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特開2022-96002アルカリ電池用ゲル化剤及びアルカリ電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096002
(43)【公開日】2022-06-29
(54)【発明の名称】アルカリ電池用ゲル化剤及びアルカリ電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/06 20060101AFI20220622BHJP
【FI】
H01M4/06 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019084025
(22)【出願日】2019-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加峰 興滋
(72)【発明者】
【氏名】中野 孝之
(72)【発明者】
【氏名】竹村 亜耶
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA13
5H050BA04
5H050CB13
5H050DA14
5H050GA10
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA10
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
【課題】アルカリ電解液中の亜鉛粉末等の沈降防止性に優れ、かつ、複数の材料を用いることなく1つの材料で性能発現が可能なアルカリ電池用ゲル化剤を提供する。
【解決手段】水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(b)を必須構成単量体とする架橋重合体(A)を含有し、下記(1)~(3)を満たすアルカリ電池用ゲル化剤(G)。
(1)架橋重合体(A)の生理食塩水への可溶性成分量が、(A)の重量を基準として5~20重量%である。
(2)架橋重合体(A)の生理食塩水への可溶性成分の内の分子量が100,000以下の成分の数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比率(Mw/Mn)が、4.0~6.0である。
(3)40重量%水酸化カリウム水溶液にゲル化剤(G)を2重量%添加した混合液の25℃における粘度が、10~60Pa・sである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(b)を必須構成単量体とする架橋重合体(A)を含有し、下記(1)~(3)を満たすアルカリ電池用ゲル化剤(G)。
(1)架橋重合体(A)の生理食塩水への可溶性成分量が、(A)の重量を基準として5~20重量%である。
(2)架橋重合体(A)の生理食塩水への可溶性成分の内の分子量が100,000以下の成分の数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比率(Mw/Mn)が、4.0~6.0である。
(3)40重量%水酸化カリウム水溶液にゲル化剤(G)を2重量%添加した混合液の25℃における粘度が、10~60Pa・sである。
【請求項2】
40重量%水酸化カリウム水溶液の吸収量が40~70g/gである請求項1記載のアルカリ電池用ゲル化剤。
【請求項3】
架橋剤(b)が、アルカリで加水分解する架橋剤(b1)及びアルカリで加水分解しない架橋剤(b2)からなり、それぞれの量が水溶性ビニルモノマー(a1)及びビニルモノマー(a2)の合計重量を基準として0.05~1重量%であり、(b1)の(b2)に対する重量比率[(b1)/(b2)]が1.5~5である請求項1又は2記載のアルカリ電池用ゲル化剤。
【請求項4】
33重量%水酸化カリウム水溶液100重量部、ゲル化剤(G)2重量部及び亜鉛粉末200重量部を均一になるまで撹拌混合し、25℃で24時間静置した混合液の離液率が10重量%以下である請求項1~3のいずれか記載のアルカリ電池用ゲル化剤。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか記載のアルカリ電池用ゲル化剤及び亜鉛粉末を含有してなるアルカリ電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ電池用ゲル化剤及びアルカリ電池に関する。更に詳しくは、アルカリ電解液と亜鉛粉末を主とするアルカリ電池の負極用のゲル化剤及びそれを使用したアルカリ電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルカリ電池の負極材には、高濃度のアルカリ電解液(高濃度の水酸化カリウム水溶液及び必要により酸化亜鉛等を含有させたもの)と亜鉛粉末及び/又は亜鉛合金粉末等との混合物が主として使用されている。アルカリ電解液中の亜鉛粉末等は沈降しやすく、これを防止する目的で、高重合度架橋型ポリアクリル酸のアルカリ金属塩粉末をゲル化剤として単独で用いるかこれにカルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩を併用したものが提案されている(例えば特許文献1)。また、粒径の異なる架橋分岐型ポリ(メタ)アクリル酸及びその塩類を混合してゲル化剤として用いたものが提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2775829号公報
【特許文献2】特許第3371532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2に記載のゲル化剤はアルカリ電解液中の亜鉛粉末等の沈降防止性が十分とは言えず、電池の長期に渡る放電特性の維持や耐衝撃性等の点で必ずしも満足のいくものではなかった。また、複数の材料を混合する必要があり、生産工程が増えるという問題もあった。
本発明はこれらの問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、アルカリ電解液中の亜鉛粉末等の沈降防止性に優れ、かつ、複数の材料を用いることなく1つの材料で性能発現が可能なアルカリ電池用ゲル化剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち本発明は、水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(b)を必須構成単量体とする架橋重合体(A)を含有し、下記(1)~(3)を満たすアルカリ電池用ゲル化剤(G);前記ゲル化剤(G)及び亜鉛粉末を含有してなるアルカリ電池である。
(1)架橋重合体(A)の生理食塩水への可溶性成分量が、(A)の重量を基準として5~20重量%である。
(2)架橋重合体(A)の生理食塩水への可溶性成分の内の分子量が100,000以下の成分の数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比率(Mw/Mn)が、4.0~6.0である。
(3)40重量%水酸化カリウム水溶液にゲル化剤(G)を2重量%添加した混合液の25℃における粘度が、10~60Pa・sである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のゲル化剤(G)及びそれを使用したアルカリ電池は下記の効果を奏する。
(1)本発明のゲル化剤(G)は負極材中における亜鉛粉末等の沈降防止性に優れることから、アルカリ電池に使用した場合、少量でかつ長期間に亘って、放電の持続時間や耐衝撃性に極めて優れた電池を作製することができる。
(2)本発明のゲル化剤(G)は複数の材料を用いることなく1つの材料で性能発現が可能であるため、電池の生産工程を極力少なくすることができ、生産コストの面で優れる。
(3)本発明のゲル化剤(G)を添加した負極材は充填時の粘度が適切な範囲にあり、負極材の液切れがよいことから、電池1個あたり負極材の充填量のバラツキが少ないため、大量生産時も均一な品質を有する電池を生産でき、また、サイズが小さい電池においても、均一に且つ高速で負極材を充填することができるため、均一な品質を有する電池を生産できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のアルカリ電池用ゲル化剤(G)は、水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(b)を必須構成単量体とする架橋重合体(A)を含有する。
【0008】
本発明において、水溶性ビニルモノマーとは、25℃の水100gに少なくとも100g溶解する性質を持つビニルモノマーを意味する。
水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により(a1)となるビニルモノマー(a2)としては特に限定がないが、例えば、特開2005-075982号公報に記載の水溶性ラジカル重合単量体が挙げられる。これらの内、放電特性の観点から、水溶性ビニルモノマー(a1)が好ましく、更に好ましくはアニオン性ビニルモノマー、特に好ましくは炭素数3~30のビニル基含有カルボン酸(塩){不飽和モノカルボン酸(塩)[(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸及びこれらの塩等];不飽和ジカルボン酸(塩)(マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸及びこれらの塩等);及び前記不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(炭素数1~8)エステル(マレイン酸モノブチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸のエチルカルビトールモノエステル、フマル酸のエチルカルビトールモノエステル、シトラコン酸モノブチルエステル及びイタコン酸グリコールモノエステル等}、とりわけ好ましくは不飽和モノカルボン酸(塩)、最も好ましくはアクリル酸(塩)である。
