg、約16mg~約18mg、約18mg~約20mg、約20mg~約25mg、約25mg~約30mg、約30mg~約35mg、約35mg~約40mg、約40mg~約45mg、または約45mg~約50mgの範囲で(例えば、経口で)投与される。
【0059】
イダゾキサン
イダゾキサンは、化学名2-(2,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジオキシン-2-イル)-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾールを有する。イダゾキサンの薬学的に許容される塩(例えば、イダゾキサン塩酸塩)を使用してもよい。イダゾキサンは、経口投与などの当技術分野で公知の経路を介して投与することができる。イダゾキサンまたはその薬学的に許容される塩の患者への投与量は、例えば、1日当たり約0.1mg~約100mgの範囲であり得る。ある特定の実施形態では、イダゾキサンは、1日当たりの投薬量が約0.1mg~約0.5mg、約0.5mg~約1.0mg、約1.0mg~約1.5mg、約1.5mg~約2.0mg、約2.0mg~約2.5mg、約2.5mg~約3.0mg、約3.0mg~約3.5mg、約3.5mg~約4.0mg、約4.0mg~約4.5mg、約4.5mg~約5.0mg、約5.0mg~約6.0mg、約6.0mg~約7.0mg、約7.0mg~約8.0mg、約8.0mg~約9.0mg、約9.0mg~約10mg、約10mg~約15mg、約15mg~約20mg、約20mg~約25mg、約25mg~約30mg、約30mg~約35mg、約35mg~約40mg、約40mg~約45mg、約45mg~約50mg、約50mg~約60mg、約60mg~約70mg、約70mg~約80mg、約80mg~約90mg、または約90mg~約100mgの範囲で(例えば、経口で)投与される。
【0060】
プラゾシン
プラゾシンは、化学名1-(4-アミノ-6,7-ジメトキシ-2-キナゾリニル)-4-(2-フラニルカルボニル)ピペラジンを有する。プラゾシンの薬学的に許容される塩を使用してもよい。例えば、プラゾシンの塩酸塩は商標MINIPRESS(登録商標)の下、カプセル形態で商業的に入手可能である。プラゾシンは、経口投与などの当技術分野で公知の経路を介して投与することができる。プラゾシンまたはその薬学的に許容される塩の患者への投与量は、例えば、1日当たり約0.1mg~約100mgの範囲であり得る。ある特定の実施形態では、プラゾシンは、1日当たりの投薬量が約0.1mg~約0.5mg、約0.5mg~約1.0mg、約1.0mg~約1.5mg、約1.5mg~約2.0mg、約2.0mg~約2.5mg、約2.5mg~約3.0mg、約3.0mg~4.0mg、約4.0mg~約5.0mg、約5.0mg~約7.0mg、約7.0mg~約9.0mg、約9.0mg~約15mg、約15mg~約20mg、約20mg~約25mg、約25mg~約35mg、約35mg~約45mg、約45mg~約60mg、約60mg~約70mg、約70mg~約80mg、約80mg~約90mg、または約90mg~約100mgの範囲で(例えば、経口で)投与される。
【0061】
シロドシン
シロドシンは、化学名2,3-ジヒドロ-1-(3-ヒドロキシプロピル)-5-[(2R)-2-[[2-[2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェノキシ]エチル]アミノ]プロピル]-1H-インドール-7-カルボキサミドを有し、商標RAPAFLO(登録商標)の下、カプセル形態で市販されている。シロドシンの薬学的に許容される塩(例えば、シロドシン塩酸塩)を使用してもよい。シロドシンは、経口投与などの当技術分野で公知の経路を介して投与することができる。シロドシンまたはその薬学的に許容される塩の患者への投与量は、例えば、1日当たり約0.1mg~約50mgの範囲であり得る。ある特定の実施形態では、シロドシンは、1日当たりの投薬量が約0.1mg~約0.5mg、約0.5mg~約1.0mg、約1.0mg~約2.0mg、約2.0mg~約3.0mg、約3.0mg~約4.0mg、約4.0mg~約5.0mg、約5.0mg~約6.0mg、約6.0mg~約7.0mg、約7.0mg~約8.0mg、約8.0mg~10mg、約10mg~約15mg、約15mg~約20mg、約20mg~約25mg、約25mg~約35mg、約35mg~約45mg、または約45mg~約50mgの範囲で(例えば、経口で)投与される。ある特定の他の実施形態では、シロドシンは1日当たりの投薬量が約2.0mg~約6.0mg、約3.0mg~約5.0mg、または約3.5mg~約4.5mgの範囲で(例えば、経口で)投与される。さらにある特定の他の実施形態では、シロドシンは1日当たりの投薬量が約6.0mg~約10mg、約7.0mg~約9.0mg、または約7.5mg~約8.5mgの範囲で(例えば、経口で)投与される。
【0062】
タムスロシン
