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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096150
(43)【公開日】2022-06-29
(54)【発明の名称】鉄筋コンクリート造躯体の解体工法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/08 20060101AFI20220622BHJP
【FI】
E04G23/08 Z
E04G23/08 F
E04G23/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020209087
(22)【出願日】2020-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107272
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 敬二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109140
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 研一
(72)【発明者】
【氏名】竹内 博幸
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176AA01
2E176AA03
2E176AA04
2E176DD01
2E176DD32
2E176DD61
(57)【要約】
【課題】高強度コンクリートによる鉄筋コンクリート造の躯体を動的破砕剤の使用により効率的に解体可能な工法を提供する。
【解決手段】この鉄筋コンクリート造躯体の解体工法は、鉄筋コンクリート造の躯体を解体する工法であって、鉄筋コンクリート造の躯体を構成する部材は、設計基準強度が少なくとも60N/mmの高強度コンクリートを用いたものであり、部材に複数の装薬孔を形成する工程S01と、装薬孔に動的破砕剤を装填する工程S02と、動的破砕剤の点火により部材を破砕する工程S06と、破砕後の部材を解体重機によりさらに破砕する工程S07と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート造の躯体を解体する工法であって、
前記鉄筋コンクリート造の躯体を構成する部材は、設計基準強度が少なくとも60N/mmの高強度コンクリートを用いたものであり、
前記部材に複数の装薬孔を形成する工程と、
前記装薬孔に動的破砕剤を装填する工程と、
前記動的破砕剤の点火により前記部材を破砕する工程と、
前記破砕後の部材を解体重機によりさらに破砕する工程と、を含む鉄筋コンクリート造躯体の解体工法。
【請求項2】
前記部材は、立ち上がりの基礎と梁である、請求項1に記載の鉄筋コンクリート造躯体の解体工法。
【請求項3】
前記梁における前記装薬孔を、前記梁の端部および中間部に形成する、請求項2に記載の鉄筋コンクリート造躯体の解体工法。
【請求項4】
前記基礎が前記梁の幅よりも大きい拡大部を有し、
前記基礎における前記装薬孔を、前記拡大部の上面から縦方向に形成する、請求項2または3に記載の鉄筋コンクリート造躯体の解体工法。
【請求項5】
前記動的破砕剤による破砕工程において前記部材を、前記解体重機による把持破砕が可能ように破砕する、請求項1乃至4のいずれかに記載の鉄筋コンクリート造躯体の解体工法。
【請求項6】
前記梁の端部および中間部ならびに前記基礎における各装薬孔に装填された各動的破砕剤の点火具からの脚線を直列に連結し、遠隔操作にて各動的破砕剤をほぼ同時に点火し破砕する、請求項2乃至5のいずれかに記載の鉄筋コンクリート造躯体の解体工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高強度コンクリートによる鉄筋コンクリート造(RC造)躯体を解体する工法に関する。
【背景技術】
【0002】
国内における建築物の解体は、概ね解体重機を最上階に載せて、上階より順次躯体を分断・破砕して、ガラや廃材を下階に落下等により搬送する工法が一般的である。構造形式や建物規模により異なる場合があるが、専用機械による上部からの解体が主流である。一方、海外では、火薬による発破解体が市中においても積極的に適用され、比較的狭隘な都市部でも適用されている。周知のように、日本の場合、市中での火薬使用は厳密に管理されており、建築の解体においては、地下部の解体に適用された事例が若干挙げられる程度であり、その場合も厳格な許認可制度に従う必要がある。
