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特開2022-96055熱成型用シート及び熱成型用シートの製造方法、並びに包装用容器、包装用容器の製造方法、及び包装用容器の使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096055
(43)【公開日】2022-06-29
(54)【発明の名称】熱成型用シート及び熱成型用シートの製造方法、並びに包装用容器、包装用容器の製造方法、及び包装用容器の使用方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20220622BHJP
   B65D 81/34 20060101ALN20220622BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B65D81/34 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208944
(22)【出願日】2020-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】391011825
【氏名又は名称】中央化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167117
【弁理士】
【氏名又は名称】打越 佑介
(72)【発明者】
【氏名】一木 信
(72)【発明者】
【氏名】関口 椋太
【テーマコード(参考)】
3E013
3E086
【Fターム(参考)】
3E013BC04
3E013BC14
3E013BD06
3E013BD07
3E013BD11
3E013BD12
3E013BD20
3E013BF80
3E086AB01
3E086BA04
3E086CA03
3E086DA08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電子レンジ等で加熱された食品から流出する高温の食用油による無延伸ポリプロピレンフィルムのデラミ現象を予防し、また、上記食用油による印刷層の溶解に伴う無延伸ポリプロピレンフィルムの破損を予防する熱成型用シート及び熱成型用シートの製造方法、並びに包装用容器、包装用容器の製造方法、及び包装用容器の使用方法を提供すること。
【解決手段】熱成型用シート1は、無延伸ポリプロピレンフィルム10の片面にSP値9.0以上である油分不透層20が積層されたラミネートフィルム1aと、油分不透層20側からラミネートフィルム1aに積層された、耐熱性基材1bと、を備えている。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無延伸ポリプロピレンフィルムの片面にSP値9.0以上である油分不透層が設けられたラミネートフィルムと、
前記油分不透層側から前記ラミネートフィルムに積層された耐熱性基材と、を備えた
ことを特徴とする熱成型用シート。
【請求項2】
前記ラミネートフィルムは、前記油分不透層側から設けられた印刷層を備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の熱成型用シート。
【請求項3】
前記油分不透層は、変性アクリル、脂肪族ポリカーボネート、可溶性ポリエステル、可溶性ポリアミド、エチレン‐ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリアクリロニトリル共重合体(PAN)から少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項1または2に記載の熱成型用シート。
【請求項4】
無延伸ポリプロピレンフィルムの片面にSP値9.0以上である油分不透層が塗布されたラミネートフィルムを得る準備工程と、
前記油分不透層側から耐熱性基材を前記ラミネートフィルムに積層する生成工程と、を含む
ことを特徴とする熱成型用シートの製造方法。
【請求項5】
前記油分不透層の固形分塗布量が0.1~5.0g/mである
ことを特徴とする請求項4に記載の熱成型用シートの製造方法。
【請求項6】
前記準備工程は、前記油分不透層側から印刷層が設けられたラミネートフィルムを得る
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の熱成型用シートの製造方法。
【請求項7】
前記準備工程は、無延伸ポリスチレンフィルムの片面に印刷層が設けられた印刷ポリスチレンフィルムを得た後、前記油分不透層側から前記印刷層又は前記無延伸ポリスチレンフィルムを前記耐熱性基材に対向させて前記印刷ポリスチレンフィルムが設けられたラミネートフィルムを得る
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の熱成型用シートの製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の熱成型用シート製かつ所望の形状に熱成型された状態である
ことを特徴とする包装用容器。
【請求項9】
請求項4乃至7のいずれか一項に記載の熱成型用シートの製造方法にて得た熱成型用シートを所望の形状に熱成型する
ことを特徴とする包装用容器の製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載の包装用容器又は請求項9に記載の製造方法で製造された包装用容器に油を含む油性食品を入れて電子レンジで加熱処理をする
