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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096565
(43)【公開日】2022-06-29
(54)【発明の名称】連結具および壁の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/56 20060101AFI20220622BHJP
   E04B 2/74 20060101ALI20220622BHJP
   E04B 9/00 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
E04B2/56 651J
E04B2/56 652H
E04B2/74 531L
E04B9/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020209752
(22)【出願日】2020-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】599026418
【氏名又は名称】千代川 健裕
(71)【出願人】
【識別番号】520499720
【氏名又は名称】鈴木 克実
(71)【出願人】
【識別番号】520499731
【氏名又は名称】道場 信義
(71)【出願人】
【識別番号】520499742
【氏名又は名称】細矢 卓生
(74)【代理人】
【識別番号】100133802
【弁理士】
【氏名又は名称】富樫 竜一
(74)【代理人】
【識別番号】100197181
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 泰子
(72)【発明者】
【氏名】千代川 健裕
【テーマコード(参考)】
2E002
【Fターム(参考)】
2E002FA02
2E002FA03
2E002LB02
2E002LB03
2E002LC01
2E002MA04
(57)【要約】
【課題】木造軸組工法において壁や天井の下地となる枠部を形成する場合に、切削等による木材の損傷を伴わず、建築現場での墨出し作業が不要でありながら、正確な施工を行うための連結具および施工方法を提供することを課題とするものである。
【解決手段】
側壁部若しくは天井壁部を構成する壁の製造に使用可能な連結具および連結具を用いた製造方法であって、長尺に形成した均一な肉厚を有する平面部3と、平面3と直交する向きで取り付ける角材の固定に位置ごとに角材の端縁を固定するための止め具打ち込み用の小孔17を穿設した連結具1を設け、連結具1を対向して配置し、それぞれの連結具1の裏面に、直接若しくは裏面に配置した角材を介して角材を固定することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺に形成した均一な肉厚を有する平面部を有し、
当該平面部の表面から裏面に貫通する複数の孔を設けたことを特徴とする連結具。
【請求項2】
前記平面部を剛性のある金属板によって形成したことを特徴とする請求項1記載の連結具。
【請求項3】
前記長尺に形成した平面部の両側縁から垂下した側壁を設け、
当該側壁の表面に装着する角材の取り付け位置を表した表示、孔若しくは表示および孔の双方を設けたことを特徴とする請求項2記載の連結具。
【請求項4】
前記長尺に形成した平面部の表面に、釘打ち機の射出口と係合可能なガイド突起を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項記載の連結具。
【請求項5】
前記平面部の表面に配置される部材と接する凸片を、前記長尺に形成した平面部の側縁から上方に向かって複数個設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項記載の連結具。
【請求項6】
前記平面部を柔軟性のある布素材若しくは合成樹脂製シートによって形成したことを特徴とする請求項1記載の連結具。
【請求項7】
剛性のある金属板によって形成した平面部と、当該平面部の両側縁から垂下した側壁を有し、
前記平面部に止め具を打ち込むための孔を設け、
前記平面部の両側縁に当該平面部上に配置する角材をガイドするための上方に向かって突出させた凸片を設けたことを特徴とする連結具。
【請求項8】
側壁部若しくは天井壁部を構成する壁の製造方法であって、
長尺に形成した均一な肉厚を有する平面部と、当該平面と直交する向きで取り付ける角材の固定位置ごとに当該角材の端縁を固定するための止め具打ち込み用の小孔を穿設した連結具を設け、
前記連結具を対向して配置し、
