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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096314
(43)【公開日】2022-06-29
(54)【発明の名称】油脂固形物容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 77/30 20060101AFI20220622BHJP
   A45D 40/00 20060101ALI20220622BHJP
   B65D 77/00 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
B65D77/30 B
A45D40/00 Z
B65D77/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020209354
(22)【出願日】2020-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】596154365
【氏名又は名称】株式会社ウテナ
(71)【出願人】
【識別番号】592081391
【氏名又は名称】中井紙器工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植草 敏仁
(72)【発明者】
【氏名】中井 正裕
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AA11
3E067AB81
3E067AB83
3E067AC01
3E067BA01A
3E067BB01A
3E067BB12A
3E067BB26A
3E067BC03A
3E067BC07A
3E067CA04
3E067CA07
3E067CA15
3E067CA16
3E067CA17
3E067EB27
3E067FA01
3E067FC01
3E067GA06
(57)【要約】
【課題】紙製で且つ油脂固形物を好適に収容し得る油脂固形物容器を提供する。
【解決手段】厚紙製の円筒面部4,5,10を備えた紙管容器として油脂固形物容器1を構成され、厚紙製の円筒面部5,10の内側に、該円筒面部5,10と接する形で油脂固形物Cを収容する。油脂固形物Cの内部を横断するように配置された厚紙製の埋込面部9を備え、埋込面部9は両面を連通する開口部9a,9bを備える。埋込面部9の径は15mm以上70mm以下とし、開口部9a,9bの合計面積は埋込面部9の面積に対し12%以上40%以下とする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚紙製の円筒面部を備えた紙管容器として構成され、
厚紙製の前記円筒面部の内側に、該円筒面部と接する形で油脂固形物を収容するよう構成されていること
を特徴とする油脂固形物容器。
【請求項2】
前記円筒面部に固定され、且つ前記油脂固形物の内部を横断するように配置された厚紙製の埋込面部を備え、
前記埋込面部は両面を連通する開口部を備えていること
を特徴とする請求項1に記載の油脂固形物容器。
【請求項3】
前記埋込面部の径は15mm以上70mm以下であり、
前記開口部の合計面積は前記埋込面部の面積に対し12%以上40%以下であること
を特徴とする請求項2に記載の油脂固形物容器。
【請求項4】
前記埋込面部は、前記埋込面部の周縁部同士を橋渡しする橋部を備えていること
を特徴とする請求項2または3に記載の油脂固形物容器。
【請求項5】
前記油脂固形物は化粧品であること
を特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の油脂固形物容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばヘアワックス等、油脂を含有する固形物を収容する容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘアワックス等の化粧品や、ワセリンのような医療品(医薬品あるいは医薬部外品)、その他の油脂を含有する固形物は、広口の容器に収容され、保管される場合がある(以下、本明細書では、油脂を含有し、固形の状態で保管される物質を「油脂固形物」と称するものとする。尚、ここでいう「油脂を含有する物質」とは、組成の一部に油脂を含む物質のほか、油脂のみで構成されている物質も含む)。こうした容器は、例えば樹脂や金属等を材料として成形された直径数cm程度の円筒状の容器であり、使用時には使用者が蓋を取り、容器内に充填された油脂固形物を指やヘラ等で掻き取って使用する。
