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特開2022-96086容器詰麦抽出液含有濃縮液、その濃縮液の製造方法及びその濃縮液の甘味付与方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096086
(43)【公開日】2022-06-29
(54)【発明の名称】容器詰麦抽出液含有濃縮液、その濃縮液の製造方法及びその濃縮液の甘味付与方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/38 20210101AFI20220622BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20220622BHJP
   A23L 2/60 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
A23L2/38 M
A23L2/00 B
A23L2/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208990
(22)【出願日】2020-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】591014972
【氏名又は名称】株式会社 伊藤園
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】▲脇▼ 義賢
(72)【発明者】
【氏名】忌部 東洋
(72)【発明者】
【氏名】笹目 正巳
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC02
4B117LC03
4B117LE10
4B117LG13
4B117LK08
4B117LP01
4B117LP03
(57)【要約】
【課題】従来の止渇性麦茶飲料よりも甘味や苦味を強く感じることができ、濃度感の高い麦茶飲料になる麦抽出液含有濃縮液の製造方法を提供する。
【解決手段】麦抽出液含有濃縮液の製造方法は、原料麦を加熱することによって、フェルラ酸を0.000010~0.0080mg/100gに調整し、且つカフェ酸を0.000010~0.0040mg/100gに調整した加熱処理麦を得(加熱工程)、該加熱処理麦を水性溶媒で抽出することによって、フェルラ酸を0.00030~0.17mg/100gに調整し、且つカフェ酸を0.00050~0.30mg/100gに調整した抽出液を得(抽出工程)、該抽出液を濃縮して容器に充填することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料麦を加熱することによって、フェルラ酸を0.000010~0.0080mg/100gに調整し、且つカフェ酸を0.000010~0.0040mg/100gに調整した加熱処理麦を得(加熱工程)、
該加熱処理麦を水性溶媒で抽出することによって、フェルラ酸を0.00030~0.17mg/100gに調整し、且つカフェ酸を0.00050~0.30mg/100gに調整した抽出液を得(抽出工程)、
該抽出液を濃縮して容器に充填することを特徴とする容器詰麦抽出液含有濃縮液の製造方法。
【請求項2】
前記容器詰麦抽出液含有濃縮液の可溶性固形分が、3.1~30.0%であることを特徴とする請求項1に記載の容器詰麦抽出液含有濃縮液の製造方法。
【請求項3】
前記加熱工程において、カフェ酸含有量に対するフェルラ酸含有量の比率(フェルラ酸/カフェ酸)を0.010~80.00に調整することを特徴とする請求項1又は2に記載の容器詰麦抽出液含有濃縮液の製造方法。
【請求項4】
前記抽出工程において、カフェ酸含有量に対するフェルラ酸含有量の比率(フェルラ酸/カフェ酸)を0.0090~50.00に調整することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の容器詰麦抽出液含有濃縮液の製造方法。
【請求項5】
前記加熱工程が、一次加熱工程及び二次加熱工程を含み、
該一次加熱工程において、原料麦のフェルラ酸を0.000010~0.0050mg/100gに調整し、且つカフェ酸を0.000010~0.0010mg/100gに調整することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の容器詰麦抽出液含有濃縮液の製造方法。
【請求項6】
前記加熱工程において、原料麦の前記一次加熱工程におけるフェルラ酸含有量に対する前記二次加熱工程におけるフェルラ酸含有量の比率(一次加熱フェルラ酸/二次加熱フェルラ酸)を0.010~1.00に調整することを特徴とする請求項5に記載の容器詰麦抽出液含有濃縮液の製造方法。
【請求項7】
前記原料麦のフェルラ酸が、0.010~100.00mg/100gである、請求項1~6のいずれかに記載の容器詰麦抽出液含有濃縮液の製造方法。
【請求項8】
前記容器詰麦抽出液含有濃縮液におけるフェルラ酸含有量が0.0012~0.68mg/100gであり、且つカフェ酸含有量が0.0020~1.20mg/100gであることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の容器詰麦抽出液含有濃縮液の製造方法。
【請求項9】
フェルラ酸含有量が0.0012~0.68mg/100gであり、且つカフェ酸含有量が0.0020~1.20mg/100gであることを特徴とする容器詰麦抽出液含有濃縮液。
【請求項10】
カフェ酸含有量に対するフェルラ酸含有量の比率(フェルラ酸/カフェ酸)が0.0080~45.00であることを特徴とする請求項9に記載の容器詰麦抽出液含有濃縮液。
【請求項11】
原料麦を加熱することによって、フェルラ酸を0.000010~0.0080mg/100gに調整し、且つカフェ酸を0.000010~0.0040mg/100gに調整した加熱処理麦を得、
該加熱処理麦を水性溶媒で抽出し、フェルラ酸を0.00030~0.17mg/100gに調整し、且つカフェ酸を0.00050~0.30mg/100gに調整した抽出液を得、
該抽出液を濃縮して容器に充填することを特徴とする容器詰麦抽出液含有濃縮液の甘味付与方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焙煎した原料麦から抽出された麦抽出液を濃縮して容器に充填する容器詰麦抽出液含有濃縮液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
麦茶は、日本において古くから喉の渇きを潤す止渇性飲料として夏場に飲用されてきた飲料である。しかし、近年では様々な飲まれ方が広まりつつある。
例えば、夏場だけでなく冬場にも飲用する消費者が増えており、麦茶を加温してホット飲料として飲用している。また、カフェインを含有しないことから、就寝前に飲用されることもあり、これは従来であればハーブティーや乳飲料が最適とされていた飲用シーンである。カフェインの摂取を日常的に避ける消費者においては、1年中麦茶を愛飲する人も存在する。
【0003】
現在の消費者が、麦茶に求めるニーズは多様化しており、麦茶に対して飲み慣れた味わいによる安心感がありながらも、カフェインレスであること、夏場の室内における熱中症を防止すること、さらには冬場の喉の乾燥、渇きを潤すことなど、従来にはなかった役割や嗜好を麦茶に求め始めている。
