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特開2022-96039手術工程記録システム及び手術工程表示方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096039
(43)【公開日】2022-06-29
(54)【発明の名称】手術工程記録システム及び手術工程表示方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 40/60 20180101AFI20220622BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
G16H40/60
A61B5/00 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208925
(22)【出願日】2020-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】510192802
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立国際医療研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山川 恵介
(72)【発明者】
【氏名】吉光 喜太郎
(72)【発明者】
【氏名】出口 勝也
(72)【発明者】
【氏名】山田 和彦
【テーマコード(参考)】
4C117
5L099
【Fターム(参考)】
4C117XA04
4C117XB03
4C117XB04
4C117XE13
4C117XE15
4C117XE24
4C117XE43
4C117XE58
4C117XE64
4C117XE65
4C117XH16
4C117XL01
5L099AA03
(57)【要約】
【課題】手術の遅延を明確にする手術工程記録システム及び手術工程表示方法を提供する。
【解決手段】手術に参加する医療スタッフ及び前記手術に使用される医療機器の各動作を時系列に記録する動作記録部と、前記各動作の経時変化に基づいて前記医療スタッフまたは前記医療機器の動作が停滞している期間である停滞期間を抽出する停滞期間抽出部と、前記各動作の時系列データに前記停滞期間を付与して表示させる時系列データ表示部を備えることを特徴とする手術工程記録システムである。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術に参加する医療スタッフ及び前記手術に使用される医療機器の各動作を時系列に記録する動作記録部と、
前記各動作の経時変化に基づいて前記医療スタッフまたは前記医療機器の動作が停滞している期間である停滞期間を抽出する停滞期間抽出部と、
前記各動作の時系列データに前記停滞期間を付与して表示させる時系列データ表示部を備えることを特徴とする手術工程記録システム。
【請求項2】
請求項1に記載の手術工程記録システムであって、
前記時系列データ表示部は、前記停滞期間のそれぞれに対して重要度を付与して表示させることを特徴とする手術工程記録システム。
【請求項3】
請求項2に記載の手術工程記録システムであって、
前記停滞期間抽出部は、動作が停滞している医療スタッフの担当業務に割り当てられる係数である担当係数と、停滞期間の長さと、手術のフェーズに割り当てられるフェーズ係数と、に基づいて、前記重要度を算出することを特徴とする手術工程記録システム。
【請求項4】
請求項3に記載の手術工程記録システムであって、
前記停滞期間抽出部は、前記医療機器の動作に基づいて前記重要度を補正することを特徴とする手術工程記録システム。
【請求項5】
請求項2に記載の手術工程記録システムであって、
前記停滞期間抽出部は、動作が停滞している医療スタッフの人数に基づいて、前記重要度を算出することを特徴とする手術工程記録システム。
【請求項6】
請求項1に記載の手術工程記録システムであって、
前記時系列データ表示部は、前記停滞期間が生じた理由をさらに表示させることを特徴とする手術工程記録システム。
【請求項7】
請求項6に記載の手術工程記録システムであって、
前記停滞期間抽出部は、前記停滞期間より以前の前記各動作に基づいて前記理由を判別することを特徴とする手術工程記録システム。
【請求項8】
請求項6に記載の手術工程記録システムであって、
前記時系列データ表示部は、前記理由とともに停滞を抑制する改善策を表示させることを特徴とする手術工程記録システム。
【請求項9】
請求項8に記載の手術工程記録システムであって、
前記理由と前記改善策が対応付けられるテーブルを記憶する記憶部をさらに備え、
前記停滞期間抽出部は、前記テーブルから前記理由に対応する改善策を読み出すことを特徴とする手術工程記録システム。
【請求項10】
請求項9に記載の手術工程記録システムであって、