【0009】
本発明において、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味し、「・・・酸(塩)」とは「・・・酸」及び/又は「・・・酸塩」を意味する。塩としては、カリウム、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、カルシウム等のアルカリ土類金属塩が含まれる。
【0010】
水溶性ビニルモノマー(a1)に由来する単位は未中和体であっても、中和体(水溶性ビニルモノマー塩の単位)であっても構わない。また、架橋重合体(A)は、粘着性低減や分散性改良及び架橋重合体(A)の製造上の作業性の観点から、一部又は全てが中和されていることが好ましい。
【0011】
架橋重合体(A)に含まれる水溶性ビニルモノマー(a1)に由来する単位の中和を行う場合は、一般的に水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等の水酸化アルカリ金属、水酸化カルシウム等の水酸化アルカリ土類金属又はその水溶液を重合前のモノマー段階、あるいは重合後の含水ゲルに添加すればよいが、後述するアルカリ性で加水分解しない架橋剤(b2)は水溶性が乏しいため、水溶性ビニルモノマー(a1)の中和度が高い状態で重合すると、所定量の架橋剤(b2)を添加しても架橋剤(b2)がモノマー水溶液から分離し所定の架橋が行えず架橋重合体(A)が得られない場合があり、水溶性ビニルモノマー(a1)の中和度を0~30モル%としておいて、架橋剤(b2)も含有させて重合を行った後、必要により含水ゲルに水酸化アルカリ金属を添加して中和度を調整する方がより好ましい。
【0012】
架橋重合体(A)の水溶性ビニルモノマー(a1)として、アニオン性ビニルモノマー{最も好ましくはアクリル酸(塩)}を使用する場合、アニオン性ビニルモノマーの最終的な中和度{アニオン性ビニルモノマーのアニオン基及びアニオン塩基の合計モル数に基づく、アニオン塩基の含有量(モル%)}は、0~90が好ましく、更に好ましくは40~80、特に好ましくは60~70である。この範囲であると、負極材の耐衝撃性や放電特性が更によくなる。尚、アニオン塩基とは中和されたアニオン基を意味する。
【0013】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び加水分解により(a1)となるビニルモノマー(a2)の含有量は、ゲル化剤(G)の吸収能の観点から、(a1)、(a2)、アルカリ性で加水分解する架橋剤(b1)並びにアルカリ性で加水分解しない架橋剤(b2)の合計重量を基準として、98.0~99.90重量%が好ましく、更に好ましくは99.0~99.85重量%、特に好ましくは99.2~99.83重量%である。
【0014】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により(a1)となるビニルモノマー(a2)は、それぞれ、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0015】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び加水分解により(a1)となるビニルモノマー(a2)の内、アルカリ電池の放電特性の観点から、(a1)単独及び(a1)と(a2)の併用が好ましく、更に好ましいのは(a1)単独である。
水溶性ビニルモノマー(a1)及び加水分解により(a1)となるビニルモノマー(a2)の両方を構成単位とする場合、これらのビニルモノマーに由来する単位のモル比{(a1)/(a2)}は、アルカリ電池の放電特性の観点から、75/25~99/1が好ましく、更に好ましくは85/15~98/2、最も好ましくは90/10~95/5である。
【0016】
架橋重合体(A)は、水溶性ビニルモノマー(a1)及び加水分解性ビニルモノマー(a2)の他に、これらと共重合可能なその他のビニルモノマー(a3)を構成単位とすることができる。その他のビニルモノマー(a3)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0017】
共重合可能なその他のビニルモノマー(a3)としては特に限定はなく、公知(例えば、特許第3648553号公報の段落[0028]~[0029]に開示されている疎水性ビニルモノマー、特開2003-165883号公報の段落[0025]及び特開2005-75982号公報の段落[0058]に開示されているビニルモノマー等)の疎水性ビニルモノマー等が使用でき、具体的には例えば下記の(i)~(iii)のビニルモノマー等が使用できる。
(i)炭素数8~30の芳香族エチレン性モノマー
スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン及びヒドロキシスチレン等のスチレン、並びにビニルナフタレン及びジクロルスチレン等のスチレンのハロゲン置換体等。
(ii)炭素数2~20の脂肪族エチレン性モノマー
アルケン(エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン及びオクタデセン等);並びにアルカジエン(ブタジエン及びイソプレン等)等。
(iii)炭素数5~15の脂環式エチレン性モノマー
モノエチレン性不飽和モノマー(ピネン、リモネン及びインデン等);並びにポリエチレン性ビニルモノマー[シクロペンタジエン、ビシクロペンタジエン及びエチリデンノルボルネン等]等。
【0018】
共重合体(A)におけるその他のビニルモノマー(a3)単位の含有量(モル%)は、吸収性能等の観点から、水溶性ビニルモノマー(a1)単位及び加水分解性ビニルモノマー(a2)単位の合計モル数に基づいて、0~5が好ましく、更に好ましくは0~3、特に好ましくは0~2、とりわけ好ましくは0~1.5であり、吸収性能等の観点から、その他のビニルモノマー(a3)単位の含有量が0モル%であることが最も好ましい。
【0019】
架橋重合体(A)は、架橋剤(b)を用いて架橋する。架橋剤(b)としては、アルカリ性で加水分解する架橋剤(b1)及びアルカリ性で加水分解しない架橋剤(b2)等が挙げられる。
本発明においては(b1)と(b2)を併用することが好ましい。(b1)及び(b2)を併用することにより、ゲル化剤(G)の粘度安定性が更に向上し、アルカリ電解液の離液を防止することできるため、電池の長期間に亘る放電を維持することができる。更に電池へ充填する際に均一に注入することができ、電池1個あたりの電解液の注入量の偏りも小さくなるので好ましい。
尚、ここでアルカリ電解液の「離液」とは、ゲル化剤(G)とアルカリ電解液とのほぼ均一な混合状態を保持できず、ゲル化剤(G)とアルカリ電解液とが分離してしまうことを意味する。
【0020】
アルカリ性で加水分解する架橋剤(b1)において「アルカリ性で加水分解する」とは、架橋重合体(A)において(b1)に由来する単位が加水分解性結合を有することを意味し、加水分解性結合は、架橋剤(b1)がもともと分子内に有する結合であってもよいし{この場合の架橋剤を分子内に加水分解性結合を有する架橋剤(b11)とする}、架橋重合体(A)を構成する他の単量体{(a1)又は(a2)}と架橋反応して生成する結合が加水分解するものであってもよい{この場合の架橋剤を架橋反応して生成する結合が加水分解性の架橋剤(b12)とする}。
加水分解性結合としてはエステル結合及びアミド結合等が含まれる。
【0021】
分子内に加水分解性結合を有する架橋剤(b11)としては、例えば、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びポリグリセリン(重合度3~13)ポリアクリレート等の分子内に2~10のエチレン性不飽和結合を有する共重合性の架橋剤が挙げられる。
【0022】
架橋反応して生成する結合が加水分解性の架橋剤(b12)としては、多価グリシジル化合物(エチレングリコールジグリシジルエーテル等)、多価イソシアネート化合物(4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等)、多価アミン化合物(エチレンジアミン等)及び多価アルコール化合物(グリセリン等)等に代表されるカルボン酸と反応する反応型架橋剤が挙げられる。反応型架橋剤は、(メタ)アクリル酸(塩)と反応してエステル結合又はアミド結合を形成することができる。
【0023】
アルカリ性で加水分解する架橋剤(b1)の内、ゲル化剤(G)を添加した負極材の粘度安定性の観点から、多価アクリルアミド化合物及び多価アクリレート化合物が好ましく、更に好ましいのはN,N’-メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、特に更に好ましいのはN,N’-メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びエチレングリコールジグリシジルエーテル、最も好ましいのはN,N’-メチレンビスアクリルアミド及びトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートである。
【0024】
アルカリ性で加水分解しない架橋剤(b2)は、加水分解性結合を分子内に有さず、また、架橋反応により加水分解性結合を生成しない架橋剤である。このような架橋剤(b2)としては、2個以上のビニルエーテル結合を有する架橋剤(b21)及び2個以上のアリルエーテル結合を有する架橋剤(b22)等が挙げられる。好ましくは、反応性等の観点から、2個以上のアリルエーテル結合を有する架橋剤である。
【0025】
2個以上のビニルエーテル結合を有する架橋剤(b21)としては、エチレングリコールジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル(重合度2~5)、ビスフェノールAジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ソルビトールトリビニルエーテル及びポリグリセリン(重合度3~13)ポリビニルエーテル等が挙げられる。
【0026】
