(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096332
(43)【公開日】2022-06-29
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20220622BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
A61B10/00 H
A61B5/055 380
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020209384
(22)【出願日】2020-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】520263947
【氏名又は名称】Brain Linkage合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】特許業務法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】松田 博史
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AA01
4C096AB44
4C096AC01
4C096AD14
4C096AD24
4C096DC22
4C096DC24
4C096DC28
(57)【要約】
【課題】信憑性が高い脳年齢を提示できる情報処理システムを提供すること。
【解決手段】本発明の一態様によれば、情報処理システムが提供される。この情報処理システムは、読出ステップと、算出ステップと、補正ステップとを実行するように構成される。読出ステップでは、被検体の脳を撮像した脳画像である入力画像を読み出す。算出ステップでは、入力画像と、予め記憶された参照情報とに基づいて、被検体の第1脳年齢を算出する。参照情報とは、認知機能が正常な第1コホートの第1脳画像とこれに対応する第1コホートの暦年齢との関係を示す情報である。補正ステップでは、第1脳年齢と、予め記憶された補正情報とに基づいて、第1脳年齢を算出する際に含まれる希釈バイアスを補正した第2脳年齢を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理システムであって、
読出ステップと、算出ステップと、補正ステップとを実行するように構成され、
前記読出ステップでは、被検体の脳を撮像した脳画像である入力画像を読み出し、
前記算出ステップでは、前記入力画像と、予め記憶された参照情報とに基づいて、前記被検体の第1脳年齢を算出し、ここで前記参照情報とは、認知機能が正常な第1コホートの第1脳画像とこれに対応する前記第1コホートの暦年齢との関係を示す情報であり、
前記補正ステップでは、前記第1脳年齢と、予め記憶された補正情報とに基づいて、前記第1脳年齢を算出する際に含まれる希釈バイアスを補正した第2脳年齢を算出する、
情報処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、
前記参照情報は、前記第1脳画像と前記第1コホートの前記暦年齢との関係を学習させた学習済みモデルである、
情報処理システム。
【請求項3】
請求項2に記載の情報処理システムにおいて、
前記学習済みモデルは、前記第1脳画像における灰白質及び白質の量と、前記第1コホートの前記暦年齢との関係を学習させたモデルである、
情報処理システム。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の情報処理システムにおいて、
前記補正情報は、前記第1脳画像とは異なる第2コホートの第2脳画像を前記参照情報に適用させて生成された情報である、
情報処理システム。
【請求項5】
請求項4に記載の情報処理システムにおいて、
前記補正情報は、前記第2コホートの第1脳年齢及び暦年齢の差と、前記暦年齢とを直線回帰することによって得られた傾きと切片とを有し、前記被検体の暦年齢を変数とする1次関数で表される、
情報処理システム。
【請求項6】
請求項5に記載の情報処理システムにおいて、
前記補正ステップでは、前記1次関数に前記被検体の暦年齢を代入して得られるオフセット値を前記第1脳年齢から減算して、前記第2脳年齢を算出する、
情報処理システム。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の情報処理システムにおいて、
前記入力画像は、MRI画像である、
情報処理システム。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の情報処理システムにおいて、
受付ステップと、生成ステップとを実行するように構成され、
前記受付ステップでは、前記入力画像を、ネットワークを介して医用画像装置から受け付け、
前記生成ステップでは、前記補正ステップの結果を端末で視認可能な視覚情報を生成する、
情報処理システム。
【請求項9】
コンピュータが実行する情報処理方法であって、