互いに対向する前記連結具の裏面に前記角材の端面を固定することを特徴とする壁の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家屋の壁や天井を形成する際に使用する木材の連結具および壁の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家屋建築の在来工法である木造軸組工法では、各種の柱からなる垂直材と梁、軒、桁といった横架材(水平材)を組み合わせて家屋の骨格を形成し、骨格に板材を貼り付けて側壁や天井壁を形成するようになっている。例えば側壁を形成する場合には、角材によって形成された2本の横架材を上下に対向して配置して、その間に複数本の角材(間柱等)を間隔を隔てて固定することで骨格となる下地を形成し、その下地に板材を張り付けて壁を構成する。
この際、横架材に対する間柱等の固定位置は設計図に従い行われるが、建築現場で寸法を計測しながら木材に目印を付ける作業(墨出し)を行い、この目印に従って間柱等を配置して釘打ち機等を用いて固定される。
【0003】
また、特許文献1には、壁枠の上枠と下枠に使用する木材の代わりに、金属製の一対の固定用支持片を一定間隔に有した間柱等軸組材固定板を使用したものが記載されている。これは、上下枠を構成する間柱等軸組材固定板に、一対の固定用支持片の間に間柱等軸組材を配置し嵌め込み、間柱等軸組材固定板の固定用支持片から釘、ビス等を用い緊結固定するように構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-307614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような現場で墨出しを行って横架材と間柱等を結合させる作業は、間違えた施工の原因ともなるものであり、設計と異なる壁パネルや天井下地の修正などの理由で工期が長期化する可能性がある。このような可能性の対処方法として、現場での墨出し作業を不要にするために、木材の工場生産時(プレカット時)に、木材に予め目印を付ける方法がある。しかし、プレカットは切削装置によって目印を切削によって形成するものであるため、木材の強度を低下させる等の問題が生じる。
また、上記特許文献1記載のものは、木材(上枠と下枠)に替えて鉄骨を用いたものであり、上下枠を鉄骨によって構成することで所定の剛性を有した構造壁を開示したものといえる。しかし、固定用支持片を設ける場合、装着する角材の寸法が固定されてしまうので、角材のサイズを変更したい場合など、角材の寸法に合わせて固定用支持片の配置を変更したものを改めて製造しなければならない。
【0006】
本発明は当該事情に鑑み発明されたものであって、木造軸組工法において壁や天井の下地となる枠部を形成する場合に、切削等による木材の損傷を伴わず、建築現場での墨出し作業が不要でありながら、正確な施工を行うための連結具および製造(施工)方法を提供することを課題とするものである。また、使用する角材のサイズを変更したい場合であっても、対応しやすい連結具や製造(施工)方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は以下の構成を有する。すなわち、
長尺に形成した均一な肉厚を有する平面部を有し、
当該平面部の表面から裏面に貫通する複数の孔を設けたことを特徴とする連結具。
【0008】
また、本発明は上記連結具において、前記平面部を剛性のある金属板によって形成したことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は上記連結具において、前記長尺に形成した平面部の両側縁から垂下した側壁を設け、当該側壁の表面に装着する角材の取り付け位置を表した表示、孔若しくは表示および孔の双方を設けたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は上記連結具において、前記長尺に形成した平面部の表面に、釘打ち機の射出口と係合可能なガイド突起を設けたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は上記連結具において、前記平面部の表面に配置される部材と接する凸片を、前記長尺に形成した平面部の側縁から上方に向かって複数個設けたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は上記連結具において、前記平面部を柔軟性のある布素材若しくは合成樹脂製シートによって形成したことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は上記課題を解決するために本発明は以下の構成を有する。すなわち、
剛性のある金属板によって形成した平面部と、当該平面部の両側縁から垂下した側壁を有し、前記平面部に止め具を打ち込むための孔を設け、前記平面部の両側縁に当該平面部上に配置する角材をガイドするための上方に向かって突出させた凸片を設けたことを特徴とする連結具。