前記テーブルには、前記理由に対応する各動作が対応付けられることを特徴とする手術工程記録システム。
【請求項11】
請求項1に記載の手術工程記録システムであって、
前記時系列データ表示部は、前記医療スタッフと前記医療機器との各動作を共通の時間軸に沿って一覧表示させることを特徴とする手術工程記録システム。
【請求項12】
手術に参加する医療スタッフ及び前記手術に使用される医療機器の各動作を時系列に記録する動作記録ステップと、
前記各動作の経時変化に基づいて前記医療スタッフまたは前記医療機器の動作が停滞している期間である停滞期間を抽出する停滞期間抽出ステップと、
前記各動作の時系列データに前記停滞期間を付与して表示させる時系列データ表示ステップをコンピュータに実行させることを特徴とする手術工程表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は手術工程を記録するシステムに関し、特に記録された手術工程を解析することにより手術の遅延を抑制する技術に係わる。
【背景技術】
【0002】
手術には複数の医療スタッフが参加するとともに様々な医療機器が使用されるので、手術工程の記録には録音機材やテレビカメラ、各医療機器をモニタする機器等が必要となる。そのため手術工程を記録するシステムは大掛かりなものになり、各種機材の事前準備が煩雑になる。
【0003】
特許文献1には、事前準備を簡単に行えるようにするために、予め分類された医療行為毎に記録用の機器を登録し、事前準備で指定された医療行為に対応する機器の接続状況を把握し処理動作を管理する医療情報システムが開示される。特許文献1の医療情報システムによれば、指定された医療行為が時系列に記録され、術後の経過分析に用いられる時系列データが簡単に且つ労少なくして取得できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-65721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1では、手術などの医療行為を時系列に一括して記録するに留まっており、記録された時系列データを解析するまでには至っていない。記録された時系列データの解析に基づき、例えば手術の遅延が明確になれば、手術の遅延を抑制できるとともに、術中及び術後の患者の負担を軽減できる。
【0006】
そこで本発明は、手術の遅延を明確にする手術工程記録システム及び手術工程表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、手術に参加する医療スタッフ及び前記手術に使用される医療機器の各動作を時系列に記録する動作記録部と、前記各動作の経時変化に基づいて前記医療スタッフまたは前記医療機器の動作が停滞している期間である停滞期間を抽出する停滞期間抽出部と、前記各動作の時系列データに前記停滞期間を付与して表示させる時系列データ表示部を備えることを特徴とする手術工程記録システムである。
【0008】
また本発明は、手術に参加する医療スタッフ及び前記手術に使用される医療機器の各動作を時系列に記録する動作記録ステップと、前記各動作の経時変化に基づいて前記医療スタッフまたは前記医療機器の動作が停滞している期間である停滞期間を抽出する停滞期間抽出ステップと、前記各動作の時系列データに前記停滞期間を付与して表示させる時系列データ表示ステップをコンピュータに実行させることを特徴とする手術工程表示方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、手術の遅延を明確にする手術工程記録システム及び手術工程表示方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1の手術工程記録システムのハードウェア構成図である。
図2】実施例1の機能ブロック図である。
図3】手術室内の医療スタッフ及び医療機器の工程遷移の一例を示す図である。
図4】手術室内の医療スタッフ及び医療機器の工程遷移と手術室内の位置とを対応させた一例を示す図である。
図5】実施例1の処理の流れの一例を示す図である。
図6】手術室内の医療スタッフ及び医療機器の各動作の経時変化を示す表示例である。
図7】各動作の経時変化に基づいて抽出された停滞期間を示す表示例である。
図8】停滞期間のそれぞれに対して付与された重要度を示す表示例である。
図9】停滞期間が生じた理由と停滞を抑制する改善策を示す表示例である。
図10】停滞期間が生じた理由と改善策及び各動作を対応付けるテーブルの一例を示す図である。
図11】手術室内の医療スタッフ及び医療機器の工程遷移と標準手術工程とを対比する表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面に従って本発明に係る画像診断支援装置および画像診断支援方法の好ましい実施例について説明する。なお、以下の説明及び添付図面において、同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【実施例0012】