読出ステップと、算出ステップと、補正ステップとを実行するように構成され、
前記読出ステップでは、被検体の脳を撮像した脳画像である入力画像を読み出し、
前記算出ステップでは、前記入力画像と、予め記憶された参照情報とに基づいて、前記被検体の第1脳年齢を算出し、ここで前記参照情報とは、認知機能が正常な第1コホートの第1脳画像とこれに対応する前記第1コホートの暦年齢との関係を示す情報であり、
前記補正ステップでは、前記第1脳年齢と、予め記憶された補正情報とに基づいて、前記第1脳年齢を算出する際に含まれる希釈バイアスを補正した第2脳年齢を算出する、
情報処理方法。
【請求項10】
プログラムであって、
請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の情報処理システムにおける各ステップをコンピュータに実行させるための、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検体の顔面から検出した皮膚温度データを用いて当該被検体の脳年齢を提示する脳年齢提示装置が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、脳に直接関係しない皮膚温度データを用いて被検体の脳の活動を推定しているに過ぎないため、提示する脳年齢の信憑性が高くないという問題があった。
【0005】
本発明では上記事情を鑑み、信憑性が高い脳年齢を提示できる情報処理システムを提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、情報処理システムが提供される。この情報処理システムは、読出ステップと、算出ステップと、補正ステップとを実行するように構成される。読出ステップでは、被検体の脳を撮像した脳画像である入力画像を読み出す。算出ステップでは、入力画像と、予め記憶された参照情報とに基づいて、被検体の第1脳年齢を算出する。参照情報とは、認知機能が正常な第1コホートの第1脳画像とこれに対応する第1コホートの暦年齢との関係を示す情報である。補正ステップでは、第1脳年齢と、予め記憶された補正情報とに基づいて、第1脳年齢を算出する際に含まれる希釈バイアスを補正した第2脳年齢を算出する。
【0007】
上記の開示によれば、信憑性が高い脳年齢を提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】情報処理システム100の構成を示すブロック図である。
【
図2】情報処理システム100の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】補正情報122の求め方の一例を示す図である。
【
図4】認知機能が正常な第3コホートの暦年齢と脳年齢(第1脳年齢及び第2脳年齢)との相関関係を示す図である。
【
図5】制御部110の情報処理を示すアクティビティ図である。
【
図6】情報処理システム100の機能構成を示すブロック図である。
【
図7】端末220で表示される、被検体の第2脳年齢の算出結果を示す図である。
【
図8】端末220で表示される、被検体の第2脳年齢の算出結果を示す図である。
【
図9】端末220で表示される、被検体の第2脳年齢の算出結果を示す図である。
【
図10】端末220で表示される、被検体の第2脳年齢の算出結果を示す図である。
【
図11】端末220で表示される、被検体の第2脳年齢の算出結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0010】
ところで、本実施形態に登場するソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体として提供されてもよいし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されてもよいし、外部のコンピュータで当該プログラムを起動させてクライアント端末でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピューティング)するように提供されてもよい。
【0011】
また、本実施形態において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、例えば電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0又は1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、又は量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0012】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、及びメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0013】
<実施形態>
実施形態について説明する。
【0014】
1.情報処理システム100の構成
