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  • 特開-コンデンサの電極構造 図1
  • 特開-コンデンサの電極構造 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096028
(43)【公開日】2022-06-29
(54)【発明の名称】コンデンサの電極構造
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/232 20060101AFI20220622BHJP
   H01G 4/236 20060101ALI20220622BHJP
   H01G 4/228 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
H01G4/232 Z
H01G4/236
H01G4/228 A
H01G4/228 W
H01G4/228 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208908
(22)【出願日】2020-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】関 篤志
(72)【発明者】
【氏名】丸山 謙太
(57)【要約】
【課題】インダクタンスの低減と高電圧化の両方を達成することができるコンデンサの電極構造を提供する。
【解決手段】コンデンサ部10の一端面10dから突出させて絶縁物20を介して互いに隣接配置した、第1の接続端子部41を有した第1の電極31と、第2の接続端子部42を有した第2の電極32とを設け、前記絶縁物20は、第1の電極31および第2の電極32との隣接面積よりも広い面積に形成し、コンデンサ部10の一端面10dの、前記第1および第2の接続端子部41、42に各々対向する部位を、コンデンサ部10の両端方向に各々貫通して工具用穴51、52を形成した。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサ本体の一端面から突出させて絶縁物を介して互いに隣接配置された、第1の接続端子部が設けられた第1の電極と、第2の接続端子部が設けられた第2の電極と、
前記コンデンサ本体の一端面の、前記第1の接続端子部および第2の接続端子部に各々対向する部位を、前記コンデンサ本体の一端面に直交する方向に各々貫通して形成された工具用穴とを備えたコンデンサの電極構造であって、
前記絶縁物は、コンデンサ本体の両端方向に直交する幅方向の略中央に配設され、前記第1の電極および第2の電極との隣接面積よりも広い面積に形成され、
前記第1の接続端子部および第2の接続端子部は、前記絶縁物の配設位置からコンデンサ本体の両端方向に直交する幅方向外周の部位であって、前記幅方向距離を超えない部位に各々設けられていることを特徴とするコンデンサの電極構造。
【請求項2】
前記第1の電極および第2の電極は、コンデンサ本体の両端方向およびそれに直交する幅方向に各々直交する奥行き方向に沿って、コンデンサ本体の一端面から各々突設させた立設板部と、前記立設板部の、コンデンサ本体の一端面と反対側の端部から、絶縁物と反対方向に略直角に屈折して各々形成した屈折板部とを備え、
前記第1の接続端子部および第2の接続端子部は前記屈折板部に各々設けられ、
前記絶縁物の大きさは、前記立設板部の、コンデンサ本体の一端面に接する辺の長さよりも大きく、且つ立設板部の、コンデンサ本体の一端面に接する側の端部からコンデンサ本体の一端面と反対側の端部までの長さよりも大きく形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコンデンサの電極構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタンス低減と高電圧化を実現するコンデンサの電極構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高電圧化し、且つインダクタンスを低減したコンデンサを実現する技術として、例えば特許文献1、2、3に記載のものが提案されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-330183号公報
【特許文献2】特開平11-317320号公報
【特許文献3】特開2017-220485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、絶縁物を介して端子電極を隣接させることでインダクタンスを低減させているが、端子間の沿面距離が短いため高電圧に耐えられないという問題がある。
【0005】