【0014】
また、本発明は上記課題を解決するために本発明は以下の構成を有する。すなわち、
側壁部若しくは天井壁部を構成する壁の製造方法であって、長尺に形成した均一な肉厚を有する平面部と、当該平面と直交する向きで取り付ける角材の固定位置ごとに当該角材の端縁を固定するための止め具打ち込み用の小孔を穿設した連結具を設け、前記連結具を対向して配置し、互いに対向する前記連結具の裏面に前記角材の端面を固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、建築現場において木材を組み合わせて骨格を形成する場合に、木材に対して結合位置に目印を付ける墨出し作業をする必要のない工法を提供できるという効果を有している。これにより、工期の遅延を防止することができ、墨出し作業の誤りによる作り直しを防止し、品質の高い建築物を提供できるという効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る連結具の外観斜視図である。
図2】本発明に係る連結具を用いて形成した壁枠の説明図である。
図3】釘打ち機、連結具、横架材および垂直材の関係を表した説明図である。
図4】壁枠を土台と胴差しの間に配置する様子を表した説明図である。
図5】本発明に係る連結具を用いて形成した他の壁枠の説明図である。
図6】本発明に係る連結具の他の形態に関する説明図である。
図7】柔軟性のある素材によって連結具を形成した場合の説明図である。
図8】柔軟性のある素材によって形成した連結具の使用状態に関する説明図である。
図9】本発明に係る連結具を用いて天井を形成する場合の説明図である。
図10】本発明に係る連結具の他の例を表した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施例1]
以下、本発明を実施するための形態について図を用いて説明する。
図1は、本実施の形態に係る連結具1の外観斜視図を表している。連結具1は、薄肉の鋼板を折り曲げて長尺に形成した部材であり、所謂Cチャンネルといわれる鋼材のような角型のC字型(コの字型)の断面形状を有した部材である。一例として鋼板の肉厚は0.5~1mm程度であり、以下に説明する機能を有する限りにおいてできるだけ薄く軽量に形成される。
連結具1は、家屋の外壁部分の施工に使用することができる。図2図4は、一例として横架材である土台W1と胴差しW2の間に配置される壁枠2の形態に形成したものを示している。
【0018】
連結具1は、面積の広い平面部3と、平面部3に対して直角を成す側壁部4,5を有している。平面部3と側壁部4、5は、装着する角材11、12(横架材)の断面形状に合わせて形成されており、平面部3と側壁部4、5によって囲まれた内側面6が角材11、12の表面を覆う状態で装着されるようになっている。また、連結具1の全長は、角材11、12の全長と同一に形成される。
【0019】
また、平面部3の両側縁に沿って凸片25を複数個設けている。凸片25は、平面部3の板面の一部を打ち抜くことで生成した打ち抜き片によって形成されており、側壁部4、5の同一平面として上方(表面側)に突出している。凸片25は、平面部3の左右の縁部において対向するように立設されており、対向する2つの凸片25によって挟持する形で横架材である胴差しW2を配置できるようになっている。すなわち、平面部3上に載せられた胴差しW2は、平面部3の真上において自動的に適正な位置に配置され、両者間の位置関係が正確に保たれた状態で施工することが可能になっている。
【0020】
連結具1の平面部3には、表裏貫通した複数の孔が設けられている。図1に示した例では、2個で一対を成す2つの孔7(7a、7b)、8(8a、8b)、9(9a、9b)、10(10a、10b)が、長手方向に沿って等間隔に配置されている。各孔7、8、9、10は、ストレート釘やスクリュー釘等の止め具を挿通させる部位であり、止め具の打ち込み位置を示すガイドとして機能を有するようになっている。
孔7、8、9、10は、横架材である上枠材11と下枠材12の間に配置される垂直材13、14、15、16(以下「13~16」)として設けられる角材の配置位置に合わせて設けられている。すなわち、孔7、8、9、10を設けた位置が、垂直材(13~16)の端面の中央位置を示しており、この位置に合わせて垂直材(13~16)を配置し止め具Tによって固定するようになっている。
【0021】
