(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096170
(43)【公開日】2022-06-29
(54)【発明の名称】溶接システムおよび鋼管形状特定方法
(51)【国際特許分類】
B23K 9/028 20060101AFI20220622BHJP
B23K 9/12 20060101ALI20220622BHJP
B23K 9/127 20060101ALI20220622BHJP
E04G 21/16 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
B23K9/028 D
B23K9/028 J
B23K9/12 331K
B23K9/12 331B
B23K9/127 508A
E04G21/16
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020209120
(22)【出願日】2020-12-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】脇田 直弥
(72)【発明者】
【氏名】三木 聡史
(72)【発明者】
【氏名】木村 文映
(72)【発明者】
【氏名】後藤 憲一
(72)【発明者】
【氏名】池内 圭
【テーマコード(参考)】
2E174
4E081
【Fターム(参考)】
2E174AA01
2E174BA03
2E174DA12
2E174DA32
2E174DA52
2E174DA56
2E174DA62
4E081AA02
4E081AA15
4E081BA02
4E081BA27
4E081CA07
4E081DA11
4E081DA19
4E081EA17
4E081EA24
4E081EA32
4E081EA47
4E081EA54
(57)【要約】
【課題】鋼管の曲線部の正確な形状および範囲を効率よく測定できる溶接システムおよび鋼管形状特定方法を提供する。
【解決手段】断面形状に直線部2Fおよび曲線部2Cを有する鋼管2の外周を移動する溶接ロボットにより鋼管2を溶接する溶接システムであって、鋼管から溶接ロボットまでの距離を測定する測定手段と、測定手段による測定の結果に基づき、曲線部2Cの形状を示す曲線部形状情報を特定する特定手段と、を備え、特定手段は、溶接ロボットの移動に伴って測定手段により測定された距離が変化した場合に、溶接ロボットの移動経路GL上の位置を示すロボット位置情報を用いて曲線部2Cの一端(曲線部開始点Pci)と他端(曲線部終了点Pco)との間の曲線部中央位置Pcmを取得することにより、曲線部形状情報(軌跡Tc、曲率中心Cc、曲率半径Rc)を特定する。
【選択図】
図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面形状に直線部および曲線部を有する鋼管の外周を移動する溶接ロボットにより前記鋼管を溶接する溶接システムであって、
前記鋼管から前記溶接ロボットまでの距離を測定する測定手段と、
前記測定手段による測定の結果に基づき、前記曲線部の形状を示す曲線部形状情報を特定する特定手段と、
を備え、
前記特定手段は、前記溶接ロボットの移動に伴って前記測定手段により測定された前記距離が変化した場合に、前記溶接ロボットの移動経路上の位置を示すロボット位置情報を用いて前記曲線部の一端と他端との間の曲線部中央位置を取得することにより、前記曲線部形状情報を特定することを特徴とする溶接システム。
【請求項2】
断面形状に直線部および曲線部を有する鋼管の外周に沿った移動経路上を移動する溶接ロボットにより前記鋼管を溶接する溶接システムであって、
前記鋼管から前記溶接ロボットまでの距離を測定する測定手段と、
記憶手段と、
少なくとも前記移動経路の形状を示す移動経路形状情報を前記記憶手段に記憶させる記憶制御手段と、
前記測定手段による測定の結果に基づき、前記曲線部の形状を示す曲線部形状情報を特定する特定手段と、
を備え、
前記記憶制御手段は、前記溶接ロボットの前記移動経路上の位置をそれぞれ示す複数のロボット位置情報と、前記ロボット位置情報で示される複数の位置それぞれで前記測定手段が測定した距離をそれぞれ示す複数の距離情報と、をそれぞれ対応付けて位置距離情報として前記記憶手段に記憶させ、
前記特定手段は、前記記憶手段に記憶された前記移動経路形状情報及び前記位置距離情報を用い、前記曲線部形状情報を特定することを特徴とする溶接システム。
【請求項3】
前記特定手段は、前記記憶手段に記憶された前記移動経路形状情報及び前記位置距離情報を用いて前記曲線部の一端と他端との間の曲線部中央位置を取得することにより、前記曲線部形状情報を特定することを特徴とする請求項2に記載の溶接システム。
【請求項4】
前記特定手段は、前記溶接ロボットの移動に伴って前記測定手段により測定された距離が長くなり始めた場合の前記ロボット位置情報が示す位置を変化開始位置とし、その後の前記溶接ロボットの移動に伴って前記測定手段により測定された距離が変化しなくなり始めた場合の前記ロボット位置情報が示す位置を変化終了位置とし、前記変化開始位置および前記変化終了位置に基づき、前記曲線部中央位置を取得することを特徴とする請求項1または請求項3に記載の溶接システム。
【請求項5】
前記特定手段は、取得した前記曲線部中央位置に基づいて前記曲線部の両端にある曲線部開始点及び曲線部終了点を求めることにより、前記曲線部形状情報を特定することを特徴とする請求項1、請求項3、および請求項4のいずれか一項に記載の溶接システム。
【請求項6】
前記曲線部形状情報は、前記曲線部の曲率中心、又は、前記曲線部の曲率半径を含むことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の溶接システム。
【請求項7】
前記溶接ロボットは、前記溶接ロボットの移動経路に沿って移動する台車を有し、
前記測定手段が測定する距離は、前記台車の移動方向に垂直な方向の距離であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の溶接システム。
【請求項8】
前記測定手段が、前記台車に設けられていることを特徴とする請求項7に記載の溶接システム。
【請求項9】
断面形状に直線部および曲線部を有する鋼管の外周に、所定の移動経路に沿って移動する台車を有する溶接ロボットを設置する準備工程と、
前記鋼管の前記曲線部に臨む区間で、前記台車を前記移動経路に沿って移動させつつ、前記移動経路上の複数の台車位置で、それぞれ前記台車から前記鋼管までの距離を示す台車距離を検出し、検出した前記台車距離と前記台車位置とを対にして位置距離情報として記録する検出工程と、
前記位置距離情報に基づいて、前記曲線部の形状を示す曲線部形状情報を演算する演算工程と、
を有する鋼管形状特定方法。
【請求項10】
前記準備工程では、前記移動経路の形状を示す移動経路形状情報を記憶しておき、
前記検出工程では、前記移動経路の直交方向に前記台車から前記鋼管までの距離を検出し、
前記演算工程では、前記位置距離情報および前記移動経路形状情報に基づいて、複数の前記台車位置ごとに、前記台車位置から前記移動経路の直交方向に前記台車距離だけ離れた点を求め、得られた複数の点を近似処理して前記曲線部形状情報を演算する、
請求項9に記載の鋼管形状特定方法。
【請求項11】
前記曲線部は円弧状であり、
前記演算工程の前記近似処理は最小二乗法による円弧近似であり、
前記曲線部形状情報として前記曲線部の曲率中心および曲率半径を求める
請求項10に記載の鋼管形状特定方法。