2個以上のアリルエーテル結合を有する架橋剤(b22)としては、分子内にアリル基を2個有しかつ水酸基を含まない架橋剤(b221)、分子内にアリル基を2個有しかつ水酸基を1~5個有する架橋剤(b222)、分子内にアリル基を3~10個有しかつ水酸基を有さない架橋剤(b223)、分子内にアリル基が3~10個有しかつ水酸基を1~3個有する架橋剤(b224)等が挙げられる。分子内に水酸基を含むと、ビニルモノマー(a1)及び/又は(a2){特に(メタ)アクリル酸(塩)}との相溶性が良く、架橋の均一性が増してゲル化剤(G)の性能が向上し、ゲル化剤(G)を含む負極材の粘度の長期安定性が更に優れる。
【0027】
分子内にアリル基を2個有しかつ水酸基を含まない架橋剤(b221)としては、1,4-シクロヘキサンジメタノールジアリルエーテル、アルキレン(炭素数2~5)グリコールジアリルエーテル及びポリアルキレン(炭素数2~6)グリコール(重量平均分子量:100~4000)ジアリルエーテル等が挙げられる。
分子内にアリル基を2個有しかつ水酸基を1~5個有する架橋剤(b222)としては、グリセリンジアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル及びペンタエリスリトールジアリルエーテル、ポリグリセリン(重合度2~5)ジアリルエーテル等が挙げられる。
分子内にアリル基を3~10個有しかつ水酸基を有さない架橋剤(b223)としては、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、グリセリントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル及びテトラアリルオキシエタン等が挙げられる。
分子内にアリル基が3~10個有しかつ水酸基を1~3個有する架橋剤(b224)としては、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル及びジグリセリントリアリルエーテル、ソルビトールトリアリルエーテル、ポリグリセリン(重合度3~13)ポリアリルエーテル等が挙げられる。
【0028】
アルカリ性で加水分解しない架橋剤(b2)は2種以上を併用してもよい。
架橋剤(b2)の内、2個以上のアリルエーテル結合を有する架橋剤(b22)が好ましく、更に好ましくは水酸基1~5個及びアリル基を2~10個有する架橋剤{(b222)及び(b224)}、特に好ましくは分子内にアリル基を3~10個有しかつ水酸基を1~3個有する架橋剤(b224)、最も好ましくはペンタエリスリトールトリアリルエーテル及びジグリセリントリアリルエーテル及びソルビトールトリアリルエーテルである。これらの架橋剤を用いると、水溶性ビニルモノマー(a1)及び加水分解により(a1)となるビニルモノマー(a2)との相溶性が良く効率的な架橋が行えるので好ましい。
【0029】
本発明の架橋重合体(A)中のアルカリ性で加水分解する架橋剤(b1)の含有量は、架橋剤(b1)の種類、平均重合度にもよるが、架橋重合体(A)の重量を基準として好ましくは0.05~1重量%、更に好ましくは0.1~0.8重量%、特に好ましくは0.1~0.5重量%である。この範囲であると、アルカリ電解液の過剰な離液を防止できるため、電池の長期に亘る放電特性が更に優れる。
【0030】
架橋重合体(A)中のアルカリ性で加水分解しない架橋剤(b2)の含有量は、架橋剤(b2)の種類にもよるが、架橋重合体(A)の重量を基準として、好ましくは0.05~1重量%、更に好ましくは0.05~0.5重量%、特に好ましくは0.1~0.3重量%である。この範囲であると、電池の長期に亘る放電特性が更に優れる。
【0031】
架橋重合体(A)中の架橋剤(b1)の架橋剤(b2)に対する重量比率[(b1)/(b2)]は、好ましくは1.5~5、更に好ましくは1.7~4、特に好ましくは1.9~3である。この範囲であると、アルカリ電解液の過剰な離液を防止できるため、電池の長期に亘る放電特性が更に優れる。
【0032】
架橋剤(b1)及び架橋剤(b2)の合計含有量は、架橋重合体(A)の重量に基づいて、好ましくは0.10~2.0重量%、更に好ましくは0.30~1.0重量%、特に好ましくは0.40~0.8重量%である。この範囲であると、アルカリ電解液の過剰な離液を防止できるため、電池の長期に亘る放電特性が更に優れる。また、ゲル化剤(G)の安定性が向上し、ゲル化剤(G)を含むアルカリ電解液の粘度の長期安定性が更に優れる。
【0033】
架橋重合体(A)は水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(b)を含む単量体組成物を、有機ヨウ素化合物、有機テルル化合物、有機アンチモン化合物及び有機ビスマス化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機典型元素化合物の存在下に重合することにより得ることができる。有機典型元素化合物の使用量を調整することにより、架橋重合体(A)生理食塩水への可溶性成分の量及び可溶性成分の内の分子量が100,000以下の成分のMw/Mnを所望の範囲とすることができる。
【0034】
有機ヨウ素化合物、有機テルル化合物、有機アンチモン化合物及び有機ビスマス化合物としては、ラジカル重合のドーマント種として働く有機典型元素化合物であれば制限はなく、WO2011/016166にドーマント種として記載の有機ヨウ素化合物、WO2004/014848に記載の有機テルル化合物、WO2006/001496に記載の有機アンチモン化合物及びWO2006/062255に記載の有機ビスマス化合物等を用いることができる。なかでも反応性の観点から、下記一般式(1)で表される有機典型元素化合物が好ましい。
これら有機典型元素化合物は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0035】
【化1】




【0036】
一般式(1)におけるR1及びR2はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~7の飽和炭化水素基又は少なくとも1つの非付加重合性二重結合若しくは少なくとも1つの非付加重合性三重結合を有する炭素数1~7の1価の基であり、R3は炭素数1~7のn価の飽和炭化水素基又は少なくとも1つの非付加重合性二重結合若しくは少なくとも1つの非付加重合性三重結合を有する炭素数2~12であるn価の基であり、但し、1分子中、R1~R3の内少なくとも一つは、前記の、対応する、非付加重合性二重結合又は少なくとも1つの非付加重合性三重結合を有する基であり、nは1~3の整数であり、nが1である場合にR1及びR2は互いに結合していてもよく、X1はテルル元素、アンチモン元素若しくはビスマス元素を有する1価の有機典型元素基又はヨード基である。
本明細書中、非付加重合性二重結合(以下、単に非重合性二重結合ともいう)及び非付加重合性三重結合(以下、単に非重合性三重結合ともいう)とは、不飽和結合の内、付加重合性不飽和結合(それぞれ、付加重合性炭素-炭素二重結合及び付加重合性炭素-炭素三重結合)を除いた結合であり、非付加重合性二重結合及び非付加重合性三重結合としては、カルボニル基に含まれる炭素-酸素二重結合、ニトリル基に含まれる炭素-窒素三重結合、芳香族炭化水素を構成する炭素-炭素二重結合及び複素芳香族化合物を構成する酸素-窒素二重結合並びに炭素-窒素二重結合等が挙げられ、なかでもカルボニル基に含まれる炭素-酸素二重結合、ニトリル基に含まれる炭素-窒素三重結合及び芳香族炭化水素を構成する炭素-炭素二重結合が好ましい。
【0037】
1及びR2が炭素数1~7の飽和炭化水素基である場合、炭素数1~7の飽和炭化水素基としては、炭素数1~7の直鎖飽和炭化水素基(メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基及びn-ヘキシル基等)及び炭素数1~7の分岐飽和炭化水素基(i-プロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、1-メチルブチル基、イソヘキシル基、s-ヘキシル基、t-ヘキシル基、ネオヘキシル基、ヘプチル基等)が挙げられる。なかでも溶解性と重合性の観点等から好ましいのは炭素数1~5の直鎖飽和炭化水素基であり、更に好ましいのは炭素数1~3の直鎖飽和炭化水素基である。
【0038】
1及びR2が少なくとも1つの非重合性二重結合又は少なくとも1つの非重合性三重結合を有する炭素数1~7である1価の基である場合、好ましい基としてはカルボキシ(塩)基(炭素数1、炭素-酸素二重結合)、フェニル基(炭素数6、非重合性炭素-炭素二重結合)、シアノ基(炭素数1、炭素-窒素三重結合)、シアノメチル基(炭素数2、炭素-窒素三重結合)、シアノエチル基(炭素数3、炭素-窒素三重結合)、シアノプロピル基(炭素数4、炭素-窒素三重結合)、シアノブチル基(炭素数5、炭素-窒素三重結合)、シアノペンチル基(炭素数6、炭素-窒素三重結合)、シアノヘキシル基(炭素数7、炭素-窒素三重結合)、カルボキシメチル基(炭素数2、炭素-酸素二重結合)、カルボキシエチル基(炭素数3、炭素-酸素二重結合)、カルボキシプロピル基(炭素数4、炭素-酸素二重結合)、カルボキシブチル基(炭素数5、炭素―酸素二重結合)、カルボキシペンチル基(炭素数6、炭素―酸素二重結合)、カルボキシヘキシル基(炭素数7、炭素―酸素二重結合)、ベンジル基(炭素数7、非重合性炭素-炭素二重結合)、メトキシカルボニル基(炭素数2、炭素-酸素二重結合)、エトキシカルボニル基(炭素数3、炭素-酸素二重結合)、プロピルオキシカルボニル基(炭素数4、炭素-酸素二重結合)、ブチルオキシカルボニル基(炭素数5、炭素-酸素二重結合)、ペンチルオキシカルボニル基(炭素数6、炭素-酸素二重結合)、ヘキシルオキシカルボニル基(炭素数7、炭素-酸素二重結合)、ヒドロキシエトキシカルボニル基(炭素数3、炭素-酸素二重結合)、ヒドロキシプロピルオキシカルボニル基(炭素数4、炭素-酸素二重結合)、ヒドロキシブチルオキシカルボニル基(炭素数5、炭素-酸素二重結合)、ヒドロキシペンチルオキシカルボニル基(炭素数6、炭素-酸素二重結合)及びヒドロキシヘキシルオキシカルボニル基(炭素数7、炭素-酸素二重結合)等が挙げられ、更に好ましいのは、カルボキシ(塩)基、シアノ基、カルボキシメチル基及びカルボキシエチル基である。
