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特開2022-95976ポリビニルアルコール樹脂及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095976
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】ポリビニルアルコール樹脂及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 29/04 20060101AFI20220621BHJP
   C08K 5/06 20060101ALI20220621BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
C08L29/04 A
C08K5/06
C08K5/10
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071185
(22)【出願日】2022-04-22
(62)【分割の表示】P 2017225142の分割
【原出願日】2017-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】594146788
【氏名又は名称】日本酢ビ・ポバール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】植野 剛市
(57)【要約】
【課題】良好な分散性ないし溶解性を有するポリビニルアルコール樹脂を提供する。
【解決手段】ポリビニルアルコール樹脂と界面活性剤を混合する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤を含むポリビニルアルコール樹脂であって、界面活性剤がノニオン性界面活性剤を含み、界面活性剤の割合がポリビニルアルコール樹脂に対して0.0001~0.1質量%であり、10メッシュの篩を通過する樹脂粒子である、ポリビニルアルコール樹脂。
【請求項2】
ポリビニルアルコール樹脂の重合度が500以上である請求項1記載の樹脂。
【請求項3】
ポリビニルアルコール樹脂の鹸化度が97モル%以下である請求項1又は2記載の樹脂。
【請求項4】
ポリビニルアルコール樹脂の鹸化度が70~95モル%である請求項1~3のいずれかに記載の樹脂。
【請求項5】
ポリビニルアルコール樹脂の鹸化度が70~95モル%、重合度が500~5000である請求項1~4のいずれかに記載の樹脂。
【請求項6】
ノニオン性界面活性剤が、エーテル型界面活性剤、エステル型界面活性剤、及びポリプロピレングリコールエーテル型界面活性剤から選択された少なくとも1種を含む請求項1~5のいずれかに記載の樹脂。
【請求項7】
ポリビニルアルコール樹脂の少なくとも表面に界面活性剤が存在する請求項1~6のいずれかに記載の樹脂。
【請求項8】
ポリビニルアルコール樹脂と界面活性剤を混合する請求項1~7のいずれかに記載の樹脂の製造方法。
【請求項9】
ポリビニルアルコール樹脂と、界面活性剤及び溶媒の混合液とを混合する、請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
溶媒が、水とアルコール類との混合溶媒である請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
ポリビニルアルコール樹脂と、界面活性剤及び溶媒の混合液であって、界面活性剤の濃度が5~70質量%の混合液とを混合する、界面活性剤を含むポリビニルアルコール樹脂の製造方法。
【請求項12】
ポリビニルアルコール樹脂が粒子状であり、
界面活性剤がノニオン性界面活性剤を含み、
界面活性剤を含むポリビニルアルコール系樹脂において、界面活性剤の割合がポリビニルアルコール樹脂に対して1質量%以下である、請求項11記載の製造方法。
【請求項13】
ポリビニルアルコール樹脂が粒子状であり、
界面活性剤がノニオン性界面活性剤を含み、
界面活性剤を含むポリビニルアルコール系樹脂において、界面活性剤の割合がポリビニルアルコール樹脂に対して0.0001~0.5質量%であり、
溶媒が、水とアルコール類との混合溶媒である、請求項11又は12記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なポリビニルアルコール樹脂(ポリビニルアルコール系重合体)及びその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルアルコール(以下PVAと略記する)は、親水性の合成樹脂であり、塩ビ樹脂の重合懸濁剤や偏光膜、自動車の合わせガラスの中間膜に使用されるブチラール樹脂の原料、感光性印刷版用の原料、繊維加工剤、紙の表面サイズ剤、酢ビエマルジョンやエチレン-酢ビエマルジョン等の接着剤を水系で乳化重合するための乳化分散剤、ビニロン繊維の原料、水溶性フィルム、医療用経口薬などの錠剤等のバインダーやコート剤など、様々な用途に使用されている。
【0003】
PVAは水溶液にして使用されることが殆どであるが、水への溶解方法は極めて煩雑でPVA専用の溶解設備が無いと完全に溶解することはできない。
【0004】
PVAの水への溶解方法としては、例えば、攪拌した5~25℃の冷水の中にPVAを少しずつ投入することで、まずPVA粒子の1つ1つがバラバラになるように水に分散した状態を作ってから、次に撹拌したまま昇温して90℃程度で加熱溶解する方法が挙げられる。
このように、PVAの溶解では、分散の手順を確実に実施しないと、ママコやだんごのような塊状物(ダマ)が出来る。
【0005】
また、40~100℃の熱水にPVAを直接投入して溶解できないために、溶解時間が長く必要なだけでなく、溶解後に溶解槽を一旦冷却する必要があり、連続で溶解操作を行うことが出来ない等の問題があった。
【0006】
