(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096303
(43)【公開日】2022-06-29
(54)【発明の名称】熱交換器及びこの熱交換器を用いた空気調和機
(51)【国際特許分類】
F28F 9/02 20060101AFI20220622BHJP
F28F 9/013 20060101ALI20220622BHJP
F28F 9/22 20060101ALI20220622BHJP
F28D 7/16 20060101ALI20220622BHJP
F24F 1/0067 20190101ALI20220622BHJP
F24F 1/0325 20190101ALI20220622BHJP
F25B 39/00 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
F28F9/02 E
F28F9/013 B
F28F9/22
F28D7/16 A
F24F1/0067
F24F1/0325
F25B39/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020209343
(22)【出願日】2020-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】阿形 葉
(72)【発明者】
【氏名】金 鉉永
(72)【発明者】
【氏名】李 相武
【テーマコード(参考)】
3L051
3L065
3L103
【Fターム(参考)】
3L051BF10
3L065DA04
3L103AA05
3L103AA37
3L103BB42
3L103CC17
3L103DD08
3L103DD18
3L103DD33
3L103DD36
3L103DD44
(57)【要約】 (修正有)
【課題】シェルの内径およびチューブの間隔を狭くしつつも、第1流体をシェル内で折り返せるようにする。
【解決手段】シェル10と、シェル内に設けられた複数のチューブ20とを備えた熱交換器100であって、シェルの一方側に設定されて第1流体が流入する流入領域Siと、シェルの他方側に設定された折返し領域Srと、シェルの一方側又は他方側に設定されて第1流体L1を流出させる流出領域Soとを有し、複数のチューブには、第1流体を流入領域から折返し領域に導く往路チューブ20(a)と、第1流体を折返し領域から流出領域に導く復路チューブ20(b)とが少なくとも含まれており、シェル内に設けられて、流入領域、折返し領域、および流出領域を仕切るとともに、少なくとも往路チューブ又は復路チューブが貫通する仕切板30(a,b)をさらに備えるようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェルと、前記シェル内に設けられた複数のチューブとを備え、前記チューブ内を流れる第1流体と、前記シェル内において前記複数のチューブの外側を流れる第2流体との間で熱交換する熱交換器であって、
前記シェルが、前記シェルの一方側に設定されて前記第1流体が流入する流入領域と、前記シェルの他方側に設定された折返し領域と、前記シェルの一方側又は他方側に設定されて前記第1流体を流出させる流出領域とを有し、
前記複数のチューブには、前記第1流体を前記流入領域から前記折返し領域に導く往路チューブと、前記第1流体を前記折返し領域から前記流出領域に導く復路チューブとが少なくとも含まれており、
前記シェル内に設けられて、前記流入領域、前記折返し領域、及び前記流出領域を仕切るとともに、少なくとも前記往路チューブ又は前記復路チューブが貫通する仕切板をさらに備える、熱交換器。
【請求項2】
前記往路チューブ及び前記復路チューブが、互いに別体である、請求項1記載の熱交換器。
【請求項3】
前記往路チューブと前記復路チューブとの長さが互いに異なる、請求項1又は2記載の熱交換器。
【請求項4】
前記シェルの一方側から他方側に向かって、前記流出領域、前記流入領域、及び前記熱交換領域がこの順で配置されている、請求項1乃至3のうち何れか一項に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記シェルが、前記第2流体が流れる熱交換領域を有し、
前記熱交換領域が、前記流入領域、前記折返し領域、及び前記流出領域に対して前記仕切板により仕切られている、請求項1乃至4のうち何れか一項に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記熱交換領域に設けられて、前記第2流体の流れ方向を変えるバッフルを備える、請求項5記載の熱交換器。