図1を用いて本実施例の手術工程記録システムのハードウェア構成について説明する。手術工程記録システムは、いわゆるコンピュータである手術工程記録サーバ100とカメラ110、医療機器モニタ装置111を備える。
【0013】
手術工程記録サーバ100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、インターフェース104、記憶部105、入力部106、表示部107がバス108によって信号送受可能に接続されて構成される。また手術工程記録サーバ100は、インターフェース104を介してカメラ110や医療機器モニタ装置111と信号送受可能に接続される。ここで、「信号送受可能に」とは、電気的または光学的に、有線と無線を問わず、相互にあるいは一方から他方へ信号を受け渡しできる状態である。
【0014】
CPU101は、ROM102に記憶されるシステムプログラム等を読み出し、各構成要素の動作を制御する装置である。CPU101は、記憶部105に格納されるプログラムやプログラム実行に必要なデータをRAM103にロードして実行する。記憶部105は、CPU101が実行するプログラムやプログラム実行に必要なデータを格納する装置であり、具体的にはHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の記録装置や、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に読み書きする装置である。プログラム実行に必要なデータを含む各種データはLAN(Local Area Network)等のネットワークから送受信されても良い。RAM103には、CPU101が実行するプログラムや演算処理の途中経過等が記憶される。
【0015】
表示部107は、プログラム実行の結果等が表示される装置であり、具体的には液晶ディスプレイやタッチパネル等である。入力部106は、操作者が手術工程記録サーバ100に対して操作指示を行う操作デバイスであり、具体的にはキーボードやマウス等である。マウスはトラックパッドやトラックボールなどの他のポインティングデバイスであっても良い。また表示部107がタッチパネルである場合には、タッチパネルが入力部106としても機能する。インターフェース104は、カメラ110や医療機器モニタ装置111を含む外部装置と手術工程記録サーバ100とを接続するためのものである。
【0016】
カメラ110は、手術に参加する医療スタッフ、例えば執刀医や助手、麻酔科医、看護師の動画を撮影する装置であり、手術室全体を撮影するとともに、各医療スタッフを個別に撮影しても良い。またカメラ110によって、各医療スタッフが発する声が録音されても良い。さらに手術に使用される医療器具、例えばメスがカメラ110によって撮影されても良い。なおカメラ110による動画撮影の代わりに、医療スタッフや医療器具に取り付けられる加速度センサ等によってそれぞれの動きが計測されても良い。
【0017】
医療機器モニタ装置111は、手術に使用される医療機器、例えば患者の生体データを計測する装置や電気メス等を監視する装置であり、各種装置から出力される信号を受信する。例えば、患者の生体データである心拍や血圧、呼吸等に係るデータや、電気メスに供給される電力等が監視される。
【0018】
すなわち、カメラ110や医療機器モニタ装置111によって、手術に参加する医療スタッフと手術に使用される医療機器の各動作を示す一次データが取得され、手術工程記録サーバ100へ送信されて処理される。動作には、単位時間当たりに医療スタッフや医療器具が移動する距離や、医療機器から出力される信号が含まれる。
【0019】
図2を用いて本実施例の機能ブロック図について説明する。なおこれらの機能は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)等を用いた専用のハードウェアで構成されても良いし、CPU101上で動作するソフトウェアで構成されても良い。以降の説明では各機能がソフトウェアで構成された場合について説明する。本実施例は、動作記録部201、停滞期間抽出部202、時系列データ表示部203を備える。以下、各部について説明する。
【0020】
動作記録部201は、カメラ110や医療機器モニタ装置111によって取得された一次データである動作データ200を用いて、医療スタッフ及び医療機器の各動作を時系列に記録する。動作データ200が各医療スタッフを撮影した動画である場合、動作記録部201は動画の各フレーム画像から対象者である医療スタッフを抽出し、各フレーム画像の中の対象者の位置に基づいて、単位時間当たりに対象者の移動距離を算出する。なお各フレーム画像から抽出される対象は、医療スタッフの体の一部、例えば手であっても良い。執刀医の手の動作が時系列に記録されることにより、手術中の手技がデータ化される。時系列に記録された各動作は、手術室内の医療スタッフ及び医療機器の工程遷移を示すチャートの作成に用いられても良い。
