IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッドの特許一覧

特開2022-96577非活性化電極の電圧形態における変化を検知することによるアブレーション電極間の接触及び近接の検出
<>
  • 特開-非活性化電極の電圧形態における変化を検知することによるアブレーション電極間の接触及び近接の検出 図1
  • 特開-非活性化電極の電圧形態における変化を検知することによるアブレーション電極間の接触及び近接の検出 図2A
  • 特開-非活性化電極の電圧形態における変化を検知することによるアブレーション電極間の接触及び近接の検出 図2B
  • 特開-非活性化電極の電圧形態における変化を検知することによるアブレーション電極間の接触及び近接の検出 図3
  • 特開-非活性化電極の電圧形態における変化を検知することによるアブレーション電極間の接触及び近接の検出 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096577
(43)【公開日】2022-06-29
(54)【発明の名称】非活性化電極の電圧形態における変化を検知することによるアブレーション電極間の接触及び近接の検出
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20220622BHJP
【FI】
A61B18/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021056939
(22)【出願日】2021-03-30
(31)【優先権主張番号】17/124,943
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレス・クラウディオ・アルトマン
(72)【発明者】
【氏名】ライラ・マージアーノ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK13
4C160KK38
4C160KK63
4C160KK64
4C160MM33
(57)【要約】      (修正有)
【課題】アブレーション電極間の接触及び近接を検出するためのシステムを提供すること。
【解決手段】システムは、カテーテルと、パルス発生器と、コントローラと、を含む。カテーテルは遠位端に配設され身体内の組織と接触するように構成された少なくとも第1の電極、第2の電極、及び第3の電極を含む。パルス発生器は第1の電極及び第2の電極と接触している組織をアブレーションするために、1つ又は2つ以上の双極アブレーションパルスを印加するように構成される。コントローラは、(i)第1の電極と第2の電極との間に1つ又は2つ以上の双極アブレーションパルスを印加するようにパルス発生器を制御することと、(ii)アブレーションパルスの印加中に、第3の電極と基準との間で測定された電圧を示す信号を受信することと、(iii)電圧が既定の基準に違反していることを検出し、通知を発行することを行うように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非活性化電極の電圧形態における変化を検知することによって、アブレーション電極間の接触及び近接を検出するためのシステムであって、前記システムが、
カテーテルであって、患者の身体内への挿入のために構成されており、前記カテーテルの遠位端に配設され、前記身体内の組織と接触するように構成された少なくとも第1の電極、第2の電極、及び第3の電極を含む、カテーテルと、
パルス発生器であって、前記第1の電極及び前記第2の電極と接触している前記組織をアブレーションするために、前記第1の電極と前記第2の電極との間に1つ又は2つ以上の双極アブレーションパルスを印加するように構成されている、パルス発生器と、
コントローラであって、(i)前記第1の電極と前記第2の電極との間に前記1つ又は2つ以上の双極アブレーションパルスを印加するように、前記パルス発生器を制御することと、(ii)前記アブレーションパルスの印加中に、前記第3の電極と基準との間で測定された電圧を示す信号を受信することと、(iii)前記電圧が既定の基準に違反していることを検出したことに応じて、通知を発行することと、を行うように構成されている、コントローラと、を備える、システム。
【請求項2】
前記電圧が前記既定の基準に違反していることを検出する際、前記コントローラが、(i)前記第1の電極及び前記第2の電極のうちの少なくとも1つと、(ii)前記第3の電極との間の距離が距離閾値よりも小さいことを検出するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記パルス発生器が、前記基準と前記第1の電極、前記第2の電極、及び前記第3の電極との間にそれぞれ接続され、前記第1の電極、前記第2の電極、及び前記第3の電極に前記双極アブレーションパルスをそれぞれ印加するように構成された、それぞれの出力変圧器を有する第1、第2、及び第3のパルス発生回路を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第3の電極と前記基準との間の前記電圧を示す前記信号の測定のために、前記コントローラが、前記第3の出力変圧器から前記第3の電極を切断するように構成されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
