(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096517
(43)【公開日】2022-06-29
(54)【発明の名称】電気刺激装置用電極
(51)【国際特許分類】
A61N 1/04 20060101AFI20220622BHJP
A61N 1/32 20060101ALN20220622BHJP
【FI】
A61N1/04
A61N1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020209663
(22)【出願日】2020-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】591032518
【氏名又は名称】伊藤超短波株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 誠
(72)【発明者】
【氏名】折戸 亘
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053BB04
4C053BB22
4C053JJ24
(57)【要約】
【課題】簡便な製造工程で使い捨て可能なシート型電極を提供する。
【解決手段】上記の課題を解決するために本発明において以下のような手段を講じた。即ち本発明における電極は、(1)電気刺激のための電気信号を供給するための電極であって、前記電極は導電性を有する部材と導電性のゲルを有し、前記部材は第1面および第2面を有する電極本体と前記電極本体から延伸して形成される凸部を有し、前記第1の面には前記ゲルが配置され、前記凸部は折り返して前記第2の面に固定されるとともに電気コネクタが形成されていることを特徴としている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気刺激のための電気信号を供給するための電極であって、
前記電極は導電性を有する部材と導電性のゲルを有し、
前記部材は第1の面および第2の面を有する電極本体と前記電極本体から延伸して形成される凸部を有し、
前記第1の面には前記ゲルが配置され、前記凸部は折り返して前記第2の面に固定されるとともに電気コネクタが形成されている電極。
【請求項2】
前記凸部は前記電極本体と一体化して形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記電気コネクタは耐久性調整部を有し、前記電気コネクタが前記耐久性調整部によって調整されている耐久性を有していることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体に電流を流すことで、筋肉刺激による筋力向上、疼痛緩和、関節可動域改善、筋肉痛の軽減、創傷の治癒といった健康増進や治療、美容に用いられる電気刺激装置用の電極に関する。
【背景技術】
【0002】
電気刺激装置について、経皮的電気刺激や干渉電流、高電圧刺激、微弱電流(マイクロカレント)といった公知の電気刺激法に沿った電気刺激信号を供給する、各種動作モードを搭載あるいは専用機タイプの低周波治療器に関する技術が開示されている。電気刺激信号の生体への供給としては、ゲルシートを生体との接触面に備えたシート型電極、例えば特許文献1のようなシート型の電極にて行われるケースが多い。特許文献1では導電性ゴムを用いたシート型電極が開示されている。シート型電極と電気刺激装置との接続はケーブルによって行われ、電極とケーブルを接着して接続が実現される。電極と電気刺激装置がケーブルで直接接続されていてもよいし、多くは電極を交換可能とするために、ケーブルの途中でコネクタを設けて取り外し可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来のシート型電極の場合、ケーブルとの接続部では電極と被覆を外したケーブルをはんだづけによって接着し、接続部に絶縁カバーをかぶせ、治具によって圧着かしめて成形するといった複雑な工程が必要になる。また、特許文献1の電極シートは導電性ゴムからなり、型成型する際に、同様に被覆を外したケーブルの一端部を挿入することで電極シートとケーブルの接続が行われるため、型成型の工程が必要である。衛生面では電極は一回使用の使い捨てにすることが望ましく、そのためには可能な限り低コストである必要があり、複雑な工程を必要とする電極は不利であり、簡便な製造工程が望ましい。
【0005】
