(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096149
(43)【公開日】2022-06-29
(54)【発明の名称】後方視認装置
(51)【国際特許分類】
B60R 1/074 20060101AFI20220622BHJP
B60R 1/00 20220101ALI20220622BHJP
【FI】
B60R1/074
B60R1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020209086
(22)【出願日】2020-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000105925
【氏名又は名称】サカエ理研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】特許業務法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 親彦
【テーマコード(参考)】
3D053
【Fターム(参考)】
3D053FF04
3D053GG06
3D053GG12
3D053HH52
3D053HH55
3D053JJ32
3D053KK03
3D053MM30
(57)【要約】
【課題】配線の損傷を抑制できる後方視認装置を提供する。
【解決手段】複数の電器に接続された配線部50が設けられている。配線部50は、ウイング下カバー34に設けられた複数の導電部51と、ベース上カバー23に設けられた複数のターミナル55とを有する。ターミナル55は、スプリング58の弾性により導電部51に押し付けられることで、ウイング30の所定の回動範囲にわたって導電部51との電気的接続を維持する。これにより配線をベース20およびウイング30の通孔に通す必要がなく、配線が通孔の縁に接触することを回避しながらウイング30を回動させることができるため、配線の引掛り、磨耗、または断線等の懸念が無くなる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の側部に設けられるベース(20)と、
前記ベースに対して回動可能に設けられたウイング(30)と、
前記ウイングを回動させる格納ユニット(40)を含み、前記ウイングに取り付けられた複数の電器と、
前記複数の電器に接続された配線部(50)と、
を備え、
前記配線部は、前記ベースおよび前記ウイングの一方に設けられた複数の導電部(51)と、前記ベースおよび前記ウイングの他方に設けられ、弾性により前記導電部に押し付けられており、前記ウイングの所定の回動範囲にわたって前記導電部との電気的接続を維持する複数のターミナル(55)とを有する、後方視認装置。
【請求項2】
前記ベースおよび前記ウイングの一方は、導電性のあるメッキ層を有し、
前記メッキ層は、導電性のない部分である溝(52)により複数の領域に分割されて配線パターンを形成し、
前記導電部は、前記配線パターンの一部から構成されている、請求項1に記載の後方視認装置。
【請求項3】
前記複数の導電部は、前記格納ユニットの回動軸心(AX)を中心とした周方向において2箇所以上に分かれて配置されている、請求項1または2に記載の後方視認装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後方視認装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の側部に設けられるドアミラー等の後方視認装置が知られている。特許文献1に開示されたドアミラーは、ミラーを収容したハウジングがベースに対して回動可能になっており、格納ユニットにより走行位置と格納位置を切り替えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1では格納ユニットを含む電器に接続されたハーネスが格納ユニットのシャフトの孔を通じてベースに導かれる。しかし、例えばハウジングの薄型化のために格納ユニットも薄型化する必要がある場合、上記特許文献1に開示されたようなハーネスの配線方法を採用することはできない。
【0005】
これに対し、例えばハウジングとベースにそれぞれ通孔を設け、それらの通孔にハーネスを通すことが考えられる。しかしその場合、ハーネスと通孔の縁とが直接接触するため、ハウジングの回動時にハーネスが損傷する懸念がある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、配線の損傷を抑制できる後方視認装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の後方視認装置は、車両の側部に設けられるベースと、ベースに対して回動可能に設けられたウイングと、ウイングを回動させる格納ユニットを含み、ウイングに取り付けられた複数の電器と、複数の電器に接続された配線部とを備える。