【0003】
他方、火薬ほど加熱・破砕力は大きくはないが、音速に近いガス圧を発生し、コンクリートを瞬時に破断できる非火薬の動的破砕剤が、国内でもここ数年の間、数種類上梓され、基礎工事の杭頭処理に使用されている。
【0004】
既往の主な解体工法としては次のものがある。
(1)解体重機による破砕工法
解体重機による解体は、破砕器によりコンクリート部分をかみ砕き、切断器により鉄筋を切断することにより、鉄筋コンクリート造の躯体を小片化する(特許文献1参照)。
(2)火薬による破砕工法
鉄筋コンクリート造の解体工法に、少量の高性能火薬を用いるミニブラスティング工法がある。本工法は、小口径の高性能火薬を小孔に挿入し、躯体の特定部分を限定的に破砕する場合に用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-97306号公報
【特許文献2】特開2015-129407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
90年代以降、コンクリートの高強度化が著しく、近年に到っては、実強度が200N/mmを超える領域に達しており、これらの建物の将来の更新時には、現行の破砕専用重機による解体は、より難しくなると考えられることから、新たな解体工法が望まれる。
【0007】
たとえば、地下3層分施工後に設計変更による改修のため、当該3層分を、非火薬の動的破砕剤を適用し、梁幅700mm×梁高2,100mmの基礎梁や、□2,000×高さ1,200mmの基礎を一括破砕し、小片化した躯体を解体重機により解体処理した非公開の事例がある。この場合、設計基準強度60N/mmのコンクリートの実強度は80N/mmを上回っていたので、解体重機のアタッチメントでは躯体コンクリートを破砕できず、このため、解体重機による破砕前に動的破砕剤の適用に到った。なお、非火薬の動的破砕剤を適用したため、関係機関への届け出などは一切不要であった。
【0008】
特許文献2は、動的破砕剤を用いた構造物の薄部材の破砕工法を開示するが、破砕対象が鉄筋コンクリート建築構造物の壁または床スラブ等の薄部材であり、鉄筋コンクリート造の柱や基礎や梁等の躯体ではない。
【0009】
設計基準強度36N/mmを超える高強度コンクリートは、2000年の建築基準法改正により大臣認定による取扱いとなった。近年は、JIS改定もあり、設計基準強度60N/mm未満は、JIS規定範囲となったこともあり、大臣認定対象は、概ね、設計基準強度60N/mm以上が大半となり、たとえば、35階以上、高さ100m以上の超高層建築物が該当するものと考えられる。一方で、設計基準強度60N/mm以上の高強度コンクリートを使用した建物が、耐用により、解体、建て替えの対象となるには、まだ少しの猶予があるが、いずれそのような時機が訪れることは必須と考えられる。
【0010】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、高強度コンクリートによる鉄筋コンクリート造の躯体を動的破砕剤の使用により効率的に解体可能な工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための鉄筋コンクリート造躯体の解体工法は、鉄筋コンクリート造の躯体を解体する工法であって、前記鉄筋コンクリート造の躯体を構成する部材は、設計基準強度が少なくとも60N/mmの高強度コンクリートを用いたものであり、
前記部材に複数の装薬孔を形成する工程と、前記装薬孔に動的破砕剤を装填する工程と、前記動的破砕剤の点火により前記部材を破砕する工程と、前記破砕後の部材を解体重機によりさらに破砕する工程と、を含む。
【0012】
この鉄筋コンクリート造躯体の解体工法によれば、複数の装薬孔を、躯体の部材に形成し、各装薬孔に動的破砕剤を装填し、動的破砕剤の点火により部材を破砕してから、解体重機によりさらに破砕するので、設計基準強度が60N/mm以上の高強度コンクリートから構成された部材を解体重機のみでは破砕できなくても、前もって動的破砕剤により破砕することで解体重機によりさらに破砕でき、高強度コンクリートによる鉄筋コンクリート造の躯体を効率的に破砕し解体することができる。
【0013】
上記鉄筋コンクリート造躯体の解体工法において、前記部材は、立ち上がりの基礎と梁である。また、前記梁における前記装薬孔を、前記梁の端部および中間部に形成することが好ましい。また、前記基礎が前記梁の幅よりも大きい拡大部を有し、前記基礎における前記装薬孔を、前記拡大部の上面から縦方向に形成することが好ましい。