【請求項12】
前記曲線部形状情報として前記曲線部の軌跡を求め、
前記位置距離情報として記録された複数の前記台車距離および前記台車位置の対のうち、前記台車距離が最大値または最小値となる対を選択し、選択した対の前記台車位置を通り前記移動経路に直交する対称線を求め、
前記対称線と前記軌跡の交点を曲線部中央位置とし、
前記鋼管の前記曲線部を挟む一対の前記直線部のなす中心角を求め、
前記軌跡上で前記対称線に対して前記中心角の2分の1となる曲線部開始点および曲線部終了点を求める、
請求項11に記載の鋼管形状特定方法。
【請求項13】
前記曲線部の曲率中心が、前記移動経路の曲率中心よりも前記鋼管の内側にあるとき、
前記曲線部開始点を変化開始位置とし、前記曲線部終了点を変化終了位置とする、
請求項12に記載の鋼管形状特定方法。
【請求項14】
前記曲線部の曲率中心が、前記移動経路の曲率中心よりも前記鋼管の外側にあるとき、
前記移動経路上で前記対称線に対して前記中心角の2分の1となる移動経路側開始点および移動経路側終了点を変化開始位置および変化終了位置とする、
請求項12に記載の鋼管形状特定方法。
【請求項15】
前記台車が、前記移動経路上を通りかつ互いに所定距離離れた一対の支持点を有し、
前記台車距離が、一対の前記支持点を結ぶ線分の中点から前記支持点を結ぶ線分に直交する方向に前記鋼管までの距離である、
請求項9から請求項14のいずれか一項に記載の鋼管形状特定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溶接システムおよび鋼管形状特定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高層ビルなどの大型建築物には、角形鋼管を継ぎ足して形成された角形鋼管柱が用いられている。このような角形鋼管の継ぎ足しには、走行レールに沿って鋼管柱の周囲を巡回する溶接ロボットを有する溶接システムが利用される(特許文献1参照)。
溶接ロボットで角形鋼管を継ぎ足す際には、先ず、継ぎ足す角形鋼管の端部にそれぞれエレクションピースを形成し、エレクションピースどうしを建て入れ治具で仮止めしておく。次に、建て入れ治具で仕切られた区間毎に溶接ロボットを設置し、区間毎に所定パス数の初期溶接を行ってゆく。全ての区間で初期溶接が終了したら、エレクションピースから建て入れ治具を撤去し、角形鋼管の継ぎ目の全周にわたって残りの複数パスの溶接を行い、全ての溶接が終了した後にエレクションピースを除去する(特許文献2参照)。
【0003】
溶接ロボットで自動溶接を行う際には、溶接速度(単位時間あたりの溶接長さ)を一定にして溶接品質を安定化させることが好ましい。ただし、角形鋼管は一般に角部が断面円弧状のアールとされ、溶接ロボットの走行レールにも角形鋼管のアールに沿った円弧状のカーブが形成される。このようなカーブでは、角形鋼管の平坦部に沿った走行レールの直線部分に対して、溶接ロボットの走行速度が一定であっても溶接速度が変動し、安定した溶接品質が得られないことがある。
これに対し、角形鋼管および走行レールの形状に基づいて溶接ロボットの移動速度を制御することで、溶接速度を一定化して溶接品質を安定化することがなされている(特許文献3参照)。
【0004】
特許文献3の溶接ロボットでは、溶接ロボットの台車から角形鋼管までの距離を測定し、測定された距離に応じて台車の走行速度を演算して記憶しておき、台車を走行させる際に位置に応じた走行速度を読み出して台車の速度を制御する(特許文献3段落0022,0037,0041,0042参照)。これにより、角形鋼管の平坦部(直線部)から円弧状の角部(曲線部)までの溶接速度を一定化している。
角形鋼管の角部(コーナ部)では、角形鋼管および走行レールの形状によって3つの配置関係が生じる(特許文献3段落0024~0028参照)。すなわち、角形鋼管と走行レールとの曲線部の曲率中心が一致しており、各々の曲線部の範囲が同じとなる場合(特許文献3
図4(a)参照)、走行レールの曲率中心が角形鋼管の曲率中心よりも角形鋼管の内側にあり、走行レールの曲線部が角形鋼管の直線部まではみ出している場合(同
図4(b)参照)、走行レールの曲率中心が角形鋼管の曲率中心よりも角形鋼管の外側にあり、角形鋼管の曲線部が走行レールの直線部まではみ出している場合(同
図4(c)参照)がある。特許文献3の溶接ロボットでは、これらの各々に対応可能である。
【0005】
なお、特許文献3の溶接ロボットでは、台車と鋼管との距離を測定したのち、演算した溶接速度を記録するが、距離は記録していない。
また、特許文献3の溶接ロボットでは、角形鋼管の大きさ(外形寸法等)、直線部や曲線部等の寸法(大きさや中心位置等)と、使用するガイドレールの直線ユニット、コーナユニットの曲線部の寸法(大きさや中心位置等)が予め記録されている(特許文献3段落0023参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5948521号公報
【特許文献2】特開2018-53626号公報
【特許文献3】特開2018-58078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した特許文献3の溶接ロボットでは、台車と鋼管との距離の測定は、専ら溶接速度の演算に用いられ、曲線部の形状情報とくに曲率半径や曲率中心位置、直線部との境界位置(曲線部の開始点および終了点)の識別には不十分である。
また、特許文献3における角形鋼管情報記憶部は、予め曲線部の形状情報が記憶されるが、その形状情報を準備して記憶させる作業が必要であるうえ、公称寸法であるため製造誤差への対応が不十分である。
特許文献3とは別に、溶接ロボットを鋼管に設置し、台車をレールに沿って移動させ、レールの曲線部および鋼管の曲線部をユーザがティーチングすることも行われる。しかし、溶接作業のつどティーチングが必要であり、煩雑さが避けられなかった。
そこで、鋼管において、直線部とは異なる曲線部の処理を行うために、曲線部の正確な形状および範囲を効率よく測定することが求められていた。
【0008】
本発明の目的は、鋼管の曲線部の正確な形状および範囲を効率よく測定できる溶接システムおよび鋼管形状特定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の溶接システムは、断面形状に直線部および曲線部を有する鋼管の外周を移動する溶接ロボットにより前記鋼管を溶接する溶接システムであって、前記鋼管から前記溶接ロボットまでの距離を測定する測定手段と、前記測定手段による測定の結果に基づき、前記曲線部の形状を示す曲線部形状情報を特定する特定手段と、を備え、前記特定手段は、前記溶接ロボットの移動に伴って前記測定手段により測定された前記距離が変化した場合に、前記溶接ロボットの移動経路上の位置を示すロボット位置情報を用いて前記曲線部の一端と他端との間の曲線部中央位置を取得することにより、前記曲線部形状情報を特定することを特徴とする。
【0010】
本発明の溶接システムは、断面形状に直線部および曲線部を有する鋼管の外周に沿った移動経路上を移動する溶接ロボットにより前記鋼管を溶接する溶接システムであって、前記鋼管から前記溶接ロボットまでの距離を測定する測定手段と、記憶手段と、少なくとも前記移動経路の形状を示す移動経路形状情報を前記記憶手段に記憶させる記憶制御手段と、前記測定手段による測定の結果に基づき、前記曲線部の形状を示す曲線部形状情報を特定する特定手段と、を備え、前記記憶制御手段は、前記溶接ロボットの前記移動経路上の位置をそれぞれ示す複数のロボット位置情報と、前記ロボット位置情報で示される複数の位置それぞれで前記測定手段が測定した距離をそれぞれ示す複数の距離情報と、をそれぞれ対応付けて位置距離情報として前記記憶手段に記憶させ、前記特定手段は、前記記憶手段に記憶された前記移動経路形状情報及び前記位置距離情報を用い、前記曲線部形状情報を特定することを特徴とする。