非活性化電極の電圧形態における変化を検知することによって、アブレーション電極間の接触及び近接を検出するための方法であって、前記方法が、
患者の身体内にカテーテルを挿入することであって、前記カテーテルが、前記身体内の組織と接触させるために前記カテーテルの遠位端に配設された少なくとも第1の電極、第2の電極、及び第3の電極を含む、挿入することと、
前記第1の電極及び前記第2の電極と接触している前記組織をアブレーションするために、前記第1の電極と前記第2の電極との間に1つ又は2つ以上の双極アブレーションパルスを印加することと、
前記アブレーションパルスの印加中に、前記第3の電極と基準との間で測定された電圧を示す信号を受信することと、
前記電圧が既定の基準に違反していることを検出したことに応じて通知を発行することと、を含む、方法。
【請求項6】
前記電圧が前記既定の基準に違反していることを検出することが、(i)前記第1の電極及び前記第2の電極のうちの少なくとも1つと、(ii)前記第3の電極との間の距離が距離閾値よりも小さいことを検出することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
1つ又は2つ以上の双極アブレーションパルスを印加することが、前記基準と前記第1の電極、前記第2の電極、及び前記第3の電極との間にそれぞれ接続された、それぞれの出力変圧器を有する第1、第2、及び第3のパルス発生回路を含むパルス発生器において、前記第1の電極、前記第2の電極、及び前記第3の電極に前記双極アブレーションパルスをそれぞれ印加することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記信号を受信することが、前記第3の電極と前記基準との間の前記電圧を示す前記信号の測定のために、前記第3の出力変圧器から前記第3の電極を切断することを含む、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、医療用装置に関し、特に、可撓性カテーテルを使用して双極アブレーションを改善するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
双極アブレーション処置及び電気穿孔法を制御するための様々な技術が公開されている。
【0003】
例えば、米国特許出願公開第2019/0307500号は、電気穿孔システム、心臓内カテーテルを通して電気穿孔アークを制限する電気穿孔システムを制御する方法、及び電気穿孔システム用のカテーテルを記載している。直流電流(direct current、DC)エネルギー源と、DCエネルギー源に接続された戻り電極と、DCエネルギー源に接続されたカテーテルと、を含む電気穿孔システムを制御する1つの方法が開示されている。カテーテルは、少なくとも1つのカテーテル電極を有する。本方法は、戻り電極を身体内の目標位置付近に配置することと、カテーテル電極を身体内の目標位置に隣接させて位置付けることと、を含む。システムインピーダンスは、戻り電極が目標位置の近くに位置付けられ、カテーテル電極が身体内に位置付けられた状態で決定される。システムインピーダンスは、カテーテル電極からアーク発生する目標インピーダンスに調整される。
【0004】
米国特許出願公開第2014/0276769号は、内部の不適切なエネルギー伝送構成を検出するように構成された医療装置システムを記載している。この状態は、医療用装置システムのエネルギー伝送電極が物体に近接し過ぎているか又は接触するようになっている状態の検出によって検出されてもよく、その結果、電極が適切にエネルギーを伝送できなくなる状態の検出によって検出されてもよい。例えば、エネルギー伝送電極が、その動作状態において、第1の電極に隣接する身体組織にエネルギーを伝送するように構成された第1の電極であるが、第1の電極が第2の電極に不注意に接触している場合、このような接触によって、第1の電極によって伝送された少なくとも一部のエネルギーが、隣接する組織へのその意図された経路から離れた意図しない経路をたどる可能性がある。このような条件は、少なくとも検知装置システムから取得された情報の分析に基づいて検出することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に記載される本発明の一実施形態は、カテーテルと、パルス発生器と、コントローラと、を含むシステムを提供する。カテーテルは、患者の身体内に挿入するように構成されており、カテーテルは、少なくとも第1の電極と、第2の電極と、第3の電極とを含み、これらの電極は、カテーテルの遠位端に配設され、身体内の組織と接触するように構成されている。パルス発生器は、第1の電極及び第2の電極と接触している組織をアブレーションするために、第1の電極と第2の電極との間に1つ又は2つ以上の双極アブレーションパルスを印加するように構成されている。コントローラは、(i)第1の電極と第2の電極との間に1つ又は2つ以上の双極アブレーションパルスを印加するようにパルス発生器を制御することと、(ii)アブレーションパルスの印加中に、第3の電極と基準との間で測定された電圧を示す信号を受信することと、(iii)電圧が既定の基準に違反していることを検出したことに応じて通知を発行することと、を行うように構成されている。