このようなママコの発生原因は、水にPVAを投入した際に、すぐにPVA粒子の表面が水に膨潤して半溶解状態になってPVA粒子同士が癒着して大きな塊を形成するためと考えられる。
【0007】
一旦、このような塊状物が出来ると、その後で長時間かけて加熱撹拌を行っても、塊状物の表面が少し溶解するだけで溶け残りが出来てしまい完全に溶解することは出来ない。
【0008】
特に、40℃以上の高温の水にPVAを投入した場合や、PVAの鹸化度が低い場合(特に、90mol%以下など)、重合度が高い場合(特に1700以上など)、溶解濃度が高い場合(例えば、10~20%以上など)、或いはPVAの粒子が細かい場合などには、塊状物の表面部分だけが溶解して内部は全く水が浸透していない「だま(ママコ)」になり易く、極めて溶解し難い状態になる。
【0009】
このような溶解性を改善しようとする試みがなされつつある。例えば、特許文献1には、特定の粒度分布を持ったPVAで溶解性を改善する方法が開示されている。
【0010】
また、特許文献2では、PVA粉末内部に0.1~10μmの細孔を0.05~0.4cc/gの割合で有することによって分散溶解を容易にする方法が開示されている。
【0011】
しかし、これらの文献に記載の方法では、特定のPVAしか使用できず、また、煩雑な操作が必要となる。そのため、工業製品としてのPVAとして適しているとは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000-265026号公報
【特許文献2】特開平9-316272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、新規なポリビニルアルコール樹脂を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、溶解性又は分散性に優れたポリビニルアルコール樹脂を提供することにある。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、上記のようなポリビニルアルコール樹脂の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、ポリビニルアルコール樹脂(以下、単にPVA樹脂、PVAなどということがある)に界面活性剤を含有させることで、溶解性ないし分散性を向上しうること等を見出し、さらに鋭意検討を重ねて、本発明を完成した。
【0017】
すなわち、本発明は、次の発明等に関する。
[1]
界面活性剤を含むポリビニルアルコール樹脂。
[2]
ポリビニルアルコール樹脂の重合度が500以上である[1]記載の樹脂。
[3]
ポリビニルアルコール樹脂の鹸化度が97モル%以下、重合度が1500以上である[1]又は[2]記載の樹脂。
[4]
界面活性剤が、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤から選択された少なくとも1種を含む[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂。
[5]
界面活性剤の割合が5質量%以下である[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂。
[6]
界面活性剤の割合が1質量%以下である[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂。
[7]
界面活性剤がノニオン性界面活性剤を含み、界面活性剤の割合が0.0001~0.1質量%である[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂。
[8]
10メッシュの篩を通過する樹脂粒子である[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂。
[9]
ポリビニルアルコール樹脂と界面活性剤を混合する[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂の製造方法。
[10]
ポリビニルアルコール樹脂と、界面活性剤及び溶媒の混合液とを混合する、[9]記載の製造方法。
[11]
溶媒が、水とアルコール類との混合溶媒である[10]記載の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、新規なポリビニルアルコール樹脂を提供できる。
このようなポリビニルアルコール樹脂は、界面活性剤を含有しており、水などに対する溶解性ないし分散性に優れている。
【0019】
本発明では、前記特許文献1及び2のように、特殊なポリビニルアルコール樹脂を使用する必要がなく、一般的なポリビニルアルコール樹脂を使用でき、汎用性が高い。
【0020】
また、ポリビニルアルコール樹脂に異物を含有させると、当該異物を嫌う用途において適用できず、用途が大きく制限される場合がある。例えば、異物の種類によっては、洗濯糊といった限られた用途でしか使用できなくなることも生じる。
これに対して、本発明では、界面活性剤をポリビニルアルコール樹脂に対して少量(例えば、ポリビニルアルコール樹脂100質量部に対して、1質量部以下、0.5質量部以下、0.1質量部以下などの割合で)含有させるだけでも、優れた溶解性ないし分散性を実現しうる。
そのため、本発明のポリビニルアルコール樹脂は、異物を嫌う用途のみならず、幅広い用途ないし一般的な用途にも適用しうる。
【0021】
そして、本発明では、上記のようなポリビニルアルコール樹脂を製造する方法を提供できる。特に、このような方法では、界面活性剤を添加する等の簡便な方法で含有させることができる。
このように、本発明のポリビニルアルコール樹脂は、その製法も含めて、汎用性が高い。
【0022】
より具体的には、本発明のポリビニルアルコール樹脂は、溶解性ないし分散性に優れ、PVA系樹脂を含有する液(特に、少なくとも水を含む溶液ないし分散液)を容易に調製しうる、取扱性に優れる材料である。
【0023】