【0011】
本発明の溶接システムにおいて、前記特定手段は、前記記憶手段に記憶された前記移動経路形状情報及び前記位置距離情報を用いて前記曲線部の一端と他端との間の曲線部中央位置を取得することにより、前記曲線部形状情報を特定することが好ましい。
【0012】
本発明の溶接システムにおいて、前記特定手段は、前記溶接ロボットの移動に伴って前記測定手段により測定された距離が長くなり始めた場合の前記ロボット位置情報が示す位置を変化開始位置とし、その後の前記溶接ロボットの移動に伴って前記測定手段により測定された距離が変化しなくなり始めた場合の前記ロボット位置情報が示す位置を変化終了位置とし、前記変化開始位置および前記変化終了位置に基づき、前記曲線部中央位置を取得することが好ましい。
【0013】
本発明の溶接システムにおいて、前記特定手段は、取得した前記曲線部中央位置に基づいて前記曲線部の両端にある曲線部開始点及び曲線部終了点を求めることにより、前記曲線部形状情報を特定することが好ましい。
【0014】
本発明の溶接システムにおいて、前記曲線部形状情報は、前記曲線部の曲率中心、又は、前記曲線部の曲率半径を含むことが好ましい。
【0015】
本発明の溶接システムにおいて、前記溶接ロボットは、前記溶接ロボットの移動経路に沿って移動する台車を有し、前記測定手段が測定する距離は、前記台車の移動方向に垂直な方向の距離であることが好ましい。
【0016】
本発明の溶接システムにおいて、前記測定手段が、前記台車に設けられていることが好ましい。
【0017】
本発明の鋼管形状特定方法は、断面形状に直線部および曲線部を有する鋼管の外周に、所定の移動経路に沿って移動する台車を有する溶接ロボットを設置する準備工程と、前記鋼管の前記曲線部に臨む区間で、前記台車を前記移動経路に沿って移動させつつ、前記移動経路上の複数の台車位置で、それぞれ前記台車から前記鋼管までの距離を示す台車距離を検出し、検出した前記台車距離と前記台車位置とを対にして位置距離情報として記録する検出工程と、前記位置距離情報に基づいて、前記曲線部の形状を示す曲線部形状情報を演算する演算工程と、を有する。
【0018】
本発明の鋼管形状特定方法において、前記準備工程では、前記移動経路の形状を示す移動経路形状情報を記憶しておき、前記検出工程では、前記移動経路の直交方向に前記台車から前記鋼管までの距離を検出し、前記演算工程では、前記位置距離情報および前記移動経路形状情報に基づいて、複数の前記台車位置ごとに、前記台車位置から前記移動経路の直交方向に前記台車距離だけ離れた点を求め、得られた複数の点を近似処理して前記曲線部形状情報を演算することが好ましい。
【0019】
本発明の鋼管形状特定方法において、前記曲線部は円弧状であり、前記演算工程の前記近似処理は最小二乗法による円弧近似であり、前記曲線部形状情報として前記曲線部の曲率中心および曲率半径を求めることが好ましい。
【0020】
本発明の鋼管形状特定方法において、前記曲線部形状情報として前記曲線部の軌跡を求め、前記位置距離情報として記録された複数の前記台車距離および前記台車位置の対のうち、前記台車距離が最大値または最小値となる対を選択し、選択した対の前記台車位置を通り前記移動経路に直交する対称線を求め、前記対称線と前記軌跡の交点を曲線部中央位置とし、前記鋼管の前記曲線部を挟む一対の前記直線部のなす中心角を求め、前記軌跡上で前記対称線に対して前記中心角の2分の1となる曲線部開始点および曲線部終了点を求めることが好ましい。
【0021】
本発明の鋼管形状特定方法において、前記曲線部の曲率中心が、前記移動経路の曲率中心よりも前記鋼管の内側にあるとき、前記曲線部開始点を変化開始位置とし、前記曲線部終了点を変化終了位置とすることが好ましい。
【0022】
本発明の鋼管形状特定方法において、前記曲線部の曲率中心が、前記移動経路の曲率中心よりも前記鋼管の外側にあるとき、前記移動経路上で前記対称線に対して前記中心角の2分の1となる移動経路側開始点および移動経路側終了点を変化開始位置および変化終了位置とすることが好ましい。
【0023】
本発明の鋼管形状特定方法において、前記台車が、前記移動経路上を通りかつ互いに所定距離離れた一対の支持点を有し、前記台車距離が、一対の前記支持点を結ぶ線分の中点から前記支持点を結ぶ線分に直交する方向に前記鋼管までの距離であることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、鋼管の曲線部の正確な形状および範囲を効率よく測定できる溶接システムおよび鋼管形状特定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態の装置全体を示す斜視図。
【
図3】前記実施形態の溶接位置の溶接トーチを示す側面図。
【
図4】前記実施形態の退避位置の溶接トーチを示す側面図。
【
図10】前記実施形態の台車の移動経路を示す平面図。
【
図11】前記実施形態の位置距離情報のデータ構成を示す図。
【
図13】前記実施形態の位置距離情報を示すグラフ。
【
図14】前記実施形態の位置距離情報のデータ処理を示す図。
【
図15】前記実施形態の他の位置距離情報を示すグラフ。
【
図16】前記実施形態のさらに他の位置距離情報を示すグラフ。
【
図17】前記実施形態の曲線部の形状測定演算を示す平面図。
【
図18】前記実施形態の鋼管形状特定動作を示すフローチャート。
【
図19】前記実施形態の曲線部形状演算を示すフローチャート。
【
図20】本発明の他の実施形態の測定手段を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態を図面にもとづいて説明する。
図1において、溶接システム10は、一対の鋼管1,2の端部を建て入れ治具5で仮止めした状態で、接続端3,4どうしを全周にわたって自動溶接するものである。
溶接システム10は、鋼管1,2に支持されて接続端3,4に沿うように配置された走行レール11と、走行レール11に沿って移動可能な溶接ロボット20と、溶接ロボット20に接続された制御装置9と、を有する。
【0027】
〔溶接ロボット〕
溶接ロボット20は、走行レール11に支持された台車21と、先端から溶接ワイヤ221が延びる溶接トーチ22と、溶接トーチ22を台車21に支持する支持機構30と、を有する。
支持機構30は、溶接トーチ22を、溶接ワイヤ221が接続端3,4に接触する溶接位置Pw(
図3参照)から、溶接トーチ22が建て入れ治具5と干渉しない退避位置Pe(
図4参照)まで退避させる退避機構31を備えている。
さらに、支持機構30は、溶接トーチ22を台車21に対して近接離隔させる移動支持機構32と、溶接トーチ22を台車21に対して回動させる回動支持機構33と、を有する。
【0028】
図2において、移動支持機構32は、台車21の外側に接続されたケースを有し、ケースの内部に構成された送り機構などでケースを台車21に対して近接離隔する方向Dhへ移動可能である。溶接トーチ22は、支持機構30を介して移動支持機構32のケースに支持されており、移動支持機構32でケースを移動させることで溶接トーチ22を台車21に対して近接離隔させることができる。