また、連結具1の側壁部4、5表面には、垂直材(13~16)の取り付け位置を表す目印20、21が設けられている。一例としてこの目印20、21は、垂直材(13~16)断面の短手方向(厚み)の寸法に合わせて設けられており、垂直材(13~16)の中央位置を示す目印20と、垂直材(13~16)の厚みを示す2つの目印21,21から構成されている。厚みを示す2つの目印21、21から逸脱しないように垂直材(13~16)を配置すると、設計通りに横架材に対して垂直材(13~16)を取り付けることができるようになっている。各目印20、21は、穿設した孔によって形成してもよく、この場合配置した垂直材(13~16)の位置が孔や目印20、21によってよくわかるので、正確に位置決めができるようになっている。また、図示した連結具1の場合には、両端の端縁自体が一方の目印(21)として機能するので、目印20、21として孔を2つだけ設けている。なお、2つの目印21,21によって設定されている厚みよりも寸法の大きい(あるいは小さい)垂直材を用いることは可能であり、使用する垂直材の厚みによって連結具1を作り替える必要はない。
【0022】
なお、本実施例では、目印20の中心線として側壁部4、5表面の上下方向に亘るケガキ状の補助線22が描かれており、目印20の両側に設けた目印21、21の中心を通る補助線23、24が描かれている。補助線23と補助線24の間の間隔は、装着する垂直材(13~16)の幅と同一であり、装着位置が適正であるか否かの確認が行いやすくなっている。
なお、平面部3にも目印20、21や補助線23と補助線24に相当する小孔などの目印や補助線を設けてもよい。
【0023】
改めて、本実施の形態において形成される壁を構成するための壁枠2を説明する。壁枠2は、対向して配置される上下一対の横架材11、12と、その横架材11、12の間に配置され止め具(釘)Tによって固定される複数本の垂直材(13~16)によって構成される。
横架材11、12を成す角材の表面には連結具1が装着され、連結具1に示された目印20、21によって垂直材(13~16)の配置位置が示されている。この壁枠2の組み立て時において、予め連結具1に目印20、21が示されているので、現場組立時の墨出し作業が不要であることから、品質の向上と工期短縮に寄与することが可能になっている。
【0024】
連結具1の平面部3に設けた止め具挿通用の孔7、8、9、10の部分には、孔の位置を中心とした隆起部17を設けている。本実施例における隆起部17の外径は円形であり、その中央に各孔を設けている。隆起部17は、金型によって僅かに打ち出された部位であり、連結具1の形成時に各孔とともに形成される。
図3は、釘打ち機40、連結具1、横架材(11,12)および垂直材(13~16)の関係を表した説明図であり、拡大図は釘打ち機40の射出部41と、連結具1の隆起部17(孔)の関係を表したものである。
止め具Tの打ち込みは、空気圧によって駆動されるハンマーによって止め具Tの頭部を叩打して射出する釘打ち機40を用いて行われる。釘打ち機40の射出部41には、空間に止め具を射出しないよう安全装置を兼ねた案内筒42が設けられており、案内筒42が止め具Tの射出位置に接触して本体側に移動することでトリガ43の操作を有効にして止め具Tの射出を行わせるようになっている。
【0025】
隆起部17の外径Dは釘打ち機に設けられている案内筒の内径dと概ね一致する寸法で形成されており、隆起部17を覆うように案内筒42を接触させて押し付けると、孔7、8、9、10と釘打ち機40の射出孔44が一致することになり、孔の中心を通過して止め具Tが打ち込まれるようになっている。
打ち込まれた止め具Tは、頭部で隆起部17を押し込んで潰し、横架材11、12を貫通して垂直材(13~16)の端部に打ち込まれる。これにより、横架材11、12と垂直材(13~16)が結合される。
【0026】
連結具1に設けられたすべての孔7、8、9、10に止め具Tを打ち込むと、壁の骨格を構成するための壁枠2が形成される。
また、図5に示した壁枠46は、窓枠を取り付けるための開口47を設けるなど、家屋の仕様に応じて適宜の形状に形成されるものであるが、基本的な構成は、壁枠2と同様である。
【0027】
[実施例2]
連結具に関する他の実施例について説明する。
図6は、他の実施例に関する連結具30の説明図である。
連結具30は、一例として結合する複数の垂直材31の上端面32(または下端面)の幅と同寸法の幅を有する鋼製の板状体として形成されている。板状体として形成された連結具30の表面部33は平坦である。また、裏面34も同様に平坦面であり垂直材31の上端面32若しくは下端面(図示せず)との接触面を構成するようになっている。
【0028】
表面部33には、表裏貫通した複数の孔35が設けられている。図6に示した例では、5箇所の孔35を一組とした孔群36が、所定の距離を隔てて設けられている。また、表面部33には孔群36とともにケガキ線のような線37が設けられ、線37の中間位置には矩形の小孔38が設けられている。
