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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095977
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】電子ペン
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/03 20060101AFI20220621BHJP
   G06F 3/046 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
G06F3/03 400A
G06F3/046 A
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071235
(22)【出願日】2022-04-25
(62)【分割の表示】P 2018115720の分割
【原出願日】2018-01-09
(31)【優先権主張番号】P 2017058815
(32)【優先日】2017-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】山下 滋
(72)【発明者】
【氏名】神山 良二
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅充
(57)【要約】
【課題】筆圧検出部と、回路の回路素子との間の電気的な接続の作業工程を削減する。
【解決手段】筒状の筐体内に電子ペン本体部を収納すると共に、ノックカム機構部により、電子ペン本体部のペン先側を、筐体の軸心方向の一端側の開口から出し入れするようにする電子ペンである。電子ペン本体部は、芯体に印加される圧力を検出する筆圧検出部と、軸心方向に延在可能な形状のフレキシブル基板が用いられた回路基板と、筆圧検出部と回路基板とを保持するホルダー部とを備える。回路基板は、筆圧検出部載置部と、回路載置部と、筆圧検出部載置部の部品と回路載置部の回路素子とを電気的に接続する線路パターンが形成されている線路部とが軸心方向に並ぶように形成されている。線路部の部分でフレキシブル基板が屈曲されて、筆圧検出部が、芯体に印加される軸芯方向の圧力を受けることができるように、軸心方向に垂直な方向となる状態でホルダー部に保持される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の筐体内に電子ペン本体部を収納すると共に、ノックカム機構部により、前記電子ペン本体部のペン先側を、前記筐体の軸心方向の一端側の開口から出し入れするようにする電子ペンであって、
前記電子ペン本体部は、
前記軸心方向の一端側の前記ペン先側に配置される芯体と、
前記芯体に印加される圧力を検出する筆圧検出部と、
前記軸心方向に延在可能な形状とされたフレキシブル基板が用いられた回路基板と、
前記筆圧検出部と前記回路基板とを保持して、前記軸心方向に延在するように収納されるホルダー部と、
を備え、
前記回路基板は、前記筆圧検出部の少なくとも一部の部品が載置されて固定されている筆圧検出部載置部と、所定の回路が前記フレキシブル基板上に形成されている回路載置部と、前記筆圧検出部載置部と前記回路載置部との間に形成され、前記筆圧検出部の部品と前記回路載置部の回路素子との間を電気的に接続する線路パターンが形成されている線路部とが、前記筆圧検出部載置部が前記芯体側となるような状態で前記軸心方向に並ぶように形成されており、
前記回路基板の前記回路載置部は、前記ホルダー部に保持されると共に、前記回路基板の前記筆圧検出部載置部は、前記線路部の部分で前記フレキシブル基板が屈曲されて、前記軸心方向に垂直な方向となる状態で前記ホルダー部に保持されて、前記筆圧検出部が、前記芯体に印加される軸方向の圧力を受けることが可能に構成され、
前記ホルダー部は、前記筆圧検出部を前記軸心方向に垂直な方向の状態で保持するための収納部を備え、
前記収納部は、前記軸心方向に直交する方向を向く開口を備え、前記回路基板の前記筆圧検出部載置部に載置されている前記筆圧検出部の少なくとも一部が、前記開口を通じて前記収納部に差し込まれて挿入される
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項2】
前記回路基板において、前記フレキシブル基板の前記線路部の前記軸心方向に直交する方向の幅は、前記回路載置部よりも細く構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項3】
前記回路基板の前記筆圧検出部載置部と前記回路載置部とは、前記フレキシブル基板の同一の面側に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項4】
前記回路基板は、両面テープにより、前記ホルダー部に固定される
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項5】
前記筆圧検出部は、前記芯体に印加される圧力を静電容量の変化として検出するMEMS(Micro Electro Mechanical System)素子を用いた単一部品からなる
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項6】
前記筆圧検出部は、誘電体と、前記誘電体を挟んで互いに対向する2個の電極部とを備え、前記芯体に印加される圧力により前記2個の電極部の一方の電極部と前記誘電体との接触面積が変化し、前記接触面積に応じて静電容量を可変するものであり、
前記回路基板の前記筆圧検出部載置部には、前記2個の電極部の他方の電極部が載置されて固定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項7】
前記電子ペン本体部は、
前記芯体に印加される軸心方向の圧力を前記筆圧検出部に伝達するための伝達部材を備えると共に、
前記伝達部材を、前記筆圧検出部側に常時弾性的に変位させる弾性変位部材を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項8】
前記電子ペン本体部は、
前記芯体側には、信号送信用部材を備え、
前記回路基板には、前記信号送信用部材との接続部が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項9】
前記信号送信用部材は、前記芯体を挿通する貫通孔を有する磁性体に巻回されたコイルを備え、前記回路基板の前記回路載置部の前記所定の回路は、前記コイルと共振回路を構成するキャパシタを含む
ことを特徴とする請求項8に記載の電子ペン。
【請求項10】
前記信号送信用部材は、前記芯体側に設けられた導体で構成され、前記回路基板の前記回路載置部の前記所定の回路は、前記導体に送信信号を供給する信号発信回路を含む
ことを特徴とする請求項8に記載の電子ペン。
【請求項11】
前記回路基板の前記回路載置部に前記接続部が設けられていると共に、前記ホルダー部には、前記信号送信用部材と、前記接続部とを電気的に接続するための導体パターンが施されている
ことを特徴とする請求項8に記載の電子ペン。
【請求項12】
前記回路基板の前記フレキシブル基板は、前記筆圧検出部載置部から延伸する延伸部を備え、
前記延伸部には、前記信号送信用部材との接続部が設けられている
ことを特徴とする請求項8に記載の電子ペン。
【請求項13】
前記ホルダー部には、前記延伸部を外部に露出させるための開口部が形成されており、
前記開口部から露出している前記延伸部の前記接続部に、前記信号送信用部材が電気的に接続される
ことを特徴とする請求項12に記載の電子ペン。
【請求項14】
前記磁性体の前記貫通孔にはパイプ部材が嵌合されており、
前記芯体は、前記パイプ部材の中空部を摺動自在に挿通される
ことを特徴とする請求項9に記載の電子ペン。
【請求項15】
前記電子ペン本体部は、筒状体からなる電子ペン本体部筐体を備え、
前記電子ペン本体部筐体部は、前記筒状体の中空部内に、前記ホルダーの前記回路基板を保持している部分を収納すると共に、前記回路基板の前記筆圧検出部載置部を挿入する開口を閉塞するような状態で、前記ホルダー部を収納する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項16】
前記電子ペン本体部は、
前記芯体側に、信号送信用部材を備え、
前記信号送信用部材が、前記電子ペン本体部筐体部に収納された前記ホルダー部の前記芯体側に嵌合されることで、電子ペンカートリッジの構成とされる
ことを特徴とする請求項15に記載の電子ペン。
【請求項17】
前記電子ペンカートリッジの構成とされた前記電子ペン本体部は、前記筐体に対して着脱可能とされている
ことを特徴とする請求項16に記載の電子ペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、位置検出装置と共に使用され、芯体に印加された圧力(筆圧)を検出する筆圧検出機能を有する電子ペンに関する。
【背景技術】
【0002】
電子ペンは、従来から、芯体の先端部(ペン先)に印加された圧力(筆圧)を検出して、位置検出装置に伝達する機能を備えるように構成されている。この場合に、筆圧を検出する方法の一例として、コンデンサの静電容量を筆圧に応じて変化させる機構を用いる筆圧検出部の構成が知られている(例えば特許文献1(特開2011-186803号公報)参照)。
【0003】
この特許文献1に記載の筆圧検出部は、誘電体と、この誘電体を挟んで互いに対向する第1の電極及び第2の電極とを備え、芯体に印加される圧力により2個の電極の一方の電極、例えば第1の電極と誘電体との接触面積が変化するように構成される。この構成によれば、第1の電極と第2の電極との間の静電容量は、芯体に印加される圧力に応じて変化する、第1の電極部と誘電体との接触面積に応じて変化するので、その静電容量を検出することにより、筆圧を検出することができる。
【0004】
この筆圧検出部は、従来、複数個の部品の全てを、筒状のホルダーの中空部内に、当該ホルダーの軸芯方向の一方及び他方の開口から挿入して配置することにより製造される。このため、筆圧検出部を構成する複数の部品の全てについて、軸芯方向および軸芯方向に直交する方向の位置合わせを考慮しながら、ホルダーの中空部内に、筆圧検出部を構成する複数の部品の全てを挿入して配置する必要がある。しかしながら、軸芯方向および軸芯方向に直交する方向の位置合わせを確実にすることが難しいという問題があり、そのため、筆圧検出部を製造する工程においては、作業に困難性を伴うと共に、工数が多くなり、量産には向かないという問題があった。
【0005】
例えば特許文献2(特開2014-206775号公報)には、この問題を解決した電子ペンが提供されている。この特許文献2に開示されている電子ペンは、芯体の先端に対して印加される押圧力を検出するための筆圧検出回路用の回路素子が設けられたプリント基板を、プリント基板載置部に載置して係止すると共に、筆圧検出用部品を保持するための保持部を備えるホルダー部を備える。そして、ホルダー部の保持部は、筒状形状とされると共に、軸心方向に直交する方向を向く開口を備えていて、筆圧検出用部品の少なくとも一部が、その開口から挿入される構成である。この構成の特許文献2の電子ペンは、筆圧検出部を製造する工程における作業の困難性を軽減することができ、量産に向くという効果を奏する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-186803号公報