【0004】
しかし、前述したように麦茶は止渇性飲料として飲用されていることから、その香味はさっぱりとしていて、一度に多くの量が飲める味わいとなっている。そのため、止渇目的以外の飲用シーンについては現在の麦茶の味わいが最適であるとは言い難く、多種多様な消費者ニーズに応えた新たな味わいの麦茶を開発する必要性が高まっている。
【0005】
麦茶の香味や味わいを調整するため、特許文献1には、『原料麦と加熱体とを接触させることにより、麦中のアラビノキシラン含有量を5~70mg/100mlの範囲内に調整して一次加工麦を得る一次加工工程と、前記一次加工麦を加熱しながら流動搬送することにより、多糖類含有量に対する単糖類含有量の比率(単糖類/多糖類)を0.002~0.100の範囲内に調整して二次加工麦を得る二次加工工程と、を備えることを特徴とする飲料用加工麦の製造方法』が開示され、この飲料用加工麦は様々な硬度の水で抽出しても、抽出性が安定し、香味のよい麦茶を抽出できるようにしたものである。
【0006】
特許文献2には、『容器詰麦茶飲料の製造方法であって、焙煎麦を水性溶媒にて抽出して抽出液を得(抽出工程)、該抽出液を加熱して糖化液を得(加熱糖化工程)、得られた糖化液としての麦茶飲料を容器に充填する(充填工程)ことを特徴とし、且つ、容器に充填された麦茶飲料は、シュウ酸含有量が1.0~60.0mg/100mlであり、且つデンプン含有量が0.2~235.0mg/100mlであり、且つ、デンプン含有量に対する単糖及び二糖の合計含有量の質量比率((単糖+二糖)/デンプン)が0.6~1000.0であることを特徴とする容器詰麦茶飲料の製造方法』が開示され、この容器詰麦茶飲料は糖類や甘味料を添加することなく、甘みを付与することができるものである。
【0007】
特許文献3には、『焙煎麦抽出成分を含有する容器詰麦茶飲料の製造方法であって、焙煎麦を水性溶媒にて洗浄して洗浄済焙煎麦を得(洗浄工程)、該洗浄済焙煎麦を水性溶媒にて抽出して抽出液を得(抽出工程)、当該抽出液を冷却及び濾過して濾過液としての麦茶飲料を得(冷却濾過工程)、前記麦茶飲料を容器に充填する(充填工程)ことを特徴とし、且つ、容器に充填された麦茶飲料は、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸及び酢酸の合計含有量(「有機酸含有量」と称する)が0.2~120.0mg/100mlであり、且つ、シュウ酸含有量が1.0~26.0mg/100mlであり、且つ、デンプン含有量が0.2~235.0mg/100mlであることを特徴とする容器詰麦茶飲料の製造方法』が開示され、この容器詰麦茶飲料はコーヒー飲料の代替飲料となり得る新規の清涼飲料、云わば“和風のオルゾー様飲料”を得ることができるものである。
【0008】
また、麦茶の経時劣化を抑止するため、特許文献4には、『焙煎麦抽出成分(ミネラル成分含む)と、当該焙煎麦抽出成分以外のミネラル成分とを含有する容器詰麦茶飲料の製造方法であって、硬度が10.0~80.0mg/Lに調整されたミネラル含有水によって焙煎麦を抽出して抽出液を得(抽出工程)、該抽出液を冷却及び濾過して濾過液としての麦茶飲料を得(冷却濾過工程)、麦茶飲料を容器に充填する(充填工程)ことを特徴とし、且つ、容器に充填された麦茶飲料のシュウ酸含有量が1.0~10.0mg/100mlであり、カルシウム含有量が0.2~2.1mg/100mlであることを特徴とする容器詰麦茶飲料の製造方法』が開示され、この容器詰麦茶飲料はミネラル成分を含みながらも、凝集及び沈殿の発生を抑制することができるものである。
【0009】
最近では、麦茶を濃縮液とし、水で希釈して麦茶飲料として飲用できるようにすることも行われており(例えば、特許文献5の段落[0068]~[0071]参照)、容量が小さくなるので持ち運びやすく、外出やスポーツ時に希釈して飲用することができ、便利なものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2020-68759号公報
【特許文献2】特開2019-154306号公報
【特許文献3】特開2019-154305号公報
【特許文献4】特開2019-154304号公報
【特許文献5】特開2020-221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、麦茶における新たな消費者ニーズを満たすための一態様として、コーヒーや紅茶のように味わいを愉しみながら一服できる嗜好性に富む麦茶飲料になる、濃縮液とした麦茶を提案できないか鋭意研究し、濃縮液を希釈した麦茶において、従来の止渇性麦茶とは異なる香味設計を検討し、甘味と苦味の強度、さらにそれらのバランスを調整することにより従来の止渇性麦茶とは異なる嗜好性飲料として最適な麦茶の味わいを見出した。
【0012】
そこで、本発明の目的は、従来の止渇性麦茶の味わいとは異なる嗜好性の麦茶を提供することであって、具体的にはフェルラ酸(甘味評価の指標)、カフェ酸(苦味評価の指標)及びそれらのバランスが調整され、従来の止渇性麦茶飲料よりも甘味や苦味をしっかりと感じることができ、麦茶飲料になる容器詰麦抽出液含有濃縮液の製造方法を提供することである。また、本発明は、甘味、苦味及び濃度感において高評価を得たものの中でも、さらに経時保管後における、焦げ臭の抑制、甘味が保持された容器詰麦抽出液含有濃縮液の製造方法をも提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の容器詰麦抽出液含有濃縮液の製造方法の一態様は、原料麦を加熱することによって、フェルラ酸を0.000010~0.0080mg/100gに調整し、且つカフェ酸を0.000010~0.0040mg/100gに調整した加熱処理麦を得(加熱工程)、その加熱処理麦を水性溶媒で抽出することによって、フェルラ酸を0.00030~0.17mg/100gに調整し、且つカフェ酸を0.00050~0.30mg/100gに調整した抽出液を得(抽出工程)、その抽出液を濃縮して容器に充填することを特徴とする。
【0014】
上記態様の容器詰麦抽出液含有濃縮液の製造方法は、甘味の指標成分であるフェラル酸及び苦味の指標成分であるカフェ酸の濃度を原料麦の加熱時および抽出時に調整することにより、従来の止渇性麦茶飲料よりも甘味や苦味を強く感じることができ、濃度感の高い麦茶飲料を得ることができる濃縮液の製造方法になる。
【0015】
また、本発明の容器詰麦抽出液含有濃縮液の一態様は、フェルラ酸含有量が0.0012~0.68mg/100gであり、且つカフェ酸含有量が0.0020~1.20mg/100gであることを特徴とする。
【0016】
上記態様の容器詰麦抽出液含有濃縮液は、甘味の指標成分であるフェラル酸及び苦味の指標成分であるカフェ酸の濃度を上記範囲に調整することにより、従来の止渇性麦茶飲料よりも甘味や苦味を強く感じることができる濃度感の高い麦茶飲料にすることができる。
【0017】