ことを特徴とする包装用容器の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジ等で加熱されて高温になる食品を収容する包装用容器として成型される熱成型用シート及び熱成型用シートの製造方法、並びに包装用容器、包装用容器の製造方法、及び包装用容器の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばスーパーマーケットやコンビニエンスストアで販売される食品は、熱可塑性樹脂製の包装用容器に収容され、上記包装用容器の種類は上記食品の種類に応じて選択されてきた。電子レンジ等で加熱する調理済みの食品を収容する包装用容器は、高温でも変形しない耐熱性、高温化した食品の油で溶解・変形しない耐油性、これらの性質を備えた上で印刷も美麗に見える積層構造が採用されてきた。
【0003】
上記耐油性としては、食品由来の油や調理用の油が高温に達して流出した場合、上記油が上記包装用容器の表面層を浸透して、各層間の接着部分に滞留して各層が剥離する現象(以下「デラミ現象」ともいう。)を招きやすいことから、上記包装用容器が上記油の溶解度パラメータ(以下「SP値」という。)との差が大きい熱可塑性樹脂層を備えれば、たとえ上記油が上記表面層を浸透してもデラミ現象を回避できる効果を得られた。
【0004】
例えば特許文献1は、最内層に非発泡ラミネートフィルムと、最外層に耐熱性基材とが積層されてなる包装用容器であって、上記非発泡ラミネートフィルムは、少なくとも一層以上の熱可塑性樹脂層を有し、上記熱可塑性樹脂層のSP値が9.0以上かつ厚みが10~30μmである包装用容器であり、上記熱可塑性樹脂層がポリエステル系樹脂に該当する二軸延伸ポリブチレンテレフタレート系樹脂だと、高温化した食品の油が上記非発泡ラミネートフィルムを浸透せずデラミ現象を回避する効果を期待できるものである。「最内層」とは包装用容器の最も内側の階層[容器内に収納された食品に最も近く(又は接する)階層]、「最外層」とは包装用容器の最も外側の階層(外気に最も近い層)を意味する(段落「0024」参照。)。
【0005】
特許文献2は、発泡層を有する非発泡ラミネートフィルムと耐熱性基材とが積層してなる合成樹脂積層発泡シートであって、非発泡ラミネートフィルムが一層以上の無延伸ポリプロピレンフィルム(以下「CPP」ともいう。)といったポリオレフィン系樹脂層とガスバリア層を有し、ガスバリア層の酸素透過度が1,000cc/25μm・m2・day・atm以下であることで、非発泡ラミネートフィルムと耐熱性基材との固着界面に食品から流出する高温の物質とその熱が到達することを防止する効果を期待できるものである。
【0006】
二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)と比べて、最内層に無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)を採用した場合、積層したシートから容器への成型性が良好なことから、意匠性を目的として印刷を施す食品容器の成型用シートを構成するラミネートフィルムにも採用されていた。一般的に、ポリプロピレンは、融点が135~165℃程度であり、中でも、電子レンジ等で加熱される高温の食品を収容する包装用容器向けの無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)に用いられるポリプロピレンとしては、主に融点が160~165℃程度のホモポリマーが採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-38577号公報
【特許文献2】特開2018-69492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、無延伸ポリプロピレンフィルムは、融点以下であっても、温度が高いほど加熱による食用油等の相溶性良好な物質の透過速度が速くなるため、短時間で食用油が透過してしまうおそれがある。すなわち、ポリプロピレンのSP値と上記食用油のSP値とはどちらも同程度(約8)であり、上記食用油が溶け込んで無延伸ポリプロピレンフィルムを透過しやすくなり、デラミ現象を誘発しやすい。
【0009】
さらに、特許文献2で最内層に無延伸ポリプロピレンフィルムを採用していても、特許文献1では最内層に無延伸ポリプロピレンフィルムを採用するとデラミ現象が生じるおそれがあることから(特許文献1の段落「0089」参照。)、特許文献2に基づいて無延伸ポリプロピレンフィルムを特許文献1の最内層に採用すれば、発明の作用効果の発生を阻害する要因になりかねないのみならず、無延伸ポリプロピレンのSP値と上記油のSP値とに差がないため、デラミ現象が生じかねない。
【0010】
また、ラミネートフィルムに印刷が施されている場合、特に容器の内側から印刷内容を見やすくしたり、印刷内容との相乗効果により食品の見栄えをよくしたりするために、印刷層を最内層付近に積層するニーズがあるものの、最内層が無延伸ポリプロピレンフィルムの場合、上記油の溶け込みにより印刷インキが溶解してデラミ現象を誘発するのみならず、無延伸ポリプロピレンフィルムが破れて印刷インキが食品と接触する恐れがあるため、食品衛生上の問題も生じかねない。
【0011】