タムスロシンは、化学名5-[(2R)-2-[[2-(2-エトキシフェノキシ)エチル]アミノ]プロピル]-2-メトキシベンゼンスルホンアミドを有する。タムスロシンの薬学的に許容される塩を使用してもよい。例えば、タムスロシンの塩酸塩は商標FLOMAX(登録商標)の下、カプセル形態で商業的に入手可能である。タムスロシンは、経口投与などの当技術分野で公知の経路を介して投与することができる。タムスロシンまたはその薬学的に許容される塩の患者への投与量は、例えば、1日当たり約0.05mg~約10mgの範囲であり得る。ある特定の実施形態では、タムスロシンは、1日当たりの投薬量が約0.05mg~約0.10mg、約0.10mg~約0.20mg、約0.20mg~約0.30mg、約0.30mg~約0.40mg、約0.40mg~約0.50mg、約0.50mg~約0.60mg、約0.60mg~約0.70mg、約0.70mg~約0.80mg、約0.80mg~約0.90mg、約0.90mg~約1.0mg、約1.0mg~約1.5mg、約1.5mg~約2.0mg、約2.0mg~約2.5mg、約2.5mg~約3.0mg、約3.0mg~約4.0mg、約4.0mg~約5.0mg、約5.0mg~約6.0mg、約6.0mg~約8.0mg、または約8.0mg~約10mgの範囲で(例えば、経口で)投与される。ある特定の他の実施形態では、タムスロシンは1日当たりの投薬量が約0.20mg~約0.60mg、約0.30mg~約0.50mg、または約0.35mg~約0.45mgの範囲で(例えば、経口で)投与される。さらにある特定の他の実施形態では、タムスロシンは1日当たりの投薬量が約0.60mg~約1.0mg、約0.70mg~約0.90mg、または約0.75mg~約0.85mgの範囲で(例えば、経口で)投与される。
【0063】
テラゾシン
テラゾシンは、化学名1-(4-アミノ-6,7-ジメトキシ-2-キナゾリニル)-4-[(テトラヒドロ-2-フラニル)カルボニル]ピペラジンを有する。テラゾシンの薬学的に許容される塩(例えば、テラゾシン塩酸塩またはテラゾシン塩酸塩二水和物)を使用してもよい。例えば、テラゾシンの塩酸塩は商標HYTRIN(登録商標)の下、カプセル形態で商業的に入手可能である。テラゾシンは、経口投与などの当技術分野で公知の経路を介して投与することができる。テラゾシンまたはその薬学的に許容される塩の患者への投与量は、例えば、1日当たり約0.1mg~約50mgの範囲であり得る。ある特定の実施形態では、テラゾシンは、1日当たりの投薬量が約0.1mg~約0.5mg、約0.5mg~約1.0mg、約1.0mg~約1.5mg、約1.5mg~約2.0mg、約2.0mg~約2.5mg、約2.5mg~約3.0mg、約3.0mg~約3.5mg、約3.5mg~約4.0mg、約4.0mg~約4.5mg、約4.5mg~約5.0mg、約5.0mg~約6.0mg、約6.0mg~約7.0mg、約7.0mg~約8.0mg、約8.0mg~約9.0mg、約9.0mg~約10mg、約10mg~約15mg、約15mg~約20mg、約20mg~約30mg、約30mg~約40mg、または約40mg~50mgの範囲で(例えば、経口で)投与される。ある特定の他の実施形態では、テラゾシンは1日当たりの投薬量が約0.5mg~約1.5mg、約0.8mg~約1.2mg、または約0.9mg~約1.1mgの範囲で(例えば、経口で)投与される。ある特定の他の実施形態では、テラゾシンは1日当たりの投薬量が約1.5mg~約2.5mg、約1.8mg~約2.2mg、または約1.9mg~約2.1mgの範囲で(例えば、経口で)投与される。
【0064】
トラゾリン
トラゾリンは、化学名4,5-ジヒドロ-2-(フェニルメチル)-1H-イミダゾールを有する。トラゾリンの薬学的に許容される塩(例えば、トラゾリン塩酸塩)を使用してもよい。トラゾリンは、静脈内注射などの当技術分野で公知の経路を介して投与することができる。トラゾリンまたはその薬学的に許容される塩の患者への投与量は、例えば、24時間の期間当たり約1mg/kg体重~約100mg/kg体重の範囲であり得る。ある特定の実施形態では、トラゾリンは、1日当たりの合計投薬量が約1mg/kg体重~約2mg/kg体重、約2mg/kg体重~約3mg/kg体重、約3mg/kg体重~約5mg/kg体重、約5mg/kg体重~約7mg/kg体重、約7mg/kg体重~約9mg/kg体重、約9mg/kg体重~約10mg/kg体重、約10mg/kg体重~約20mg/kg体重、約20mg/kg体重~約30mg/kg体重、約30mg/kg体重~約40mg/kg体重、約40mg/kg体重~約60mg/kg体重、約60mg/kg体重~約80mg/kg体重、または約80mg/kg体重~約100mg/kg体重の範囲で(例えば、静脈内に)投与される。
【0065】
ヨヒンビン
ヨヒンビンは、化学名(16α,17α)-17-ヒドロキシヨヒンバン-16-カルボン酸メチルエステルを有する。ヨヒンビンの薬学的に許容される塩(例えば、ヨヒンビン塩酸塩)を使用してもよい。ヨヒンビンは、経口投与などの当技術分野で公知の経路を介して投与することができる。ヨヒンビンまたはその薬学的に許容される塩の患者への投与量は、例えば、1日当たり約1mg~約50mgの範囲であり得る。ある特定の実施形態では、ヨヒンビンは、1日当たりの投薬量が約1.0mg~約2.0mg、約2.0mg~約3.0mg、約3.0mg~約4.0mg、約4.0mg~約5.0mg、約5.0mg~約6.0mg、約6.0mg~約7.0mg、約7.0mg~約8.0mg、約8.0mg~約9.0mg、約9.0mg~約10mg、約10mg~約15mg、約15mg~約20mg、約20mg~約25mg、約25mg~約30mg、約30mg~約35mg、約35mg~約40mg、約40mg~約45mg、または約45mg~約50mgの範囲で(例えば、経口で)投与される。
【0066】
代表的なアルファ-アドレナリン受容体拮抗薬として、例えば、アモスラロール、アロチノロール、ダピプラゾール、メシル酸エルゴロイド、フェンスピリド、インドラミン、ラベタロール、ナフトピジル、ニセルゴリン、フェノキシベンザミン、フェントラミン、定型及び非定型抗精神病薬、アチパメゾールならびにそれらの薬学的に許容される塩、が挙げられる。
【0067】
アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬が当技術分野で公知の従来的な投与経路によって投与してもよいことは理解される。例えば特定の投与経路が初回通過代謝を減少させるかまたは生体内利用率の改善を有する場合、ある特定の投与経路は特定の治療剤について好ましいものとなり得る。ある特定の実施形態では、アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬は、経口的に、経皮的に、皮内に、または経粘膜的投与によって単独でまたはデスモプレシンとの混合薬で投与される。さらに他の実施形態では、アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬は経口的に投与される。
【0068】
この方法も、デスモプレシンの投与開始とアルファ-アドレナリン受容体拮抗薬の投与開始との間の期間に応じて特徴づけることができる。ある特定の実施形態では、デスモプレシンの初回投与は、アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬の投与と一致してもよい。代替的に、デスモプレシンの投与開始はアルファ-アドレナリン受容体拮抗薬の投与開始の前であっても後であってもよい。ある特定の実施形態では、アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬は、デスモプレシン投与の開始から1時間以内に投与される。ある特定の実施形態では、アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬は、デスモプレシンの投与開始から0.5時間以内、1時間以内、1.5時間以内、または2時間以内に投与される。
【0069】
5-アルファレダクターゼ抑制薬
5-アルファレダクターゼ抑制薬は5-アルファレダクターゼの活性を抑制する医療用薬剤のクラスである。代表的な5-アルファレダクターゼ抑制薬としては、例えば、デュタステリド、エプリステリド、フィナステリド、イゾンステリド、ツロステリド、AS-601811、FK143、TF-505及びそれら薬学的に許容される塩が挙げられる。潜在的に好適な5-アルファレダクターゼ抑制薬について以下に簡潔に説明する。
【0070】
デュタステリド
デュタステリドは、化学名(5α,17β)-N-{2,5ビス(トリフルオロメチル)フェニル}-3-オキソ-4-アザアンドロスト-1-エン-17-カルボキサミドを有し、商品名AVODART(登録商標)の下、軟質のゼラチンカプセルとして商業的に入手可能である。デュタステリドの薬学的に許容される塩を使用してもよい。デュタステリドは、経口投与などの当技術分野で公知の経路を介して投与することができる。デュタステリドまたはその薬学的に許容される塩の患者への投与量は、例えば、1日当たり約0.1mg~約5mgの範囲であり得る。ある特定の他の実施形態では、デュタステリドは1日当たりの投薬量が約0.1~約1mg、約1mg~約2mg、約2mg~約3mg、約3mg~約4mg、または約4mg~約5mgの範囲で(例えば、経口で)投与される。ある特定の他の実施形態では、デュタステリドは1日当たりの投薬量が約0.3mg~約0.7mgの範囲で(例えば、経口で)投与される。現状好ましい成人男性の用量は、BPH治療用の推奨用量よりも少なく、すなわち0.5mg/日未満、例えば、0.1~0.3または0.4mg/日である。
【0071】
エプリステリド
エプリステリドは、化学名17β-(N-tert-ブチルカルボキサミド)アンドロスタ-3,5-ジエン-3-カルボン酸を有する。エプリステリドの薬学的に許容される塩を使用してもよい。エプリステリドまたはその薬学的に許容される塩の患者への投与量は、例えば、約1mg~約500mgの範囲であり得る。ある特定の実施形態では、エプリステリドは、1日当たりの投薬量が約0.1mg~約1mg、約1mg~約2mg、約2mg~約5mg、約5mg~約10mg、約1mg~約50mg、約50~約100mg、約100mg~約150mg、約150mg~約200mg、約200mg~約250mg、約250mg~約300mg、約300mg~約350mg、約350mg~約400mg、約400mg~約450mg、または約450mg~約500mgの範囲で投与される。
【0072】
フィナステリド
フィナステリドは、化学名N-(1,1-ジメチルエチル)-3-オキソ-(5α,17β)-4-アザアンドロスト-1-エン-17-カルボキサミドを有し、商品名PROPECIA(登録商標)の下、錠剤形態で商業的に入手可能である。フィナステリドの薬学的に許容される塩を使用してもよい。フィナステリドは、経口投与などの当技術分野で公知の経路を介して投与することができる。フィナステリドまたはその薬学的に許容される塩の患者への投与量は、例えば、1日当たり約0.2mg~約20mgの範囲であり得る。ある特定の他の実施形態では、フィナステリドは1日当たりの投薬量が約0.2mg~約0.5mg、約0.5mg~約1mg、約1mg~約2mg、約2mg~約3mg、約3mg~約5mgの範囲で(例えば、経口で)投与される。ある特定の他の実施形態では、フィナステリドは1日当たりの投薬量が約1mg~約5mgの範囲で(例えば、経口で)投与される。デスモプレシンと組み合わせたフィナステリドにおける現状好ましい成人男性の用量は、BPH治療用のフィナステリド推奨用量よりも少なく、すなわち5mg/日未満、例えば、約1~3または4mg/日である。1.0mg/日未満がうまく機能し、かつ最も有害な副作用を回避することが多い。
【0073】
AS-601811