本発明は、原料麦を加熱することによって、フェルラ酸を0.000010~0.0080mg/100gに調整し、且つカフェ酸を0.000010~0.0040mg/100gに調整した加熱処理麦を得、その加熱処理麦を水性溶媒で抽出し、フェルラ酸を0.00030~0.17mg/100gに調整し、且つカフェ酸を0.00050~0.30mg/100gに調整した抽出液を得、その抽出液を濃縮して容器に充填することを特徴とする容器詰麦抽出液含有濃縮液の甘味付与方法をも提供する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態の一例としての容器詰麦抽出液含有濃縮液の製造方法(以下、「本濃縮液の製造方法」という。)を説明する。但し、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。
【0019】
本濃縮液の製造方法は、原料麦を加熱することによって、フェルラ酸を0.000010~0.0080mg/100gに調整し、且つカフェ酸を0.000010~0.0040mg/100gに調整した加熱処理麦を得(この工程を加熱工程という。)、加熱処理麦を水性溶媒で抽出することによって、フェルラ酸0.00030~0.17mg/100gに調整し、且つカフェ酸を0.00050~0.30mg/100gに調整した抽出液を得(この工程を抽出工程という。)、抽出液を濃縮して容器に充填することを特徴とする。
【0020】
<原料麦>
原料麦としては、二条、四条、六条等の各皮麦・裸麦などの大麦、水浸漬や酵素加工による加工麦、βグルカン高含有麦、アミロースフリー麦、低ポリフェノール麦などの改良種大麦を挙げることができる。
なお、二条麦としては、例えばハインドマーシュ、メトカルフ、スコープ、コマンダー、ほうしゅん、ミカモゴールデン等の品種を挙げることができる。
他方、六条麦としては、例えばレガシー、シュンライ、ファイバースノウ、カシマムギ等の品種を挙げることができる。
【0021】
原料麦のフェルラ酸含有量は、0.010~100.00mg/100gであることが好ましく、カフェ酸含有量は、0.0050~0.70mg/100gであることが好ましい。
原料麦のフェルラ酸及びカフェ酸の含有量が上記範囲であることにより、次の加熱工程での加熱処理麦のフェルラ酸及びカフェ酸含有量を調整しやすくなる。
このような観点から、原料麦のフェルラ酸含有量は、0.010~100.00mg/100gであることが好ましく、0.10~80.00mg/100gであることがより好ましい。
また、原料麦のカフェ酸含有量は、0.0050~0.70mg/100gであることが好ましく、0.050~0.60mg/100gであることがより好ましい。
【0022】
原料麦は、カフェ酸含有量に対するフェルラ酸含有量の比率(フェルラ酸/カフェ酸)が0.050~200.00であることが好ましい。
原料麦のカフェ酸含有量に対するフェルラ酸含有量の比率が上記範囲であることにより、次の加熱工程での加熱処理麦のカフェ酸含有量に対するフェルラ酸含有量の比率を調整しやすくなる。
このような観点から、カフェ酸含有量に対するフェルラ酸含有量の比率は、0.25~160.00であることがより好ましく、0.20~60.00であることがさらに好ましい。
原料麦のフェルラ酸及びカフェ酸の含有量や比率を上記範囲に調整するには、品種、収穫時期や栽培条件などを選定することによって調整することができる。
【0023】
<加熱工程>
加熱工程は、原料麦のフェルラ酸が0.000010~0.0080mg/100gに、且つカフェ酸が0.000010~0.0040mg/100gになるように加熱して加熱処理麦を得る工程であり、原料麦を焙じて煎ることにより行うことができる。
加熱処理麦のフェルラ酸及びカフェ酸の含有量が上記範囲であることにより、次の抽出工程での抽出液のフェルラ酸及びカフェ酸の含有量を調整しやすくなる。
このような観点から、加熱処理麦のフェルラ酸は、0.000010~0.0080mg/100gであることが好ましく、0.00010~0.0060mg/100gであることがより好ましく、0.0010~0.0045mg/100gであることがさらに好ましい。
また、加熱処理麦のカフェ酸含有量は、0.000010~0.0040mg/100gであることが好ましく、0.00010~0.0032mg/100gであることがより好ましく、0.0006~0.0024mg/100gであることがさらに好ましい。
【0024】
加熱処理麦は、カフェ酸含有量に対するフェルラ酸含有量の比率(フェルラ酸/カフェ酸)が0.010~80.00であることが好ましい。
加熱処理麦のカフェ酸含有量に対するフェルラ酸含有量の比率が上記範囲であることにより、次の抽出工程での抽出液のカフェ酸含有量に対するフェルラ酸含有量の比率を調整しやすくなる。
このような観点から、カフェ酸含有量に対するフェルラ酸含有量の比率は、0.25~40.00であることがより好ましく、0.30~20.00であることがさらに好ましい。
フェルラ酸は急激な加熱により増加し、カフェ酸は緩やかな加熱により増加する傾向にあるので、加熱条件を適宜調整して含有量や比率の調整をすることができる。
【0025】
なお、原料麦や加熱処理麦のフェルラ酸及びカフェ酸の含有量は、例えば、ACQUITY UPLC システム(Waters社製)で測定することができる。
【0026】
加熱工程は、特に限定するものではないが、一次加熱麦を得る一次加熱工程と加熱処理麦を得る二次加熱工程とを備え、温度などの条件を変えた二段階の加熱をするのが好ましい。
一次加熱工程では、一次加熱麦のフェルラ酸が0.000010~0.0050mg/100gに、且つカフェ酸が0.000010~0.0010mg/100gになるように加熱するのが好ましい。
一次加熱工程で一次加熱麦のフェルラ酸及びカフェ酸の含有量が上記範囲であることにより、二次加熱工程での加熱処理麦のフェルラ酸及びカフェ酸の含有量を調整しやすくなる。
このような観点から、一次加熱工程での一次加熱麦のフェルラ酸は、0.000010~0.0050mg/100gであることが好ましく、0.00010~0.0040mg/100gであることがより好ましく、0.0010~0.0030mg/100gであることがさらに好ましい。
また、一次加熱工程での一次加熱麦のカフェ酸含有量は、0.000010~0.0010mg/100gであることが好ましく、0.00010~0.00080mg/100gであることがより好ましく、0.00040~0.00060mg/100gであることがさらに好ましい。
【0027】
加熱工程は、一次加熱工程における一次加熱麦のフェルラ酸含有量に対する二次加熱工程における加熱処理麦のフェルラ酸含有量の比率(一次加熱フェルラ酸/二次加熱フェルラ酸)を0.010~1.00に調整することが好ましい。
このようにすることにより、甘味が感ぜられる飲料になり、一次加熱により原料麦を膨らませてフェルラ酸を減少させてフェルラ酸量の調整をすることにより、二次加熱時でのカフェ酸の調整が可能となる。
このような観点から、一次加熱フェルラ酸/二次加熱フェルラ酸は、0.070~0.85であることが好ましく、0.080~0.82であることがより好ましく、0.10~0.80であることがさらに好ましい。
【0028】
一次加熱工程では原料麦を品温150~400℃で10~120秒間に渡り加熱して一次加熱麦を得、二次加熱工程では一次加熱麦を品温100~300℃で240~1200秒間に渡り加熱するのが好ましい。
このような加熱により、一次加熱工程で原料麦を適度に膨化させて甘味成分であるフェルラ酸の含有量を調整し、二次加熱工程で一次加熱麦を均一に焙煎して苦味成分であるカフェ酸の含有量を調整することができる。