そこで、本発明の目的は、電子レンジ等で加熱された食品から流出する高温の食用油による無延伸ポリプロピレンフィルムのデラミ現象を予防し、また、上記食用油による印刷層の溶解に伴う無延伸ポリプロピレンフィルムの破損を予防する熱成型用シート及び熱成型用シートの製造方法、並びに包装用容器、包装用容器の製造方法、及び包装用容器の使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による熱成型用シートは、無延伸ポリプロピレンフィルムの片面にSP値9.0以上である油分不透層が設けられたラミネートフィルムと、上記油分不透層側から上記ラミネートフィルムに積層された耐熱性基材と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、上記ラミネートフィルムは、上記油分不透層側から設けられた印刷層を備えてもよい。
【0014】
また、上記油分不透層は、変性アクリル、脂肪族ポリカーボネート、可溶性ポリエステル、可溶性ポリアミド、エチレン‐ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリアクリロニトリル共重合体(PAN)から少なくとも1つを含んでもよい。
【0015】
本発明による熱成型用シートの製造方法は、無延伸ポリプロピレンフィルムの片面にSP値9.0以上である油分不透層が塗布されたラミネートフィルムを得る準備工程と、上記油分不透層側から耐熱性基材を前記ラミネートフィルムに積層する生成工程と、を含むことを特徴とする。
【0016】
上記油分不透層の固形分塗布量が0.1~5.0g/mであることが望ましい。
【0017】
また、上記準備工程は、上記油分不透層側から印刷層が設けられたラミネートフィルムを得てもよい。
【0018】
また、上記準備工程は、無延伸ポリスチレンフィルムの片面に印刷層が設けられた印刷ポリスチレンフィルムを得た後、上記油分不透層側から上記無延伸ポリスチレンフィルム又は上記印刷層を上記耐熱性基材に対向させて前記印刷ポリスチレンフィルムが設けられたラミネートフィルムを得てもよい。
【0019】
本発明による包装用容器は、上記熱成型用シート製かつ所望の形状に熱成型された状態であることを特徴とする。
【0020】
本発明による包装用容器の製造方法は、上記熱成型用シートの製造方法にて得た熱成型用シートを所望の形状に熱成型することを特徴とする。
【0021】
本発明による包装用容器の使用方法は、上記包装用容器又は上記包装用容器の製造方法に油を含む油性食品を入れて電子レンジで加熱処理をすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、電子レンジ等で加熱された食品から流出する高温の食用油による無延伸ポリプロピレンフィルムのデラミ現象を予防し、また上記食用油による印刷層の溶解に伴う無延伸ポリプロピレンフィルムの破損を予防する効果を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1A】本発明の一実施形態における熱成型用シートの部分拡大端面図である。
図1B】上記熱成型用シートの製造方法を示す概念図である。
図2A】上記熱成型用シートとは別の熱成型用シートの部分拡大端面図である。
図2B】上記熱成型用シートの製造方法を示す概念図である。
図3A】上記熱成型用シートとは別の熱成型用シートの部分拡大端面図である。
図3B】上記熱成型用シートの製造方法を示す概念図である。
図4A】上記熱成型用シートとは別の熱成型用シートの部分拡大端面図である。
図4B】上記熱成型用シートの製造方法を示す概念図である。
図5A】上記熱成型用シートとは別の熱成型用シートの部分拡大端面図である。
図5B】上記熱成型用シートの製造方法を示す概念図である。
図5C】上記熱成型用シートの製造方法とは別の製造方法を示す概念図である。
図6A】上記熱成型用シートとは別の熱成型用シートの部分拡大端面図である。
図6B】上記熱成型用シートの製造方法を示す概念図である。
図7A】上記熱成型用シートとは別の熱成型用シートの部分拡大端面図である。
図7B】上記熱成型用シートの製造方法を示す概念図である。
図8A】上記熱成型用シートとは別の熱成型用シートの部分拡大端面図である。
図8B】上記熱成型用シートの製造方法を示す概念図である。
図8C】上記熱成型用シートの製造方法とは別の製造方法を示す概念図である。
図9】本発明の一実施形態における包装用容器の(a)正面図、(b)部分拡大端面図である。
【0024】
以下、図1A図1Bを参照しつつ、本実施形態による熱成型用シート及び熱成型用シートの製造方法を説明する。
【0025】
<熱成型用シートの基本的な構成>
図1Aに示すように、熱成型用シート1は、無延伸ポリプロピレンフィルム10の片面にSP値9.0以上である油分不透層20が積層されたラミネートフィルム1aと、油分不透層20側からラミネートフィルム1aに積層された、耐熱性基材1bと、を備えている。
【0026】
この構成によれば、電子レンジ等での加熱により食品から生じて無延伸ポリプロピレンフィルム10を透過した油が油分不透層20で堰き止められるため、ラミネートフィルム1aと耐熱性基材1bとの間に油が入り込まず滞留もしないため、デラミ現象の発生を防ぐことができる。すなわち、油分不透層20のSP値と油のSP値との差が大きいため、食用油がラミネートフィルム1aを浸透せず(又は浸透し切らず)、耐熱性基材1bとの接着部分に至らない(至っても影響を与えない)ため、成型後の包装用容器の品質向上も期待できる。
【0027】
<熱成型用シートを構成する各部の説明>