【特許文献1】特開2014-206775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2の電子ペンにおいても、筆圧検出部の第1の電極と第2の電極と、プリント基板の筆圧検出回路用の回路素子との間は、例えば半田付けにより電気的に接続されており、別工程として必要であった。


この発明は、以上の点に鑑み、筆圧検出部と筆圧検出回路との電気的な接続を含めて、できるだけ工程数を削減することができるようにした電子ペンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、
筒状の筐体内に電子ペン本体部を収納すると共に、ノックカム機構部により、前記電子ペン本体部のペン先側を、前記筐体の軸心方向の一端側の開口から出し入れするようにする電子ペンであって、
前記電子ペン本体部は、
前記軸心方向の一端側の前記ペン先側に配置される芯体と、
前記芯体に印加される圧力を検出する筆圧検出部と、
前記軸心方向に延在可能な形状とされたフレキシブル基板が用いられた回路基板と、
前記筆圧検出部と前記回路基板とを保持して、前記軸心方向に延在するように収納されるホルダー部と、
を備え、
前記回路基板は、前記筆圧検出部の少なくとも一部の部品が載置されて固定されている筆圧検出部載置部と、所定の回路が前記フレキシブル基板上に形成されている回路載置部と、前記筆圧検出部載置部と前記回路載置部との間に形成され、前記筆圧検出部の部品と前記回路載置部の回路素子との間を電気的に接続する線路パターンが形成されている線路部とが、前記筆圧検出部載置部が前記芯体側となるような状態で前記軸心方向に並ぶように形成されており、
前記回路基板の前記回路載置部は、前記ホルダー部に保持されると共に、前記回路基板の前記筆圧検出部載置部は、前記線路部の部分で前記フレキシブル基板が屈曲されて、前記軸心方向に垂直な方向となる状態で前記ホルダー部に保持されて、前記筆圧検出部が、前記芯体に印加される軸方向の圧力を受けることが可能に構成され、
前記ホルダー部は、前記筆圧検出部を前記軸心方向に垂直な方向の状態で保持するための収納部を備え、
前記収納部は、前記軸心方向に直交する方向を向く開口を備え、前記回路基板の前記筆圧検出部載置部に載置されている前記筆圧検出部の少なくとも一部が、前記開口を通じて前記収納部に差し込まれて挿入される
ことを特徴とする電子ペンを提供する。
【0009】
上述の構成の電子ペンにおいては、ノックカム機構部により筐体の開口からペン先側が出し入れされる電子ペン本体部を備える。電子ペン本体部は、筆圧検出部と、回路基板と、ホルダー部とを備える。
【0010】
回路基板は、フレキシブル基板が用いられると共に、例えば筆圧検出回路を含む所定の回路が形成される回路載置部と、少なくとも筆圧検出部の一部の部品が載置されて固定されている筆圧検出部載置部と、回路載置部と筆圧検出部載置部との間を電気的に接続する線路パターンが形成されている線路部とを備える。
【0011】
したがって、筆圧検出部の筆圧検出部載置部に載置されて固定されている部品と、回路載置部の回路素子との間の電気的な接続は、回路基板において予めなされた状態となっている。このため、筆圧検出部の筆圧検出部載置部に載置されて固定されている部品と、回路載置部の回路素子との間の電気的な接続の作業工程は不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明による電子ペンの第1の実施形態の一例を説明するための図である。
図2】この発明による電子ペンの第1の実施形態の電子ペン本体部の一例を説明するための図である。
図3】この発明による電子ペンの第1の実施形態の電子ペン本体部の一例の一部拡大図である。
図4】この発明による電子ペンの第1の実施形態の電子ペン本体部の一例の一部の分解斜視図である。
図5】この発明による電子ペンの第1の実施形態の電子ペン本体部の一例における回路基板及びホルダー部の例を説明するための図である。
図6】この発明による電子ペンの第1の実施形態の電子ペン本体部の一例における筆圧検出部の例を説明するための図である。
図7】この発明による電子ペンの第1の実施形態の電子ペン本体部の一例を説明するための図である。
図8】この発明による電子ペンの第1の実施形態の電子回路の例と、対応する位置検出装置の電子回路例を説明するための図である。
図9】この発明による電子ペンの第2の実施形態の電子ペン本体部の一例における回路基板及びホルダー部の例を説明するための図である。
図10】この発明による電子ペンの第2の実施形態の電子ペン本体部の一例の一部拡大図である。
図11】この発明による電子ペンの第2の実施形態の電子ペン本体部の他の一例の一部拡大図である。
図12】この発明による電子ペンの第3の実施形態の電子ペン本体部の一例の一部拡大図である。
図13】この発明による電子ペンの第4の実施形態の電子回路例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明による電子ペンの幾つかの実施形態を、図を参照しながら説明する。
【0014】
[第1の実施形態]
図1は、この発明による電子ペンの第1の実施形態の構成例を示す図であり、この例は、電磁誘導方式の電子ペンの場合である。この第1の実施形態の電子ペン1は、筒状の筐体2の中空部2a内に、電子ペン本体部3が収納され、ノックカム機構部10により、電子ペン本体部3のペン先側が、筐体2の長手方向の一端の開口2b側から出し入れされるノック式の構成を備える。この実施形態では、電子ペン本体部3は、カートリッジ式の構成とされ、筐体2に対して着脱可能とされている。
【0015】
図1(A)は、電子ペン本体部3の全体が筐体2の中空部2a内に収容されている状態を示し、図1(B)は、ノックカム機構部10により電子ペン本体部のペン先側が、筐体2の開口2bから突出した状態を示している。なお、図1の例では、電子ペン1の筐体2が透明の合成樹脂で構成されていて、その内部が透けて見える状態として示している。
【0016】
この実施形態の電子ペン1は、市販のノック式ボールペンと互換性が取れる構成とされている。
【0017】
筐体2及び当該筐体2内に設けられるノックカム機構部10は、周知の市販のノック式ボールペンと同一の構成とされると共に、寸法関係も同一に構成される。換言すれば、筐体2及びノックカム機構部10は、市販のノック式のボールペンの筐体及びノックカム機構部をそのまま用いることもできる。
【0018】
ノックカム機構部10は、図1に示すように、カム本体11と、ノック棒12と、回転子13とが組み合わされた周知の構成とされている。カム本体11は、筒状の筐体2の内壁面に形成されている。ノック棒12は、使用者のノック操作を受け付けることができるように、端部12aが、筐体2のペン先側とは反対側の開口2cから突出するようにされている。回転子13は、電子ペン本体部3のペン先側とは反対側の端部が嵌合される嵌合部13aを備える。
【0019】
図1(A)の状態において、ノック棒12の端部12aが押下されると、ノックカム機構部10により、電子ペン本体部3は、筐体2内において図1(B)の状態にロックされ、電子ペン本体部3のペン先側が、筐体2の開口2bから突出する状態になる。そして、この図1(B)の状態から、ノック棒12の端部12aが再度押下されると、ノックカム機構部10によりロック状態が解除され、復帰用バネ5により、電子ペン本体部3の筐体2内の位置は、図1(A)の状態に戻る。ノックカム機構部10の詳細な構成及びその動作は、周知であるので、ここでは、その説明を省略する。
【0020】
[電子ペン本体部3の実施形態]
図2は、電子ペン本体部3の構成例を、市販のノック式ボールペンの替え芯と比較して示す図である。すなわち、図2(A)は、市販のノック式ボールペンの替え芯6を示し、また、図2(B)は、この実施形態の電子ペン本体部3の構成例を示している。
【0021】
市販のノック式ボールペンの替え芯6は、図2(A)に示すように、ボールが先端に配設されているペン先部6aと、インク収納部6cとが、結合部6bで結合されて一体化された周知の構成を備える。結合部6bは、インク収納部6cと同じ径を有する。
【0022】
一方、この実施形態の電子ペン本体部3においては、図2(B)に示すように、芯体30と、信号送信用部材40と、後述するように、筆圧検出部を保持すると共に回路基板を保持するホルダー部50と、ホルダー部50に保持される筆圧検出部と回路基板とを収納して保護する機能を備えるカートリッジ筐体部材60と、カートリッジ筐体部材60の芯体側とは反対側に結合されて設けられる後端部材70とからなる。
【0023】
芯体30は、この例では比較的硬質で弾性を有する樹脂材料、例えばPOM(Polyoxymethylene)からなる棒状の部材であり、その径は、例えば1mm程度とされている。
【0024】
信号送信用部材40は、電磁誘導方式で位置検出装置と信号を送受信するための共振回路を構成するコイル41と、このコイル41が巻回された磁性体コア、この例ではフェライトコア42と、このフェライトコア42の貫通孔42aに嵌合固定されている芯パイプ部材43とからなる。
【0025】
ホルダー部50は、例えば樹脂材料で構成され、筆圧検出部を保持すると共に、信号送信用部材40のフェライトコア42と嵌合する筒状部51を備えると共に、図2では図示を省略する回路基板載置台部52(後述の図4参照)を備える。
【0026】
カートリッジ筐体部材60は、硬質の材料からなるパイプ形状の部材、この例では金属からなるパイプ形状の部材により構成され、筆圧検出部及び回路基板の電気的回路構成部分を保護する回路部保護部材を構成する。
【0027】
信号送信用部材40のフェライトコア42及び芯パイプ部材43の、軸心方向のペン先側とは反対側が、ホルダー部50の筒状部51に挿入嵌合されて、信号送信用部材40とホルダー部50とが軸心方向に結合される。また、ホルダー部50の回路基板載置台部52と筒状部51の一部とが、カートリッジ筐体部材60の中空部内に収納されるような状態で、カートリッジ筐体部材60とホルダー部50とが軸心方向に結合される。そして、軸心方向において、カートリッジ筐体部材60の信号送信用部材40との結合側とは反対側に後端部材70が結合される。電子ペン本体部3は、以上のように、信号送信用部材40とホルダー部50とカートリッジ筐体部材60と後端部材とが軸心方向に結合されることで、ボールペンの替え芯6と外形としては同一とされるカートリッジの構成とされる。
【0028】
