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特開2022-96274切断器、鉗子、エンドエフェクタ、医療用ツール、医療システム、ロボット、手術用医療ロボット、把持・切断方法及び携帯用手術器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096274
(43)【公開日】2022-06-29
(54)【発明の名称】切断器、鉗子、エンドエフェクタ、医療用ツール、医療システム、ロボット、手術用医療ロボット、把持・切断方法及び携帯用手術器
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/32 20060101AFI20220622BHJP
   A61B 18/12 20060101ALI20220622BHJP
   A61B 18/18 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
A61B17/32
A61B18/12
A61B18/18 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020209292
(22)【出願日】2020-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】504177284
【氏名又は名称】国立大学法人滋賀医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】谷 徹
(72)【発明者】
【氏名】山田 篤史
(72)【発明者】
【氏名】仲 成幸
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160FF14
4C160GG06
4C160GG08
4C160GG24
4C160JK01
4C160KK03
4C160KK04
4C160KK19
4C160KL01
(57)【要約】
【課題】デバイスの変更や差し替えを行うことなく対象部位を把持し、該対象部位を切断できる切断器、鉗子、エンドエフェクタ、医療用ツール、医療システム、ロボット、手術用医療ロボット、把持・切断方法及び携帯用手術器を提供することを目的とする。
【解決手段】鉗子1は、開閉可能に組付けられた上顎部14及び下顎部116と、上顎部14を下顎部116に向かって回動させる上顎用ワイヤー16aとを有する把持機構17と、上顎部14に併設された切断カッター15と、切断カッター15を上顎部14の回動と同方向に回動させるカッター用ワイヤー16bとを有する切断機構10が設けられ、把持機構17により生体組織を把持した状態において、切断機構10によって切断カッター15を回動させ、下顎部116と接合することにより生体組織を切断する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能に組付けられた第1把持部及び第2把持部と、前記第1把持部を前記第2把持部に向かって回動させる把持部回動手段とを有する把持機構と、
前記第1把持部に併設された切断部と、前記切断部を前記第1把持部の回動と同方向に回動させる切断部回動手段とを有する切断機構が設けられ、
前記把持機構により対象部位を把持した状態において、前記切断機構によって前記切断部を回動させ、前記第2把持部と接合することにより前記対象部位を切断する
切断器。
【請求項2】
開閉可能に組付けられた第1把持部及び第2把持部と、前記第1把持部を前記第2把持部に向かって回動させる把持部回動手段とを有する把持機構と、
前記第1把持部に併設された切断部と、前記切断部を前記第1把持部の回動と同方向に回動させる切断部回動手段とを有する切断機構が設けられ、
前記第2把持部に対して、前記第1把持部及び前記切断部を回動可能に軸支する回動軸が備えられ、
前記把持部回動手段は、前記回動軸によって軸支された前記第1把持部において前記回動軸から所定間隔を隔てた箇所を移動させる把持部移動手段で構成され、
前記切断部回動手段は、前記回動軸によって軸支された前記切断部において前記回動軸から所定間隔を隔てた箇所を移動させる切断部移動手段で構成され、
前記把持部移動手段及び前記切断部移動手段は、長尺状部材で構成されるとともに、長尺状の長手方向に沿って移動させ、
前記把持部移動手段の前記長手方向の移動によって前記第1把持部を回動させて前記把持機構により対象部位を把持した状態において、前記切断部移動手段の前記長手方向の移動によって前記切断部を回動させ、前記第2把持部と接合することにより前記対象部位を切断する
切断器。
【請求項3】
前記長尺状部材は可撓性を有する可撓性長尺部材である
請求項2に記載の切断器。
【請求項4】
前記可撓性長尺部材で構成された前記把持部移動手段は、前記第1把持部において前記回動軸から所定間隔を隔てた2つの所定箇所の一方に接続され、前記長手方向における引張り方向に移動させる第1把持部移動手段と、他方の所定箇所に接続され、前記長手方向における引張り方向に移動させる第2把持部移動手段とを有し、
前記可撓性長尺部材で構成された前記切断部移動手段は、前記切断部において前記回動軸から所定間隔を隔てた2つの所定箇所の一方に接続され、前記長手方向における引張り方向に移動させる第1把持部移動手段と、他方の所定箇所に接続され、前記長手方向における引張り方向に移動させる第2把持部移動手段とを有する
請求項3に記載の切断器。
【請求項5】
前記可撓性長尺部材で構成された前記把持部移動手段及び前記切断部移動手段は、所定箇所を前記長手方向における引張り方向に移動させ、
前記所定箇所が前記長手方向における押し込み方向に移動する向きで前記第1把持部を付勢する把持付勢部と、前記所定箇所が前記押し込み方向に移動する向きで第切断部を付勢する切断付勢部とが備えられた
請求項3に記載の切断器。
【請求項6】
前記把持部移動手段及び前記切断部移動手段は、所定箇所を前記長手方向における押し込み方向及び引張方向に移動させる
請求項3に記載の切断器。
【請求項7】
前記第2把持部に対する前記第1把持部の回動、及び前記切断部の回動のうち少なくとも一方を外部に通知する通知部が設けられた
請求項2乃至請求項6のうちいずれかに記載の切断器。
【請求項8】
前記通知部の通知量を調整する通知量調整手段が備えられた
請求項7に記載の切断器。
【請求項9】
前記第1把持部において前記対象部位を把持する把持箇所及び前記切断部における切断刃の近傍のうち少なくとも一方と、前記第2把持部において前記対象部位を把持する把持箇所とに、電磁波を照射するための電極が設けられた
請求項2乃至請求項8のうちいずれかに記載の切断器。
【請求項10】
前記電極は、
中心電極と、絶縁体を介して該中心電極を囲繞する外側電極とが備えられた同軸電極であり、
前記電磁波を照射する照射装置と前記電極とを接続する同軸ケーブルを複数に並列分岐させるとともに、前記同軸ケーブルの中心導体と外部導体に前記同軸電極のそれぞれが電気的に接続された
請求項9に記載の切断器。
【請求項11】
前記同軸電極は、前記同軸ケーブルに対して逆極性に接続された
請求項10に記載の切断器。
【請求項12】
請求項2乃至請求項11までのうちいずれかに記載された切断器と、
前記把持部移動手段と前記切断部移動手段をそれぞれ独立して駆動する駆動ユニットと、
該駆動ユニットに駆動信号を印加するように接続された医療用ロボットとを有する
医療システム。
【請求項13】
請求項2乃至請求項11までのうちいずれかに記載された切断器に有線及び/又は無線で接続された入出力ユニットと、
リアルタイムに操作信号を受信する入力ユニットと、
前記操作信号に基づき予め定められた操作プログラムを実行する演算ユニットと、
該演算ユニットからの出力に基づき前記把持部移動手段の前記長手方向の移動によって前記第1把持部と前記第2把持部により前記対象部位を把持する把持駆動信号及び/又は前記切断部移動手段の前記長手方向の移動によって前記切断部で前記対象部位を切断する切断駆動信号を発生する出力ユニットとを備えた
ロボット。
【請求項14】
請求項13に記載のロボットを備え、
前記出力ユニットは、前記切断器を機械的に駆動する外部に設けられた駆動ユニットに駆動信号を提供する
手術用医療ロボット。
【請求項15】
請求項2乃至請求項11までのうちいずれかに記載された切断器と、
前記切断器における少なくとも前記第2把持部をロボットアームの先端に取付ける取付部と、
ロボットアーム側において前記把持部移動手段を駆動する駆動機構と接続する把持部側接続部と、
ロボットアーム側において前記切断部移動手段を駆動する駆動機構と接続する切断部側接続部が備えられた
エンドエフェクタ。
【請求項16】
請求項2乃至請求項8までのうちいずれかに記載された切断器を備え、
前記対象部位は生体組織であるとともに、
前記把持部移動手段を駆動操作する把持操作部と、
前記切断部移動手段を駆動操作する切断操作部とが備えられ、
前記把持操作部を操作して前記生体組織を第1把持部と第2把持部とで把持し、前記切断操作部を操作して前記生体組織を切断部で切断する
鉗子。
【請求項17】
請求項9乃至請求項11までのうちいずれかに記載された切断器を備え、
前記対象部位は生体組織であるとともに、
前記把持部移動手段を駆動操作する把持操作部と、
前記切断部移動手段を駆動操作する切断操作部とが備えられ、
前記把持操作部を操作して前記生体組織を第1把持部と第2把持部とで把持し、
前記電極から電磁波を照射して生体組織の少なくとも一部を凝固させ、
前記切断操作部を操作して前記生体組織を切断部で切断する
鉗子。
【請求項18】
請求項2乃至請求項8までのうちいずれかに記載された切断器を用い、
前記把持部移動手段を操作して前記第1把持部を前記第2把持部に向かって回動し、前記第1把持部と前記第2把持部とで前記対象部位を把持する工程と、
前記切断部移動手段を操作して前記第1把持部に併設された前記切断部を前記第1把持部に沿って移動させ、前記第2把持部と接合することにより前記把持された対象部位を切断する工程を有する
把持・切断方法。
【請求項19】
請求項9乃至請求項11までのうちいずれかに記載された切断器を用いるとともに、前記対象部位は生体組織であり、
前記把持部移動手段を操作して前記第1把持部を前記第2把持部に向かって回動し、前記第1把持部と前記第2把持部とで前記対象部位を把持する工程と、
前記電極から電磁波を照射して生体組織の少なくとも一部を凝固させる工程と、
前記切断部移動手段を操作して前記第1把持部に併設された前記切断部を前記第1把持部に沿って移動させ、前記第2把持部と接合することにより前記把持及び凝固された対象部位を切断する工程を有する
把持・切断方法。
【請求項20】
開閉可能に組付けられた第1把持部及び第2把持部と、前記第1把持部を前記第2把持部に向かって回動させる把持部回動手段とを有する把持機構と、
前記第1把持部に併設された切断部と、前記切断部を前記第1把持部の回動と同方向に回動させる切断部回動手段とを有する切断機構が設けられ、
前記第2把持部に対して、前記第1把持部及び前記切断部を回動可能に軸支する回動軸が備えられ、
前記把持部回動手段は、前記回動軸によって軸支された前記第1把持部において前記回動軸から所定間隔を隔てた箇所を移動させる把持部移動手段で構成され、
前記切断部回動手段は、前記回動軸によって軸支された前記切断部において前記回動軸から所定間隔を隔てた箇所を移動させる切断部移動手段で構成され、
前記把持部移動手段及び前記切断部移動手段は、長尺状部材で構成されるとともに、長尺状の長手方向に沿って移動させ、
前記把持部移動手段を駆動する把持側駆動部と、前記切断部移動手段を駆動する切断側駆動部とが備えられ、
前記把持側駆動部によって駆動する前記把持部移動手段により前記第1把持部を回動させて前記把持機構により対象部位を把持した状態において、
前記切断側駆動部によって駆動する前記切断部移動手段により前記切断部を回動させ、前記第2把持部と接合することにより前記対象部位を切断する
ロボット。
【請求項21】
開閉可能に組付けられた第1把持部及び第2把持部と、前記第1把持部を前記第2把持部に向かって回動させる把持部回動手段とを有する把持機構と、
前記第1把持部に併設された切断部と、前記切断部を前記第1把持部の回動と同方向に回動させる切断部回動手段とを有する切断機構が設けられ、
前記第2把持部に対して、前記第1把持部及び前記切断部を回動可能に軸支する回動軸が備えられ、
前記把持部回動手段は、前記回動軸によって軸支された前記第1把持部において前記回動軸から所定間隔を隔てた箇所を移動させる把持部移動手段で構成され、
前記切断部回動手段は、前記回動軸によって軸支された前記切断部において前記回動軸から所定間隔を隔てた箇所を移動させる切断部移動手段で構成され、
前記把持部移動手段及び前記切断部移動手段は、長尺状部材で構成されるとともに、長尺状の長手方向に沿って移動させ、
前記把持部移動手段を駆動する把持側駆動部と、前記切断部移動手段を駆動する切断側駆動部とが備えられ、
前記把持側駆動部によって駆動する前記把持部移動手段により前記第1把持部を回動させて前記把持機構により切断対象となる生体組織を把持した状態において、
前記切断側駆動部によって駆動する前記切断部移動手段により前記切断部を回動させ、前記第2把持部と接合することにより前記生体組織を切断する
携帯用手術器。
【請求項22】
把持機構と切断機構とを有するエンドエフェクタと、
該エンドエフェクタを駆動する駆動ユニットとが備えられ、