AS-601811は、化学名4,8-ジメチル-2,3,5,6-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[c]キノリジン-3-オンを有する。AS-601811の薬学的に許容される塩を使用してもよい。AS-601811またはその薬学的に許容される塩の患者への投与量は、例えば、約1mg~約500mgの範囲であり得る。ある特定の実施形態では、AS-601811は1日当たりの投薬量が約1mg~約50mg、約50~100mg、約100mg~約150mg、約150mg~約200mg、約200mg~約250mg、約250mg~約300mg、約300mg~約350mg、約350mg~約400mg、約400mg~約450mg、または約450mg~約500mgの範囲で投与される。
【0074】
イゾンステリド
イゾンステリドは、化学名(4aR,10bR)-8-((4-エチル-2-ベンゾチアゾリル)チオ)-1,4,4a,5,6,10b-ヘキサヒドロ-4,10b-ジメチルベンゾ[f]キノリン-3-(2H)-オンを有する。イゾンステリドの薬学的に許容される塩を使用してもよい。イゾンステリドまたはその薬学的に許容される塩の患者への投与量は、例えば、約1mg~約500mgの範囲であり得る。ある特定の実施形態では、イゾンステリドは1日当たりの投薬量が約1~約50mg、約50~100mg、約100mg~約150mg、約150mg~約200mg、約200mg~約250mg、約250mg~約300mg、約300mg~約350mg、約350mg~約400mg、約400mg~約450mg、または約450mg~約500mgの範囲で投与される。
【0075】
ツロステリド
ツロステリドは、化学名1,3-ジイソプロピル-1-((4-メチル-3-オキソ-4-アザ-5アルファ-アンドロスタン-17ベータ-イル)カルボニル)ウレアを有する。ツロステリドの薬学的に許容される塩を使用してもよい。ツロステリドまたはその薬学的に許容される塩の患者への投与量は、例えば、約1mg~約500mgの範囲であり得る。ある特定の実施形態では、ツロステリドは1日当たりの投薬量が約1mg~約50mg、約50~100mg、約100mg~約150mg、約150mg~約200mg、約200mg~約250mg、約250mg~約300mg、約300mg~約350mg、約350mg~約400mg、約400mg~約450mg、または約450mg~約500mgの範囲で投与される。
【0076】
FK143
FK143は、化学名4-[3-[3-[ビス(4-イソブチルフェニル)メチル-アミノ]ベンゾイル]-1H-インドール-1-イル]酪酸を有する。FK143の薬学的に許容される塩を使用してもよい。FK143またはその薬学的に許容される塩の患者への投与量は、例えば、約1mg~約500mgの範囲であり得る。ある特定の実施形態では、FK143は1日当たりの投薬量が約1mg~約50mg、約50~100mg、約100mg~約150mg、約150mg~約200mg、約200mg~約250mg、約250mg~約300mg、約300mg~約350mg、約350mg~約400mg、約400mg~約450mg、または約450mg~約500mgの範囲で投与される。
【0077】
TF-505
TF-505は、化学名(-)-(S)-4-[1-[4-[1-(4-イソブチルフェニル)ブトキシ]ベンゾイル]インドリジン-3-イル]酪酸を有する。TF-505の薬学的に許容される塩を使用してもよい。TF-505は、経口投与などの当技術分野で公知の経路を介して投与することができる。TF-505またはその薬学的に許容される塩の患者への投与量は、例えば、1日当たり約10mg~100mgの範囲であり得る。ある特定の実施形態では、TF-505は1日当たりの投薬量が約1mg~約10mg、約10mg~約20mg、約20mg~約30mg、約30mg~約40mg、約40mg~約50mg、約50mg~約60mg、約60mg~約70mg、約70mg~約80mg、約80mg~約90mg、または約90mg~約100mgの範囲で(例えば、経口で)投与される。ある特定の他の実施形態では、TF-505は1日当たりの投薬量が約25mg~約50mgの範囲で(例えば、経口で)投与される。
【0078】
2つ以上の5-アルファレダクターゼ抑制薬が対象に投与され得ることは理解される。例えば、ある特定の実施形態では、デュタステリド及びタムスロシンの薬学的に許容される塩(例えば、タムスロシン塩酸塩)が対象に投与される。デュタステリド及びタムスロシン塩酸塩を含有するカプセルは、商標JALYN(登録商標)の下、商業的に入手可能である。
【0079】
患者集団
この方法は、望ましくない膀胱からの排尿に関連する障害またはそれを特徴とする障害にかかっているヒト対象、好ましくは成人男性または女性、多くは50才を超える成人に、治療上の利益をもたらすことが見込まれている。代表的な障害として、夜間頻尿症、尿失禁、遺尿症及び尿崩症が挙げられる。ある特定の実施形態では、ヒト対象は夜間頻尿症にかかっている。
【0080】
尿生成の回復
この方法は、対象がデスモプレシン及びアルファ-アドレナリン受容体拮抗薬の投与終了後に正常な尿生成を再開するのに必要とされる期間に応じて、さらに特徴づけられ得る。毎日正常な尿生成を再開し、その結果適切な液平衡を維持しかつ老廃物を放尿によって排出することは、対象にとって重要である。従って、ある特定の実施形態では、この方法は、ヒト対象における尿生成がデスモプレシン投与の終了後約2時間以内に回復する点において、さらに特徴づけられる。ある特定の実施形態では、この方法は、ヒト対象における尿生成がデスモプレシン投与の終了後約1時間以内に回復する点において、さらに特徴づけられる。
【0081】
併用療法における利益の代表例