回動支持機構33は、移動支持機構32に接続されたブラケット331と、ブラケット331に接続されたパネル332と、パネル332に支持されたホルダ333と、を有する。このホルダ333に溶接トーチ22が支持されている。
回動支持機構33には、台車21の走行方向Dmの軸線まわりに溶接トーチ22を回動させるねらい角調整機構34と、鋼管1,2の延長方向Dcの軸線まわりに溶接トーチ22を回動させるトーチ角回動機構35と、が形成されている。
【0029】
図2および
図3において、ねらい角調整機構34として、パネル332は、ブラケット331に対して、台車21の走行方向Dmの軸線341を中心に回動可能(
図3の矢印Am)とされている。ブラケット331とパネル332との軸線341まわりの角度は、手動または駆動モータにより調整可能である。
ねらい角調整機構34は、パネル332のブラケット331に対する角度を調整することで、溶接トーチ22のねらい角Awを調整可能である。ねらい角Awは、溶接トーチ22の先端に支持された溶接ワイヤ221の上下方向つまり鋼管1,2の延長方向Dcの向きであり、鋼管1,2の接続端3,4の溶接部位の状態に応じて適切に調整される。
【0030】
本実施形態では、ねらい角調整機構34が、退避機構31を兼ねている。
図3の状態では、溶接トーチ22の先端の溶接ワイヤ221が鋼管1,2の接続端3,4の溶接部位に近接され、溶接を行うことができる(溶接位置Pw)。
図4において、ねらい角調整機構34は、軸線341まわりに大きく回動させて溶接ワイヤ221を接続端3,4から離隔させることができる(退避位置Pe)。退避位置Peは、溶接ワイヤ221およびこれを支持する溶接トーチ22の先端部分が建て入れ治具5と干渉しない位置とすることができる。
従って、溶接トーチ22の先端の溶接ワイヤ221が接続端3,4に接触する溶接位置Pwから、溶接トーチ22が建て入れ治具5と干渉しない退避位置Peまで退避させる退避機構31が構成される。
【0031】
図2において、ホルダ333は、パネル332に対して、パネル332の表面と直交する軸線351を中心に回動可能とされている。パネル332に対するホルダ333の回動角度は、手動または駆動モータにより調整可能である。これらによりトーチ角回動機構35が構成されている。
トーチ角回動機構35は、ホルダ333のパネル332に対する角度を調整することで、溶接トーチ22のトーチ角Atを調整可能である。トーチ角Atは、溶接トーチ22の先端に支持された溶接ワイヤ221の水平方向つまり台車21の走行方向Dmの向きであり、鋼管1,2の接続端3,4の溶接部位の状態および建て入れ治具5との相対位置に応じて適切に調整される。
【0032】
図1において、溶接ロボット20の台車21には一対のカメラ23が設置されている。
一対のカメラ23は、それぞれCCD(Charge Coupled Device、電荷結合素子)などの固体撮像素子で構成され、支持アーム24を介して移動支持機構32の側面に支持されている。
一対のカメラ23は、溶接トーチ22を挟んで両側に対向設置され、溶接トーチ22の先端および鋼管1,2の接続端3,4の溶接部位の溶接方向前側および後側の画像を撮影可能である。一対のカメラ23および支持アーム24は、それぞれ走行の際にも建て入れ治具5と干渉しない位置に配置されている。
【0033】
図5において、溶接ロボット20は、溶接トーチ22を支持するホルダ333に支持された照明装置25を有する。
照明装置25は、ラインレーザ照射装置であり、接続端3,4に形成された開先の横断方向に拡がるレーザ光束251を鋼管1,2の接続端3,4の開先に照射し、この開先の断面形状252を周囲よりも明るく浮かび上がらせることができる。
カメラ23は、断面形状252を含む測定部位253の画像を撮影し、画像データとして制御装置9に送信可能である。
【0034】
〔制御装置〕
図6において、制御装置9は、既存のコンピュータシステムに専用のドライバを組み合わせて構成され、記憶領域に格納されたプログラムを実行することで、走行レール11に沿った台車21の走行、溶接トーチ22の姿勢調整、溶接トーチ22への供給電圧および電流の調整、溶接ワイヤの送り速度の調整など、溶接システム10の各部動作の制御を行うものである。
このために、制御装置9は、溶接トーチ22ほかを制御する溶接動作制御部91を有するとともに、台車21を制御する台車移動制御部92を有する。
【0035】
制御装置9は、カメラ23からの画像データの処理を行い、溶接動作で参照される開先断面形状の測定、および本発明に基づく鋼管形状特定方法を実行可能である。
このために、制御装置9には、形状特定部93が形成されている。
形状特定部93は、測定手段94、記憶手段95、記憶制御手段96、特定手段97を有し、鋼管1,2の曲線部、つまり鋼管1,2の矩形断面形状における四隅の形状を示す曲線部形状情報を特定する。
【0036】
測定手段94は、鋼管1,2から溶接ロボット20までの距離を測定するものである。具体的には、照明装置25でレーザ光束251を鋼管1,2の開先に照射させるとともに、カメラ23で得られた画像から、周囲よりも明るく浮かび上がった断面形状252を測定し、そのうち鋼管1,2の表面、つまり開先でない部分に表れた断面形状252から、いわゆる三角測量により鋼管1,2から溶接ロボット20までの距離とする。
なお、測定手段94としては、溶接ロボット20にレーザ測距装置を設置し、鋼管1,2の表面に直交するレーザビームを用いて鋼管1,2から溶接ロボット20までの距離を測定してもよい。
【0037】
記憶手段95は、測定手段94により測定された鋼管1,2から溶接ロボット20までの距離を記憶可能である。
併せて、記憶手段95は、走行レール11における溶接ロボット20の位置情報、つまり溶接ロボット20が走行レール11のどこにあるか、を記憶可能である。
さらに、記憶手段95は、溶接ロボット20の移動経路を示す移動経路形状情報として、走行レール11の平面形状(鋼管1,2の断面方向)を記憶している。この移動経路形状情報は、鋼管1,2の溶接に用いられる走行レール11のパーツの設計情報、および鋼管1,2に設置された組立状態での形状情報に基づいて設定される。
これらの記憶手段95の記憶は、記憶制御手段96により制御される。
【0038】
記憶制御手段96は、溶接ロボット20の移動経路を示す移動経路形状情報が外部入力された際に、これを記憶手段95に記憶する。
また、記憶制御手段96は、測定手段94により鋼管1,2から溶接ロボット20までの距離が測定された際に、この距離と、測定された時点の走行レール11における溶接ロボット20の位置情報とを、一対の位置距離情報(
図11の台車位置および台車距離)にして記憶手段95に記憶する。この際、溶接ロボット20が走行レール11に沿って走行しつつ、距離の測定および記憶を繰り返し行うことで、記憶手段95には複数の台車距離と台車位置の対が記憶される。
【0039】
特定手段97は、測定手段94による測定の結果に基づき、鋼管1,2の曲線部の形状を示す曲線部形状情報を特定する。
特定手段97は、走行レール11に沿った溶接ロボット20の移動に伴って測定手段94により測定された鋼管1,2までの距離(
図11の台車距離)が変化した場合に、溶接ロボット20の移動経路上の位置を示す位置情報(
図11の台車位置)を用いて、鋼管1,2の曲線部の中央の位置(曲線部の一端と他端との間の曲線部中央位置)を取得することにより、鋼管1,2の曲線部形状情報を特定する。このために、特定手段97は、記憶手段95に記憶された移動経路形状情報と、位置距離情報とを参照し、曲線部形状情報を特定する。
【0040】