このような観点から、一次加熱工程では原料麦を品温200~370℃で15~90秒間加熱するのがより好ましく、品温260~340℃で20~70秒間加熱するのがさらに好ましい。二次加熱工程では一次加熱麦を品温140~280℃で360~1080秒間加熱するのがより好ましく、品温180~260℃で480~960秒間加熱するのがさらに好ましい。
なお、原料麦の品温(表面温度)は、接触型温度測定器(ホーザン社製)や非接触型赤外線測定器(日置電機社製)で測定することができ、一次加熱麦及び加熱処理麦の品温(中心温度)は中心温度計(タニタ社製、A&D社製)で測定することができる。
【0029】
一次加熱工程は、原料麦に対し接触による熱移動が好ましい。具体的には原料麦に対し、比熱が0.025~1.200J/kg・Kの加熱体を麦の体積に対し30%以上、10~90秒間接触させることが好ましい。また比熱が0.040~1.000J/kg・Kの加熱体を麦の体積に対し35%以上、15~85秒間接触させることがより好ましく、比熱が0.050~0.900J/kg・Kの加熱体を麦の体積に対し38%以上、20~80秒間接触させることが特に好ましい。加熱体によって加熱することによって、主にフェルラ酸を効率的に調整することができる。フェルラ酸は加熱体による加熱を急激に多方向から加えることによって増加する傾向がある。
一次加熱工程における加熱体とは、原料麦に熱移動による熱を与えるものであって、特に伝達熱を与えるものが好ましく、無機材料又は金属材料などからなるものである。例えば、鉄板や珪素板等の各種無機体、金属体、珪砂、カルシウム粒、セラミック粒等の各種無機粒子、金属粒子を挙げることができる。
より具体的には、加熱した砂等の加熱体と原料麦とを混合させながら流動させるようにして加熱するのが好ましい。この加熱によって、麦の焙煎と膨化を同時/又は個別に好ましく行うことができる。
また、一次加熱工程においては、伝達熱によって麦の膨張率(一次加熱麦の体積(cm)/原料麦の体積(cm)×100)を105~400%に調整することが好ましく、抽出工程においてフェルラ酸及びカフェ酸を効率的に調整できるからである。かかる観点から膨張率は120%以上、380%以下、中でも140%以上、350%以下がより好ましい。
さらに、一次加熱工程は膨張させながら麦の中心部まで熱を伝えることが好ましく、上記膨張率の調整は一次加熱工程の中でも加熱開始の10~90秒間であることが好ましく、15~85秒間であることがより好ましく、20~60秒間であることが特に好ましい。
一次加熱麦と原料麦の水分変化率(1次加熱麦の水分量(%)/原料麦の水分量(%)×100)を、5~33%に調整することにより、急激に膨化が進む。かかる観点から水分率は、6~28%、中でも7~25%がより好ましい。
【0030】
二次加熱工程は、原料麦に流体による熱移動が好ましい。例えば原料麦に、加熱した気体、蒸気、過熱蒸気などを接触させる事が好ましく、カフェ酸は、原料麦を表面と中心を均等に加熱し、品温を緩やかに上昇させることによって増加する傾向がある。
前記流体とは、加熱した、酸素、窒素、大気などの気体であるのが好ましい。その際、自然対流により原料麦に接触してもよいし、強制的な対流により原料麦に接触してもよい。その際、原料麦に直接噴射するように接触してもよいし、麦が移動する方向と平行に流動してもよい。
より具体的には、炉内に加熱された流体を流入させ、一次加熱麦を、当該加熱炉内を移動させながら接触させることができる。その他、加熱した水蒸気や過熱水蒸気を加熱炉内に混合して焙煎することができる。
また、二次加熱工程においては、膨張させた一次加熱麦の中心部まで均一に加熱することが好ましく、二次加熱工程では二次加熱麦の中心温度に対する表面温度の比率(表面温度/中心温度)を0.70~1.20に調整するのが好ましく、0.80~1.10に調整するのがより好ましく、0.90~1.05に調整するのが特に好ましい。
【0031】
<その他の工程>
一次加熱工程と二次加熱工程との間に、一次加熱麦の温度を低下させる冷却工程、一次加熱麦を搬送する搬送工程、一次加熱麦を攪拌する撹拌工程、及び一次加熱麦をさらに焙煎する追加焙煎工程のうちの何れか又は二つ以上の工程を挿入することができる。
【0032】
(冷却工程)
加熱麦の香味調整のために冷却することができる。
この際、冷却方法を特に限定するものではない。例えば放冷、送風冷却、水冷却などを例示することができる。また、二次加熱を妨げない観点から、冷却の程度は、一次加熱麦の中心部の温度が下がらない程度が好ましく、具体的には、一次加熱麦の表面温度の変化は20℃以上、100℃以下、中でも30℃以上、80℃以下が好ましい。更に一次加熱麦の中心部の温度変化は30℃以下、中でも10℃以下が好ましい。
【0033】
(搬送工程)
一次加熱工程を経た一次加熱麦は、任意の手段で搬送した後、二次加熱工程に供することもできる。この際、一次加熱麦の冷却も同時に行うことができる。
搬送手段は特に限定するものではない。例えば、車両、ベルトコンベヤ、その他の搬送手段を挙げることができる。
【0034】
(攪拌工程)
一次加熱工程を経た一次加熱麦は、任意の手段で攪拌した後、二次加熱工程に供することもできる。攪拌することにより焙煎度合いや香味、膨化率といった麦の品質を安定することができる。また、上記の一次加熱麦の冷却も同時に行うことができる。攪拌手段は特に限定するものではない。
【0035】
(追加焙煎工程)
一次加熱麦は、必要に応じて、さらに焙煎することができる。この焙煎は、公知の焙煎方法、例えば熱風焙煎、砂炒焙煎、遠赤外線焙煎、開放釜焙煎、回転ドラム式焙煎および媒体焙煎のうちのいずれかの方法又はこれら2種類以上の方法を組合せて実施することができる。
【0036】
<抽出工程>
抽出工程は、加熱処理麦を水性媒体で抽出してフェルラ酸が0.00030~0.17mg/100gに、且つカフェ酸が0.00050~0.30mg/100gになる抽出液を得る工程である。
抽出液のフェルラ酸及びカフェ酸の含有量が上記範囲であることにより、甘味と苦味の強度が調整され、嗜好性飲料として最適な麦茶の味わいを得ることができる。
このような観点から、抽出液のフェルラ酸含有量は、0.0034~0.13mg/100gであることがより好ましく、0.033~0.10mg/100gであることがさらに好ましい。
また、抽出液のカフェ酸含有量は、0.00050~0.30mg/100gであることが好ましく、0.0050~0.20mg/100gであることがより好ましく、0.050~0.15mg/100gであることがさらに好ましい。
【0037】
抽出液は、カフェ酸含有量に対するフェルラ酸含有量の比率(フェルラ酸/カフェ酸)が0.0090~50.00であることが好ましい。
抽出液のカフェ酸含有量に対するフェルラ酸含有量の比率が上記範囲であることにより、飲用時の焙煎香が嗜好性の麦抽飲料として良好となる。
このような観点から、カフェ酸含有量に対するフェルラ酸含有量の比率は、0.050~28.00であることがより好ましく、0.20~18.00であることがさらに好ましい。
【0038】
抽出工程は、例えば、加熱処理麦を水やお湯などの水性媒体に所定時間浸漬させることにより行うことができ、抽出条件により、抽出液中のフェルラ酸及びカフェ酸の抽出量、フェルラ酸とカフェ酸の比率を調整することができる。水性媒体としては、水道水、天然水、海洋深層水などを用いることができる。