【請求項7】
前記バッフルが前記熱交換領域に複数設けられており、
前記第2流体の下流側において互いに隣り合う前記バッフルの間隔が、前記第2流体の上流側において互いに隣り合う前記バッフルの間隔よりも狭い、請求項6記載の熱交換器。
【請求項8】
前記熱交換領域において、前記チューブの外表面に設けられた拡大伝熱面を備える、請求項5乃至7のうち何れか一項に記載の熱交換器。
【請求項9】
前記拡大伝熱面が前記熱交換領域において複数設けられており、
前記第2流体の下流側において互いに隣り合う前記拡大伝熱面の間隔が、前記第2流体の上流側において互いに隣り合う前記拡大伝熱面の間隔よりも狭い、請求項8記載の熱交換器。
【請求項10】
前記熱交換領域において、互いに隣り合う前記チューブの間に設けられた第2のバッフルを備える、請求項5乃至9のうち何れか一項に記載の熱交換器。
【請求項11】
前記チューブの内面に凹部又は凸部が形成されている、請求項1乃至10のうち何れか一項に記載の熱交換器。
【請求項12】
請求項1乃至11のうち何れか一項に記載の熱交換器を具備する空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器及びこの熱交換器を用いた空気調和機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の熱交換器としては、シェルと、このシェル内に設けられた複数のチューブとを備え、チューブ内を流れる第1流体と、シェル内においてチューブの外側を流れる第2流体との間で熱交換する、所謂シェルアンドチューブ熱交換器がある。
【0003】
この種の熱交換器は、シェル内に、第1流体が流入する流入領域と、第2流体が流れて第1流体との間で熱交換する熱交換領域と、第1流体を流出させる流出領域とが設けられている。
【0004】
かかる構成において、特許文献1に示すものは、流入領域及び流出領域をシェルの一方側に設けるとともに、熱交換領域をシェルの中央部に設け、シェルの他方側には第1流体を折り返すための折返し領域が設けられている。
【0005】
より具体的に説明すると、同文献に示す熱交換器は、流入領域に流入した第1流体を折返し領域に導く往路チューブと、折返し領域に導かれた第1流体を流出領域に導く復路チューブとを備えており、流入領域及び流出領域が、往路チューブ及び復路チューブの間に設けられた仕切板により仕切られている。
【0006】
このような構成によれば、シェルの一方側に流入した第1流体を折り返すことなくシェルの他方側から流出させる構成に比べて、チューブの総本数を変えることなく、第1流体が流入する本数を減らすことができる。これにより、第1流体の流速を上げることができ、熱伝達率の向上を図れる。
【0007】
一方、熱伝達率の向上を図る別の態様としては、チューブの外側を流れる第2流体の流速を上げるべく、シェルの内径を小さくするとともに、チューブの間隔を狭くする態様(細径高集積化)を挙げることができる。
【0008】
しかしながら、このようにチューブの間隔を狭くすると、上述した第1流体を折り返す態様に用いられる仕切板を往路チューブと復路チューブとの間に設けることができなくなる。
【0009】
もちろん、仕切板を入れる部分のみチューブ間隔を広げる態様も取り得るが、この場合は、それに伴いシェルの大径化を導く上、第2流体が二相冷媒であった場合には、偏流を招来する恐れもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、上述した問題を一挙に解決すべくなされたものであり、シェルの内径を小さくするとともに、チューブの間隔を狭くしつつも、第1流体をシェル内で折り返せるようにすることを主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち本発明に係る熱交換器は、シェルと、前記シェル内に設けられた複数のチューブとを備え、前記チューブ内を流れる第1流体と、前記シェル内において前記複数のチューブの外側を流れる第2流体との間で熱交換する熱交換器であって、前記シェルが、前記シェルの一方側に設定されて前記第1流体が流入する流入領域と、前記シェルの他方側に設定された折返し領域と、前記シェルの一方側又は他方側に設定されて前記第1流体を流出させる流出領域とを有し、前記複数のチューブには、前記第1流体を前記流入領域から前記折返し領域に導く往路チューブと、前記第1流体を前記折返し領域から前記流出領域に導く復路チューブとが少なくとも含まれており、前記シェル内に設けられて、前記流入領域、前記折返し領域、及び前記流出領域を仕切るとともに、少なくとも前記往路チューブ又は前記復路チューブが貫通する仕切板をさらに備えることを特徴とするものである。