【0003】
尚、この種の容器に関連する先行技術文献としては、例えば、下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-178375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、こうした油脂固形物を収容するための容器は、一般に使い捨てを前提に設計・製造されることが多い。一方、樹脂や金属の容器は製造や廃棄にかかる環境負荷が大きく、特に環境問題への関心の高まっている近年においては、環境負荷の小さい別の材料に変更したり、容器類の消費自体を節減することが盛んに検討されている。
【0006】
上述の如き油脂固形物を収容するような容器に関しても、環境への配慮の観点から、こうした材料変更等の検討がなされることが望ましい。例えば、油脂固形物の容器として実用に耐え得るような紙製の容器を安価に製造することができれば、使い捨ての油脂固形物容器による環境負荷を小さくできる可能性がある。しかしながら、強度や製造の容易性、製造コストの点から、環境負荷が小さく、且つ実用性をも満足し得るような紙製の油脂固形物容器は、これまでのところ実用化には至っていない。油脂固形物の包装に紙が使用されることはあっても、それは樹脂製の一次容器(内容物に直接接触し、これを収容する容器)ではなく、例えばそれを包む二次容器等へ使用される場合がほとんどである。また、一次容器に紙が使用されることも皆無ではないが、そういった場合でも容器の外殻にあたる一部のみが紙であり、内容物である油脂固形物と直接接触する部分は樹脂や金属で構成されており、環境負荷の問題が十分に解決ないし軽減されるには至っていない。
【0007】
本発明は、斯かる実情に鑑み、紙製で且つ油脂固形物を好適に収容し得る油脂固形物容器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、厚紙製の円筒面部を備えた紙管容器として構成され、厚紙製の前記円筒面部の内側に、該円筒面部と接する形で油脂固形物を収容するよう構成されていることを特徴とする油脂固形物容器にかかるものである。
【0009】
本発明の油脂固形物容器は、前記円筒面部に固定され、且つ前記油脂固形物の内部を横断するように配置された厚紙製の埋込面部を備え、前記埋込面部は両面を連通する開口部を備えて構成することができる。
【0010】
本発明の油脂固形物容器において、前記埋込面部の径は15mm以上70mm以下とし、前記開口部の合計面積は前記埋込面部の面積に対し12%以上40%以下とすることができる。
【0011】
本発明の油脂固形物容器において、前記埋込面部は、前記埋込面部の周縁部同士を橋渡しする橋部を備えることができる。
【0012】
本発明の油脂固形物容器において、前記油脂固形物は化粧品とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の油脂固形物容器によれば、紙製で且つ油脂固形物を好適に収容するという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施による油脂固形物容器の形態の一例を示す斜視図であり、油脂固形物が収容されておらず、且つ本体部から蓋が外された状態を斜め上方から示している。
図2】本発明の実施による油脂固形物容器の形態の一例を示す斜視図であり、油脂固形物が収容されており、且つ本体部から蓋が外された状態を斜め上方から示している。
図3】本発明の実施による油脂固形物容器の形態の一例を示す斜視図であり、本体部に蓋が装着された状態を図1図2とは別の角度(斜め下方)から示している。
図4】本実施例の油脂固形物容器の形態を示す断面図であり、油脂固形物が収容されておらず、且つ本体部に蓋が取り付けられた状態を示している。