前記把持機構は、開閉可能に組付けられた第1把持部及び第2把持部と、前記第1把持部を前記第2把持部に向かって回動させる把持部回動手段とを有し、
前記切断機構は、前記第1把持部に併設された切断部と、前記切断部を前記第1把持部の回動と同方向に回動させる切断部回動手段とを有し、
前記駆動ユニットは、
前記第1把持部と前記第2把持部と前記切断部を組み合わせ駆動することにより、穿孔機能、把持機能、凝固機能、切断機能、及び開排機能のうち少なくともひとつを選択的に提供する
医療用ツール。
【請求項23】
開閉可能に組付けられた第1把持部及び第2把持部と、前記第1把持部を前記第2把持部に向かって回動させる把持部回動手段とを有する把持機構と、
前記第1把持部に併設された切断部と、前記切断部に前記第1把持部の回動と同方向に回動させる切断部回動手段とを有する切断機構が設けられ、
前記第2把持部に対して、前記第1把持部及び前記切断部を回動可能に軸支する回動軸が備えられ、
前記把持部回動手段と前記切断部回動手段をそれぞれ独立して駆動する駆動ユニットと、
該駆動ユニットに駆動信号を印加することによって、対象部位を把持した状態で、前記対象部位を、凝固及び切断するように構成された医療用ロボットを有する
医療システム。
【請求項24】
前記第1把持部において前記対象部位を把持する把持箇所及び前記切断部における切断刃の近傍のうち少なくとも一方と、前記第2把持部において前記対象部位を把持する把持箇所とに、電磁波を照射するための電極が設けられた
請求項23に記載の医療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象部位に当接し、切断する切断器に関し、特に把持、切開、剥離、凝固(止血)、切断手術操作が可能な鉗子、エンドエフェクタ、医療用ツール、医療システム、ロボット、手術用医療ロボット、把持・切断方法及び携帯用手術器に関する。
【背景技術】
【0002】
摘出手術の基本的操作は、剥離に続き、凝固(止血)、切断操作の繰り返しである。その間、対象部位を把持する操作も必要となる。手術では、それぞれの操作が連続的に行われることが望ましく、できればデバイスを代えることなく操作が続けられれば理想的である。
【0003】
しかしながら、高周波エネルギーで有名なリガシュアーは刃が水鳥の嘴のような幅広の刃により生体組織(対象部位)を把持、高周波を流して凝固し、切り代のある凝固部分をメスまたはハサミ様のもので切る二段構えの構成であり、二段操作となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-060846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
デバイスの変更や差し替えを行うことなく組織に当接し、切断できる器具は開発されておらず、手術操作の連続したスムースな進捗と器具交換による時間短縮の為、多機能デバイスが必要とされ、特に術者の手が届かない鏡視下手術やロボット手術において重要となる。凝固、止血機能を確保しながら切断でき、組織を把持することもできるデバイスが求められている。
【0006】
本発明は、デバイスの変更や差し替えを行うことなく対象部位を把持し、該対象部位を切断できる切断器を提供することを課題としている。更には、デバイスの変更や差し替えを行うことなく組織に当接し、切断できる鉗子、エンドエフェクタ、医療用ツール、医療システム、ロボット、手術用医療ロボット、把持・切断方法及び携帯用手術器を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための本発明の切断器は、開閉可能に組付けられた第1把持部及び第2把持部と、前記第1把持部を前記第2把持部に向かって回動させる把持部回動手段とを有する把持機構と、前記第1把持部に併設された切断部と、前記切断部を前記第1把持部の回動と同方向に回動させる切断部回動手段とを有する切断機構が設けられ、前記把持機構により対象部位を把持した状態において、前記切断機構によって前記切断部を回動させ、前記第2把持部と接合することにより前記対象部位を切断することを特徴とする。
【0008】
前記課題を解決するための本発明の医療用ツールは、把持機構と切断機構とを有するエンドエフェクタと、該エンドエフェクタを駆動する駆動ユニットとが備えられ、前記把持機構は、開閉可能に組付けられた第1把持部及び第2把持部と、前記第1把持部を前記第2把持部に向かって回動させる把持部回動手段とを有し、前記切断機構は、前記第1把持部に併設された切断部と、前記切断部を前記第1把持部の回動と同方向に回動させる切断部回動手段とを有し、前記駆動ユニットは、前記第1把持部と前記第2把持部と前記切断部を組み合わせ駆動することにより、穿孔機能、把持機能、凝固機能、切断機能、及び開排機能のうち少なくともひとつを選択的に提供することを特徴とする。
【0009】
前記課題を解決するための本発明の医療システムは、開閉可能に組付けられた第1把持部及び第2把持部と、前記第1把持部を前記第2把持部に向かって回動させる把持部回動手段とを有する把持機構と、前記第1把持部に併設された切断部と、前記切断部に前記第1把持部の回動と同方向に回動させる切断部回動手段とを有する切断機構が設けられ、前記第2把持部に対して、前記第1把持部及び前記切断部を回動可能に軸支する回動軸が備えられ、前記把持部回動手段と前記切断部回動手段をそれぞれ独立して駆動する駆動ユニットと、該駆動ユニットに駆動信号を印加することによって、対象部位を把持した状態で、前記対象部位を、凝固及び切断するように構成された医療用ロボットを有することを特徴とする。
【0010】
前記課題を解決するための本発明の切断器、ロボット、あるいは携帯用手術器は、開閉可能に組付けられた第1把持部及び第2把持部と、前記第1把持部を前記第2把持部に向かって回動させる把持部回動手段とを有する把持機構と、前記第1把持部に併設された切断部と、前記切断部を前記第1把持部の回動と同方向に回動させる切断部回動手段とを有する切断機構が設けられ、前記第2把持部に対して、前記第1把持部及び前記切断部を回動可能に軸支する回動軸が備えられ、前記把持部回動手段は、前記回動軸によって軸支された前記第1把持部において前記回動軸から所定間隔を隔てた箇所を移動させる把持部移動手段で構成され、前記切断部回動手段は、前記回動軸によって軸支された前記切断部において前記回動軸から所定間隔を隔てた箇所を移動させる切断部移動手段で構成され、前記把持部移動手段及び前記切断部移動手段は、長尺状部材で構成されるとともに、長尺状の長手方向に沿って移動させ、前記把持部移動手段の前記長手方向の移動によって前記第1把持部を回動させて前記把持機構により対象部位を把持した状態において、前記把持部移動手段の前記長手方向の移動によって前記切断部を回動させ、前記第2把持部と接合することにより前記対象部位を切断することを特徴としている。
【0011】
上述の本構成によれば、前記第1把持部と前記切断部とを前記把持部移動手段と前記切断部移動手段によってそれぞれ移動させることで、対象部位を前記把持機構で把持し、前記切断機構で対象部位を切断することができる。なお、前記長尺状部材は可撓性を有する可撓性長尺部材で構成してもよい。
【0012】
また、前記可撓性長尺部材で構成された前記把持部移動手段は、前記第1把持部において前記回動軸から所定間隔を隔てた2つの所定箇所の一方に接続され、前記長手方向における引張り方向に移動させる第1把持部移動手段と、他方の所定箇所に接続され、前記長手方向における引張り方向に移動させる第2把持部移動手段とを有し、前記可撓性長尺部材で構成された前記切断部移動手段は、前記切断部において前記回動軸から所定間隔を隔てた2つの所定箇所の一方に接続され、前記長手方向における引張り方向に移動させる第1把持部移動手段と、他方の所定箇所に接続され、前記長手方向における引張り方向に移動させる第2把持部移動手段とを有してもよい。
【0013】
本構成によれば、前記第1把持部移動手段及び前記第1把持部移動手段を、所定箇所を前記長手方向における引張り方向に移動させることで、第2把持部に対して第1把持部と切断部とを引張り方向に回動させ、前記第2把持部移動手段及び前記第2把持部移動手段を、所定箇所を前記長手方向における引張り方向に移動させることで引張り方向に回動させることができる。よって、例えば、前記第1把持部移動手段(前記第1切断部移動手段)の引張り方向の移動によって、第1把持部(切断部)を第2把持部に対して把持方向(切断方向)に回動させる場合、前記第2把持部移動手段(前記第2切断部移動手段)の引張り方向の移動によって、第1把持部(切断部)を開放することができる。つまり、第1把持部(切断部)を第2把持部に対する把持方向(切断方向)の回動、及び開放方向の回動を移動手段の移動によって操作することができる。
【0014】
なお、前記可撓性長尺部材で構成された前記把持部移動手段及び前記切断部移動手段は、所定箇所を前記長手方向における引張り方向に移動させ、前記所定箇所が前記長手方向における押し込み方向に移動する向きで前記第1把持部を付勢する把持付勢部と、前記所定箇所が前記押し込み方向に移動する向きで第切断部を付勢する切断付勢部とが備えられてもよい。
前記把持部移動手段及び前記切断部移動手段は、所定箇所を前記長手方向における押し込み方向及び引張り方向に移動させてもよい。
【0015】
本構成によれば、第1把持部を把持部移動手段で移動させることで、第2把持部に対して第1把持部が回動して対象部位を把持し、切断部を切断部移動手段で移動させることで、第2把持部に対して切断部が回動して対象部位を切断することができる。
【0016】
また、前記第2把持部に対する前記第1把持部の回動、及び前記切断部の回動のうち少なくとも一方を外部に通知する通知部が設けられてもよく、前記通知部の通知量を調整する通知量調整手段が備えられてもよい。なお、通知部は、例えばクリック音のような音による通知、クリック感のような感覚による通知、通電のON/OFFのような電気的あるいは電気信号としての通知であってもよい。したがって、通知量調整手段は、クリック音における音の大小、クリック感における感覚の大小、通電量の大小などを調整する手段となる。
本構成によれば、外部に対して、前記第2把持部に対する前記第1把持部の回動、及び前記切断部の回動のうち少なくとも一方を通知することができる。
【0017】
前記第1把持部において前記対象部位を把持する把持箇所及び前記切断部における切断刃の近傍のうち少なくとも一方と、前記第2把持部において前記対象部位を把持する把持箇所とに、電磁波を照射するための電極が設けられてもよく、前記電極は、中心電極と、絶縁体を介して該中心電極を囲繞する外側電極とが備えられた同軸電極であり、前記電磁波を照射する照射装置と前記電極とを接続する同軸ケーブルを複数に並列分岐させるとともに、前記同軸ケーブルの中心導体と外部導体に前記同軸電極のそれぞれが電気的に接続されてもよい。さらに、前記同軸電極は、前記同軸ケーブルに対して逆極性に接続されてもよい。
【0018】
前記課題を解決するための本発明の医療システムは、上述の切断器と、前記把持部移動手段と前記切断部移動手段をそれぞれ独立して駆動する駆動ユニットと、該駆動ユニットに駆動信号を印加するように接続された医療用ロボットとを有してもよい。
【0019】
前記課題を解決するための本発明のロボットは、上述の切断器に有線及び/又は無線で接続された入出力ユニットと、リアルタイムに操作信号を受信する入力ユニットと、前記操作信号に基づき予め定められた操作プログラムを実行する演算ユニットと、該演算ユニットからの出力に基づき前記把持部移動手段の前記長手方向の移動によって前記第1把持部と前記第2把持部により前記対象部位を把持する把持駆動信号及び/又は前記切断部移動手段の前記長手方向の移動によって前記切断部で前記対象部位を切断する切断駆動信号を発生する出力ユニットとを備えている、さらには、前記課題を解決するための本発明の手術用医療ロボットは、前記ロボットに加え、前記出力ユニットは、前記切断器を機械的に駆動する外部に設けられた駆動ユニットに駆動信号を提供してもよい。
【0020】
前記課題を解決するための本発明のエンドエフェクタは、上述の切断器と、前記切断器における少なくとも前記第2把持部をロボットアームの先端に取付ける取付部と、ロボットアーム側において前記把持部移動手段を駆動する駆動機構と接続する前記把持部側接続部と、ロボットアーム側において前記切断部移動手段を駆動する駆動機構と接続する切断部側接続部が備えられていてもよい。
【0021】
前記課題を解決するための本発明の鉗子は、上述の切断器を備え、前記対象部位は生体組織であるとともに、前記切断部移動手段を駆動操作する把持操作部と、前記切断部移動手段を駆動操作する切断操作部とが備えられ、前記把持操作部を操作して前記生体組織を第1把持部と第2把持部とで把持し、前記切断操作部を操作して前記生体組織を切断部で切断する。あるいは、上述の切断器を備え、前記対象部位は生体組織であるとともに、前記把持部移動手段を駆動操作する把持操作部と、前記切断部移動手段を駆動操作する切断操作部とが備えられ、前記把持操作部を操作して前記生体組織を第1把持部と第2把持部とで把持し、前記電極から電磁波を照射して生体組織の少なくとも一部を凝固させ、前記切断操作部を操作して前記生体組織を切断部で切断してもよい。
【0022】