図1は、情報処理システム100の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、情報処理システム100は、制御部110、記憶部120、表示情報生成部130、入力受付部140及び通信部150を備える。制御部110は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等であって、情報処理システム100の全体を制御する。記憶部120は、種々のプログラム及びデータを記憶するものであり、例えばメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等により構成される。
【0015】
また、記憶部120は、制御部110がプログラムに基づき処理を実行する際に用いるデータ等を記憶する。そして、記憶部120に記憶されているプログラムに基づいて制御部110が処理を実行することにより、後述する各種処理が実現される。すなわち、当該プログラムは、情報処理システム100における各部をコンピュータに実行させる。なお、記憶部120に関して、少なくとも一部の情報が記憶部120以外の外部サーバに記憶されていてもよいし、複数の端末にブロックチェーン技術等を用いて分散して記憶されていてもよい。
【0016】
表示情報生成部130は、テキスト、画像(静止画及び動画を含む)を表示するものであり、任意のディスプレイに表示する情報を生成する。入力受付部140は、情報処理システム100に種々の情報を入力するものであり、マウス、キーボード、ポインティングデバイス等から入力される信号を受け付ける。通信部150は、NIC(Network Interface Card)等であって、情報処理システム100をネットワークに接続し、有線接続又は無線接続により他の装置又は構成要素とデータ通信可能に構成される。なお、情報処理システム100は、ノートパソコン、デスクトップパソコン、タブレット端末、スマートフォン等であってもよい。
【0017】
2.情報処理システム100の機能構成1
図2は、情報処理システム100の機能構成を示すブロック図である。
図2に示すように、制御部110は、読出部111と、算出部112と、補正部113とを備える。また、記憶部120は、参照情報121と、補正情報122とを記憶している。
【0018】
読出部111は、ソフトウェア(記憶部120に記憶されている)による情報処理がハードウェア(制御部110)によって具体的に実現されているものである。読出部111は、読出ステップを実行するように構成される。読出ステップは、被検体の脳を撮像した脳画像である入力画像を読み出すステップである。
【0019】
ここで入力画像は、例えば、MRI画像、PET画像、CT画像等が挙げられる。特にMRI画像は、水平断、矢状断、冠状断の各画像を表すことができるため、後述の脳年齢を算出するために有用である。また、入力画像としてMRI画像を用いる場合、脳の全ての領域をカバーする3次元T1強調画像を用いるのが好ましい。
【0020】
ここで読み出すとは、例えば、通信部150を経由して外部装置から入力画像を受信し、当該入力画像を読み出すことで記憶部120(例えばRAM)に書き出すこと、予め記憶部120(例えばHDD)に記憶された入力画像を、医療従事者等のユーザによる入力受付部140の操作に応じて読み出し、記憶部120(例えばRAM)に書き出すこと、又は、任意の端末からクラウドに送信され、サーバの記憶装置(例えばHDD)に保存された入力画像について、サーバの制御装置(例えばCPU)がサーバの記憶装置(例えばRAM)に書き出すこと等、を示しうる。もちろんあくまでも例示でありこの限りではない。
【0021】
算出部112は、ソフトウェア(記憶部120に記憶されている)による情報処理がハードウェア(制御部110)によって具体的に実現されているものである。算出部112は、算出ステップを実行するように構成される。算出ステップは、上記入力画像と、予め記憶された参照情報121とに基づいて、被検体の第1脳年齢を算出するステップである。
【0022】
ここで参照情報121とは、認知機能が正常な第1コホートの第1脳画像とこれに対応する第1コホートの暦年齢との関係を示す情報である。参照情報121の例として、例えば、ルックアップテーブル、関数、数理モデル、学習済みモデル等が挙げられる。参照情報121は、当該第1脳画像と第1コホートの暦年齢との関係を学習させた学習済みモデルであってもよい。参照情報121が学習済みモデルであることにより、被験体の脳の異常を早くから捉えることができる。
【0023】
また、当該学習済みモデルは、第1脳画像における灰白質及び白質の量と第1コホートの暦年齢との関係を学習させたモデルであってもよい。脳の灰白質及び白質の量を入力として学習済みモデルを生成することにより、被検体の認知機能、脳の萎縮の程度、慢性虚血性白質変化等を検出することができる。
【0024】
本実施形態における学習済みモデルは、第1脳画像から灰白質画像及び白質画像を抽出し、それぞれの画像パターンと第1コホートの暦年齢情報とをSVR(Support Vector Regression)を用いて学習させたものである。