また、塩としては、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム及びカリウム等)塩、アルカリ土類金属(マグネシウム及びカルシウム等)塩及びアンモニウム(NH4)塩等が挙げられる。これらの塩の内、40重量%水酸化カリウム水溶液の吸収量の観点から、アルカリ金属塩及びアンモニウム塩が好ましく、更に好ましいのはアルカリ金属塩、特に好ましいのはナトリウム塩である。
【0039】
3は炭素数1~7のn価の飽和炭化水素基又は少なくとも1つの非重合性二重結合若しくは少なくとも1つの非重合性三重結合を有する炭素数2~12であるn価の基であり、nは1~3の整数である。
【0040】
3で表される炭素数1~7のn価の飽和炭化水素基の内、炭素数1~7の1価の飽和炭化水素基としては、炭素数1~7の直鎖飽和炭化水素基(メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基及びヘプチル基等)及び炭素数1~7の分岐飽和炭化水素基(i-プロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、1-メチルブチル基、イソヘキシル基、s-ヘキシル基、t-ヘキシル基、ネオヘキシル基及びイソヘプチル基等)が挙げられる。
3で表される炭素数1~7のn価の飽和炭化水素基の内、炭素数1~7の2価の飽和炭化水素基としては、炭素数1~7の2価の直鎖飽和炭化水素基(メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンテン基、ヘキセン基及びヘプテン基等)及び炭素数1~7の2価の分岐飽和炭化水素基(イソプロピレン基、イソブチレン基、s-ブチレン基、t-ブチレン基、イソペンチレン基、ネオペンチレン基、t-ペンチレン基、1-メチルブチレン基、イソヘキシレン基、s-ヘキシレン基、t-ヘキシレン基、ネオヘキシレン基及びイソヘプチレン基等)が挙げられる。
3で表される炭素数1~7のn価の飽和炭化水素基の内、炭素数1~7の3価の飽和炭化水素基としては、メチン基等が挙げられる。
3で表される炭素数1~7のn価の飽和炭化水素基の内、メチル基、メチレン基及びメチン基が好ましく、更に好ましいのはメチル基及びメチレン基である。
【0041】
3が少なくとも1つの非重合性二重結合又は少なくとも1つの非重合性三重結合を有する炭素数2~12であるn価の基の内、1価の基としては、R1及びR2で例示した基と同じ基が挙げられ、好ましいものも同じである。
3が少なくとも1つの非重合性二重結合又は少なくとも1つの非重合性三重結合を有する炭素数2~12である2価の基である場合、好ましい基としては、ベンゼンジイル基(炭素数6、非重合性炭素-炭素二重結合)、1-メトキシカルボニル-カルボニルオキシエチレンオキシカルボニル基(炭素数6、酸素-酸素二重結合)及びカルボニルオキシエチレンカルボニル基(炭素数4、酸素-酸素二重結合)等が挙げられる。
3が少なくとも1つの非重合性二重結合又は少なくとも1つの非重合性三重結合を有する炭素数2~12である3価の基である場合、好ましいものとしては、ベンゼントリイル基(炭素数6、非重合性炭素-炭素二重結合)及び2-カルボニルオキシ-カルボニルオキシプロピレンカルボニル基(炭素数5、酸素-酸素二重結合)等が挙げられる。
【0042】
nが1である場合にR1及びR2は互いに結合していてもよく、R1及びR2が互いに結合して形成される環構造を有する基として好ましいものとしては、γ-ブチロラクトニル基及びフルオレニル基等が挙げられる。尚、R1及びR2が互いに結合して環構造を形成する基は、R1及びR2が結合した炭素原子を環構造中に含む。
【0043】
1はテルル元素、アンチモン元素若しくはビスマス元素を有する1価の有機典型元素基又はヨード基であり、好ましいのはメチルテラニル基、ジメチルスチバニル基、ジメチルビスムタニル基及びヨード基、更に好ましいのはメチルテラニル基及びヨード基、特に好ましいのはヨード基である。
【0044】
一般式(1)で表される有機典型元素化合物の内でヨード基を有するものとしては、2-ヨードプロピオニトリル、2-ヨード-2-メチルプロピオニトリル、α-ヨードベンジルシアニド、2-ヨードプロピオン酸アミド、エチル-2-ヨード-2-メチルプロピオネート、2-ヨード-2-メチルプロピオン酸メチル、2-ヨード-2-メチルプロピオン酸プロピル、2-ヨード-2-メチルプロピオン酸ブチル、2-ヨード-2-メチルプロピオン酸ペンチル、2-ヨード-2-メチルプロピオン酸ヒドロキシエチル、2-ヨード-2-メチルプロピオン酸(塩)、2-ヨードプロピオン酸(塩)、2-ヨード酢酸(塩)、2-ヨード酢酸メチル、2-ヨード酢酸エチル、2-ヨードペンタン酸エチル、2-ヨードペンタン酸メチル、2-ヨードペンタン酸(塩)、2-ヨードヘキサン酸(塩)、2-ヨードヘプタン酸(塩)、2,5-ジヨードアジピン酸ジエチル、2,5-ジヨードアジピン酸(塩)、2,6-ジヨード-ヘプタン二酸ジメチル、2,6-ジヨード-ヘプタン二酸(塩)、α-ヨード-γ-ブチロラクトン、2-ヨードアセトフェノン、ベンジルヨージド、2-ヨード-2-フェニル酢酸(塩)、2-ヨード-2-フェニル酢酸メチル、2-ヨード-2-フェニル酢酸エチル、2-ヨード-2-(4’-メチルフェニル)酢酸エチル、2-ヨード-2-フェニル酢酸-ヒドロキシエチル、2-ヨード-2-(4’-ニトロフェニル)酢酸エチル、4-ニトロベンジルヨージド、(1-ヨードエチル)ベンゼン、ヨードジフェニルメタン、9-ヨード-9H-フルオレン、p-キシリレンジヨージド、1,4-ビス(1’-ヨードエチル)ベンゼン、エチレングリコールビス(2-メチル―2-ヨード―プロピネート)、トリス(2-メチル-ヨードプロピオン酸)グリセロール、1,3,5-トリス(1’-ヨードエチルベンゼン)及びエチレングリコールビス(2-ヨード―2フェニルアセテート)等が挙げられる。
【0045】
一般式(1)で表される有機典型元素化合物の内でテルル元素を有するものとしては、2-メチルテラニルプロピオニトリル、2-メチル-2-メチルテラニルプロピオニトリル、α-メチルテラニルベンジルシアニド、2-メチルテラニルプロピオン酸アミド、エチル-2-メチル-2-メチルテラニル-プロピネート、2-メチル-メチルテラニルプロピオン酸メチル、2-メチル-メチルテラニルプロピオン酸プロピル、2-メチル-メチルテラニルプロピオン酸ブチル、2-メチル-メチルテラニルプロピオン酸ペンチル、2-メチル-メチルテラニルプロピオン酸ヒドロキシエチル、2-メチル-2-メチルテラニル-プロピオン酸(塩)、2-メチルテラニルプロピオン酸(塩)、2-メチルテラニル酢酸(塩)、2-メチルテラニル酢酸メチル、2-メチルテラニル酢酸エチル、2-メチルテラニルペンタン酸エチル、2-メチルテラニルペンタン酸メチル、2-メチルテラニルペンタン酸(塩)、2-メチルテラニルヘキサン酸(塩)、2-メチルテラニルヘプタン酸(塩)、2,5-ジメチルテラニルアジピン酸ジエチル、2,5-ジメチルテラニルアジピン酸(塩)、2,6-ジメチルテラニル-ヘプタン二酸ジメチル、2,6-ジメチルテラニル-ヘプタン二酸(塩)、α-メチルテラニル-γ-ブチロラクトン、2-メチルテラニルアセトフェノン、2-メチルテラニル-2-フェニル酢酸(塩)、2-メチルテラニル-2-フェニル酢酸メチル、2-メチルテラニル-2-フェニル酢酸エチル、2-メチルテラニル-2-(4’-メチルフェニル)酢酸エチル、2-メチルテラニル-2-フェニル酢酸-ヒドロキシエチル、2-メチルテラニル-2-(4’-ニトロフェニル)酢酸エチル、(1-メチルテラニルエチル)ベンゼン、メチルテラニルジフェニルメタン、9-メチルテラニル-9H-フルオレン、1,4-ビス(1’-メチルテラニルエチル)ベンゼン、エチレングリコールビス(2-メチル―2-メチルテラニル―プロピネート)、トリス(2-メチル-メチルテラニルプロピオン酸)グリセロール、1,3,5-トリス(1’-メチルテラニルエチルベンゼン)及びエチレングリコールビス(2-メチルテラニル―2フェニルアセテート)等が挙げられる。
【0046】
一般式(1)で表される有機典型元素化合物の内でアンチモン元素を有するものとしては、2-ジメチルスチバニルプロピオニトリル、2-メチル-2-ジメチルスチバニルプロピオニトリル、α-ジメチルスチバニルベンジルシアニド、2-ジメチルスチバニルプロピオン酸アミド、エチル-2-メチル-2-ジメチルスチバニル-プロピネート、2-メチル-ジメチルスチバニルプロピオン酸メチル、2-メチル-ジメチルスチバニルプロピオン酸プロピル、2-メチル-ジメチルスチバニルプロピオン酸ブチル、2-メチル-ジメチルスチバニルプロピオン酸ペンチル、2-メチル-ジメチルスチバニルプロピオン酸ヒドロキシエチル、2-メチル-2-ジメチルスチバニル-プロピオン酸(塩)、2-ジメチルスチバニルプロピオン酸(塩)、2-ジメチルスチバニル酢酸(塩)、2-ジメチルスチバニル酢酸メチル、2-ジメチルスチバニル酢酸エチル、2-ジメチルスチバニルペンタン酸エチル、2-ジメチルスチバニルペンタン酸メチル、2-ジメチルスチバニルペンタン酸(塩)、2-ジメチルスチバニルヘキサン酸(塩)、2-ジメチルスチバニルヘプタン酸(塩)、2,5-ジジメチルスチバニルアジピン酸ジエチル、2,5-ジジメチルスチバニルアジピン酸(塩)、2,6-ジジメチルスチバニル-ヘプタン二酸ジメチル、2,6-ジジメチルスチバニル-ヘプタン二酸(塩)、α-ジメチルスチバニル-γ-ブチロラクトン、2-ジメチルスチバニルアセトフェノン、2-ジメチルスチバニル-2-フェニル酢酸(塩)、2-ジメチルスチバニル-2-フェニル酢酸メチル、2-ジメチルスチバニル-2-フェニル酢酸エチル、2-ジメチルスチバニル-2-(4’-メチルフェニル)酢酸エチル、2-ジメチルスチバニル-2-フェニル酢酸-ヒドロキシエチル、2-ジメチルスチバニル-2-(4’-ニトロフェニル)酢酸エチル、(1-ジメチルスチバニルエチル)ベンゼン、ジメチルスチバニルジフェニルメタン、9-ジメチルスチバニル-9H-フルオレン、1,4-ビス(1’-ジメチルスチバニルエチル)ベンゼン、エチレングリコールビス(2-メチル―2-ジメチルスチバニル―プロピネート)、トリス(2-メチル-ジメチルスチバニルプロピオン酸)グリセロール、1,3,5-トリス(1’-ジメチルスチバニルエチルベンゼン)及びエチレングリコールビス(2-ジメチルスチバニル-2フェニルアセテート)等が挙げられる。