前記課題を解決するための本発明の把持・切断方法は、上述の切断器を用い、前記把持部移動手段を操作して前記第1把持部を前記第2把持部に向かって回動し、前記第1把持部と前記第2把持部とで前記対象部位を把持する工程と、 前記切断部移動手段を操作して前記第1把持部に併設された前記切断部を前記第1把持部に沿って移動させ、前記第2把持部と接合することにより前記把持された対象部位を切断する工程を有する。あるいは、上述の切断器を用いるとともに、前記対象部位は生体組織であり、前記把持部移動手段を操作して前記第1把持部を前記第2把持部に向かって回動し、前記第1把持部と前記第2把持部とで前記対象部位を把持する工程と、前記電極から電磁波を照射して生体組織の少なくとも一部を凝固させる工程と、前記切断部移動手段を操作して前記第1把持部に併設された前記切断部を前記第1把持部に沿って移動させ、前記第2把持部と接合することにより前記把持及び凝固された対象部位を切断する工程を有してもよい。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、デバイスの変更や差し替えを行うことなく対象部位を把持し、該対象部位を切断できる切断器、鉗子、エンドエフェクタ、医療用ツール、医療システム、ロボット、手術用医療ロボット、把持・切断方法及び携帯用手術器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施例の開状態の鉗子の正面図。
図2】第1実施例の開状態の鉗子の説明図。図2(a)は鉗子の背面図、図2(b)は鉗子の平面図、図2(c)は図2(b)の鉗子の底面図。
図3図1の鉗子の概略説明図。図3(a)は図1(a)におけるA-A矢視の側断面図、図3(b)は鉗子の部分縦断面図、図3(c)は図3(b)におけるB-B矢視の電極部の拡大図。
図4図1の鉗子の把持状態の説明図。図4(a)は鉗子における把持機構を閉じた把持状態の正面図、図4(b)は同状態の鉗子の背面図。
図5図1の鉗子の切断状態の説明図。図5(a)は鉗子における切断機構の切断カッターを閉じた切断状態の正面図、図5(b)は同状態の鉗子の背面図。
図6】鉗子における切断機構の把持状態及び切断状態の説明図。図6(a)は把持機構で把持する前の図1におけるA-A矢視の側断面図、図6(b)は把持機構で対象部位を把持した状態の図4(b)におけるC-C矢視の側断面図、図6(c)は切断カッターで対象部位を切断した状態の図5(b)におけるD-D矢視の側断面図、図6(d)は、別の態様の切断機構の把持機構で把持した状態の右概略側面図。
図7】第2実施例の開状態の鉗子の正面図。
図8】第2実施例の開状態の鉗子の底面図。
図9図7の鉗子の把持状態の説明図。図9(a)は鉗子における把持機構を閉じた把持状態の正面図、図9(b)は同状態の鉗子の背面図。
図10図7の鉗子の切断状態の説明図。図10(a)は鉗子における切断機構の切断カッターを閉じた切断状態の正面図、図10(b)は同状態の鉗子の背面図。
図11】第3実施例の開状態の鉗子の説明図。図11(a)は第3実施例の鉗子の正面図、図11(b)は鉗子の平面図。
図12】第3実施例の開状態の鉗子の背面図。
図13図11の鉗子の説明図。図13(a)は鉗子における把持機構を閉じた把持状態の正面図、図13(b)は鉗子における切断機構の切断カッターを閉じた切断状態の正面図。
図14】第4実施例の切断機構を備えた開状態の鉗子の説明図。図14(a)は鉗子の背面図、図14(b)は鉗子の部分縦断面図、図14(c)は図14(a)におけるE-E矢視の側断面図。
図15】第5実施例の切断機構を備えた開状態の鉗子の説明図。図15(a)は鉗子の背面図、図15(b)は鉗子の部分縦断面図。
図16】第6実施例のエンドエフェクタの概略正面図。
図17図16のエンドエフェクタの概略説明図。図17(a)は図16におけるF-F矢視の側断面図、図17(b)はエンドエフェクタの部分縦断面図、図17(c)は図16におけるG-G矢視の拡大平面図、図17(c)は図17(b)における拡大図。
図18】第6実施例のエンドエフェクタの概略説明図。図18(a)は通常状態のエンドエフェクタの概略正面図、図18(b)は把持状態のエンドエフェクタの概略正面図、図18(c)は切断状態のエンドエフェクタの概略正面図。
図19図17のエンドエフェクタの変形例のエンドエフェクタの概略説明図。図19(a)は図16におけるF-F矢視の側断面図、図19(b)はエンドエフェクタの部分縦断面図、図19(c)は図16におけるG-G矢視の拡大平面図。
図20】他の実施例における医療機器の概略説明図。
図21】他の実施例における遠隔手術システムの概略図。
図22】遠隔手術システムにおける手術装置の概略説明図。
図23】遠隔手術システムに関する説明図。
図24】他の実施例における鉗子の概略図。
図25】他の実施例における鉗子の機能構成概略図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の実施例は、本発明の切断器の一例として医療機器に利用した記載とし、以下、前記鉗子としての実施例を記載するが、本発明は医療機器に限定されない切断器を提供する。
【0026】
例えば、図1は第1実施例の開状態の鉗子1の正面図を示している。
図2は第1実施例の開状態の鉗子1の説明図を示している。詳しくは、図2(a)は鉗子1の背面図を示し、図2(b)は鉗子1の平面図を示し、図2(c)は図2(b)の鉗子1の底面図を示している。
【0027】
図3図1の鉗子1の概略説明図を示している。詳しくは、図3(a)は図1(a)におけるA-A矢視の側断面図を示し、図3(b)は鉗子1の部分縦断面図を示し、図3(c)は図3(b)におけるB-B矢視の電極部の拡大図を示している。
【0028】
図4図1の鉗子1の把持状態の説明図を示している。詳しくは、図4(a)は鉗子1における把持機構17を閉じた把持状態の正面図を示し、図4(b)は同状態の鉗子1の背面図を示している。
【0029】
図5図1の鉗子1の切断状態の説明図を示している。詳しくは、図5(a)は鉗子1における切断機構10の切断カッター15を閉じた切断状態の正面図を示し、図5(b)は同状態の鉗子1の背面図を示している。
【0030】
図6は鉗子1における把持機構17の把持状態及び切断機構10の切断状態の説明図を示している。詳しくは、図6(a)は把持機構17で把持する前の図1におけるA-A矢視の側断面図を示し、図6(b)は把持機構17で対象部位を把持した状態の図4(b)におけるC-C矢視の側断面図を示している。また、図6(c)は切断カッター15で対象部位を切断した状態の図5(b)におけるD-D矢視の側断面図を示し、図6(d)は、別の態様の切断機構10の把持機構17で把持した状態の右概略側面図を示している。
【0031】
図1図6において、鉗子1は、本体フレーム11と、ピニオンギア12、トリガハンドル13(13a,13b)、上顎部14、切断カッター15、及び開閉ワイヤー16を備えている。
なお、鉗子1の本体フレーム11の長手方向に沿う方向を長手方向Lとし、本体フレーム11において上顎部14や切断カッター15が配置された側を先端側F、トリガハンドル13が配置された側を基端側Rとしている。
【0032】
本体フレーム11は、鈍角状に交差する二辺で概略構成され、二辺のうち一方をトリガハンドル13とともに操作部として機能する固定ハンドルフレーム111とし、他方を基準フレーム112としている。なお、このように構成された本体フレーム11は、ステンレスなどの金属で構成されている。
【0033】
固定ハンドルフレーム111の端部には、鉗子1を操作する利用者の指を挿入する指輪部113を備えている。
また、基準フレーム112における基部の近傍には、後述するトリガハンドル13を軸支する支持軸114を備え、その上方に後述するピニオンギア12を軸支するギア支持部115を備えている。
【0034】
さらに、基準フレーム112の先端側Fの端部には、トリガハンドル13のうち把持用トリガハンドル13aと協働して、施術対象となる血管B(図6参照)などの対象部位を把持する把持機構17を構成する下顎部116を設けている。下顎部116は、正面視において先端側Fに向かって先細り形状で構成している。なお、下顎部116はジョーともいう。
また、基準フレーム112の下顎部116の基端側Rには、上顎部14及び切断カッター15を軸支する先端支持部117を設けている。
【0035】
後述する開閉ワイヤー16と協働して把持部回動(移動)手段及び切断部回動(移動)手段として機能するピニオンギア12は、上述のギア支持部115に軸支され、トリガハンドル13の操作を開閉ワイヤー16の移動に変換するものである。具体的には、把持用トリガハンドル13aの操作を上顎用ワイヤー16aの移動に変換する上顎用ギア12aと、切断用トリガハンドル13bの操作をカッター用ワイヤー16bの移動に変換するカッター用ギア12bとがあり、上顎用ギア12aが正面側に配置され、カッター用ギア12bが背面側に配置されている。
【0036】
上顎用ギア12aとカッター用ギア12bとは同じ構成であり、把持用トリガハンドル13a外周面に、後述するトリガハンドル13のラックギア134と噛合するギア歯121を有するとともに、後述する開閉ワイヤー16の基端が取付けられているワイヤー取付部122を設けている。
【0037】
具体的には、図1に示すように、ギア支持部115の軸中心115aに配置され、近接側ワイヤー161の先端が取付けられる近接側取付部152aと、軸中心115aの上方に配置され、開放側ワイヤー162の先端が取付けられる開放側取付部152bがある。ワイヤー取付部122は、ギア支持部115の軸中心115aに対して径方向に所定の間隔を隔てて配置されている。
【0038】
また、図2に示すように、ギア支持部115の軸中心115aに配置され、カッター用ワイヤー16bの近接側ワイヤー161の先端が取付けられる近接側取付部152aと、軸中心115aの上方に配置され、カッター用ワイヤー16bの開放側ワイヤー162の先端が取付けられる開放側取付部152bがある。ワイヤー取付部152は、ギア支持部115の軸中心115aに対して径方向に所定の間隔を隔てて配置されている。
【0039】
トリガハンドル13は、後述する開閉ワイヤー16を稼働させて、上顎部14及び切断カッター15を回動させるための操作部であり、上顎部14を回動する把持用トリガハンドル13aと、切断カッター15を回動する切断用トリガハンドル13bとがある。
【0040】
トリガハンドル13は、下方に延びるハンドル本体131の下端に利用者の指を挿入する指輪部132を備え、ハンドル本体131の上端近傍には、本体フレーム11の支持軸114に枢動可能に軸支される枢軸部133を備えている。
また、ハンドル本体131の上端には、上方に凸な円孔状に並ぶラックギア134が形成されている。ラックギア134は、ピニオンギア12のギア歯121と噛合するよう構成されている。
【0041】
なお、把持用トリガハンドル13aと切断用トリガハンドル13bとは、ハンドル本体131の長さが異なるだけで、同様に上述の構成で構成されている。具体的には、切断用トリガハンドル13bの指輪部132が把持用トリガハンドル13aの指輪部132より上方に配置されるように、把持用トリガハンドル13aのハンドル本体131aが切断用トリガハンドル13bのハンドル本体131bより長く形成されている。
【0042】
上顎部14は、本体フレーム11の先端支持部117に基端側Rが軸支され、本体フレーム11の下顎部116とともに把持機構17を構成する。なお、上顎部14はジョーともいう。
上顎部14の基端部(図1における左側)には、本体フレーム11の先端支持部117に軸支される被軸部141が備えられている。
【0043】
被軸部141には、後述する開閉ワイヤー16の先端が取付けられているワイヤー取付部142を設けている。具体的には、被軸部141の下方に配置され、上顎用ワイヤー16aの近接側ワイヤー161の先端が取付けられる近接側取付部142aと、被軸部141の上方に配置され、上顎用ワイヤー16aの開放側ワイヤー162の先端が取付けられる開放側取付部142bがある。ワイヤー取付部142は、被軸部141で軸支される先端支持部117の軸中心117aに対して径方向に所定の間隔を隔てて配置されている。
【0044】
図1及び図2に示すとおり、切断カッター15は、上顎部14の背面側に配置され、本体フレーム11の先端支持部117に軸支される被軸部151を備えている。
【0045】
被軸部151には、後述する開閉ワイヤー16の先端が取付けられているワイヤー取付部152を設けている。具体的には、被軸部151の下方に配置され、カッター用ワイヤー16bの近接側ワイヤー161の先端が取付けられる近接側取付部152aと、被軸部151の上方に配置され、カッター用ワイヤー16bの開放側ワイヤー162の先端が取付けられる開放側取付部152bがある。ワイヤー取付部152は、被軸部151で軸支される先端支持部117の軸中心117aに対して径方向に所定の間隔を隔てて配置されている。
【0046】
このように構成された切断カッター15は下側の端部に沿って切断刃153が形成されている。また、切断カッター15は、板状であり、被軸部151を軸に、上顎部14の側面に沿って回動するように構成されている。
【0047】
上述のピニオンギア12と協働して把持部回動(移動)手段及び切断部回動(移動)手段として機能する開閉ワイヤー16は、引っ張り力が作用できる所定の強度を有するとともに、可撓性を有する線状であり、上顎部14を回動する上顎用ワイヤー16aと、切断カッター15を回動するカッター用ワイヤー16bとがある。図2(b)に示すように、上顎部14を回動する上顎用ワイヤー16aは正面側に配置され、切断カッター15を回動するカッター用ワイヤー16bは背面側に配置されている。