ラミネートフィルム1aは、電子レンジ等による加熱時や100℃~150℃の高温の食品との接触時の耐熱性や耐油性、印刷層との積層適性、ガスバリア性等を有する単層又は複数層(所定の熱可塑性樹脂層、印刷層等)の熱可塑性樹脂製フィルムであり、成型後の包装用容器の最内層であってもなくてもよく、また、上記最内層を含んでも含まなくてもよい。
【0028】
ラミネートフィルム1aを構成する熱可塑性樹脂製フィルムは、無延伸ポリプロピレンフィルム10のみならず、他のポリオレフィン系樹脂製フィルムやポリスチレン系樹脂製フィルムを含んでもよく、ポリオレフィン系樹脂製フィルムはポリエチレン製フィルムでもよく、ポリエチレン製フィルムは無延伸でも二軸延伸でもよく、ポリスチレン系樹脂製フィルムは無延伸でも二軸延伸でもよいが、好ましくは無延伸であり、耐熱性・収縮性・耐屈曲性・耐衝撃性・耐摩耗性・透明性・印刷ピッチ性の少なくとも1つ又は2つ以上を有すると好ましい。
【0029】
無延伸ポリプロピレンフィルム10の厚みは、18μm~100μmでもよく、好ましくは20μm~50μm、より好ましくは25μm~40μmであり、18μm未満だと厚みが薄く食用油が浸透しやすく、100μm超だと原料費のコストアップになる。
【0030】
耐熱性基材1bは、電子レンジ等による加熱時の耐熱性、外部からの耐衝撃性、印刷層との積層適性を有する単層又は複数層(発泡層、非発泡表面層、非発泡中間層等)の熱可塑性樹脂製シートであり、成型後の包装用容器の最外層であってもなくてもよく、また、上記最外層を含んでも含まなくてもよい。耐熱性基材1bの熱収縮率はJISK7133の規定で測定され、90℃加熱条件下での熱収縮率は好ましくは-2.0~2.0%でもよく、上記熱収縮率が-2.0%より低い、または2.0%より高いと電子レンジ等での加熱時に変形する恐れがある。
【0031】
耐熱性基材1bを構成する熱可塑性樹脂製シートは、例えばポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂が含まれ、好ましくはポリオレフィン系樹脂で、より好ましくはポリプロピレン樹脂で、ポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂との混合物でもよく、無機フィラー(タルク)を含んでいてもよい。
【0032】
複数層における発泡層とは、耐熱性基材1b、又は耐熱性基材1bを構成する複数層のうちの一層でもよく、厚み300μm~4000μmでもよい。発泡層が複数層の一層である場合、他層は発泡層の少なくとも片面に積層される非発泡表面層や非発泡中間層でもよい。発泡層は、気泡径が異なる複数の発泡層で構成されてもよい。複数層における非発泡表面層とは、ラミネートフィルム1aと積層される前の耐熱性基材1bにおける表面の層(成型時における最外層及び/又はラミネートフィルム1aと接触する層)でもよく、発泡層の片面又は両面に積層されてもよく、厚み1μm~20μmでもよい。複数層における非発泡中間層とは、発泡層と非発泡表面層との間に介在する中間の層でもよく、発泡層の片面又は両面に積層されてもよく、厚み50μm~300μmでもよい。
【0033】
油分不透層20は、変性アクリル、脂肪族ポリカーボネート、可溶性ポリエステル、可溶性ポリアミド、エチレン‐ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリアクリロニトリル共重合体(PAN)から少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0034】
変性アクリルとしては、例えば(メタ)アクリル酸エステル類と、メタクリル酸、アクリル酸、アクリルアミド、アクリル酸エチレングリコールエステル等の官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体や少量の他ポリマーのブレンドが例示できるが、これに限定されるものでは無い。
【0035】
<熱成型用シートの製造方法の基本工程>
図1Bに示すように、熱成型用シート1の製造方法は、無延伸ポリプロピレンフィルム10の片面にSP値9.0以上である油分不透層20が積層されたラミネートフィルム1aを得る準備工程と、油分不透層20側から、耐熱性基材1bを、ラミネートフィルム1aに積層する生成工程と、を含む。
【0036】
油分不透層20の固形分塗布量は0.1~5.0g/mであり、好ましくは0.3~3.0g/mであり、0.1g/mより少ないと食用油が油分不透層を浸透する恐れがあり、5.0g/mより多いと原料費のコストアップになる。油分不透層20の固形分塗布量は、例えば油分不透層20の厚みと密度を用いて算出してもよく、油分不透層20の密度は、例えば浮沈法や密度勾配管法によって求めてもよい。
【0037】
油分不透層20の固形分塗布量は0.05~1.0g/mであってもよく、好ましくは0.1~0.5g/mであり、0.05g/mより少ないと食用油が油分不透層を浸透する恐れがあり、1.0g/mより多いと原料費のコストアップになる。
【0038】
<上記製造方法の具体的な工程>
準備工程は、無延伸ポリプロピレンフィルム10の片面に油分不透層20を塗布する油分不透層塗布工程のみを介してラミネートフィルム1aを得てもよいが、油分不透層塗布工程後に油分不透層側から印刷層を印刷するCPP印刷工程、上記油分不透層側から接着層を塗布するCPP接着層塗布工程、無延伸ポリスチレンフィルム(以下「CPS」ともいう。)に印刷層を印刷するCPS印刷工程、CPS印刷工程後に印刷層側から接着層を塗布するCPS接着層塗布工程、上記油分不透層側から無延伸ポリスチレンフィルム又は印刷層を印刷した無延伸ポリスチレンフィルムを積層するCPS積層工程のうち少なくとも一つ又は二つ以上を任意の順番で介してラミネートフィルムを得てもよい。