【0013】
このように構成された熱交換器によれば、仕切板が、往路チューブや復路チューブが貫通するように設けられているので、この仕切板の配置は、シェルの内径を小さくしたり、往路チューブと復路チューブとの間隔を狭くしたりすることに阻害されない。
これにより、シェルの細径化及びチューブの高集積化を図りつつ、第1流体をシェル内で折り返すことができるので、第1流体及び第2流体の流速を向上させることができ、従来に比べて熱伝達率の飛躍的な向上を図れる。
【0014】
仮に、往路チューブ及び復路チューブをU字状につなげて一体的な1本のチューブとする場合、シェルの細径化やチューブの高集積化を実現するためには、種々の曲げ方をしたU字状チューブが必要となり、しかもU字状チューブ同士が干渉しないよう配置も制限され、製造性の低下を招来する。
そこで、製造性を担保するためには、前記往路チューブ及び前記復路チューブが、互いに別体であることが好ましい。
このような構成であれば、製造性を担保できるだけでなく、例えば往路チューブ及び復路チューブとして互いに異なる径のチューブを用いるなど、設計の自由度を大きく向上させることができる。しかも、U字状チューブを用いる場合に比べて、往路チューブ及び復路チューブの間隔を狭めることができるので、これによる第2流体の流速の向上をも図れる。
【0015】
前記往路チューブと前記復路チューブとの長さが互いに異なることが好ましい。
このような構成であれば、流入領域及び流出領域をシェルの軸方向においてずらした領域に設定することができ、これらの領域を往路チューブや復路チューブが貫通する仕切板によって仕切ることができる。
【0016】
前記シェルの一方側から他方側に向かって、前記流出領域、前記流入領域、及び前記折返し領域がこの順で配置されていることが好ましい。
このような構成であれば、流入領域には、流入領域及び折返し領域を接続する往路チューブのみならず、折返し領域及び流出領域を接続する復路チューブまでもが通過するので、流入領域に流入した第1流体が多数本のチューブに当たり、その流れを乱すことができ、熱交換効率の向上を図れる。
【0017】
より具体的な実施態様としては、前記シェルが、前記第2流体が流れる熱交換領域を有し、前記熱交換領域が、前記流入領域、前記折返し領域、及び前記流出領域に対して前記仕切板により仕切られている態様を挙げることができる。
【0018】
熱交換領域における熱伝達率の向上を図るためには、前記熱交換領域に設けられて、前記第2流体の流れ方向を変えるバッフルを備えることが好ましい。
【0019】
第2流体が低温二相の場合、熱交換領域における下流側ではドライアウトが発生して熱伝達率が低下することが懸念される。
そこで、前記バッフルが前記熱交換領域に複数設けられており、前記第2流体の下流側において互いに隣り合う前記バッフルの間隔が、前記第2流体の上流側において互いに隣り合う前記バッフルの間隔よりも狭いことが好ましい。
これならば、熱交換領域の下流側における第2流体の流速をさらに上げることができ、ドライアウトによる熱伝達率の低下を抑制することができる。
【0020】
熱交換領域における熱伝達率のさらなる向上を図るためは、前記熱交換領域において、前記チューブの外表面に設けられた拡大伝熱面を備えることが好ましい。
【0021】
前記拡大伝熱面が前記熱交換領域において複数設けられており、前記第2流体の下流側において互いに隣り合う前記拡大伝熱面の間隔が、前記第2流体の上流側において互いに隣り合う前記拡大伝熱面の間隔よりも狭いことが好ましい。
これならば、上述したようにドライアウトが生じ得る下流側において、第2流体の流速を上げることができ、ドライアウトによる熱伝達率の低下を抑制することができる。
【0022】
前記熱交換領域において、互いに隣り合う前記チューブの間に設けられた第2のバッフルを備えることが好ましい。
これならば、シェル内の熱交換領域を流れる第2流体に対して往路及び復路を形成することができ、第2流体の流速を上げることができ、第1流体及び第2流体の間での伝熱を促進させることができる。
【0023】
前記チューブの内面に凹部又は凸部が形成されていることが好ましい。
これならば、チューブの内周面における伝熱面積の拡大と、チューブ内を流れる第1流体の乱流促進が可能となり、熱交換量の向上を図れる。