【0008】
配線部は、ベースおよびウイングの一方に設けられた複数の導電部と、ベースおよびウイングの他方に設けられた複数のターミナルとを有する。ターミナルは、弾性により導電部に押し付けられており、ウイングの所定の回動範囲にわたって導電部との電気的接続を維持する。これにより配線をベースおよびウイングの通孔に通す必要がなく、配線が通孔の縁に接触することを回避しながらウイングを回動させることができるため、配線の引掛り、磨耗、または断線等の懸念が無くなる。また、後方視認装置の多機能化により配線本数が増加しても導電部を増やすことにより対応可能である。また、ベースにウイングを組み付けることで配線作業も完了するため、ベースとウイングの組付け後に配線作業を別途行う必要がなく、組付け工数が低減する。
【0009】
好ましくは、ベースおよびウイングの一方は、導電性のあるメッキ層を有する。このメッキ層は、導電性のない部分である溝により複数の領域に分割されて配線パターンを形成している。導電部は、その配線パターンの一部から構成されている。これにより、後方視認装置の多機能化により配線本数が増加しても導電部を比較的容易に増やすことができる。
【0010】
好ましくは、複数の導電部は、格納ユニットの回動軸心を中心とした周方向において2箇所以上に分かれて配置されている。これにより導電部の配置エリアが回動軸心を中心とした径方向の外側に大きくなるのを抑制し、装置全体を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態のドアミラー装置の外観を示す斜視図。
【
図2】
図1のドアミラー装置を矢印II方向から見た上面図。
【
図3】
図2のドアミラー装置を矢印III方向の車両後方から見た図。
【
図4】
図2のドアミラー装置のウイング上カバーおよび先端カバーを取り外した状態を示す図であって、ドアミラー装置の走行位置を示す図。
【
図5】
図2のドアミラー装置の回動軸心を通る断面図。
【
図6】
図4に対応する図であって、ドアミラー装置の格納位置を示す図。
【
図7】
図4のウイング下カバー、ベースおよび配線部を示す図。
【
図8】
図6のウイング下カバー、ベースおよび配線部を示す図。
【
図9】
図7のウイング下カバーを裏側すなわちベース側から見た図。
【
図11】
図7のXI-XI線断面図であって、導電部およびターミナルの断面を示す図。
【
図12】比較形態のドアミラー装置の要部を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。この実施形態の後方視認装置は、車両の側部であって左右の前席ドアの外側に設けられる一対のドアミラー装置であり、カメラの映像で後方を視認することができるカメラモニターシステム(以下、CMS)に用いられるものである。
【0013】
(一実施形態)
図1~
図4に示すように、ドアミラー装置10は、車両の側部に設けられるベース20と、ベース20に対して回動可能に設けられたウイング30と、格納ユニット40、カメラ41およびターンランプ42を含む複数の電器とを備える。以下、格納ユニット40、カメラ41およびターンランプ42等の電子機器および電気機器を区別しない場合、単に「電器」と記載する。
【0014】
図4および
図5に示すように、ベース20は、車体に取り付けられてドアミラー装置10を支持するベース本体21と、ベース本体21をカバーするベースカバー22とを含む。ベースカバー22は、ベース上カバー23およびベース下カバー24を含む。ベース本体21には格納ユニット40が取り付けられている。格納ユニット40は、ベース本体21に固定された図示しない固定部と、内蔵する図示しないモータの動力により固定部に対して所定の回動軸心AXまわりに回動する回動部45とを有する。
【0015】
ウイング30は、回動部45に固定されたウイング本体31と、ウイング本体31をカバーするウイングカバー32とを含む。ウイングカバー32は、ウイング上カバー33、ウイング下カバー34および先端カバー35を含む。カメラ41は、ウイングカバー32内でウイング本体31に取り付けられており、先端カバー35の開口から車外を撮影できる。ターンランプ42は、ウイングカバー32に取り付けられており、アウターレンズが外部に露出するように配置されている。
【0016】
格納ユニット40が作動すると、ウイング本体31およびこれに取り付けられたウイングカバー32および電器が回動部45と一体に回動軸心AXまわりに回動する。
図4に示すウイング30は、走行位置(すなわち車両走行時の位置)に位置した状態である。ウイング30は、走行位置から、回動軸心AXまわりの周方向の一方に位置する
図6に示す格納位置まで格納ユニット40による格納作動によって回動可能である。
【0017】