この方法及び組成物は、種々の利益を提供することが見込まれる。見込まれる利益の1つは、デスモプレシンがアルファ-アドレナリン受容体拮抗薬と共に投与される場合、ヒト対象の尿意抑制において、デスモプレシンが単独で投与される場合に観察される効能と比べて、尿意抑制の効能が改善されることである。ある特定の実施形態では、デスモプレシンがアルファ-アドレナリン受容体拮抗薬と共に投与される場合、ヒト対象の尿意抑制において、デスモプレシンを単独で投与した場合に観察される効能と比べて、その改善が5%、10%、20%、30%、50%、75%、100%、またはそれを超えるものとなり得る。
【0082】
別の見込まれる利益は、デスモプレシン投与に関連する副作用の減少である。これは、主として、尿意の減少を依然首尾よく達成しながらも、使用すべきデスモプレシンの低用量化を可能にすることによって、達成される。ある特定の実施形態では、デスモプレシンがアルファ-アドレナリン受容体拮抗薬と共に投与される場合、デスモプレシンが単独で同様な治療効果の達成に必要な用量で投与される場合に観察される副作用と比べて、ヒト対象における副作用減少がより大きいものとなる。
【0083】
デスモプレシン及びアルファ-アドレナリン受容体拮抗薬の投与によって、例えば、ヒト対象における尿意抑制効能の相乗的改善のような相乗効果がもたらされ得る。ある特定の実施形態では、効能の相乗的改善は、デスモプレシン及びアルファ-アドレナリン受容体拮抗薬の投与に関連する効能の付加的改善に比べて、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、またはそれより大きい相乗的改善となる。本明細書で開示され特許請求の対象となっているこれらの型の組合せの使用における臨床試験は、すでに優れた効能及び安全性を実証しており、追加試験が進行中である。
【0084】
II.医薬組成物及び投薬上の注意点
本発明の別の態様では、本明細書に記載の1つまたは複数の治療剤と薬学的に許容される担体とを含む医療組成物が提供される。この医薬組成物は、以下に適合するものを含めて、固体または液体の形態での投与用に特別に処方され得る:(1)経口投与、例えば、水薬(水性または非水性の溶液または懸濁液)、錠剤(例えば、頬側、舌下、及び/または全身性吸収に対象を定めたもの)、ボーラス、散剤、粒剤、舌塗布用のペースト;(2)例えば、皮下、筋肉内、静脈内または硬膜外注射による、例えば、滅菌液もしくは懸濁液、または徐放性製剤としての非経口的投与;(3)例えば、皮膚に塗布するクリーム、軟膏、または徐放性パッチもしくは噴霧としての局所塗布;(4)例えば、膣座薬、クリームまたは泡沫として直腸内または腟内に;(5)舌下に;(6)目に;(7)経皮的に;または(8)経鼻的に。特定の投与経路のために設計されている代表的な添加剤及び製剤のさらなる説明を以下に記載する。
【0085】
ある特定の実施形態では、本発明は、デスモプレシン、アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬は、例えば、アルフゾシン、アモスラロール、アロチノロール、ダピプラゾール、ドキサゾシン、メシル酸エルゴロイド、フェンスピリド、イダゾキサン、インドラミン、ラベタロール、ナフトピジル、ニセルゴリン、プラゾシン、シロドシン、タムスロシン、テラゾシン、トラゾリン、ヨヒンビン、フェノキシベンザミン、フェントラミン、アチパメゾール、またはそれの薬学的に許容される塩であり得る。ある特定の実施形態では、この医薬組成物はヒト対象への経鼻投与用に処方される。
【0086】
「薬学的に許容される担体」という表現は、例えば、液体もしくは固体の賦形剤、希釈剤、添加剤、製造助剤(例えば、滑沢剤、タルク ステアリン酸マグネシウムもしくはカルシウムもしくは亜鉛、またはステアリン酸)、または溶媒封入材料などの、対象化合物を一臓器または身体の一部から別の臓器または身体の一部へ運ぶまたは輸送することに関与する、薬学的に許容される材料、組成物、またはビヒクルを意味する。各々の担体は、製剤の他の成分に適合性でかつ患者に有害でない意味において「許容される」ものでなければならない。薬学的に許容される担体として機能し得る材料の例の一部として、以下のものが挙げられる:(1)ラクトース、グルコース及びスクロースなどの糖;(2)トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンなどのデンプン;(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロースなどの、セルロース及びその誘導体;(4)トラガカント末;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)ココアバター及び坐薬ワックスなどの添加剤;(9)ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コ-ン油及び大豆油などの油;(10)プロピレングリコールなどのグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコールなどのポリオール;(12)オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)パイロジェンを含まない水;(17)等張食塩液;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)pH緩衝液;(21)ポリエステル、ポリカーボネート及び/またはポリ酸無水物;ならびに(22)医薬製剤で用いられる他の無毒適合性物質。
【0087】