【0024】
また、本発明に係る空気調和機は、上述した熱交換器を具備することを特徴とするものであり、このような空気調和機によれば、上述した熱交換器と同様の作用効果を奏し得る。
【発明の効果】
【0025】
このように構成した本発明によれば、シェルの内径を小さくするとともに、チューブの間隔を狭くしつつも、第1流体をシェル内で折り返すことができ、第1流体及び第2流体の流速を上げることが可能となり、熱伝達率を従来に比べて飛躍的な向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本実施形態における熱交換器の内部構成を示す模式図。
【
図2】同実施形態における熱交換器による作用効果を示す実験データ。
【
図3】その他の実施形態における熱交換器の内部構成を示す模式図。
【
図4】その他の実施形態における熱交換器の内部構成を示す模式図。
【
図5】その他の実施形態における熱交換器の内部構成を示す模式図。
【
図6】その他の実施形態におけるバッフルを示す模式図。
【
図7】その他の実施形態におけるバッフルを示す模式図。
【
図8】その他の実施形態における拡大伝熱面を示す模式図。
【
図9】その他の実施形態における拡大伝熱面を示す模式図。
【
図10】その他の実施形態における第2のバッフルを示す模式図。
【
図11】その他の実施形態におけるチューブの内周面の構造を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る熱交換器の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0028】
本実施形態に係る熱交換器は、圧縮機、室外熱交換器、絞り機構、及び室内熱交換器が接続された冷媒回路を備える空気調和機において、室外熱交換器又は室内熱交換器の少なくとも一方に用いられるものである。
【0029】
具体的にこの熱交換器100は、
図1に示すように、所謂シェルアンドチューブ熱交換器であり、シェル10と、シェル10内に設けられた複数のチューブ20とを備え、チューブ20内を流れる第1流体L1と、シェル10内においてチューブ20の外側を流れる第2流体L2との間で熱交換するものである。
【0030】
本実施形態の熱交換器100は、
図1に示すように、第1流体L1がシェル10内で少なくとも1度は折り返すように、言い換えれば、シェル10の一方側に流入した第1流体L1が、シェル10の他方側に導かれた後、再びシェル10の一方側に導かれるように構成されている。
【0031】
シェル10は、筒状をなすものであり、
図1に示すように、その内部空間には、第1流体L1が流入する流入領域Siと、第1流体L1を流出させる流出領域Soと、第2流体L2が流入出するとともに第1流体L1と第2流体L2との間で熱交換が行われる熱交換領域Seとが設けられている。
【0032】
流入領域Siは、シェル10の軸方向一方側に設定されており、第1流体L1をこの流入領域Siに流入させる第1流入ポートPaが設けられている。
【0033】
流出領域Soは、シェル10の軸方向一方側に設定されており、第1流体L1をこの流出領域Soから流出させる第1流出ポートPbが設けられている。
【0034】
本実施形態では、流入領域Siと流出領域Soとが互いに隣り合うように設けられており、ここでは流出領域Soが流入領域Siよりも外側(軸方向一方側)に設けられている。ただし、流出領域Soが流入領域Siよりも内側(軸方向他方側)に設けられていても良い。
【0035】
また、第1流入ポートPa及び第1流出ポートPbは、ここではシェル10の軸を挟むように配置されており、互いに反対を向く方向に開口している。ただし、第1流入ポートPa及び第1流出ポートPbは、必ずしも反対を向く方向に開口している必要はなく、例えば互いに直交する方向を向くように開口するなど、その配置は適宜変更して構わない。
【0036】
熱交換領域Seは、シェル10の軸方向中央部に設定されており、第2流体L2をこの熱交換領域Seに流入させる第2流入ポートPcと、第2流体L2をこの熱交換領域Seから流出させる第2流出ポートPdとが設けられている。
【0037】
第2流入ポートPc及び第2流出ポートPdは、例えばシェル10の軸を挟むように配置されており、シェル10の外表面において互いに反対を向く方向に開口している。なお、本実施形態では、第2流入ポートPcは、第1流入ポートPaと同じ向きに開口しており、第2流出ポートPdは、第1流出ポートPbと同じ向きに開口している。ただし、第2流入ポートPc及び第2流出ポートPdは、必ずしも反対を向く方向に開口している必要はなく、例えば互いに直交する方向を向くように開口するなど、その配置は適宜変更して構わない。