孔群36を設けた位置が垂直材31の上端面32(または下端面)が接触して取り付けられる位置であり、孔35を介してストレート釘やスクリュー釘等の止め具によって両者を固定するようになっている。線37は、垂直材31の取り付け位置を示しており、各垂直材31を正確に取り付けることができるようになっている。小孔38は、垂直材31の上端面32(または下端面)の端縁り位置を確認することができるものであり、小孔38の中央に上端面32(または下端面)の端縁が見えている場合に、適切な位置に配置されていることがわかるようになっている。
【0029】
複数本の垂直材31の上端面32および下端面(図示せず)を、それぞれ連結具30によって固定すると、対向して配置される2枚の連結具30の間に設計された通りの配置で垂直材31が取り付けられる。連結具30に形成された孔群36と線37は、予め製造工場において正確に設けられているものであり、建設現場での加工は必要が無い。建設現場では、垂直材31の上下両端を連結具30によって固定するだけで、設計通り適切な間隔で垂直材31を設けることができる。
組み立てられた連結具30と垂直材31は、土台W1と胴差しW2の間に配置される壁枠2のような壁の骨格を成す形態に形成したものを示している。
【0030】
[実施例3]
図7連結具に関するさらに他の実施例を表している。
同図に示した連結具50は、一例として柔軟性のある織布若しくは合成樹脂シートによって形成された帯状体である。幅は結合する木材(垂直材)51の幅と略同一に形成され、全長は施工する壁の全長に合わせて形成される。連結具50の表面52には、前述した連結具30と同様に、表裏貫通した複数(一例として5箇所)の孔53が設けられており、5箇所の孔53を一組とした孔群54が、所定の距離を隔てて設けられている。
【0031】
孔群54は、表裏貫通した孔53と、装着する垂直材51の幅を示す2本の目印線55が設けられている。なお、連結具50の端部は目印線55の役割を果たすので、両端については1本だけ目印線55が描かれている。
また、目印線55と両端縁の中央には、矩形の小孔56が設けられており、小孔56を介して垂直材51の端縁が見えるので、取り付け位置を正確に把握できるようになっている。
【0032】
家屋の建築ではモジュールという寸法概念があり、日本では1メートル(2メートル)を基準単位としたモジュールが用いられることが多くなっており、柱の長さや配置する間隔について1/4モジュール、1/2モジュールといった寸法値を採用することが多い。本実施の形態では、メートルモジュールの概念に基づき、一例として孔群53の配置間隔を1/8モジュール(0.5m)単位で設けつつ、1/4モジュール毎に連結具50によって垂直材51の上端57と下端58を固定している。
【0033】
垂直材51の上下をそれぞれ連結具50によって接続すると、連結具50は可撓性を有しているので、図8に示すように垂直材51同士を近接させることができる。例えば、工場において予め垂直材51を連結具50によって結合しておくと、垂直材を近接させて束ねることが可能となり、運搬時にかさばらない。そして、建築現場で近接させた垂直材51を展開して広げると、土台と胴差しの間に配置する際に正確に垂直材51を配列することができ、現場での墨出し作業や位置合わせの作業を軽減することで、施工時間の短縮と正確な工事に寄与するものとなっている。
【0034】
[実施例4]
図9は連結具に関するさらに他の実施例を表している。前述した各実施例は、家屋の壁を形成する例について説明したが、同図は家屋の天井壁を形成する場合を表している。
同図に示した連結具60は、家屋の天井板61を貼り付ける下地材を構成する複数本の野縁62を保持し連結する部材として用いることができる。
連結具60の主要な構成は、前述した連結具1と概ね同様の構成を有するものであり、面積の広い平面部63と、平面部63に対して直角を成す側壁部64、65を有している。平面部63と側壁部64、65は、装着する野縁62(角材)の端縁を収容できる凹面を有したC字型(コの字型)の断面形状を有した部材である。全長は、形成する天井の大きさに応じて定められるものであり、壁を構成する上枠等の横架材66の上に配置され固定されるようになっている。
【0035】
連結具60には、野縁62を固定する位置が予め記されているので、建築現場における墨出し作業が不要であることから、工期短縮に寄与することが可能であり、誤った施工を防止することで品質の向上にも寄与することが可能になっている。
【0036】
[実施例5]
図10は、連結具に関するさらに他の実施例を表している。連結具70は、前述した連結具1の全長を短くした形態を成している。連結具70は、垂直材71と横架材72によって構成した壁枠73に取り付けることで、壁枠73の横架材72に対する土台や胴差しの位置を正確に定めることを可能にするものである。