また、特許文献1では導電性ゴムを使用することで、金属箔よりインピーダンスが高くなることから、定電流制御が行われる電気刺激装置では、高い電圧が必要になり消費電力および安全性の点でも不利である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために本発明において以下のような手段を講じた。即ち本発明における電極は、(1)電気刺激のための電気信号を供給するための電極であって、前記電極は導電性を有する部材と導電性のゲルを有し、前記部材は第1の面および第2の面を有する電極本体と前記電極本体から延伸して形成される凸部を有し、前記第1の面には前記ゲルが配置され、前記凸部は折り返して前記第2の面に固定されるとともに電気コネクタが形成されていることを特徴としている。
【0007】
さらに上記の課題を解決するために本発明において以下のような手段を講じた。即ち本発明における電極は、(2)前記凸部は前記電極本体と一体化して形成されていることを特徴としている。
【0008】
さらに上記の課題を解決するために本発明において以下のような手段を講じた。即ち本発明における電極は、(3)前記電気コネクタは耐久性調整部を有し、前記電気コネクタが前記耐久性調整部によって調整されている耐久性を有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、電気刺激装置からの電気刺激出力である電気信号を人体に加える電極について、結合部を備えた例えば金属箔に導電性ゲルを備え、簡便な工程で電気刺激装置からのケーブルとの接続構造を構成し、製造コストを下げることができる。製造コストが下げられるので電極単価も低下し、使用者が気軽に使い捨て使用ができ、これによって衛生面での安全性を高めることができる。あるいは消費電力および安全性でも有利な電極が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明におけるシート型電極の説明図である。
【
図2】本発明におけるシート型電極の電極シート部の説明図である。
【
図3】本発明におけるシート型電極の結合部の作成工程説明図である。
【
図4】本発明におけるシート型電極の結合部の第2の実施例である。
【
図5】本発明におけるシート型電極の結合部の第3の実施例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
【0012】
図1は本発明におけるシート型の電極1を示している。
図1(a)は背面図、
図1(b)は側面図である。本電極1は生体に電気刺激信号を供給する電極本体である電極部11、生体との接触面には導電性ゲル12を有する。電極部11は例えば導電性の金属箔からなっていてもよく、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、ステンレスといった導電性の材料を部材として使用してもよい。材料としてはこのほかに、表面をめっき加工によって導電性をもたせ、折り曲げ加工可能な板状、例えば薄板部材でもよく、あるいは導電性粉末や導電性繊維を混入させて生成した導電性材料であってもよく、あるいは銀繊維や導電性繊維で作られたメッシュ状のあるいは布状の材料であってもよい。本実施形態では、電極部11は折り曲げ可能な板状の金属、例えばステンレス箔で形成されているとして説明を行う。電極部11は、生体に接触して電気刺激信号を供給する電極シート部111と電気刺激装置からの電気刺激信号を伝えるケーブル13を挿入する電気コネクタである結合部112が設けられているからなる。ケーブル13は電気刺激装置に接続される。
【0013】
電極部11は、生体に接触して電気刺激信号を供給する電極シート部111および結合部112を備える。結合部112には、電気刺激装置に接続されることによって当該電気刺激装置からの電気刺激信号を伝えることができるケーブル13を挿入することができる結合部112からなる。ケーブル13は電気刺激装置に接続される。
図1は電極1の使用方法を説明するために、ケーブル13が本発明の電極1に接続された状態を示している。
【0014】
図2は電極部11の加工前の形態を表す説明図である。生体表面に接触する電極シート部111は方形状でも丸形状でもよく、特に形状は問わない。電極シート部111から延伸して折り曲げ部113を介して結合部112が形成される。結合部112はケーブル13を挿入するため円筒形に丸め込むように加工される。結合部112は
図2では方形状であるが、円筒形状に加工できるだけの大きさ・形状であればよい。
【0015】
電極シート部111と結合部112の間の折り曲げ部113は、結合部112を円筒形状に丸め込むために、結合部112よりは幅を狭く、加工されてもよい。
図2では折り曲げ部113が電極シート111から延伸する方向へ向けて、折り曲げ部113の辺が並行線となるように構成されているが、それに限らず、結合部112側は結合部112をケーブル13を挿入するための大きさで丸め込めるような幅であればよく、電極シート部111側は幅広のテーパ状であってもかまわない。あるいは折り曲げ部113は結合部112の幅と同等あるいは結合部112の幅より広く形成してもよい。この場合は、折り曲げ部113にスリットを設けることによって結合部112が形成できるような構成でもよい。このような形態は型抜きによって一体製造される。