【0047】
一般式(1)で表される有機典型元素化合物の内でビスマス元素を有するものとしては、2-ジメチルビスムタニルプロピオニトリル、2-メチル-2-ジメチルビスムタニルプロピオニトリル、α-ジメチルビスムタニルベンジルシアニド、2-ジメチルビスムタニルプロピオン酸アミド、エチル-2-メチル-2-ジメチルビスムタニルプロピネート、2-メチル-ジメチルビスムタニルプロピオン酸メチル、2-メチル-ジメチルビスムタニルプロピオン酸プロピル、2-メチル-ジメチルビスムタニルプロピオン酸ブチル、2-メチル-ジメチルビスムタニルプロピオン酸ペンチル、2-メチル-ジメチルビスムタニルプロピオン酸ヒドロキシエチル、2-メチル-2-ジメチルビスムタニルプロピオン酸(塩)、2-ジメチルビスムタニルプロピオン酸(塩)、2-ジメチルビスムタニル酢酸(塩)、2-ジメチルビスムタニル酢酸メチル、2-ジメチルビスムタニル酢酸エチル、2-ジメチルビスムタニルペンタン酸エチル、2-ジメチルビスムタニルプペンタン酸メチル、2-ジメチルビスムタニルプペンタン酸(塩)、2-ジメチルビスムタニルヘキサン酸(塩)、2-ジメチルビスムタニルヘプタン酸(塩)、2,5-ジジメチルビスムタニルアジピン酸ジエチル、2,5-ジジメチルビスムタニルアジピン酸(塩)、2,6-ジジメチルビスムタニルヘプタン二酸ジメチル、2,6-ジジメチルビスムタニルヘプタン二酸(塩)、α-ジメチルビスムタニルγ-ブチロラクトン、2-ジメチルビスムタニルアセトフェノン、2-ジメチルビスムタニル2-フェニル酢酸(塩)、2-ジメチルビスムタニル2-フェニル酢酸メチル、2-ジメチルビスムタニル2-フェニル酢酸エチル、2-ジメチルビスムタニル2-(4’-メチルフェニル)酢酸エチル、2-ジメチルビスムタニル2-フェニル酢酸-ヒドロキシエチル、2-ジメチルビスムタニル2-(4’-ニトロフェニル)酢酸エチル、(1-ジメチルビスムタニルエチル)ベンゼン、ジメチルビスムタニルジフェニルメタン、9-ジメチルビスムタニル9H-フルオレン、1,4-ビス(1’-ジメチルビスムタニルエチル)ベンゼン、エチレングリコールビス(2-メチル―2-ジメチルビスムタニルプロピネート)、トリス(2-メチル-ジメチルビスムタニルプロピオン酸)グリセロール、1,3,5-トリス(1’-ジメチルビスムタニルエチルベンゼン)及びエチレングリコールビス(2-ジメチルビスムタニル2フェニルアセテート)等が挙げられる。
【0048】
これらの内で好ましいのは、2-ヨード-2-メチルプロピオニトリル、エチル-2-ヨード-2-メチルプロピオネート、2-ヨード-2-メチルプロピオン酸(塩)、2-ヨード酢酸(塩)、2-ヨード酢酸メチル、2,5-ジヨードアジピン酸ジエチル、2,5-ジヨードアジピン酸、エチレングリコールビス(2-メチル―2-ヨード―プロピネート)、エチレングリコールビス(2-ヨード―2フェニルアセテート)、2-メチルテラニルプロピオニトリル、エチル-2-メチル-2-メチルテラニル-プロピネート、2,5-ビスメチルテラニルアジピン酸ジエチル、エチレングリコールビス(2-メチル―2-メチルテラニル―プロピネート)、エチレングリコールビス(2-メチルテラニル―2フェニルアセテート)、2-ジメチルスチバニルプロピオニトリル、エチル-2-メチル-2-ジメチルスチバニル-プロピネート及び2-ジメチルビスムタニルプロピオニトリル及びエチル-2-メチル-2-ジメチルビスムタニルプロピネートである。
【0049】
有機典型元素化合物の使用量は、上記モノマー(a1)、(a2)、架橋剤(b)及び必要により使用するその他のモノマー(a3)の重量に基づいて、好ましくは0.0005~0.1重量%、更に好ましくは0.005~0.05重量%である。この範囲であると、生理食塩水への可溶性成分の量と可溶性成分の内の分子量が100,000以下の成分のMw/Mnが適度な範囲のもが得られ、ゲル化剤(G)を添加した負極材の粘度が適性なものとなり、亜鉛粉末の沈降が生じることなく、耐衝撃性や放電特性が良好である。
【0050】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(b)を含む単量体組成物を前記の有機典型元素化合物の存在下に重合する方法には、水溶液重合、懸濁重合、塊状重合、逆相懸濁重合及び乳化重合等の公知の重合方法等を適用することができる。これらの重合方法においては、有機典型元素化合物はモノマー又はモノマー水溶液に存在させておいてもよいし、モノマー溶液等への開始剤等の添加時に添加してもよい。
【0051】
これらの重合方法の内、放電特性及び耐衝撃性の観点から好ましいのは水溶液重合、懸濁重合、逆相懸濁重合及び乳化重合、更に好ましいのは水溶液重合、逆相懸濁重合及び乳化重合、特に好ましいのは水溶液重合及び逆相懸濁重合である。これらの重合には、公知の重合開始剤、連鎖移動剤及び/又は溶媒等が使用できる。
【0052】
水溶液重合、懸濁重合、逆相懸濁重合及び乳化重合で重合する方法は、公知の方法でよく、例えばラジカル重合開始剤を用いて重合する方法、放射線、紫外線又は電子線等を照射する方法が挙げられる。
【0053】
ラジカル重合開始剤を用いる場合、この開始剤としては、アゾ化合物[アゾビスイソバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリックアシッド)、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ハイドロクロライド等]、無機過 酸化物[過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等]、有機過酸化物[ジ-t-ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等]、レドックス開始剤[アルカリ金属塩の亜硫酸塩若しくは重亜硫酸塩、亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸アンモニウム、L-アスコルビン酸等の還元剤と、アルカリ金属塩の過硫酸塩、過硫酸アンモニウム、過酸化水素水等の過酸化物の組み合わせ]等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0054】
重合温度は使用する開始剤の種類等によっても異なるが、ポリマーの重合度をより高くする観点から、好ましくは-10℃~100℃、更に好ましくは-10℃~80℃である。 開始剤の量に関しても、特に限定はないが、ビニルモノマー(a1)、(a2)、架橋剤(b)及び必要により使用するその他のモノマー(a3)の合計重量を基準として、ポリマーの重合度をより高くする観点から、0.000001~3.0重量%が好ましく、更に好ましくは0.000001~0.5重量%である。
【0055】
水溶液重合の場合、単量体の重合濃度は、他の重合条件によっても種々異なるが、水溶性ビニルモノマー(a1)及び加水分解により(a1)となるビニルモノマー(a2)は、重合濃度を高くすると重合反応と並行してモノマー自体の疑似架橋(自己架橋)が起こり易く、吸収量の低下やポリマーの平均重合度の低下を招くこと、また重合時の温度コントロールも行いづらくポリマーの平均重合度の低下やオリゴマー成分の増加を招きやすいので、重合濃度は、10~40重量%が好ましく、更に好ましくは10~30重量%である。また、重合温度に関しては-10~100℃が好ましく、更に好ましくは-10~80℃である。重合時の溶存酸素量に関しては、ラジカル開始剤の添加量等にもよるが、0~2ppm(2×10-4重量%以下)が好ましく、更に好ましくは0~0.5ppm(0.5×10-4重量%以下)である。これらの範囲であると、高重合度の架橋重合体(A)を製造することができる。
【0056】
(メタ)アクリル酸等の酸基を有するモノマーを使用する場合、重合時の酸基の中和度は、所定量の架橋剤(b1)及び(b2)がモノマー水溶液に完全に溶解できるのであれば特に限定はないが、(b1)に比べて、(b2)は水溶性が乏しく、また特に酸基を有するモノマーの水溶液に対する溶解度は極めて低く所定量の(b2)を添加しても(b2)がモノマー水溶液から分離し所定の架橋が行えない場合があるので、重合時の酸基を有するモノマーの中和度は、0~30モル%で重合を行ない必要により重合後に更に中和するのが好ましく、未中和の状態で重合した後必要により重合後に中和するのがより好ましい。また、酸基を有するモノマーは、同一条件で重合を行った場合、中和度が低い方が重合度が上がりやすいため、ポリマーの重合度を大きくするためにも、中和度が低い状態で重合を行った方が好ましい。
【0057】
逆相懸濁重合法に関しては、ヘキサン、トルエン及びキシレン等に代表される疎水性有機溶媒中でモノマーの水溶液を、分散剤の存在下、懸濁・分散して重合する重合法であるが、この重合法においても、上記同様モノマー水溶液中のモノマー濃度は10~40重量%が好ましく、更に好ましくは10~30重量%である。この範囲であると、高重合度の架橋重合体(A)を製造することができる。
【0058】
尚、この逆相懸濁重合法に関しては、重合時に分散剤を使用してもよい。分散剤としては、HLB(Hydrophile-Lipophile Balance)値が3~8のソルビタンモノステアリン酸エステル等のソルビタン脂肪酸エステル類、グリセリンモノステアリン酸エステル等のグリセリン脂肪酸エステル類及びショ糖ジステアリン酸エステル等のショ糖脂肪酸エステル類等の界面活性剤やエチレン/アクリル酸共重合体のマレイン化物、エチレン/酢酸ビニル共重合体のマレイン化物、スチレンスルホン酸(塩)/スチレン共重合体等の分子内に親水性基を有し、かつ、モノマー水溶液を分散させる溶媒に可溶な高分子分散剤(親水性基;0.1~20重量%、重量平均分子量;1,000~1,000,000)等を例示できるが、分散剤としては高分子分散剤を使用した方が、溶媒中でのモノマー水溶液の懸濁粒子の大きさを調整しやすく、必要とする粒子径の架橋重合体(A)の含水ゲルを作製できるので好ましい。