そして、このような本発明のポリビニルアルコール樹脂は、反応原料として使用される場合や不純物を嫌うような種々の用途(例えば、塩ビ樹脂の重合懸濁剤、TVやパソコンのディスプレイに使用される偏光膜、自動車の合わせガラスの中間膜に使用されるブチラール樹脂の原料、感光性印刷版用の原料、繊維加工剤、紙の表面サイズ剤、酢ビエマルジョンやエチレン-酢ビエマルジョン等の接着剤を水系で乳化重合するための乳化分散剤、ビニロン繊維の原料、水溶性フィルム、医療用経口薬などの錠剤等のバインダーやコート剤など)でも制限されることなく使用可能である。
【0024】
特に、尿素樹脂合成反応中やエマルジョン重合反応直後の高温溶液中にPVA粉体のまま直接仕込む尿素混和剤やエマルジョン後添用粘度調整剤、塩化ビニル懸濁重合中の高温液中にPVA粉体を仕込むような方法などでもPVAがママコにならずに溶解できるために好適に用いることが可能である。
【0025】
また、PVAフィルムを水溶液流延法で製造する場合等においては、PVA水溶液の濃度を高くした方が後の乾燥工程で水分を乾燥除去する時間とエネルギーが少なくて済むために、PVA水溶液濃度が20~50%と非常に高く設定される場合がある。このような高濃度水溶液を調整する場合、水に大量のPVAを仕込むために初期に投入したPVAが徐々に溶解して濃度と粘度が高くなっていくので後から投入するPVAが浮き易く、著しくママコが発生しやすくなる。このような場合でも本発明のPVAはママコを作らず、好適に使用することが可能である。
【0026】
PVAを水に溶解する際に、水温が高い、高温反応中へのPVA粉体の直接投入、溶解設備の撹拌能力が低い、高濃度溶解を行う等の場合にダマが発生し易いが、本発明のPVAは、このような場合でも好適に使用できる。
【0027】
さらに、本発明のPVAは、ママコが出来にくいので、撹拌設備が無くても簡単にPVAの溶解が出来るために、一般家庭で使う洗濯のりや屋外で使用するセメント混和剤などでも好適に使用できる。
【0028】
従来はPVAを夫々の用途で使用するために、通常は冷水に注意深く少量ずつ添加して分散させた後に加熱溶解していたが、常温水に投入して撹拌するか又は熱水に直接投入してPVA水溶液を調整出来るために、短時間での簡易な溶解作業となり、生産性を飛躍的に向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[ポリビニルアルコール樹脂]
本発明のポリビニルアルコール樹脂(組成物)は、ポリビニルアルコール樹脂(ベースとなるポリビニルアルコール樹脂)と、界面活性剤とで構成されている。
そのため、本発明のポリビニルアルコール樹脂(組成物)は、ポリビニルアルコール樹脂及び界面活性剤を含む組成物(樹脂組成物)ということもできる。
【0030】
(ポリビニルアルコール樹脂)
ポリビニルアルコール樹脂(PVA、PVA樹脂)は、通常、ビニルエステル重合体(ビニルエステルを重合成分とする重合体)の鹸化物である。
【0031】
ビニルエステル重合体は、少なくともビニルエステルを重合成分とする。ビニルエステル(ビニルエステル系単量体)としては、特に限定されないが、例えば、脂肪酸ビニルエステル[例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプリル酸ビニル、バーサチック酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニルなどのC1-20脂肪酸ビニルエステル(例えば、C1-16アルカン酸-ビニルエステル)など]、芳香族カルボン酸ビニルエステル[例えば、安息香酸ビニルなどのアレーンカルボン酸ビニル(例えば、C7-12アレーンカルボン酸-ビニルエステル)など]などが挙げられる。
【0032】
ビニルエステルは、1種で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0033】
ビニルエステルは、少なくとも脂肪酸ビニルエステル(例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなどのC1-10アルカン酸-ビニルエステルなど)を含んでいるのが好ましく、工業的観点などから、特に、酢酸ビニルを含んでいてもよい。
【0034】
重合成分(ビニルエステル重合体の重合成分)は、ビニルエステルを少なくとも含んでいればよく、必要に応じて、他の単量体(ビニルエステルと共重合可能な単量体)を含んでいてもよい(他の単量体により変性されていてもよい)。
【0035】
他の単量体としては、特に限定されないが、例えば、α-オレフィン類(例えば、エチレン、プロピレンなど)、(メタ)アクリル酸エステル類[例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル]、不飽和アミド類[例えば、(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミドなど]、不飽和酸類{例えば、不飽和酸[例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸など]、不飽和酸エステル[(メタ)アクリル酸以外の不飽和酸エステル、例えば、アルキル(メチル、エチル、プロピルなど)エステルなど]、不飽和酸無水物(無水マレイン酸など)、不飽和酸の塩[例えば、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩など)、アンモニウム塩など]など}、グリシジル基含有単量体[例えば、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレートなど]、スルホン酸基含有単量体(例えば、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、その塩類など)、リン酸基含有単量体[例えば、アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレートなど]、ビニルエーテル類(例えば、アルキルビニルエーテル類)、アリルアルコールなどが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0036】