なお、開閉ワイヤー16は、引っ張り力が作用できる所定の強度を有するとともに、可撓性を有していれば線状でなくても板状や帯状であってもよい。
【0048】
開閉ワイヤー16(16a,16b)は、それぞれ上顎部14や切断カッター15を把持あるいは切断する近接方向に回動させる近接側ワイヤー161と、開放側に回動させる開放側ワイヤー162とがある。つまり、開閉ワイヤー16は、上顎用ワイヤー16aとしての近接側ワイヤー161と開放側ワイヤー162、及びカッター用ワイヤー16bとしての近接側ワイヤー161と開放側ワイヤー162とがあり、全部で4本備えている。なお、開閉ワイヤー16は、上顎部14や切断カッター15と、ピニオンギア12との間のテンションが作用した状態で掛け渡されている。
【0049】
具体的には、上顎用ワイヤー16aの近接側ワイヤー161は、ピニオンギア12のワイヤー取付部122aと上顎部14の近接側取付部142aとを先端側Fに向かって下方に傾斜するように配索され、上顎用ワイヤー16aの開放側ワイヤー162は、ピニオンギア12のワイヤー取付部122bと上顎部14の開放側取付部142bとを先端側Fに向かって上方に傾斜するように配索されている。したがって、正面側から視て、上顎用ワイヤー16aの近接側ワイヤー161と開放側ワイヤー162とは、基準フレーム112における長手方向Lの中央付近で交差している。
【0050】
また、カッター用ワイヤー16bの近接側ワイヤー161も、ピニオンギア12のワイヤー取付部122aと切断カッター15の近接側取付部152aとを先端側Fに向かって下方に傾斜するように配索され、カッター用ワイヤー16bの開放側ワイヤー162も、ピニオンギア12のワイヤー取付部122bと切断カッター15の開放側取付部152bとを先端側Fに向かって上方に傾斜するように配索されている。したがって、正面側から視て、カッター用ワイヤー16bの近接側ワイヤー161と開放側ワイヤー162とは、基準フレーム112における長手方向Lの中央付近で交差している。
【0051】
このように構成された鉗子1において、本体フレーム11の先端側Fの端部に設けた下顎部116と、本体フレーム11に対して先端支持部117で基部が軸支された上顎部14とで、対象部位を把持する把持機構17を構成している。
また、把持機構17で把持された対象部位を、上顎部14の側面に沿って回動して切断する切断カッター15は、下顎部116とともに切断機構10を構成している。
【0052】
なお、鉗子1には、照射用電極24(24a,24b,24c)が設けられるとともに、マイクロ波を発振するマイクロ波発信器30と照射用電極24とを接続する同軸ケーブル40が接続されている。
具体的には、上顎部14には照射用電極24a、下顎部116には照射用電極24b、切断カッター15の内部には照射用電極24cが設けられ、同軸ケーブル40が接続されている。なお、図示省略されるが、上顎部14、切断カッター15及び下顎部116に配置される照射用電極24(24a,24b,24c)は、外側に絶縁層が配置され、上顎部14、切断カッター15及び下顎部116と絶縁されている。
【0053】
同軸ケーブル40は、図3(b)の拡大断面図に示すように、中央導体41、中央導体41を挟んで、絶縁体42、外側導体43及び絶縁被覆44で構成され、中心から径外側に向かってこの順で配置されている。
中央導体41は、同軸ケーブル40の中心に配置された線状の導体であり、適宜の径の単一導体であってもよいし、複数の芯線で構成してもよい。
【0054】
絶縁体42は、中央導体41の外側を囲繞し、中央導体41と43とを絶縁する樹脂製であり、所定の肉厚を有する円筒状である。
外側導体43は、絶縁体42の外周面に沿って設けられた編組線で構成している。
【0055】
絶縁被覆44は、絶縁性を有する被覆であり、外側導体43の外側を囲繞している。
このように、中心側から中央導体41、絶縁体42、外側導体43及び絶縁被覆44がこの順で配置された同軸ケーブル40は適宜の可撓性を有している。
【0056】
図3に示すとおり照射用電極24aと照射用電極24cは同軸ケーブル40の中央導体41に接続され、照射用電極24bは外側導体43に接続され、照射用電極24a,24cから電磁波(マイクロ波)が照射用電極24bに照射されるよう構成されている。また電極構造は、図17のように同軸構造にしても良く、接続の極性も同極接続構造であってもよいし、異極接続構造としてもよい。
【0057】
上顎部14と切断カッター15の照射用電極24a,24cの第1電極部、及び下顎部116に設けた照射用電極24bの第2電極部は、一方が同軸ケーブル40の中央導体41と接続され、他方が外側導体43と接続されることとなる。このように、照射用電極24a,24cが設けられた鉗子1は、照射用電極24a,24cの第1電極部と照射用電極24bの第2電極部の一方から他方に向かってマイクロ波を照射することができる。
【0058】
これにより、下顎部116と上顎部14で構成する把持機構17で把持した対象部位に対してマイクロ波を照射させて凝固させることができる。また、必要により、照射用電極24cを照射用電極24bに電気的に接続して、上顎部14と切断カッター15の間でマイクロ波を照射して生体組織を凝固させる構成としてもよい。
【0059】
上述のように構成された鉗子1の動作について以下で説明する。
本体フレーム11の指輪部113と把持用トリガハンドル13aの指輪部132に指を挿入した利用者によって、支持軸114に軸支された枢軸部133を回動中心として、把持用トリガハンドル13aを固定ハンドルフレーム111に近づける方向(図1において把持用トリガハンドル13aの下方が左側に移動する方向)に回動させる。
【0060】
枢軸部133を中心として把持用トリガハンドル13aが固定ハンドルフレーム111に近接する方向に回動することで、枢軸部133より上方に突出するラックギア134とギア歯121が噛合する上顎用ギア12aを図1において反時計回りに回転させる。上顎用ギア12aが反時計回りに回転すると、ワイヤー取付部122aに基端が取付けられた上顎用ワイヤー16aの近接側ワイヤー161が基端側Rに向かって引っ張られ、移動する。
【0061】
上顎用ワイヤー16aの近接側ワイヤー161が基端側Rに向かって移動すると、近接側ワイヤー161の先端が近接側取付部142aに固定され、先端支持部117に軸支された上顎部14は、軸中心117aを回動中心として、先端側Fが下顎部116に近接する方向に枢動することとなる(図4参照)。
このとき、切断カッター15は、回動しないため、図4に示すように、当初位置のままとなる。
【0062】
これにより、図6(a)に示すような初期状態(開状態)において上顎部14と下顎部116の間に生体組織における対象部位である血管Bを配置し、図6(b)に示すように、下顎部116の上面と上顎部14の底面とで血管Bを挟み込むことで、下顎部116と上顎部14とで構成する把持機構17で血管Bを把持することができる。
【0063】
なお、上述のように、把持用トリガハンドル13aを操作して、上顎部14が下顎部116に近接した図4及び図6(b)に示す状態を、血管Bなどの対象部位を把持機構17で把持する把持状態という。
この把持状態から更に切断用トリガハンドル13bを固定ハンドルフレーム111に近接させる方向に操作すると、枢軸部133を中心として切断用トリガハンドル13bが固定ハンドルフレーム111に近接する方向に回動し、枢軸部133より上方に突出するラックギア134とギア歯121が噛合するカッター用ギア12bを図2において時計回りに回転させる。カッター用ギア12bが時計回りに回転すると、ワイヤー取付部122aに基端が取付けられたカッター用ワイヤー16bの近接側ワイヤー161が基端側Rに向かって引っ張られ、移動する。
【0064】
カッター用ワイヤー16bの近接側ワイヤー161が基端側Rに向かって移動すると、近接側ワイヤー161の先端が近接側取付部152aに固定され、先端支持部117に軸支された切断カッター15は、軸中心117aを回動中心として、先端側Fが下顎部116に近接する方向に枢動し、切断刃153が下顎部116の上面を越えて枢動することとなる。
これにより、図6(c)に示すように、切断カッター15が上顎部14の側面に沿って移動し、把持機構17で把持した血管Bを、切断カッター15の切断刃153で切断することができる。
【0065】
なお、上述のように、切断用トリガハンドル13bのさらなる操作によって、図5(b)に図示するように、切断刃153が下顎部116の上面を越えるように切断カッター15が回動した状態を切断状態という。
【0066】
上述のように、鉗子1は、把持機構17を構成する上顎部14と下顎部116とによる血管B等の対象部位の把持、及び切断カッター15によって対象部位の切断を、把持用トリガハンドル13aと切断用トリガハンドル13bとによる操作で行うことができる。そして、把持用トリガハンドル13aと切断用トリガハンドル13bとの操作による対象部位の把持・切断の間に、対象部位にマイクロ波を照射用電極24から照射して凝結させることができる。
【0067】
なお、上述の切断状態から切断用トリガハンドル13bを固定ハンドルフレーム111から離間する方向に操作すると、枢軸部133を中心として切断用トリガハンドル13bが固定ハンドルフレーム111に離間する方向に回動し、枢軸部133より上方に突出するラックギア134とギア歯121が噛合するカッター用ギア12bを図2において反時計回りに回転させる。カッター用ギア12bが反時計回りに回転すると、ワイヤー取付部122bに基端が取付けられたカッター用ワイヤー16bの開放側ワイヤー162が基端側Rに向かって引っ張られ、移動する。
【0068】
カッター用ワイヤー16bの開放側ワイヤー162が基端側Rに向かって移動すると、開放側ワイヤー162の先端が開放側取付部152bに固定され、先端支持部117に軸支された切断カッター15は、軸中心117aを回動中心として、先端側Fが下顎部116から離間(開放)する方向に枢動することとなる。
これにより、切断カッター15を図2に示す当初位置に復帰させることができる。
【0069】
また、上述の把持状態から把持用トリガハンドル13aを固定ハンドルフレーム111から離間する方向に操作すると、枢軸部133を中心として把持用トリガハンドル13aが固定ハンドルフレーム111に離間する方向に回動し、枢軸部133より上方に突出するラックギア134とギア歯121が噛合する上顎用ギア12aを図1において時計回りに回転させる。上顎用ギア12aが時計回りに回転すると、ワイヤー取付部122bに基端が取付けられた上顎用ワイヤー16aの開放側ワイヤー162が基端側Rに向かって引っ張られ、移動する。
【0070】
上顎用ワイヤー16aの開放側ワイヤー162が基端側Rに向かって移動すると、開放側ワイヤー162の先端が開放側取付部142bに固定され、先端支持部117に軸支された上顎部14は、軸中心117aを回動中心として、先端側Fが下顎部116から離間する方向に枢動することとなる。
これにより、上顎部14を図1に示す当初位置に復帰させることができる。
【0071】
上述したように、鉗子1は、上顎部14と切断カッター15とを上顎用ワイヤー16aとカッター用ワイヤー16bによってそれぞれ移動させることで、対象部位を把持機構17で把持し、切断機構10で対象部位を切断することができる。
【0072】
また、可撓性長尺部材で構成された上顎用ワイヤー16aは、上顎部14において回動軸中心から所定間隔を隔てた近接側取付部142aに接続され、長手方向Lにおける引張り方向に移動させる近接側ワイヤー161と、開放側取付部142bに接続され、長手方向Lにおける引張り方向に移動させる開放側ワイヤー162とを有する。
【0073】
可撓性長尺部材で構成されたカッター用ワイヤー16bは、切断カッター15において回動軸中心から所定間隔を隔てた近接側取付部152aに接続され、長手方向Lにおける引張り方向に移動させる近接側ワイヤー161と、開放側取付部152bに接続され、長手方向Lにおける引張り方向に移動させる開放側ワイヤー162とを有している。
【0074】
そのため、近接側ワイヤー161を、所定箇所を長手方向Lにおける引張り方向に移動させることで、下顎部116に対して上顎部14と切断カッター15とを引張り方向に回動させ、開放側ワイヤー162を、所定箇所を長手方向Lにおける引張り方向に移動させることで引張り方向に回動させることができる。よって、例えば、近接側ワイヤー161の引張り方向の移動によって、上顎部14(切断カッター15)を下顎部116に対して把持方向(切断方向)に回動させる場合、開放側ワイヤー162の引張り方向の移動によって、上顎部14(切断カッター15)を開放することができる。つまり、上顎部14(切断カッター15)を下顎部116に対する把持方向(切断方向)の回動、及び開放方向の回動を開閉ワイヤー16の移動によって操作することができる。
【0075】
続いて、第2実施例の鉗子1Xは、図7図10に示している。
なお、図7は第2実施例の開状態の鉗子1Xの正面図を示し、図8は第2実施例の開状態の鉗子1Xの底面図を示している。
【0076】
図9図7の鉗子1Xの把持状態の説明図を示している。具体的には、図9(a)は鉗子1Xにおける把持機構17を閉じた把持状態の正面図を示し、図9(b)は同状態の鉗子1Xの背面図を示している。
【0077】
図10図7の鉗子1Xの切断状態の説明図を示している。具体的には、図10(a)は鉗子1Xにおける切断機構10の切断カッターを閉じた切断状態の正面図を示し、図10(b)は同状態の鉗子1Xの背面図を示している。