例えば、特定手段97は、記憶手段95に記憶された移動経路形状情報および位置距離情報を用いて曲線部の一端と他端との間の曲線部中央位置を取得することにより、曲線部の形状情報を特定することができる。
また、特定手段97は、溶接ロボット20の移動に伴って測定手段94により測定された距離が長くなり始めた場合の溶接ロボット20の位置情報が示す位置を変化開始位置とし、その後の溶接ロボット20の移動に伴って測定手段94により測定された距離が変化しなくなり始めた場合の溶接ロボット20の位置情報が示す位置を変化終了位置とし、得られた変化開始位置および変化終了位置に基づき、曲線部中央位置曲線部の中央の位置を取得することができる。
そして、特定手段97は、取得した曲線部の中央の位置に基づいて曲線部の両端にある曲線部開始点及び曲線部終了点を求めることにより、曲線部形状情報を特定することができる。
曲線部形状情報を特定するより詳細な手順については、のちほど
図9~
図18を用いて説明する。
【0041】
〔自動溶接動作〕
本実施形態の溶接システム10では、先ず鋼管1,2を建て入れ治具5で仮止めし、走行レール11および溶接ロボット20を設置したのち、溶接ロボット20を走行レール11に沿って走行させて曲線部形状情報の特定を行い、得られた曲線部形状情報を参照しつつ鋼管1,2の接続端3,4の自動溶接を実行する。
図7および
図8には、本実施形態の溶接システム10による鋼管1,2の自動溶接動作が示されている手順について説明する。
【0042】
図7において、鋼管1,2の接続端3,4は、角の丸い正方形の断面形状を有する。この正方形の断面形状は、建て入れ治具5により4つの区画Sn(S1~S4)に分割されている。
【0043】
4つの区画S1~S4に対する溶接動作は、先ず区画S1を時計回りに走行しつつ溶接1を行い、退避機構31で建て入れ治具5を避けて区画S2に移動する。次に、区画S2を時計回りに走行しつつ溶接2を行い、退避機構31で建て入れ治具5を避けて区画S3に移動する。以下同様に、区画S3で溶接3を行い、区画S4で溶接4を行う。
溶接4の終端に達したら、建て入れ治具5は越えずに走行する向きを反転し、区画S4を反時計回りに走行しつつ溶接5を行う。続いて、退避機構31で建て入れ治具5を避けて区画S3に移動し、区画S3を反時計回りに走行しつつ溶接6を行う。以下同様に、区画S2で溶接7を行い、区画S1で溶接8を行う。
【0044】
なお、上述した溶接1~8に先立って、開先形状のセンシングを行うことがある。この場合でも、退避機構31で建て入れ治具5を避けつつ、区画S1~S4を連続して走行する。
また、溶接1~8を繰り返し、鋼管1,2の接続端3,4の溶接に所定の強度が得られたら、建て入れ治具5を取り外して区画S1~S4が互いに連続した状態とし、全周の連続溶接を行う。全周の連続溶接は、走行方向を反転させつつ、必要回数だけ繰り返し行う。
【0045】
図8において、溶接される鋼管1,2の接続端3,4は、角の丸い正方形の断面形状、つまり4つの直線部2Fが4つの円弧状の曲線部2Cで接続された形状を有する。この形状に対応して、接続端3,4に沿って設置される走行レール11も、4つの直線部11Fが4つの円弧状の曲線部11Cで接続された形状を有する。
このうち、走行レール11の直線部11Fおよび曲線部11Cについては、各々の設置範囲、長さや境界点位置、曲線部11Cの曲率中心位置および曲率半径が、予め走行レール11の設計情報として既知である。
一方、鋼管1,2の直線部2Fおよび曲線部2Cについては、各々の設置範囲、長さや境界点位置、曲線部2Cの曲率中心位置および曲率半径が、材料の公称寸法として定められているが、実際の寸法は異なる場合がある。
さらに、走行レール11の曲線部11Cと、鋼管1,2の曲線部2Cとで、設置範囲、曲率中心位置および曲率半径が異なると、溶接ロボット20が曲線部11Cを通過する際に、溶接ロボット20から鋼管1,2までの距離が変化し、溶接条件の設定を適切に調整する必要が生じる。
【0046】
例えば、
図8の区画S1で溶接1を行う場合(
図7の溶接1)、建て入れ治具5の近傍の始端位置P11から走行開始した溶接ロボット20は、中間位置P12,P13,P14,P15を経て終端位置P16に達する。ここで、中間位置P12では接続端3,4が直線部2Fから円弧状の曲線部2Cに変わり、中間位置P13では走行レール11が直線部11Fから円弧状の曲線部11Cに変わる。そして、中間位置P14では走行レール11が円弧状の曲線部11Cから直線部11Fに変わり、中間位置P15では接続端3,4が円弧状の曲線部2Cから直線部2Fに変わる。その結果、これらの中間位置P12,P13,P14,P15を通るごとに、接続端3,4と走行レール11との位置関係が変化し、溶接ロボット20から鋼管1,2までの距離が変化する。
【0047】
このような距離の変化は、溶接ロボット20の走行方向が逆向きになった場合、つまり終端位置P16から中間位置P15,P14,P13,P12を経て始端位置P11へ至る場合も同じである(
図7の溶接8)。
さらに、同様のことが、区画S2の始端位置P21、中間位置P22,P23,P24,P25、および終端位置P26(
図7の溶接2,溶接7)、区画S3の始端位置P31、中間位置P32,P33,P34,P35、および終端位置P36(
図7の溶接3,溶接6)、区画S4の始端位置P41、中間位置P42,P43,P44,P45、および終端位置P46(
図7の溶接4,溶接5)にもいえる。
そこで、本実施形態では、前述した形状特定部93により、鋼管1,2の曲線部形状情報を特定する。
【0048】
〔曲線部形状特定処理〕
以下、本実施形態における曲線部形状特定処理について説明する。
以下、鋼管1,2の区画S1についての曲線部形状特定処理について説明する。例示は区画S1であるが、他の区画S2~S4あるいは逆向きの区画S4~S1についても同様に適用可能である。また、区画S1の一つではなく、区画S1~S2、あるいは区画S1~S4のように複数の区画を連続して処理してもよい。
【0049】
図9には、本実施形態の曲線部形状特定処理で用いる要素を示す。
走行レール11に関して、区画S1を構成する曲線部11Cの両側の直線部11Fの延伸方向はX軸方向およびY軸方向である。走行レール11の厚み方向中央位置を結ぶ線が溶接ロボット20の移動経路GLであり、曲線部11Cにおける移動経路GLは曲率中心Crおよび曲率半径Rrである。
曲線部11Cの設置範囲に関して、曲線部11Cとその両側の直線部11Fとの境界点を移動経路側開始点Priおよび移動経路側終了点Proとする。移動経路側開始点Priは、曲率中心Crを通りY軸に平行な移動経路側開始線Lriと走行レール11との交点である。移動経路側終了点Proは、曲率中心Crを通りX軸に平行な移動経路側開始線Lriと走行レール11との交点である。
【0050】
鋼管1,2に関して、区画S1を構成する曲線部2Cの両側の直線部2Fは延伸方向がX軸方向およびY軸方向であり、曲線部11Cの表面は曲率中心Ccおよび曲率半径Rcである。
曲線部2Cの設置範囲に関して、曲線部2Cとその両側の直線部2Fとの境界点を曲線部開始点Pciおよび曲線部終了点Pcoとする。曲線部開始点Pciは、曲率中心Ccを通りY軸に平行な曲線部開始線Lciと鋼管1,2の表面との交点である。曲線部終了点Pcoは、曲率中心Ccを通りX軸に平行な曲線部終了線Lcoと鋼管1,2の表面との交点である。
鋼管1,2の曲率中心Ccと走行レール11の曲率中心Crとは、X軸方向にdx、Y軸方向にdyだけ鋼管1,2の中心側へずれている。