【0025】
ここで算出するとは、例えば、予め記憶部120(例えばROMやHDD)にルックアップテーブルが記憶されており、制御部110が記憶部120から当該ルックアップテーブルを読み出して算出がなされること、予め記憶部120(例えばROMやHDD)に関数が記憶されており、当該関数に対して第1脳画像から得られる特徴量を入力することで算出がなされること、予め記憶部120(例えばROMやHDD)に数理モデルが記憶されており、当該数理モデルに対して第1脳画像から得られる特徴量を入力することで算出がなされること、又は、第1コホートの暦年齢と第1脳画像の特徴量とを学習させた学習済みモデルに基づいて、当該学習済みモデルに対して第1脳画像から得られる特徴量を入力することで算出がなされること等、を示しうる。もちろんあくまでも例示でありこの限りではない。
【0026】
補正部113は、ソフトウェア(記憶部120に記憶されている)による情報処理がハードウェア(制御部110)によって具体的に実現されているものである。補正部113は、補正ステップを実行するように構成される。補正ステップは、第1脳年齢と、予め記憶された補正情報122とに基づいて、第1脳年齢を算出する際に含まれる希釈バイアスを補正した第2脳年齢を算出するステップである。
【0027】
ここで補正情報122とは、第1脳画像とは異なる第2コホートの第2脳画像を参照情報に適用させて生成された情報であってもよい。補正情報122の生成において第1脳画像とは異なる第2コホートの第2脳画像を適用させることにより、補正情報122と参照情報121との相違が明確となるため、より正確に第2脳年齢を算出することができる。
【0028】
また、補正情報122は、第2コホートの第1脳年齢及び暦年齢の差と、暦年齢とを直線回帰することによって得られた傾きと切片とを有し、被検体の暦年齢を変数とする1次関数で表されてもよい。
図3は、補正情報122の求め方の一例を示す図である。ここでは、認知機能が正常な8人(サンプルA~H)のデータを用いて説明する。まず、算出部112によって、サンプルA~Hのそれぞれの脳画像から第1脳年齢を算出する。次に、当該第1脳年齢と暦年齢との年齢差を算出する。次に、年齢差を縦軸、暦年齢を横軸とした座標平面上に、対応するデータをプロットする。次に、このプロットしたデータを直線回帰する。以上の処理により、傾きと切片を有する1次関数を生成することができる。
図3では、傾きが0.0873、切片が-0.0703の1次関数が得られた。補正情報122が1次関数で表されることにより、より少ない情報(変数)で被検体の第2脳年齢を算出することができる。
【0029】
さらに、補正部113は、1次関数(補正情報122)に被検体の暦年齢を代入して得られるオフセット値を第1脳年齢から減算して、第2脳年齢を算出してもよい。これにより、第1脳年齢を算出する際に含まれる希釈バイアスを適切に補正することができる。
【0030】
前述のように、本実施形態において1次関数で表された補正情報122を用いることで、第1脳年齢を算出する際に含まれる希釈バイアスを補正することができる。被検体の暦年齢が比較的低年齢の場合(20代~40代)は、算出すべき脳年齢(第2脳年齢)に対して第1脳年齢が高く算出される傾向があり、被検体の暦年齢が比較的高年齢の場合(40代以降)は、算出すべき脳年齢(第2脳年齢)に対して第1脳年齢が低く算出される傾向がある。
【0031】
図4は、認知機能が正常な第3コホートの暦年齢と脳年齢(第1脳年齢及び第2脳年齢)との相関関係を示す図である。
図4に示すように、希釈バイアスを補正しない場合(第1脳年齢)の暦年齢と脳年齢との相関関係は、傾きが0.729、切片が12.5歳の直線で表される。一方、希釈バイアスを補正した場合(第2脳年齢)の暦年齢と脳年齢との相関関係は、傾きが0.994、切片が0.2歳の直線で表される。この結果により、補正情報122を用いて希釈バイアスを補正することで、認知機能が正常な第3コホートにおいて暦年齢と脳年齢との一致が得られた。
【0032】
また、認知機能が正常な第3コホートの第3脳画像から第1脳年齢及び第2脳年齢を算出すると、第3コホートの暦年齢と第1脳年齢との相関係数は0.864であったが、一方、第3コホートの暦年齢と第2脳年齢との相関係数は0.919であった。すなわち、本実施形態における補正情報122を用いることで、希釈バイアスを適切に補正することができる。
【0033】
3.情報処理