【0006】
いくつかの実施形態では、電圧が既定の基準に違反していることを検出する際、コントローラは、(i)第1の電極及び第2の電極のうちの少なくとも1つと、(ii)第3の電極との間の距離が距離閾値よりも小さいことを検出するように構成されている。他の実施形態では、パルス発生器は、基準と第1の電極、第2の電極、及び第3の電極との間にそれぞれ接続され、第1の電極、第2の電極、及び第3の電極に双極アブレーションパルスをそれぞれ印加するように構成された、それぞれの出力変圧器を有する第1、第2、及び第3のパルス発生回路を含む。更に他の実施形態では、第3の電極と基準との間の電圧を示す信号の測定のために、コントローラは、第3の出力変圧器から第3の電極を切断するように構成されている。
【0007】
本発明の一実施形態によれば、方法が更に提供され、方法は、患者の身体内に少なくとも第1の電極、第2の電極、及び第3の電極を含むカテーテルを挿入することを含み、これらの電極は、身体内の組織と接触するためにカテーテルの遠位端に配設される。第1の電極及び第2の電極と接触している組織をアブレーションするために、第1の電極と第2の電極との間に1つ又は2つ以上の双極アブレーションパルスが印加される。アブレーションパルスの印加中に、第3の電極と基準との間で測定された電圧を示す信号が受信される。電圧が既定の基準に違反していることを検出したことに応じて通知が発行される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
図1】本発明の例示的な実施形態による、心臓アブレーション処置の過程におけるアブレーションシステムの概略描写図である。
図2A】本発明の例示的な実施形態による、カテーテル遠位端の2つの形状の概略描写図である。
図2B】本発明の例示的な実施形態による、カテーテル遠位端の2つの形状の概略描写図である。
図3】本発明の例示的な実施形態による、アブレーション信号を印加するためのパルス発生器の概略描写図である。
図4】本発明の例示的な実施形態による、双極アブレーション処置中にアブレーション電極間の接触及び近接を検出するための方法を概略的に示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
概論
不可逆電気穿孔法(irreversible electroporation、IRE)及び高周波アブレーション(radio frequency ablation、RFA)処置などの軟組織をアブレーションするための処置は、例えば、問題の組織をアブレーションするために、患者器官内に挿入されるカテーテルの2つのアブレーション電極の間に双極アブレーションパルスを印加することを含み得る。
【0010】
原理的には、アブレーションされることになっている組織に適合する可撓性カテーテルを使用することが可能である。しかしながら、場合によっては、カテーテルの可撓性は、カテーテルの2つ又は3つ以上の電極間の望ましくない近接又は更には物理的接触を可能にする場合がある。このような近接又は接触は、アブレーションエネルギーの少なくとも一部を、例えば、患者の組織上の望ましくない位置に分流させることがあり、またアブレーションされることになっている組織の不適切なアブレーションを引き起こすこともある。
【0011】
以下に記載される本発明の実施形態は、組織アブレーションを実行するために患者器官内に挿入された1つ又は2つ以上のアブレーションカテーテルのアブレーション電極間の安全な距離を保持しながら、IRE及び双極RFA処置を制御するための改善された技術を提供する。
【0012】
いくつかの実施形態では、組織をアブレーションするためのシステムは、カテーテルと、パルス発生器と、コントローラと、を備える。カテーテルは、患者の身体内に挿入されるように構成されており、カテーテルの遠位端に配設され、アブレーションされることになっている組織と接触して配置されるように構成された少なくとも第1の電極、第2の電極、及び第3の電極を備える。
【0013】
いくつかの実施形態では、パルス発生器は、第1の電極及び第2の電極と接触している組織をアブレーションするために、本明細書では活性電極とも呼ばれる、第1の電極と第2の電極との間に1つ又は2つ以上の双極アブレーションパルスを印加するように構成されている。
【0014】
いくつかの実施形態では、コントローラは、活性電極間に1つ又は2つ以上の双極アブレーションパルスを印加するようにパルス発生器を制御するように構成されている。コントローラは、アブレーションパルスを活性電極に印加するときに、第3の電極と基準との間で測定された電圧を示す信号を受信するように更に構成されている。なお、上述したアブレーションパルスは、第3の電極に印加されず、したがって、本構成において、本明細書では、第3の電極は非活性電極とも呼ばれる。
【0015】
いくつかの実施形態では、コントローラは、電圧が既定の基準に違反していることを検出したことに応じて、通知を発行するように構成されている。
