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  • 特開-農業用二重式ハウス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096247
(43)【公開日】2022-06-29
(54)【発明の名称】農業用二重式ハウス
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/24 20060101AFI20220622BHJP
【FI】
A01G9/24 A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020209247
(22)【出願日】2020-12-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】592192907
【氏名又は名称】日建リース工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】関山 正勝
(72)【発明者】
【氏名】大森 道生
(72)【発明者】
【氏名】服部 将平
(72)【発明者】
【氏名】境 宏樹
【テーマコード(参考)】
2B029
【Fターム(参考)】
2B029PA01
2B029RA01
(57)【要約】
【課題】栽培対象の近傍周囲のみを区画するハウスに用いるシートの展開・格納の作業効率を向上させること。
【解決手段】第1のハウス10と、第1のハウス10内に設けた栽培対象Bの近傍周囲をシート21で取り囲んで局所空間Aを形成可能な、第2のハウス20と、第2のハウス20の長手方向の両端に設ける、一対の展開装置30と、一対の展開装置30間に架け渡し、途上でシート21を直接又は間接的に固定してある架設材40と、を少なくとも具備する。展開装置30は第2のハウス20の長手方向を軸方向として回動可能に構成したアーム32を有し、アーム32の倒伏時には、シート21によって局所空間Aが形成され、アーム32の起立時には、シート21の裾部が持ち上がって、局所空間Aに解放部が形成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
農業用二重式ハウスであって、
第1のハウスと、
前記第1のハウス内に設けた栽培対象の近傍周囲をシートで取り囲んで局所空間を形成可能な、第2のハウスと、
前記第2のハウスの長手方向の両端に設ける、一対の展開装置と、
前記一対の展開装置間に架け渡し、途上で前記シートを直接又は間接的に固定してある、架設材と、を少なくとも具備し、
前記展開装置は、
前記シートを連結するアームを少なくとも有し、
前記アームの一端は、前記シートを直接又は間接的に固定しており、
前記アームの他端は、前記第2のハウスの長手方向を軸方向として回動可能に構成して、前記アームを起立および倒伏自在とし、
前記アームの倒伏時には、前記シートによって前記局所空間が形成され、
前記アームの起立時には、前記シートの裾部が持ち上がって、前記局所空間に解放部が形成されることを特徴とする、
農業用二重式ハウス。
【請求項2】
前記第2のハウスの長手方向両端に設けた前記展開装置のうち少なくとも何れか一方において、
前記アームを、前記第2のハウスの幅方向に離間させて二基取り付けてあることを特徴とする、
請求項1に記載の農業用二重式ハウス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用の二重式ハウスに関し、より詳細には、外側の第1のハウスの内部に小型の第2のハウスを設けるにあたり、当該第2のハウスの壁面を構成するシートの展開・格納の作業効率を向上させた二重式ハウスに関する。
【背景技術】
【0002】
農業用の二重式ハウスとして、本願出願人は特許文献1に記載の発明を着想している。
特許文献1には、ビニールハウスの内部空間のうち栽培対象の近傍周囲を取り囲むように区画された空間からなる、温調空間を設け、この温調空間の中に暖冷気を送り込む空調機と、温調空間内の暖冷気の流れを生成する送風機を設けることで、温調空間内の暖冷気を循環させて温調空間を均一に温度調整する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6768168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した温調空間は、栽培対象の近傍周囲のみをシートで取り囲んで形成する比較的小断面な構造のため、特許文献1の図2にも示すように、アーチ状の支柱材を、高床ベンチ(栽培ベッド)の長手方向に間隔を空けて取りつけ、この支柱材にクリップなどを用いてシートを取り付けるような、簡易的な構造が一般的であった。