【0059】
分散剤の使用量は、アルカリ電池の放電特性の観点から、疎水性有機溶媒の重量を基準として、0.1~20重量%が好ましく、更に好ましくは0.5~10重量%である。逆相懸濁重合におけるモノマー水溶液と疎水性有機溶媒との重量比率(W/O比率)は、0.1~2.0が好ましく、0.3~1.0が更に好ましい。これらの範囲であると、架橋重合体(A)の粒子径が更に調整しやすい。
【0060】
架橋重合体(A)の製造において、架橋剤(b)を使用しない以外は全く同じ条件で重合体を製造した場合のポリマーの平均重合度が、好ましくは5,000~1,000,000となる条件、更に好ましくは10,000~1,000,000となる条件で重合することが更に好ましい。
平均重合度が、5,000以上となる条件で重合を行うと、適量の架橋剤を使用することによりゲル化剤(G)を添加した高濃度アルカリ水溶液の粘度低下及び/又は曳糸性の増大を防止することができる。上記平均重合度の測定は、後述の架橋重合体(A)の生理食塩水への可溶性成分の重量平均分子量及び数平均分子量の測定方法と同様にして行うことができる。
【0061】
本発明において、水溶液重合又は逆相懸濁重合等により得た架橋重合体(A)は、水を含むゲル(含水ゲル)として得られる。含水ゲルは、乾燥した後にゲル化剤(G)として使用する。 含水ゲルの乾燥方法に関しては、水溶液重合の場合、含水ゲルをミートチョッパーやカッター式の粗砕機でゲルをある程度細分化(細分化のレベルは0.5~20mm角程度)あるいはヌードル化し、必要により水酸化アルカリ金属水溶液等を添加して含水ゲルの中和を行った後、透気乾燥(パンチングメタルやスクリーン上に含水ゲルを積層し、強制的に50~150℃の熱風を通気させて乾燥する等)や通気乾燥(含水ゲルを容器中に入れ、熱風を通気・循環させ乾燥、ロータリーキルンの様な機械で更にゲルを細分化しながら乾燥する)等の方法を例示できる。これらの中で、透気乾燥が短時間で効率的な乾燥が行えるため好ましい。一方、逆相懸濁重合の場合の含水ゲルの乾燥方法は、重合した含水ゲルと有機溶媒をデカンテーション等の方法で固液分離した後、減圧乾燥(減圧度;100~50,000Pa程度)又は通気乾燥を行うのが一般的である。
【0062】
水溶液重合における含水ゲルの他の乾燥方法としては、例えば、ドラムドライヤー上に含水ゲルを圧縮延伸して乾燥する接触乾燥法等があるが、含水ゲルは熱伝導が悪いため、乾燥を行うためにドラム上等に含水ゲルの薄膜を作製する必要がある。しかし、市販のドラムドライヤーの材質は、一般的に鉄、クロム及びニッケル等の亜鉛よりイオン化傾向の低い金属で形成されているため、含水ゲルあたりのドラム金属面と接触する頻度が極めて高くなり、また含水ゲルはポリ(メタ)アクリル酸(塩)等の含水ゲルであるため、ゲル中に溶出する亜鉛よりイオン化傾向の低い金属元素の含有量が多くなる。更に、該含水ゲルとドラムとの接触頻度が極めて高く、該含水ゲルは粘着性が高いため、ナイフの様なものをドラムドライヤーに接触させて乾燥物をドラムドライヤーから剥離させる必要があり、ドラムとナイフの機械的摩耗のためドラムあるいはナイフの金属面が摩耗し、金属が乾燥物中に混入する。以上の様に、ドラムドライヤー等の接触乾燥法を利用すると、ゲル化剤(G)中に金属イオンや金属粉末が混入しやすく、これら亜鉛よりイオン化傾向の低い金属(標準電極電位が亜鉛よりも低い金属のことで、Cr、Fe、Ni、Sn、Pb、Cu、Hg、Ag等の原子記号で表せる金属)イオンや金属粉末をかなり多量に含有することになる。これらのゲル化剤(G)をアルカリ電池用のゲル化剤(G)として使用すると、電池中の亜鉛粉末が亜鉛よりイオン化傾向の低い金属イオン又は金属粉末との間で電池を形成するため、電気分解により水素ガスが発生し、それにより電池内部の圧力が上昇し、更にはアルカリ電解液の流出やひどい場合は電池の破損を引き起こす場合がある。更に、含水ゲルをドラムドライヤー上等で圧縮延伸して乾燥した薄膜フィルム状乾燥物は、その後粉砕を行い乾燥物の粒径を所望の粒径に調整しても粒子が鱗片状となっているため、透気乾燥法や通気乾燥法でブロック状の乾燥物の粉砕物と比較すると遙かに強度が弱く、高濃度のアルカリ水溶液中で膨潤させ亜鉛粉末と機械的に攪拌混合すると、膨潤したゲルが破壊されてしまいゲルが小さくなる。従って、ドラムドライヤー等の接触乾燥法を利用しないことが好ましい。
【0063】
本発明において、含水ゲル乾燥時の乾燥温度は、使用する乾燥機や乾燥時間等により種々異なるが、好ましくは、50~150℃、更に好ましくは80~130℃である。乾燥温度が、50℃以下であると乾燥に長時間を要し、生産性が著しく低下する。50℃以上であると乾燥に長時間を要さず効率的である。乾燥時間に関しても、使用する乾燥機の機種及び乾燥温度等により異なるが、好ましくは5~300分、更に好ましくは、5~120分である。
【0064】
このようにして得られた架橋重合体(A)の乾燥物は、必要により粉砕して粉末化する。粉砕方法は、公知の方法でよく、例えば衝撃粉砕機(ピンミル、カッターミル、スキレルミル及びACMパルペライザー等)や空気粉砕機(ジェット粉砕機等)で行うことができる。
【0065】
粉末化した架橋重合体(A)は、必要によりスクリーンを備えたフルイ機(振動フルイ機、遠心フルイ機等)を用いて、所望の粒子径の乾燥粉末を採取することができる。
【0066】
本発明において、乾燥後の任意の段階で、磁気を利用した除鉄機を用いて混入した鉄等の金属粉末を除去するのが好ましい。しかし、除鉄機を用いてかなり精密に除鉄を行っても、除鉄機では磁性のない金属を除去するのは困難であり、また磁性のある金属に関しても、乾燥したポリマー粒子内部に含まれているものや乾燥粒子に付着しているものは除去できないので、初めからこれら金属が混入しないように、生産設備に関しても、十分に配慮することが望ましい。
【0067】
本発明における架橋重合体(A)の生理食塩水(0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液)への可溶性成分量は、(A)の重量を基準として5~20重量%であり、好ましくは5~15、更に好ましくは5~10である。
可溶性成分量がこの範囲であると、ゲル化剤(G)を添加したアルカリ電解液の粘度が好適な範囲となり、負極材の液切れが良くなるため品質が安定した電池を製造することができ、かつ負極材中での亜鉛粉末の沈降を防ぐことができるようになるため、経時での放電特性に優れた電池を生産できる。可溶性成分量が20重量%を超えるとゲル化剤(G)を添加したアルカリ電解液に曳糸性が現れ、負極材の液切れが著しく悪化し充填量にばらつきが生じるため電池の品質が安定しない。可溶性成分量が5重量%に満たない場合はゲル化剤(G)を添加したアルカリ電解液の粘度が低くなり亜鉛粉末の沈降が生じるため耐衝撃性や放電特性が悪化する。
【0068】
架橋重合体(A)の生理食塩水への可溶性成分量は、以下の方法で測定することができる。
<(A)の生理食塩水への可溶性成分量の測定方法>
ゲル化剤(G)1gを精秤し(精秤値をS0とする)、生理食塩水(0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液)250mlに添加して3時間撹拌した後に、膨潤したゲルをろ紙(アドバンテック社製Filter Paper 1号定性ろ紙)にて取り除く。ゲルを取り除いた後に得られるろ液を可溶性成分の抽出液とする。
上記の方法によって得られた可溶性成分の抽出液約25mlを容量50mlのナス型フラスコに入れてエバポレーターを用いて減圧下に水を留去する。ナス型フラスコに抽出液を約25ml追加して減圧下に水を留去する操作を繰り返して抽出液全量について水を留去する。次に残留物の入ったナス型フラスコを130℃の循風乾燥機中で90分間静置後、デシケーター中で15分間静置してナス型フラスコを室温まで冷却する。冷却後にナス型フラスコ中の残留物の重量(S1)を測定する。同様の操作を先の操作で用いた抽出液と等量の生理食塩水について行い、冷却後の残留物の重量(S2)を測定する。尚、冷却後の残留物の重量は、冷却後の残留物が入ったナス型フラスコの重量から予め測定しておいたナス型フラスコの重量を引くことにより求める。
上記で得られた(S0)、(S1)及び(S2)を用いて次式から可溶性成分量を算出する。
可溶性成分量(%)=(S1-S2)÷S0×100
【0069】
本発明における架橋重合体(A)の生理食塩水への可溶性成分の内の分子量100,000以下の成分の数平均分子量(以下、Mnと略記)に対する重量平均分子量(以下、Mwと略記)の比率(Mw/Mn)は4.0~6.0であり、好ましくは4.0~5.5、更に好ましくは4.0~5.0である。
可溶性成分の内の分子量100,000以下の成分のMw/Mnがこの範囲であると、ゲル化剤(G)を添加したアルカリ電解液の粘度が好適な範囲となり、負極材の液切れが良くなるため品質が安定した電池を製造することができ、かつ負極材中での亜鉛粉末の沈降を防ぐことができるようになるため、経時での放電特性に優れた電池を生産できる。分子量が100,000以下の可溶性成分のMw/Mnが6.0を超えると可溶性成分中の低分子量成分の量が多くなるためゲル化剤(G)を添加したアルカリ電解液の粘度が低くなり、亜鉛粉末の沈降が生じるため耐衝撃性や放電特性が悪化する。Mw/Mnが4.0に満たない場合は、可溶性成分中の高分子量成分の量が多くなるためゲル化剤(G)を添加したアルカリ電解液に曳糸性が現れ、負極材の液切れが著しく悪化し充填量にばらつきが生じるため電池の品質が安定しない。
【0070】
架橋重合体(A)の生理食塩水への可溶性成分の内の分子量が100,000以下の成分のMwとMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)によって以下の条件で可溶性成分のクロマトグラムを得て、分子量が100,000以下の区画におけるMwとMnを算出することにより求められる。