このような観点から、抽出工程は、例えば、3~50倍量で40~120℃の水性媒体に10~80分間浸漬させるのが好ましく、5~40倍量で60~110℃の水性媒体に15~70分間浸漬させるのがより好ましい。
なお、抽出液のフェルラ酸及びカフェ酸の含有量や比率は、測定したフェルラ酸含有量をカフェ酸含有量で除することで算出することができる。
【0039】
<冷却濾過工程>
上記のようにして得られた抽出液は、ただちに急冷し、その後ろ過するのが好ましい。但し、冷却濾過工程を省くことも可能である。
急冷することにより、濁り原因物質の沈殿乃至懸濁を一層促進させることができ、最終製品としての穀物茶飲料の懸濁及び沈殿の発生をより一層確実に防止できるばかりか、製造時間の短縮を図ることもできる。
急冷方法は、特に限定されない。冷却効率等を鑑みれば、例えばプレート式熱交換機などを用いて約5~30℃程度に急冷するのがよい。
上記ろ過の方法としては、遠心分離ろ過と形状選別ろ過とを組合せて行うのが好ましく、特に形状選別ろ過を行うことが効果的である。
【0040】
<調合工程>
調合工程は冷却濾過工程を経た液の濃度やpHなどの調整をして調合液を得る工程であり、場合によっては添加物の付与などをしてもよい。
【0041】
<濃縮工程>
濃縮工程は調合液を濃縮して麦抽出液含有濃縮液を得る工程である。
濃縮する調合液は、抽出工程~冷却濾過工程で得られた抽出液を主成分とする液体であり、例えば、当該抽出液のみからなる液体、或いは当該抽出液を希釈した液体、或いは抽出液同士を混合した液体、或いはこれら前記何れかの液体に添加物を加えた液体などを挙げることができる。
なお、「主成分」とは、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含する。この際、当該主成分の含有割合を特定するものではないが、95質量%以上が好ましく、98質量%以上がより好ましく、99質量%以上がさらに好ましい。
添加物としては、例えば、乳化剤や酸化防止剤等を挙げることができる。
【0042】
抽出液の濃縮は、従来公知の方法で行うことができ、例えば、減圧して濃縮することや蒸発濃縮機などを用いて濃縮することができる。
【0043】
<麦抽出液含有濃縮液>
麦抽出液含有濃縮液は、フェルラ酸含有量が0.0012~0.68mg/100gであり、且つカフェ酸含有量が0.0020~1.20mg/100gであることを特徴とするものである。
甘味の指標成分であるフェラル酸及び苦味の指標成分であるカフェ酸の濃度を上記範囲に調整することにより、従来の止渇性麦茶飲料よりも甘味や苦味を強く感じることができ、濃度感の高い麦茶飲料になる麦抽出液含有濃縮液にすることができる。
このような観点から、フェルラ酸含有量は0.014~0.52mg/100gがより好ましく、0.072~0.46mg/100gがさらに好ましく、0.13~0.40mg/100gがことさら好ましい。また、カフェ酸含有量は0.020~0.80mg/100gがより好ましく、0.10~0.70mg/100gがさらに好ましく、0.20~0.60mg/100gがことさら好ましい。
【0044】
麦抽出液含有濃縮液は、カフェ酸含有量に対するフェルラ酸含有量の比率(フェルラ酸/カフェ酸)が0.0080~45.00であることが好ましい。
フェルラ酸とカフェ酸の比率をこのような範囲にすることにより、甘味と苦味のバランスがほどよくなり、適度な甘味が感ぜられる麦茶飲料になる麦抽出液含有濃縮液にすることができる。
このような観点から、カフェ酸含有量に対するフェルラ酸含有量の比率(フェルラ酸/カフェ酸)は0.040~25.00がより好ましく、0.10~20.00がさらに好ましく、0.15~15.00がことさら好ましい。
【0045】
麦抽出液含有濃縮液は、可溶性固形分濃度が3.1~30.0%であるのが好ましく、4~20%がより好ましく、5~10%がさらに好ましい。
【0046】
麦抽出液含有濃縮液は、水性媒体で希釈するのが好ましく、特に限定するものではないが、水道水、天然水、海洋深層水などで希釈するのが特に好ましい。
5~90℃の水性媒体で2~150倍、特に5~140倍、さらに8~130倍に希釈して麦茶飲料になるようにするのが好ましい。
【0047】
<充填工程>
充填工程は、濃縮液を容器に充填して容器詰麦抽出液含有濃縮液を得る工程である。
容器としては、スチール缶やアルミニウム缶などの缶の他、いわゆるPETボトルなどのプラスチック容器、瓶、テトラパック(登録商標)などの紙容器を挙げることができる。容器を缶にする場合は、180ml~250mlサイズにするのが持ち運びの観点から好ましい。
【0048】
濃縮液は、容器に充填する前に殺菌しておくことが好ましく、例えば、食品衛生法に定められた殺菌条件の下で、従来から行われている通常の方法を挙げることができる。プラスチック容器飲料(例えば、PETボトル飲料)であれば、高温で抽出液を殺菌し、そのままの温度で充填して冷却するホットパック充填、殺菌された容器に殺菌された抽出液を無菌環境下で常温充填するアセプティック充填、その他の充填方法を挙げることができる。より具体的には、プラスチック容器飲料の場合には、UHT殺菌(抽出液を120~150℃で1秒~数十秒保持する。)を行うようにすればよい。
濃縮液を容器に充填する際には窒素も充填するのが好ましい。
【0049】
本明細書において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含するものとする。
【実施例0050】
以下、本発明の実施例を説明する。但し、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
【0051】
<試験1>
以下の実施例1~20及び比較例1~8を作製して下記の試験を行った。
【0052】
<実施例1>
フェルラ酸およびカフェ酸をそれぞれ20.00mg/100mg、0.40mg/100mg含有する原料麦に対して15倍量の加熱体(カルシウム粒、粒径1mm)をフライパン(直径26cm)に投入し、フライパンを振って混ぜながら、加熱体全体が均一に280℃になるまで加熱した。280℃に到達したのを確認した後、加熱体の上から原料麦(品種:レガシー、六条大麦)20gを投入し、素早くフライパンを大きく振って麦全体が加熱体に包まれるように、30秒間加熱した。加熱後、加熱体と麦原料とを分離することで一次加熱麦を得た(一次加熱工程)。この際、麦の品温は260℃まで達した。なお、一次加熱工程における麦の品温は、放射温度計を使用して測定した。
【0053】
次に、得られた一次加熱麦100gを、30秒間常温下に静置した後(品温200℃)、バッチ式ロースター焙煎機(東京産機社製TG-5、5kg)に投入し、ロースター内の回転ドラムを回転させながら麦の品温が240℃になるようにバーナー本数を調整し、840秒間加熱することで加熱処理麦を得た(二次加熱工程)。その後、得られた加熱処理麦は攪拌を行いながら、下方から風による冷却を行った(品温20℃)。なお、冷却に要する時間は300秒であった。また、二次加熱工程における麦の品温は、接触式の温度計を用いて測定した。
【0054】
加熱処理麦を、麦重量の20倍量の水に浸漬させて、98℃、50分間抽出を行い、この液体を80メッシュのフィルターで濾過した後、15℃以下まで冷却し、抽出液を得た。その抽出液を遠心分離器(機械名:WestFalia Separator製 OSD2)に、10000rpm・8L/mの流量で通し、濾過液を作成した。
