(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096571
(43)【公開日】2022-06-29
(54)【発明の名称】刈払い用チップソー
(51)【国際特許分類】
A01D 34/73 20060101AFI20220622BHJP
A01D 34/90 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
A01D34/73 102
A01D34/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020220010
(22)【出願日】2020-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】598000264
【氏名又は名称】株式会社トリガー
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 友良
【テーマコード(参考)】
2B083
【Fターム(参考)】
2B083AA02
2B083BA02
2B083CA03
2B083CA04
2B083CA07
2B083CA14
2B083CA23
2B083HA52
(57)【要約】
【課題】チップの地面への直接的な接触を抑制しつつ、所定高さの高刈り作業を容易に行えると共に、刈払いした雑草のチップソーへの絡みや付着等を確実に抑制し得る刈払い用チップソーを提供する。
【解決手段】台金の反刈払機取付面に所定の幅を有するリング形状の地面接触板が配設され、該地面接触板は、その外径が台金の外周縁より所定寸法小さく形成されると共に、所定の間隔を有してリング形状の固着部材で台金の反刈払機取付面に一体的に固着されている。前記固着部材は、反刈払機取付面側の寸法が地面接触板側の寸法より大きい断面台形状に形成され、その高さが地面接触板の幅に対応すると共に、その外周面が略垂直面でその内周面が傾斜面で形成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状の台金の外周縁部にチップ固着部と刃室が形成されると共に、前記チップ固着部にチップが固着された刈払い用チップソーにおいて、
前記台金の反刈払機取付面に所定の幅を有するリング形状の地面接触板が配設され、該地面接触板は、その外径が前記台金の外周縁より所定寸法小さく形成されると共に、所定の間隔を有してリング形状の固着部材で前記台金の反刈払機取付面に一体的に固着されていることを特徴とする刈払い用チップソー。
【請求項2】
前記固着部材は、前記反刈払機取付面側の寸法が前記地面接触板側の寸法より大きい断面台形状に形成され、その高さが前記地面接触板の幅に対応すると共に、その外周面が略垂直面でその内周面が傾斜面で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の刈払い用チップソー。
【請求項3】
前記固着部材に形成された固定孔を介して、前記台金と地面接触板とが前記台金に一体的に固着されていることを特徴とする請求項2に記載の刈払い用チップソー。
【請求項4】
前記台金と地面接触板の間隔及び又は前記台金の外径と地面接触板の外径の差が、雑草の種類等に応じた所定の刈払い高さに対応していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の刈払い用チップソー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈払機に装着されて多年草や一年草等の各種雑草を刈払い(草刈り)する際に使用される刈払い用チップソーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、刈払い用チップソーは、円形平板の台金の中心部分に刈払機への取付孔が形成されると共に、台金の外周縁部に形成された多数のチップ固着部に例えば超硬チップがそれぞれ固着されている。そして、チップソーを刈払機の作業杆(回転伝達シャフト)の先端に取り付けた状態で、刈払機のエンジンを作動させることにより、チップソーが所定回転数で回転して多数のチップで雑草が刈払い(切断)されるようになっている。
【0003】
ところが、このように平板状のチップソーでは、台金の外周縁部に刃室やチップ等が設けられて外周縁形状が凹凸形状となっていることから、チップソーの刈払い作業時に、回転状態の台金の外周縁部が地面上の小石等に接触して、これらを跳ね飛ばすことになり易い。特に、雑草のできるだけ根元部分を刈払いしようとした場合に、チップが直接地面に接触して飛散物が発生し易くなり、刈払い作業の安全性の面で好ましくない。
