IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東日本電気エンジニアリング株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-移動距離測定装置 図1
  • 特開-移動距離測定装置 図2
  • 特開-移動距離測定装置 図3
  • 特開-移動距離測定装置 図4
  • 特開-移動距離測定装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096323
(43)【公開日】2022-06-29
(54)【発明の名称】移動距離測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/02 20060101AFI20220622BHJP
   B61D 15/00 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
G01B5/02
B61D15/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020209369
(22)【出願日】2020-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】399039719
【氏名又は名称】東日本電気エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(72)【発明者】
【氏名】根岸 英雄
【テーマコード(参考)】
2F062
【Fターム(参考)】
2F062AA21
2F062BB02
2F062BC02
2F062BC42
2F062BC45
2F062CC11
2F062EE26
2F062EE63
2F062GG38
2F062GG41
2F062HH15
2F062HH21
2F062HH32
2F062JJ05
2F062LL07
(57)【要約】
【課題】走行台車の鉄道線路上の移動距離を確実に測定できる移動距離測定装置を提供する。
【解決手段】敷設された一対の鉄道線路上を移動する距離を測定する移動距離測定装置であって、一対の前記鉄道線路上を走行する一対の車輪が両端に固定された複数の車軸と、複数の前記車軸を回転自在に軸支する走行台車と、前記車輪の回転を検出する検出部と、前記検出部の検出結果に基づいて前記鉄道線路上を移動する前記走行台車の移動距離を計測する計測部と、を備える、移動距離測定装置である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
敷設された一対の鉄道線路上を移動する距離を測定する移動距離測定装置であって、
一対の前記鉄道線路上を走行する一対の車輪が両端に固定された複数の車軸と、
複数の前記車軸を回転自在に軸支する走行台車と、
前記車輪の回転を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて前記鉄道線路上を移動する前記走行台車の移動距離を計測する計測部と、を備える、
移動距離測定装置。
【請求項2】
前記車輪は、前記鉄道線路に接触するトレッド面と、前記トレッド面に比して大きい径に形成されたフランジ部とが形成されており、
前記検出部は、前記フランジ部に接触して回転するプーリと、前記プーリの回転を検出するエンコーダと、前記走行台車に回転自在に支持されると共に前記プーリを回転自在に支持するアームと、
前記プーリを前記フランジ部に接触させる方向に前記アームを付勢する付勢部と、を備える、
請求項1に記載の移動距離測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道線路上における走行台車の移動距離を測定する移動距離測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トロリ線の高さと偏位(水平偏位)はパンタグラフが安定的に集電できるように一定の規定値内に設備されていなければならない。その検査は、本線については電気検測車で実施されるが、側線や車両センター構内等については手測定である。出願人は、特許文献1において、手測定により架線を測定する架線測定装置を提案している。
【0003】
特許文献1に記載された架線測定装置は、鉄道線路上を走行する走行台車と、走行台車上に載置され、線路上を走行する測定用車輪に設けられ測定用車輪の回転に基づいて移動距離を測定する移動距離測定部と、移動距離に応じて架線の高さ方向の距離を測定する架線測定部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-015508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鉄道線路は、分岐線が設けられている場合がある。分岐線の分岐部において鉄道線路が交差する交差部が存在する。交差部において、車輪を通過可能にするために鉄道線路が切断された切断部が設けられている。特許文献1に記載された技術によれば、切断部において移動距離測定部に設けられた測定用車輪が空転し、移動距離が測定できなくなるという課題がある。発明者らは、鉄道線路上の移動距離の測定について鋭意研究を重ね、鉄道線路上における切断部においても移動距離を測定する手法を見出した。
【0006】