他の単量体は、1種で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0037】
ポリビニルアルコール樹脂(ビニルエステル重合体)は、カルボニル基を有していてもよい。このようなカルボニル基を有するポリビニルアルコール樹脂は、例えば、アルデヒド類(例えば、アセトアルデヒドなど)をビニルエステル重合中に共存させることで共重合体中に導入しうる。
なお、カルボニル基を有するポリビニルアルコール樹脂は、塩ビ懸濁重合用などとして使用されうる。
【0038】
また、ポリビニルアルコール樹脂において、ビニルアルコール単位の一部がアセタール化(ホルマール化、ブチラール化など)されていてもよい。具体的には、ポリビニルアルコール樹脂を、ブチルアルデヒドやホルムアルデヒドなどと反応させて、ビニルアルコールの一部をブチラール樹脂やホルマール樹脂などに変性したものを使用することも可能である。
【0039】
ポリビニルアルコール樹脂の鹸化度は、水溶性、水分散性がある鹸化度範囲の用途等に応じて選択でき、特に限定されないが、例えば、10モル%以上(例えば、15モル%以上)、好ましくは20モル%以上(例えば、25モル%以上)、さらに好ましくは30モル%以上(例えば、35モル%以上)、40モル%以上(例えば、45モル%以上)、50モル%以上(例えば、55モル%以上)、60モル%以上(例えば、65モル%以上)、70モル%以上(例えば、75モル%以上)などであってもよい。
【0040】
ポリビニルアルコール樹脂の鹸化度は、例えば、100モル%以下(例えば、99.9モル%以下)、99.8モル%以下、99.7モル%以下、99.6モル%以下、99.5モル%以下、99モル%以下、98モル%以下、97モル%以下、96モル%以下、95モル%以下、94モル%以下、93モル%以下、92モル%以下、90モル%以下、89モル%以下、88モル%以下、87モル%以下、86モル%以下、85モル%以下などであってもよい。
【0041】
なお、これらの数値を適宜組み合わせて適当な範囲を設定してもよい(例えば、10~99.8モル%、40~90モル%など、以下数値の記載について同じ)。
【0042】
本発明では、比較的低い鹸化度のポリビニルアルコール樹脂であっても、良好な溶解性ないし分散性が得られうる。
【0043】
なお、鹸化度は、特に限定されないが、例えば、JIS K 6726に規定された方法などによって、測定してもよい。
【0044】
ポリビニルアルコール樹脂の重合度(平均重合度)は、用途等に応じて選択でき、特に限定されないが、例えば、100以上(例えば、120以上)、好ましくは150以上、さらに好ましくは200以上であってもよく、300以上、400以上、500以上、600以上、700以上、800以上、1000以上、1200以上、1500以上などであってもよい。
【0045】
ポリビニルアルコール樹脂の重合度(平均重合度)は、例えば、10000以下(例えば、9000以下)、8000以下、7000以下、6000以下、5000以下、4000以下、3000以下、2000以下、1500以下、1000以下、800以下、700以下、600以下、500以下、400以下などであってもよい。
【0046】
比較的高重合度(500以上、特に1500以上など)のポリビニルアルコール樹脂は、ママコの発生が著しいなど、溶解性ないし分散性が極めて悪い場合が多いが、本発明では、このような比較的高重合度のポリビニルアルコール樹脂あっても、良好な溶解性ないし分散性が得られうる。
【0047】
なお、重合度は、特に限定されないが、例えば、JIS K 6726に規定された方法などによって、測定してもよい。
【0048】
ポリビニルアルコール樹脂の4%水溶液粘度は、例えば、2mPa・s以上、好ましくは3mPa・s以上、さらに好ましくは5mPa・s以上などであってもよく、10mPa・s以上、20mPa・s以上、50mPa・s以上などであってもよい。
【0049】
ポリビニルアルコール樹脂の4%水溶液粘度は、例えば、1000mPa・s以下、500mPa・s以下、200mPa・s以下、100mPa・s以下、50mPa・s以下、30mPa・s以下などであってもよい。
【0050】
なお、4%水溶液粘度は、特に限定されないが、例えば、JIS K 6726に規定された方法などによって、測定してもよい。
【0051】
(界面活性剤)
界面活性剤は、通常、両親媒性であり、親水性基(部位)と親油性基(部位)を有する場合が多い。
このような界面活性剤としては、特に限定されず、イオン性界面活性剤(アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤)、ノニオン性界面活性剤などのいずれであってもよいが、特に、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤を好適に使用してもよい。
【0052】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、カルボン酸型界面活性剤[例えば、カルボン酸又はその塩(例えば、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ココイルグルタミン酸ナトリウムなどの脂肪酸塩)、スルホ基含有カルボン酸エステル又はその塩(例えば、アルファスルホ脂肪酸メチルエステル塩など)など]、硫酸エステル型界面活性剤[例えば、硫酸エステル又はその塩(例えば、オクチルサルフェートなどの硫酸アルキルエステル又はその塩)など]、スルホン酸型界面活性剤[例えば、アルキルアレーンスルホン酸又はその塩(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸塩などのアルキルベンゼンスルホン酸又はその塩)、アレーンスルホン酸又はその塩(例えば、ナフタレントリスルホン酸三ナトリウムなどのアレーンモノ又はポリスルホン酸又はその塩)など]などが挙げられる。