なお、後端部材70は、軸心方向に分けられた2個の棒状部材71と72とが、軸心方向に互いに近づくように移動可能な状態で結合棒73を介して互いに結合されている。そして、コイルバネ74が結合棒73をその巻回空間内に収納するようにして、2個の棒状部材71と72との間に設けられていて、このコイルバネ74により、2個の棒状部材71と72とは、通常は、互いに離間するように弾性的に変位させられている。この後端部材70のコイルバネ74を含む構成部分は、電子ペン本体部3の芯体30側に衝撃荷重(衝撃圧力)が加わった時に、その衝撃荷重を吸収して電子ペン本体部3を保護するショックアブソーバ(衝撃吸収部材)の役割をする部分である。すなわち、電子ペン本体部3の軸心方向に衝撃荷重が印加されたときには、その衝撃荷重に対応してコイルバネ74が収縮して、その衝撃を吸収するように働く。衝撃荷重がなくなれば、後端部材70のコイルバネ74により、棒状部材71と72とは元の離間する状態に復帰する。
【0029】
図3(A)は、信号送信用部材40の全体、及び、当該信号送信用部材40と、ホルダー部50と、カートリッジ筐体部材60との結合部を拡大して示した図である。また、図3(B)は、図3(A)の縦断面図である。ただし、図3(B)では、説明の便宜上、芯パイプ部材43と芯体30とは破断せずに示している。
【0030】
この例のフェライトコア42は、例えば円柱状形状のフェライト材料に、芯パイプ部材43を挿通させるための、所定の径の軸心方向の貫通孔42a(図3(B)参照)が形成されたものとされている。このフェライトコア42のペン先側には、徐々に先細となるテーパー部42bが形成されている。このテーパー部42bにより、このフェライトコア42を通る磁束は、テーパー部42bで高密度となり、位置検出装置のセンサとの間の磁気的な結合を、テーパー部42bがない場合に比して、より強くすることができる。
【0031】
そして、この実施形態では、図3(A)に示すように、コイル41がフェライトコア42の軸心方向の全長に亘って巻回されるのではなく、部分的に巻回されている。すなわち、この例では、コイル41はフェライトコア42の全長の約1/2長の巻回長を有するものとされると共に、図3(A)に示すように、当該コイル41のフェライトコア42における巻回部は、フェライトコア42の、ホルダー部50の筒状部51との結合部側に偏った位置とされる。
【0032】
そして、フェライトコア42をその軸心方向に見たとき、そのペン先側の端部から、コイル41の巻回部の一方の端までの部分は、コイル41が巻回されない第1のコイル非巻回部42cとされ、また、コイル41の巻回部の他方の端から、ホルダー部50の筒状部51との結合部側の若干の部分も、コイル41が巻回されない第2のコイル非巻回部42dとされる。第2のコイル非巻回部42dの軸心方向の長さは、ホルダー部50の筒状部51と結合するための短い長さとされる(図3(B)参照)。一方、第1のコイル非巻回部42cの軸心方向の長さは、この例では、フェライトコア42の全長の約1/2長から、第2のコイル非巻回部42dの長さ分を差し引いた、比較的長いものとされる。
【0033】
芯パイプ部材43は、この例では、金属で構成されており、図3(B)に示すように、フェライトコア42の貫通孔42aの径より僅かに小さい外径を有するものとされ、フェライトコア42の貫通孔42aに挿通され、例えば接着材によりフェライトコア42と結合されて固定されて取り付けられている。
【0034】
図3(B)に示すように、芯パイプ部材43は、フェライトコア42の軸心方向の長さよりも長いものとされており、このため、フェライトコア42の貫通孔42aよりもペン先側及びペン先側とは反対側とに飛び出している突出部43a及び43bを備える。この例においては、図3(B)に示すように、芯パイプ部材43のペン先側とは反対側の突出部43bは、フェライトコア42の貫通孔42aの径よりも大きい外径を有するものとされ、この突出部43bにより、芯パイプ部材43がフェライトコア42の貫通孔42aから、ペン先側に抜け落ちないようにされている。
【0035】
そして、芯パイプ部材43の貫通孔43c(図3(B)の芯パイプ部材43の点線部参照)の径は、芯体30の径よりも若干大きいものとされており、芯体30は、この芯パイプ部材43の貫通孔43c内を軸芯方向に移動可能に挿通することができるように構成されている。芯体30の長さは、図3(C)に示すように、芯パイプ部材43の長さよりも長く選定されている。この例の場合に、芯体30の長さは、図3(B)に示すように、芯体30は、一方の端部30a(以下、ペン先部30aという)が、ペン先として、フェライトコア42及び芯パイプ部材43のペン先側から突出することが可能であると共に、フェライトコア42及び芯パイプ部材43のペン先側とは反対側にも突出することが可能な長さとされている。芯パイプ部材43は、貫通孔42aを備えるフェライトコア42を補強すると共に、フェライトコア42のペン先側よりも突出した突出部43aにより、フェライトコア42のペン先側に突出する細い芯体30が折れないように保護する機能を備える。
【0036】
そして、図3(B)に示すように、ホルダー部50の筒状部51は、フェライトコア42の第2のコイル非巻回部42dの径とほぼ同径の嵌合凹部51aと、後で詳述する筆圧検出部80を収納する収納空間を備える収納部51bと、嵌合凹部51aと収納部51bとの間を貫通し、内径が芯パイプ部材43のペン先側とは反対側の突出部43bの外径とほぼ同径の貫通孔51cとを備える。
【0037】
そして、信号送信用部材40のフェライトコア42の第2のコイル非巻回部42dが、嵌合凹部51aに嵌合し、芯パイプ部材43のペン先側とは反対側の突出部43bが貫通孔51cに嵌合する状態で、フェライトコア42が、ホルダー部50の筒状部51に結合される。このとき、図3(B)に示すように、筒状部51の貫通孔51cには、フェライトコア42及び芯パイプ部材43との結合に先立ち、図3(B)及び(C)に示す圧力伝達部材31と、コイルバネ32とが配設されている。
【0038】
圧力伝達部材31は、筆圧検出部80の圧力受部に芯体30のペン先部30aに印加される圧力(筆圧)を伝達するための部材であり、弾性を有する部材、この例では、弾性を有する樹脂により構成されている。この例の圧力伝達部材31は、図3(B)及び(C)に示すように、筒状部51の貫通孔51cの径よりも若干小さい径の押圧先端部31aと、コイルバネ32の内径よりも小さい径の柱状部31bを備える。そして、柱状部31bには、芯体30のペン先部30aとは反対側の端部30bを嵌合係止する嵌合凹部31c(図3(B)及び(C)の圧力伝達部材31の点線部参照)が形成されている。
【0039】
コイルバネ32の軸心方向の長さは、圧力伝達部材31の柱状部31bの軸心方向の長さよりも若干長く選定されている。圧力伝達部材31の柱状部31bの径は、コイルバネ32の内径よりも小さいので、コイルバネ32は、図3(B)に示すように、柱状部31bの周囲に配置されるような状態となる。
【0040】
そして、信号送信用部材40のフェライトコア42及び芯パイプ部材43をホルダー部50の筒状部51に嵌合させた状態では、図3(B)に示すように、筒状部51の貫通孔51c内において、コイルバネ32は、芯パイプ部材43のペン先側とは反対側の突出部43bの先端と、筆圧検出部80の圧力受付部との間に存在するので、このコイルバネ32の弾性により、圧力伝達部材31が常に筆圧検出部80の圧力受付部に当接するような状態とされる。
【0041】
そして、信号送信用部材40のフェライトコア42及び芯パイプ部材43をホルダー部50の筒状部51に嵌合させた後に、芯体30を、芯パイプ部材43の貫通孔43cを貫通させて、その端部30bを圧力伝達部材31の嵌合凹部31cに嵌合させる。なお、芯体30は、ペン先部30aを引っ張ることにより、圧力伝達部材31との嵌合から離脱させて引き抜くことが可能である。したがって、芯体30は、交換可能である。
【0042】
圧力伝達部材31の押圧先端部31aの先端と、筆圧検出部80の圧力受付部との間に空間が空いているときには、電子ペン1を位置検出装置の入力面に押し当てて筆記しようとする操作をする際に、筆圧を印加していないにも関わらず、ペン先部30aが、前記空間の分だけ引っ込んでしまい、違和感を使用者に与えるようになる。これに対して、この実施形態では、コイルバネ32の弾性により、圧力伝達部材31が常に筆圧検出部80の圧力受付部に当接するような状態とされて、前記空間が生じないようにされている。このため、電子ペン1を位置検出装置の入力面に押し当てて筆記する操作をする際に、ペン先部30aが、前記空間の分だけ引っ込んでしまう問題は生じない。これにより、ペン先部30aが、位置検出装置のセンサの入力面に触れた瞬間に筆圧を検出することができ、文字の入力に最適な書き心地となる。
【0043】
なお、この実施形態の電子ペンにおいては、図2(B)に示すように、電子ペン1の筐体2の開口2bから芯体30のペン先部30aが突出するときには、フェライトコア42の第1のコイル非巻回部42cのペン先側の一部と、芯パイプ部材43のペン先側の突出部43aも、筐体2の開口2bから突出する状態となる。
【0044】
次に、ホルダー部50と、このホルダー部50に保持される筆圧検出部80及び回路基板90と、カートリッジ筐体部材60の部分について、図4図7を用いて説明する。
【0045】
図4は、ホルダー部50と、このホルダー部50に保持される筆圧検出部80及び回路基板90と、カートリッジ筐体部材60とを分解して示した分解斜視図である。
【0046】
ホルダー部50は、軸心方向に細長で、ペン先側に上述した筒状部51を備えるボート状の部材であり、絶縁性材料、この例では、樹脂で構成されている。このホルダー部50には、筒状部51と一体に、回路基板90を載置する回路基板載置台部52が設けられている。回路基板載置台部52は、円柱をその中心線を含む切断面で切断することで得られるような平面部52aを備えている。すなわち、回路基板載置台部52は、この例では、断面が半円の柱状形状とされている。
【0047】
そして、回路基板載置台部52の平面部52aは、筒状部51の軸心方向を長手方向としており、その短辺方向の長さ(幅)は、カートリッジ筐体部材60の内径よりも若干短いものとされている。したがって、回路基板載置台部52は、カートリッジ筐体部材60内に収納されるように構成されている。
【0048】
ホルダー部50の筒状部51は、ペン先側においては、外径がカートリッジ筐体部材60の外径と同一とされ、回路基板載置台部52側においては、回路基板載置台部52の平面部52aの幅と同じ外径を有するものとされており、そのため、外径が異なる部分の境目の位置には、段部51dが形成されている。したがって、カートリッジ筐体部材60内に、ホルダー部50を挿入したとき、カートリッジ筐体部材60のペン先側の端面が段部51dに突き当たるようになり、その状態で、ホルダー部50とカートリッジ筐体部材60とが結合される。すなわち、カートリッジ筐体部材60内には、ホルダー部50の回路基板載置台部52と、筒状部51の内の回路基板載置台部52側の段部51dまでの部分が収納される。ホルダー部50の筒状部51の段部51dよりもペン先側の部分の外径は、カートリッジ筐体部材60の外径と同一であるので、ホルダー部50とカートリッジ筐体部材60とが結合された状態では、外観上は、段部51dは無くなって、ホルダー部50とカートリッジ筐体部材60とが1本の棒状体となるようになる。