連結具70は、薄肉の鋼板を折り曲げて角型のC字型(コの字型)の断面形状に形成されている。連結具70は、面積の広い平面部74と、平面部74に対して直角を成す側壁部75、76を有している。平面部74と側壁部75、76は、装着する角材である横架材72の断面形状に合わせて形成されており、平面部74と側壁部75、76によって囲まれた内側面が横架材72の表面に装着されるようになっている。
また、連結具70の全長は、側壁部75と側壁部76の間の距離と同じ若しくはその2倍程度の長さに形成されており、鋼板の肉厚は0.5~1mm程度に形成されている。
【0037】
連結具70の平面部74の両側縁に凸片77が設けられている。凸片77は平面部74の板面の一部を打ち抜くことで生成した打ち抜き片であり、側壁部75、76と同一平面上において上方(表面側)に突出している。2つの凸片77は互いに対向する配置で立設されており、対向する2つの凸片77によって横架材である胴差しを挟持して位置を定め平面部74上に配置できるようになっている。すなわち、平面部74上に載せられた胴差しは、凸片77によって適正な位置に配置され、壁枠73の上に正確に配置される。
【0038】
連結具70の平面部74には、表裏貫通した複数の孔78が設けられている。図示した例では一方の凸片77から他方の凸片77に至る直線上に2つの孔78が設けられている。孔78は、ストレート釘やスクリュー釘等の止め具を挿通させる部位であり、止め具の打ち込み位置を示すガイドとして機能するようになっている。
孔78の周囲には隆起部が設けられている。隆起部は、前述した連結具1と同様に、釘打ち機40の射出孔44を一致させる部位であり、孔78の中心を通過して止め具Tを打ち込むためのガイドを形成している。
【0039】
孔78は、横架材である上枠材72と下枠材(図示せず)の間に配置される垂直材71として設けられる角材の配置位置に合わせて設けられている。すなわち、孔78を設けた位置が、垂直材71の端面の中央位置を示しており、この位置に合わせて垂直材71を止め具Tによって固定するようになっている。
なお、連結具70は垂直材71の固定位置に配置することが好ましいが、上枠材72と下枠材(図示せず)の任意の位置に配置してもよく、必ずしも垂直材71の固定位置にのみ設ける必要はない。
【0040】
また、側壁部75と側壁部76には、孔79若しくは線80からなる目印が設けられている。孔79若しくは線80は、垂直材71の中央位置や装着する垂直材71の幅(上枠材72の長手方向に沿った厚み)を示すようになっており、垂直材71の装着位置を確認することができるようになっている。
【0041】
以上説明した連結具を用いると、現場で木材に対して印をつける必要がなく壁枠を構成することができる。これは、組み立ての間違いなども起こしにくく、作業効率を大幅に高めることが可能であるという効果を有している。
以上、本発明に係る実施の形態を説明したが、これは一例として示したものであって、発明の技術的範囲の限定を意図したものではない。また、例示した各例および技術的要素は、特許請求の範囲を逸脱しない範囲において適宜組み合わせ、省略、置き換え、変更、追加を伴って使用することができるものであり、これらについても本明細書に記載されているものであり本発明の技術的範囲に属するものである。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、木造軸組工法において壁や天井の下地となる枠部の形成に利用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 連結具
2 壁枠
3 平板部
4,5 側壁部
6 内側面
7(7a、7b)、8(8a、8b)、9(9a、9b)、10(10a、10b) 孔
11 横架材(上枠材)
12 横架材(下枠材)
13、14、15、16 垂直材
17 隆起部
20、21 目印
22、23、24 補助線
25 凸片
30 連結具
31 垂直材
32 上端面
33 表面部
34 裏面
35 孔
36 孔群
37 線
38 小孔
40 釘打ち機
41 射出部
42 案内筒
43 トリガ
44 射出孔
46 壁枠
47 開口
50 連結具
51 木材(垂直材)
52 表面
53 孔
54 孔群
55 目印線
56 小孔
57 上端
58 下端
60 連結具
61 天井板
62 野縁
63 平面部
64、65 側壁部
66 横架材
70 連結具
71 垂直材
72 横架材(上枠材)
73 壁枠
74 平面部
75、76 側壁部
77 凸片
78 孔
79 孔
80 線
D 外径
d 内径
T 止め具
W1 土台
W2 胴差し
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10