特許文献2では、片方の端子を折り曲げることで上記問題を解決しているが、曲げることで端子同士に隣接しない部分が生じるためインダクタンス低減効果は劣ってしまう問題がある。
【0006】
特許文献3では、絶縁体が電極の隣接する箇所にのみ配置されているため、端子間沿面距離が短いという問題がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであり、その目的は、インダクタンスの低減と高電圧化の両方を達成することができるコンデンサの電極構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための請求項1に記載のコンデンサの電極構造は、
コンデンサ本体の一端面から突出させて絶縁物を介して互いに隣接配置された、第1の接続端子部が設けられた第1の電極と、第2の接続端子部が設けられた第2の電極と、
前記コンデンサ本体の一端面の、前記第1の接続端子部および第2の接続端子部に各々対向する部位を、前記コンデンサ本体の一端面に直交する方向に各々貫通して形成された工具用穴とを備えたコンデンサの電極構造であって、
前記絶縁物は、コンデンサ本体の両端方向に直交する幅方向の略中央に配設され、前記第1の電極および第2の電極との隣接面積よりも広い面積に形成され、
前記第1の接続端子部および第2の接続端子部は、前記絶縁物の配設位置からコンデンサ本体の両端方向に直交する幅方向外周の部位であって、前記幅方向距離を超えない部位に各々設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載のコンデンサの電極構造は、請求項1において、
前記第1の電極および第2の電極は、コンデンサ本体の両端方向およびそれに直交する幅方向に各々直交する奥行き方向に沿って、コンデンサ本体の一端面から各々突設させた立設板部と、前記立設板部の、コンデンサ本体の一端面と反対側の端部から、絶縁物と反対方向に略直角に屈折して各々形成した屈折板部とを備え、
前記第1の接続端子部および第2の接続端子部は前記屈折板部に各々設けられ、
前記絶縁物の大きさは、前記立設板部の、コンデンサ本体の一端面に接する辺の長さよりも大きく、且つ立設板部の、コンデンサ本体の一端面に接する側の端部からコンデンサ本体の一端面と反対側の端部までの長さよりも大きく形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1、2に記載の発明によれば、絶縁物を介して隣接する第1および第2の電極には大きさが等しい互いに逆方向の電流が流れるため、磁界が互いに打ち消しあってインダクタンスが低減される。
【0011】
また、絶縁物を、第1および第2の電極との隣接面積よりも広い面積に形成しているので、電極間の電圧に対応した沿面距離が確保され、高電圧化が可能となる。
【0012】
また、コンデンサ本体に工具用穴を形成したので、第1の接続端子部と第2の接続端子部の間の間隔を短くすることができ、さらなるインダクタンス低減が可能となる。
【0013】
また、第1および第2の接続端子部を固定するためのネジ、ナットなどの固定具が飛び出しても工具用穴により吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例1によるコンデンサの電極構造を示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は左側面図。
図2】本発明に対する比較例によるコンデンサの電極構造を示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は左側面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明するが、本発明は下記の実施形態例に限定されるものではない。
【実施例0016】
図1は、実施例1によるコンデンサの電極構造を示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は左側面図である。図1において、10は長方体形状のコンデンサ部(コンデンサ本体)であり、両端方向に沿う4本の辺10a、辺10aに直交する幅方向に沿う4本の辺10b、辺10aおよび10bに直交する奥行き方向に沿う4本の辺10cを有している。
【0017】
10dはコンデンサ部10の一端面、10eはコンデンサ部10の他端面を各々示している。
【0018】
コンデンサ部10の一端面10dの、幅方向に沿う辺10bの略中央部であり、奥行き方向に沿う辺10cの略中央部の部位には、辺10cに沿って、長方形の板状の絶縁物20が突設されている。
【0019】