しかし、栽培対象の手入れを要する場合や、夏場に温度調整が過剰となった温調空間の閉塞を解放しようとする場合に、展開済みのシートの格納作業を行うにあたって以下に記載する問題のうち少なくとも何れか1つの問題を有していた。
(1)シートの格納作業を全て人力で行う必要があり、長尺状のシートを巻き取って格納する場合などでは、複数人で作業を行う必要があった。
(2)格納したシートが再度垂れ落ちないように、適宜クリップなどでのシートの留め直し作業が発生するため、作業効率が悪い。
【0005】
よって、本願発明は、栽培対象の近傍周囲のみを区画する局所空間に用いるシートの展開・格納の作業効率を向上可能な手段の提供を目的の一つとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべくなされた本願の第1発明は、農業用二重式ハウスであって、第1のハウスと、前記第1のハウス内に設けた栽培対象の近傍周囲をシートで取り囲んで局所空間を形成可能な、第2のハウスと、前記第2のハウスの長手方向の両端に設ける、一対の展開装置と、前記一対の展開装置の前記アーム間に架け渡し、途上で前記シートを直接又は間接的に固定してある、架設材と、を少なくとも具備し、前記展開装置は、前記シートを連結するアームを少なくとも有し、前記アームの一端は、前記シートを直接又は間接的に固定しており、前記アームの他端は、前記第2のハウスの長手方向を軸方向として回動可能に構成して、前記アームを起立および倒伏自在とし、前記アームの倒伏時には、前記シートによって前記局所空間が形成され、前記アームの起立時には、前記シートの裾部が持ち上がって、前記局所空間に解放部が形成されることを特徴とする。
また、本願の第2発明は、前記第1発明において、前記第2のハウスの長手方向両端に設けた前記展開装置のうち少なくとも何れか一方において、
前記アームを、前記第2のハウスの幅方向に離間させて二基取り付けてあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、以下に記載する効果のうち、少なくとも何れか1つの効果を奏する。
(1)アームの端部に、局所空間を形成するシートを直接または間接的に連結することにより、アームの回動動作のみでシートを移動させることができ、局所空間の閉塞・解放を容易に切り換えできる。
(2)局所空間の長手方向両端に設けた展開装置のアーム間に架設した架設材に、シートを直接または間接的に連結することにより、長尺の局所空間の断面形状を保持しつつ、シートの展開動作や格納動作を行う際のシートの位置ズレをさらに抑制できる。
(3)展開装置において、アームを第2のハウスの幅方向に離間させて二基取り付けておくことで、二基のアームの起立時に、第2のハウスの頂部と各アームとで囲まれた空間を、持ち上げたシートを収容しておく空間(収容空間)として使用することができる。この収容空間にシートの裾部を収容しておけば、アームを倒伏させないかぎりシートの裾部が垂れ落ちる事も無いため、意図せず局所空間が再形成されてしまう現象を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る二重式ビニールハウスの全体構成を示す概略側面図。
図2】本発明に係る展開装置のアームの設置態様を示す概略平面図。
図3】本発明に係る展開装置の使用イメージを示す概略正面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施例について説明する。
【実施例0010】
<1>全体構成(図1
図1に示すように、本実施例に係る二重式農業ハウスは、第1のハウス10と、当該第1のハウス10の内部に別途構築した第2のハウス20と、当該第2のハウス20の壁面を構成するシート21(フィルムも含まれる)の展開を行う、展開装置30を設けてあることを特徴とする。
以下、各構成要素の詳細について説明する。
【0011】
<2>第1のハウス(図1
第1のハウス10は、当該ハウス内で作物の栽培を行うための農業施設である。
第1のハウス10は、一般的なビニールハウスやプラスチックハウスに限られず、一般的な建築物なども含まれる。