ここで、鋼管1,2の曲線部2Cが、走行レール11の曲線部11Cと同心円状であったならば、曲線部2Ccのようになる。
鋼管1,2の曲率中心Ccが走行レール11の曲率中心Crよりも鋼管1,2の中心側へずれているとき、曲線部開始線Lciが区画S1の中間位置P12、移動経路側開始線Lriが区画S1の中間位置P13、移動経路側終了線Lroが区画S1の中間位置P14、曲線部終了線Lcoが区画S1の中間位置P15に相当する。
【0051】
図10には、測定手段94(
図6参照)による溶接ロボット20から鋼管1,2までの距離の測定状態を示す。
溶接ロボット20は、台車21の両端近傍の2つの支持点PF,PLを走行レール11でガイドされる。測定手段94は、2つの支持点PF,PLの中点PMから、支持点PF,PLを結ぶ線分と直交方向の距離(台車距離Dr)を測定する。台車距離Drの測定は、走行レール11を移動しつつ所定距離または所定時間ごとに複数回行われ(例えば台車距離Dr3、Dr10、Dr18など)、それぞれ測定した際の台車位置Pr(例えば台車位置Pr3、Pr10、Pr18など)と一対にして記録される。
具体的には、
図6の記憶制御手段96により、台車位置Prと台車距離Drとを対にして記憶手段95に順次記憶されてゆき、これにより記憶手段95には位置距離情報951(
図11参照)が形成される。
なお、台車21が曲線部11Cにあるとき、中点PMは台車位置Prから内側に変位する。このため、記録する台車距離Drにおいては、測定手段94による測定距離に対して中点PMの内側変位分を補正した値とする。
【0052】
図11に示すように、記憶手段95に記憶された位置距離情報951は、レコード番号、台車位置Pr、台車距離Drを複数記憶したものである。例えば、レコード番号#1~#24として、台車位置Pr1~Pr24が、台車距離Dr1~Dr24とそれぞれ対にして記憶される。
記憶手段95に記憶された位置距離情報951は、特定手段97(
図6参照)が随時読み出し可能である。
特定手段97は、位置距離情報951として記憶された複数対の台車位置Prおよび台車距離Drから、曲線部11C,2Cの中央位置および対称線を検出する。
【0053】
図12において、溶接ロボット20が図中左側の直線部11Fから同右側へ移動する場合(
図7の溶接1の動作)、走行レール11の直線部11Fと鋼管1,2の直線部2Fとが平行する領域では、台車位置Prにおける台車距離Drが一定となる。
続く曲線部開始線Lciより右の領域では、曲線部2Cによって直線部11Fとの間が拡がり、曲線部開始線Lciを超えると台車距離Drがさらに拡大し、この拡大は対称線Lmまで続く。
すなわち、鋼管1,2との曲率中心Ccが走行レール11の曲率中心Crにあれば、曲線部11Cおよび曲線部2Ccが同心円となり、曲線部11Cにおいても台車距離Drは変化しない。しかし、曲率中心Ccである曲線部2Cは、曲線部2Ccから鋼管1,2の内側へ変位しており、従ってこの領域(曲線部開始線Lciから対称線Lmまで)では台車距離Drが拡大することになる。
【0054】
曲線部2C,2Cc,11Cはいずれも円弧状であり、各々の中心角(曲線部開始線Lciと曲線部終了線Lcoとのなす角,移動経路側開始線Lriと移動経路側終了線Lroとのなす角)は通常R=90度である。
ここで、曲線部2C,2Cc,11Cの各々の曲率中心Cc,Crを通る直線は、中心角R=90度の半分(R/2=45度)の方向に延びる。
この直線を対称線Lmとすると、曲線部2C,2Cc,11Cはこれらに接続される直線部2F,11Fの近傍部分も含めて、対称線Lmに対して線対称となる。対称線Lmと曲線部2Cとの交点を曲線部2Cの中央位置Pcmとし、対称線Lmと曲線部11Cとの交点を曲線部11Cの中央位置Prmとすると、各々は曲線部2C,11Cの経路上の中点位置となる。
【0055】
このような曲線部2C,11Cの対称性により、位置距離情報951に記憶された複数対の台車位置Prおよび台車距離Drは、台車位置Prが図中左側から右側へ移動するにつれて、曲線部2Cと曲線部11Cとの距離が広くなり、台車距離Drが拡大するが、対称線Lmを超えると、曲線部2Cと曲線部11Cとの距離が狭くなり、台車距離Drが減少してゆく。
図13に、位置距離情報951に記憶された複数対の台車位置Prおよび台車距離Drの変化を模式的に示す。
前述した通り、台車距離Drは、台車位置Prが曲線部開始線Lciまでは一定であるが、曲線部開始線Lciを超え、さらに移動経路側開始線Lriを超えると増大し、対称線Lmで最大となったのち減少に転じ、移動経路側終了線Lroを超え、さらに曲線部終了線Lcoを超えると再び一定となる。
従って、位置距離情報951に記憶された複数対の台車位置Prおよび台車距離Drから、最大値Drxを検出することで、対称線Lmに対応する曲線部11Cの中央位置Prmを検出可能である。
【0056】
図14において、位置距離情報951に記憶された台車位置Pr1~Pr24および台車距離Dr1~Dr24のうち、例えば台車距離Dr12が最大値Drxであれば、これに対応する台車位置Pr12を曲線部11Cの中央位置Prmとする。台車位置Pr12は走行レール11の移動経路GL上の位置であるため、XY座標を確定できる。
曲線部11Cの中央位置Prmに対して、移動経路GLに沿ってπ/4=45度(曲線部11Cの中心角R=90度の半分)だけ戻ること、つまり移動経路GLを長さ2Rr(π/4)だけ辿ることで、移動経路側開始点Priを検出することができる。同様に、中央位置Prmから移動経路GLに沿って45度進むことで、移動経路側終了点Proを検出することができる。
【0057】
これらの移動経路側開始点Priおよび移動経路側終了点Proは、走行レール11の設計情報として既知であるが、改めて検出することで実際の位置を確定できる。
なお、以上の処理により、走行レール11の曲線部11Cの中央位置Prm、移動経路側開始点Priおよび移動経路側終了点Proが確定できる。しかし、鋼管1,2の表面形状は確定できていないので、同様の手順で曲線部2Cの中央位置Pcm、曲線部開始点Pciおよび曲線部終了点Pcoの座標を確定できない。これらの確定については後述する。
【0058】
前述した
図14では、位置距離情報951が対称線Lmで最大値Drxになる例(曲率中心Ccが曲率中心Crより鋼管1,2の内側にある形状)について説明したが、曲率中心Ccが曲率中心Crより鋼管1,2の外側にある形状についても同様の処理が可能である。
図15において、位置距離情報951に記憶された台車位置Pr1~Pr24および台車距離Dr1~Dr24のうち、例えば台車距離Dr12が最小値Drnであれば、これに対応する台車位置Pr12を曲線部11Cの中央位置Prmとする。さらに、曲線部11Cの中央位置Prmに対して、移動経路GLに沿ってπ/4=45度の長さを辿ることで、移動経路側開始点Priおよび移動経路側終了点Proを検出することができる。
【0059】
曲率中心Ccと曲率中心Crとが一致している場合、つまり曲線部2C,11Cが同心円状である場合、各々の間隔は一定であり、この間隔は直線部2F,11Fの間隔とも同じである。
ここで、本実施形態の台車21は、一対の支持点PF,PLが移動経路GLに沿って移動し、台車21が曲線部11Cにあるとき、中点PMは台車位置Prから内側に変位する。このため、曲線部2C,11Cの間隔が直線部2F,11Fの間隔と同じであっても、台車距離Drには曲線部11Cによる変動が生じる。