【0004】
そこで、出願人は、このような不都合を解消するために、特許文献1の刈払い用チップソーを出願した。このチップソーは、台金の取付孔部分に反刈払機取付面方向に窪んだ凹部を形成すると共に、この凹部の底部外面に外形円形で台金の外径より所定寸法小さい外径の板体を一体的に配設し、この板体で台金の外周縁部による地面の小石等への直接的な接触を抑制するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このチップソーにあっては、刈払い作業時に、回転状態のチップや台金の刃室等の外周縁部の、地面上の小石等への直接的な接触が抑制されて、これらが跳ね飛ばされることが少なくなるものの、次のような問題点が明らかになった。
【0007】
すなわち、外形円形の板体が、中心部分に台金の取付孔より若干大きな孔が形成された円環状の円板であるため、台金と板体の間に奥行きの深い空間が形成され、この空間内に刈払いした雑草が侵入して空間の底面に付着し易い。また同時に、板体自体の面積が大きいことからその重量も重くなり、チップソー全体の十分な軽量化を図ることが困難で、刈払い時の作業負担の軽減化を図ることも難しい。すなわち、前記チップソーの場合、台金の外周縁部による小石等の跳ね飛ばしの抑制には効果が得られるものの、刈り取った雑草の絡み等の防止やチップソー自体の軽量化及び刈払い作業自体の負担軽減化等を図ることが難しい。
【0008】
ところで、近年、雑草地をチップソーで刈払いする場合、広葉雑草(タンポポ、クズ、シロツメクサ、ヤブカラシ等)の成長点が地面から約3cmの部分にあることから、3cm以上の高さを保持できる5cm以上の部分を刈払い(高刈り)すれば、広葉雑草を活かすことで、例えばイネ科雑草(ススキ、チガヤ、オヒシバ、スズメノカタビラ等)の成長を抑制できて、刈払い作業回数の低減化、刈払い作業時間の短縮化、カメムシ等の害虫削減化、チップソーの長寿命化及び刈払機の燃料削減化等の各種効果が期待できることが関係者等から提案されている。また、雑草の刈払い作業自体については、刈払い作業を管理・監督する業者や自治体からその安全性の一層の向上が要求されているのが実状である。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、チップの地面への直接的な接触を抑制しつつ所定高さの高刈り作業を容易に行えると共に、刈払いした雑草のチップソーへの絡みや付着等を確実に抑制し得る刈払い用チップソーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、円板状の台金の外周縁部にチップ固着部と刃室が形成されると共に、前記チップ固着部にチップが固着された刈払い用チップソーにおいて、前記台金の反刈払機取付面に所定の幅を有するリング形状の地面接触板が配設され、該地面接触板は、その外径が前記台金の外周縁より所定寸法小さく形成されると共に、所定の間隔を有してリング形状の固着部材で前記台金の反刈払機取付面に一体的に固着されていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、前記固着部材が、前記反刈払機取付面側の寸法が前記地面接触板側の寸法より大きい断面台形状に形成され、その高さが前記地面接触板の幅に対応すると共に、その外周面が略垂直面でその内周面が傾斜面で形成されていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、前記固着部材に形成された固定孔を介して、前記台金と地面接触板とが前記台金に一体的に固着されていることを特徴とする。さらに、請求項4に記載の発明は、前記台金と地面接触板の間隔及び又は前記台金の外径と地面接触板の外径の差が、雑草の種類等に応じた所定の刈払い高さに対応していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のうち請求項1に記載の発明によれば、台金の反刈払機取付面側に、その外径が台金の外周縁より所定寸法小さいリング形状の地面接触板が、所定の間隔を有してリング形状の固着部材で一体的に固着されているため、地面接触板の地面への接触でチップの地面への直接的な接触を抑制しつつ所定高さの高刈り作業を容易に可能にして、高刈りによる各種効果が簡単に得られると共に、幅の狭いリング形状の地面接触板により、刈払いした雑草の台金と地面接触板間等への進入による絡みや付着等を確実に抑制することができる。
【0014】