【0016】
図3は結合部の加工工程を示す。
図3(a-1)乃至
図3(a-4)は、電極背面からみた方向の図であり、
図3(b-1)乃至
図3(b-4)は電極側面方向からみた図である。
図3(a-1)と
図3(b-1)には、電極シート部111、結合部112および折り曲げ部113の符号が付されているが、
図3(a-1)と
図3(b-1)以外ではこれらの符号を省略している場合がある。始めに折り曲げ部113に直交する、結合部112の図面上方向および下方向の両方の端部から丸めて
図3(a-2)あるいは
図3(b-2)のように結合部112を円筒形状に成形する。円筒形状を閉じて維持するのに当該両方の端部を接着剤等で固定してもよいし、溶接・溶着加工で固定してもよい。あるいは固定せず、隙間を擁したまま、もしくは重なりをつけた状態で円筒形状を形成してもよい。その次に、
図3(a-3)あるいは
図3(b-3)のように折り曲げ部113の電極シート部111側を基点として電極シート部111に接するように折り曲げ部113を180°に折り曲げ加工されたのち、する。折り曲げ部113は電極シート部111に固定される。折り曲げの固定は接着剤等の硬化性流動物質や可塑性樹脂などでの固定でもよいし、溶接・溶着による固定でもよい。
【0017】
最後に、結合部112を固定した面とは反対側の電極シート部111の表面にシート状の導電性ゲル12を張り付けることで電極部11が形成される。導電性ゲル12は自己の粘着力で貼り付け固定してもでもよいし、導電性粘着剤や接着剤または両面テープで貼り付け固定されていてでもよい。導電性ゲル12としては、ゲル中に保湿剤、電解質が含まれ、例えばテクノゲル(登録商標3080965号積水化成品工業株式会社)などがある。導電性ゲル12の粘着力により、電極1は生体の皮膚に張り付けて、固定することが可能となる。
【0018】
電気刺激装置からの出力はケーブル13を介して行われる。例えばケーブル13の近位端を電気刺激装置に接続し、ケーブル13の遠位端ではコネクタを設けて、シート型電極1の結合部112に挿入し、生体に電気刺激装置からの電気刺激信号を供給する。
【0019】
ここでシート型電極1の結合部112を含め電極部11は上記のように安価なステンレス箔で形成されている上に、きわめて簡単な構造であるのでコストを非常に低く、すなわち電極1全体のコストを大きく低減できる。一方でその簡単な構造がゆえにケーブル13の繰り返しの抜き差しや使用に対して大きな耐久性を持たせることができない。ただし、例えば1・2回などの少ない使用回数の使用や数時間の短い使用には十分に耐えうるような耐久性を備えることができる。このようにあえて耐久性をもたせないことにより、同時にきわめてコストを低減させることにより電極1を使い捨てとすることで安全性を高めることが可能となる。
【0020】
例えば本発明の電極は上記のように繰り返しの使用に適さないので、一つの電極1を複数の人に使いまわすことがなく、したがってウィルスや菌による感染症に係る衛生上のリスクを回避できる。
【0021】
本発明の電極によれば、安全性のリスクを回避できる。導電性ゲル12が長時間使用されると導電性ゲル12の劣化が発生し導電性ゲル12の抵抗値が上昇する。抵抗値が上昇すると、電気刺激装置が定電流制御の場合は導電性ゲル12の抵抗値が上昇するので出力される電圧が大きくなるとともに導電性ゲル12の一部に電流が集中して当該電流集中による痛みや不快感を患者やユーザーが感じるだけでなく、やけどが発生しやすくなる。ところが本発明の電極によれば導電性ゲル12の電気的特性低下する前に結合部112が使用できなくなり、当該電気的特性の劣化に誘発されるやけどや電流による痛みなどの不快感などの安全性のリスクを回避できる。
【0022】
本発明の電極によれば、施術や治療の効果低減などの治療器や美容器としての機能低下のリスクを回避できる。電気刺激装置が定電圧制御の場合は、導電性ゲル12の抵抗値が上昇するので供給される電流が低下し、電気刺激による十分な治療や施術の効果が得られなくなるリスクを回避できる。
【0023】
上記のように本発明が施された電極は、特にその結合部112には高い耐久性を期待することができないが、耐久性をもたせないあるいは少ない使用頻度や短時間の使用に耐えうるように耐久性を調整する耐久性調整部を有している。すなわち結合部112は耐久性処理部によって調整された耐久性を有している。耐久性調整部として、例えばコネクタの脱着で結合部112の円筒形状が、開放あるいは、直径方向に広がって、次に繰り返してコネクタを挿入した場合にしても固定されず容易に脱落してしまう程度の大きさ及び耐久性で形成することにより実現可能である。