図5】本実施例の油脂固形物容器の形態を示す断面図であり、油脂固形物が収容されており、且つ本体部に蓋が取り付けられた状態を示している。
図6】本実施例の油脂固形物容器の本体部および埋込面部の形状を示す平面図であり、図1のVI-VI矢視相当図である。
図7】本実施例の油脂固形物容器に対し、油脂固形物を注入する際の様子を示す正断面図である。
図8】本発明の実施による油脂固形物容器の本体部および埋込面部の別の形状の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0016】
図1図6は本発明の実施による油脂固形物容器の形態の一例を示している。本実施例の油脂固形物容器1は、内容物である油脂固形物Cを収容する本体部2と、該本体部2に着脱可能に取り付けられる蓋3を備えている。
【0017】
油脂固形物容器1は、本体部2に蓋3を取り付けた状態において、全体として円筒形をなしており、円筒面をなす円筒面部と、該円筒面部の軸方向に関して上下の端面をなす端面部を備えている。そして、円筒面部の軸方向に関して中間部において、下側の本体部2と、上側の蓋3とに分割されている。
【0018】
本体部2は、円筒面部として、径方向に関して最外周をなす外筒部4と、該外筒部4の内周面に外周面を接する形で嵌め込まれた内筒部5を備えている。蓋3は、円筒面部としての筒部6と、該筒部6の上端側を塞ぐ端面部としての円形の天井部7を備えている。本体部2の外筒部4と、蓋3の筒部6は、互いに同じ径の円筒面をなしている。また、本体部2の内筒部5の上端は、外筒部4の上端より上方に突出しており、この内筒部5の上端を蓋3の筒部6に対し下方から挿入することにより、蓋3を本体部2に対して取り付けることができるようになっている。蓋3の本体部2への取付時において、蓋3の筒部6の下縁は、本体部2の外筒部4の上縁と接するようになっている。
【0019】
外筒部4の下端には、該外筒部4の下端面をなすよう、端面部としての円形の底面部8が取り付けられている。底面部8の中央部には、底面部8のなす面を上下に貫通するように円形の注入口8aが設けられており、油脂固形物容器1の完成状態においては、図3に示す如く、注入口8aはシール体8bによって覆われる。
【0020】
内筒部5の内側の空間には、図2図5に示すように油脂固形物Cが充填されるが、内筒部5の内側には、この油脂固形物Cを本体部2に支持する構造として埋込面部9が設けられ、さらに、この埋込面部9を内筒部5に対して支持するために円筒面部としての支持筒部10が設けられている。
【0021】
埋込面部9は、図1図4図6に示す如く、内筒部5の内側の上端部付近に、該内筒部5の軸に対して直交する面をなすように取り付けられる円盤状の部材であり、油脂固形物Cの充填時においては、図5に示す如く油脂固形物C内に埋没する。図6に示す如く、埋込面部9の中央の領域には、中心を取り囲むように4つの扇状の連結孔9aが、中心には円状の中心孔9bが、それぞれ開口部として設けられている。連結孔9aと中心孔9bは、それぞれ埋込面部9を上下に貫通する孔であり、埋込面部9の両面を連通している。扇状の各連結孔9aは、それぞれ弧が円形の埋込面部9の周方向に沿う向きに設けられており、直角の中心角を挟む2本の辺は、埋込面部9の径方向に沿って配置されている。周方向に隣接する連結孔9aの辺同士の間は、細い板状の橋部9cとして構成されている。本実施例の場合、橋部9cは、周方向に配列した4つの連結孔9aの相互間に計4本が設けられており、これらは埋込面部9の中心部から放射状に均等に配置されている。言い換えれば、橋部9cは、埋込面部9の向かい合う周縁部同士を十字に橋渡しするように配置されている。埋込面部9に設けられたこれらの連結孔9aや中心孔9b、橋部9cの寸法や機能等については、後に詳述する。
【0022】
内筒部5の下端は、本体部2の底部をなす底面部8の上面に接しており、上端付近には上に述べたように埋込面部9が取り付けられている。支持筒部10は、この内筒部5の上端付近に位置する埋込面部9から、下端に位置する底面部8にかけて、内筒部5の内周面に外周面を接するように設けられる筒状の部材である。支持筒部10の上端は埋込面部9の下面に、下端は底面部8の上面に、それぞれ接している。