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、断面台形状の固着部材が、反刈払機取付面側の寸法が地面接触板側の寸法より大きく、その高さが地面接触板の幅に対応すると共に、その外周側が略垂直面でその内周側が傾斜面で形成されているため、リング形状の固着部材の外周側に形成される空間や内周側に形成される空間内に進入する刈払いした雑草等を、各空間の形状と遠心力を利用して、空間内から外部に良好に排出できて、空間内への刈払いした雑草の付着等を一層確実に抑制することができる。
【0015】
また、請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明の効果に加え、固着部材に形成された固定孔を介して、ボルトやナット等により台金と地面接触板とが一体的に固着されているため、各部材を強固に固着して、チップソーに地面接触板の台金に対する着脱が不可能な安定かつ安全な回転状態を容易に得ることができる。
【0016】
さらに、請求項4に記載の発明によれば、請求項1ないし3のいずれかに記載の発明の効果に加え、台金と地面接触板の間隔及び又は台金の外径と地面接触板の外径の差が、雑草の種類等に応じた刈払い高さに対応しているため、例えば固着部材の高さ寸法を刈払いする雑草の種類に応じて所定の高刈り寸法が得られる値に予め設定できる等、刈払い作業の作業性の一層の向上を図ること等ができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係わる刈払い用チップソーの一実施形態を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1~
図5は、本発明に係わる刈払い用チップソーの一実施形態を示している。
図1及び
図2に示すように、刈払い用チップソー1(以下、チップソー1という)は、所定板厚の円板状で例えば多数の円形の軽量孔3が形成された台金2を有し、この台金2の中心位置には、その刈払機取付面2aに後述する刈払機5が取り付けられる取付孔4が形成されている。
【0019】
前記台金2は、例えば炭素鋼板等の鋼板で形成され、その外周縁部には、刃室(ガレット)7とチップ固着部8、及びチップ6による切り込み深さを制限する制限刃9と、その形状により例えば刃室7の深さを必要最低限に設定してチップ6等の再研磨作業を容易とするスリット10等が一定間隔で多数一体形成され、各チップ固着部8には、超硬合金からなる前記チップ6がそれぞれロー付け固着されている。
【0020】
なお、この台金2の外周縁部の形態、すなわち刃室7やチップ固着部8の形状及び制限刃9やスリット10の有無や形状等は、本発明の要旨には直接関係するものではなく、例えば刃室7の形状を略円形の窪み形状としたり、制限刃9やスリット10の少なくとも一方を省略した形状とする等、適宜の形態とすることができる。
【0021】
そして、前記台金2の裏面となる反刈払機取付面2bには、後述する刈払い作業時に台金2より地面側に位置する板体(以下、本発明では地面接触板11という)が配設されている。この地面接触板11は、
図2及び
図3に示すように、例えば板厚が1mm程度で台金2と同材質の鋼板等で幅wのリング形状に形成され、その外径φ2が台金2の外径φ1(例えばφ1=255mm)より所定寸法t1=10mm~15mm小さく形成されている。
【0022】
また、
図4及び
図5に示すように、地面接触板11の内周側の十字位置の4箇所には所定深さの凹部11aが形成され、この各凹部11aには孔12がそれぞれ形成されている。この地面接触板11は、断面が台形状のリング状部材である固着部材13の、台形の高さ方向の一方の面13aに当接状態とされ、台形の他方の面13bが前記台金2の反刈払機取付面2bに当接状態とされている。
【0023】
このとき、リング状の固着部材13は、例えば樹脂成形により、高さh方向の一方の面13aの幅が狭く他方の面13bの幅が広く形成されると共に、外周面13cが垂直面で内周面13dが台金2の取付孔4方向に所定角度で下り傾斜した傾斜面で形成されている。この固着部材13の垂直な外周面13cや傾斜する内周面13dは円滑面とされて、その高さ寸法h(
図3参照)は、例えば前記所定寸法t1と同じh=10mm~15mm程度で、後述するチップソー1の刈払機5への取付時に使用されるボルト保護カバー16の高さ寸法より若干高めに設定されている。このとき、高さ寸法hと所定寸法t1は、例えば雑草地の雑草の種類や地面の形態(小石の量等の状況)等に応じて、前述した高刈り効果が期待できる所定高さで刈払いできる寸法に設定することが好ましい。
【0024】
そして、地面接触板11と固着部材13及び台金2の三つの部材が当接状態で、地面接触板11の孔12に対応して固着部材13と台金2にそれぞれ設けた孔14、2cを介して、ボルト19とナット20により、これら三つの部材が一体的に着脱不能に強固に固着されている。このとき、地面接触板11の孔12が凹部11aに設けられ、この凹部11aの深さがボルト19の頭部の高さ寸法に対応していることから、ボルト19頭部の外面が地面接触板11から外側に突出しない面一状態に設定されている。