【0014】
また、前記動的破砕剤による破砕工程において前記部材を、前記解体重機による把持破砕が可能なように破砕することが好ましい。
【0015】
また、前記梁の端部および中間部ならびに前記基礎における各装薬孔に装填された各動的破砕剤の点火具からの脚線を直列に連結し、遠隔操作にて各動的破砕剤をほぼ同時に点火し破砕することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の鉄筋コンクリート造躯体の解体工法によれば、高強度コンクリートによる鉄筋コンクリート造の躯体を動的破砕剤の使用により効率的に解体することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態による、高強度コンクリートを用いた鉄筋コンクリート造躯体の解体工法の各工程を説明するためのフローチャートである。
図2】本実施形態において解体対象である、高強度コンクリートを用いた鉄筋コンクリート造躯体の基礎・梁の要部上面図であって、基礎と梁に形成する装薬孔の平面位置を示す。
図3図2の基礎と梁の内部を矢印方向Aから見た図(a)および矢印方向Bから見た図(b)である。
図4図2図3の装薬孔や基礎・梁の寸法等の具体例を示す図である。
図5図2図3の各装薬孔に動的破砕剤等を装填した状態を示す図(a)~(c)である。
図6図1の工程S07における解体重機による把持破砕の様子を概略的に示す図である。
図7】本実施例において動的破砕剤により破砕された基礎と梁端部を示す写真(a)および同じく梁中央部を示す写真(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。図1は、本実施形態による、高強度コンクリートを用いた鉄筋コンクリート造躯体の解体工法の各工程S01~S07を説明するためのフローチャートである。図2は、本実施形態において解体対象である、高強度コンクリートを用いた鉄筋コンクリート造躯体の基礎・梁の要部上面図であって、基礎と梁に形成する装薬孔の平面位置を示す。図3は、図2の基礎と梁の内部を矢印方向Aから見た図(a)および矢印方向Bから見た図(b)である。図4は、図2図3の装薬孔や基礎・梁の寸法等の具体例を示す図である。図5は、図2図3の各装薬孔に動的破砕剤等を装填した状態を示す図(a)~(c)である。図6は、図1の工程S07における解体重機による把持破砕を概略的に示す図である。
【0019】
本実施形態による鉄筋コンクリート造躯体の解体工法は、非火薬の動的破砕剤を使用して、設計基準強度60N/mm以上の高強度コンクリートを使用した鉄筋コンクリート造の躯体を先行破砕し、その後、大型解体重機による把持破砕を行い、最終的に当該躯体を全面的に解体する工法である。
【0020】
解体対象部分は、図2において、立ち上がりの基礎F1~F4、地下1階のX方向のX梁G11,G12,G21,G22,Y方向のY梁G31,G32,G41,G42、および、各梁間の平面状のスラブSLである。なお、基礎F1~F4においてX梁とY梁とが交差して交差部31~34を構成する。交差部31ではY梁G31が貫通し、図3(a)のように、Y梁G31の下側部分が基礎F1に嵌まり込んでいる。また、交差部32ではX梁G12が貫通し、図3(b)のように、X梁G12の下側部分が基礎F2に嵌まり込んでいる。
【0021】
まず、図2図3を参照して動的破砕剤を装填する装薬孔の形成について説明する。基礎F1,F2の周囲にそれぞれ、複数の装薬孔51~62,複数の装薬孔71~82が形成される。基礎F1,F2は、X梁とY梁との交差部31,32からはみ出た拡大部11a,12aを有し、拡大部11aの上面から装薬孔51,54,57,60を垂直方向に削孔し、また、拡大部12aの上面から装薬孔71,74,77,80を垂直方向に削孔する。
【0022】
また、図2のように、基礎F1の周囲において、X梁G11の交差部31側端部に装薬孔52,53、X梁G12の交差部31側端部に装薬孔58,59を垂直方向に削孔する。また、Y梁G31の交差部31の梁端部に相当する位置に装薬孔61,62、同じく装薬孔55,56を垂直方向に削孔する。X梁G11,G12の交差部31側各端部の装薬孔52,53,58,59は、梁上部のスラブSLを貫通して形成される。
【0023】