【0023】
油脂固形物容器1を構成するこれらの部材(本体部2を構成する外筒部4、内筒部5、底面部8、埋込面部9、支持筒部10、および蓋3を構成する筒部6、天井部7)は全体が厚紙で構成されており、本体部2を構成する各部材同士と、蓋3を構成する各部材同士は、それぞれ互いに接着剤等により適宜に接着されている。
【0024】
厚紙で構成されたこれらの部材の一部は、アルミ箔等の金属膜により被覆されている。本実施例の場合、蓋3の筒部6の内周面(図4図5中に6aの符号で示す)、天井部7の下面(符号7a)、本体部2の底面部8の上面(符号8c)、埋込面部9の下面(符号9d)、支持筒部10の内周面(符号10a)が金属膜により被覆されている。これらは、後述するように、油脂固形物Cに接する、あるいは接する可能性の高い面である。
【0025】
このように、厚紙で形成された筒により構成された容器を紙管容器という。紙管容器は、菓子や紙類、小物類等を収容する容器として広く使用されているが、本願発明のように油脂固形物を収容する一次容器として使用される例は少なく、特に、油脂固形物と接する部分までを紙で構成したものは、現在のところ他に例がない。油脂固形物を収容するという用途において、紙の部材の強度や使いやすさの点で多くの課題を解決しきれず、実用化には至らなかったものと考えられる。本願発明では、後述するように、特に埋込面部9の構成(連結孔9aや橋部9cの寸法等)を工夫することにより、これらの問題を解決し、製造や廃棄にかかる環境負荷を軽減しつつ実用に耐え得る油脂固形物容器を実現した。
【0026】
このような油脂固形物容器1に対し、油脂固形物Cを充填する際の様子を図7に示す。底面部8にシール体8bが取り付けられていない(すなわち、注入口8aが覆われていない)状態の本体部2を上下逆に支持し、下側に金型11を宛てがう。金型11は、内筒部5の内周面と同じ径の円筒形のキャビティを備えている。該キャビティは上部が開口しており、円形をなすキャビティの上縁が内筒部5の上縁(上下逆に支持された図7に示す状態では、下側にあたる縁)に接するように、金型11が本体部2に宛てがわれる。この状態で、本体部2の上側に位置する底面部8の注入口8aに、油脂固形物Cを注入するためのノズル12を挿入する。ノズル12の射出口は、埋込面部9より上側に位置する。
【0027】
注入時において、油脂固形物Cは融点以上に加熱されており、液状である(尚、ここでは、後に冷えて固まる高温で液状のものも「油脂固形物」と称することとする)。液状の油脂固形物Cは、埋込面部9より上側に射出されるが、埋込面部9に設けられた連結孔9aや中心孔9bを通って金型11のキャビティに流れ込む。さらに油脂固形物Cを流し込んでいくと、油脂固形物Cの液面はキャビティの上端を越えて内筒部5の内周面に達し、さらに埋込面部9を越えて支持筒部10の内周面に達する。適当な量の油脂固形物Cを注入したら、注入を止めてノズル12を抜き取り、金型11ごと油脂固形物Cを凝固点以下まで冷却する。油脂固形物Cが固まったら金型11を外す。すると、図2に示す如く、内筒部5の上端より上方に油脂固形物Cが突出する形で、本体部2に油脂固形物Cが収容された状態となる。底面部8の下面にシール体8bを貼付して注入口8aを塞ぎ、油脂固形物容器1が完成する。
【0028】
このような収容状態において、油脂固形物Cは本体部2の円筒面部である外筒部4、内筒部5および支持筒部10の径方向内側に支持されており、その外周の円筒面は、支持筒部10の内周面10aの一部と、内筒部5の内周面の上端部に接している(図5参照)。また、本体部2の端面部である底面部8の上面8cは、本体部2の内部空間に収容された油脂固形物Cに対向しており、油脂固形物Cの注入の際等に、油脂固形物Cが付着する可能性がある。また、蓋3を取り付けた状態において、蓋3の内面、すなわち筒部6の円筒面部である内周面6aと、端面部である天井部7の下面7aは、本体部2から上方へ突出する油脂固形物Cに対向するので、油脂固形物Cの使用時等に油脂固形物Cと接触する可能性が高い。
【0029】