【0038】
また、第2流入ポートPc及び第2流出ポートPdの一方は、熱交換領域Seにおける軸方向一方側に設けられており、他方は熱交換領域Seにおける軸方向他方側に設けられている。かかる配置により、第2流入ポートPcから流入した第2流体L2は、シェル10の軸方向に沿って流れながら後述するチューブ20内を流れる第1流体L1との間で熱交換が行われ、その後、第2流出ポートPdから流出される。
【0039】
そして、本実施形態のシェル10の内部空間には、軸方向他方側に設定されており、第1流体L1を折り返す折返し領域Srが設けられている。
【0040】
ここでは、シェル10の内部空間に1つの折返し領域Srが設けられており、この折返し領域Srは、熱交換領域Seよりも外側(軸方向他方側)に配置されて、熱交換領域Seと隣り合うように設けられている。
【0041】
複数のチューブ20は、第1流体L1が流れるものであり、これらのチューブ20には、第1流体L1を流入領域Siから折返し領域Srに導く往路チューブ20aと、第1流体L1を折返し領域Srから流出領域Soに導く復路チューブ20bとが少なくとも含まれている。なお、ここでは複数本の往路チューブ20aが第1流入ポートPaや第2流入ポートPc側に寄せて配置されており、複数本の復路チューブ20bが第1流出ポートPbや第2流出ポートPd側に寄せて配置されている。
【0042】
往路チューブ20aは、シェル10の軸方向に沿って延びるものであり、上流側開口が流入領域Siに位置するとともに、下流側開口が折返し領域Srに位置するように配置されている。すなわち、往路チューブ20aは、流入領域Si、熱交換領域Se、及び折返し領域Srに架け渡されており、ここでは複数本の往路チューブ20aが、シェル10の軸方向と平行に設けられている。ただし、往路チューブ20aの本数は適宜変更して構わないし、往路チューブ20aの延伸方向はシェル10の軸方向に対して傾斜していても良い。
【0043】
復路チューブ20bは、ここでは往路チューブ20aと別体であって、シェル10の軸方向に沿って延びるものであり、上流側開口が折返し領域Srに位置するとともに、下流側開口が流出領域Soに位置するように配置されている。すなわち、復路チューブ20bは、折返し領域Sr、熱交換領域Se、及び流出領域Soに架け渡されており、ここでは複数本の復路チューブ20bが、シェル10の軸方向と平行に設けられている。ただし、復路チューブ20bの本数は適宜変更して構わないし、復路チューブ20bの延伸方向はシェル10の軸方向に対して傾斜していても良い。
【0044】
上述した往路チューブ20a及び復路チューブ20bは、長さ寸法が互いに異なるものであり、ここでは往路チューブ20aよりも復路チューブ20bの方が長い。
【0045】
然して、本実施形態の熱交換器100は、
図1に示すように、シェル10内に設けられて、流入領域Si、折返し領域Sr、及び流出領域Soを仕切るとともに、少なくとも往路チューブ20a又は復路チューブ20bが貫通する仕切板30をさらに備えてなる。
【0046】
この仕切板30は、上述した流入領域Si、流出領域So、熱交換領域Se、及び折返し領域Srのうち、互いに隣り合う領域を仕切るものであり、この実施形態では、流出領域So及び流入領域Siを仕切る第1仕切板30a、流入領域Si及び熱交換領域Seを仕切る第2仕切板30b、及び熱交換領域Se及び折返し領域Srを仕切る第3仕切板30cが設けられている。
【0047】
本実施形態の仕切板30は、シェル10の軸方向に対して直交するように設けられており、ここでは往路チューブ20aや復路チューブ20bと直交するように設けられている。
【0048】
第1仕切板30aは、復路チューブ20bが貫通するものであり、ここでは復路チューブ20bに対して直交するように、言い換えれば、シェル10の軸に対して直交するように設けられている。
【0049】
第2仕切板30bは、往路チューブ20a及び復路チューブ20bが貫通するものであり、ここでは往路チューブ20aや復路チューブ20bに対して直交するように、言いかえれば、シェル10の軸に対して直交するように設けられている。
【0050】
第3仕切板30cは、往路チューブ20a及び復路チューブ20bが貫通するものであり、ここでは往路チューブ20aや復路チューブ20bに対して直交するように、言い換えれば、シェル10の軸に対して直交するように設けられている。