装置:「HLC-8320」(東ソー株式会社製)
カラム:「TSK Guardcolumn PWXL」(1本)、「TSKgel G60000 PWXL、TSKgel G3000 PWXL」(1本)(いずれも東ソー株式会社製)を各1本連結したもの
移動相:0.5重量%酢酸ナトリウム水溶液/メタノール=7/3(体積比)
測定液:上述の可溶性成分量の測定方法における可溶性成分の抽出液
溶液注入量:50μl
流量:1.0ml/分
測定温度:40℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリエチレンオキシド
【0071】
本発明のゲル化剤(G)は架橋重合体(A)以外に負極物質の混合物の充填時の流動性の改善等を目的として、作業性や電池特性に問題が起こらない範囲で、必要により他の添加剤を含んでもよい。
他の添加剤としては、増粘剤、耐振動衝撃性向上剤及び放電特性向上剤等が挙げられる。
【0072】
増粘剤としては、例えば、CMC(カルボキシメチルセルロース)、天然ガム(グァーガム等)、架橋されていないポリ(メタ)アクリル酸(塩)及びポリビニルアルコール等の水溶性樹脂等を例示することができる。これら必要により添加する増粘剤の粒子径は特に限定されないが、乾燥物の体積平均粒子径で0.1~100μm(更には0.1~50μm)であることが好ましい。この範囲であるとアルカリ電解液と混合させ電池の負極容器に充填する際等、取扱いが容易である。
【0073】
耐振動衝撃性向上剤としては、チタン、インジウム、スズ及びビスマスからなる群から選ばれる金属元素の酸化物、水酸化物及び硫化物等が使用できる。
放電特性向上剤としては、二酸化珪素及び珪酸カリウム等の公知の化合物等が挙げられる。
他の添加剤を含有する場合の含有量は、アルカリ電解液の重量を基準として、それぞれ0~5.0重量%が好ましく、0~3.0重量%が更に好ましい。
【0074】
その他の添加剤は、任意の段階{架橋重合体(A)製造工程の内、重合工程、細断工程、乾燥工程、粉砕工程、表面架橋工程及び/又はこれらの工程の前後}において添加することができる。
【0075】
本発明のゲル化剤(G)の40重量%水酸化カリウム水溶液吸収量は、40~70g/gが好ましく、更に好ましくは、42~65g/g、特に好ましくは45~60である。この範囲であるとアルカリ電解液の過剰な離液を防止でき、電池の長期に亘る放電特性が更に優れる。また、アルカリ電池の耐衝撃性、生産性(工程簡略化)が優れる。
【0076】
本発明のゲル化剤(G)の40重量%水酸化カリウム水溶液吸収量は以下の方法で測定される。
<40重量%水酸化カリウム水溶液吸収量の測定方法>
目開き63μm(JIS Z8801-1:2006)のナイロン網で作製したティーバッグ(縦20cm、横10cm)に測定試料1.00gを入れ、40重量%水酸化カリウム水溶液1,000ml中に無撹拌下、14時間浸漬した後、30分間吊るして過剰の水酸化カリウム水溶液を除去し、ティーバッグの重量(h1)を測定する。尚、使用した生理食塩水及び測定雰囲気の温度は25℃±2℃とする。測定試料を用いない以外は上記と同様にして、遠心脱水後のティーバッグの重量(h2)を測定し、下記式から0重量%水酸化カリウム水溶液吸収量を算出する。
40重量%水酸化カリウム水溶液吸収量(g/g)=(h1)-(h2)
【0077】
本発明において、40重量%水酸化カリウム水溶液にゲル化剤(G)を2重量%添加した混合液の25℃における粘度は10~60Pa・sであり、好ましくは25~50、更に好ましくは30~40である。混合液の粘度が10~60Pa・sの範囲外であると、アルカリ電解液の過剰な離液を防止できず、電池の長期に亘る放電特性に劣り、また、耐衝撃性及び生産性(充填性)が悪くなる。
【0078】
40重量%水酸化カリウム水溶液にゲル化剤(G)を2重量%添加した混合液の粘度は以下の方法で測定される。
40重量%水酸化カリウム水溶液98重量部及びゲル化剤(G)2重量部を均一になるまで撹拌混合して25℃で16時間放置した後の混合液を測定試料とし、デジタルB型粘度計(TOKIMEC社製)を用いて、測定温度25℃で、JIS7117-1:1999に準拠して測定する。尚、ローターNo.4を使用し、回転数3rpmで測定する。
【0079】
本発明におけるゲル化剤(G)の体積平均粒子径は、好ましくは30~400μm、更に好ましくは30~170μm、特に好ましくは30~100μmである。
体積平均粒子径がこの範囲であると、ゲル化剤(G)を添加したアルカリ電解液の粘度が好適な範囲となり、負極材の液切れが良くなるため品質が安定した電池を製造することができ、かつ負極材中での亜鉛粉末の沈降を防ぐことができるようになるため、経時での放電特性に優れた電池を生産できる。
【0080】
本発明のゲル化剤(G)の体積平均粒子径は、ゲル化剤(G)をメタノールに分散させ、レーザー回折式粒度分布測定装置[マイクロトラック(日機装株式会社製)]により測定される。
【0081】
本発明のゲル化剤(G)を含有する負極材の離液率は、10重量%以下が好ましく、更に好ましくは0.1~7重量%、特に好ましくは0.3~5重量%、最も好ましくは0.5~2.5重量%である。この範囲であると電池の長期に渡る放電特性が更に優れる。
【0082】
尚、上記の離液率は以下の方法で測定される。
<離液率の測定方法>
40重量%水酸化カリウム水溶液100重量部、ゲル化剤(G)2重量部及び体積平均粒子径200μmの亜鉛粉末200重量部を均一になるまで撹拌混合してアルカリ電池用負極材作製する。本負極材をJIS K7223-1996に準拠して作製した目開きが32μm(400メッシュ)のナイロンスクリーンからなるティーバッグの底部に75.0g測り入れ、25℃で168時間(1週間)静置する。その後、このティーバックをクリップでつり下げ静置して30分間水切りを行った後、ティーバックの水切り後の重量(W1)(g)を測定する。また、本負極材を入れずにティーバッグのみで同様の操作を行い、ティーバッグの重量(W2)(g)を測定する。下式により離液率を算出する。
離液率(重量%)=[{75.0}-{W1}+{W2}]/{75.0}×100
【0083】
本発明のゲル化剤(G)を適用できるアルカリ電池としては特に限定されず、一般的なアルカリ電池、例えばLR-20(単1型アルカリ電池)、LR-6型(単3型アルカリ電池)はもとより、その他各種のアルカリ電池に適用できる。アルカリ電池は、一般的に外装缶の中に正極剤、集電棒及びゲル負極が封入された構造を有し、正極剤とゲル負極とはセパレーター等により分離されている。
【0084】
本発明のゲル化剤(G)のアルカリ電池への充填方法としては、
(1)本発明のゲル化剤(G)、アルカリ電解液(例えば高濃度の水酸化カリウム水溶液、必要により酸化亜鉛等を含有する)、亜鉛粉末(及び/又は亜鉛合金粉末)及び必要により他の添加剤を事前混合し負極物質の混合物を作製し、電池の負極容器内にこれを充填してゲル状負極とする方法、
(2)本発明のゲル化剤(G)及び亜鉛粉末(及び/又は亜鉛合金粉末)及び必要により他の添加剤を電池の負極容器内に充填した後、アルカリ電解液を充填し容器内でゲル状負極を生成する方法等を例示できる。
上記の内、亜鉛粉末が電池の負極容器内に均一に分散できる上記(1)の方法が好ましい。
ゲル化剤(G)の添加量は、負極容器の構造、亜鉛粉末の粒径及びアルカリ電解液の濃度によっても種々異なるが、アルカリ電解液の重量を基準として、0.5~10重量%が好ましく、1.0~5.0重量%が更に好ましい。添加量が、0.5~10重量%であると、ゲル化剤を含んだアルカリ電解液の粘度が適度となり、亜鉛粉末の沈降を防止でき取り扱い性も容易である。
【実施例0085】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、超純水は電気伝導率0.06μS/cm以下の水、イオン交換水は電気伝導率1.0μS/cm以下の水を示す。
【0086】
<実施例1>
3リットルの断熱重合槽に、アクリル酸380g、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル0.49g(対アクリル酸0.13重量%)、トリメチロールプロパントリアクリレート1.33g(対アクリル酸0.35重量%)及びイオン交換水1600gを入れて撹拌混合してアクリル酸水溶液を調整した後、アクリル酸水溶液を3℃に冷却した。冷却後、アクリル酸水溶液中に窒素を流量5L/minで通気して、アクリル酸水溶液中の溶存酸素濃度を0.10ppm以下とした。溶存酸素濃度は、隔膜電極法に基づく酸素濃度計(ORBISPHERE 510、HACH ULTRA社製)を用いて測定した。アクリル酸水溶液が3℃であることを確認した後に、窒素通気を継続しながら断熱重合槽に重合開始剤として、濃度10重量%の2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ハイドロクロライド(和光純薬工業株式会社製、商品名:V-50)水溶液11.40g、2-ヨード-2-メチルプロピオニトリル(TCI製)0.055g、濃度1.0重量%の過酸化水素水1.14g、濃度1.0重量%のL-アスコルビン酸水溶液1.14g、濃度0.1重量%の硫酸鉄(III)水溶液0.57gを添加した。重合開始剤添加後25分間窒素通気を継続した後に窒素通気を停止し、16時間静置して重合反応を行った。16時間静置後に、重合反応によって得られる含水ゲルを重合反応槽から取り出した。
取り出した含水ゲルを、小型ミートチョッパー(ローヤル社製)を用いて3~10mmの太さのヌードル状になるように細分化し、細分化した含水ゲルに49重量%水酸化ナトリウム(試薬特級)水溶液132gを加えた後に前記小型ミートチョッパーを用いて含水ゲルに均一混練して中和した。
中和した含水ゲルを目開き850μmのSUS製のスクリ-ンの上に厚さ5cmで積層し、小型透気乾燥機(井上金属株式会社製)を用いて150℃の熱風を1時間含水ゲルに透気させて含水ゲル中の水分を蒸発させ、乾燥ゲルを得た。