【0049】
図5(A)は、ホルダー部50を、回路基板載置台部52の平面部52aを真上から見たときの図である。また、図5(B)は、ホルダー部50を、回路基板載置台部52の平面部52a側とは反対側から見た図である。
【0050】
図4及び図5(A)に示すように、ホルダー部50の筒状部51の段部51dよりも回路基板載置台部52側の部分には、前述した筆圧検出部80の収納部51bが設けられている。この収納部51bの部分に対応する、段部51dよりも回路基板載置台部52側の部分は、軸心方向に直交する方向を向く開口部51bmとされており、収納部51bには、筆圧検出部80が、この開口部51bmを通じて軸心方向に直交する方向から挿入することができるように構成されている。
【0051】
また、図4及び図5(A)に示すように、収納部51bの回路基板載置台部52側には、軸心方向に直交する壁面を備える壁部51eが設けられている。この壁部51eは、所定の厚さの板状体で構成されている。収納部51bは、後述する筆圧検出部80を当該収納部51bから外方に突出させることなく収納することができる大きさとされている。
【0052】
ホルダー部50の筒状部51の段部51dよりも回路基板載置台部52側の部分において、壁部51eよりも回路基板載置台部52側の部分には、図4及び図5(A)に示すような切欠き部51fが形成されている。そして、図3(B)、図4及び図5(A)に示すように、この例では、切欠き部51fの部分における筒状部51内には、回路基板載置台部52の平面部52aに連続して、壁部51eの部分まで延伸する平面状に構成されている。切欠き部51fの軸心方向に直交する方向の幅は、後述する回路基板90の線路部94の幅よりも広く選定されている。
【0053】
ホルダー部50がカートリッジ筐体部材60に収納されて両者が結合された状態では、収納部51bの開口部51bm及び切欠き部51fは、カートリッジ筐体部材60により覆われるようになる。
【0054】
そして、この実施形態においては、ホルダー部50の平面部52aとは反対側の面(曲面)には、図5(B)に示すように、コイル41の両端を、回路基板90に接続するための2個の端子部材53及び54(理解を容易にするために、図5(A)及び(B)では、斜線を付して示す)が、MID(Molded Interconnect Device)技術を用いた立体微細パターンとして、ペン先側から、段部51dを跨いで、回路基板載置台部52の中間部にまでに亘って、電子ペン1の軸心方向に形成されている。この結果、端子部材53及び54は、ホルダー部50に一体的に形成されている状態となる。なお、図4及び図5(A)に示すように、端子部材53及び54は、その端部53a及び54aが、回路基板載置台部52の平面部52aにも現れるように形成されている。
【0055】
そして、端子部材53及び54は、ホルダー部50の筒状部51の段部51dよりもペン先側にも延長されているので、カートリッジ筐体部材60とホルダー部50とが結合されたときにも、その段部51dよりもペン先側にも延長されている部分が外部に露出する状態となる。コイル41の両端は、この外部に露出している端子部材53及び54と例えば半田付けされることで電気的に接続される。
【0056】
次に、回路基板90について説明する。図5(C)及び図5(D)は、回路基板90を、導体パターンが形成されている面側から見た図であり、図5(C)は、回路基板90に筆圧検出部80を載置する前の状態を示し、図5(D)は、筆圧検出部80を、回路基板90に載置して電気的に接続し、固定した状態を示している。また、図5(E)は、ホルダー部50に、回路基板90を保持させた状態を示す図である。
【0057】
回路基板90は、細長形状のフレキシブル基板91が用いられて構成されている。回路基板90は、フレキシブル基板91の長手方向に沿って、図4図5(C)及び(D)に示すように、筆圧検出部80の検出出力から筆圧情報を生成するための回路素子を含むと共に、位置検出用信号を位置検出装置に送出するための回路(この例では共振回路)を構成する回路素子を含む回路載置部92と、筆圧検出部80を載置する筆圧検出部載置部93と、回路載置部92と筆圧検出部載置部93との間の線路部94とを備えるように構成されている。
【0058】
フレキシブル基板91の回路載置部92の部分の長手方向の長さはホルダー部50の回路基板載置台部52の平面部52aの長手方向の長さとほぼ等しく選定され、また、その幅(長手方向に直交する方向の長さ(以下同じ))は、この例でホルダー部50の回路基板載置台部52の幅と同一とされている。もっとも、回路載置部92の部分の幅は、回路基板載置台部52の幅よりも狭くてもよい。
【0059】
フレキシブル基板91の筆圧検出部載置部93の部分の幅は、この例では、回路載置部92の部分の幅よりも狭くされている。また、筆圧検出部載置部93の部分のフレキシブル基板91の長手方向の長さは、収納部51b内に全体が収納される長さとされている。フレキシブル基板91の筆圧検出部載置部93の部分は、この例では、後述する筆圧検出部80の形状に合わせて、正方形の形状とされている。なお、筆圧検出部載置部93の大きさは、筆圧検出部80の大きさと同じ、あるいは、若干大きくてもよい。
【0060】
フレキシブル基板91の線路部94の部分の長手方向の長さは、ホルダー部50の筒状部51の切欠き部51fの長さよりも若干長く選定されている。そして、フレキシブル基板91の線路部94の部分の幅は、筆圧検出部載置部93の幅よりも更に狭く、かつ、切欠き部51fの幅よりも細く、選定されていて、フレキシブル基板91が、この線路部94の部分で、より折り曲げ易くなるように構成されている。
【0061】
回路載置部92には、フレキシブル基板91の一面(表面)91a上に、図5(C)及び(D)に示すように、信号送信用部材40のコイル41と並列に接続されて共振回路を構成するキャパシタ95a,95b,95cが設けられていると共に、コイル41と、これらのキャパシタ95a,95b,95cとを並列に接続することにより共振回路を構成するようにするための導体パターン96a,96b等からなる回路用の導体パターンが設けられている。
【0062】
なお、フレキシブル基板91の回路載置部92において、ホルダー部50の回路基板載置台部52の平面部52aに載置したときに、端子部材53の端部53a及び端子部材54の端部54aと対応する部分は、図5(C)及び(D)に示すように、切欠き部92a及び92bが形成されている。そして、図5(C)及び(D)に示すように、導体パターン96a,96bは、この切欠き部92a,92bの部分にも形成されている。
【0063】
したがって、図5(E)に示すように、回路基板90を、ホルダー部50の回路基板載置台部52に載置したときには、端子部材53の端部53a及び端子部材54の端部54aと、導体パターン96a及び96bとが、互いに近接した位置となる。このため、端子部材53の端部53aと導体パターン96aとの間、及び端子部材54の端部54aと導体パターン96bとの間において、例えば半田付けにより容易に電気的に接続可能となる。
【0064】
線路部94には、図5(C)及び(D)に示すように、回路載置部92の導体パターン96a及び96bのそれぞれと電気的に接続されている線路パターン(導体パターン)941及び942が、筆圧検出部載置部93との間に形成されている。そして、筆圧検出部載置部93には、図5(C)に示すように、線路部94の線路パターン941及び942を介して回路載置部92の導体パターン96a及び96bとそれぞれ電気的に接続されている導電パッドパターン931及び932が形成されている。導電パッドパターン931及び932は、筆圧検出部80との電気的な接続用である。
【0065】
なお、図5(C)及び(D)の例においては、回路載置部92の導体パターン96bと線路部94の線路パターン942との間には、キャパシタ95dが接続されている。
【0066】
この例の回路基板90においては、フレキシブル基板91の一方の面側(表面側)にのみ、必要な導体パターンが形成され、その導体パターンを介して接続される回路素子が配置されている。そして、この例では、回路基板90のフレキシブル基板91の回路載置部92の他方の面側(裏面側)には、両面テープ(図5では図示は省略)が貼付されている。なお、この例では、フレキシブル基板91の筆圧検出部載置部93及び線路部94の裏面側には、両面テープは貼付されていないが、貼付してもよい。
【0067】
筆圧検出部80は、この例では、芯体に印加される圧力を静電容量の変化として検出するMEMS(Micro Electro Mechanical System)素子を用いてパッケージとして構成した単一部品からなる。
【0068】
図6は、この例の筆圧検出部80の構成を説明するための図であり、図6(A)は、その圧力受付部側からみた平面図、図6(B)は、図6(A)におけるA-A線断面図である。
【0069】
この例の筆圧検出部80は、MEMS技術により製作されている半導体デバイスとして構成される圧力感知チップ81を、例えば直方体の箱型のパッケージ82内に封止したものである。
【0070】
圧力感知チップ81は、印加される圧力を、静電容量の変化として検出するものである。この例の圧力感知チップ81は、縦×横×高さ=L1×L1×H1の直方体形状とされており、例えば、L1=1.5mm、H1=0.5mmとされている。
【0071】
この例の圧力感知チップ81は、第1の電極811と、第2の電極812と、第1の電極811及び第2の電極812の間の絶縁層(誘電体層)813とからなる。第1の電極811および第2の電極812は、この例では、単結晶シリコン(Si)からなる導体で構成される。絶縁層813は、この例では酸化膜(SiO2)からなる。
【0072】
そして、この絶縁層813の第1の電極811と対向する面側には、この例では、当該面の中央位置を中心とする円形の凹部814が形成されている。この凹部814により、絶縁層813と、第1の電極811との間に空間815が形成される。この例では、凹部814の底面は平坦な面とされ、その半径Rは、例えばR=1mmとされている。また、凹部814の深さは、この例では、数十ミクロン~百ミクロン程度とされている。
【0073】
この空間815の存在により、第1の電極811は、第2の電極812と対向する面とは反対側の面811a側から押圧されると、当該空間815の方向に撓む変位をすることが可能となる。第1の電極811の例としての単結晶シリコンの厚さは、印加される圧力によって撓むことが可能な厚さとされ、第2の電極812よりも薄くされている。
【0074】
以上のような構成の圧力感知チップ81においては、第1の電極811と第2の電極812との間にキャパシタ81Cが形成される。そして、第1の電極811の第2の電極812と対向する面とは反対側の面811a側から第1の電極811に対して圧力が印加されると、第1の電極811は撓み、第1の電極811と、第2の電極812との間の距離が短くなり、キャパシタ81Cの静電容量の値が大きくなるように変化する。第1の電極811の撓み量は、印加される圧力の大きさに応じて変化する。したがって、キャパシタ81Cは、圧力感知チップ81に印加される圧力の大きさに応じた可変容量キャパシタとなる。