本発明は、上記の事情を考慮してなされたものであり、走行台車の鉄道線路上の移動距離を確実に測定できる移動距離測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は敷設された一対の鉄道線路上を移動する距離を測定する移動距離測定装置であって、一対の前記鉄道線路上を走行する一対の車輪が両端に固定された複数の車軸と、複数の前記車軸を回転自在に軸支する走行台車と、前記車輪の回転を検出する検出部と、前記検出部の検出結果に基づいて前記鉄道線路上を移動する前記走行台車の移動距離を計測する計測部と、を備える、移動距離測定装置である。
【0008】
本発明の前記車輪は、前記鉄道線路に接触するトレッド面と、前記トレッド面に比して大きい径に形成されたフランジ部とが形成されており、前記検出部は、前記フランジ部に接触して回転するプーリと、前記プーリの回転を検出するエンコーダと、前記走行台車に回転自在に支持されると共に前記プーリを回転自在に支持するアームと、前記プーリを前記フランジ部に接触させる方向に前記アームを付勢する付勢部と、を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、走行台車の鉄道線路上の移動距離を確実に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】鉄道線路の分岐部を示す平面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る移動距離測定装置の構成を示す斜視図である。
図3】移動距離測定装置の構成を示す正面図である。
図4】検出部の構成を示す側面図である。
図5】計測部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0012】
図1に示されるように、測定対象物となる鉄道線路は、分岐部Yにおいて基準線から分岐線が分岐している。分岐部Yの先には、基準線となる鉄道線路Sと分岐線となる鉄道線路Tの鉄道線路が交差する交差部X(クロッシング)が存在する。分岐部Yにおいて、基準線となる鉄道線路Sの鉄道線路方向から左右のいずれか一方に分岐線となる鉄道線路Tが分岐する。交差部Xにおいて、基準線となる鉄道線路Sの一対の鉄道線路S1,S2と分岐線となる鉄道線路Tの一対の鉄道線路T1,T2のうち、内側の鉄道線路S2と鉄道線路T1とが交差する。鉄道線路S2と鉄道線路T1との交差部においては、鉄道線路S2及び鉄道線路T2には、車輪を通過可能とするように切断部SC,TCが形成されている。
【0013】
図2から図4に示されるように、移動距離測定装置1は、敷設された一対の鉄道線路S1,S2を走行する際の移動距離を測定するものである。移動距離測定装置1は、例えば、計測部Mを載置するための走行台車2と、走行台車2を鉄道線路S1,S2上において走行させる複数の車輪6とを備える。走行台車2は、矩形の板状に形成されている。走行台車2の上面側は、測定機器を備える計測部Mの載置面である。走行台車2の下面側には、複数の車輪6を支持するための複数の軸受部3が設けられている。
【0014】
軸受部3は、鉄道線路S1,S2の軸線方向(x方向)に沿った走行台車2の両側面側に設けられている。軸受部3は、走行台車2の下面から下方に突出して設けられている。走行台車2の下面側には、一対の軸受部3が軸線方向と直交方向(y方向)に沿って対向して配置されている。一対の軸受部3は、x方向に沿って2列設けられている。
【0015】
一対の軸受部3は、車軸4を回転自在に軸支している。軸受部3には、車軸4が挿通されるy方向に貫通孔3Hが形成されている。貫通孔3Hは、ベアリング(不図示)に形成されているものであってもよい。車軸4は、円柱状に形成されている。車軸4は、x方向に沿って2個配置されている。即ち、2個の車軸4は、x方向に沿って2列に配置された一対の軸受部3にそれぞれ回転自在に軸支されている。
【0016】
車軸4の両端には、一対の車輪6が固定されている。従って、一対の車輪6は、車軸4を介して連動して回転する。一対の車輪6は、一対の鉄道線路S1,S2上を走行する。車輪6は、2本の車軸4に応じて合計4個設けられている。車輪6は、鉄道線路S1,S2の頂部に接触し鉄道線路S1,S2上を走行するトレッド面7と、トレッド面7よりも径が大きく形成されたフランジ部8とを有する。フランジ部8は、トレッド面7の一面側の周方向に延在して形成されている。一対のフランジ部8は、一対の鉄道線路S1,S2の対向する側面側に接触するように対向して配置されている。
【0017】
一対のフランジ部8が形成されていることにより、車軸4の両端に連結された一対の車輪6は、一対の鉄道線路S1,S2上を脱線せずに走行することができる。車軸4は、2個以上設けられていてもよく、車軸4の数に応じて車軸4は4個以上設けられていてもよい。上記構成により、走行台車2は、複数の車輪が設けられた複数の車軸4を回転自在に軸支し、鉄道線路S1,S2上を走行することができる。
【0018】
少なくとも一つの車輪6には、車輪6の回転を検出する検出部10が設けられている。図示する一例において、検出部10は、鉄道線路S2を計測する車輪6に設けられている。検出部10は、鉄道線路S1を計測する車輪6に設けられていてもよい。
【0019】
検出部10は、例えば、フランジ部8の外周に接触して回転するプーリ12を備える。プーリ12のトレッド面は、フランジ部8の外周に接触するように窪んで形成されている。プーリ12には、プーリ12の回転を検出するエンコーダ14が設けられている。プーリ12は、走行台車2に対して回転自在に支持されるアーム16に回転自在に支持されている。