乾燥ゲルをクッキングミキサーを用いて粉砕した後に、目開き150μm(100メッシュ)の篩を用いて、粒子径150μm以下のものを採取し、本発明のゲル化剤(G-1)を得た。
【0087】
<実施例2>
目開き45μm(330メッシュ)の篩を用いて、粒子径45μm以下のものを採取した以外は実施例1と同様にして、本発明のゲル化剤(G-2)を得た。
【0088】
<実施例3>
目開き250μm(60メッシュ)の篩を用いて、粒子径250μm以下のものを採取した以外は、実施例1と同様にして、本発明のゲル化剤(G-3)を得た。
【0089】
<実施例4>
目開き600μm(26メッシュ)の篩を用いて、粒子径600μm以下のものを採取した以外は、実施例1と同様にして、本発明のゲル化剤(G-4)を得た。
【0090】
<実施例5>
トリメチロールプロパントリアクリレートの仕込量を0.76g(対アクリル酸0.20重量%)に代えた以外は実施例1と同様にして、本発明のゲル化剤(G-5)を得た。
【0091】
<実施例6>
トリメチロールプロパントリアクリレートの仕込量を2.09g(対アクリル酸0.55重量%)に代えた以外は、実施例1と同様にして、本発明のゲル化剤(G-6)を得た。
【0092】
<実施例7>
ペンタエリスリトールトリアリルエーテルの仕込量を0.38g(対アクリル酸0.10重量%)に代えた以外は実施例1と同様にして、本発明のゲル化剤(G-7)を得た。
【0093】
<実施例8>
ペンタエリスリトールトリアリルエーテルの仕込量を0.76g(対アクリル酸0.20重量%)に代えた以外は実施例1と同様にして、本発明のゲル化剤(G-8)を得た。
【0094】
<実施例9>
2-ヨード-2-メチルプロピオニトリルの仕込量を0.028gに代えた以外は実施例1と同様にして、本発明のゲル化剤(G-9)を得た。
【0095】
<実施例10>
2-ヨード-2-メチルプロピオニトリルの仕込量を0.083gに代えた以外は実施例1と同様にして、本発明のゲル化剤(G-10)を得た。
【0096】
<比較例1>
3リットルの断熱重合槽に、アクリル酸460.0g、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル1.15g(対アクリル酸0.25重量%)、トリメチロールプロパントリアクリレート0.92g(対アクリル酸0.20重量%)及びイオン交換水1600gを入れて撹拌混合してアクリル酸水溶液を調整した後、アクリル酸水溶液を3℃に冷却した。冷却後、アクリル酸水溶液中に窒素を流量5L/minで通気して、アクリル酸水溶液中の溶存酸素濃度を0.10ppm以下とした。アクリル酸水溶液が3℃であることを確認した後に、窒素通気を継続しながら断熱重合槽に重合開始剤として、濃度10重量%の2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ハイドロクロライド(和光純薬工業株式会社製、商品名:V-50)水溶液13.8g、濃度1.0重量%の過酸化水素水1.38g、濃度1.0重量%のL-アスコルビン酸水溶液1.38g、濃度0.1重量%の硫酸鉄(III)水溶液0.68gを添加した。重合開始剤添加後25分間窒素通気を継続した後に窒素通気を停止し、16時間静置して重合反応を行った。16時間静置後に、重合反応によって得られる含水ゲルを重合反応槽から取り出した。
取り出した含水ゲルを、小型ミートチョッパー(ローヤル社製)を用いて3~10mmの太さのヌードル状になるように細分化し、細分化した含水ゲルに49重量%水酸化ナトリウム(試薬特級)水溶液169gを加えた後に前記小型ミートチョッパーを用いて含水ゲルに均一混練して中和した。
中和した含水ゲルを目開き850μmのSUS製のスクリ-ンの上に厚さ5cmで積層し、小型透気乾燥機(井上金属株式会社製)を用いて150℃の熱風を1時間含水ゲルに透気させて含水ゲル中の水分を蒸発させ、乾燥ゲルを得た。
乾燥ゲルをクッキングミキサーを用いて粉砕した後に、目開き45μm(330メッシュ)の篩を用いて、粒子径45μm以下のものを採取し、ゲル化剤(H-1)を得た。
【0097】
<比較例2>
目開き150μm(100メッシュ)の篩を用いて、粒子径150μm以下のものを採取した以外は、比較例1と同様にして、ゲル化剤(H-2)を得た。
【0098】
<比較例3>
目開き250μm(60メッシュ)の篩を用いて、粒子径250μm以下のものを採取した以外は、比較例1と同様にして、ゲル化剤(H-3)を得た。
【0099】
<比較例4>
目開き600μm(26メッシュ)の篩を用いて、粒子径600μm以下のものを採取した以外は、比較例1と同様にして、ゲル化剤(H-4)を得た。
【0100】
<比較例5>
市販のCarbopol 974PNF(LubrisolAdvancedMaterials.Inc製)を比較用のゲル化剤(H-5)とした。
【0101】
実施例1~10で製造したゲル化剤(G-1)~(G-10)及び比較例1~4で製造した比較用のゲル化剤(H-1)~(H-5)について、体積平均粒子径、生理食塩水への可溶性成分量、可溶性成分の内の分子量が100,000以下の成分のMw/Mn、40重量%水酸化カリウムにゲル化剤を2重量%添加した混合液の粘度及び40重量%水酸化カリウム水溶液の吸収量を前述の方法で測定した結果を、ゲル化剤に使用した架橋剤の比率及び中和度と共に表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
更に、本発明のゲル化剤(G-1)~(G-10)及び比較のゲル化剤(H-1)~(H-5)を用いて、亜鉛粉末の沈降性、注入時間と注入量のバラツキ、電池の持続時間及び耐衝撃性を下記の方法で測定した結果を表2に示す。
【0104】
(1)亜鉛粉末の沈降性
容量1リットルの2軸のニーダー(入江商会社製、品名:PNV-1)に、33重量%水酸化カリウム水溶液150gと体積平均粒子径200μmの亜鉛粉末(UNION MINIERES.A.社製)300g、ゲル化剤3.0gを添加し、50rpmの回転速度で60分間混合し、負極材を作製した。作製した負極材50gを、密閉可能な容量50mlのサンプル瓶(直径34mm、高さ77mm、ポリプロピレン製)に入れ、混合時に入った気泡を減圧下で脱泡した。
サンプル瓶を密閉し、40℃の恒温槽で30日間放置した後、パウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製)付属の装置を用いて、サンプル瓶を3cmの高さから30回/minの割合で300回タッピングして、亜鉛粉末の沈降を促進させた。タッピングを終了した後、亜鉛粉末の初期の位置(サンプル瓶中の負極材の上端部の位置)から亜鉛粉末の最も沈降した距離(mm)を測定し、これを亜鉛粉末の沈降性(mm)とした。
【0105】
(2)注入時間と注入量のバラツキ
容量1リットルの2軸のニーダーに33重量%水酸化カリウム水溶液150g、体積平均粒子径200μmの亜鉛粉末(UNION MINIERES.A.社製)300g、ゲル化剤3.0gを添加し、50rpmの回転速度で60分間混合し、負極材を作製した。作製した負極材をビーカーに移し、混合時に入った気泡を減圧下で脱泡した。脱泡した負極材を、注入口が2mmの内径を有し、かつ0.1ml単位の目盛りを有する10mlの注射器内部に吸引した。
5mlのサンプル瓶(内径18mm、高さ40mm)の口の高さから、注射器を5.0ml分押し込んで負極材をサンプル瓶に注入し、注射器の押し込みを終了した時点から、注射器注入口から負極材が完全に分離した時点までの時間(秒)をストップウオッチで測定した。同様な操作を計20回繰り返してその平均値を注入時間(秒)とした。
サンプル瓶に注入された負極ゲルの重量(20回それぞれ)を測定し、注入量の標準偏差(σ)を算出して、注入量のバラツキとした。
【0106】
(3)電池の持続時間
容量1リットルの2軸のニーダーに、33重量%の水酸化カリウム水溶液150gと体積平均粒子径200μmの亜鉛粉末(UNION MINIERES.A.社製)300g、ゲル化剤3.0gを添加し、50rpmで60分間混合し、負極材を作製し、減圧下で脱泡を行った後、この負極材15gを、LR-6型のモデル電池の負極容器内に注入し、モデル電池を作製した。
尚、モデル電池の負極材以外の各部位の構成材料として、収縮チューブの材質としてはポリエチレン、正極材の材質としては電解二酸化マンガン50重量部、アセチレンブラック5重量部及び濃度40重量%水酸化カリウム水溶液1重量部からなる配合物、外装缶の材質としてはニッケルメッキ鋼板、セパレーターの材質としてはポリオレフィン、集電棒の材質としてはスズめっきした黄銅製の棒、ガスケットの材質としてはポリオレフィン系樹脂、負極端子板の材質としてはニッケルメッキ鋼板を用いた。
作製したモデル電池に、室温(20~25℃)で2Ωの外部抵抗を接続して、連続放電し、電圧が0.9Vに低下するまでの時間を電池の持続時間(hour)とした。
モデル電池作製後、80℃の恒温槽で15日間静置したモデル電池に関しても同様な操作を行い、電池の持続時間を測定した。
【0107】
(4)電池の耐衝撃性
上記と同様にして作製したモデル電池に、室温(20~25℃)で2Ωの外部抵抗を接続して連続放電しながら、モデル電池を1mの高さから木材上に10回連続して落下させ、初回の落下前の電圧と10回目の落下直後の電圧を測定し、下式により耐衝撃性(%)を算出した。
耐衝撃性(%)={10回目の落下直後の電圧(V)/初回の落下前の電圧(V)}×100
モデル電池作製後、80℃の恒温槽で15日間静置したモデル電池に関しても同様な操作を行い、耐衝撃性を求めた。
【0108】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明のゲル化剤(G)は、円筒状のアルカリ電池のみならず、アルカリボタン電池、酸化銀電池、ニッケルカドミウム蓄電池、ニッケル水素蓄電池等の一次及び二次アルカリ電池用のゲル化剤としても有用である。また、本発明のゲル化剤を用いたアルカリ電池は、耐衝撃性に優れ、放電特性の維持に優れ、負極材の粘度安定性に優れるため生産効率が向上したアルカリ電池として有用である。