コンデンサ部10の一端面10dには、絶縁物20を介して互いに隣接配置された第1の電極31と第2の電極32が突設されている。
【0020】
第1の電極31は、絶縁物20の一方の面に沿って(コンデンサ部10の奥行き方向に沿う辺10cに沿って)コンデンサ部10の一端面10dから突設させた立設板部31aと、立設板部31aの、コンデンサ部10の一端面10dと反対側の端部から絶縁物20と反対方向(絶縁物20から遠ざかる方向)に略直角に屈折して形成した屈折板部31bとを備えている。
【0021】
第2の電極32は、絶縁物20の他方の面に沿って(コンデンサ部10の奥行き方向に沿う辺10cに沿って)コンデンサ部10の一端面10dから突設させた立設板部32aと、立設板部32aの、コンデンサ部10の一端面10dと反対側の端部から絶縁物20と反対方向(絶縁物20から遠ざかる方向)に略直角に屈折して形成した屈折板部32bとを備えている。
【0022】
前記屈折板部31b、32bの、コンデンサ部10の幅方向に沿う辺10b方向の寸法は、例えば前記辺10bの長さを超えない寸法に各々形成されている。
【0023】
絶縁物20の大きさは、前記立設板部31a、32aの、コンデンサ部10の一端面10dに接する辺の長さよりも大きく、且つ立設板部31a、32aの、前記一端面10dに接する側の端部から、一端面10dと反対側の端部までの長さよりも大きく形成されている。
【0024】
第1および第2の電極31、32の屈折板部31b、32bには、該屈折板部31b、32bを穿設して穴を設けた第1および第2の接続端子部41、42が各々形成されている。
【0025】
コンデンサ部10の一端面10dの、第1の接続端子部41、第2の接続端子部42に各々対向する部位を、コンデンサ部10の辺10aに沿って他端面10eまで各々貫通させて工具用穴51、52が各々形成されている。
【0026】
上記のように構成されたコンデンサの電極構造において、絶縁物20を介して隣接する第1および第2の電極31、32には大きさが等しい互いに逆方向の電流が流れるため、磁界が互いに打ち消しあってインダクタンスが低減される。
【0027】
また、絶縁物20を、第1および第2の電極31、32との隣接面積よりも広い面積に形成しているので、電極間の電圧に対応した沿面距離が確保され、高電圧化が可能となる。
【0028】
また、コンデンサ部10に工具用穴51、52を形成したので、第1の接続端子部41と第2の接続端子部42の間の間隔を短くすることができ、さらなるインダクタンス低減が可能となる。
【0029】
また、第1および第2の接続端子部41、42を固定するためのネジ、ナットなどの固定具が飛び出しても工具用穴51、52により吸収することができる。
【0030】
尚、実施例1ではコンデンサ部10の形状は長方体形状であったが、本発明はこれに限らず立方体形状、円筒体形状であってもよく、その場合も前記と同様の作用、効果が得られる。
【0031】
ここで、実施例1に対する比較例としてのコンデンサの電極構造を図2に示す。図2において図1と同一部分は同一符号をもって示している。図2において図1と異なる点は、図1の第1および第2の電極31、32、第1および第2の接続端子部41、42に代えて、第1および第2の電極131、132、第1および第2の接続端子部141、142を設け、図1の工具用穴51、52を削除したことにある。
【0032】
第1の電極131の立設板部131aの端部から屈折して形成される屈折板部131bの、コンデンサ部10の幅方向に沿う辺10b方向の寸法は、辺10bの長さを超える寸法に形成され、第1の接続端子部141は屈折板部131bの前記辺10bの長さを超えた部位に形成されている。
【0033】
同様に、第2の電極132の立設板部132aの端部から屈折して形成される屈折板部132bの、コンデンサ部10の幅方向に沿う辺10b方向の寸法は、辺10bの長さを超える寸法に形成され、第2の接続端子部142は屈折板部132bの前記辺10bの長さを超えた部位に形成されている。
【0034】
図2の比較例によれば、図1の実施例1と同様に、絶縁物20を介して第1および第2の電極131、132を隣接配置しているので、インダクタンス低減効果は得られるが、第1の接続端子部141と第2の接続端子部142の間の間隔が実施例1の場合よりも大きいため、コンデンサ端子間のインダクタンス低減効果は実施例1よりも劣る。
【0035】
また比較例によれば、第1および第2の接続端子部141、142を固定するためのネジ、ナットなどの固定具の飛び出しを吸収することはできない。
【符号の説明】
【0036】
10…コンデンサ部
20…絶縁物
31…第1の電極
32…第2の電極
41…第1の接続端子部
42…第2の接続端子部
51、52…工具用穴
図1
図2