得られた濾過液にビタミンCを300ppm添加した後、重曹にてpHを6.1に調整し、調合液を作成した。
作成した調合液を、エバポレーター(機械名:YFLC-AI-700)にて、50℃加温化で濃縮を行い、Brix8.0%の濃縮液を作成した。
【0055】
<実施例2>
実施例1における二次加熱工程において、一次加熱麦の量を200gにし、麦の品温を200℃に変更した以外は、実施例1と同様に容器詰麦抽出液含有濃縮液を作成した。
【0056】
<実施例3>
実施例1における一次加熱工程の加熱体を原料麦に対して25倍量にし、加熱体の到達温度を320℃(麦の品温:300℃)に変更した以外は、実施例1と同様に容器詰麦抽出液含有濃縮液を作成した。
【0057】
<実施例4>
実施例1における一次加熱工程の加熱体を原料麦に対して25倍量にし、加熱体の到達温度を320℃(麦の品温300℃)に変更し、二次加熱工程における一次加熱麦の量を200gにし、釜内温度を200℃に変更した以外は、実施例1と同様に容器詰麦抽出液含有濃縮液を作成した。
【0058】
<実施例5>
実施例2における一次加熱工程の加熱体を原料麦に対して22倍量にし、加熱体の到達温度を310℃(麦の品温:290℃)に変更した以外は、実施例2と同様に容器詰麦抽出液含有濃縮液を作成した。
【0059】
<実施例6>
実施例4における二次加熱工程において、一次加熱麦の量を130gにし、麦の品温を230℃に変更した以外は、実施例4と同様に容器詰麦抽出液含有濃縮液を作成した。
【0060】
<実施例7>
実施例1における一次加熱工程の加熱体を原料麦に対して22倍量にし、加熱体の到達温度を310℃(麦の品温:290℃)に変更し、二次加熱工程における一次加熱麦の量を130gにし、麦の品温を230℃に変更した以外は、実施例1と同様に容器詰麦抽出液含有濃縮液を作成した。
【0061】
<実施例8>
実施例7における二次加熱工程を一次加熱工程の条件に置き換え、その際の、加熱体を一次加熱麦に対して15倍量にし、加熱体の到達温度および加熱時間をそれぞれ200℃(麦の品温:180℃)、120秒間に変更した以外は、実施例7と同様に容器詰麦抽出液含有濃縮液を作成した。
【0062】
<実施例9>
実施例7における一次加熱工程を二次加熱工程の条件に置き換え、その際の、一次加熱麦を原料麦にし、麦の品温および加熱時間をそれぞれ280℃、120秒間に変更した以外は、実施例7と同様に容器詰麦抽出液含有濃縮液を作成した。
【0063】
<実施例10>
実施例1における一次加熱工程を二次加熱工程の条件に置き換え、その際の、一次加熱麦を原料麦にし、麦の品温および加熱時間をそれぞれ280℃、120秒間に変更し、二次加熱工程を一次加熱工程の条件に置き換え、その際の、加熱体を一次加熱麦に対して20倍量にし、加熱体の到達温度および加熱時間をそれぞれ200℃(麦の品温:180℃)、120秒間を240℃に変更した以外は、実施例1と同様に容器詰麦抽出液含有濃縮液を作成した。
【0064】
<実施例11>
実施例1における一次加熱工程の加熱体を原料麦に対して20倍量にし、加熱体の到達温度を300℃(麦の品温:280℃)に変更し、二次加熱工程における一次加熱麦の量を150gにし、麦の品温を220℃に変更した以外は、実施例1と同様に容器詰麦抽出液含有濃縮液を作成した。
【0065】
<実施例12>
実施例11における二次加熱工程を一次加熱工程の条件に置き換え、その際の、加熱体を一次加熱麦に対して25倍量にし、加熱体の到達温度および加熱時間をそれぞれ220℃(麦の品温:200℃)、150秒間に変更した以外は、実施例11と同様に容器詰麦抽出液含有濃縮液を作成した。
【0066】
<実施例13>
実施例11における一次加熱工程を二次加熱工程の条件に置き換え、その際の、一次加熱麦100gを原料麦80gにし、麦の品温および加熱時間をそれぞれ300℃、150秒間に変更した以外は、実施例11と同様に容器詰麦抽出液含有濃縮液を作成した。
【0067】
<実施例14>
実施例1における一次加熱工程を二次加熱工程の条件に置き換え、その際の、一次加熱麦100gを原料麦80gにし、麦の品温および加熱時間をそれぞれ300℃、150秒間に変更し、二次加熱工程を一次加熱工程の条件に置き換え、その際の、加熱体を一次加熱麦に対して25倍量にし、加熱体の到達温度および加熱時間をそれぞれ220℃(麦の品温:200℃)、150秒間に変更した以外は、実施例1と同様に容器詰麦抽出液含有濃縮液を作成した。
【0068】
<実施例15>
実施例1における二次加熱工程において、一次加熱麦の量を200gにし、釜内温度を210℃に変更し、抽出における温度を110℃に変更した以外は、実施例1と同様に容器詰麦抽出液含有濃縮液を作成した。
【0069】
<実施例16>
実施例1における一次加熱工程の加熱体を原料麦に対して25倍量にし、加熱体の到達温度を310℃(麦の品温:290℃)に変更し、抽出における時間を70分に変更した以外は、実施例1と同様に容器詰麦抽出液含有濃縮液を作成した。
【0070】
<実施例17>
実施例11において、フェルラ酸およびカフェ酸をそれぞれ0.080mg/100mg、0.40mg/100mg含有する原料麦を使用し、一次加熱工程の加熱体を原料麦に対して22倍量にし、加熱体の到達温度を310℃(麦の品温:290℃)に変更した以外は、実施例11と同様に容器詰麦抽出液含有濃縮液を作製した。
【0071】
<実施例18>
実施例11において、フェルラ酸およびカフェ酸をそれぞれ9.00mg/100mg、0.39mg/100mg含有する原料麦を使用し、一次加熱工程の加熱体を原料麦に対して22倍量に変更した以外は、実施例11と同様に容器詰麦抽出液含有濃縮液を作製した。
【0072】
<実施例19>
実施例11において、フェルラ酸およびカフェ酸をそれぞれ61.00mg/100mg、0.40mg/100mg含有する原料麦を使用し、一次加熱工程の加熱体を原料麦に対して18倍量に変更した以外は、実施例11と同様に容器詰麦抽出液含有濃縮液を作製した。
【0073】
<実施例20>
実施例11において、フェルラ酸およびカフェ酸をそれぞれ82.00mg/100mg、0.42mg/100mg含有する原料麦を使用し、一次加熱工程の加熱体を原料麦に対して18倍量にし、加熱体の到達温度を290℃(麦の品温:270℃)に変更した以外は、実施例11と同様に容器詰麦抽出液含有濃縮液を作製した。
【0074】
<比較例1>
実施例1における一次加熱工程の加熱体を原料麦に対して10倍量にし、加熱体の到達温度を260℃(麦の品温:240℃)に変更した以外は、実施例1と同様に容器詰麦抽出液含有濃縮液を作成した。
【0075】
<比較例2>
実施例1における二次加熱工程において、一次加熱麦の量を80gにし、麦の品温を260℃に変更した以外は、実施例1と同様に容器詰麦抽出液含有濃縮液を作成した。
【0076】
<比較例3>
比較例1における二次加熱工程において、一次加熱麦の量を200gにし、麦の品温を200℃に変更した以外は、比較例1と同様に容器詰麦抽出液含有濃縮液を作成した。
【0077】
<比較例4>
実施例1における二次加熱工程において、一次加熱麦の量を220gにし、麦の品温を180℃に変更した以外は、実施例1と同様に容器詰麦抽出液含有濃縮液を作成した。