【0021】
図3及び図4を用いて手術室内の医療スタッフ及び医療機器の工程遷移の一例について説明する。図3の縦軸には各医療スタッフ及び医療機器が配列され、共通の時間軸である横軸には手術のフェーズが割り当てられる。手術のフェーズには、準備、手術、後工程が含まれる。データが所定の条件を満たす時点に丸が付けられ、両端の丸をつなぐ線分が一つの工程を示す。図3に示すような工程遷移が表示部107に表示されることにより、術後の経過分析を共通する時間軸に沿って工程毎に行うことができる。
【0022】
図4は、図3に示される工程遷移と手術室内の位置とを対応させた一例である。手術室内において、例えば外回り看護師が非清潔野のAとBの位置を移動し、執刀医が清潔野のCとDの位置を移動するとき、対応する工程にAとB、CとDが付記される。また各工程が清潔野と非清潔野のいずれで実施されるかが明示されても良い。図4に示すような工程遷移が表示部107に表示されることにより、工程毎の経過分析を手術室内の位置と対応させて行うことができる。図2の説明に戻る。
【0023】
停滞期間抽出部202は、動作記録部201によって記録された各動作の経時変化に基づいて医療スタッフまたは医療機器の動作が停滞している期間である停滞期間を抽出する。例えば、予め定められた閾値よりも動作の量が少ない期間が停滞期間として抽出される。停滞期間の抽出に用いられる閾値は、対象物毎に定められる。また停滞期間の抽出に先立って、ノイズ低減のために移動平均化処理が行われても良い。
【0024】
時系列データ表示部203は、停滞期間抽出部202によって抽出された停滞期間を医療スタッフや医療機器の各動作の時系列データに付与して表示部107に表示させる。
【0025】
図5を用いて、本実施例の処理の流れの一例について説明する。
【0026】
(S501)
動作記録部201がカメラ110や医療機器モニタ装置111から動作データ200を取得する。動作記録部201は、動作データ200を用いて、医療スタッフ及び医療機器の各動作を時系列に記録する。
【0027】
図6を用いて、時系列に記録された各動作の経時変化の一例について説明する。図6は、図3と同様に、各医療スタッフ及び医療機器が縦軸に並び、横軸は共通の時間軸である。また各医療スタッフ及び医療機器に対応する行には動作の量が濃淡で示される。動作の量は黒い部分ではより少なく、白い部分ではより多い。
【0028】
(S502)
停滞期間抽出部202は、各動作の経時変化に基づいて医療スタッフ及び医療機器のそれぞれについて停滞期間を抽出する。動作の量が閾値より少ない期間、例えば図6に示されるより黒い部分が停滞期間として抽出される。
【0029】
(S503)
時系列データ表示部203は、S502で抽出された停滞期間を医療スタッフや医療機器の各動作の時系列データに付与する。
【0030】
図7を用いて、抽出された停滞期間の一例について説明する。図7には、図6に示される各動作の経時変化の中から抽出された四つの停滞期間が点線の四角で示される。すなわち左側から、執刀医のみが停滞する期間、器械出し看護師と外回り看護師が停滞する期間、執刀医、助手2、両看護師が停滞する期間、全員が停滞する期間が例示される。
【0031】
(S504)
時系列データ表示部203は、S503で停滞期間が付与された各動作の時系列データを表示部107に表示させる。例えば、図7に例示される画面が表示部107に表示される。停滞期間が付与された各動作の時系列データが表示されることにより、手術工程のどの期間に停滞が生じたかが明確になる。
【0032】
なお各停滞期間に対して重要度が付与されても良い。重要度は、同時に停滞している医療スタッフの人数に基づいて停滞期間抽出部202によって算出されても良い。例えば、同時に停滞している人数が停滞期間の重要度とされても良い。または、次式に示すように、医療スタッフの担当業務や停滞時間の長さ、手術のフェーズに基づいて重要度f(w,t,p)が停滞期間抽出部202によって算出されても良い。
【0033】
【数1】
【0034】
ここで、nは各医療スタッフを識別するインデックスであり、例えば1が執刀医、2が助手、3が麻酔科医、4が器械出し看護師、5が外回り看護師、…のように割り当てられる。wは各医療スタッフの担当業務に割り当てられる係数であり、例えば患者を手術する執刀医には高い係数が割り当てられ、患者に直接は関わらない外回り看護師には低い係数が割り当てられる。tは各医療スタッフの停滞期間の長さであり、同時に複数の医療スタッフが停滞すると重要度が大きくなる。pは手術のフェーズに割り当てられる係数であり、患者の負担に応じて、手術中には高い係数が割り当てられ、手術前、手術後の順に低い係数が割り当てられる。
【0035】