【0024】
また、電極シート部111の厚さは好適には0.1mm、導電性ゲル12の厚さは好適には0.6mm以下である。したがって、極めて薄く、曲げにも耐えうるので、ひじ、膝等の関節部を含む生体の様々な箇所に張り付けることが容易となる。一方、導電性ゲル12の厚みは0.6mm以下と薄いことから、耐久性は低く、複数回使用で剥がれてしまうことから、使い捨ての使用目的としても合致する。
(第2の実施形態)
【0025】
図4は結合部112の別の実施形態を示すもので、耐久性調整部の他の実施形態を示している。
図4(a)が結合部112の側面図、
図4(b)がケーブル13の挿入方向からの結合部112の断面図である。円筒形状にスリット114を設けて、ケーブル13のコネクタの挿入、固定が可能としたものである。これらの各スリット114がそれぞれ耐久性調整部に該当する。この場合、コネクタの脱着でスリット114が広がってしまい、繰り返して次にコネクタを挿入しても固定されず容易に脱落してしまうため、同様に繰り返しの再使用が困難となる。
【0026】
本実施例ではスリット114の数は4つとしているが、これに固定されるものではなく、繰り返しの使用に適さず使い捨て使用のための耐久性が担保できれば、3本以下あるいは5本以上であってもよい。すなわちスリットの本数により耐久性が調整されていてもよい。さらに、
図4(a)および
図4(b)において各スリット114は同じ長さであるが、本発明はこれに限定されず、ある1本のスリットを他のスリットより短くする、あるいはある一本のスリットを他のスリットより長くするような構成により、すなわちスリットの長さにより耐久性が調整されていてもよい。あるいは
図4(a)および
図4(b)において各スリットは同じ幅であるが、本発明はこれに限定されず、ある1本のスリットの幅を他のスリットより広くする、あるいはある一本のスリットの幅を他のスリットより狭くするような構成により、すなわちスリットの幅により耐久性が調整されていてもよい。すなわち耐久性の調整はスリットの本数や幅、あるいは長さの少なくとも一つを使用して調整されていてもよい。
(第3の実施形態)
【0027】
図5は結合部112のさらに別の実施形態を示すもので、耐久性調整部の他の実施形態を示している。
図5(a)が結合部112の側面図、
図5(b)がケーブル13の挿入方向からの結合部112の断面図である。円筒形状に凹部115を設けて、ケーブル13のコネクタの挿入、固定が可能としたものである。これらの各凸部がそれぞれ耐久性調整部に該当する。この場合、コネクタの脱着で凹部115が広がってしまい、次に繰り返してコネクタを挿入しても固定されず容易に脱落してしまうため、同様に繰り返しの再使用が困難となる。
【0028】
本実施例では凹部115の数は4つとしているが、これに固定されるものではなく、繰り返しの使用には適さず使い捨て使用のための耐久性が担保できれば、3本以下あるいは5本以上であってもよい。すなわち凸部の本数により耐久性が調整されていてもよい。さらに、
図5(a)および
図5(b)において各凸部は同じ長さであるが、本発明はこれに限定されず、ある1本の凸部を他の凸部より短くする、あるいはある一本の凸部を他の凸部より長くするような構成により、すなわち凸部の長さにより耐久性が調整されていてもよい。または
図5(a)および
図5(b)において各凸部は同じ幅であるが、本発明はこれに限定されず、ある1本の凸部の幅を他の凸部より広くする、あるいはある一本の凸部の幅を他の凸部より狭くするような構成により、すなわち凸部の幅により耐久性が調整されていてもよい。あるいは
図5(a)および
図5(b)において各凸部は同じ高さであるが、本発明はこれに限定されず、ある1本の凸部の高さを他の凸部より高くする、あるいはある一本の凸部の高さを他の凸部より低くするような構成により、すなわち凸部の高さにより耐久性が調整されていてもよい。すなわち耐久性の調整は凸部の本数、幅、長さあるいは高さの少なくとも一つを使用して調整されていてもよい。
【0029】
上記では耐久性調整部としてスリットや凸部を示したが本発明の耐久性調整部はこれに限定されるものではなく、スリットや凸部を組み合わせてもよく、あるいはスリットや凸部を設ける代わりに一部の厚みを薄くするまたはスリットに樹脂を充填するなどによって耐久性を調節して耐久性調整部としてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 シート型電極
11 電極部
12 導電性ゲル
13 ケーブル
111 電極シート部
112 結合部
113 折り曲げ部
114 スリット
115 凹部