また、基礎F2の周囲において、Y梁G41の交差部32側端部に装薬孔81,82、Y梁G42の交差部32側端部に装薬孔75,76を垂直方向に削孔する。また、X梁G12の交差部32の梁端部に相当する位置に装薬孔72,73、同じく装薬孔78,79を垂直方向に削孔する。Y梁G41,G42の交差部32側各端部の装薬孔75,76,81,82は、梁上部のスラブSLを貫通して形成される。
【0024】
また、交差部31,32間のX梁G12の中央部に装薬孔63,64を方向Yに並ぶように垂直方向に削孔する。交差部32,34間のY梁G42の中央部に装薬孔83,84を方向Xに並ぶように垂直方向に削孔する。また、交差部31,33間のY梁G31の中央部に装薬孔85,86を方向Xに並ぶように垂直方向に削孔する。梁中央部の装薬孔63,64,83,84,85,86は、各梁の上部のスラブSLを貫通して形成される。なお、図2の基礎F3,F4およびX梁G21等にも、上述と同様にして複数の装薬孔が形成される。
【0025】
また、各梁の端部および中央部に設ける一対の装薬孔の間隔、例えば、X梁G11の装薬孔52,53、X梁G12の装薬孔58,59の装薬孔間の間隔は、梁幅の1/2(梁幅700mmの場合、350mm、梁幅900mmの場合、450mm)だけ空け、両装薬孔が梁幅両端から均等の場所となるように配置することが好ましい。なお、上記間隔は初期の目安であるので、破砕を繰り返し行うことにより適切な位置に変更してもよい。
【0026】
図3(a)(b)、図4に、装薬孔の径や孔長、基礎・梁の寸法等の具体例を示す。装薬孔51~64,71~86の孔径は40mm、基礎F1,F2の拡大部11a、12aの装薬孔51,54,57,60,71,74,77,80の孔長は800mm、X梁G11,G12の装薬孔52,53,58,59,72,73,78,79の孔長は1700mm、Y梁G31,G41,G42の装薬孔61,62,55,56,81,82,75,76の孔長は、1200mmであるが、各孔長は基礎の高さや梁せいの約2/3程度になっている。なお、図3(a)(b)、図4に示す各寸法は、一例であって、必要に応じて適宜変更される。また、装薬孔の孔径40mmは動的破砕剤のカートリッジ径に合わせているので、破砕対象範囲に応じて使用するカートリッジの本数に応じて孔長が設定される。
【0027】
図5(a)のように、図4の孔長800mmの装薬孔51,71には、最深部に動的破砕剤(非火薬の破砕剤)91を装填し、その上に厚さ30mm程度の粘土96を詰めて動的破砕剤91の上部を密閉し、ボイド材などを型枠としてモルタル材94を充填する。図5(b)の孔長1200mmの装薬孔55,75には、最深部に動的破砕剤91を装填し、その上に砂等の込め物95を詰めてから、動的破砕剤92を装填し、その上に密閉用の粘土96を介して、モルタル材94を充填する。図5(c)の孔長1700mmの装薬孔52,72には、最深部に動的破砕剤91を装填し、その上に砂等の込め物95を詰めてから、動的破砕剤92を装填し、その上に込め物95を詰めてから、さらに動的破砕剤93を装填し、その上に密閉用の粘土96を介して、モルタル材94を充填する。動的破砕剤91~93は、カートリッジから構成され、破砕剤量の目安は、破砕対象の鉄筋コンクリート躯体1mにつきカートリッジ1本(200g)とする。なお、図5(a)~(c)には、動的破砕剤や込め物や粘土やモルタル材の各長さの具体例を示したが、これらは一例であって、必要に応じて適宜変更される。また、モルタル材94は超速硬無収縮モルタルからなる。超速硬無収縮モルタルを用いることにより短時間(約1時間)で100N近傍まで強度発現することができ、破砕処理に要する時間を短縮できる。また、硬化時に収縮が発生しないため、動的破砕剤による破砕効果を保証することができる。また、モルタル材に代えて超速硬無収縮性のグラウト材を用いてもよい。
【0028】
次に、図1を参照して、図2図5の鉄筋コンクリート造躯体の解体工法の各工程S01~S07を説明する。
【0029】
まず、図2図3のように、基礎F1,F2および梁G11,G12,G31,G41,G42に動的破砕剤を装填するための複数の装薬孔51~64,71~86を形成する(S01)。
【0030】
次に、図5(a)~(c)に記載のように、孔長に応じて各装薬孔に動的破砕剤を挿入し(S02)、部材天端に型枠(たとえば、径100mmのボイド材)を固定し、モルタル材94を充填し(S03)、その硬化を確認する(約1時間)。なお、動的破砕剤の点火具の脚線は上部に取り出しておく。また、破砕される部材周辺を防爆シートなどで被覆し、破砕物の飛散、飛来などが発生しないよう養生する。なお、動的破砕剤は直列で脚線を連結することで複数箇所をほぼ同時に破砕することができるが、破砕時に防爆養生を行う必要があるため、一度に破砕できる範囲は防爆シートなどで被覆できる範囲に限られる。
