(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096104
(43)【公開日】2022-06-29
(54)【発明の名称】ロボットのツール先端位置の自動設定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20220622BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
G01B11/00 H
B25J13/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020209025
(22)【出願日】2020-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】濱田 隆一
【テーマコード(参考)】
2F065
3C707
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065BB05
2F065BB15
2F065DD06
2F065FF05
2F065JJ03
2F065JJ05
2F065JJ26
2F065MM02
2F065PP25
2F065QQ31
3C707AS14
3C707BS10
3C707CY40
3C707KS17
3C707KS19
3C707KT03
3C707LT17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡便でかつ短時間で行うことができるロボットのツール先端位置の自動設定方法の提供。
【解決手段】ツールが取り付けられるロボット先端フランジに定義されたフランジ座標のX軸、Y軸、Z軸それぞれの軸の回りに回転させて、ツールの先端を3次元視覚センサのステレオカメラで少なくとも各3回、計9回撮像する第一の手順S2と、第一の手順で撮像したXYZ各軸回り毎の各3画像、計9画像から3次元視覚センサによりカメラ座標での各3つ計9つのマーカでマークされたツール先端位置1の座標を計測する第2の手順S3と、第2の手順でカメラ座標で計測されたXYZの各軸回り毎の3つの計測座標で定義される平面上の3つの計測座標を通る円の半径をXYZ各軸毎にそれぞれ計算する第3の手順S4と、第3の手順で得られた3つの半径からフランジ座標でのツール先端位置のXYZ座標を計算する第4の手順S5からなる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元視覚センサを用いたロボットのツール先端位置の自動設定方法であって、
前記ツールが取り付けられるロボット先端フランジに定義されたフランジ座標のX軸、Y軸、Z軸それぞれの軸の回りに回転させて、前記ツールの先端を3次元視覚センサの撮像カメラで少なくとも各3回、計9回撮像する第一の手順と、
前記第一の手順で撮像した、XYZ各軸回り毎の各3画像、計9画像から、3次元視覚センサにより、カメラ座標での、各3つ、計9つのマーカでマークされたツール先端位置座標を計測する第2の手順と、
前記第2の手順で、カメラ座標で計測されたXYZの各軸回り毎の3つの計測座標で定義される平面上の、3つの計測座標を通る円の半径を、XYZ各軸毎にそれぞれ計算する第3の手順と、
前記第3の手順で得られた3つの半径から、フランジ座標でのツール先端位置のXYZ座標を計算する第4の手順からなることを特徴とする、ロボットのツール先端位置の自動設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットのツール先端位置の自動設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットは通常、ロボット先端フランジから、ワークの把持や溶接、塗装等を行うツールの作業点に至るツール先端位置座標を設定する、ツール先端座標位置のパラメータを有している。
このパラメータを入力する為には、ツールの寸法を正確に知ることが必要であるが、例えばツール先端位置角度調整のために追加工を行った部材をツールとロボット先端フランジとの間に挟んだ場合など、図面によりパラメータを入力することが出来ない。
そこで、同一位置に複数回それぞれ違う姿勢でツール先端位置を教示して、パラメータを計算することは可能であるが、同一位置への教示の手法として、尖った針状の先端を用意し、針の先端とツール先端を複数回合わせる必要があり、正確な教示作業が求められ、操作者個人の操作技能により、パラメータの精度に差が生じる。
【0003】
これに対応する為、特許文献1では、ツール先端部分を視覚センサで撮像し、ツール基準点を通る回転軸線回りにツールを回転し、ツール基準点の移動がある場合に、ツール基準点の位置を修正し、ツール基準点の移動量が略ゼロになるまで、自動で繰返し実行して行う方法を提案している。
【0004】
この方法は、繰り返しながら、徐々に正しいツール先端位置に漸近していく為、調整に時間がかかる場合があり、非熟練者でも簡便にかつ短時間に正しいツール先端位置を設定する方法を与えるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、非熟練者でも簡便かつ短時間にツール先端位置パラメータの設定が可能な方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、3次元視覚センサを用いたロボットのツール先端位置の自動設定方法であって、前記ツールが取り付けられるロボット先端フランジに定義されたフランジ座標のX軸、Y軸、Z軸それぞれの軸の回りに回転させて、前記ツールの先端を3次元視覚センサの撮像カメラで少なくとも各3回、計9回撮像する第一の手順と、前記第一の手順で撮像した、XYZ各軸回り毎の各3画像、計9画像から、3次元視覚センサにより、カメラ座標での、各3つ、計9つのマーカでマークされたツール先端位置座標を計測する第2の手順と、前記第2の手順で、カメラ座標で計測されたXYZの各軸回り毎の3つの計測座標で定義される平面上の、3つの計測座標を通る円の半径を、XYZ各軸毎にそれぞれ計算する第3の手順と、前記第3の手順で得られた3つの半径から、フランジ座標でのツール先端位置のXYZ座標を計算する第4の手順からなることを特徴とする。