【0039】
生成工程は、油分不透層塗布工程後に油分不透層20側から耐熱性基材1bを積層する基材積層工程であってもよいが、CPS積層工程後、CPP接着層塗布工程後、CPP印刷工程後、又は無延伸ポリスチレンフィルムに耐熱性基材を積層するCPS基材積層工程後に油分不透層側から耐熱性基材を積層する基材積層工程であってよく、基材積層工程以外の工程を含んでもよい。
【0040】
<別の熱成型用シート及び熱成型用シートの製造方法>
次に、図2A図8Cを参照しつつ、本発明の一実施形態における別の熱成型用シート及び熱成型用シートの製造方法について、上述した熱成型用シート及び熱成型用シートの製造方法と相違する部分を説明し、同等の部分の説明を省略する。図1A図1Bで示した部分と同等なものは、参照を容易にするため、図2A図8Cでは図1A図1Bにおいて一律100を加えた番号にしている。
【0041】
図2Aに示すように、熱成型用シート101のラミネートフィルム101aは、さらに油分不透層120に積層された接着層130と、接着層130に積層された無延伸ポリスチレンフィルム140とを備え、無延伸ポリスチレンフィルム140を介してラミネートフィルム101aがポリスチレン樹脂製の耐熱性基材101bに積層されてもよい。
【0042】
図2Bに示すように、準備工程は、油分不透層塗布工程後に油分不透層120に接着層130を塗布するCPP接着層塗布工程と、CPP接着層塗布工程後に接着層130に無延伸ポリスチレンフィルム140を積層するCPS積層工程とを経て、ラミネートフィルム101aを得てもよい。生成工程は、CPS積層工程後にラミネートフィルム101aにポリスチレン樹脂製の耐熱性基材101bを積層してもよい。
【0043】
図3Aに示すように、熱成型用シート101のラミネートフィルム101aは、さらに油分不透層120に積層された接着層130を備え、接着層130を介してラミネートフィルム101aがポリスチレン樹脂製の耐熱性基材101bに積層されている。接着層130は、ポリスチレン樹脂製耐熱性基材101bに対して所望の接着強度を発現する成分である。
【0044】
図3Bに示すように、準備工程は、油分不透層塗布工程後に油分不透層120に接着層130を塗布するCPP接着層塗布工程を経て、ラミネートフィルム101aを得てもよい。生成工程は、CPP接着層塗布工程後にラミネートフィルム101aにポリスチレン樹脂製の耐熱性基材101bを積層してもよい。
【0045】
図4Aに示すように、熱成型用シート201のラミネートフィルム201aは、さらに油分不透層220に積層された印刷層250を備え、印刷層250を介してラミネートフィルム201aがポリプロピレン樹脂製の耐熱性基材201bに積層されている。印刷層250は、無延伸ポリプロピレンフィルム210とポリプロピレン樹脂製の熱性基材201bとの接着強度を低下させない成分である。
【0046】
この構成によれば、印刷層250が無延伸ポリプロピレンフィルム210に面しておらず、換言すれば、印刷層250が無延伸ポリプロピレン210に直接積層されておらず、また、印刷層250と無延伸ポリプロピレンフィルム210との間に油分不透層220が介在することから、油が印刷層250に行き届かないため、印刷層250の溶解に伴う無延伸ポリプロピレンフィルム210の破損を予防するのみならず、印刷層250の美麗性を維持する効果も期待できる。
【0047】
印刷層250は、粉体が含まれる層でもよく、例えば金属インキが印刷されて形成された金属粉を有する金属光沢層でもよい。金属粉としては、例えばアルミニウム粉、金粉、銀粉、銅粉、青銅粉、亜鉛粉、これらの粉末の混合物、その他の金属や合金の粉末又は金属蒸着細片等の金属光沢成分として従来公知の様々な形態を有する金属粉でもよい。また、例えば黄色や赤色等の着色剤と混合されて色調が調整された金属粉でもよい。さらに、無機粒子の表面に金属の膜が形成されたものであってもよい。さらに、無機粉体(例えば、ガラスフレーク、マイカ、セリサイト、タルク又はこれら2種類以上の混合物)でも良い。また、粉体含有量は、光沢を十分に発現させるために5mg/m以上が適しているが、印刷層が厚くなりすぎると、成型性の低下を招くため、5~500mg/mが好ましく、より好ましくは10~200mg/m、さらにより好ましくは20~100mg/mが好ましい。印刷インキベヒクル(バインダー)としては例えばポリウレタン系樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂又はこれら2種類以上の混合物が使用できる。印刷溶剤としては、例えば酢酸エチル、酢酸プロピル、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン、メチルシクロヘキサン、イソプロピルアルコール(IPA)又はこれら2種類以上の混合物が使用できる。また、硬化剤などの添加剤を使用してもよい。
【0048】
図4Bに示すように、準備工程は、油分不透層塗布工程後に油分不透層220に印刷層250を塗布するCPP印刷工程を経て、ラミネートフィルム101aを得てもよい。生成工程は、CPP印刷工程後にラミネートフィルム201aにポリプロピレン樹脂製の耐熱性基材201bを積層してもよい。
【0049】