湿潤剤、乳化剤ならびに、ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、加えて着色剤、剥離剤、コーティング剤、甘味、香味及び着香剤、保存剤ならびに抗酸化剤も、この組成物中に存在し得る。薬学的に許容される抗酸化物の例としては、(1)アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、などの水溶性抗酸化物;(2)アスコルビン酸パルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、プロピル没食子酸塩、アルファ-トコフェロール、などの油溶性抗酸化物;そして(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤、が挙げられる。
【0088】
本発明の製剤には、経口、経鼻、局所的(頬側及び舌下を含めて)、直腸、腟及び/または非経口的投与に好適な製剤が含まれる。この製剤は、単位剤形で提示されることが好都合となり得て、薬学分野で周知の任意の方法によって調製することができる。単一の剤形を生成するために担体材料で組み合わされ得る活性成分の量は、治療を受けている宿主、特定の投与様式によって変わることになる。単一の剤形を生成するために担体材料で組み合わされ得る活性成分の量は、概して、治療効果をもたらす化合物の量ということになる。
【0089】
経口投与に好適な本発明の製剤は、カプセル、カシェ、丸薬、錠剤、ロゼンジ(風味を付けた基剤、通常はスクロース及びアラビアゴムもしくはトラガカントを使用する)、散剤、粒剤の形態で、または水性もしくは非水性液体の溶液もしくは懸濁液として、または水中油もしくは油中水の乳濁液として、またはエリキシルもしくはシロップとして、またはパステル剤(ゼラチン及びグリセリン、またはスクロール及びアラビアゴムなどの不活性基剤を使用する)として、及び/または口腔洗浄薬などとして、各々が所定の量の本発明の化合物を活性成分として含有することができる。本発明の化合物は、ボーラス、舐剤またはペーストとして投与することもできる。
【0090】
本発明の経口投与用固体剤形(カプセル、錠剤、丸薬、糖衣錠、散剤、粒剤、トローチなど)では、活性成分は、1つまたは複数の薬学的に許容される担体、例えばクエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなど、ならびに/または以下のいずれかと混合する:(1)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、及び/またはケイ酸などの賦形剤または増量剤;(2)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギナート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース及び/またはアラビアゴムなどの結合剤;(3)グリセロールなどの湿潤剤;(4)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のケイ酸塩、及び炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;(5)パラフィンなどの溶解遅延剤;(6)四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤ならびにポロクサマー及びラウリル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤;(7)例えば、セチルアルコール、グリセロールモノステアレート及び非イオン性界面活性剤などの湿潤剤;(8)カオリン及びベントナイト粘土などの吸収剤;(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体のポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸、及びこれらの混合物などの滑沢剤;(10)着色剤;及び(11)クロスポビドンまたはエチルセルロースなどの徐放剤。カプセル、錠剤及び丸薬の場合は、医薬組成物は緩衝剤も含んでよい。同様のタイプの固体組成物は、軟質及び硬質の殻で覆われたゼラチンカプセル内に、ラクトースまたは乳糖、加えて高分子量のポリエチレングリコールなどの添加剤を使用して賦形剤として用いることもできる。
【0091】
錠剤は、任意選択で1つまたは複数の補助的成分を用いて、圧縮または成形によって作製することができる。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウムまたは架橋カルボキシルメチルセルロースナトリウム)、表面活性剤または分散剤を使用して調製することができる。成形錠剤は、不活性希釈液で湿らせた粉末化合物の混合物を好適な機械で成形することによって作製することができる。
【0092】
本発明の化合物の経口投与用液体剤形には、薬学的に許容される乳濁液、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシルが含まれる。活性成分に加えて、液体剤形は、例えば水または他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤など、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、ベンジル安息香酸塩、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実油、ピーナツ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、トウゴマ油及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタン脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物などの、当技術分野で一般に使用される不活性希釈剤を含有してもよい。
【0093】