具体的には、台車21が直線部11Fを移動し、台車21の前方の支持点PFが曲線部11Cに入ると、中点PMが内側へ変位しはじめる。続いて、台車21の後方の支持点PLが曲線部11Cに入ると、中点PMの内側への変位が一定となる。台車21の前方の支持点PFが曲線部11Cを出て反対側の直線部11Fに入ると、中点PMの内側への変位が減少しはじめ、台車21の後方の支持点PLも直線部11Fに入ると、中点PMの内側への変位がない状態に戻る。
【0060】
図16において、前述した台車21の中点PMの内側への変位により、位置距離情報951に記憶された台車位置Prおよび台車距離Drの変化は偏平な台形状となる。すなわち、台形両側の水平な部分が支持点PF,PLともに直線部11Fにある状態、台形の斜めの部分が支持点PF,PLの一方だけが曲線部11Cにあり他方が直線部11Fにある状態、台形の上底が支持点PF,PLともに曲線部11Cにある状態である。
ここで、所定の閾値dDrを用いて斜めの部分の台車距離Drを検査することで、台形の両側で交差位置Prit,Protを検出することができる。前述の通り、曲線部11Cは対称線Lmに対して線対称であるため、両側の交差位置Prit,Protの中点を中央位置Prmとして検出できる。
【0061】
特定手段97は、以上の処理により、位置距離情報951として記憶された複数対の台車位置Prおよび台車距離Drから、走行レール11の曲線部11Cの対称線Lm、中央位置Prm、移動経路側開始点Priおよび移動経路側終了点Proを検出することができる。
一方、特定手段97は、以下の処理により、鋼管1,2の曲線部2Cの表面形状、中央位置Pcm、曲線部開始点Pciおよび曲線部終了点Pcoを検出する。
【0062】
図17において、位置距離情報951として記憶された複数の台車位置Prの各々について、移動経路GL上の台車位置Prから移動経路GLに直交内向きに、対応する台車距離Drの長さの点をプロットしてゆく。得られた点群を最小二乗法などで近似計算することで、鋼管1,2の直線部2Fおよび曲線部2Cの表面形状を示す軌跡Tcが得られ、軌跡Tcから曲線部2Cの曲率半径Rcおよび曲率中心Ccを確定できる。
軌跡Tcが得られれば、軌跡Tcと対称線Lmの交点により曲線部2Cの中央位置Pcmを検出でき、前述した移動経路側開始点Priおよび移動経路側終了点Proと同様の手順により、曲線部開始点Pciおよび曲線部終了点Pcoを検出することができる。
【0063】
〔実施形態の動作〕
本実施形態の溶接システム10においては、走行レール11を鋼管1,2に設置し、溶接ロボット20を装着し、制御装置9の制御のもとで自動溶接を行う。
本実施形態では、溶接ロボット20による自動溶接に先立って、本発明に基づく曲線部形状特定処理を行う。
【0064】
図18において、準備工程として、先ず作業者が、鋼管1,2の外周に走行レール11を設置し、走行レール11に溶接ロボット20を装着する(処理PA1)とともに、制御装置9に移動経路情報として走行レール11の形状(移動経路GL)を記憶させる(処理PA2)。
次に、検出工程として、作業者は制御装置9に検出動作を実行させる。
制御装置9は、走行レール11上で溶接ロボット20を走行させ(処理PA3)、走行レール11上の台車位置Prにおいて鋼管1,2までの台車距離Drを検出し(処理PA4)、台車位置Prと台車距離Drとの対を位置距離情報951に記録してゆく(処理PA5)。溶接ロボット20が検出範囲(例えば
図7の区画S1)を走行し終えていなければ、処理PA3~PA6を繰り返す。
検出工程に続いて、演算工程として、制御装置9は、得られた位置距離情報951と、準備工程で記憶しておいた移動経路情報とを用いて、曲線部形状情報を演算する(処理PA7)。演算工程の詳細は
図19で詳述する。
以上により曲線部形状情報が得られたら、作業者が同情報に基づいて溶接プランを作成し、同プランに基づいて制御装置9に自動溶接動作を実行させる(処理PA8)。
【0065】
図19において、演算工程は制御装置9により実行される下記処理を含む。
まず、制御装置9は、位置距離情報951から最大の台車距離Dr(最大値Drx)を選択し、対応する台車位置Prを通りかつ移動経路GLと直交方向の対称線Lmを計算する(処理PB1)。
次に、制御装置9は、曲線部11Cの移動経路GL上で対称線Lmに対して曲線部の中心角の1/2となる移動経路側開始点Priおよび移動経路側終了点Proを計算する(処理PB2)。
続いて、制御装置9は、各台車位置Prから移動経路GLと直交方向に各台車距離Drだけ離れた点を計算し(処理PB3)、得られた点を円弧近似して軌跡Tcを計算し、曲率中心Ccおよび曲率半径Rcを計算する(処理PB4)。
そして、対称線Lmと軌跡Tcとの交点から曲線部2Cの中央位置Pcmを計算し(処理PB5)、軌跡Tc上で対称線Lmに対して曲線部の中心角の1/2となる曲線部開始点Pciおよび曲線部終了点Pcoを計算する(処理PB6)。
【0066】
次に、軌跡Tcの曲率中心Cc(鋼管1,2の曲線部2Cにおける表面の曲率中心)が、移動経路GLの曲率中心Cr(走行レール11の曲線部11Cの曲率中心)よりも鋼管1,2の内側か否かを調べる(処理PB7)。
ここで、軌跡Tcの曲率中心Ccが移動経路GLの曲率中心Crよりも内側であれば(
図17の形状)、曲線部開始点Pciを変化開始位置とし、曲線部終了点Pcoを変化終了位置とする(処理PB8)。
一方、軌跡Tcの曲率中心Ccが移動経路GLの曲率中心Crよりも内側でなければ(同じまたは外側であれば)、移動経路側開始点Priを変化開始位置とし、移動経路側終了点Proを変化終了位置とする(処理PB9)。
【0067】
〔実施形態の効果〕
本実施形態によれば、鋼管1,2の曲線部2Cの正確な形状(軌跡Tc)および範囲(曲線部開始点Pciおよび曲線部終了点Pco)を効率よく測定できる。
とくに、走行レール11の曲線部11Cおよび鋼管1,2の曲線部2Cの対称性を利用し、対称線Lmを求めることで中心角の1/2を用いて曲線部開始点Pciおよび曲線部終了点Pcoを効率よく測定できる。
本実施形態では、2つの支持点PF,PLが移動経路GLに沿って移動する台車21を用いることで、曲線部11Cにおける中点PMの内側への変位により、曲線部11Cと曲線部2Cが同心円状であっても、対称線Lmを求めることができる。
本実施形態では、測定手段94としてカメラ23を用いることで、開先断面形状の測定用途と本発明に基づく鋼管形状特定方法とで兼用することができる。
【0068】
〔他の実施形態〕
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれる。
図20において、測定手段94としては、溶接ロボット20にレーザ測距装置941を設置し、鋼管1,2の表面に直交するレーザビーム942を用いて鋼管1,2から溶接ロボット20までの距離を測定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は溶接ロボットおよび鋼管形状特定方法に利用できる。
【符号の説明】
【0070】