ここで、ツール先端位置とは、ロボットがワークを把持したり、溶接や塗装等の各種作業を行う際のツールの作業点をいう。
フランジ座標とは、ツールを取り付けるフランジ部の位置座標をいい、カメラ座標は3次元視覚センサでツール先端の位置を計測するための座標をいう。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、非熟練者でも簡便かつ短時間にツール先端位置パラメータの設定が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る3次元視覚センサを用いたツール先端位置の自動設定方法の実装例である。
【
図3】本発明に係る3次元視覚センサを用いたツール先端位置の自動設定方法の実施手順を説明する処理フローである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明するが、本発明はこれに限定されない。
図1は、3次元視覚センサを用いたツール先端位置の自動設定方法の実装例である。
産業用ロボット2のツール先端位置1には、視覚センサのカメラで認識可能なマークを付ける。
3次元視覚センサ4には、3次元認識の為のステレオカメラ3が接続され、ステレオカメラ3で、ツール先端位置1のマークを撮像し、3次元視覚センサ4は、カメラ座標でのツール先端の3次元位置をロボット制御装置5に入力する。
【0011】
図2は、カメラ座標とフランジ座標の説明図である。
0
cはカメラ座標の原点で、X
c、Y
c、Z
cは、カメラ座標のX軸、Y軸、Z軸である。
0
fはフランジ座標の原点で、X
f、Y
f、Z
fは、フランジ座標のX軸、Y軸、Z軸である。
3次元視覚センサは、カメラ座標で計測を行ない、ロボットの動作は、フランジ座標で行うことができる。
フランジ座標のX軸回りに回転させ、3枚の画像を撮像する。
その各画像について、マーカでマークされたツール先端位置を、カメラ座標で計測する。
図2では、カメラ座標での、この3つの位置を、黒い点で重ねて表示している。
【0012】
図3は、3次元視覚センサを用いたツール先端位置の自動設定方法の実施手順を説明する処理フローである。
先ず、カメラ座標とフランジ座標との間のスケール調整を、次のように行う。
フランジ座標で距離Lだけ、ツール先端を平行移動する。
平行移動前の3次元視覚センサ4で計測した、カメラ座標でのツール先端座標を(X
1,Y
1,Z
1)、平行移動後の3次元視覚センサ4で計測した、カメラ座標でのツール先端座標を(X
2,Y
2,Z
2)とすると、カメラ座標とフランジ座標との間のスケール比Sは、
S=√{(X
2-X
1)
2+(Y
2-Y
1)
2+(Z
2-Z
1)
2}/L となる(S1)。
【0013】
次に、フランジ座標X,Y,Z軸、それぞれの軸回りに回転させ、3次元視覚センサ4のステレオカメラ3で、各軸回りに3回、3つの座標軸では、計9回撮像する(S2)。
得られた計9画像の各画像について、カメラ座標でのマーカでマークされた、計9個のツール先端座標を計測する(S3)。
図2では、フランジ座標のX軸回りの3点を、黒い点で表記している。
同様に、Y軸回りの3点、Z軸回りの3点が得られる。
【0014】
フランジ座標のX、Y、Z各座標軸回り毎の3つの計測座標は、円軌跡上にあり、円の中心はフランジ座標のX軸、Y軸、Z軸の軸線上にあることは、ツール先端をそれぞれの軸回りに回転させて得た画像であることから、容易に理解できる。
この円の半径を、フランジ座標のX、Y、Z各座標軸回り毎に、RX、RY、RZとする。円周上の3点の座標が分かれば、その円の中心座標と円の半径が計算できることは良く知られているので、計算方法の説明は省略する。
こうして、円の半径RX、RY、RZを計算する(S4)。
【0015】
3つの半径RX、RY、RZのそれぞれは、カメラ座標での計算値であり、フランジ座標でのツール先端位置座標を(Xf,Yf,Zf)とすると、スケール比Sでスケール調整して、
RX/S=√(Yf
2+Zf
2)、RY/S=√(Xf
2+Zf
2)、RZ/S=√(Xf
2+Yf
2)となり、この連立方程式を解くことにより、3つの円の半径RX、RY、RZから、ツール先端位置座標(Xf,Yf,Zf)を計算することができる(S5)。
【0016】
処理手順のS4にて、円の半径を計算することに代えて、円の中心座標を通り、3つの計測点が作る平面に垂直な軸線を、それぞれX軸、Y軸、Z軸として、その軸線の交点座標からフランジ座標の原点を求める方法も考えられ、この場合には、2つの軸線の計算のみで済むが、一方で、視覚センサの計測に誤差が有る場合には、上記3つの軸線は、フランジ座標の原点である1点で交差しないこととなる。
そこで、この誤差を平均化する目的から、円の半径から、フランジ座標でのツール先端座標を計算する方法を使用している。
【0017】
こうして、3次元視覚センサを用いてツール先端位置の自動設定を実施することにより、所望の精度に入るまで、不定回数繰返して実行すること無く、確定した回数である、各軸回りの2回の回転移動とその前後での、各軸回り計3回の3次元視覚センサの計測処理により、自動でツール先端位置の自動設定を実現することが可能となり、非熟練者でも簡便にかつ短時間に正しいツール先端位置を設定することが可能となる。
【符号の説明】
【0018】
1 ツール先端位置
2 産業用ロボット
3 ステレオカメラ
4 3次元視覚センサ
5 ロボット制御装置