なお、以下における鉗子1Xの説明において、鉗子1と同様の構成については同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0078】
上述の実施例1の鉗子1は、トリガハンドル13(13a,13b)を操作して開閉ワイヤー16の近接側ワイヤー161と開放側ワイヤー162とを基端側Rに引張り、上顎部14,切断カッター15を下顎部116に近接させるように回動して、把持や切断したり、下顎部116から離間して開放するように構成した。これに対し、実施例2の鉗子1Xは、開放側ワイヤー162を備えず、開閉ワイヤー16を近接側ワイヤー161のみとし、トリガハンドル13(13a,13b)を操作して開閉ワイヤー16の近接側ワイヤー161を基端側Rに引張り、上顎部14,切断カッター15を下顎部116に近接させるように回動する。そして、上顎部14及び切断カッター15の離間する方向の回動については、バネ19の付勢力によって回動させて開放する。
【0079】
具体的には、上顎部14と切断カッター15との幅方向と外側には、それぞれバネ19(19a,19b)を備えている。バネ19は、先端支持部117の軸に外嵌するコイル部191と、コイル部191の一端から延びて、基準フレーム112に固定される第1アーム192と、上顎部14や切断カッター15に固定される第2アーム193とで構成されている。
【0080】
そして,上述のように構成された鉗子1Xの動作について以下で説明する。
なお、上顎部14や切断カッター15を下顎部116に接近させて把持したり、切断したりする動作は、鉗子1の動作と同じである。ただ、トリガハンドル13を操作して上顎部14や切断カッター15を接近させて把持したり、切断したりするためには、バネ19bの付勢力に抗しながら、回動することとなる。
【0081】
そして、上述の切断状態を開放したり、把持状態を開放するには、固定ハンドルフレーム111に近接する方向に操作した把持用トリガハンドル13a及び切断用トリガハンドル13bの操作力を緩めることでバネ19の付勢力によって自動的に開放方向に回動して開放することができる。
【0082】
具体的には、バネ19aの付勢力に抗して把持用トリガハンドル13aを固定ハンドルフレーム111に近接させる側の操作力を緩めることで、把持状態にある上顎部14は、バネ19の付勢力によって、上顎部14の先端が下顎部116から離間する方向に回動し、開放される。
【0083】
また、バネ19aの付勢力に抗して切断用トリガハンドル13bを固定ハンドルフレーム111に近接させる側の操作力を緩めることで、把持状態にある切断カッター15は、バネ19の付勢力によって、切断カッター15の先端が下顎部116から離間する方向に回動し、開放される。
【0084】
このように、実施例2の鉗子1Xは、上述の鉗子1と同様の効果を奏するとともに、トリガハンドル13を固定ハンドルフレーム111から離間する方向に操作することなく、把持状態の上顎部14や切断状態の切断カッター15を開放方向に回動させることができる。
【0085】
具体的には、可撓性長尺部材で構成された上顎用ワイヤー16a及びカッター用ワイヤー16bは、所定箇所を長手方向Lにおける引張り方向に移動させ、所定箇所が長手方向Lにおける押し込み方向に移動する向きで上顎部14を付勢するバネ19aと、所定箇所が押し込み方向に移動する向きで切断カッター15を付勢するバネ19bとが備えられているため、上顎用ワイヤー16a及びカッター用ワイヤー16bを、所定箇所を長手方向Lにおける引張り方向に移動させることで、下顎部116に対して上顎部14と切断カッター15とを引張り方向に回動させ、バネ19aやバネ19bの付勢力によって押し込み方向に回動させることができる。よって、例えば、引張り方向の移動によって、上顎部14(切断カッター15)を下顎部116に対して把持方向(切断方向)に回動させる場合、バネ19a(バネ19b)の付勢力によって、上顎部14(切断カッター15)を開放することができる。
【0086】
なお、上述の鉗子1Xの説明では、近接側ワイヤー161のみを備え、トリガハンドル13の操作によって上顎部14,切断カッター15を下顎部116に近接する方向に回動させ、バネ19の付勢力で把持状態にある上顎部14、切断状態にある切断カッター15を開放方向に回動させた。
【0087】
これに対し、バネ19を、上顎部14及び切断カッター15の先端側が下顎部116に近接する側に向かう方向に付勢する向きで構成するとともに、トリガハンドル13を固定ハンドルフレーム111に近接する側に向かって操作することで、上顎部14,切断カッター15を下顎部116から離れる方向に回動させ、バネ19の付勢力によって、上顎部14,切断カッター15の先端側が下顎部116に近接する側に付勢して、把持又は切断するように構成してもよい。
【0088】
さらには、バネ19a、及びバネ19bのうち一方のみを備え、備えなかった他方側に近接側ワイヤー161と開放側ワイヤー162の両方を備えてもよい。この場合、切断機構10と把持機構17との一方はバネ19によって自動復帰するが、他方は、トリガハンドル13の操作で復帰させるように構成される殊となる。
【0089】
続いて、第3実施例の鉗子1Yは、図11図13に示している。
なお、図11は第3実施例の開状態の鉗子1Yの説明図を示している。詳しくは、図11(a)は第3実施例の鉗子1Yの正面図を示し、図11(b)は鉗子1Yの平面図を示している。
【0090】
図12は第3実施例の開状態の鉗子1Yの背面図を示し、図13図11の鉗子1Yの説明図を示している。詳しくは、図13(a)は鉗子1Yにおける把持機構を閉じた把持状態の正面図を示し、図13(b)は鉗子1Yにおける切断機構の切断カッターを閉じた切断状態の正面図を示している。
なお、図11(b)及び図13における拡大図は、規制枠124における高さ方向の中央付近の断面図を示している。
【0091】
なお、以下における鉗子1Yの説明において、鉗子1,1Xと同様の構成については同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
トリガハンドル13の操作を開閉ワイヤー16で伝達し、上顎部14や切断カッター15を回動させた鉗子1と異なり、鉗子1Yは、トリガハンドル13Yの操作を棒状のスライドプレート12Y(12Ya,12Yb)で伝達して上顎部14や切断カッター15を回動するように構成している。
【0092】
具体的には、鉗子1Yは、本体フレーム11Yと、スライドプレート12Y(12Ya,12Yb)と、トリガハンドル13Y(13Ya,13Yb)、上顎部14Yと、カッター15Yとを備えている。
【0093】
鉗子1Yは、基準フレーム112Yに対して第1スライドプレート12Yaが長手方向Lにスライドして上顎部14が回動し、基準フレーム112Yに対して第2スライドプレート12Ybが長手方向Lにスライドして切断カッター15が回動して切断するように構成している。
【0094】
詳述すると、本体フレーム11Yは、固定ハンドルフレーム111と基準フレーム112とで構成した本体フレーム11と同様に、鈍角状に交差する固定ハンドルフレーム111と基準フレーム112Yとで構成している。
【0095】
第1スライドプレート12Yaと第2スライドプレート12Ybとは、基準フレーム112Yの上面に沿ってスライドするように構成されている。なお、基準フレーム112Yには、上面に沿ってスライドする第1スライドプレート12Yaと第2スライドプレート12Ybとを、スライド可能に規制する規制枠124を備えている。
【0096】
第1スライドプレート12Yaと第2スライドプレート12Ybとは板状に構成されるとともに、厚み方向に積層され、基準フレーム112Yの上面に沿って、独立してスライド可能に規制枠124によって規制されている。
【0097】
先端に上顎部14が連結された第1スライドプレート12Yaの中間部分には、後述するアーム18Yaの駆動軸181Yaを軸支する上支持軸121Yaを設けている。
先端に切断カッター15が連結された第2スライドプレート12Ybの中間部分には、後述するアーム18Ybの駆動軸181Ybを軸支する上支持軸121Ybを設けている。
【0098】
トリガハンドル13Yとして、第1スライドプレート12Yaをスライドさせて上顎部14を回動させる把持用トリガハンドル13Yaと、第2スライドプレート12Ybをスライドさせて切断カッター15を回動させる切断用トリガハンドル13Ybとがある。
【0099】
トリガハンドル13Y(13Ya,13Yb)は、基準フレーム112Yに軸支される枢軸部133の上方に、第1スライドプレート12Ya及び第2スライドプレート12Ybから上方に突出する態様で上枢軸部134Y(134Ya,134Yb)を設けている。
【0100】
上枢軸部134Y(134Ya,134Yb)には、先端側F且つ下方に傾斜するアーム18Y(18Ya,18Yb)が連結されており、アーム18Y(18Ya,18Yb)の先端に上述の駆動軸181Y(181Ya,181Yb)を備えている。
【0101】
また、鉗子1Yはクリック機構50を備えている。例えば、クリック機構50は、図11の拡大図に示すように、規制枠124の側壁内面にラチェットフック51を備え、規制枠124の内部に配置されるスライドプレート12Yの側面にラチェット凹部52を備えている。
【0102】
ラチェットフック51は、長手方向Lに延びるアーム511の先端に係止凸部512が備えられ、係止凸部512は、アーム511の付勢力によってスライドプレート12Yに押付けられている。また、アーム511による係止凸部512の押付け量を調整する調整ネジ53を備えている。
【0103】
切断機構10も把持機構17も開放状態である場合、ラチェットフック51の係止凸部512はラチェット凹部52に係止されておらず、スライドプレート12Yが先端側Fに移動することで、ラチェット凹部52が先端側Fに移動し、先端側Fに移動したラチェット凹部52に係止凸部512が係止する際のクリック音やクリック感で、スライドプレート12Yの移動、つまり把持機構17による把持や切断機構10による切断を通知することができる。
【0104】
そして、調整ネジ53を螺入出することで、係止凸部512をスライドプレート12Yに押付けるアーム511の付勢力を調整でき、アーム511の付勢力を調子することで、係止凸部512がラチェット凹部52に係止する際のクリック音やクリック感の増減を調整することができる。
【0105】
なお、クリック機構50は、スライドプレート12Yの側面にラチェットフック51が備えられ、規制枠124の内面にラチェット凹部52が設けられてもよい。
また、規制枠124の上板の内面とスライドプレート12Yの上面とにラチェットフック51とラチェット凹部52を備えてもよいし、スライドプレート12Yの底面と基準フレーム112上面とのにラチェットフック51とラチェット凹部52を備えてもよい。
【0106】
さらには、図11に示すクリック機構50は、規制枠124の両側面にラチェットフック51を備え、第1スライドプレート12Ya及び第2スライドプレート12Ybの両方の側面にラチェット凹部52を備えているが、規制枠124の側面の一方と対応するスライドプレート12Yの側面にのみに設けてもよい。
【0107】
このように構成された鉗子1Yは、把持用トリガハンドル13Yaを固定ハンドルフレーム111に接近する方向に操作すると、枢軸部133を回動軸として、上枢軸部134Yaは先端側Fに移動する。
【0108】
上枢軸部134Yaが先端側Fに移動すると、上枢軸部134Yaに連結されたアーム18Yaも傾斜角度が変化しながら先端側Fに移動する。アーム18Yaは傾斜角度が変化しながら先端側Fに移動すると、アーム18Yaの駆動軸181Yaを上支持軸121Yabで軸支する第1スライドプレート12Yaは、基準フレーム112Yに対して先端側Fにスライド移動する。
【0109】
第1スライドプレート12Yaが先端側Fに移動すると、下方の被軸部141が本体フレーム11Yの先端支持部117に軸支され、その上方の回動軸受部143が先端上支持軸122Yaに軸支された上顎部14は、先端上支持軸122Yaが先端側Fに移動する。これにより、先端支持部117を中心として、先端側Fが下顎部116に近接する方向に枢動して、下顎部116と上顎部14とで構成する把持機構17で血管Bなどの対象部位を把持できる把持状態となる(図17参照)。
【0110】
このとき、図13(a)の拡大図に示すように、規制枠124の側壁に備えたラチェットフック51の係止凸部512が、移動した第1スライドプレート12Yaの側面に形成したラチェット凹部52に係止することとなる。この第1スライドプレート12Yaの側面に形成したラチェット凹部52にラチェットフック51の係止凸部512が係止する際のクリック音やクリック感によって、利用者に対して把持状態になったことを通知することができる。
【0111】
把持状態にある鉗子1Yにおいて、切断用トリガハンドル13Ybを固定ハンドルフレーム111に接近する方向に操作すると、枢軸部133を回動軸として、上枢軸部134Ybは先端側Fに移動する。
【0112】
上枢軸部134Ybが先端側Fに移動すると、上枢軸部134Ybに連結されたアーム18Ybも傾斜角度が変化しながら先端側Fに移動する。アーム18Ybは傾斜角度が変化しながら先端側Fに移動すると、アーム18Ybの駆動軸181Ybを上支持軸121Ybで軸支する第2スライドプレート12Ybは、基準フレーム112Yに対して先端側Fにスライド移動する。
【0113】