不活性希釈剤のほかに、経口用組成物には、湿潤剤、乳化及び懸濁剤、甘味剤、香味剤、着色剤、着香剤及び保存剤などのアジュバントも含まれてよい。
【0094】
懸濁液は、活性化合物に加えて懸濁化剤、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微晶質セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天及びトラガカント、ならびにそれらの混合物を含有することができる。
【0095】
本発明の医薬組成物における活性成分の実際の投薬量レベルは、特定の患者の所望の治療反応を達成するために効果的な活性成分の量、組成物、及び投与様式を、患者に有毒となるようなことなく得られるように変わり得る。選択される投薬量レベルは、用いられている本発明の特定化合物もしくはその塩の活性、投与経路、投与時間、用いられている特定化合物の排出もしくは代謝速度、吸収の速度及び程度、治療期間、用いられている特定化合物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物及び/もしくは材料、性別、体重、状態、治療を受ける患者の全体的健康状態及び病歴、ならびに医療分野で周知の同様因子、を含めた種々の因子に依存することになる。
【0096】
当技術分野で通常の技量を有する医師は、必要とされる医薬組成物の有効量を容易に決定しかつ処方することができる。例えば、医師は、医薬組成物に用いられている本発明の化合物について、所望の治療効果を得るために必要とされるレベルより低いレベルの用量から開始し、所望の効果が達成されるまで徐々に投薬量を増やしていくことができるであろう。
【0097】
III.医療キット
本発明の別の態様では、ヒト対象の尿意を抑制するための、またはヒト対象の抗利尿効果を誘発するための、キットが提供される。このキットは、(i)使用説明書と、混合物でまたは別々に存在する(ii)デスモプレシン及び(iii)アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬とを備え、別々である場合は、例えば拮抗薬は経口的に、デスモプレシンは経粘膜的にまたは皮膚パッチを介して、違った方法で投与される。
【0098】
上記の記載は、治療方法、医薬組成物及び医療キットを含めて、本発明の複数の態様及び実施形態を説明するものである。本特許出願では、諸態様及び諸実施形態の全ての組合せ及び並べ替えが具体的に検討されている。
【実施例0099】
ここに全体的に記載されている本発明は、以下の実施例を参照することによってより容易に理解されるであろう。実施例は、本発明におけるある特定の態様及び実施形態を単に例示する目的で含まれており、本発明を限定することを意図するものではない。
【0100】
実施例1
アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬と組み合わせたデスモプレシンについて、単独投与する場合と5-アルファレダクターゼ抑制薬と併せて投与する場合とにおける、患者の夜間排尿の発生減少に及ぼす影響を評価するために、臨床研究を実施した。実験の手順及び結果を以下に記載する。結果は、アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬と組み合わせたデスモプレシンによって、それが単独の場合でも5-アルファレダクターゼ抑制薬と併せた場合でも、デスモプレシンの単独投与、アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬の単独投与、または5-アルファレダクターゼ抑制薬と併せたアルファ-アドレナリン受容体拮抗薬の投与に比べて、夜間排尿発生においてより大きなパーセントでの減少を患者が経験する結果になることを示している。
【0101】
第1部 実験の手順
研究対象の患者は、以下の基準を満たしていた:(a)一晩当たり少なくとも平均2回の夜間排尿を少なくとも6カ月の期間経験している50才以上の男性または女性、(b)鬱血性心不全、尿崩症、腎不全、肝不全、尿失禁、全身性ステロイドを必要とする疾患、過去5年以内の悪性腫瘍、睡眠時無呼吸、ネフローゼ症候群、原因不明の骨盤腔内腫瘤、膀胱神経性機能不全のいずれかにかかっていないこと、膀胱の手術または放射線療法の経験がないこと、または妊娠中もしくは授乳中でないこと。
【0102】
患者は、点鼻薬として(i)デスモプレシン1.5μg投薬量または(ii)プラセボのいずれかを摂取した。デスモプレシン点鼻薬(またはプラセボ)を毎日就寝時前に12週間の期間投与した。加えて、過去に良性前立腺肥大症(BPH)にかかっていると診断され、かつBPH治療用にアルファ-アドレナリン受容体拮抗薬を、単独でまたは5-アルファレダクターゼ抑制薬と共に摂取している患者は、この研究の登録前に使用していた同じ投薬量及び頻度で、アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬を、単独でまたは5-アルファレダクターゼ抑制薬と共に引き続き摂取した。本研究の対象患者で、BPH治療用にアルファ-アドレナリン受容体拮抗薬を、単独でまたは5-アルファレダクターゼ抑制薬と共に摂取していた患者は全て、本研究の登録前に少なくとも2カ月、アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬を、単独でまたは5-アルファレダクターゼ抑制薬と共に摂取しており、かつ本研究の登録前に一晩当たり少なくとも平均2回の夜間排尿を経験していた。以下に記載するようにストック乳濁液及び緩衝液のアリコートを合わせることによって、デスモプレシン点鼻薬を調製した。
【0103】