【0075】
この実施形態の筆圧検出部80においては、以上のような構成を備える圧力感知チップ81は、圧力を受ける第1の電極811の面811aが、圧力受付側となるような状態でパッケージ82内に収納されている。
【0076】
パッケージ82は、この例では、セラミック材料や樹脂材料等の電気絶縁性材料からなるパッケージ部材821と、このパッケージ部材821内の、圧力感知チップ81の圧力を受ける面811a側に設けられる弾性部材822とからなる。
【0077】
この例のパッケージ82は、縦×横×高さ=L2×L2×H2の直方体形状とされており、例えば、L2=1.9mm、H2=1.0mmとされている。
【0078】
そして、図6(B)に示すように、筆圧検出部80のパッケージ部材821の圧力受付側とは反対側の底面には、圧力感知チップ81の第1の電極811と接続される第1のリード端子83が導出されると共に、圧力感知チップ81の第2の電極812と接続される第2のリード端子84が導出される。第1のリード端子83は、例えば金線85により第1の電極811と電気的に接続される。また、第2のリード端子84は、例えば金線86により第2の電極812と電気的に接続される。
【0079】
筆圧検出部80は、その第1のリード端子83及び第2のリード端子84と、回路基板90の筆圧検出部載置部93に形成されている導電パッドパターン931及び932とがそれぞれ電気的に接続されるようにして、図5(D)に示すように、回路基板90の筆圧検出部載置部93に載置され、筆圧検出部載置部93上に固定される。
【0080】
このようにして、筆圧検出部80が筆圧検出部載置部93上に載置及び電気的に接続されて固定された回路基板90は、コイル41と共に共振回路を構成するキャパシタと、筆圧検出部80で構成されるキャパシタとが並列に接続された状態となる。
【0081】
以上の構成の回路基板90は、次のようにして製造される。すなわち、先ず、所定の大きさのフレキシブル基板に、回路載置部92と、筆圧検出部載置部93と、線路部94とに、上述したような必要な導体パターンを形成した、上記の回路基板90の構成を有するものを、複数個形成するようにする。このとき、上記の回路基板90の構成を有する部分のそれぞれは、後で分離することができるだけの隙間を空けて複数個並べて形成する。
【0082】
次に、複数個の回路基板90の構成部分のそれぞれにおいて、回路載置部92には、形成されている導体パターンと必要な電子部品との接続用の半田ペーストを施して前記必要な電子部品を位置合わせして載置すると共に、筆圧検出部載置部93のそれぞれの導電パッドパターン931及び932に半田ペーストを施して、筆圧検出部80を、その第1のリード端子83及び第2のリード端子84と導電パッドパターン931及び932とを位置合わせして載置する。
【0083】
次に、当該筆圧検出部載置部93に筆圧検出部80を載置したフレキシブル基板を、半田リフロー装置に入れて、フレキシブル基板上の半田ペーストを溶融させて、回路載置部92の電子部品を導体パターンとの電気的接続をすると共に、筆圧検出部載置部93の導電パッドパターン931及び932と、筆圧検出部80の第1のリード端子83及び第2のリード端子84との電気的接続をして、回路載置部92に必要な電子部品を、筆圧検出部載置部93に筆圧検出部80を、それぞれ固着させる。
【0084】
次に、フレキシブル基板を、複数個の回路基板90の部分を互いに分離するように切断して、上述した構成の回路基板90のそれぞれが完成する。
【0085】
以上のようにして製造された回路基板90は、図7に示すように、筆圧検出部80が載置され、電気的に接続されて固定された筆圧検出部載置部93の部分が、ホルダー部50の筒状部51の開口部51bmを通じて、軸心方向に直交する方向であって、ホルダー部50の回路基板載置台部52の平面部52aに直交する方向から、収納部51b内に差し込まれて挿入されて収納される。そして、回路基板90は、図7及び図5(D)に示すように、線路部94のところで折り曲げられて、回路載置部92の部分が、回路基板載置台部52の平面部52a側に押し付けられる。このとき、線路部94は、ホルダー部50の切欠き部51fを通じて回路基板載置台部52の平面部52a側に位置することが可能である(図3(B)及び図5(D)参照)。
【0086】
そして、図7に示すように、回路基板90のフレキシブル基板91の裏面側に設けられている両面テープ97により、筆圧検出部載置部93が壁部51eの収納部51b側の面に接着固定されると共に、回路載置部92が、ホルダー部50の回路基板載置台部52の平面部52a上に接着固定される。なお、回路基板載置台部52の後端側には、回路基板90の長手方向の端部を挟持して係止するようにするための突起52bが形成されており、回路基板90は、その端部を、この突起52bと回路基板載置台部52の平面部52aとの間で挟持されるように、回路基板載置台部52の平面部52aに配設する。
【0087】
なお、図3(B)の例では、線路部94は、空中に存在するような状態としたが、この線路部94も、壁部51eの収納部51b側とは反対側の面及び回路載置部92の延長平面に両面テープで接着して固定するようにしても勿論よい。
【0088】
以上のようにしてホルダー部50に回路基板90を保持した後、カートリッジ筐体部材60内に、ホルダー部50を、筒状部51とは反対側から収納し、前述したように、カートリッジ筐体部材60の端面が、ホルダー部50の筒状部51の段部51dに衝合する状態とする。これにより、ホルダー部50の筒状部51の切欠き部51f及び収納部51bの開口部51bmが、カートリッジ筐体部材60により覆われた状態で、カートリッジ筐体部材60に対して、ホルダー部50が結合される。
【0089】
その後、ホルダー部50の筒状部51の貫通孔51cにコイルバネ32を巻回した圧力伝達部材31を挿入する。そして、信号送信用部材40のフェライトコア42及び芯パイプ部材43を、ホルダー部50の筒状部51に挿入して嵌合させて、ホルダー部50に信号送信用部材40を結合する。そして、信号送信用部材40のフェライトコア42に巻回されているコイル41の一端及び他端は、それぞれ、ホルダー部50の筒状部51に形成されている端子部材53及び54に、例えば半田付け等により電気的に接続される。
【0090】
その後、芯体30を芯パイプ部材43の貫通孔43cを挿通させて、芯体30の端部30bを圧力伝達部材31の嵌合凹部31c内に挿入嵌合させる。以上で、電子ペン本体部3が完成となる。
【0091】
以上のようにして、この実施形態においては、回路基板90は筆圧検出部載置部93を備え、その筆圧検出部載置部93に予め筆圧検出部80を載置して、回路基板の回路載置部92の回路素子と電気的に接続する状態で固定しておくようにしている。したがって、回路基板90をホルダー部50に保持させる前の段階で、既に筆圧検出部80と回路載置部92との間の電気的な接続は終了している。このため、従来のような、回路基板90をホルダー部50に保持させた後に、筆圧検出部と回路基板とを半田付け等により接続する工程は不要となる。
【0092】
[電子ペン1と共に使用する位置検出装置における位置検出および筆圧検出のための回路構成]
次に、上述の実施形態の電子ペン1による指示位置の検出および電子ペン1に印加される筆圧の検出を行う位置検出装置400の回路構成例及びその動作について、図8を参照して説明する。
【0093】
電子ペン1は、図8に示すように、インダクタンス素子としてのコイル41と、筆圧検出部80の圧力感知チップ81により構成される可変容量キャパシタ81Cと、回路基板90の回路載置部92に配置されている共振用のキャパシタCfとが並列に接続された共振回路を備える。キャパシタCfは、回路基板90の回路載置部92に配置されているキャパシタ95a,95b,95cを合成したものとして示したものである。また、回路基板90の回路載置部92のキャパシタ95dは、説明の便宜上、可変容量キャパシタ81Cに含めたものとした。
【0094】
一方、位置検出装置400には、X軸方向ループコイル群411と、Y軸方向ループコイル群412とが積層されて位置検出コイル410が形成されている。各ループコイル群411,412は、例えば、それぞれn,m本の矩形のループコイルからなっている。各ループコイル群411,412を構成する各ループコイルは、等間隔に並んで順次重なり合うように配置されている。
【0095】
また、位置検出装置400には、X軸方向ループコイル群411及びY軸方向ループコイル群412が接続される選択回路413が設けられている。この選択回路413は、2つのループコイル群411,412のうちの一のループコイルを順次選択する。
【0096】
さらに、位置検出装置400には、発振器421と、電流ドライバ422と、切り替え接続回路423と、受信アンプ424と、検波器425と、低域フィルタ426と、サンプルホールド回路427と、A/D変換回路428と、同期検波器429と、低域フィルタ430と、サンプルホールド回路431と、A/D変換回路432と、処理制御部433とが設けられている。処理制御部433は、マイクロコンピュータにより構成されている。
【0097】
発振器421は、周波数f0の交流信号を発生する。そして、発振器421は、発生した交流信号を、電流ドライバ422と同期検波器429に供給する。電流ドライバ422は、発振器421から供給された交流信号を電流に変換して切り替え接続回路423へ送出する。切り替え接続回路423は、処理制御部433からの制御により、選択回路413によって選択されたループコイルが接続される接続先(送信側端子T、受信側端子R)を切り替える。この接続先のうち、送信側端子Tには電流ドライバ422が、受信側端子Rには受信アンプ424が、それぞれ接続されている。
【0098】
選択回路413により選択されたループコイルに発生する誘導電圧は、選択回路413及び切り替え接続回路423を介して受信アンプ424に送られる。受信アンプ424は、ループコイルから供給された誘導電圧を増幅し、検波器425及び同期検波器429へ送出する。
【0099】
検波器425は、ループコイルに発生した誘導電圧、すなわち受信信号を検波し、低域フィルタ426へ送出する。低域フィルタ426は、前述した周波数f0より充分低い遮断周波数を有しており、検波器425の出力信号を直流信号に変換してサンプルホールド回路427へ送出する。サンプルホールド回路427は、低域フィルタ426の出力信号の所定のタイミング、具体的には受信期間中の所定のタイミングにおける電圧値を保持し、A/D(Analog to Digital)変換回路428へ送出する。A/D変換回路428は、サンプルホールド回路427のアナログ出力をデジタル信号に変換し、処理制御部433に出力する。
【0100】
一方、同期検波器429は、受信アンプ424の出力信号を発振器421からの交流信号で同期検波し、それらの間の位相差に応じたレベルの信号を低域フィルタ430に送出する。この低域フィルタ430は、周波数f0より充分低い遮断周波数を有しており、同期検波器429の出力信号を直流信号に変換してサンプルホールド回路431に送出する。このサンプルホールド回路431は、低域フィルタ430の出力信号の所定のタイミングにおける電圧値を保持し、A/D(Analog to Digital)変換回路432へ送出する。A/D変換回路432は、サンプルホールド回路431のアナログ出力をデジタル信号に変換し、処理制御部433に出力する。