第1のハウス10は、強風や積雪などで破損することのないよう、所定の強度を持たせた構造物とすることが一般的である。
【0012】
<3>第2のハウス(図1
第2のハウス20は、第1のハウス10内に新たに設置する小型のビニールハウスである。
第2のハウス20は、栽培対象Bの近傍周囲を、ビニールハウスの壁面を構成するシート21で取り囲むことで、第1のハウス10内に局所空間Aを形成するための構造物である。
シート21は空気を通さない部材であることが好ましく、かつ可撓性を有する部材、例えばビニールシートなどを用いることができる。
また、シート21に透明の部材を用いると、局所空間Aの内部を視認できたり、日光の取り込みを許容できたりする点で好適である。
【0013】
<3.1>局所空間
局所空間Aは、第2のハウス20の内部空間にあたる空間である。
局所空間Aは、空間内部にエアコン、ボイラー、ストーブ、保温器その他の暖冷房から暖冷気を別途送り込んだり、二酸化炭素ガスを送り込んだりすることで、栽培対象Bの近傍周囲のみを局所的に生育に好ましい環境へと調整する空間として使用される。
本実施例では、高設栽培用の高床ベンチCの周囲を取り囲むように配置したシート21と地面とで、縦断面視して閉塞した局所空間Aが形成されている。
【0014】
また、局所空間Aは、本発明において、完全に密閉された空間であることを要するものではなく、シート21の裾部22と地面との間に意図せず隙間が生じている態様や、局所空間Aの長手方向端部が解放してある態様を本発明から除外するものではない。
【0015】
<3.2>第1のハウスとの差異点
第2のハウス20は、第1のハウス10と異なり、強風や積雪などによる破損の恐れを懸念する必要が少ないことから、剛性の高い骨組を用いたりする必要がなく、簡素な構造とすることで極力コストをかけない態様とすることが望ましい。
そのため、このような簡素な構造を採用しながら、シート21の展開・格納の作業効率を向上させることが、本発明の主要な解決課題となる。
【0016】
<4>展開装置(図1図2
展開装置30は、シート21の展開・格納を行うための装置である。
本発明では、第2のハウス20を構成するシート21を展開可能な展開装置30を設けることで、適宜、局所空間Aを閉塞・解放可能に構成している。
本実施例では、第1のハウス10の奥行き方向に複数並べて配置した高床ベンチCの連続体の両端にそれぞれ展開装置30を設けており、この展開装置30を手動で動作させることで、第2のハウス20を構成するシート21の展開および格納を切り換え可能としている。
本実施例では、展開装置30を、地面に設置する架台31と、前記架台31に回動自在に取り付けたアーム32と、を少なくとも含んで構成している。以下、各部材の詳細について説明する。
【0017】
<4.1>架台(図1
架台31は、アーム32を取り付けるための構造物である。
本発明において、架台31の形状・構造等は特段限定しない。
本実施例では、仮設足場に用いる鋼管や縦枠等の部材を枠状に組み立てて架台31としている。
架台31の高さは、高床栽培や露地栽培が適用される栽培対象Bの高さによって適宜決めれば良い。
【0018】
<4.2>アーム(図1
アーム32は、当該アーム32の回動動作によってシート21を移動させることにより、局所空間Aの閉塞と解放とを切り換え可能とするための部材である。
アーム32は長尺部材で構成することができる。
アーム32の一端は、架台31に対し、直接的または間接的に回動可能に連結する回動軸33を設ける。この回動軸33の軸方向は、第2のハウス20の長手方向に設定している。
また、アーム32の他端は、シート21を直接的または間接的に固定した状態とする。
【0019】
<4.2.1>アームの構成例(図1
本実施例では、アーム32および回動軸33として、略三角形状のブラケットを用い、当該ブラケットの水平材をアーム32、鉛直材を回動軸33に見立てて、架台31の上部に架け渡した単菅と回動軸33と回動自在に連結している。
なお、後述するアーム32の倒伏状態の際に、栽培対象Bがシート21と干渉しない程度に局所空間Aが確保されるよう、アーム32を取り付ける架台31の高さや、架台31に対する回動軸33の連結高さは適宜調整しておく必要がある。
【0020】
<4.2.2>複数のアームの設置(図2