【0078】
<比較例5>
実施例1における一次加熱工程の加熱体を原料麦に対して30倍量にし、加熱体の到達温度を340℃(麦の品温:320℃)に変更し、二次加熱工程における一次加熱麦の量を200gにし、麦の品温を200℃に変更した以外は、実施例1と同様に容器詰麦抽出液含有濃縮液を作成した。
【0079】
<比較例6>
実施例1における一次加熱工程の加熱体を原料麦に対して25倍量にし、加熱体の到達温度を320℃(麦の品温:300℃)に変更し、二次加熱工程における一次加熱麦の量を220gにし、麦の品温を180℃に変更した以外は、実施例1と同様に容器詰麦抽出液含有濃縮液を作成した。
【0080】
<比較例7>
比較例2における一次加熱工程の加熱体を原料麦に対して25倍量にし、加熱体の到達温度を320℃(麦の品温:300℃)に変更した以外は、比較例2と同様に容器詰麦抽出液含有濃縮液を作成した。
【0081】
<比較例8>
実施例1における一次加熱工程の加熱体を原料麦に対して30倍量にし、加熱体の到達温度を340℃(麦の品温:320℃)に変更した以外は、実施例1と同様に容器詰麦抽出液含有濃縮液を作成した。
【0082】
<フェルラ酸・カフェ酸含有量の測定>
実施例1~20及び比較例1~8の麦抽出液含有濃縮液を作製するにあたり、原料麦、一次加熱麦(一次加熱工程後の原料麦)、加熱処理麦(二次加熱工程後の原料麦)、抽出液、濃縮液のフェルラ酸・カフェ酸含有量の測定を行った。その結果を下記表1に示す。それぞれの含有量は下記表1~3に示す。
また、それぞれの測定方法は以下のとおりである。
【0083】
(原料麦のフェルラ酸・カフェ酸含有量)
ミキサーミル(Retsch社、MM400)で粉砕した原料麦を100mg精秤し、0.5N水酸化ナトリウムを5ml添加し、60℃で90分間加水分解させた。6N塩酸で酸性にし、3000rpm、10分間遠心分離後、沈殿を除去し、上清に2mlの1-ブタノールを添加し抽出(2回)後、ACQUITY UPLC システム(Waters社製)を用いて高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を下記分析条件で操作し、測定した。
HPLCの測定条件:
カラム:Waters社製ACQUITY UPLC BEH C18 Column、130A、1.7μm、2.1mm X 100mm
流速:0.61ml/min
温度:40℃
注入量:5μm
移動相A:A:水/リン酸=100:0.1
移動相B:アセト二トリル
検出波長:325nm
【0084】
(一次加熱麦のフェルラ酸・カフェ酸含有量)
ミキサーミル(Retsch社、MM400)で粉砕した一次加熱麦を100mg精秤し、0.5N水酸化ナトリウムを5ml添加し、60℃で90分間加水分解させた。6N塩酸で酸性にし、3000rpm、10分間遠心分離後、沈殿を除去し、上清に2mlの1-ブタノールを添加し抽出(2回)後、ACQUITY UPLC システム(Waters社製)を用いて高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を下記分析条件で操作し、測定した。
HPLCの測定条件:
カラム:Waters社製ACQUITY UPLC BEH C18 Column、130A、1.7μm、2.1mm X 100mm
流速:0.61ml/min
温度:40℃
注入量:5μm
移動相A:A:水/リン酸=100:0.1
移動相B:アセト二トリル
検出波長:325nm
【0085】
(加熱処理麦のフェルラ酸・カフェ酸含有量)
ミキサーミル(Retsch社、MM400)で粉砕した加熱処理麦を100mg精秤し、0.5N水酸化ナトリウムを5ml添加し、60℃で90分間加水分解させた。6N塩酸で酸性にし、3000rpm、10分間遠心分離後、沈殿を除去し、上清に2mlの1-ブタノールを添加し抽出(2回)後、ACQUITY UPLC システム(Waters社製)を用いて高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を下記分析条件で操作し、測定した。
HPLCの測定条件:
カラム:Waters社製ACQUITY UPLC BEH C18 Column、130A、1.7μm、2.1mm X 100mm
流速:0.61ml/min
温度:40℃
注入量:5μm
移動相A:A:水/リン酸=100:0.1
移動相B:アセト二トリル
検出波長:325nm
【0086】
(抽出液のフェルラ酸・カフェ酸含有量)
抽出液をACQUITY UPLC システム(Waters社製)を用いて高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を下記分析条件で操作し、測定した。
HPLCの測定条件:
カラム:Waters社製ACQUITY UPLC BEH C18 Column、130A、1.7μm、2.1mm X 100mm
流速:0.61ml/min
温度:40℃
注入量:5μm
移動相A:A:水/リン酸=100:0.1
移動相B:アセト二トリル
検出波長:325nm
【0087】
(濃縮液のフェルラ酸・カフェ酸含有量)
濃縮液をACQUITY UPLC システム(Waters社製)を用いて高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を下記分析条件で操作し、測定した。
HPLCの測定条件:
カラム:Waters社製ACQUITY UPLC BEH C18 Column、130A、1.7μm、2.1mm X 100mm
流速:0.61ml/min
温度:40℃
注入量:5μm
移動相A:A:水/リン酸=100:0.1
移動相B:アセト二トリル
検出波長:325nm
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
<可溶性固形分(Brix)の測定>
実施例1~20及び比較例1~8の容器詰麦抽出液含有濃縮液の可溶性固形分(Bx.)を、可溶性固形分測定器(RX-DD7α-Tea:アタゴ社製)で測定した。その結果を上記表1~3に示す。
【0092】
<官能評価試験>
作製した麦抽出液含有濃縮液をBx.0.5になるように、純粋で希釈し、官能サンプルとした。なお、麦茶の開発・製造に従事する10人のパネラーを選出し、コントロール1,2,3,4と対比しながら、以下の評価方法に基づいて実施し、合議の結果、最も多かった評価を採用することとし、総合評価についても合議による結果を採用し、上記表1~3に掲載した。
【0093】
コントロール1:大麦粉(静岡やまき屋 やまき屋のこうせん)5gを沸騰したお湯200gに溶解した。
コントロール2:大麦粉(静岡やまき屋 やまき屋のこうせん)5gとマルトース1gを沸騰したお湯75gに溶解した。
コントロール3:オルゾォ(トレモリ社 ORZO・MONDO)1gに沸騰したお湯200gを加え、1分間静置し、抽出液を得た。
コントロール4:オルゾォ(トレモリ社 ORZO・MONDO)25gに沸騰したお湯200gを加え、1分間静置し、抽出液を得た。
【0094】
<香味評価>
官能評価方法として、指定の温度のサンプル10mlを1秒間、口に含み、その後飲み下し、舌に残る味わいを評価した。
=舌に残る甘さ=
日本家庭用レギュラーコーヒー工業会の評価用語を元に評価を行った。