【0020】
アーム16は、走行台車2に固定された固定部材18の先端に基端が回転自在に支持されている。固定部材18は、例えば、上方に起立した棒状に形成されている。固定部材18は、基端が走行台車の一側面側に固定されている。固定部材18は、ネジ等を用いて走行台車2に対して着脱自在に設けられていてもよい。固定部材18とアーム16との間には、付勢部20が設けられている。付勢部20は、例えば、コイルバネにより形成された弾性部材を有する。付勢部20は、基端が固定部材18側に連結されている。付勢部20は、先端がアーム16に連結されている。付勢部20は、プーリ12をフランジ部8に接触させる方向にアーム16を付勢している。付勢部20は、固定部材18とアーム16とのなす角度を狭める方向にアーム16を付勢している。
【0021】
上記構成により、プーリ12は、フランジ部8に接触するようにアーム16によって押圧され、車輪6の回転に連動して確実に回転することができる。車輪6の回転は、連動して回転するプーリ12に設けられたエンコーダ14の出力値として検出される。エンコーダ14の出力値は、計測部Mに出力される。計測部Mは、エンコーダ14の出力値に基づいて走行台車2の移動の距離を計測する。エンコーダ14の他にレーザ距離計、ドップラー距離計等、距離が測定できるものであれば他のセンサが用いられてもよい。
【0022】
図5に示されるように、計測部Mは、例えば、エンコーダ14の出力値に基づいて鉄道線路S2の距離を計測する演算部M1と、エンコーダ14の出力値、演算に関するプログラム等のデータを記憶する記憶部M2と、計測結果を表示する表示部M3とを備える。計測部Mは、例えば、パーソナルコンピュータ、タブレット型端末、スマートフォン等により構成されていてもよい。計測部Mは、計測結果をサーバ装置(不図示)にネットワークを通じて送信してもよく、サーバ装置が演算を行うようにしてもよい。
【0023】
演算部M1は、エンコーダ14の回転数、プーリ12の外径、フランジ部8の外径、トレッド面7の外径等のデータに基づいて車輪6が鉄道線路S2上を走行した距離を演算する。演算部M1は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0024】
記憶部M2は、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置である。記憶部M2は、エンコーダ14の出力値の他、演算部M1の処理を実行させるためのデータやプログラムが記憶されている。データやプログラムは、ネットワークに接続された外部サーバに記憶されていてもよい。記憶部M2は、メモリーカードなどの取り出し自在な記憶媒体であってもよい。
【0025】
表示部M3には、検出値に基づいて生成された計測結果が表示される。表示部M3は、例えば、液晶ディスプレイ、LED(Light Emitting Diode)ディスプレイ、有機EL(Organic Electro-Luminescence)ディスプレイ、デジタルミラーデバイス(Digital Mirror Device)、表示装置が用いられる。表示部M3は、スマートフォン、タブレット端末等の計測部Mと別体に設けられた情報処理端末により構成されていてもよい。表示部M3は、設けられていてもよいし、設けられていなくてもよい。
【0026】
次に移動距離測定装置1による移動距離の計測方法について説明する。一対の鉄道線路S1,S2(図1参照)上に移動距離測定装置1を設置する。走行台車2を所定方向に走行させる。走行台車2の走行に伴って車輪6が回転する。車輪6の回転に連動してプーリ12が回転する。エンコーダ14は、プーリ12の回転を検出する。演算部M1は、エンコーダ14の出力値に基づいて走行台車2の走行距離を演算する。
【0027】
走行台車2が一対の鉄道線路S1,S2の分岐部Y付近の交差部Xを通過する場合、車輪6が交差部Xの切断部SCを通過する必要がある。例えば、鉄道線路S2に切断部SCが設けられており、検出部10が設けられている側の車輪6が切断部SCを通過する場合、検出部10側の車輪6は、車軸4により対向する車輪6に連結されているため、切断部SCが設けられていない側の車輪6が走行するため、空転せずに連動して回転する。従って、移動距離測定装置1によれば、切断部が設けられている場合でも走行台車の鉄道線路上の移動距離を確実に測定できる。
【0028】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、検出部10は、複数の車輪に応じて複数個設けられていてもよく、複数の検出結果の平均値に基づいて走行台車の移動距離を計測してもよい。走行台車2は、手動走行を例示しているが、駆動部により駆動されて走行してもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 移動距離測定装置、2 走行台車、3 軸受部、3H 貫通孔、4 車軸、6 車輪、7 トレッド面、8 フランジ部、10 検出部、12 プーリ、14 エンコーダ、16 アーム、18 固定部材、20 付勢部、M 計測部、M1 演算部、M2 記憶部、M3 表示部、S1、S2、T1、T2 鉄道線路、SC 切断部、TC 切断部、X 交差部、Y 分岐部
図1
図2
図3
図4
図5