1…鋼管、10…溶接システム、11…走行レール、11C…曲線部、11F…直線部、20…溶接ロボット、21…台車、22…溶接トーチ、221…溶接ワイヤ、23…カメラ、24…支持アーム、25…照明装置、251…レーザ光束、252…断面形状、253…測定部位、2C…曲線部、2Cc…曲線部、2F…直線部、3…接続端、30…支持機構、31…退避機構、32…移動支持機構、33…回動支持機構、331…ブラケット、332…パネル、333…ホルダ、34…角調整機構、341…軸線、35…トーチ角回動機構、351…軸線、5…建て入れ治具、9…制御装置、91…溶接動作制御部、92…台車移動制御部、93…形状特定部、94…測定手段、941…レーザ測距装置、942…レーザビーム、95…記憶手段、951…位置距離情報、96…記憶制御手段、97…特定手段、At…トーチ角、Aw…角、Cc…曲率中心、Cr…曲率中心、Dc…延長方向、dDr…閾値、Dh…方向、Dm…走行方向、Dr…台車距離、Dr12…台車距離、Dr3…台車距離、Drn…最小値、Drx…最大値、GL…移動経路、Lci…曲線部開始線、Lco…曲線部終了線、Lm…対称線、Lri…移動経路側開始線、Lro…移動経路側終了線、P11…始端位置、P12…中間位置、P13…中間位置、P14…中間位置、P15…中間位置、P16…終端位置、P21…始端位置、P22…中間位置、P31…始端位置、P32…中間位置、P41…始端位置、P42…中間位置、Pci…曲線部開始点、Pcm…中央位置、Pco…曲線部終了点、Pe…退避位置、PF…支持点、PL…支持点、PM…中点、Pr…台車位置、Pr12…台車位置、Pr3…台車位置、Pri…移動経路側開始点、Prit…交差位置、Prm…中央位置、Pro…移動経路側終了点、Pw…溶接位置、Rc…曲率半径、Rr…曲率半径、S1…区画、S2…区画、S3…区画、S4…区画、Tc…軌跡。
【手続補正書】
【提出日】2021-08-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面形状に直線部および曲線部を有する鋼管の外周を移動する溶接ロボットにより前記鋼管を溶接する溶接システムであって、
前記鋼管から前記溶接ロボットまでの距離を測定する測定手段と、
前記測定手段による測定の結果に基づき、前記曲線部の形状を示す曲線部形状情報を特定する特定手段と、
を備え、
前記特定手段は、前記溶接ロボットの移動に伴って前記測定手段により測定された前記距離が変化した場合に、前記溶接ロボットの移動経路上の位置を示すロボット位置情報を用いて前記曲線部の一端と他端との間の曲線部中央位置を取得することにより、前記曲線部形状情報を特定することを特徴とする溶接システム。
【請求項2】
断面形状に直線部および曲線部を有する鋼管の外周に沿った移動経路上を移動する溶接ロボットにより前記鋼管を溶接する溶接システムであって、
前記鋼管から前記溶接ロボットまでの距離を測定する測定手段と、
記憶手段と、
少なくとも前記移動経路の形状を示す移動経路形状情報を前記記憶手段に記憶させる記憶制御手段と、
前記測定手段による測定の結果に基づき、前記曲線部の形状を示す曲線部形状情報を特定する特定手段と、
を備え、
前記記憶制御手段は、前記溶接ロボットの前記移動経路上の位置をそれぞれ示す複数のロボット位置情報と、前記ロボット位置情報で示される複数の位置それぞれで前記測定手段が測定した距離をそれぞれ示す複数の距離情報と、をそれぞれ対応付けて位置距離情報として前記記憶手段に記憶させ、
前記特定手段は、前記記憶手段に記憶された前記移動経路形状情報及び前記位置距離情報を用い、前記曲線部形状情報を特定することを特徴とする溶接システム。
【請求項3】
前記特定手段は、前記記憶手段に記憶された前記移動経路形状情報及び前記位置距離情報を用いて前記曲線部の一端と他端との間の曲線部中央位置を取得することにより、前記曲線部形状情報を特定することを特徴とする請求項2に記載の溶接システム。
【請求項4】
前記特定手段は、前記溶接ロボットの移動に伴って前記測定手段により測定された距離が長くなり始めた場合の前記ロボット位置情報が示す位置を変化開始位置とし、その後の前記溶接ロボットの移動に伴って前記測定手段により測定された距離が変化しなくなり始めた場合の前記ロボット位置情報が示す位置を変化終了位置とし、前記変化開始位置および前記変化終了位置に基づき、前記曲線部中央位置を取得することを特徴とする請求項1または請求項3に記載の溶接システム。
【請求項5】
前記特定手段は、取得した前記曲線部中央位置に基づいて前記曲線部の両端にある曲線部開始点及び曲線部終了点を求めることにより、前記曲線部形状情報を特定することを特徴とする請求項1、請求項3、および請求項4のいずれか一項に記載の溶接システム。
【請求項6】
前記曲線部形状情報は、前記曲線部の曲率中心、又は、前記曲線部の曲率半径を含むことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の溶接システム。
【請求項7】
前記溶接ロボットは、前記溶接ロボットの移動経路に沿って移動する台車を有し、
前記測定手段が測定する距離は、前記台車の移動方向に垂直な方向の距離であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の溶接システム。
【請求項8】
前記測定手段が、前記台車に設けられていることを特徴とする請求項7に記載の溶接システム。
【請求項9】
断面形状に直線部および曲線部を有する鋼管の外周に、所定の移動経路に沿って移動する台車を有する溶接ロボットを設置する準備工程と、
前記鋼管の前記曲線部に臨む区間で、前記台車を前記移動経路に沿って移動させつつ、前記移動経路上の複数の台車位置で、それぞれ前記台車から前記鋼管までの距離を示す台車距離を検出し、検出した前記台車距離と前記台車位置とを対にして位置距離情報として記録する検出工程と、
前記位置距離情報に基づいて、前記曲線部の形状を示す曲線部形状情報を演算する演算工程と、を有し、
前記準備工程では、前記移動経路の形状を示す移動経路形状情報を記憶しておき、
前記検出工程では、前記移動経路の直交方向に前記台車から前記鋼管までの距離を検出し、
前記演算工程では、前記位置距離情報および前記移動経路形状情報に基づいて、複数の前記台車位置ごとに、前記台車位置から前記移動経路の直交方向に前記台車距離だけ離れた点を求め、得られた複数の点を近似処理して前記曲線部形状情報を演算する、鋼管形状特定方法。
【請求項10】
前記曲線部は円弧状であり、
前記演算工程の前記近似処理は最小二乗法による円弧近似であり、
前記曲線部形状情報として前記曲線部の曲率中心および曲率半径を求める
請求項9に記載の鋼管形状特定方法。
【請求項11】
前記曲線部形状情報として前記曲線部の軌跡を求め、
前記位置距離情報として記録された複数の前記台車距離および前記台車位置の対のうち、前記台車距離が最大値または最小値となる対を選択し、選択した対の前記台車位置を通り前記移動経路に直交する対称線を求め、
前記対称線と前記軌跡の交点を曲線部中央位置とし、
前記鋼管の前記曲線部を挟む一対の前記直線部のなす中心角を求め、
前記軌跡上で前記対称線に対して前記中心角の2分の1となる曲線部開始点および曲線部終了点を求める、
請求項10に記載の鋼管形状特定方法。
【請求項12】
前記曲線部の曲率中心が、前記移動経路の曲率中心よりも前記鋼管の内側にあるとき、
前記曲線部開始点を変化開始位置とし、前記曲線部終了点を変化終了位置とする、
請求項11に記載の鋼管形状特定方法。
【請求項13】
前記曲線部の曲率中心が、前記移動経路の曲率中心よりも前記鋼管の外側にあるとき、
前記移動経路上で前記対称線に対して前記中心角の2分の1となる移動経路側開始点および移動経路側終了点を変化開始位置および変化終了位置とする、
請求項11に記載の鋼管形状特定方法。
【請求項14】
前記台車が、前記移動経路上を通りかつ互いに所定距離離れた一対の支持点を有し、
前記台車距離が、一対の前記支持点を結ぶ線分の中点から前記支持点を結ぶ線分に直交する方向に前記鋼管までの距離である、
請求項9から請求項13のいずれか一項に記載の鋼管形状特定方法。