【0025】
これにより、台金2の刈払機取付面2aには、
図1に示すように、その前記孔2c部分にナット20(ボルト19の先端)が4箇所配設されると共に、台金2の反刈払機取付面2bには、
図2に示すように、前記地面接触板11と固着部材13及びボルト19の頭部側が配設されている。
【0026】
また、地面接触板11と台金2との間には、固着部材13の前記高さ寸法hに対応した高さで、地面接触板11の固着部材13の外周面13cから外側に突出した寸法t2(
図3参照)に対応し、外周面13c外方が開放した平面視リング形状の空間17が形成されると共に、固着部材13の内周面13dの内周側にも、地面接地板11側が開放した凹部状の空間18が形成された状態となっている。
【0027】
このように構成されたチップソー1の製造は、先ず、炭素鋼板のプレス加工等により、軽量孔3、取付孔4、刃室7、チップ固着部8、制限刃9、スリット10及び前記孔2c等を成形し、この台金2を例えば高周波の誘導加熱を利用して焼入れすると共に焼鈍しする等の熱処理を行う。
【0028】
この台金2の熱処理が終了したら、例えばショットブラスト処理により台金2の表面処理を行ったり、台金2の各チップ固着部8にチップ6を例えば高周波の誘導加熱を利用してそれぞれロー付け固着する。その後、チップ6の救い面や先端面等の各面の研磨を行い、所定の印刷や塗装等の仕上げ処理することにより、台金2を作製する。
【0029】
一方、炭素鋼板をプレス加工等により、前記凹部11aや孔12等を有するリング形状の板体を加工すると共に、この板体に必要に応じて所定の熱処理等を行うことで、前記地面接触板11を作製する。また、所定の樹脂の射出成型等により、断面台形状の部材を成型すると共に当該成型品に固定孔としての前記孔14を加工して前記固着部材13を作製する。そして、所定のボルト19とナット20を用意して、それぞれ作製された台金2に固着部材13を介して地面接触板11を固着することで、チップソー1が製造される。
【0030】
このように構成されたチップソー1は、
図6に示すように、台金2の刈払機取付面2aに、刈払機5の回転伝達シャフトとしての作業杆5c先端の受けフランジ5aを当接させた状態で、反刈払機取付面2bに配設された押えフランジ5bや取付ボルト15及びボルト保護カバー16等により刈払機5に取り付けられる。この取付時に、台金2の反刈払機取付面2bで、前記固着部材13の内周面13d側に位置する前記空間18内に、取付ボルト15やボルト保護カバー16が位置した状態となり、取付ボルト15の頭部やボルト保護カバー16及び前記ボルト19の頭部が地面等に直接強く接触しない保護された状態となっている。
【0031】
そして、刈払機5による刈払い作業時には、台金2の
図1の矢印イ方向への回転と同時に地面接触板11(固着部材13)も一体で同方向に回転することから、地面側に位置する地面接触板11の凹凸のない円形の外周縁部等が地面に接触しつつ、地面接触板11より斜め外側上方に位置する台金2のチップ6で雑草が刈払いされ、チップ6の地面への直接的な接触が防止される。これにより、チップ6で地面上の小石や砂、泥等の飛散物を跳ね飛ばすことがほとんどなくなる。
【0032】
また、刈払いされた雑草が、地面接触板11と台金2との間の前記空間17内に進入しても、空間17の深さが浅くかつその底面(固着部材13の外周面13c)が円滑な円周面で形成されていることから、回転するチップソー1の遠心力により、底面に接触しつつ外部に排出され、雑草の空間17内への付着等が確実に防止されることになる。さらに、刈払いされた雑草が、固着部材13の内周面13d内側の前記空間18内に進入しても、固着部材13の円滑な傾斜面(内周面13d)やボルト保護カバー15の円滑な外表面及び遠心力等により、雑草の空間21内への付着も防止されることになる。
【0033】
このように、前記チップソー1によれば、台金2の反刈払機取付面2b側に、その外径が台金2の外周縁より所定寸法t1小さいリング形状の地面接触板11が、空間17を有してリング形状の固着部材13で一体的に固着されているため、地面接触板11の地面への接触でチップ6の地面への直接的な接触を抑制できて、例えば雑草の高刈り作業を容易に行うことができ、高刈りによる各種効果が簡単に得られると共に、幅wの狭いリング形状の地面接触板11により、刈払いした雑草の空間17内への進入による絡みや付着等を確実に抑制することができる。
【0034】