第2スライドプレート12Ybが先端側Fに移動すると、下方の被軸部151が本体フレーム11Yの先端支持部117に軸支され、その上方の回動軸受部154が先端上支持軸122Ybに軸支された切断カッター15は、先端上支持軸122Ybが先端側Fに移動する。これにより、先端支持部117を中心として、先端側Fが下顎部116に近接する方向に枢動して、下顎部116と切断カッター15とで構成する切断機構10で血管Bなどの対象部位を切断できる切断状態となる(図17参照)。
【0114】
このとき、図13(b)の拡大図に示すように、規制枠124の側壁に備えたラチェットフック51の係止凸部512が、移動した第2スライドプレート12Ybの側面に形成したラチェット凹部52に係止することとなる。この第2スライドプレート12Ybの側面に形成したラチェット凹部52にラチェットフック51の係止凸部512が係止する際のクリック音やクリック感によって、利用者に対して切断状態になったことを通知することができる。
【0115】
なお、切断状態で切断用トリガハンドル13Ybを固定ハンドルフレーム111から離間する方向に操作すると、枢軸部133を回動軸として、上枢軸部134Ybは基端側Rに移動する。
上枢軸部134Ybが基端側Rに移動すると、上枢軸部134Ybに連結されたアーム18Ybも傾斜角度が変化しながら基端側Rに移動する。アーム18Ybは傾斜角度が変化しながら基端側Rに移動すると、アーム18Ybの駆動軸181Ybを上支持軸121Ybで軸支する第2スライドプレート12Ybは、基準フレーム112Yに対して基端側Rにスライド移動する。
【0116】
第2スライドプレート12Ybが基端側Rに移動すると、下方の被軸部151が本体フレーム11Yの先端支持部117に軸支され、その上方の回動軸受部154が先端上支持軸122Ybに軸支された切断カッター15は、先端上支持軸122Ybが基端側Rに移動する。これにより、先端支持部117を中心として、基端側Rが下顎部116に離間する方向に枢動して、下顎部116と切断カッター15とで構成する切断機構10を開放することができる。
【0117】
また、把持状態で把持用トリガハンドル13Yaを固定ハンドルフレーム111から離間する方向に操作すると、枢軸部133を回動軸として、上枢軸部134Yaは基端側Rに移動する。
上枢軸部134Yaが基端側Rに移動すると、上枢軸部134Yaに連結されたアーム18Yaも傾斜角度が変化しながら基端側Rに移動する。アーム18Yaは傾斜角度が変化しながら基端側Rに移動すると、アーム18Yaの駆動軸181Yaを上支持軸121Yaで軸支する第1スライドプレート12Yaは、基準フレーム112Yに対して基端側Rにスライド移動する。
【0118】
第1スライドプレート12Yaが基端側Rに移動すると、下方の被軸部141が本体フレーム11Yの先端支持部117に軸支され、その上方の回動軸受部143が先端上支持軸122Yaに軸支された上顎部14は、先端上支持軸122Yaが基端側Rに移動する。これにより、先端支持部117を中心として、基端側Rが下顎部116に離間する方向に枢動して、下顎部116と上顎部14とで構成する把持機構17を開放することができる。
【0119】
上述のように、鉗子1Yも、鉗子1,1Xと同様に、把持機構17を構成する上顎部14と下顎部116とによる血管B等の対象部位の把持、及び把持された対象部位の切断カッター15による切断を、トリガハンドル13(13a,13b)による操作で行うことができる。そして、トリガハンドル13(13a,13b)の操作による対象部位の把持・切断の間に、対象部位にマイクロ波を照射用電極24から照射して凝結させることができる。
【0120】
次に、第4実施例として、切断機構10を備えた鉗子1Aについて、図14に基づいて説明する。
図14は第4実施例の切断機構10を備えた開状態の鉗子1Aの説明図を示している。詳しくは、図14(a)は鉗子1Aの背面図を示し、図14(b)は鉗子1Aの部分縦断面図を示し、図14(c)は図14(a)におけるE-E矢視の側断面図を示している。
【0121】
なお、以下における鉗子1Aの説明において、鉗子1,1X,1Yと同様の構成については同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
上述の鉗子1,1Xでは、本体フレーム11における基準フレーム112の先端側Fの先端に下顎部116が形成され、固定ハンドルフレーム111と協働して上顎部14及び切断カッター15の回動操作を行うトリガハンドル13(13a,13b)を設けていたが、鉗子1Aは、切断機構10と把持機構17とを備えるものの、下顎部116が設けられた本体フレーム11Aの基部はチューブTの先端に設けられた取付具60に取り付けられるように構成されている。
【0122】
具体的には、本体フレーム11Aの下半が下に凸な半円形断面形状であり、基端側Rには、上側に凸な反円弧状のルーフ119を備えている。したがって、本体フレーム11Aの基端側Rは、下に凸な半円形断面形状である下半部分と、上側に凸な反円弧状のルーフ119とで断面円形に形成され、基端側Rの端部に取付具60と締結される締結部が形成されている。
取付具60を介して鉗子1Aが接続されるチューブTは、可撓性を有する中空のチューブである。
【0123】
また、鉗子1Aにおいて上顎部14及び切断カッター15に先端が取り付けられた4本の開閉ワイヤー16は、ルーフ119の内部を通過するとともに、反対側の端部までチューブTの内部を挿通し、チューブTの反対側に設けられた操作部(図示省略)に接続されている。
【0124】
上顎用ワイヤー16a及びカッター用ワイヤー16bは、所定箇所を長手方向Lにおける先端側Fや基端側Rに移動させるため、下顎部116に対して上顎部14と切断カッター15とを近接方向に回動させたり、開放方向に回動させることができる。
【0125】
よって、例えば、開放側ワイヤー162の引張方向の移動によって、上顎部14(切断カッター15)を下顎部116に対して把持状態(切断状態)から開放方向に回動させる場合、近接側ワイヤー161を引張り方向に移動させることで、上顎部14(切断カッター15)を把持方向(切断方向)に回動することができる。
【0126】
なお、鉗子1Aに設けた照射用電極24に電気を供給する同軸ケーブル24xもチューブTの内部に挿通され、チューブTの反対側に設けられたマイクロ波発信器30に接続されている。
【0127】
このように構成された鉗子1Aは、例えば、鏡下手術において内視鏡のチャネルに挿通された状態で使用され、チューブTの反対側(内視鏡の根元側)に設けられた操作部(図示省略)を操作することで、開閉ワイヤー16の近接側ワイヤー161や開放側ワイヤー162を引っ張って、把持機構17の上顎部14や切断機構10の切断カッター15をそれぞれ回動させて生体組織である対象部位を把持したり、切断したり、開放したりすることができる。
このように、上述の鉗子1Aは、把持機構17及び切断機構10を備えた鉗子1,1X,1Yと同様の効果を奏することができる。
【0128】
次に、第5実施例として、切断機構10を備えた鉗子1Bについて、図15に基づいて説明する。
図15は第5実施例の切断機構10を備えた開状態の鉗子1Bの説明図を示している。詳しくは、図15(a)は鉗子1Bの背面図を示し、図15(b)は鉗子1Bの部分縦断面図を示している。
【0129】
なお、以下における鉗子1Bの説明において、鉗子1,1X,1Y及び鉗子1Aと同様の構成については同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
上述の鉗子1Aでは、本体フレーム11に基部を、チューブTの先端に設けられた取付具60に取り付けて用いたが、鉗子1Bは、チューブT及び取付具60を用いず、断面円形状を構成する本体フレーム11Bとルーフ119とを、鉗子1AにおけるチューブTと同様の長さで形成している。
【0130】
なお、断面円形状を構成する本体フレーム11Bとルーフ119とは所定の可撓性を有しているものの、下顎部116を構成する部分については剛な構造で構成している。
そして、鉗子1Bにおいて上顎部14及び切断カッター15に先端が取り付けられた4本の開閉ワイヤー16は、ルーフ119の内部を通過するとともに、反対側の端部までチューブTの内部を挿通し、チューブTの反対側に設けられた操作部(図示省略)に接続されている。
【0131】
また、鉗子1Bに設けた照射用電極24に電気を供給する同軸ケーブル(図示省略)がチューブTの内部に挿通され、チューブTの反対側に設けられたマイクロ波発信器30に接続されている。
【0132】
このように構成された鉗子1Bは、鉗子1Aと同様に、例えば、鏡下手術において内視鏡のチャネルに挿通された状態で使用され、チューブTの反対側(内視鏡の根元側)に設けられた操作部(図示省略)を操作することで、開閉ワイヤー16の近接側ワイヤー161や開放側ワイヤー162を引っ張って、把持機構17の上顎部14や切断機構10の切断カッター15をそれぞれ回動させて生体組織である対象部位を把持したり、切断したり、開放したりすることができる。さらには、照射用電極24で生体組織である対象部位を凝固することができる。
このように、上述の鉗子1Bは、鉗子1Aと同様に、把持機構17及び切断機構10を備えた鉗子1,1X,1Yと同様の効果を奏することができる。
【0133】
なお、本体フレーム11Aとルーフ119との内部に、内部空間で摺動する程度の太さの開閉ワイヤー16を挿通させてもよい。この場合、内部空間で摺動する程度の太さの開閉ワイヤー16は、基端側Rに向かう引張方向に移動するだけでなく、先端側Fに向かう押し込み方向にも移動することができ、上顎部14及び切断カッター15をいずれの方向にも回動させることができる。
【0134】
次に、第6実施例として、生体組織にマイクロ波照射のためのエンドエフェクタ10cについて、図16乃至図19に基づいて説明する。
図16は第6実施例のエンドエフェクタ10cの概略正面図を示している。
【0135】
図17図16のエンドエフェクタ10cの概略説明図を示している。詳しくは、図17(a)は図16におけるF-F矢視の側断面図を示し、図17(b)はエンドエフェクタ10cの部分縦断面図を示し、図17(c)は図16におけるG-G矢視の拡大平面図を示し、図17(c)は図17(b)における拡大図を示している。
【0136】
図18は第6実施例のエンドエフェクタ10cの概略説明図を示している。詳しくは、図18(a)は通常状態のエンドエフェクタ10cの概略正面図を示し、図18(b)は把持状態のエンドエフェクタ10cの概略正面図を示し、図18(c)は切断状態のエンドエフェクタ10cの概略正面図を示している。
【0137】
エンドエフェクタ10cは、多機能手術機器に用いるものであり、上述の鉗子1における切断機構10に対応している。そのため、上述の鉗子1における構成と同様の構成については同様の符号を付している。また、本実施例におけるエンドエフェクタは、前述の切断器、切断機構、鉗子を構成し得るものであり、他の同様な構成を含む。
【0138】
なお、図16及び図17において、エンドエフェクタ10cの先端側Fの一部を図示している。
エンドエフェクタ10cは、多機能手術機器に取付けられる管状の支持具100の先端に設けられた蛇腹状の可撓部101を貫通する基準軸11a(切断機構10における基準フレーム112に対応)、上顎部14、切断カッター15及び開閉ワイヤー16とがある。
【0139】
なお、基準軸11aにおいて、可撓性を有する可撓部101の内部に対応する箇所は可動する可撓部101に追従して変形可能な可撓性を有するように構成されているが、駆動としてワイヤーを用いてもよい。
【0140】
このように構成されたエンドエフェクタ10cにおける上顎部14及び切断カッター15の動作については、上述の鉗子1における切断機構10の上顎部14及び切断カッター15と同様であり、開閉ワイヤー16を長手方向Lに移動することで、基準軸11aの先端側Fの端部に設けた下顎部116と上顎部14とで構成する把持機構17で対象部位を把持するとともに、切断カッター15で切断することができる。
【0141】
このように構成されたエンドエフェクタ10cにおける下顎部116の上面と、上顎部14の底面には、長手方向Lに沿う同軸電極20を備えている。
また、エンドエフェクタ10cには、マイクロ波を照射するマイクロ波発信器30と同軸電極20とを接続する同軸ケーブル40が接続されている。なお、マイクロ波発信器30は、エンドエフェクタ10cの内部に設けてもよい。
【0142】
同軸ケーブル40は、図17における拡大断面図に示すように、中央導体41、中央導体41を挟んで、絶縁体42、外側導体43及び絶縁被覆44で構成され、中心から径外側に向かってこの順で配置されるとともに、適宜の可撓性を有している。
【0143】
上顎部14の底面及び下顎部116の上面に設けた同軸電極20は、図17(c)における拡大図に示すように、中央導体21と、半円断面状の半円絶縁体22、半円絶縁体22の外側に配置される半円管状の半円管導体23とで構成している。
【0144】
このように構成された同軸電極20は、図17(c)に図示するように、半円柱状で所定長さに構成されており、上顎部14の底面及び下顎部116の上面において、フラット面が対向するように長手方向に沿って配置されている。なお、図示省略されるが、上顎部14及び下顎部116に配置される同軸電極20は、外側に絶縁層が配置され、上顎部14及び下顎部116と絶縁されている。
【0145】