図5は、制御部110の情報処理を示すアクティビティ図である。まずは、参照情報121として学習済みモデルを生成するまでを説明する。制御部110は、第1コホートの第1脳画像を撮像する(A110)。次に、制御部110は、撮像した第1脳画像における灰白質及び白質の量を認識処理する(A120)。ここで、制御部110は、十分な量のサンプル数(例えば1000サンプル)を取得するまでA110及びA120を繰り返す。サンプル数は、例えば、10~10000であり、具体的には例えば、10,20,30,40,50,60,70,80,90,100,200,300,400,500,600,700,800,900,1000,1100,1200,1300,1400,1500,1600,1700,1800,1900,2000,2100,2200,2300,2400,2500,2600,2700,2800,2900,3000,3100,3200,3300,3400,3500,3600,3700,3800,3900,4000,4100,4200,4300,4400,4500,4600,4700,4800,4900,5000,6000,7000,8000,9000,10000であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。次に、制御部110は、第1脳画像に含まれる灰白質及び白質の量と、第1コホートの暦年齢とを入力として、第1脳年齢を算出するための学習済みモデルを生成する(A130)。
【0034】
次に、補正情報を生成するまでを説明する。制御部110は、第2コホートの第2脳画像を撮像する(A140)。次に、制御部110は、撮像した第2脳画像を前述の学習済みモデルに適用して、第2コホートの第1脳年齢を算出する(A150)。ここで、制御部110は、十分な量のサンプル数(例えば1000サンプル)を取得するまでA140及びA150を繰り返す。サンプル数は、例えば、10~10000であり、具体的には例えば、10,20,30,40,50,60,70,80,90,100,200,300,400,500,600,700,800,900,1000,1100,1200,1300,1400,1500,1600,1700,1800,1900,2000,2100,2200,2300,2400,2500,2600,2700,2800,2900,3000,3100,3200,3300,3400,3500,3600,3700,3800,3900,4000,4100,4200,4300,4400,4500,4600,4700,4800,4900,5000,6000,7000,8000,9000,10000であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。次に、制御部110は、第2コホートの第1脳年齢及び暦年齢の差と、第2コホートの暦年齢とを直線回帰して回帰式の係数を決定し、1次関数で表される補正情報を生成する(A160)。
【0035】
次に、被検体の第2脳年齢を算出するまでを説明する。読出部111は、被検体の脳を撮像した脳画像である入力画像を読み出す(A170)。次に、算出部112は、当該入力画像を学習済みモデルに適用して、被検体の第1脳年齢を算出する(A180)。次に、補正部113は、算出された第1脳年齢を補正情報で補正して第2脳年齢を算出する(A190)。すなわち、補正部113は、第1脳年齢を算出する際に含まれる希釈バイアスを補正した第2脳年齢を算出する(A190)。
【0036】
4.情報処理システム100の機能構成2
図6は、情報処理システム100の機能構成を示すブロック図である。ここでは、第2章と異なる部分について説明する。制御部110は、受付部114と、生成部115とを備える。受付部114は、ソフトウェア(記憶部120に記憶されている)による情報処理がハードウェア(制御部110)によって具体的に実現されているものである。受付部114は、受付ステップを実行するように構成される。受付ステップは、被検体の脳を撮像した脳画像である入力画像を、ネットワークを介して医用画像装置210から受け付けるステップである。
【0037】
ここで受け付けるとは、例えば、医用画像装置210で取得した入力画像を、通信部150を経由して受信することを示しうる。ここで、情報処理システム100は、入力画像として例えば10~100枚程度を使用して被検体の第2脳年齢を算出するが、入力画像を圧縮ファイルとしてまとめて受け付けてもよい。このようにまとめて受け付ける構成とすることにより、医療従事者等のユーザは情報処理システム100に入力画像を送信する手間を省くことができる。
【0038】
生成部115は、ソフトウェア(記憶部120に記憶されている)による情報処理がハードウェア(制御部110)によって具体的に実現されているものである。生成部115は、生成ステップを実行するように構成される。生成ステップは、補正部113によって算出された第2脳年齢の結果を端末220で視認可能な視覚情報を生成するステップである。
【0039】
ここで生成するとは、例えば、記憶部120(例えばRAMやHDD)に記憶されている被検体の第2脳年齢について、端末220に表示させる際における画面、画像、レンダリング情報等の視覚情報を生成することを示しうる。
【0040】
情報処理システム100は、第4章の構成により、ベンダー側でソフトウェアを稼働させ、医療従事者等のユーザに対して、ネットワーク経由で当該ソフトウェアの機能を活用させることができる。
【0041】
5.視覚情報の具体例
図7~