本実施例では、さらに、架台31の幅方向に間隔を空けて、アーム32を二基配置している。間隔を空けて二基のアーム32を設けた理由および作用効果は、後述する<6.2>および<6.3>で説明する。
【0021】
<5>架設材
本実施例ではさらに、アーム32の他端に、対向する他方の展開装置30のアーム32の他端との間を連結する、架設材40を張設している。
架設材40には、棒材や紐材などを用いることができる。
本実施例では、架設材40にワイヤを用い、このワイヤに緊張力を付加した状態で張設している。また、ワイヤの途上では、シート21を適宜クリップ等で挟んで固定している。
当該構成とすることで、長尺の局所空間Aの断面形状を保持しつつ、シート21の展開動作や格納動作を行う際のシート21の位置ズレを抑制している。
【0022】
<6>使用イメージ(図3
次に、図3を参照しながら、本発明に係る農業用二重式ハウスの使用イメージについて説明する。
【0023】
<6.1>倒伏状態(局所空間の閉塞時)(図3(a))
アーム32を倒伏させた状態では、シート21の裾部22が地面に接触した状態をしておくことで、縦断面形状が略矩形を呈する局所空間Aが形成される。
この状態で、局所空間Aに暖冷気や二酸化炭素などを送り込むことで、局所空間Aのみを、栽培対象Bの生育に適した環境に調整することができる。
このように、栽培対象Bの近傍周囲の環境のみを調整することで、第1のハウス10全体を調整する場合と比較して、空調コスト等を低減させることができる。
【0024】
<6.2>起立状態(局所空間の解放時)(図3(b))
育成者による栽培対象Bの手入れを要する場合や、局所空間Aの暖冷房が過剰になった場合などには、倒伏してあるアーム32を起立させる。
アーム32を起立させた状態では、シート21の裾部22がアーム32に引き上げられて地面から離隔するため、局所空間Aの内外を連通する解放部Dが形成される。
この時点で、局所空間Aの閉塞は解かれることになり、局所空間Aを通気させて所望の環境へと調整することができる。
【0025】
<6.3>シートの収納(図3(b))
両アーム32を起立させた状態では、両アーム32で挟まれた空間がシート21の頂部の上方に形成されることになる。
この空間を、局所空間Aの側面等を構成するシート21の裾部22を収容しておく収容空間Eとすることにより、一旦収容したシート21の裾部22が垂れ落ちて局所空間Aが意図せず再形成してしまう恐れを防止することができる。
【実施例0026】
前記した実施例1では、第1のハウス10の中に、局所空間Aを構成する第2のハウス20を設けた二重式の農業用ハウスを構成していたところ、本発明では、屋外に第2のハウス10のみを設け、この第2のハウス20に用いるシート21の展開を行う展開装置30を設けた構成とすることもできる(図示せず)。
【0027】
本実施例における、第2のハウス20で区画される局所空間Aは、実施例1に示す第1のハウス10で使用されるような大型のビニールハウスを含むものでは無く、作業員の人力によって、シートの取扱いが可能な程度の大きさであり、5m以内、より好ましくは3m以内程度の横幅を有するサイズを意図している。
【0028】
すなわち、本実施例に係る発明は、高床栽培または露地栽培を行う栽培対象の近傍周囲をシートで取り囲んで、長手形状を呈する局所空間を形成するための農業用ハウスのシートの展開構造であり、前記局所空間の長手方向の両端に設ける一対の展開装置と、前記一対の展開装置間に架け渡し、途上で前記シートを直接又は間接的に固定してある架設材と、を少なくとも具備してなり、前記展開装置は、前記シートを連結するアームを少なくとも有し、前記アームの一端は、前記シートを直接又は間接的に固定しており、前記アームの他端は、前記局所空間の長手方向を軸方向として回動可能に構成して、前記アームを起立および倒伏自在に構成したことを特徴とする。
上記構成により、前記アームの倒伏時には、前記シートによって前記局所空間が形成され、前記アームの起立時には、前記シートの裾部が持ち上がって、前記局所空間に解放部が形成されることで、局所空間内の閉塞・解放を人力で容易に行うことができる。
また、本実施例においても、アームを二基設けて前記アームの起立時に収容空間を形成するよう構成してもよい。
【符号の説明】
【0029】
10 第1のハウス
20 第2のハウス
21 シート
22 裾部
30 展開装置
31 架台
32 アーム
33 回動軸
40 架設材
A 局所空間
B 栽培対象
C 高床ベンチ
D 開放部
E 収容空間
図1
図2
図3