また、固着部材13が断面台形状で、反刈払機取付面2b側の寸法が地面接触板11側の寸法より大きく、その高さ寸法hが例えば前記寸法t2と略同一で、かつその外周面13cが略垂直面でその内周面13dが傾斜面で形成されているため、刈払いした雑草の空間17内への進入付着が一層確実に防止されると共に、リング形状の内周面13d内側に形成される空間18内に進入する刈払いした雑草等も、傾斜面の角度や遠心力等を利用して空間18内から外部に良好に排出できて、例えば空間18内の取付ボルト15部分への進入付着等を防止することもできる。
【0035】
また、固着部材に形成された孔14を介して、台金2と地面接触板11とがボルト18とナット19で一体的に固着されているため、各部材を分解不可能な状態で強固に固着できて、地面接触板11等の安定かつ安全な回転状態を容易に得ることができる。さらに、台金2と地面接触板11の間隔が、雑草の種類等に応じた刈払い高さに対応させることができるため、例えば台形状の固着部材13の高さ寸法hを刈払いする雑草の種類に応じて所定の高刈り寸法が得られる値に予め設定することで、刈払い作業の作業性や安全性の一層の向上を図ることができる。
【0036】
これらのことから、例えば、広葉雑草とイネ科雑草等が混在する雑草地の草刈り作業を行う場合、前記チップソー1の地面接触板11を地面に軽く接触させつつ、高速で回転するチップ6により雑草地の各種雑草を例えば5cm以上で容易かつ綺麗に高刈りでき、成長点が地面から約3cmの部分にある広葉雑草を活かしつつ5cm以上の雑草の高刈りで例えばイネ科雑草等の成長を抑制することができる。特に、台金2の外径φ1と地面接触板11の外径φ2の差である寸法t1と台金2と地面接触板11の間隔寸法hを、高刈りに最適な値に設定できることから、良好な高刈り作業が容易に行えることにもなる。
【0037】
その結果、各種雑草が繁殖する雑草地の、刈払い作業回数の低減化、刈払い作業時間の短縮化、カメムシ等の害虫削減化、チップソー1の長寿命化及び刈払機5の燃料削減化等の各種効果が期待できると共に、刈払い作業時の小石等の跳ね飛ばしも確実に抑制できて、チップソー1による刈払い作業時の安全性の一層の向上が図れる等、刈払い作業に係わる時代の要望に適切に対応可能な刈払い用のチップー1の提供が可能になる。
【0038】
なお、前記実施形態においては、一枚板からなるチップソー1の裏面に地面接触板11と固着部材13を後付けする状態となるため、チップソー1全体の回転時の重量バランスを均一かつ良好に保つことが難しい場合がある。このような場合には、地面接触板11と固着部材13を台金2に一体的に固着した後に、本願出願人が提案しているチップソーの製造方法(特開2019-89304参照)を使用して、例えば
図1の二点鎖線で示すように、台金2の所定位置にバランス孔21を形成すれば良い。
【0039】
また、前記実施形態において、チップソー1全体の重量軽減を図るために、炭素鋼板からなる地面接触板11の代わりに重量の軽いアルミニウムやステンレス等の軽量板あるいは硬質樹脂板を使用したり、これら各種板の板厚を極力薄くすることで対応することができる。また、前記固着部材13も樹脂の成形に限らず、軽金属等の軽量金属を使用しても良いし、固着部材13の内部に空洞部を設ける構造とする等、適宜形態の軽量化構造を採用しても良い。
【0040】
さらに、前記実施形態における、台金2の刃室7やチップ6及びチップ固着部8の位置や個数、形状等の構成、台金2と地面接触板11の寸法関係やその固着構造等は一例であって、例えば固着構造としてかしめや溶接を用いたり、予め地面接触板11と固着部材13を一体化させて一つの部材とし、この一つの部材を台金2に適宜の固着手段で固着したり、あるいは一つの部材を市販のチップソーに適宜の固着手段で固着する等、本発明の各発明に係わる要旨を逸脱しない範囲において適宜の構成を採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、台金の外周縁部にチップが固着されたチップソーに限定されず、台金自体に刃先(刃部)を形成した刈払い用の回転刃等にも利用できる。
【符号の説明】
【0042】
1・・・刈払い用チップソー、2・・・台金、2a・・・刈払機取付面、2b・・・反刈払機取付面、2c・・・孔、3・・・軽量孔、4・・・取付孔、5・・・刈払機、6・・・チップ、7・・・刃室、8・・・チップ固着部、9・・・制限刃、10・・・スリット、11・・・地面接触板、11a・・・凹部、12・・・孔、13・・・固着部材、13c・・・外周面、13d・・・内周面、14・・・孔、15・・・取付ボルト、16・・・ボルト保護カバー、17、18・・・空間、19・・・ボルト、20・・・ナット、21・・・バランス孔。