【0053】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、エーテル型界面活性剤[例えば、アルキルエーテル型界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ペンタエチレングリコールモノドデシルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル)、アルキルアリールエーテル型(例えば、アルキルフェニルエーテル型)界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル)、アルケニルアリールエーテル型(例えば、アリルフェニルエーテル型)界面活性剤(例えば、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテルなどのポリオキシアルキレンアリルアリールエーテル)など]、エステル型界面活性剤[例えば、脂肪族エステル(例えば、アルキルエステル)型界面活性剤(例えば、アルキルアルコールエトキシレート、高級アルコールプロポキシレート、アルキルアルコールエトキシレートプロポキシレート、ポリオキシエチレンラウレート、モノステアリン酸グリセリン、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどのモノないしポリオールの脂肪酸エステル)など]、アミン型(例えば、アルキルアミン型)界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテルなどのポリオキシアルキレン脂肪族アミン)、アミド型(例えば、アルキルアミド型)界面活性剤[例えば、ポリオキシアルキレン脂肪酸アミド(例えば、ポリオキシエチレンラウリン酸アミドなど)など]、アルカノールアミド型界面活性剤(例えば、オレイン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミドなど)、ポリプロピレングリコールエーテル型界面活性剤[例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル(例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテルなどのアルキルエーテル)など]、高級アルコール(例えば、オレイルアルコール、ステアリルアルコールなど)などが挙げられる。
【0054】
なお、界面活性剤は、用途等に応じて、消泡剤、乳化剤、分散剤、浸透剤などと表現(又は分類)されることがあるが、本発明では、これらのいずれも(いずれの用途の界面活性剤も)使用できる。
【0055】
また、界面活性剤は、市販品であってもよく、このような市販品には、用途等に応じて、他の成分(鉱油、シリカなど)又はその部位を含有してもよい。
【0056】
界面活性剤は、1種で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0057】
本発明では、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤から選択された少なくとも1種の界面活性剤を好適に使用してもよく、特に、少なくともノニオン性界面活性剤[例えば、エーテル型(アルキルエーテル型など)、ポリプロピレングリコールエーテル型など]を使用してもよい。ノニオン性の界面活性剤は、PVAと反応や吸着しない又はしにくいためか、少量であっても、優れたPVA樹脂の溶解性ないし分散性を得やすい。
【0058】
界面活性剤の含有量(割合、使用量)としては、特に限定されないが、ポリビニルアルコール樹脂(全体)に対して、0.0001質量%以上(例えば、0.0002質量%以上)程度の範囲から選択してもよく、例えば、0.0005質量%以上(例えば、0.0007質量%)、好ましくは0.001質量%以上(例えば、0.002質量%以上)、さらに好ましくは0.003質量%以上(例えば、0.004質量%以上)であってもよく、0.005質量%以上(例えば、0.006質量%以上)、0.007質量%以上(例えば、0.008質量%以上)、0.01質量%以上などであってもよい。
【0059】
界面活性剤の含有量は、ポリビニルアルコール樹脂(全体)に対して、20質量%以下(例えば、18質量%以下)、15質量%以下、10質量%以下、8質量%以下、7質量%以下、6質量%以下、5質量%以下、4質量%以下、3.5質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1.5質量%以下、1.2質量%以下、1質量%以下、0.8質量%以下などであってもよい。
【0060】
特に、界面活性剤の含有量は、PVA樹脂(全体)に対して、0.5質量%以下(例えば、0.001~0.5質量%)、好ましくは0.1質量%以下(例えば、0.001~0.1質量%)、さらに好ましくは0.05質量%以下(例えば、0.0005~0.05質量%)、特に0.01質量%以下(例えば、0.001~0.01質量%、0.002~0.01質量%、0.005~0.01質量%など)程度であってもよい。
【0061】
本発明では、上記のように、比較的少量であっても、溶解性ないし分散性を実現できるため、PVA樹脂の成分組成や物性をほとんど変えることがなく、いずれの用途でも全く影響なく使用しうるため好ましい。
【0062】
なお、上記界面活性剤の含有量「X質量%」は、ポリビニルアルコール樹脂100質量部に対する割合が「X質量部」と同じであってもよい。例えば、界面活性剤の含有量「0.1質量%」は、ポリビニルアルコール樹脂(ベースとなるポリビニルアルコール樹脂)100質量部に対して「0.1質量部」と同じであってもよい。
【0063】