そこで、本実施例では、このうち本体部2の底面部8の上面8c、支持筒部10の内周面10a、および蓋3の筒部6の内周面6a、天井部7の下面7aを、上述の通り金属膜で被覆している。主な素材である厚紙への油脂分の浸透を防止して、支持筒部10や、その外側の内筒部5、外筒部4といった各部材の強度の低下を防ぎ、油脂固形物容器1の見栄えの悪化を防止するためである。尚、本体部2の内筒部5は、上端部において内周面が油脂固形物Cと接するが、内筒部5に関しては金属膜を設けていない。内周面に取り付けられた支持筒部10との接着性を確保するためである。
【0030】
埋込面部9について説明する。上述したように、埋込面部9は油脂固形物Cを油脂固形物容器1の本体部2に対し支持する部材である。埋込面部9は、本体部2の円筒面部である内筒部5に、同じ本体部2の円筒面部である支持筒部10によって固定されており、油脂固形物Cを収容して完成した油脂固形物容器1においては、油脂固形物Cの内部を横断するように(すなわち、油脂固形物Cの中心軸を横切る面をなして)埋没する。油脂固形物Cの使用時においては、油脂固形物Cに対して上下方向(軸方向)に沿った力(以下、「押込力」と称する)が加わる。この押込力は油脂固形物Cを本体部2に対して奥側(下側)へ押し込むように作用するが、油脂固形物Cに埋没する形で本体部2側に固定された埋込面部9が油脂固形物Cを支持する骨組みの役割を果たし、油脂固形物Cが本体部2に対して動くことを防止する。
【0031】
埋込面部9がこのような機能を十全に発揮するためには、まず、埋込面部9自体が押込力に耐え得る十分な強度を備えている必要がある。ここで埋込面部9全体の寸法について説明すると、化粧品(ヘアワックス等)や医療品(ワセリン等)等の油脂固形物Cを収容する油脂固形物容器1の場合、その用途にあわせ、本体部2の内径(すなわち、内筒部5あるいは支持筒部10の内径であり、油脂固形物Cの径である)は概ね15mm以上、70mm以下程度である。これは埋込面部9の径とも一致するので、上記のような用途に使用される油脂固形物容器1において、埋込面部9の径は15mm以上、70mm以下である。
【0032】
全体としてこのような径の埋込面部9に対して押込力が加わることを考えた場合、厚紙を素材として構成される埋込面部9の厚みは、最低で0.5mm以上であることが必要である。一方、埋込面部9の厚みが大きすぎると、材料費が嵩むほか、型抜き加工がしにくくなるので、埋込面部9の厚みは3mm以下とすることが好ましい。
【0033】
また、埋込面部9に加わる押込力の多くを実質的に受けるのは、埋込面部9の周縁部同士の間を橋渡しするように設けられた橋部9cである。橋部9cが押込力を受けて折れないためには、橋部9cにはある程度の幅が必要である。また、厚紙の型抜き加工によって埋込面部9を成形する際、やはり橋部9cがある程度の幅を有していないと、抜き型と紙の間に生じる摩擦力によって橋部9cが破損してしまう可能性がある。こうしたことから、橋部9cの幅は最低5mm以上であることが必要である。尚、油脂固形物Cと埋込面部9に加わる押込力は、さらに埋込面部9の下方に設けられた支持筒部10に受けられ、これにより、油脂固形物Cと埋込面部9の全体が本体部2に対して支持される。
【0034】
一方、油脂固形物Cの側にも強度が必要である。埋込面部9は油脂固形物Cの内部を横断するように埋め込まれているので、油脂固形物Cは埋込面部9の埋没した部分において強度が低い。よって、油脂固形物Cの断面積(埋込面部9のなす面に沿った断面の面積)に対して埋込面部9の占める面積が大きすぎると、埋込面部9の部分における油脂固形物Cの強度が十分に確保できず、油脂固形物Cの使用時に加わる押込力や、その他の摩擦力等の力によって折れてしまう可能性がある。そこで、埋込面部9に占める開口部(連結孔9aおよび中心孔9b)の合計面積の割合は、12%以上40%以下とすることが好ましい。埋込面部9は油脂固形物Cを上下に分割していると見なすことができるが、連結孔9aと中心孔9bは、埋込面部9を境界面として分割される油脂固形物Cの上下の部分同士を連結していると言える。この油脂固形物Cを連結する開口部である連結孔9aと中心孔9bの合計面積が埋込面部9全体の面積に対して12%以上あれば、油脂固形物Cが折れない程度の十分な強度を確保することができる。一方、埋込面部9に対する開口部の面積が40%を超えると、埋込面部9の強度が低くなり、押込力に抗して油脂固形物Cを保持することが難しくなる(尚、ここでいう「埋込面部9全体の面積」とは、周縁部や橋部9cのみの面積ではなく、連結孔9aや中心孔9bの面積をも含んでいる)。