【0101】
処理制御部433は、位置検出装置400の各部を制御する。すなわち、処理制御部433は、選択回路413におけるループコイルの選択、切り替え接続回路423の切り替え、サンプルホールド回路427、431のタイミングを制御する。処理制御部433は、A/D変換回路428、432からの入力信号に基づき、X軸方向ループコイル群411及びY軸方向ループコイル群412から一定の送信継続時間(連続送信区間)をもって電波を送信させる。
【0102】
X軸方向ループコイル群411及びY軸方向ループコイル群412の各ループコイルには、電子ペン1から送信(帰還)される電波によって誘導電圧が発生する。処理制御部433は、この各ループコイルに発生した誘導電圧の電圧値のレベルに基づいて電子ペン1のX軸方向及びY軸方向の指示位置の座標値を算出する。また、処理制御部433は、送信した電波と受信した電波との位相差に応じた信号のレベルに基づいて筆圧を検出する。
【0103】
このようにして、位置検出装置400では、接近した電子ペン1の位置を処理制御部433で検出する。そして、受信した信号の位相を検出することにより、電子ペン1の筆圧値の情報を得る。
【0104】
[第1の実施形態の効果]
上述の実施形態の電子ペン1においては、フレキシブル基板91に、その長手方向に、回路載置部92と、筆圧検出部載置部93と、回路載置部92と筆圧検出部載置部93との間の線路部94とを形成した回路基板90を用い、筆圧検出部載置部93には、予め筆圧検出部80が載置され、線路部94を介して電気的に回路載置部92の回路素子と接続される状態で固定されている。したがって、回路基板90をホルダー部50に保持させる前の段階で、既に筆圧検出部80と回路載置部92との間の電気的な接続は終了しており、筆圧検出部80と回路載置部92の回路素子とを電気的に接続するための半田付け処理の工程を削減することができる。
【0105】
そして、回路基板90は、フレキシブル基板91で構成され、線路部94の部分で屈曲することができるので、筆圧検出部80をホルダー部50の筒状部51の収納部51b内に、芯体30に印加される圧力を受けることができるように、筆圧検出部80の圧力受付面を軸芯方向に直交する方向となるように収納することができるという効果を奏する。
【0106】
また、筆圧検出部80は、圧力感知チップ81がパッケージ82に収納された一つの部品とされているので、回路基板90の筆圧検出部載置部93に載置して、圧力感知チップ81の端子部材を、筆圧検出部載置部93の導電パッドパターンに電気的に接続する状態で固定するようにするだけで取り付けができるという効果もある。
【0107】
また、ホルダー部50に、コイル41の両端と回路載置部92の回路素子との電気的な接続のための端子部材53,54が形成されているので、コイル41の両端と回路載置部92の回路素子との電気的な接続は、ホルダー部50において可能となり、接続作業が簡単になるという効果がある。
【0108】
[第2の実施形態]
上述の第1の実施形態の電子ペン1においては、コイル41と回路基板90の回路載置部92の回路素子との接続のために、ホルダー部50の筒状部51に、端子部材53及び54を立体微細パターンとして形成するようにした。しかしながら、コイル41と回路基板90の回路載置部92の回路素子との接続は、このような態様に限らない。第2の実施形態の電子ペンにおいては、第1の実施形態における電子ペン本体部3のホルダー部50及び回路基板90の構成を若干変更することにより、回路基板とコイル41の両端とを直接的に接続することができるように構成する。
【0109】
図9は、この第2の実施形態の電子ペンの要部を構成するホルダー部50Aと、回路基板90Aとを示す図であり、第2の実施形態の電子ペンのその他の部分は、第1の実施形態と同様に構成されている。この図9の例のホルダー部50A及び回路基板90Aにおいて、上述の第1の実施形態の電子ペン1のホルダー部50及び回路基板90と同一部分には、同一の参照記号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0110】
図9(A)は、ホルダー部50Aを、回路基板載置台部52Aの平面部52Aaを真上から見たときの図である。また、図9(B)は、ホルダー部50Aを、回路基板載置台部52Aの平面部52Aa側とは反対側から見た図である。また、図9(C)は、回路基板90Aを、フレキシブル基板91Aの表面91Aa側から見た図、図9(D)は、回路基板90Aを、フレキシブル基板91Aの裏面91Ab側から見た図、図9(E)は、回路基板90Aの一部の側面図である。
【0111】
図9(A)に示すように、ホルダー部50Aを回路基板載置台部52Aの平面部52Aaを真上から見たときの構成は、端子部材53及び54の端部53a及び54aが存在しないことが異なるだけで、第1の実施形態の電子ペン1におけるホルダー部50と同様となる。第2の実施形態では、ホルダー部50Aの、回路基板載置台部52Aの平面部52Aaとは反対側の構成が第1の実施形態のホルダー部50とは異なる。
【0112】
すなわち、図9(B)に示すように、この第2の実施形態におけるホルダー部50Aの筒状部51Aの回路基板載置台部52Aの平面部52Aa側とは反対側には、コイル41の一端41a及び他端41bを、筒状部51Aの側周面から突出しないようにするためのV字形状の溝51gが、軸心方向に沿って形成されていると共に、筆圧検出部80の収納部51bと連通する開口凹部51hが形成されている。溝51gは、筒状部51Aのペン先側から開口凹部51hの位置まで形成されている。
【0113】
この場合に、開口凹部51hは、軸心方向において、ホルダー部50Aの段部51dの位置よりも回路基板載置台部52A側に形成されている。したがって、この開口凹部51hは、カートリッジ筐体部材60とホルダー部50Aとが結合されたときには、カートリッジ筐体部材60に覆われる状態となる。
【0114】
この第2の実施形態の回路基板90Aのフレキシブル基板91Aは、図9(C)に示すように、筆圧検出部載置部93よりも更に長手方向に延伸する延伸部98を備える。この延伸部98は、筆圧検出部載置部93との接続部の幅は細く構成されていて、その部分で屈曲し易くされている。
【0115】
この延伸部98のフレキシブル基板91Aの表面91Aaには、筆圧検出部載置部93に形成されている導電パッドパターン931及び932のそれぞれと接続されている線路パターン981及び982が形成されている。そして、延伸部98においては、図9(C)及び図9(D)に示すように、フレキシブル基板91Aの表面91Aaの線路パターン981及び982のそれぞれは、スルーホール983及び984のそれぞれを通じて、フレキシブル基板91Aの裏面91bの導電パッド985及び986と接続されている。なお、この例では、図示は省略するが、延伸部98においては、フレキシブル基板91Aの表面91Aa側に両面テープ97aが設けられている。
【0116】
この第2の実施形態の電子ペン1Aにおいては、図10(A)に示すように、回路基板90Aは、線路部94の部分で屈曲されると共に、延伸部98の部分も、筆圧検出部載置部93に対して屈曲させることが可能となる。
【0117】
図10(B)は、この第2の実施形態の電子ペン1Aの信号送信用部材40と、ホルダー部50Aの結合部分の断面図を示すものである。この第2の実施形態においては、回路基板90Aは、第1の実施形態と同様にして、図10(A)に示すように線路部94のところで屈曲されて、筆圧検出部80が取り付けられている筆圧検出部載置部93及び延伸部98が、ホルダー部50Aの筒状部51Aの開口部51bmから収納部51b内に、軸心方向に直交する方向から挿入される。
【0118】
すると、図10Bに示すように、延伸部98は、収納部51bと連通している開口凹部51hに位置するようにされる。この状態で、筆圧検出部載置部93は壁部51eに対して両面テープで接着され、これにより、筆圧検出部80は、芯体30に印加される圧力を受け付けることができるような状態で収納部51b内に収納される。
【0119】
そして、延伸部98は、開口凹部51hの底部に、両面テープでフレキシブル基板91Aの表面91Aaが接着されて固定される。すると、図10(C)に示すように、ホルダー部50の筒状部51Aの開口凹部51hからは、延伸部98のフレキシブル基板91Aの裏面91Ab側に形成されている導電パッド985及び986が露呈するようにな状態となる。
【0120】
そして、ホルダー部50Aの筒状部51Aに、信号送信用部材40のフェライトコア42及び芯パイプ部材43を嵌合させて、ホルダー部50Aに信号送信用部材40を結合させる。その後、図10(B)及び図10(C)に示すように、フェライトコア42に巻回されているコイル41の一端41a及び他端41bを、筒状部51AのV字型の溝51g内に沿わせて、開口凹部51hのところまで導く。そして、コイル41の一端41a及び他端41bを、開口凹部51hに露呈している導電パッド985及び986のそれぞれと、例えば半田付け等により電気的に接続する。
【0121】
以上のようにして、この第2の実施形態によれば、回路基板90Aに延伸部98を設け、この延伸部98において、コイル41の一端41a及び他端41bとの電気的な接続を直接的に行うことができる。これにより、第1の実施形態の電子ペン1の場合のようなMID技術を用いて筒状部51に形成する端子部材53及び54は不要とすることができる。
【0122】
[第2の実施形態の変形例]
<第1の変形例>
上述の第2の実施形態の電子ペン1Aにおいては、延伸部98を外部に露呈させる開口凹部51hは、収納部51bのペン先側に形成した。このため、回路基板90Aのフレキシブル基板91Aは、図10(A)に示したように、延伸部98は、ペン先側に延伸するように屈曲されて、開口凹部51hからは、延伸部98のフレキシブル基板91Aの裏面91Ab側が露呈する状態とされる。そのために、上述の第2の実施形態においては、延伸部98においては、裏面91Ab側に、スルーホール983及び984を通じて、表面91Aa側の線路パターン981及び982と接続される導電パッド95及び96を形成する必要があった。
【0123】
図11(A)の例の電子ペン1Bは、回路基板90Aの延伸部98においては、フレキシブル基板91Aの裏面側への導体パターンの形成をしなくてもよいようにした例である。この図11(A)は、この第2の実施形態の電子ペン1Bの信号送信用部材40と、ホルダー部50Bの結合部分の断面図を示すものである。なお、この図11(A)の例の電子ペン1Bにおいて、第2の実施形態の電子ペン1Aと同一部分には同一参照符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0124】