図8を用いて、重要度が付与された停滞期間の一例について説明する。図8では、図7に例示された停滞期間に対して数1によって算出された重要度が付与される。図8に例示される画面が表示部107に表示されることにより、複数の停滞期間に対して対応すべき優先順位が明確になる。
【0036】
さらに時系列データ表示部203は、各停滞期間が生じた理由を表示部107に表示させても良い。各停滞期間が生じた理由は、例えば対象となる停滞期間より以前の各動作に基づいて停滞期間抽出部202によって判別される。また時系列データ表示部203は、各停滞期間が生じた理由とともに、停滞を抑制する改善策を表示部107に表示させても良い。
【0037】
図9を用いて、停滞が生じた理由と停滞を抑制する改善策が付与された停滞期間の一例について説明する。図9には二つの停滞期間が示され、各停滞期間に対して停滞の状況と停滞の理由、重要度、改善策が付与される。左側の停滞期間では、執刀医の動作が停滞しており、停滞の理由は外回り看護師が器具を取り寄せ中であること、停滞期間の重要度が5であること、改善案として電気メスの事前準備が必要であることが示される。また右側の停滞期間では、執刀医他三名が停滞しているものの、電気メスが動作中であることから手術が継続中であるため、重要度が0にクリアされたことが示される。右側の停滞期間の例のように、停滞期間抽出部202によって算出される重要度は電気メス等の医療機器の動作に基づいて補正されても良い。なお停滞を抑制する改善策は、理由と改善策が対応付けられるテーブルから読み出されても良い。
【0038】
図10を用いて、停滞期間が生じた理由と改善策及び各動作が対応付けられるテーブルの一例について説明する。図10に例示されるテーブルは停滞理由に対して、改善策及び各動作が対応付けられて事前に作成され、記憶部105に記憶される。停滞期間抽出部202は対象となる停滞期間より以前の各動作を図10に例示されるテーブルから検索し、検索された動作に対応する停滞理由を停滞期間が生じた理由として抽出し、抽出された停滞理由とともに対応する改善策を読み出す。時系列データ表示部203は、停滞期間抽出部202によってテーブルから読み出された停滞理由と改善策を表示部107に表示させる。
【0039】
時系列データ表示部203は、記録された手術工程を標準手術工程と対比させて表示部107に表示させても良い。標準手術工程と対比されることによって、記録された手術工程のどこに遅延が生じているかが明確になる。
【0040】
図11を用いて、記録された実際の工程と標準手術工程とを対比する表示例について説明する。図11は、図3に例示される工程遷移に実際の工程と標準手術工程の行が追加されるとともに、イレギュラーイベントが追記されたものである。実際の工程と標準手術工程の行には、各チェックポイントが△で示される。図11に例示される画面が表示部107に表示されることにより、実際の工程の各チェックポイントが標準手術工程に対してどの程度遅延したかが明確になる。
【0041】
なお図11に示されるイレギュラーイベントは図10に例示されるテーブルから読み出される停滞理由であっても良い。また各医療スタッフが基準位置とは異なる位置に移動したときをイレギュラーイベントの発生時点としても良い。基準位置は各工程に応じて予め定められる。例えば執刀医の基準位置は術野に近接する位置、器械出し看護師は執刀医に隣接する位置、助手は患者を介して執刀医と対向する位置、麻酔医は患者の生体データを計測する装置に隣接する位置である。これらの基準位置から医療スタッフが移動したときをイレギュラーイベントの発生時点として停滞期間抽出部202が検出する。
【0042】
以上説明した処理の流れにより、手術に参加する医療スタッフ及び手術に使用される医療機器の各動作の時系列データが一覧表示されるので、手術に遅延を明確にすることができる。特に、図7に例示される画面によって、どの工程において停滞期間が生じたかが明確になるので、術後の経過分析が実施しやすくなる。また図7に例示される重要度や図8の理由や改善策の表示により、術後の経過分析がより進めやすくなる。
【0043】
以上、本発明の実施例について説明した。本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、さまざまな変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明をわかりやすく説明するために詳細に説明したものであり、説明したすべての構成を備えるものに限定されない。
【符号の説明】
【0044】
100:手術工程記録サーバ、101:CPU、102:ROM、103:RAM、104:インターフェース、105:記憶部、106:入力部、107:表示部、108:バス、110:カメラ、111:医療機器モニタ装置、200:動作データ、201:動作記録部、202:停滞期間抽出部、203:時系列データ表示部、204:時系列データと停滞期間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11