そして、図17(b)に示すように、上顎部14及び下顎部116に設けられたそれぞれの同軸電極20の中央導体21と、同軸ケーブル40の中央導体41が接続され、同軸電極20の半円管導体23と同軸ケーブル40の外側導体43が接続され、同極接続となっている。必要であれば、一方を逆極性に接続してもよい。
【0146】
このように、同軸ケーブル40を介してマイクロ波発信器30と接続された同軸電極20は、マイクロ波発信器30が稼働すると、同軸ケーブル40を介して同軸電極20の中央導体21と半円管導体23との間にマイクロ波を照射することができる。
【0147】
把持機構17で対象部位である血管Bを把持した把持状態で同軸電極20からマイクロ波を照射すると、把持機構17で把持された血管Bはマイクロ波によって凝結する。そして、血管Bにおいて、同軸電極20から照射されたマイクロ波で凝結した部分を切断カッター15で切断することができる。本実施例の変形例として、図16にエンドエフェクタ10c内に電子モジュール31を内蔵する実施例を示す。
【0148】
前述のマイクロ波発信器30をエンドエフェクタ10cに内蔵させる例であるが、図20のマイクロ波照射モジュール222を組み込む、又は、図22(b)に示す手術装置221の電子回路を適宜組み込む電子モジュールとしてもよい。エンドエフェクタ10cに電子モジュール31を設けることにより、医療機器の小型化が可能となり、手術の利便性を高める。
【0149】
また、エンドエフェクタ10cは、下顎部116aと上顎部14との対向面のそれぞれに設けた同軸電極20を逆極性となるように接続して構成してもよい。
さらには、図示省略するが、エンドエフェクタ10cにおいて、下顎部116aと上顎部14との対向面に加え、切断カッター15の側面にも同軸電極20を設けてもよいし、上顎部14に同軸電極20を設けず、下顎部116aの上面と切断カッター15の側面とに同軸電極20を設けてもよい。さらには、上顎部14と下顎部116aの対向面との一方にのみ同軸電極20を設けてもよい。
【0150】
また、図19に示すように、エンドエフェクタ10cにおける上顎部14及び下顎部116aに設けた同軸電極20の代わりに、上述の照射用電極24a,24bを備えてもよい。さらに、切断カッター15の側面に照射用電極24cを設けてもよい。なお、図19(a)は照射用電極24(24a,24b,24c)を備えたエンドエフェクタ10cの縦断面図を示し、図19(b)は照射用電極24を備えたエンドエフェクタ10cの一部拡大縦断面図を示している。
【0151】
さらにまた、上述の鉗子1,1X,1Yにおける上顎部14、切断カッター15及び下顎部116のうち少なくともひとつに、同軸ケーブル40によってマイクロ波発信器30に接続された同軸電極20を設けてもよい。
【0152】
なお、エンドエフェクタ10cにおける下顎部116aと上顎部14との両方に同軸電極20を設けた場合、あるいは、下顎部116aと切断カッター15に同軸電極20を設けた場合、さらには、下顎部116a、上顎部14及び切断カッター15の全部に同軸電極20を設けた場合も、エンドエフェクタ10cにおける切断機構で例えば血管Bにおける凝固された部分を切断することができる。
【0153】
なお、マイクロ波を照射するエンドエフェクタ10cなどの手術機器は煙や、ミストを出すことが少なく、止血機能も強力で、鏡視下手術やロボット手術など閉鎖空間での手術支援に最適である。しかし、出血が多い場合の血液溜まり内止血や、液体中の止血力は他のエネルギー機器と同様に減弱する。
【0154】
図20は本発明の他の実施例における医療機器220を示す。図20(a)において、医療機器220は、図16図19とともに説明されたような多機能手術機器(医療用処理具)のエンドエフェクタ10cを駆動する手術装置221を含んでいる。
【0155】
手術装置221は、照射器及び増幅器などのマイクロ波制御回路を含むマイクロ波照射モジュール222と、レバー223の手動操作によりエンドエフェクタ10cを駆動するメカ機構の駆動ユニット224を含んでいる。具体的には、図1図13に示した鉗子のトリガハンドル13をレバー223とし、トリガハンドル13からエンドエフェクタ10cに至るメカ機構を手術装置221に組み入れても良い。
【0156】
照射器を有するマイクロ波照射モジュール222は、手術装置221内に設けているが、必要によりシャフト部225の内部に、又は手首機能を有する屈曲部226(図16の可撓部101など)に、若しくはエンドエフェクタ10c(図1及び図2、又は図16(a)の電子モジュール31)に設けることにより、医療機器220を超小型化することが可能となる。
【0157】
操作者がマニュアルで手術装置221のグリップ部のレバー223を把持操作することにより、駆動ユニット224が図16のエンドエフェクタ10cを、シャフト部225を介して操作する構成である。
【0158】
手術装置221にはアダプタ227から電源の供給を受ける。手術装置221に含まれるマイクロ波照射モジュール222は従来の据え置き型や肩掛け型、内蔵型以外にロボット本体に設置された照射器に直接間接的に繋がるように構成してもよい。
【0159】
上記実施例において、マイクロ波の照射は、エンドエフェクタ10cの下顎部116と上顎部14で把持する時に凝固するのではなく、下顎部116に対して上顎部14が回動する際に対象部位である生体組織を凝固しても組織の凝固止血切断は可能となる。さらに、エンドエフェクタ10cにおける把持機構17aで生体組織を把持して切断カッター15で切る際にマイクロ波を照射してもよい。
【0160】
このような鉗子であれば組織を開排、把持して邪魔なものを除け、術野を整備する操作に把持機能を使うことができ、しかも凝固切断したい部分を鉗子で把持し、そのまま凝固切断することが可能である。凝固と切断の操作が複数にわたる組織把持し直しや、挟み込みのし直しにはならず、一度挟んだものを握りこみで操作を完成することになる。したがって、手術操作が把持、凝固、切断を一つのデバイスのままで実行可能になる。
一般的な切除手術の操作全てであり、単独の器具で切除手術を完遂でき、他器具との取り替えが不要となる。
【0161】
本実施例の変形例として、マイクロ波照射モジュール222に実行プログラムメモリを設け、駆動ユニット224を実行プログラムにより制御される電動のメカ機構とする構成としてもよい。動作としては、レバー223を把持すると、レバー223の位置データに基づいて、実行プログラムが駆動ユニット224を可動させ、図16のエンドエフェクタ10cの構成とすることで、上顎用ワイヤー16aやカッター用ワイヤー16bのそれぞれを移動させることにより、上顎部14を下顎部116の方向に回動させ、前記プログラムにより、マイクロ波信号を照射用電極24に送り、マイクロ波を照射することで生体組織を凝固させることができる。
【0162】
また、レバー223を把持すると、前述のとおり前記位置データに従って前記プログラムにより上顎用ワイヤー16aの近接側ワイヤー161が引張方向に移動し、前記生体組織を上顎部14aと下顎部116aで把持することができる。
【0163】
さらにまた、レバー223を把持すると、レバーの位置データにより上記プログラムによりカッター用ワイヤー16bの近接側ワイヤー161が引張方向に移動して切断カッター15のみを回動させることにより、凝固した上記生体組織を切断する。切断した後、レバー223を解放することにより、レバーの位置データに基づき、医療機器220は初期状態(開状態)に戻る構成とする。
【0164】
なお、下顎部116に対する上顎部14や切断カッター15の回動位置、ピニオンギア12の回転、固定ハンドルフレーム111に対するトリガハンドル13(13a,13b)の位置を検知し、検知結果に基づく検知信号を受信して切断機構10や把持機構17の状態を検出するように構成してもよい。
【0165】
図20(b)は、図20(a)に図示する医療機器220を複数備えた手術システムの概略図であり、それぞれの内部構成は、図20(a)と同様であるが、医療機器220の各マイクロ波照射モジュール222には、更に、お互いのマイクロ波の波長を同期させるユニットが含まれており、アダプタ227を介して又は無線で同期させている。
【0166】
そのため、二つの医療機器220を一人又は二人の操作者により患者内で操作するときに、双方のマイクロ波の波長が同期していることにより、二つの医療機器220間でスパークなどの発生を防ぐことができ、安全性が高まる。
【0167】
図21は、本発明の一実施例における、遠隔手術システム200を示す。遠隔手術システム200は、2人の操作者D(D1、D2)のそれぞれのステーションとなる外科医コンソール201、操作者Dにより操作されるマスタ制御ユニット202、視角・コアカート240,患者側カートである患者側カート210のロボットを有する。
【0168】
外科医コンソール201は、手術部位の画像が操作者Dに表示されるビューア201aを備える。外科医コンソール201を使用する場合、操作者D1及び/又はD2は、一般的には、外科医コンソールの椅子に座り、自身の両目をビューア201aの前に合わせ、マスタ制御ユニット202を片手に把持する。
【0169】
遠隔手術システム200では、操作者2人が同時に操作することができるが、操作者一人でも操作することができる。操作者2人が同時に操作する場合は2者の連携操作が可能となり、全体の患者の手術時間を短縮できる利点がある。外科医コンソール201及びマスタ制御ユニット202は、必要によりそれぞれ3台以上設けるシステムにしてもよい。
【0170】
患者側カート210のロボットは、患者に隣接して設置される。使用中、患者側カート210は、手術を必要とする患者の近くに設置される。患者側カート210のロボットは、外科手術中は固定されるが移動できるように台座211にはキャスタを備える。外科医コンソール201は、患者側カートと同じ手術室内で使用されるが、患者側カート210から遠隔に設置してもよい。
【0171】
患者側カート210は、4つのロボットアーム組立体212を含むが、ロボットアーム組立体212の数は任意である。各ロボットアーム組立体212は、3次元移動を可能にする駆動装置213に接続され駆動制御される構造としている。
【0172】
表示器214は手術に関連する画像データを表示する。駆動装置213は、外科医コンソール201のマスタ制御ユニット202により制御される。ロボットアーム組立体212のマニピュレータ部分の動きは、マスタ制御ユニット202の操作によって制御される。
【0173】
4つのロボットアーム組立体212のうちひとつのロボットアーム組立体212aには、内視鏡などの画像取込み機器215が配置される。画像取込み機器215の遠隔端部に視認カメラ216を含んでいる。細長いシャフト状の画像取込み機器215によって、患者(図示省略)の手術侵入ポートを通して視認カメラ216を挿入することが可能になる。
画像取込み機器215は、その視認カメラ216に取り込まれた画像を表示するために、外科医コンソール201のビューア201aに動作可能に接続される。
【0174】
他のロボットアーム組立体212の各々は、着脱可能な手術器具であるツール217をそれぞれ支持および含むリンク装置である。ロボットアーム組立体212のツール217は、それぞれエンドエフェクタ10cを含む。
【0175】
ツール217は、患者の手術侵入ポートを通してエンドエフェクタ10cを挿入することを可能にするように、細長いシャフトを有する。エンドエフェクタ10cの動きは、外科医コンソール201のマスタ制御ユニット202によって制御される。
【0176】
ツール217として、エンドエフェクタ10cにマイクロ波照射用の電極(20,24)とマイクロ波照射ユニットが使われる場合、それぞれエンドエフェクタ10cから照射されるマイクロ波の波長を同期させる構成としている。
【0177】
例えば、一人又は二人の操作者Dにより患者内で複数のツール217を操作するときに、照射されるマイクロ波の波長が同期していることにより、複数のツール217間又は複数のエンドエフェクタ10c間でスパークなどの発生を防ぐことができ、安全性が高められる。同時に複数のエンドエフェクタ10cを操作することは高度の手術のみならず手術時間を短縮できる。
【0178】
図22は、図21の遠隔手術システム200のロボットアーム組立体212に装填され得るツール217を手術装置の代表例として構成を示す。他のロボットアーム組立体212に装着されるツール217は同様の構成でもよいし、他の構成の手術装置であってもよい。
【0179】
図22(a)は、ツール217の平面図を示す。ツール217は、多機能手術機器のエンドエフェクタ10c、屈曲部226、シャフト部225、ツール217を駆動制御・モニタする手術装置221、ロボットに結合するコネクタ228を有する。屈曲部226はエフェクタの操作角度の自由度を増し、ロボット制御の精度が向上する。
【0180】
図22(b)は図22(a)のツール217の内部構成を示す。図16のスライド軸に直結するエンドエフェクタ10cを、シャフト部225を介して駆動する手術装置221、手術装置221を制御する患者側カート210のロボットで構成される医療システムを示す。
【0181】
エンドエフェクタ10cは開閉可能に保持された回動可能な上顎部14と下顎部116と、上顎部14と下顎部116に併設された可動な切断カッター15とを有する切断器を備える。エンドエフェクタ10cと接続される手術装置221はツール217との整合ユニット231,反射波モニタ232,手術装置内の信号を制御する制御回路233,ツール217のシャフト部225を介してツール217の切断器を機械的に駆動するアンプとマイクロ波発生の照射器を有する照射・駆動ユニット234、患者側カート210のロボットとの信号インターフェース235を有する。