この図11(A)の例の電子ペン1Bにおいては、ホルダー部50Bの筒状部51Bの収納部51bに連通する開口凹部51hBを、収納部51bよりもホルダー部50Bの回路基板載置台部52B側に設ける。このようにすれば、回路基板90Bの筆圧検出部載置部93を収納部51b内に収納したときに、その延伸部98Bは、開口凹部51hBを通じてフレキシブル基板91Aの表面91Aa側が露呈する状態となる。
【0125】
そこで、この例の電子ペン1Bにおいては、回路基板90Bの延伸部98Bには、図11(A)に示すように、フレキシブル基板91Aの表面91Aa側に導電パッド987及び988を、線路パターン981及び982に代えて形成し、スルーホール983及び984や裏面91Abの導電パッド985及び986は設けない。そして、ホルダー部50Bの筒状部51Bに形成されるV字型の溝51gBは、筒状部51Bのペン先側から開口凹部51hBの位置まで形成されている。
【0126】
そして、ホルダー部50Bに、信号送信用部材40のフェライトコア42及び芯パイプ部材43とを嵌合させた後、コイル41の一端41a及び他端41bを、溝51gB内に沿わせて、開口凹部51hBまで導く。そして、コイル41の一端41a及び他端41bを、開口凹部51hBに露呈している導電パッド987及び988のそれぞれと、例えば半田付け等により電気的に接続する。
【0127】
なお、この場合に、開口凹部51hBは、軸心方向において、ホルダー部50Bの段部51dの位置よりも回路基板載置台部52B側に形成されている。したがって、この開口凹部51hBは、カートリッジ筐体部材60とホルダー部50Bとが結合されたときには、カートリッジ筐体部材60に覆われる状態となる。
【0128】
この図11(A)の例によれば、回路基板90Bのフレキシブル基板91Aの片面側において、電気的な接続のための導体パターンを生成するだけで良くなるという効果がある。
【0129】
<第2の変形例>
図11(B)は、第2の実施形態の変形例の第2の例の電子ペン1Cを説明するための図であり、この図11(B)も、この例の電子ペン1Cの信号送信用部材40と、ホルダー部50Cの結合部分の断面図を示すものである。
【0130】
この第2の例の電子ペン1Cでは、回路基板90Cとしては、第1の実施形態の電子ペン1における回路基板90と同様に、延伸部98を有さずに、回路載置部92と、筆圧検出部載置部93と、線路部94とを備える構成とする。ただし、この第2の例の回路基板90Cにおいては、図11(B)に示すように、第1の実施形態における回路基板90の切欠き部92a及び92bが形成されていた長手方向位置に、導体パターン96a及び96bに接続されているスルーホール99a及び99bが形成されている。
【0131】
また、ホルダー部50Cの回路基板載置台部52Cの、回路基板90Cが平面部52aCに載置されたときに、スルーホール99a及び99bが位置する位置に、平面部52aCの裏側から、平面部52aCまで貫通する貫通孔55a,55bが形成されている。また、ホルダー部50Cに形成されるV字型の溝51gCは、軸心方向においてペン先側から貫通孔55a,55bが形成されている位置にまで亘って形成されている。
【0132】
そして、この第2の例の電子ペン1Cにおいては、図11(B)に示すように、信号送信用部材40のコイルの一端41a及び他端41bは、溝51gC内に沿って、貫通孔55a,55bが形成されている位置まで導かれ、さらに、貫通孔55a及び55bをそれぞれ通じ、また、回路基板90Cのスルーホール99a及び99bを通じて、回路基板90Cのフレキシブル基板91Cの表面91aC側まで導出される。そして、回路基板90Cの回路載置部92Cのフレキシブル基板91Cの表面91aCにおいて、導体パターン96a及び96bと例えば半田付け等により電気的に接続される。
【0133】
<第3の変形例>
第2の実施形態の電子ペン1A及び変形例の第1の例の電子ペン1Bにおいては、回路基板90A及び90Bには、筆圧検出部載置部93から、長手方向に延長するように延伸部98,98Bを形成するようにした。しかしながら、図11(C)に示すように、筆圧検出部載置部93からフレキシブル基板91を延伸させる延伸部98Dを、長手方向ではなく、回路基板90の短辺方向に延伸するように、回路基板90Dを形成してもよい。
【0134】
なお、この第3の例の場合には、ホルダー部50D(図示せず)には、収納部51bの開口部51bmが向いていする方向とは直交する方向に開口凹部を形成し、その開口凹部から、延伸部98Dを外部に露呈させるようにする。また、ホルダー部50Dの筒状部51D(図示せず)のV字型の溝も、開口凹部に対応するように形成するようにする。
【0135】
[第3の実施形態]
上述の実施形態においては、筆圧検出部は、MEMS素子を用いた1個のパッケージ部品としたが、筆圧検出部の構成は、これに限られるものではない。第3の実施形態は、誘電体を挟む第1及び第2の電極を備え、第1の電極と誘電体との接触面積を、芯体に印加される圧力に応じた変化をさせることで、静電容量の変化として筆圧を検出する構成の筆圧検出部(特許文献1参照)を用いる場合である。
【0136】
この第3の実施形態では、筆圧検出部の構成と、ホルダー部の筒状部の構成が変わるだけで、その他の構成は、前述の実施形態と同様に構成される。図12は、この第3の実施形態の電子ペン1Eにおける筆圧検出部80Eと、ホルダー部50Eの構成を説明するための図である。図12(A)は、ホルダー部50Eに対する組み込みを考慮して、筆圧検出部80Eを分解して示すと共に、この筆圧検出部80Eを収納保持する筒状部51Eの部分を示す図である。また、図12(B)は、ホルダー部50Eの筒状部51Eに筆圧検出部80Eを収納保持した状態における縦断面図である。なお、図12において、上述した第1の実施形態の電子ペン1と同一の部分には、同一の参照符号を付してある。
【0137】
この例の筆圧検出部80Eも、芯体に印加される筆圧に応じて静電容量が変化する容量可変コンデンサを構成する。この例の筆圧検出部80Eは、図12(A)及び(B)に示すように、誘電体801と、端子部材802と、保持部材803と、導電部材804と、コイルバネ805との複数個の部品からなる。端子部材802は、筆圧検出部80Eで構成される容量可変コンデンサの第1の電極を構成する。また、導電部材804とコイルバネ805とは電気的に接続されて、前記容量可変コンデンサの第2の電極を構成する。
【0138】
一方、この例のホルダー部50Eの筒状部51Eは、図12(A)及び(B)に示すように、軸心方向に直交する方向を向いている開口部51bmEを有する収納部51bEを備えると共に、筆圧検出部80Eを構成する複数の部品を、この収納部51bEと、当該収納部51bEと連通している筒状部51Eの中空部内において軸芯方向に並べて収納する構成とされている。
【0139】
誘電体801は、図12(A)に示すように、ホルダー部50Eの筒状部51Eの収納部51bEに収納することができる径及び厚さを有する板状に形成されている。また、端子部材802は、誘電体801の軸心方向の一方の面側に接触する状態で、誘電体801と共にホルダー部50Eの筒状部51Eの収納部51bEに収納することができる径及び厚さを有する円板状の導電部材、例えば導電性金属の板状体で構成される。
【0140】
そして、この第3の実施形態においては、端子部材802は、回路基板90Eの筆圧検出部載置部93Eに載置され、この筆圧検出部載置部93Eに形成されている導電パッドと電気的に接続されて固定される。なお、この第3の実施形態における回路基板90Eにおいては、筆圧検出部載置部93Eには、端子部材802と電気的に接続する1個の導電パッドが形成されている。そのため、線路部94Eに形成されている線路パターンは1本とされている。そして、回路基板90Eの回路載置部92Eには、後述するように、筆圧検出部80Eの第2の電極の一部を構成する弾性部材、この例ではコイルバネ805の端部と接続する導電パッドが形成されている。回路基板90Eのその他の構成は、第1の実施形態の回路基板90と同様である。
【0141】
筆圧検出部80Eを構成する複数の部品のうち、ホルダー部50Eの筒状部51Eの中空部内で、軸芯方向に移動しない部品である誘電体801と、端子部材802は、図12(A)に示すように、ホルダー部50Eの筒状部51Eの収納部51bEの軸芯方向に直交する方向を向いている開口部51bmEを通じて、当該筒状部51Eの収納部51bEに、軸芯方向に直交する方向から挿入されて、図12(B)に示すように収納される。
【0142】
この場合に、端子部材802は、上述したように、回路基板90Eの筆圧検出部載置部93Eに固定されている。そのため、上述した第1の実施形態の場合と同様にして、回路基板90Eが、図12(A)に示すように、線路部94Eのところで屈曲されて、端子部材802に固定されている筆圧検出部載置部93Eが、収納部51bEに差し込まれる。
【0143】
そして、回路基板90Eは、図12(B)に示すように、回路載置部92Eの部分がホルダー部50Eの回路基板載置台部52Eの平面部52aEに載置され、フレキシブル基板91Eの回路載置部92Eの部分の裏面側に設けられている両面テープにより、当該回路載置部92Eが、回路基板載置台部52Eの平面部52aEに接着固定される。
【0144】
端子部材802には、図12(A)及び(B)に示すように、誘電体801側に突出するL字状突起802bが形成されている。この端子部材802のL字状突起802bにより、誘電体801の開口部51bmE側端部が押さえられて、収納部51bEから離脱しないように保持される。
【0145】
筆圧検出部80Eを構成する保持部材803は、その軸芯方向の芯体30側となる側に、芯体30を圧入嵌合させる凹穴803bが設けられている円柱状形状部803aと、凹穴803b側とは軸芯方向の反対側に、導電部材804を嵌合する凹穴が設けられているリング状突部803cとを備えている。
【0146】
保持部材803の円柱状形状部803aの外径(周方向の一部)は、筒状部51Eの中空部の内径d2より若干小さく選定されている。また、保持部材803のリング状突部803cの外径は、円柱状形状部803aの外径よりも小さく、かつ、弾性部材を構成するコイルバネ805の内径よりも小さく選定されている。この場合、リング状突部803cと円柱状形状部803aとの間で段部を構成するようにされる。この段部は、コイルバネ805の端部を係止させるためのものである。
【0147】
そして、この実施形態では、保持部材803の円柱状形状部803aの側周面には、係合突部803d及び803eが形成され、ホルダー部50Eの筒状部51Eの側周面には、係合突部803d及び803eが係合する係合孔51ia及び51ib(図12(B)参照)が形成されている。これにより、保持部材803は、係合突部803d及び803eが係合孔51ia及び51ibに係合されている状態においても、その軸芯方向に移動可能とされている。
【0148】
導電部材804は、導電性を有すると共に弾性変形可能な弾性部材からなるものとされており、例えば、シリコン導電ゴムや、加圧導電ゴムにより構成される。この導電部材804の径大部804a及び径小部804bの中心線位置は、同一とされる。そして、径大部804aの径小部804bとは反対側の端面は、図12(B)に示すように、砲弾型に膨出する曲面部を有するように構成されている。