ここで言う甘味は、味の「甘味」、「後味の甘味」、「コク」を指す。
(5℃又は60℃で飲用したとき)
4:なめらかで舌触りの良い甘味を感じる。
3:なめらかだがやや口に残る甘味がある。(コントロール2より弱い)もしくは、甘味がやや弱い(コントロール1より強い)
2:ややべとつく甘味を感じる。(コントロール2よりやや弱い)もしくは、甘味をほのかに感じる。(コントロール1よりやや強い)
1:べたつきのある甘味を感じる。(コントロール2と同等)もしくは、甘味が全く感じられない。(コントロール1と同等)
【0095】
=後味の苦味=
日本家庭用レギュラーコーヒー工業会の評価用語を元に評価を行った。
ここで言う苦味は、味の「苦味」、「すっきりした苦味」、「シャープな苦味」、「苦味が後に残る」、「刺すような苦味」をさす。
(5℃又は60℃で飲用したとき)
4:シャープでまろやかな苦味が感じられる。
3:シャープな苦味が感じられ、ほのかに後に残る。(コントロール4よりも弱い)もしくは、弱いが苦味が感じられる。(コントロール3よりも強い)
2:刺すような苦味が感じられる。(コントロール4よりもやや弱い)もしくは、ほのかに苦味が感じられる。(コントロール3よりもやや強い)
1:刺すような苦味が強く感じられ、後に残る。(コントロール4と同様)もしくは、苦味が全く感じられない。(コントロール3と同様)
【0096】
=総合評価=
◎(very good):合計点が14点以上である。口の中に残る甘さと苦さによるキレのバランスが非常に良く、嗜好飲料として飲用するのに非常に良好である。
〇(good):合計点が10~13点である。口の中に残る甘さと苦さによるキレのバランスが良く、嗜好飲料として飲用するのに良好である。
△(usual):合計点が8~9点である。口の中に残る甘さと苦さによるキレのバランスを感じ、嗜好飲料として飲用するのにやや良好である。
×(poor):合計点が7点以下である。口の中に残る甘さと苦さによるキレのバランスが悪く、嗜好飲料として飲用するのに不向きである。
【0097】
<試験2>
次に、上記官能サンプルにおいて、可溶性固形分が与える影響を検討するため、下記の方法で実施例を作製し、官能評価を実施した。
なお、官能評価は以下の評価方法に基づいて実施し、それ以外は試験1と同様に行った。その結果を下記表4に示す。
【0098】
<実施例21>
実施例11における濃縮工程において、Bx.を3.20に変更した以外は、実施例11と同様に容器詰麦抽出液含有濃縮液を作製した。
【0099】
<実施例22>
実施例11における濃縮工程において、Bx.を4.80に変更した以外は、実施例11と同様に容器詰麦抽出液含有濃縮液を作製した。
【0100】
<実施例23>
実施例11における濃縮工程において、Bx.を16.70に変更した以外は、実施例11と同様に容器詰麦抽出液含有濃縮液を作製した。
【0101】
<実施例24>
実施例11における濃縮工程において、Bx.を28.60に変更した以外は、実施例11と同様に容器詰麦抽出液含有濃縮液を作製した。
【0102】
=官能評価=
◎(very good):嗜好性麦茶飲料として濃度感が強く、非常に良好
〇(good):嗜好性麦茶飲料として濃度感を感じ、良好
△(usual):嗜好性麦茶飲料として濃度感が少し物足りないが許容範囲である
【0103】
【表4】
【0104】
<試験3>
上記官能サンプルにおいて、カフェ酸含有量に対するフェルラ酸含有量の比(フェルラ酸/カフェ酸)が与える影響を検討するため、実施例4、8、9及び11のサンプルの他、下記の方法で実施例25を作成し、以下の官能評価を実施した。
なお、官能評価は以下の評価方法に基づいて実施し、それ以外は試験1と同様に行った。その結果を下記表5に示す。
実施例4、8、9、11及び25のサンプルを暗所37℃で2週間保管した後、常温に戻し、官能評価を行った。官能評価は口に含んだときの焙煎香を下記の評価項目で評価した。なお、コントロールには各実施例に対応するサンプルを冷暗所5℃で保管したサンプルを採用した。
【0105】
<実施例25>
実施例7における一次加熱工程を二次加熱工程の条件に置き換え、その際の、一次加熱麦を原料麦にし、麦の品温および加熱時間をそれぞれ180℃、150秒間に変更した以外は、実施例7と同様に容器詰麦抽出液含有飲料を作製した。
【0106】
=官能評価=
◎(very good):コントロールと同等の焙煎香が感じられる。
〇(good):コントロールよりも焙煎香を強く感じる。もしくは、コントロールよりやや弱いが焙煎香を感じる。
△(usual):コントロールよりも焦げ臭を感じる。もしくは、コントロールより焙煎の弱い麦の香りを感じる。
【0107】
【表5】
【0108】
<試験4>
上記官能サンプルにおいて、原料麦の一次加熱工程におけるフェルラ酸含有量に対する二次加熱工程におけるフェルラ酸含有量の比率(一次加熱フェルラ酸/二次加熱フェルラ酸)が与える影響を検討するため、実施例11、15、26、27及び28をサンプルとして以下の官能評価を実施した。実施例26、27、28は以下のように作製した。
なお、官能評価は以下の評価方法に基づいて実施し、それ以外は試験1と同様に行った。その結果を下記表6に示す。L値は、サンプル麦20gをハンドミルで20秒間粉砕し、粉砕した麦を全量セルに入れ均等に均す。均したのち、日本電色工業株式会社製のSE7700を用い、反射色を3回測定し、平均を今回の値とした。実施例11、15、26、27及び28のサンプルを暗所37℃で2週間保管した後、常温に戻し、官能評価を行った。官能評価は口に含んだときの甘味を下記の評価項目で評価した。なお、コントロールには各実施例に対応するサンプルを冷暗所5℃で保管したサンプルを採用した。
【0109】
<実施例26>
実施例1における一次加熱麦の量を50gにし、麦の品温を300℃に変更した以外は、実施例1と同様に容器詰麦抽出液含有濃縮液を作製した。
【0110】
<実施例27>
実施例1における一次加熱工程の加熱体を原料麦に対して17倍量にし、加熱体の到達温度を290℃(麦の品温270℃)に変更し、2次加熱工程において、1次加熱麦の量を60gにし、麦の品温を300℃に変更した以外は、実施例1と同様に容器詰麦抽出液含有濃縮液を作製した。
【0111】
<実施例28>
実施例4における加熱体の到達温度を310℃(麦:290℃)に変更し、2次加工工程における麦の品温を210℃に変更した以外は、実施例4と同様に容器詰麦抽出液含有濃縮液を作製した。
【0112】
【表6】
【0113】
=総合評価=
◎(very good):コントロールと同等の甘味を感じ、非常に良好
〇(good):コントロールと比較し、わずかに劣化した甘味を感じるが、良好
△(usual):コントロールと比較し、やや劣化した甘味を感じる
【0114】
(考察)
原料麦を加熱することによって、フェルラ酸を0.000010~0.0080mg/100gに調整し、且つカフェ酸を0.000010~0.0040mg/100gに調整した加熱処理麦を得(加熱工程)、該加熱処理麦を水性溶媒で抽出することによって、フェルラ酸を0.00030~0.17mg/100gに調整し、且つカフェ酸を0.00050~0.30mg/100gに調整した抽出液を作成することで、希釈したときに甘味と苦みのバランスの良い嗜好に適した麦抽出液含有飲料になる麦抽出液含有濃縮液を製造することが見出せた。