なお、本発明のPVA樹脂(組成物)において、界面活性剤の含有形態は、特に限定されないが、特に、ベースとなるPVA樹脂(特に粒子状のPVA樹脂)の少なくとも表面(又は表層)に界面活性剤が存在する形態であってもよい。
【0064】
PVA樹脂(又はベースとなるPVA樹脂)は、通常、粒子状であってもよい。粒子状のPVA樹脂(PVA樹脂粒子)は、特に限定されず、微粉、顆粒、粉末、粗粒などのどのような形状、粒子の大きさのものも使用できる。
【0065】
特に、PVA樹脂粒子は、10メッシュ(♯10)以下(例えば、10メッシュ、14メッシュ、20メッシュ、30メッシュ、32メッシュ、42メッシュ、50メッシュ、60メッシュ、70メッシュ、100メッシュなど)の篩を通過する程度の樹脂粒子(又は粒径10メッシュ以下の樹脂粒子)であってもよい。このような細かい粒子であれば、より一層、分散性ないし溶解性向上効果は顕著となり、ひいては、溶解時間の短縮効果が顕著となる。
なお、PVA樹脂粒子が細かいほど、界面活性剤の添加量を大きくすることで、より一層分散性ないし溶解性が向上しやすいようである。
【0066】
(製造方法)
本発明のPVA樹脂(界面活性剤を含有するPVA樹脂)は、PVA樹脂に界面活性剤を含有させる(特に、PVA樹脂(粒子)の表面又は表層に界面活性剤が存在するように含有させる)ことで製造できる。
【0067】
PVA樹脂は、市販品を使用してもよく、合成したものを用いてもよい。
【0068】
PVA樹脂は、種々の重合方式(溶液、塊状、懸濁、乳化重合等)により、酢酸ビニルなどのビニルエステル類を重合して得られるビニルエステル重合体(共重合体を含む)を鹸化して得ることができる。
【0069】
なお、重合若しくは共重合に使用する重合触媒(重合開始剤)としては、重合方式などに応じて選択でき、例えば、2-エチルヘキシルペルオキシジカーボネート(Trigonox EHP)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、t-ブチルペルオキシネオデカノエート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルペルオキシジカーボネート、ジ-n-ブチルペルオキシジカーボネート、ジ-セチルペルオキシジカーボネート、ジ-s-ブチルペルオキシジカーボネートのようなフリーラジカルを生成できる開始剤であればいずれも使用可能である。
【0070】
また、得られたビニルエステル重合体の一部または全てを鹸化する工程では、例えば、鹸化触媒の存在下、直接鹸化する方法や有機溶媒中でアルコーリシスする方法がある。
鹸化触媒としては、例えば、苛性ソーダ、苛性カリ、ナトリウムアルコラート、アミン類及び炭酸ソーダ等のアルカリ触媒や、硫酸、燐酸及び塩酸等の酸触媒が挙げられるが、好ましくはアルカリ触媒、より好ましくは苛性ソーダが鹸化速度も速く生産性に優れている点で好適である。
【0071】
有機溶媒としては、アルコールが好ましい。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール等が挙げられるが、中でも工業的にはメタノールが一般的には使用される。
【0072】
ビニルエステル重合体を鹸化する方法は特に制限はなく、例えば、ビニルエステル重合体の溶液に鹸化触媒を添加混合する方法、ビニルエステル重合体が分散している系に鹸化触媒を添加混合する方法等が挙げられ、いずれの方法においても無水系又は含水系で鹸化反応させることができる。鹸化反応はエステルの一部だけを鹸化することも全て完全に鹸化することもできる。更には、既知の方法で鹸化溶剤中にベンゼンや他の溶剤を添加しておいてビニルアルコール単位をブロック状またはランダム状に配置させることも可能である。
【0073】
ビニルエステル重合体の一部または全てのビニルエステルを鹸化したビニルエステル重合体の鹸化物は、例えば、必要に応じて中和、析出、洗浄、濾過等の後処理を経た後、加熱、減圧等の方法により乾燥されて粉粒状で得てもよい。
【0074】
工業的に主として実施されているPVAの製造方法は、例えば、以下の方法が挙げられる。
まず、酢酸ビニルまたは酢酸ビニルと各種単量体を、メタノール等の低級アルコール溶媒中でラジカル重合開始剤を用いて溶液重合し、ポリ酢酸ビニル共重合体の重合反応溶液を得る。得られた重合反応溶液を、メタノール等の低級アルコールの蒸気と接触させて未反応の酢酸ビニルや単量体を除去する。次いで、このモノマーを除去(脱モノマー)した重合反応溶液に苛性ソーダ等の鹸化触媒を添加混合することで固液が混合したスラリー状の鹸化物を得て、過剰の苛性ソーダを中和する。
このPVAとメタノールと鹸化反応の副生成物(酢酸メチル、酢酸ナトリウムなど)を含むスラリー状の鹸化物を切断、粉砕して遠心分離装置などで固液を分離濾過して固形分濃度の高い分離ケーキとする。
この分離ケーキを加熱乾燥することで粉状または粒状のPVA製品が得られる。
【0075】
PVA樹脂に界面活性剤を含有させる方法としては、特に限定されないが、例えば、PVA樹脂(特に粒子状のPVA樹脂)と界面活性剤とを混合する方法が挙げられる。混合のタイミングは特に限定されず、例えば、分離ケーキ(乾燥前の分離ケーキ)で界面活性剤を混合(さらには乾燥)してもよく、乾燥後(例えば、乾燥粉砕後)のPVA樹脂(特に粒子状のPVA樹脂)と界面活性剤とを混合してもよい。
【0076】
混合方法としては、特に限定されないが、例えば、PVA樹脂(粒子)の表面(又は表層)に界面活性剤を付着させる又は塗布(塗工)する方法などが挙げられる。
【0077】
混合(又は塗布)において、界面活性剤はそのまま使用してもよく、界面活性剤と溶媒との混合液(特に界面活性剤の溶液)を用いて行ってもよい。
【0078】
溶媒としては、有機溶媒[例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノールなど)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチルなど)、ジメチルスルホキシド(DMSO)など]、水などが挙げられる。これらの溶媒は、1種で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0079】