ストック乳濁液:ストック乳濁液を生成するために、撹拌子を備えた容器に重量部で以下の成分を添加し、60~65℃で15分間混ぜ合わせた:(i)ソルビタンモノラウレート(Span-20)水溶液(12mg/mL)180部;(ii)ポリソルベート20(Tween-20)水溶液(2mg/mL)30部;(iii)綿実油水性乳濁液(26.6mg/mL)400部;(iv)シクロペンタデカノリド(CPE-215)水性乳濁液(40mg/mL)600部;及び(v)合計バッチサイズ1,500グラムを生成するための水。混ぜ合わせた後、6500RPM+の高速混合を使用して20~25分間調製物を均質化して微細な乳濁液を生成する。無菌を保証するために、この溶液をオートクレーブ処理する。
【0104】
緩衡液:クエン酸ストック緩衝液を生成するために、撹拌子を備えた容器に重量部で以下の成分を添加し、60~65℃で5分間混ぜ合わせた:(i)水6200部;(ii)無水クエン酸水溶液(1.85mg/mL)16部;(iii)クエン酸ナトリウム、二水和物水溶液(8.9mg/mL)76部;(iv)ポリソルベート20(Tween-20)水溶液(12mg/mL)104部;及び(v)合計バッチサイズ8,500グラムを生成するための水。
【0105】
デスモプレシンストック溶液:デスモプレシンストック溶液を生成するために、デスモプレシンアセテート三水和物0.111部を溶液100.0mLの生成に十分なストック緩衝液に添加し、全てのデスモプレシンが溶解して100ugデスモプレシン/mLの濃度を有するストック溶液を生成するまで撹拌する。このストック溶液から、希釈によって30ug/mL溶液を調製した。
【0106】
デスモプレシン点鼻薬:デスモプレシン点鼻薬を生成するために、30ug/mL溶液のアリコートを濾過して任意の細菌混入を除去し、等体積のストック乳濁液で希釈して、デスモプレシン15ug/mLを含み、pH5.5、2%のシクロペンタデカノリドを含有する、無菌でかつ保存剤を含まない剤形を生成した。これらを、定量噴霧当たり100μL(すなわち、噴霧当たりデスモプレシン1.5pg(すなわち、デスモプレシン1500ng))を送達するPfeiffer APFポンプ噴霧器が取り付けられた滅菌ポンプ噴霧瓶に瓶詰めした。この液体は検出可能な微生物を含有しない。
【0107】
研究期間中、患者は夜間排尿の発生を記録した。治療を受けてから、治療期間中に夜間排尿の平均回数が減少した場合、その患者を「反応者」と称した。治療期間中に夜間排尿の平均回数減少を経験しなかった患者を、「無反応者」と称した。
【0108】
第二部 結果
臨床試験の結果を、下の表1~4に示す。表1は、アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬を単独でまたは5-アルファレダクターゼ抑制薬と共に摂取しているBPH患者に対して、デスモプレシンまたはプラセボを投与した結果を示している。アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬と組み合わせたデスモプレシンを、それ単独で用いてまたは5-アルファレダクターゼ抑制薬と共に用いて治療したBPH患者の絶対反応速度は57%であり、これに対しプラセボ(すなわち、デスモプレシンなし)で治療した群では26%であった。これは31%の差である。
【表1】
【0109】
表2は、BPHと診断されたがアルファ-アドレナリン受容体拮抗薬を単独でも5-アルファレダクターゼ抑制薬と共にも摂取しなかった患者に対して、デスモプレシンまたはプラセボを投与した結果を示している。デスモプレシンを摂取した(すなわち、アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬も5-アルファレダクターゼ抑制薬もなし)BPH患者の絶対反応速度は43%であり、これに対しプラセボ群(すなわち、デスモプレシン、アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬、または5-アルファレダクターゼ抑制薬のいずれもなし)では29%であった。これは14%の差である。
【表2】
【0110】
表3は、BPHと診断されておらず、従ってアルファ-アドレナリン受容体拮抗薬を単独でも5-アルファレダクターゼ抑制薬と共にも摂取していなかった患者に対して、デスモプレシンまたはプラセボを投与した結果を示している。デスモプレシンを摂取した非BPH男性患者における絶対反応速度は53%であり、これに対しプラセボ群(すなわち、デスモプレシンなし)では35%であった。これは18%の差である。
【表3】
【0111】
要約すると、併用療法(すなわち、アルファ-アドレナリン受容体拮抗薬と組み合わせたデスモプレシンを単独でまたは5-アルファレダクターゼ抑制薬と共に)を受けた患者は、(i)デスモプレシンのみを摂取したBPH患者、及び(ii)デスモプレシンのみを摂取した非BPH男性患者で観察された反応速度に比べて、高い絶対反応速度及び高い相対反応速度を有した。これを以下の表4に示す。
【表4】
【0112】
参照による組み込み
本明細書で参照された特許文書及び科学論文の各々の開示内容全体が、あらゆる目的について、参照によって組み込まれている。
【0113】
等価物
本発明は、その趣旨または本質的特徴から逸脱することなく、他の具体的な形態で実施することができる。従って、以上の実施形態は、あらゆる点において、本明細書に記載の本発明を限定するものではなく、例示的なものとしてみなすべきである。従って、本発明の範囲は、以上の記載によってではなく、付属の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に収まる全ての変更は、本発明の範囲内に包含されることが意図されている。