【0031】
次に、各動的破砕剤内の各点火具から延びる脚線を直列に接続し(S04)、破砕信号機まで延長する。破砕位置から30m以内に人が立ち入らないように措置した後、1分前からカウントしながら遠隔操作により動的破砕剤を点火することで(S05)、動的破砕剤により基礎と梁を破砕する(S06)。この破砕時に、梁に装填された動的破砕剤により梁、基礎だけでなくスラブSLも破砕される。このように、鉄筋コンクリート造躯体の基礎と梁とスラブは、動的破砕剤により、図6の解体重機JKによる把持破砕部AHでの把持破砕が可能ように破砕される。
【0032】
次に、図6のように、基礎と梁とスラブが動的破砕剤により破砕されて小片化された破砕物100を、大型の解体重機JKを用いて把持破砕部AHで把持破砕し(S07)、さらに小片化する。
【0033】
本実施形態によれば、複数の装薬孔を、躯体の基礎と梁に形成し、各装薬孔に動的破砕剤を装填し、動的破砕剤の点火により基礎と梁とスラブを破砕してから、解体重機によりさらに破砕するので、設計基準強度が60N/mm以上の高強度コンクリートから構成された基礎や梁を解体重機のみでは破砕できなくても、前もって動的破砕剤により破砕することで解体重機によりさらに破砕でき、高強度コンクリートによる鉄筋コンクリート造の躯体を効率的に破砕することができる。
【0034】
また、火薬を使用すれば高強度コンクリートの破砕は可能であるが、火薬の場合、市中での使用について大きな制約があり、所管省庁への届け出が必要となる。また、許認可が下りたとしても、有資格者が必要であり、保管・使用にあたっては、厳重な管理を要する。これに対し、本実施形態で用いる非火薬の動的破砕剤は、販売メーカの講習を受講した者であれば、取扱い可能であり、機器材の場内管理と騒音対策を適切に実施することにより、市中現場でも使用可能である。
【0035】
なお、作業当初は、図2の基礎F1の周囲の複数の装薬孔51~62における第1の破砕、および、X梁G21の中央部の装薬孔63,64における第2の破砕を、それぞれ個別に行い、部材ごとに破砕効果を確認し、動的破砕剤の使用カートリッジ本数等がある程度定まった段階で、第1、第2の破砕を適当に組み合わせて、破砕作業を進めることが好ましい。
【0036】
また、動的破砕剤による解体は、騒音・振動など外部への影響が少ない建物中央部から実施し、装薬量、装薬孔位置などを順次調整しながら、建物外部側へと実施していくことが好ましい。
【0037】
(実施例)
図2のようなRC造躯体を構成する基礎と梁とスラブについて図1の各工程と同様にして図3図5に示す具体例に準じて破砕を行った。躯体に使用したコンクリートの設計基準強度は60N/mmであるが、実強度は69.3~83.7N/mmであった。図7(a)(b)に動的破砕剤による破砕後の基礎と梁端部および梁中央部を示す。これらの動的破砕剤による先行破砕後の基礎と梁とスラブを、解体重機による後行破砕により把持破砕でき、躯体を全面的に解体することができた。
【0038】
以上のように本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。たとえば、図2では、梁中央部に形成した装薬孔で梁中間部を破砕したが、本発明はこれに限定されず、梁中間部の梁長手方向の複数箇所に装薬孔を形成し破砕するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によれば、高強度コンクリートによる鉄筋コンクリート造の躯体を、解体重機単独では解体できない場合であっても、動的破砕剤により先行して破砕することで、効率的に解体でき、また、動的破砕剤は非火薬であるため、解体対象の構造物の設置場所に関わらず比較的容易に適用でき、市街地においても適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
F1~F4 基礎
11a,12a 拡大部
G11,G12,G21,G22 X梁
G31,G32,G41,G42 Y梁
SL スラブ
31~34 交差部
51~64 装薬孔
71~86 装薬孔
91~93 動的破砕剤
94 モルタル材(超速硬無収縮モルタル)
95 込め物
96 粘土
100 破砕物
JK 解体重機
AH 把持破砕部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7