水を含む溶媒は、他の溶媒(メタノール、エタノール、酢酸メチル、酢酸エチル、DMSOなどの前記例示の有機溶媒)を含んでいてもよい。
【0080】
特に、溶媒として、少なくとも水とアルコール類(特に少なくともメタノールを含むアルコール類)との混合溶媒を使用するのが好ましい。このような溶媒は、界面活性剤の種類にもよるが、高濃度の溶液を調製しやすく、好適である。
【0081】
また、混合液は、その他の成分又は添加剤(例えば、酢酸ナトリウム、PVA樹脂など)を含んでいてもよい。
【0082】
混合液(溶液)において、界面活性剤の濃度は、特に限定されず、例えば、1~90質量%、好ましくは3~80質量%、さらに好ましくは5~70質量%などであってもよい。PVA粒子の造粒を抑えつつ、均一な塗布を行うなどの観点から、界面活性剤の濃度を比較的高濃度(例えば、10質量%以上、30質量%以上、50質量%以上)としてもよい。
【0083】
PVA樹脂と界面活性剤との混合に使用する設備(混合手段)としては、PVA樹脂(粒子)に界面活性剤を混合できる設備であれば特に制限はなく、例えば、一般的なブレンド設備としては、ニーダー式混合機、ナウターミキサー、ドラムブレンダー等の粉体用のブレンダー、ミキサーが使用できる。さらには、ロータリーキルン、各種粉砕機、解砕機、スクリューコンベアやロータリーバルブ、空送ラインなどの本来はブレンダーではなく、粒度調整や乾燥、粉体輸送などの目的で使用される装置や設備に、界面活性剤をポンプなどで一定量連続的に添加するような設備でもよい。
【0084】
混合温度は、特に限定されず、例えば、常温下で行ってもよく、加温(高温)下で行ってもよい。
【0085】
加温下で混合する例としては、例えば、PVA製造工程の乾燥機中で40~120℃程度の高温のPVAに界面活性剤を混合(例えば、噴霧又は滴下して混合)する例などが挙げられる。
【0086】
また、PVA製造工程で界面活性剤を添加混合してもよい。すなわち、PVA樹脂(粒子)表面に界面活性剤がコートされるように添加してもよい。
【0087】
混合後のPVA樹脂(粒子)は、乾燥処理してもよく、乾燥処理しなくてもよい。例えば、界面活性剤の濃度が高濃度であり、また混合量も少ない場合、PVA樹脂に含まれる溶媒(特に水やメタノール)の量はごく僅かで有り、乾燥処理しなくても、そのまま使用しうる。
【実施例0088】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0089】
(実施例1)
PVA(日本酢ビ・ポバール(株)製、品種名J-ポバール JP-18:揮発分3.7%、酢酸ナトリウム0.5質量%、酢酸ビニルを重合し、鹸化したPVA、重合度1810、鹸化度88.05mol%、4%水溶液粘度28.5mPa・s)を#14以下の粒度に粉砕した粒子100gと、界面活性剤[サンノプコ製、SNデフォーマー444、ノニオン系界面活性剤)/水/メタノール(質量比=50/25/25)を溶解して調製した界面活性剤50質量%溶液0.005g(界面活性剤純分で0.0025g)をポリ瓶に入れて密栓してポリ瓶を振り、界面活性剤でPVA粒子表面を塗工したPVA粒子を調製した(界面活性剤として、0.0025質量%対PVA添加)。
なお、得られた粒子は、乾燥しなくても粒子がさらさらな状態を保持していた。
【0090】
そして、500ccの硬質硝子製ビーカーに405gの50℃温水を入れて、長さ20mmの2枚羽根のプロペラ撹拌翼を300rpmで回転させて撹拌しながら、上記で調製したPVA粒子45gを一気に投入する分散試験を行ったところ、50℃温水中で均一に分散し、ママコやダンゴ状の塊状物は全く発生しなかった。
【0091】
(参考例1)
実施例1において、界面活性剤50質量%溶液0.005gに代えて、水0.005gを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、PVA粒子を調製し、分散試験を行ったところ、15~30mm径の大きなママコが出来、また、長時間撹拌を続けても完全に溶解することは出来ずママコが残った。
【0092】
(参考例2)
実施例1において、界面活性剤50質量%溶液0.005gに代えて、水/メタノール(質量比=50/50)0.005gを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、PVA粒子を調製した。
得られたPVA粒子について、実施例1と同様の分散試験を行ったところ、15~30mm径の大きなママコが多数出来、また、長時間撹拌を続けても完全に溶解することは出来ずママコが残った。
【0093】
(実施例2~6)
実施例1において、界面活性剤50質量%溶液0.005gの添加量を変更し、界面活性剤の添加量を下記表のようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、PVA粒子を調製し、分散試験を行った。
【0094】
界面活性剤の添加量及び分散試験の結果を合わせて下記表に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
(実施例7~9及び参考例3~4)
実施例1において、界面活性剤を下記表に示す添加剤に変更したこと以外は同様にして、PVA粒子を調製し、分散試験を行った。
【0097】
添加剤の種類、分散試験の結果及び備考を合わせて下記表に示す。
【0098】
【表2】
【0099】
(実施例10~12)
実施例1において、界面活性剤50質量%溶液[水/メタノール=50/50(質量比)混合溶液]を、下記表に示す界面活性剤溶液に変更したこと以外は、実施例3(添加量0.0025質量%対PVA)と同様にして、PVA粒子を調製し、分散試験を行った。
【0100】
界面活性剤溶液の種類、添加量及び分散試験の結果を合わせて下記表に示す。