図5Aに示すように、熱成型用シート301のラミネートフィルム301aは、さらに油分不透層320に積層された印刷層350と、印刷層350に積層された接着層330と、接着層330に積層された無延伸ポリスチレンフィルム340とを備え、無延伸ポリスチレンフィルム340を介してラミネートフィルム301aがポリスチレン樹脂製の耐熱性基材301bに積層されてもよい。
【0050】
図5Bに示すように、準備工程は、油分不透層塗布工程後に油分不透層320に印刷層350を印刷するCPP印刷工程と、CPP印刷工程後に印刷層350に接着層330を塗布するCPP接着層塗布工程と、CPP接着層塗布工程後に接着層330に無延伸ポリスチレンフィルム340を積層するCPS積層工程とを経て、ラミネートフィルム301aを得てもよい。生成工程は、CPS積層工程後にラミネートフィルム301aにポリスチレン樹脂製の耐熱性基材301bを積層してもよい。
【0051】
図5Cに示すように、準備工程は、図5Bに示すCPS積層工程を経ずにラミネートフィルム301aを得てもよく、CPS積層工程のかわりに無延伸ポリスチレンフィルム340をポリスチレン樹脂製の耐熱性基材301bに積層するCPS基材積層工程を経てもよい。生成工程は、CPP接着層塗布工程後かつCPS基材積層工程後に無延伸ポリスチレンフィルム340を介してラミネートフィルム301aにポリスチレン樹脂製耐熱性基材301bを積層してもよい。ポリスチレン樹脂製の耐熱性基材301bが耐熱ポリスチレンペーパー(以下「耐熱PSP」ともいう。)であれば、無延伸ポリスチレンフィルム340によって、基材表面の平滑性が得られることから、ラミネートフィルム301aとの接着強度の安定性が向上する効果を期待できる。
【0052】
図6Aに示すように、熱成型用シート301のラミネートフィルム301aは、さらに油分不透層320に積層された印刷層350と、印刷層350に積層された接着層330とを備え、接着層330を介してラミネートフィルム301aがポリスチレン樹脂製の耐熱性基材301bに積層されてもよい。接着層330は、ポリスチレン樹脂製耐熱性基材301bに対して所望の接着強度を発現する成分である。
【0053】
図6Bに示すように、準備工程は、油分不透層塗布工程後に油分不透層320に印刷層350を印刷するCPP印刷工程と、CPP印刷工程後に印刷層350に接着層330を塗布するCPP接着層塗布工程を経て、ラミネートフィルム301aを得てもよい。生成工程は、CPP接着層塗布工程後にラミネートフィルム301aにポリスチレン樹脂製の耐熱性基材301bを積層してもよい。
【0054】
図7Aに示すように、熱成型用シート401のラミネートフィルム401aは、さらに油分不透層420に積層された接着層430と、接着層430に積層された無延伸ポリスチレンフィルム440と、無延伸ポリスチレンフィルム440に積層された印刷層450とを備え、印刷層450を介してラミネートフィルム401aがポリスチレン樹脂製耐熱性基材401bに積層されてもよい。
【0055】
図7Bに示すように、準備工程は、油分不透層塗布工程後に油分不透層420に接着層430を塗布するCPP接着層塗布工程と、また、無延伸ポリスチレンフィルム440の片面に印刷層450が積層された印刷ポリスチレンフィルム450aを得るCPS印刷工程を含み、CPP接着層塗布工程後かつCPS印刷工程後に、油分不透層420側から印刷層450をポリスチレン樹脂製の耐熱性基材401bに対向させて印刷ポリスチレンフィルム450aを積層するCPS積層工程を経て、ラミネートフィルム401aを得てもよい。生成工程は、CPS積層工程後にラミネートフィルム401aにポリスチレン樹脂製の耐熱性基材401bを積層してもよい。
【0056】
図8Aに示すように、熱成型用シート401のラミネートフィルム401aは、さらに油分不透層420に積層された接着層430と、接着層430に積層された印刷層450と、印刷層450に積層された無延伸ポリスチレンフィルム440とを備え、無延伸ポリスチレンフィルム440を介してラミネートフィルム401aがポリスチレン樹脂製耐熱性基材401bに積層されてもよい。
【0057】
図8Bに示すように、準備工程は、油分不透層塗布工程後に油分不透層420に接着層430を塗布するCPP接着層塗布工程、また、無延伸ポリスチレンフィルム440の片面に印刷層450が積層された印刷ポリスチレンフィルム450aを得るCPS印刷工程を含み、CPP接着層塗布工程後かつCPS印刷工程後に、油分不透層420側から無延伸ポリスチレンフィルム440をポリスチレン樹脂製の耐熱性基材401bに対向させて印刷ポリスチレンフィルム450aを積層するCPS積層工程を経て、ラミネートフィルム401aを得てもよい。生成工程は、CPS積層工程後にラミネートフィルム401aにポリスチレン樹脂製の耐熱性基材401bを積層してもよい。
【0058】
また、図8Cに示すように、準備工程は、無延伸ポリスチレンフィルム440の片面に印刷層450が積層された印刷ポリスチレンフィルム450aを得るCPS印刷工程と、CPS印刷工程後に印刷層450に接着層430を塗布するCPS接着層塗布工程とを含み、CPS接着層塗布工程後に、油分不透層420側から無延伸ポリスチレンフィルム440をポリスチレン樹脂製耐熱性基材401bに対向させて印刷ポリスチレンフィルム450aを積層するCPS積層工程を経て、ラミネートフィルム401aを得てもよい。生成工程は、CPS積層工程後にラミネートフィルム401aにポリスチレン樹脂製の耐熱性基材401bを積層してもよい。
【0059】