以下、回動軸心AXまわりの周方向のことを、単に「周方向」と記載する。また、回動軸心AXを中心とした径方向のことを、単に「径方向」と記載する。
【0018】
ところで、ミラーを備える従来のドアミラー装置では、ミラーを収容できる比較的大きなハウジングが設けられることから、格納ユニットの高さが比較的高くても問題ない。そのため、例えば電源線や映像信号線などを含む配線を格納ユニットのシャフト(すなわち固定部)の孔を通じてベースに導くことが可能であった。しかし、CMS用のドアミラー装置10では、ミラーに代えてカメラを使用することによる薄型化・小型化のメリットを享受するためには、上述のような従来の配線方法を採用することができない。
【0019】
これに対し、
図12に示すように配線90をウイング下カバー34の第1通孔91とベース上カバー23の第2通孔92を通してベース20内に導き、そこから車体内部のバッテリーや制御装置等に接続することが考えられる。しかしその場合、配線90と通孔91,92の縁とが直接接触するため、ウイング30の回動時に配線90の引掛り、磨耗、または断線等が懸念される。
【0020】
この課題を解決するため、
図7~
図11に示すように、本実施形態では複数の電器に接続された配線部50が設けられている。配線部50は、ウイング30に設けられた複数の導電部51と、ベース20に設けられた複数のターミナル55とを有する。
【0021】
ウイング下カバー34には導電性のあるメッキが施されている。つまりウイング下カバー34は導電性のあるメッキ層を有する。このメッキ層は、導電性のない部分である溝52により複数の領域に分割されて配線パターンを形成している。溝52は、例えばエッチング、レーザーカットまたはNC機械加工などにより形成される。導電部51は、上記配線パターンの一部から構成されている。つまり導電部51は「導電性のある部分」であり、溝52に囲まれることで周囲から絶縁されている。
【0022】
導電部51は、周方向に延びるように形成された円弧部53と、円弧部53に接続され、図示しない電線により電器に接続された端子部54とを有する。端子部54は、ウイング下カバー34の裏側(ベース20側)から表側(電器収容空間側)まで延びており、その表側で電線に接続されている。ターミナル55は、回動軸心AXと平行な方向から見て円弧部53と重なるように配置されている。
【0023】
ターミナル55は、ベース上カバー23に固定されているスプリングケース56と、スプリングケース56内からベース20の内部空間へ突き出すように設けられている金属プレート57と、スプリングケース56内に収容されているスプリング58と、スプリング58の弾性により円弧部53に押し付けられている金属製の接点部材59とを有する。接点部材59は、
図11の紙面手前および奥で金属プレート57に接触している。金属プレート57は、図示しない電線により車体内部のバッテリーや制御装置等に接続される。
【0024】
ターミナル55は、スプリング58の弾性により導電部51に押し付けられることで、ウイング30の所定の回動範囲にわたって導電部51との電気的接続を維持する。これにより配線をベース20およびウイング30の通孔に通す必要がなく、配線が通孔の縁に接触することを回避しながらウイング30を回動させることができるため、配線の引掛り、磨耗、または断線等の懸念が無くなる。また、ドアミラー装置10の多機能化により配線本数が増加しても導電部51を増やすことにより対応可能である。また、ベース20にウイング30を組み付けることで配線作業も完了するため、ベース20とウイング30の組付け後に配線作業を別途行う必要がなく、組付け工数が低減する。
【0025】
また、本実施形態では、導電部51は、ウイング下カバー34のメッキ層に形成された配線パターンの一部から構成されている。これにより、ドアミラー装置10の多機能化により配線本数が増加しても導電部51を比較的容易に増やすことができる。
【0026】
また、本実施形態では、複数の導電部51は周方向において3箇所に分かれて配置されている。これにより導電部51の配置エリアが回動軸心AXを中心とした径方向の外側に大きくなるのを抑制し、装置全体を小型化することができる。
【0027】
(他の実施形態)
他の実施形態では、導電部がベースに設けられ、ターミナルがウイングに設けられてもよい。
他の実施形態では、導電部は、メッキ層の一部に限らず、例えばウイングに固定された金属板などの他の部材から構成されてもよい。
他の実施形態では、ターミナルは、コイルスプリングに限らず、板ばね又はゴム等の他の弾性部材により導電部に押し付けられてもよい。
【0028】
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0029】
20 ベース、30 ウイング、40 格納ユニット、41 カメラ、
50 配線部、51 導電部、52 溝、55 ターミナル、AX 回動軸心。