【0149】
また、コイルバネ805は、例えば導電性を有するコイルバネで構成され、弾性を有する巻回部805aと、この巻回部805aの一端部に端子片805bを有し、巻回部805aの他端部に接続部805cを有している。コイルバネの巻回部805aは、その巻回部805a内に、導電部材804を接触することなく収納することができる径であって、かつ、保持部材803の円柱状形状部803aの径よりも小さい径とされる。
【0150】
コイルバネ805の接続部805cは、保持部材803のリング状突部803cに形成されている凹穴の底部に挿入するようにされる(図12(B)参照)。したがって導電部材804の径小部804bが保持部材803のリング状突部803cに圧入嵌合されたときには、導電部材804の径小部804bの端面が、導電性を有するコイルバネ805の接続部805cと接触して、電気的に接続される状態となる。
【0151】
この第3の実施形態においては、先ず、筆圧検出部80Eを構成する部品のうちの誘電体801及び回路基板90Eの筆圧検出部載置部93Eに載置され固定されている端子部材802を、開口部51bmEを通じて、ホルダー部50Eの筒状部51Eの収納部51bE内に収納する。
【0152】
次に、この例においては、保持部材803のリング状突部803cの凹穴に導電部材804の径小部804bを圧入嵌合させると共、コイルバネ805の巻回部805aを、リング状突部803c及び導電部材804の周囲に持ち来たすように配する。
【0153】
次に、この保持部材803と導電部材804とコイルバネ805とを組み合わせたものを、導電部材804側から、筒状部51Eの開口部51aEを通じて、軸芯方向に筒状部51Eの中空部内に挿入する。そして、保持部材803の円柱状形状部803aに形成されている係合突部803d及び803eが、筒状部51Eの側周面に形成されている係合孔51ia及び51ibに嵌合するまで、軸芯方向に挿入する。
【0154】
これにより、コイルバネ805の軸芯方向の偏倚力にかかわらず、保持部材803は、ホルダー部50Eの筒状部51Eの開口部51aEから離脱することなく、筒状部51Eの中空部内に係止する。また、この状態では、コイルバネ805の軸芯方向の偏倚力により、誘電体801及び端子部材802が壁部51eE側に押し付けられる。これにより、誘電体801が、筒状部51Eの収納部51bEの開口部51bmEから離脱してしまうことが防止される。
【0155】
次に、以上のようにして、筆圧検出部80Eを構成する複数個の部品の全体を、ホルダー部50Eの筒状部51Eの中空部及び収納部51bE内に収納させて係止させた状態において、コイルバネ805の端子片805bを、回路基板90Eに半田付けする。
【0156】
この例の筆圧検出部80は、芯体30に圧力が印加されると、保持部材803が印加された圧力に応じてコイルバネ805の弾性偏倚力に抗して、導電部材804を誘電体801に対して押圧する状態となり、誘電体801と導電部材804との接触面積が、印加された圧力に応じて変化する。この結果、端子部材802とコイルバネ805の端子片805bとの間に得られる静電容量が、印加された圧力に応じて変化する。このため、前述の第1の実施形態と同様にして、コイル41と回路基板90Eに設けられているキャパシタと、筆圧検出部80Eで構成される共振回路の共振周波数が変化して、筆圧情報として位置検出装置に伝達される。
【0157】
以上のようにして、第3の実施形態の電子ペン1Eにおいては、筆圧検出部80Eを構成する可変容量キャパシタの一方の電極を構成する端子部材802は、回路基板90Eの筆圧検出部載置部93E上に予め載置され、電気的に接続されて固定されている。したがって、筆圧検出部80Eをホルダー部50Eの筒状部51Eに保持させた後においては、筆圧検出部80Eを構成する可変容量キャパシタの他方の電極を構成するコイルバネ805の端子片805bと回路基板90Eとの間での半田付けによる電気的な接続の工程は必要なものの、端子部材802と回路基板90Eとの間の半田付けによる電気的な接続の工程は不要となるという効果を奏する。
【0158】
なお、図12の例では、回路基板90Eの筆圧検出部載置部93Eには、端子部材802のみを載置し、電気的に接続して固定させるようにしたが、この筆圧検出部載置部93Eに、コイルバネ805の端子片805bと接続する電極片や、導体パッドパターンを形成しておき、その電極片や導体パッドパターンに対して、コイルバネ805の端子片805bを半田付け等により電気的に接続するようにしてもよい。その場合には、線路部94Eには、端子部材802と電気的に接続する線路パターンに加えて、コイルバネ805の端子片805bを接続する電極片や、導体パッドパターンと電気的に接続する線路パターンを形成するものである。
【0159】
[第4の実施形態]
以上の実施形態は、電磁誘導方式の電子ペンの場合であったが、この発明は、所定の信号を静電結合方式で位置検出装置に送信することで位置指示するようにする、アクティブ静電結合方式の電子ペンにも適用可能である。
【0160】
このアクティブ静電結合方式の電子ペンにおいても、構成部品としては、上述した電子ペンと同様とすることができる。ただし、アクティブ静電結合方式の電子ペンの場合には、上述した第1~第3の実施形態において、樹脂からなる芯体30に代わりに、導電性を有する材料、例えば金属で構成する芯体30F(後述の図13参照)を用いる。また、フェライトコア42に巻回されたコイル41は、電磁誘導方式で蓄電素子に充電する充電電流を得るための回路を構成するものとする。さらに、回路基板には、導電性の芯体30Fに信号を供給するための信号発信回路を設ける。そして、回路基板の信号発信回路からの信号を、芯体30Fに供給するための電気的な接続の構成を加える。したがって、この第4の実施形態では、信号送信用部材は、芯体30Fと信号発信回路で構成される。
【0161】
この第4の実施形態における静電結合方式の電子ペン1Fの回路基板に形成される電子回路の例を図13を参照して説明する。
【0162】
図13において、101は電気二重層キャパシタ、102は整流用ダイオード、103は電圧変換回路、104は、この例の信号発信回路を構成する発振回路である。図13に示すように、この例では、コイル41の一端はダイオード102のアノードに接続され、他端は、接地(GND)されている。また、電気二重層キャパシタ101の一端はダイオード102のカソードに接続され、他端は、接地されている。
【0163】
芯体(電極芯)30Fは、コイル41が巻かれたフェライトコア42Fまたは42Gの芯パイプ部材43Fまたは43Gの貫通孔43Faまたは43Gaを貫通して、可変容量キャパシタ80Cを構成する、例えば筆圧検出部80に物理的に結合(係合)されると共に、電極芯30Fは回路基板の発振回路104と接続線105を通じて電気的に接続されている。したがって、電極芯30Fと可変容量キャパシタ80Cを構成する筆圧検出部80との前記物理的な結合により電極芯30Fに加えられた圧力(筆圧)は筆圧検出部80に伝達されるとともに、接続線105を経由して発振回路104からの送信信号が電極芯30Fより送信される。
【0164】
発振回路104は、筆圧検出部80の可変容量キャパシタ80Cの容量に応じて周波数が変化する信号を発生し、その発生した信号を電極芯30Fに供給する。発振回路104からの信号は、電極芯30Fよりその信号に基づく電界として放射される。発振回路104は、例えばコイルとキャパシタによる共振を利用したLC発振回路により構成される。この実施形態の電子ペン1Fにより指示された座標位置を検出するタブレットでは、この信号の周波数より電極芯30Fに加えられた筆圧を求めることができる。
【0165】
電圧変換回路103は、電気二重層キャパシタ101に蓄えられた電圧を一定の電圧に変換して発振回路104の電源として供給する。この電圧変換回路103は、電気二重層キャパシタ101の両端の電圧よりも低くなるような降圧タイプのものでも良いし、電気二重層キャパシタ101の両端の電圧よりも高くなるような昇圧タイプのものでも良い。また、電気二重層キャパシタ101の両端の電圧が前記一定の電圧よりも高い場合は降圧回路として動作し、前記一定の電圧よりも低い場合は昇圧回路として動作する昇降圧タイプのものでも良い。
【0166】
この実施形態の電子ペン1Fを図示しない充電器に装着したときに、充電器が発生する交番磁界によりコイル41には誘導起電力が発生して、ダイオード102を介して電気二重層キャパシタ101を充電する。
【0167】
この実施形態の電子ペン1Fが通常動作するとき(充電動作を行わないとき)は、コイル41は固定電位(この例では接地電位(GND))となるため、電極芯30Fの周囲に設けたシールド電極として作用する。なお、電子ペン1Fが通常動作するときのコイル41の固定電位は、接地電位に限らず、電源のプラス側電位であっても良いし、電源のプラス側電位と接地電位との中間の電位であっても良い。
【0168】
なお、上述の第4の実施形態では、電子ペン1Fは、筆圧検出部80で検出した筆圧を周波数に変換して電極芯30Fに供給するようにしたが、筆圧を対応させる信号属性としては周波数に限られるものではなく、信号の位相や信号の断続回数などに筆圧を対応させるようにしても良い。
【0169】
[その他の実施形態または変形例]
なお、上述の実施形態は、電子ペンの筐体内に収納されるカートリッジ状の電子ペン本体部に、この発明を適用した場合として説明したが、このような電子ペン本体部ではなく、電子ペンの筐体内に、直接的に、信号送信用部材と、ホルダー部と、回路基板とを収納する構成であってもよいことは言うまでもない。
【0170】
なお、上述の実施形態では、筆圧検出部で検出された筆圧情報は、信号送出部からの位置検出用信号と共に、送出するようにしたが、回路基板の回路載置部に、無線送信部を設けて、位置検出用信号とは別個に、筆圧情報は、この無線送信部を通じて位置検出装置に送信するように構成してもよい。
【0171】
また、上述の第4の実施形態の静電結合方式の電子ペンにおいては、芯体から信号を送出するようにしたが、芯体とは別個に、例えば芯体の周囲を囲むスリーブ状部材を導体により構成して、その導体を通じて、あるいは、その導体と芯体との両方を用いて、位置検出装置に信号を送出する構成としてもよい。
【0172】
また、上述の実施形態では、回路基板の回路載置部は、両面テープでホルダー部の回路基板載置台部に接着固定するようにしたが、両面テープに限らず、接着材を塗布して接着固定してもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0173】
1…電子ペン、2…筐体、3…電子ペン本体部、30…芯体、40…信号送信用部材、41…コイル、42…フェライトコア、43…芯パイプ部材、50…ホルダー部、51…筒状部、52…回路基板載置台部、60…カートリッジ筐体部材、80…筆圧検出部、90…回路基板、91…フレキシブル基板、92…回路載置部、93…筆圧検出部載置部、94…線路部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13