ラミネートフィルム-耐熱性基材間は、例えば熱圧着、ドライラミネート、押出ラミネート、コート剤等で接着されてもよく、ラミネートフィルム内の接着層は、ドライラミ接着剤層でもよい。接着剤には、例えばポリエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂などが使用でき、アルコール可溶性の接着剤を用いてもよい。
【0060】
<包装用容器及び包装用容器の使用方法の一例>
次に、図9を参照しつつ、本発明の一実施形態における熱成型用シート製又は熱成型用シートの製造方法にて得た熱成型用シート製かつ所望の形状に熱成型された状態の包装用容器及び包装用容器の使用方法の一例を説明する。
【0061】
図9(a)に示すように、包装用容器Pは、油性の食品を収納できる形状であれば特に限定はなく、例えば食品が載置される付番しない底部と、上記底部から斜め上方に拡開して立設された付番しない側壁部と、上記側壁部の上端から外方に延出された付番しないフランジ部とを備えており、フィルム状のトップシールや内嵌合式又は外嵌合式の成型蓋といった蓋体で開口部分を閉蓋されてもよい。
【0062】
包装用容器Pは、例えば真空成型、圧空成型、真空圧空成型、両面真空成型、熱板成型等のシート成型で、深絞り包装としてシートを金型に合わせて容器状に成型したものでもよい。包装用容器Pの厚みは特に制限はないが、フランジ部の厚みは0.25mm~4.0mmであってもよく、0.25mm~3.5mmであることがより好ましく、0.35mm~3.0mmであることがより好ましく、底部の厚みは0.18mm~4.0mmであってもよく、0.2mm~3.5mmであることがより好ましく、0.22mm~3.0mmであることがより好ましい。
【0063】
電子レンジで食品を加熱すると、食品自体が発する食用油や調理時(調理用や調味料)の食用油が液状化して流動性が高まるため、これらの成分及び温度上昇に伴い、包装用容器Pとの接触部分(最内層)から下層に浸透しようとする。このとき、図9(b)に示す最内層側のラミネートフィルム1aの油分不透層20が、これらの油分が下層に浸透するのを予防する。したがって、高温状態の食品の油分がラミネートフィルム1aと耐熱性基材1bとの間に入り込むことにより生じるデラミ現象を回避することができる。
【0064】
なお、本実施形態は、上述した内容に限定されず、同等の効果を得られる限り、あらゆる部位の位置・形状・寸法、部位同士の関係、素材の種類・成分、製造方法に含まれる工程の有無や順番を含む。
【実施例0065】
次に、実施例及び比較例における熱成型用シートを成型した包装用容器に対する評価試験(以下「本評価試験」ともいう。)について説明する。
【0066】
本評価試験の項目は、包装用容器の耐熱性(容器変形の有無)、デラミ現象の有無、成型による腑形性、印刷層の美麗性、コスト性、及びリサイクル性とする。本評価試験では、包装用容器の成型方法として真空成型を採用し、成型された包装用容器に加熱用のカレーを収納して1600W出力の電子レンジで75秒加熱した後の包装用容器の状態を目視にて観察するものとする。
【0067】
実施例1~2及び比較例1~3の試験条件は以下である。
【0068】
≪実施例1≫
(ラミネートフィルム)
層構成:(最内層側から)無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP、厚み25μm、SP値8.0)、油分不透層(変性アクリル、固形分塗布量1.0g/m、SP値9.3)、印刷層、接着層(ドライラミ接着剤層)、無延伸ポリスチレンフィルム(CPS、厚み20μm)
(耐熱性基材)
層構成:耐熱ポリスチレンペーパー(PSP、厚み3000μm、熱収縮率0.5%)
【0069】
≪実施例2≫
(ラミネートフィルム)
層構成:(最内層側から)無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP、厚み25μm、SP値8.0、)、油分不透層(脂肪族ポリカーボネート、固形分塗布量1.0g/m、SP値10.0)、印刷層、接着層(ドライラミ接着剤層)、無延伸ポリスチレンフィルム(CPS、厚み20μm)
(耐熱性基材)
実施例1と同じ
【0070】
≪比較例1≫
(ラミネートフィルム)
層構成:(最内層側から)無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP、厚み25μm、SP値8.0)、印刷層、接着層(ドライラミ接着剤層)、無延伸ポリスチレンフィルム(CPS、厚み20μm)
(耐熱性基材)
実施例1と同じ
【0071】
≪比較例2≫
(ラミネートフィルム)
層構成:(最内層側から)二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム(OPBT、厚み15μm、SP値10.0)、印刷層、接着層(ドライラミ接着剤層)、無延伸ポリスチレンフィルム(CPS、厚み20μm)
(耐熱性基材)
実施例1と同じ
【0072】
≪比較例3≫
(ラミネートフィルム)
層構成:(最内層側から)ポリブチレンテレフタレートフィルム(PBT、厚み15μm、SP値10.0、)、印刷層、接着層(ドライラミ接着剤層)
(耐熱性基材)
層構成:(最外層側から)表面層[ポリプロピレン(PP)、厚み10μm]、中間層[ポリプロピレン(PP+タルク)、厚み150μm]、発泡層[ポリプロピレン(PP+発泡剤)、厚み800μm]、中間層(上記と同じ)、表面層(上記と同じ)
【0073】
≪試験結果≫
実施例1~2及び比較例1~3における試験結果を表1に示す。参照の便宜上、同表には上述した各試験条件も記載してある。
【0074】
評価項目毎の指標は以下とする。