【0051】
ここで、
図2に示す実験結果は、本実施形態の熱交換器100と、従来構成の熱交換器との熱交換量を比較したものである。
この実験結果から分かるように、流入領域Si、流出領域So、熱交換領域Se、及び折返し領域Srを仕切板30により仕切る本実施形態の熱交換器100によれば、仕切板30を用いていない従来構成に比べて、熱交換量が向上していることがわかる。
【0052】
このように、本実施形態における熱交換器100は、仕切板30が、往路チューブ20aや復路チューブ20bが貫通するように設けられているので、この仕切板30の配置は、シェル10の内径を小さくしたり、往路チューブ20aと復路チューブ20bとの間隔を狭くしたりすることによっては阻害されない。
これにより、シェル10の細径化及びチューブ20の高集積化を図りつつ、第1流体L1をシェル10内で折り返すことができるので、第1流体L1及び第2流体L2の流速を向上させることができ、従来に比べて熱伝達率の飛躍的な向上を図れる。
【0053】
さらに、仕切板30を往路チューブ20aや復路チューブ20bが貫通するように設けるので、後述するように、往路チューブ20aや復路チューブ20bの配置や、折返し領域Srの数や配置や、流入領域Si及び流出領域Soの配置など、種々の態様を取ることができ、従来構成に比べて配置の自由度を向上させることができる。
【0054】
加えて、往路チューブ20a及び復路チューブ20bが、互いに別体であるので、U字状の一体的なチューブを用いる場合に比べて、製造性が良い。さらに、例えば往路チューブ20a及び復路チューブ20bとして互いに異なる径のチューブを用いるなど、設計の自由度を大きく向上させることができる。しかも、U字状チューブを用いる場合に比べて、往路チューブ20a及び復路チューブ20bの間隔を狭めることができるので、これによる第2流体L2の流速の向上をも図れる。
【0055】
そのうえ、シェル10の一方側から他方側に向かって、流出領域So、流入領域Si、及び折返し領域Srがこの順で配置されており、流入領域Siには往路チューブ20aのみならず復路チューブ20bまでもが通過するので、流入領域Siに流入した第1流体L1が多数本のチューブ20に当たり、その流れを乱すことができ、熱交換効率の向上を図れる。
【0056】
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではない。
【0057】
例えば、前記実施形態では、シェル10の内部空間に1つの折返し領域Srが設けられていたが、
図3に示すように、シェル10の内部空間に複数の折返し領域Srが設けられていても良い。
より具体的に説明すると、この熱交換器100のチューブ20には、往路チューブ20a及び復路チューブ20bの他に、第1流体L1を折返し領域Srから別の折返し領域Srに導く中間チューブ20cがさらに含まれている。
このような構成であれば、流入領域Siに流入した第1冷媒が流れ込むチューブ20の本数をさらに減らすことができ、第1流体L1の流速のさらに向上させることができる。
【0058】
また、前記実施形態では、複数本の往路チューブ20aが第1流入ポートPaや第2流入ポートPc側に寄せて配置されており、複数本の復路チューブ20bが第1流出ポートPbや第2流出ポートPd側に寄せて配置されていたが、
図4に示すように、第1流入ポートPaや第2流入ポートPc側から第1流出ポートPbや第2流出ポートPd側に向かって、往路チューブ20a及び復路チューブ20bが交互に配置されていても良い。
【0059】
ここで、第2流体L2が低温二相である場合、密度の高い液相はシェル10内における外側を流れ、密度の低い気相はシェル10内における中心部を流れる。
そこで、熱伝達率の低い気相の熱交換量を上げるためには、
図5に示すように、複数本の往路チューブ20aが、シェル10内における中心部に配置されており、複数本の復路チューブ20bが、シェル10内において復路チューブ20bよりも外側に配置されていてもよい。
このような構成であれば、往路チューブ20aをシェル10内における中心部に配置してあるので、第2流体L2の気相と往路チューブ20a内を流れる第1流体L1との温度差を確保することができ、気相の熱交換量を上げることができる。かかる作用効果は、低温二相の第2流体L2に含まれる気相の割合が高い場合に特に顕著に発揮される。
【0060】
また、本発明に係る熱交換器100としては、