図11は、端末220で表示される、被検体の第2脳年齢の算出結果を示す図である。
図7では、認知機能が正常で、脳の萎縮が見られない被検体についての第2脳年齢の算出結果を示す。ここでは、被検体の暦年齢が61歳であるのに対し、第2脳年齢が60歳と算出されている。
図8では、認知機能が正常で、脳の萎縮が見られる被検体についての第2脳年齢の算出結果を示す。ここでは、被検体の暦年齢が67歳であるのに対し、第2脳年齢が78歳と算出されている。
図8では、情報処理システム100に脳の萎縮が認識されたため、暦年齢に対して第2脳年齢が高めに算出されている。
【0042】
図9では、認知機能が正常で、脳の萎縮が見られず、かつ慢性虚血性白質変化が見られない被検体についての第2脳年齢の算出結果を示す。ここでは、被検体の暦年齢が74歳であるのに対し、第2脳年齢が75歳と算出されている。
図10では、認知機能が正常で、脳の萎縮が見られず、かつ慢性虚血性白質変化が見られる被検体についての第2脳年齢の算出結果を示す。この場合、被検体の暦年齢が79歳であるのに対し、第2脳年齢が90歳と算出されている。
図10では、情報処理システム100に慢性虚血性白質変化が認識されたため、暦年齢に対して第2脳年齢が高めに算出されている。
【0043】
また、
図11に示すように、参考としてオフセット値を示してもよい。このようにオフセット値を示すことにより、医療従事者等のユーザに対して、算出した第2脳年齢の信憑性の高さを感じさせることができる。
【0044】
以上をまとめると、情報処理方法は、コンピュータが実行する情報処理方法である。情報処理方法は、読出ステップと、算出ステップと、補正ステップとを実行するように構成される。読出ステップでは、被検体の脳を撮像した脳画像である入力画像を読み出す。算出ステップでは、入力画像と、予め記憶された参照情報とに基づいて、被検体の第1脳年齢を算出する。参照情報とは、認知機能が正常な第1コホートの第1脳画像とこれに対応する第1コホートの暦年齢との関係を示す情報である。補正ステップでは、第1脳年齢と、予め記憶された補正情報とに基づいて、第1脳年齢を算出する際に含まれる希釈バイアスを補正した第2脳年齢を算出する。
【0045】
本実施形態によれば、情報処理システム100は、信憑性が高い脳年齢を提示することができる。したがって、被検体は、生活習慣の見直しや、その見直しの効果の判定をすることができる。
【0046】
次に記載の各態様で提供されてもよい。
前記情報処理システムにおいて、前記参照情報は、前記第1脳画像と前記第1コホートの前記暦年齢との関係を学習させた学習済みモデルである、情報処理システム。
前記情報処理システムにおいて、前記学習済みモデルは、前記第1脳画像における灰白質及び白質の量と、前記第1コホートの前記暦年齢との関係を学習させたモデルである、情報処理システム。
前記情報処理システムにおいて、前記補正情報は、前記第1脳画像とは異なる第2コホートの第2脳画像を前記参照情報に適用させて生成された情報である、情報処理システム。
前記情報処理システムにおいて、前記補正情報は、前記第2コホートの第1脳年齢及び暦年齢の差と、前記暦年齢とを直線回帰することによって得られた傾きと切片とを有し、前記被検体の暦年齢を変数とする1次関数で表される、情報処理システム。
前記情報処理システムにおいて、前記補正ステップでは、前記1次関数に前記被検体の暦年齢を代入して得られるオフセット値を前記第1脳年齢から減算して、前記第2脳年齢を算出する、情報処理システム。
前記情報処理システムにおいて、前記入力画像は、MRI画像である、情報処理システム。
前記情報処理システムにおいて、受付ステップと、生成ステップとを実行するように構成され、前記受付ステップでは、前記入力画像を、ネットワークを介して医用画像装置から受け付け、前記生成ステップでは、前記補正ステップの結果を端末で視認可能な視覚情報を生成する、情報処理システム。
コンピュータが実行する情報処理方法であって、読出ステップと、算出ステップと、補正ステップとを実行するように構成され、前記読出ステップでは、被検体の脳を撮像した脳画像である入力画像を読み出し、前記算出ステップでは、前記入力画像と、予め記憶された参照情報とに基づいて、前記被検体の第1脳年齢を算出し、ここで前記参照情報とは、認知機能が正常な第1コホートの第1脳画像とこれに対応する前記第1コホートの暦年齢との関係を示す情報であり、前記補正ステップでは、前記第1脳年齢と、予め記憶された補正情報とに基づいて、前記第1脳年齢を算出する際に含まれる希釈バイアスを補正した第2脳年齢を算出する、情報処理方法。
プログラムであって、前記情報処理システムにおける各ステップをコンピュータに実行させるための、プログラム。
もちろん、この限りではない。
【符号の説明】
【0047】
100 :情報処理システム
110 :制御部
111 :読出部
112 :算出部
113 :補正部
114 :受付部
115 :生成部
120 :記憶部
130 :表示情報生成部
140 :入力受付部
150 :通信部
210 :医用画像装置
220 :端末