耐熱性:〇(変形なし)、△(変形の恐れややあり)、×(変形の恐れあり)
デラミ有無:〇(なし)、△(恐れややあり)、×(恐れあり)
成型による腑形性:〇(良好)、△(やや不良)、×(不良)
印刷美麗性:〇(見やすい)、△(やや見え難い)、×(見え難い)
コスト性:〇(妥当)、△(やや割高)、×(割高)
リサイクル性:〇(可)、△(やや難)、×(難)
総合評価:◎(問題なし)、〇(概ね問題なし)、×(問題あり)
【0075】
【表1】
【0076】
実施例1及び実施例2では、加熱による包装用容器の変形は見受けられず(耐熱性:〇)、食品の油はラミネートフィルムを浸透せず耐熱性基材との間や各層間に滞留せず(デラミ有無:〇)、ラミネートが成型金型に追従して所望の形状及び状態に成型でき(成型による腑形性:〇)、包装用容器の最内層から印刷層の状態を目視にて鮮明に確認でき(印刷美麗性:〇)、原料費は妥当であり(コスト性:〇)、再利用も可能であり(リサイクル性:〇)、包装用容器として何ら問題はなかった(総合評価:◎)。
【0077】
比較例1では、実施例1及び実施例2と比べて、油分不透層がないため、食品の油が浸透して耐熱性基材に到達して滞留する恐れがあり(デラミ有無:×)、包装用容器として問題があると判断した(総合評価:×)。
【0078】
比較例2では、実施例1及び実施例2と比べて、油分不透層がないものの、比較例1と対比すると、最内層が二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムであり、二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムのSP値と食品の油のSP値との差が大きい分、食品の油はラミネートフィルムを浸透せず耐熱性基材との間や各層間に滞留しなかった(デラミ有無:〇)。しかしながら、二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムは、加熱によるMD(Machine Direction、縦方向又はシート流れ方向)の収縮性が大きい分、包装用容器の変形の恐れがあり(耐熱性:×)、MDの収縮力により成型性が劣り、また、成型金型に追従し切れずに形状(デザイン)が限定される恐れがあり(成型による腑形性:△)、原料費が割高であり(コスト性:×)、再利用し難い(リサイクル性:×)ことから、包装用容器として問題があると判断した(総合評価:×)。
【0079】
比較例3では、実施例1及び実施例2と比べて、油分不透層がないものの、ポリブチレンテレフタレートフィルムのSP値と食品の油のSP値との差が大きい分、食品の油はラミネートフィルムを浸透せず耐熱性基材との間や各層間に滞留しなかった(デラミ有無:〇)。しかしながら、ポリブチレンテレフタレートは結晶化速度が速く、無延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムは冷却工程で結晶化して不透明になり、印刷層の状態が不鮮明で見え難く(印刷美麗性:×)、原料費が割高であり(コスト性:×)、再利用し難い(リサイクル性:×)ことから、包装用容器として問題があると判断した(総合評価:×)。
【0080】
実施例を踏まえて、本発明の一実施形態における熱成型用シート及び熱成型用シート製の包装用容器の作用効果について、図5Aを参照しつつ説明する。
【0081】
熱成型用シート301及び熱成型用シート301を成型した包装用容器は、無延伸ポリプロピレンフィルム310の片面に積層されたSP値9.0以上である油分不透層320と、油分不透層320に積層された印刷層350と、印刷層350に積層された接着層330と、接着層330に積層された無延伸ポリスチレンフィルム340とが積層されたラミネートフィルム301aと、油分不透層320側からラミネートフィルム301aに積層された、ポリスチレン樹脂製の耐熱性基材301bである耐熱PSPと、を備えていることから、電子レンジ等での加熱により食品から生じて無延伸ポリプロピレンフィルム310を透過した油が油分不透層320で堰き止められるため、ラミネートフィルム301aと耐熱性基材301bとの間に油が入り込まず滞留もしないため、デラミ現象の発生を防ぐことができる。すなわち、油分不透層320のSP値と油のSP値との差が大きいため、油がラミネートフィルム301aを浸透せず(又は浸透し切らず)、耐熱性基材301bとの接着部分に至らない(至っても影響を与えない)ため、成型後の包装用容器の品質向上も期待できる。さらに、印刷層350が無延伸ポリプロピレン310に直接積層されておらず、また、印刷層350と無延伸ポリプロピレンフィルム310との間に油分不透層320が介在することから、油が印刷層350に行き届かないため、印刷層350の溶解に伴う無延伸ポリプロピレンフィルム310の破損を予防するのみならず、印刷層350の美麗性を維持する効果も期待できる。
【符号の説明】
【0082】
1、101、201、301、401 熱成型用シート
1a、101a、201a、301a、401a ラミネートフィルム
1b、101b、201b、301b、401b 耐熱性基材
10、110、210、310、410 CPP
20、120、220、320、420 油分不透層
30,130、230、320、420 接着層
40、140、240、340、440 CPS
150、250、350、450 印刷層
450a 印刷ポリスチレンフィルム
P 包装用容器
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9