【0182】
図23にも動作説明しているが、患者側カート210のロボットは、手術装置221と信号インターフェース235とコネクタ228を介して有線及び/又は無線で接続されており、患者側カート210のロボットの内部には、マスタ制御ユニット202からの操作信号を受信する入力ユニット210aと、操作信号に基づき予め定められた操作プログラムを実行する演算ユニットCPUと、該演算ユニットからの出力に基づき手術装置221を介してエンドエフェクタ10cの上顎部14と切断カッター15を駆動する駆動信号を発生する出力ユニット210aを備えている。前記入力ユニットと前記出力ユニットは、入出力ユニット210a(I/O)で構成される。
図23は、遠隔手術システム200の説明図であり、図23(a)は各ユニットとの接続関係を示すブロック図であり、図23(b)は遠隔手術システム200の動作フロー図である。
【0183】
視覚・コアカート240は、画像取込み機器に関連する機能を有する。手術のために遠隔手術システム200を起動すると、外科医は、外科医コンソール201のマスタ制御ユニット202を操作し、外科医が2名の場合は、外科医コンソール201のマスタ制御ユニット202も操作し(ステップS1)、操作により生成されたコマンドは、視覚・コアカート240に送信される(ステップS2)。
次いで、視覚・コアカート240は、信号を解釈し、所望のロボットアーム組立体212を患者の手術領域に移動をさせる(ステップS3)。
【0184】
次に選択されたロボットアーム組立体212に取り付けられたツール217を細長いパイプを通して患者に挿入し(ステップS4)、上記実施例のエンドエフェクタ10cに、組織体を把持・凝固・切断の動作をさせて(ステップS5)、生体組織の手術を完了させる。
【0185】
なお、ステップS5における生体組織を把持・凝固・切断の動作は、エンドエフェクタ10cの動作であるが、電極からマイクロ波を照射しながら、生体組織に対して凝固、把持、及び切断を行う第1動作パターン、生体組織を把持してから、電極からマイクロ波を照射して凝固させるとともに、電極からマイクロ波を照射しながら切断する第2動作パターン、並びに電極からマイクロ波を照射しながら生体組織を把持するとともに凝固するものの、電極からのマイクロ波の照射を停止して切断する第3動作パターンの3つの動作パターンがある。これら3つの動作パターンは、手術内容に応じて選択的に取り得る構成としている。また、ツール217で把持又は凝固し、他のツール217で切断するなど図21の複数のツールで分担して動作するパターンとしてもよい。
【0186】
本実施例における、組織体の凝固・把持・切断の動作は、図20の実施例の変形例として述べたレバー223の位置データに基づくエンドエフェクタ10cの制御動作の代わりに、ロボット210からの制御信号に基づくエンドエフェクタ10cの動作にすることで、同様の制御動作フローが得られる。
【0187】
すなわち、開閉可能に組付けられた第1把持部及び第2把持部と、前記第1把持部を前記第2把持部に向かって回動させる把持部回動手段とを有する把持機構と、前記第1把持部に併設された切断部と、前記切断部に前記第1把持部の回動と同方向に回動させる切断部回動手段とを有する切断機構が設けられ、前記第2把持部に対して、前記第1把持部及び前記切断部を回動可能に軸支する回動軸が備えられ、前記把持部回動手段と前記切断部回動手段をそれぞれ独立して駆動する駆動ユニットと、該駆動ユニットに駆動信号を印加することによって、対象部位を把持した状態で、前記対象部位を、凝固及び切断するように構成された医療用ロボットを有する医療システムを提供できる。
【0188】
他の実施例として、図24に、鉗子1Dの構成図を示している。図24(a)は鉗子1Dの背面図を示し、図24(b)は鉗子1Dの先端部のエンドエフェクタ部10Dの正面図を示し、図24(c)は図24(a)に示すエンドエフェクタ部10Dの平面図を示し、図24(d)は鉗子1Dの部分断面外観図を示し、図24(e)は、鉗子1Dと駆動ユニット32を接続するチューブTの断面図をそれぞれ示している。
【0189】
鉗子1Dを駆動制御する駆動ユニット32を備え、鉗子1Dと駆動ユニット32とは、可撓性を有するチューブT内に挿通された、上顎部14を回動させる駆動ワイヤー16Da、切断カッター15を回動させる駆動ワイヤー16Db、上顎部14の電極24aと下顎部116の電極24bに接続されている同軸ケーブル24Dで接続されている。
【0190】
エンドエフェクタ部10Dは、固定の下顎部116、上顎部14、切断カッター15で構成され、下顎部116が設けられた本体フレーム11の基部11AはチューブTの先端に設けられた取付具60に取り付けられるように構成されている。
【0191】
回転軸141に軸支され、回転軸141の上方向に離間した係合軸143には駆動ワイヤー16Daの先端部が上顎部14の基部を回動可能に係合している。駆動ワイヤー16Daが先端側Fに移動すると係合軸143は先端側Fに移動し、回転軸141に軸支された上顎部14が下顎部116に近接する方向に回動する。そして、上顎部14と下顎部116により生体組織などの対象物を把持する。逆に、駆動ワイヤー16Daを基端側Rに移動すると、上顎部14は下顎部116から離間して把持を解消する構造としている。
【0192】
図24(a)と図24(c)において、切断カッター15は上顎部14に対し独立して回動可能に併設され、切断カッター15の基部は下顎部116に設けられた回転軸151に軸支され、回転軸151の上方向に離間した係合軸154には駆動ワイヤー16Dbの先端部が切断カッター15の基部を回動可能に係合している。
【0193】
駆動ワイヤー16Dbが先端側Fに移動すると係合軸154は先端側Fに移動し、回転軸151に軸支された切断カッター15が下顎部116に近接する方向に回動して接合することにより、生体組織などの対象物を切断する。逆に、駆動ワイヤー16Dbを基端側Rに移動すると、切断カッター15は下顎部116から離間して切断状態が解消する構造としている。
【0194】
同軸ケーブル24Dの中心導体は電極24aに接続され、外部導体は電極24bに接続されるが、両電極との接続構造は、本実施例に限定されることなく、前述の実施例の電極接続構造にしてもよい。同軸ケーブル24Dは図24(d)に示す通り、チューブTの中空部に挿通することに駆動ワイヤー16Da,Dbと共に鉗子1Dから導出され、駆動ユニット32に接続される。
【0195】
駆動ユニット32は、電極24a,24bに電磁波、マイクロ波、高周波、電流を供給する回路を備え、内部又は外部信号に基づき、駆動ワイヤー16Da,Dbを選択的に又は同時に鉗子1D方向に押し込むか、鉗子1Dから離間する方向に引くことにより、上顎部14と切断カッター15を個別に回動制御できる制御ユニットを備える。駆動ユニット32にはマイクロモーターMが内蔵されており、電気信号で上顎部14と切断カッター15を個別に回動駆動が可能となる。
【0196】
本実施例に従えば、エンドエフェクタ部10Dはバネ、ギアなどの差動メカニズムは不要とする簡素な構造のため、生体組織が入り込むことによる誤動作を防ぐことができ、特に、口径数ミリの極細の鉗子に適する。駆動ワイヤー16Da,Dbは、図24(e)のように、チューブTの内壁を這わせることにより、進行方向に移動が強制され、内視鏡の鉗子に適する。チューブT、及び駆動ワイヤー16Dは共に可撓性で構成されているが、ワイヤーは薄板の長尺部材でもよく、必要により剛性材料で構成してもよい。
【0197】
駆動ユニット32の機能を図20の医療機器の駆動ユニット224に、又は図22手術装置の照射・駆動ユニット2に組み込むことにより、携帯の医療機器、ロボットによる穿孔機能、把持機能、凝固機能、切断機能、開排機能の多機能を容易に提供することができる。
【0198】
例えば、図23のフローチャートにおけるステップS5において、図22のツール217のエンドエフェクタ10cに本実施例のエンドエフェクタ部10Dを適用すると、上顎部14と切断カッター15を容易に独立して駆動できるため、図25に示すように、
(1)上顎部、下顎部、切断カッターをすべて閉じる操作をして穿孔機能の提供をし、
(2)上顎部と下顎部を合わせる操作をしての把持機能を提供し、
(3)第2の把持機能状態で凝固ボタン操作をして凝固機能を提供し、
(4)切断カッターの操作で切断機能を提供し、
(5)上顎部と下顎部を開閉することにより、開排機能を提供する。
これにより、手術現場で、交換することなく一本の鉗子のツール217で多機能の鉗子機能を提供することができる。
【0199】
すなわち、把持機構と切断機構とを有するエンドエフェクタと、該エンドエフェクタを駆動する駆動ユニットとが備えられ、前記把持機構は、開閉可能に組付けられた第1把持部及び第2把持部と、前記第1把持部を前記第2把持部に向かって回動させる把持部回動手段とを有し、前記切断機構は、前記第1把持部に併設された切断部と、前記切断部を前記第1把持部の回動と同方向に回動させる切断部回動手段とを有し、前記駆動ユニットは、前記第1把持部と前記第2把持部と前記切断部を組み合わせ駆動することにより、穿孔機能、把持機能、凝固機能、切断機能、及び開排機能のうち少なくともひとつを選択的に提供する医療用ツールを提供できる。医療用ツールを単独で使用してもよいし、ロボットからの制御信号で駆動する医療ロボットにも使用できる。また、把持部と切断部を全て閉じ一体化した場合、開窓に使え、この状態から切断部と把持部の一方が一体となって開く場合、開排に使え、ロボットに手術操作を全て記録して残し、人工知能(AI)の機能を使った手術も可能となる。
【0200】
上述の実施例及び実施態様は、鉗子及び医療器具など、医療を例に記載したが、本発明は上記記載に限定されることなく、対象部位として、物の一部だけでなく、部材であってもよく、対象部材を把持/当接し、切断できる汎用の切断器を含む。また、鉗子の電極から照射するエネルギー波は、マイクロ波に限らず、その他の電磁波や電流を含めてよい。
【0201】
例えば、上述のように、鉗子1,1X,1Y等における切断機構10やエンドエフェクタ10cでは、下顎部116及び上顎部14で把持機構17を構成し、把持機構17で把持した血管B等の対象部位を切断カッター15で切断するように構成したが、図6(d)に示すように、下顎部116及び上顎部14で構成する把持機構17を、切断カッター15を挟んで両側に備え、二組の把持機構17で把持した間の対象部位を切断カッター15で切断するように構成してもよい。
【0202】
また、本発明の鉗子又はエンドエフェクタで水平移動は軸移動に限らず、エンドエフェクタの位置、角度の自由度を高めるため、ワイヤーで繋げた構造としてもよい。生体組織を把持、凝固、切断を行わせるための上顎部と切断カッターを移動させるバネ機構は実施例に限らず任意の位置に設けてもよい。
【0203】
また、電極や刃先以外は腐食、スパークを防ぐため適宜、絶縁コーテイングしてもよい。上記実施例では、上顎部14や切断カッター15と下顎部116の間にある組織を両サイドから凝固可能としている。エンドエフェクタにマイクロ波を供給する同軸ケーブルの分割部位は、複数の関節の動きを制約せず複数のロボット関節をしなやかなケーブルにて超えてエネルギーを送る構造が可能となる。
【0204】
また、金属製の刃を使うことで、剛性、形を自在に設計できる。本発明の鉗子、エンドエフェクタを有する医療機器は、MR画像誘導下で使え、マイクロ波エネルギーを鏡視下やロボットハンドのみならず、血管内外科や胎児外科に導入可能となる
【0205】
上記実施例では、上顎部14や切断カッター15と下顎部116の間にある組織を両サイドから凝固可能とする。エンドエフェクタにマイクロ波を供給する同軸ケーブルの分割部位は、複数の関節の動きを制約せず複数のロボット関節をしなやかなケーブルにて超えてエネルギーを送ることが可能となる。
【0206】
また、金属製の刃を使うことで、剛性、形を自在に設計できる。本発明の鉗子、エンドエフェクタを有する医療機器は、MR画像誘導下で使え、マイクロ波エネルギーを鏡視下やロボットハンドのみならず、血管内外科や胎児外科に導入可能となる。
【0207】
本発明の実施形態は、全ての点で例示であり、本発明の範囲は特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0208】
1,1A,1B,1X,1Y…鉗子
10,10X…切断機構
10c…エンドエフェクタ
11,11X,11Y…本体フレーム
11a…基準軸
13a…把持用トリガハンドル
13b…切断用トリガハンドル
14…上顎部
15…切断カッター
19…バネ
17…把持機構
18Y…アーム
20…同軸電極
21…中央導体
22…半円絶縁体
23…半円管導体
24a,24b,24c…(照射)電極
30…マイクロ波発信器
40…同軸ケーブル
41…中央導体
42…絶縁体
43…外側導体
44…絶縁被覆
51…ラチェットフック
111…固定ハンドルフレーム
112…基準フレーム
113…指輪部
115…支持軸
116…下顎部分
117…先端支持部
121,121Ya,121Yb…上支持軸
122,122Xa,122Yb…先端上支持軸
200…遠隔手術システム
212,212a…ロボットアーム組立体
220…医療機器
221…手術装置
B…血管
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