図6に示すように、熱交換領域Seに設けられて、第2流体L2の流れ方向を変えるバッフル40を備えていても良い。
このバッフル40は、第2流入ポートPcから第2流出ポートPdへの第2流体L2の流れを阻害するものである。ここでは、複数のバッフル40が、第2流入ポートPcから第2流出ポートPdに向かって千鳥状に配置されており、第2流体L2が、第2流入ポートPcから第2流出ポートPdに向かって蛇行しながら流れるように構成されている。
このような構成であれば、熱交換領域Seにおける第2流体L2の流路を長くすることができるので、熱交換領域Seにおける熱伝達率のさらなる向上を図れる。
【0061】
ところで、第2流体L2が低温二相の場合、熱交換領域Seにおける下流側ではドライアウトが発生して熱伝達率が低下することが懸念される。
そこで、上述したように複数のバッフル40を設けた構成においては、
図7に示すように、第2流体L2の上流側において互いに隣り合うバッフル40の間隔X1よりも、第2流体L2の下流側において互いに隣り合うバッフル40の間隔X2を狭くしても良い。
このような構成であれば、熱交換領域Seの下流側における第2流体L2の流速をさらに上げることができ、ドライアウトによる熱伝達率の低下を抑制することができる。
【0062】
さらに、本発明に係る熱交換器100としては、
図8に示すように、熱交換領域Seにおいて、チューブ20の外表面に設けられた拡大伝熱面50を備えていても良い。
この拡大伝熱面50は、往路チューブ20aや復路チューブ20bの外周面に設けられたフィンにより形成されており、ここでは複数のフィンが、往路チューブ20aや復路チューブ20bの長手方向に沿って設けられている。
このような構成であれば、往路チューブ20aや復路チューブ20bに拡大伝熱面50を設けてあるので、熱交換領域Seにおける熱伝達率のさらなる向上を図れる。
【0063】
このように拡大伝熱面50たるフィンを設けた構成において、
図9に示すように、拡大伝熱面50が熱交換領域Seにおいて複数設けられており、第2流体L2の上流側において互いに隣り合う拡大伝熱面50の間隔Y1よりも、第2流体L2の下流側において互いに隣り合う拡大伝熱面50の間隔Y2を狭くしても良い。
このような構成であれば、上述したようにドライアウトが生じ得る下流側において、第2流体L2の流速を上げることができ、ドライアウトによる熱伝達率の低下を抑制することができる。
【0064】
さらに本発明に係る熱交換器100としては、
図10に示すように、熱交換領域Seにおいて、互いに隣り合うチューブ20の間に設けられた第2のバッフル60を備えていても良い。
この第2のバッフル60は、往路チューブ20aや復路チューブ20bと平行に延びる平板状のものであり、
図10の上段に示すように、往路チューブ20aと復路チューブ20bとの間に設けられていても良いし、
図10の下段に示すように、往路チューブ20a同士の間や復路チューブ20b同士の間に設けられていても良い。なお、この実施形態では、第2流入ポートPc及び第2流出ポートPdを対向配置させているが、これらの第2流入ポートPc及び第2流出ポートPdの配置はこれに限らず、適宜変更して構わない。
このような構成であれば、第2流体L2が、第2流入ポートPcから第2流出ポートPdに向かって蛇行しながら流れるので、熱交換領域Seにおける第2流体L2の流路を長くすることができるので、熱交換領域Seにおける熱伝達率のさらなる向上を図れる。
【0065】
また、往路チューブ20aや復路チューブ20bは、
図11に示すように、内面に溝などの凹部21や、図示していないが、突起などの凸部が形成されたものであっても良い。
これならば、チューブ20の内周面における伝熱面積の拡大と、チューブ20内を流れる第1流体L1の乱流促進が可能となり、熱交換量の向上を図れる。
【0066】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0067】
100・・・熱交換器
10 ・・・シェル
L1 ・・・第1流体
L2 ・・・第2流体
Si ・・・流入領域
So ・・・流出領域
Se ・・・熱交換領域
Sr ・・・折返し領域
20a・・・往路チューブ
20b・・・復路チューブ
30 ・・・仕切板
40 ・・・バッフル
50 ・・・拡大伝熱面
60 ・・・第2のバッフル
【手続補正書】
【提出日】2021-12-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】