【0101】
【表3】
【0102】
(実施例13)
塩ビ懸濁重合用PVA(日本酢ビ・ポバール(株)製、品種名J-ポバール JL-25E:揮発分4.1%、酢酸ナトリウム0.2質量%、酢酸ビニルを重合し、鹸化したPVA、重合度2560、鹸化度80.26mol%、4%水溶液粘度46.5mPa・s)の#20粉砕粒子1000gを、小型卓上ニーダー型混合機に入れて撹拌しながら、界面活性剤(サンノプコ製、SNデフォーマー777、ノニオン系界面活性剤)0.01gを添加し、PVA粒子表面を界面活性剤で塗工したPVA粒子を調製した(純分として、0.001質量%対PVA添加)。
【0103】
そして、500ccの硬質硝子製ビーカーに405gの20℃の水を入れて、長さ20mmの2枚羽根のプロペラ撹拌翼を300rpmで回転させて撹拌しながら、上記で調製したPVA粒子45gを一気に投入する分散試験を行ったところ、20℃水中で均一に分散し、ママコやダンゴ状の塊状物は全く発生しなかった。
【0104】
一方、同様の分散試験を、界面活性剤を塗工していない元の#20粉砕粒子を用いて行ったところ、全体が大きなママコの塊で水面に浮いて、その後、24時間以上撹拌を続けても最後まで塊状物は残り完全に溶解することはできなかった。
【0105】
(実施例14)
マレイン酸変性PVA(揮発分4.6%、酢酸ナトリウム2.1質量%、酢酸ビニル/マレイン酸エステルを重合し、鹸化したPVA、鹸化度89.14mol%、4%水溶液粘度29.2mPa・s、マレイン酸変性度3.8mol%)の#150粉砕粒子100gと、界面活性剤(サンノプコ製、SNデフォーマー1312、シリコーン系消泡剤)0.02gをポリ袋に入れて封をして手で混合して消泡剤で粒子表面を塗工したPVA粒子を調製した。
【0106】
そして、500ccの硬質硝子製ビーカーに405gの50℃温水を入れて、長さ20mmの2枚羽根のプロペラ撹拌翼を300rpmで回転させて撹拌しながら、上記で調整したPVA粒子45gを一気に投入する分散試験を行ったところ、50℃温水中で均一に分散し、ママコやダンゴ状の塊状物は全く発生せずに10分間撹拌するだけで加熱することなく完全に溶解した均一な水溶液を得ることが出来た。
【0107】
一方、同様の分散試験を、界面活性剤を塗工していない#150粉砕粒子を用いて行ったところ、10~30mm径の大きなママコが出来て、加熱して撹拌を続けても最後まで完全に溶解することが出来なかった。
【0108】
(実施例15)
PVA(日本酢ビ・ポバール(株)製、品種名J-ポバール JP-24S:揮発分3.5%、酢酸ナトリウム0.5質量%、酢酸ビニルを重合し、鹸化したPVA、重合度2450、鹸化度88.15mol%、4%水溶液粘度46.2mPa・s)の#100pass粉砕粒子100gと、界面活性剤(サンノプコ製、SNデフォーマー485、ポリエーテル系消泡剤)0.06gをポリ袋に入れて封をして手で混合して界面活性剤で粒子表面を塗工したPVAを調製した(界面活性剤として、0.06質量%対PVA添加)。
【0109】
そして、500ccの硬質硝子製ビーカーに405gの60℃熱水を入れて、長さ20mmの2枚羽根のプロペラ撹拌翼を300rpmで回転させて撹拌しながら、上記で調整したPVA粒子45gを一気に投入する分散試験を行ったところ、60℃熱水中で均一に分散し、ママコやダンゴ状の塊状物は全く発生しなかった。
【0110】
一方、同様の分散試験を、界面活性剤を塗工していない#100pass粉砕粒子を用いて行ったところ、全体が大きなママコとなって長時間撹拌を続けても全く溶解することが出来なかった。
【0111】
(実施例16)
PVA(日本酢ビ・ポバール(株)製、品種名J-ポバール JC-40:揮発分3.8%、酢酸ナトリウム0.2質量%、酢酸ビニルを重合し、鹸化することで得られたPVA、重合度4120、鹸化度99.51mol%、4%水溶液粘度235mPa・s)の#14粉砕粒子100kgをスクリューコンベアに入れて、界面活性剤としてのグリセリン脂肪酸エステル/水(質量比=25/75)25質量%水溶液200gを連続的に滴下しながら混合して界面活性剤を塗布したPVA粒子を調製した(界面活性剤純分として、0.05質量%対PVA添加)。
【0112】
そして、100Lの溶解槽に80℃の熱水を80kg入れて、3枚羽根のプロペラ撹拌翼を150rpmで回転させて撹拌しながら、上記で調製したPVA粒子20kgを一気に投入する分散試験を行ったところ、80℃熱水中で均一に分散し、ママコやダンゴ状の塊状物は全く発生せず、更に95℃まで昇温して均質な水溶液が得られた。
【0113】
一方、同様の分散試験を、界面活性剤を塗工していない#14粉砕粒子を用いて行ったところ、5~10mm径のダンゴ状の塊状物が多数出来て、95℃に加熱して5時間撹拌しても0.5~3mmの極小さな未溶解のダンゴ粒子が残り、この水溶液を流延し乾燥しても未溶解のダンゴ粒子のために、平滑且つ均質な皮膜を得ることが出来なかった。
【0114】
(参考例5)
参考例1において、405gの50℃温水とともに、界面活性剤50質量%溶液0.0005g(界面活性剤純分で0.0025g)を入れたこと以外は参考例1と同様にして、分散試験を行ったところ、15~30mm径の大きなママコが出来、また、長時間撹拌を続けても完全に溶解することは出来ずママコが残った。
すなわち、PVA粒子に界面活性剤を混合せず、水との混合時に界面活性剤を混合しても、溶解性ないし分散性を改善できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明によれば、界面活性剤を含む新規なPVA樹脂を提供できる。このようなPVA樹脂は、水等に対する分散性ないし溶解性に優れており、各種用途に適用しうる。
特に、本発明では、界面活性剤の添加量を比較的少なくても、十分な効果を奏しうる。そのため、本発明では、実質的にPVA樹脂と同等の材料でありながら、溶解性ないし分散性に優れたものを提供することもでき、非常に有用性が高い。