【0035】
また、埋込面部9の材質も、埋込面部9や油脂固形物Cの強度に影響する。埋込面部9は厚紙で形成されているため、油脂固形物Cの油脂成分が埋込面部9に浸透しすぎると、埋込面部9の強度が低下する可能性がある。一方、油脂固形物Cが埋込面部9との接触部分において埋込面部9の表面に対し十分に食い込んでいないと、油脂固形物Cが埋込面部9から剥離してしまい、両者が互いに動くことで無理な力が生じてしまう可能性がある。
【0036】
そこで、本実施例では上述の通り、埋込面部9の下面9dを金属膜で被覆している。片面のみを被覆しているのは、表面の一部に金属膜を備えることで、油脂固形物Cと接する領域全体から埋込面部9に油脂成分が浸透することを防止するためであり、また、片面は金属膜を備えないことで油脂固形物Cの食いつきを確保するためである。金属膜は油脂分の浸透を遮断することができるが、同時に油脂固形物Cに対する摩擦力が弱いので、このようにして両者のバランスを保っているのである。
【0037】
図8は、上記とは別の形状の埋込面部9を備えた油脂固形物容器を例示している。ここに示した例の場合、中心孔9bの周囲に計6個の連結孔9aが周方向に配置されており、各連結孔9aの形状は円形である。そして、それらの円形の連結孔9a同士の間が橋部9cにあたる。この例においても、各部の寸法について上記した条件(埋込面部9の径が15mm以上70mm以下、埋込面部9の厚みが0.5mm以上3mm以下、橋部9cの幅が5mm以上、埋込面部9に対する開口部の合計面積の割合が12%以上40%以下)を満たしている。このように、埋込面部9における各部の具体的な形状は種々変更することができるが、その際、各部の寸法が上記した条件を満たしていれば、油脂固形物を収容する油脂固形物容器として実用に耐え得る機能を備えることができる。
【0038】
以上のように、上記本実施例の油脂固形物容器1は、厚紙製の円筒面部4,5,10を備えた紙管容器として構成され、厚紙製の円筒面部5,10の内側に、該円筒面部5,10と接する形で油脂固形物Cを収容するよう構成されている。このようにすれば、油脂固形物容器の製造や廃棄にかかる環境負荷を軽減することができる。
【0039】
また、本実施例の油脂固形物容器1は、円筒面部4,5,10に固定され、且つ油脂固形物Cの内部を横断するように配置された厚紙製の埋込面部9を備え、埋込面部9は両面を連通する開口部9a,9bを備えて構成されている。このようにすれば、埋込面部9が油脂固形物Cを支持する骨組みの役割を果たすことにより、使用時に加わる押込力によって油脂固形物Cが本体部2に対して動くことを防止することができる。
【0040】
また、本実施例の油脂固形物容器1において、埋込面部9の径は15mm以上70mm以下であり、開口部9a,9bの合計面積は埋込面部9の面積に対し12%以上40%以下である。このようにすれば、埋込面部9に関し、押込力に抗して油脂固形物Cを保持し得る程度の強度を確保しつつ、油脂固形物Cに関し、これが折れない程度の十分な強度を確保することができる。
【0041】
また、本実施例の油脂固形物容器1において、埋込面部9は、埋込面部9の周縁部同士を橋渡しする橋部9cを備えている。このようにすれば、油脂固形物Cに加わる押込力を橋部9cで効果的に受けることができる。
【0042】
また、本実施例の油脂固形物容器1において、油脂固形物Cは化粧品とすることができる。
【0043】
したがって、上記本実施例の油脂固形物容器によれば、紙製で且つ油脂固形物を好適に収容し得る。
【0044】
尚、本発明の油脂固形物容器は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0045】
1 油脂固形物容器
4 外筒部(円筒面部)
5 内筒部(円筒面部)
9 埋込面部
9a 連結孔(開口部)
9b 中心孔(開口部)
9c 橋部
10 支持筒部(円筒面部)
C 油脂固形物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8