【0016】
追加的に又は代替的に、上述した検知された電圧に基づいて、コントローラは、所与の活性電極と非活性電極との間の距離を推定し、推定された距離が所与の電極間に許容される最小距離を示す距離閾値よりも小さい場合に、通知を発行するように構成されている。
【0017】
開示された技術に基づいて、コントローラは、アブレーションパルスのエネルギーの少なくとも一部分が活性電極から非活性電極へと分流されたときを検知し、それをアブレーションシステムのユーザに通知するように構成されている。したがって、開示される技術は、双極アブレーション処置の品質を改善し、IRE及び双極RFA処置における患者の安全性を改善しながら、可撓性カテーテルの使用を可能にする。
【0018】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、心臓アブレーション処置の過程におけるアブレーションシステム20の概略描写図である。いくつかの実施形態では、医師22は、アブレーションカテーテル26を使用して、患者24の組織36に対してアブレーション処置を実施し、アブレーションカテーテル26の遠位端28は、組織36に適合するように可撓性であり、また複数のアブレーション電極30を備える。アブレーション処置は、不可逆電気穿孔法(IRE)処置若しくは双極高周波アブレーション(RFA)処置、又は場合によっては両方の種類のアブレーション処置の組み合わせのいずれかを含み得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、医師22は、アブレーションシステム20を使用して、心臓アブレーション処置を実施している。処置を開始するために、医師22は、カテーテル26を患者24の身体内に挿入し、次いで、制御ハンドル32を使用して、カテーテルを患者24の心臓34の内部又は外部の目標部位まで誘導する。続いて、医師22は、心筋又は心外膜組織などの心臓34の組織36と接触する遠位端28を配置する。
【0020】
いくつかの実施形態では、医師22は、電極30の中から一対の電極30a及び30bを選択して、双極アブレーションを実行する。システム20は、本明細書において電気信号発生器(SIG GEN)38、又は簡潔にするために発生器38とも呼ばれるパルス発生器を備える。医師22は、例えば、IRE信号若しくはRFA信号のいずれか、又はこれらの任意の好適な組み合わせとして機能するように選択された信号パラメータを有する、アブレーションパルス40を生成するように発生器38を制御する。
【0021】
いくつかの実施形態では、信号40は、アブレーション電流が患者24の組織36を通って対の電極のうちの1つから流れ、対の他の電極を通って戻るように、異なるそれぞれのチャネルを介してカテーテル26を通ってアブレーション電極30a及び30bに運ばれる。
【0022】
いくつかの実施形態では、アブレーションシステム20は、アブレーションの処置前及び/又は処置中に、医師22から又は別のユーザから、処置に適したセットアップパラメータ46を受け取るように構成されたコントローラ(CTRL)44を更に備える。例えば、キーボード、マウス、又はタッチスクリーンなどの1つ又は2つ以上の好適な入力装置を使用して、医師22は、アブレーションモード(IRE、RFA)、アブレーションパルスのパラメータ(例えば、電力、持続時間)、及びアブレーションに使用される1つ又は2つ以上の対のアブレーション電極30を定義する。
【0023】
いくつかの実施形態では、医師22はまた、前述の入力装置を使用して、最大電力、最大電流振幅、最大電圧振幅、信号の持続時間、及び/又は任意の他の関連パラメータなどであるがこれらに限定されない、アブレーションパルス40用の追加のセットアップパラメータ46を入力してもよい。セットアップパラメータ46を受信したことに応じて、コントローラ44は、セットアップパラメータに従って、信号40を生成するように信号発生器38を制御するように構成されている。更に、コントローラ44は、ディスプレイ48上にセットアップパラメータを表示するように構成されており、ディスプレイ48は、前述のタッチスクリーンを備えてもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、コントローラ44は、任意の好適な追跡技術を使用して、処置中に患者の身体内のアブレーション電極30のそれぞれの位置を追跡するように構成されている。例えば、遠位端28は、磁場発生器50によって生成された外部磁場の存在下で、それぞれのセンサの位置を示す位置信号を出力するように構成された、少なくとも磁気位置センサ(図示せず)を備えてもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、位置信号に基づいて、コントローラ44は、遠位端28及び電極30の位置を推定するように構成されている。代替的な実施形態では、各電極に対して、コントローラ44は、各電極と、患者24の身体表面上に配設された様々な異なる位置における外部電極52との間で測定されたそれぞれのインピーダンスを示す複数の信号を受信してもよい。いくつかの実施形態では、コントローラ44は、患者24の身体内のそれぞれの電極の位置を推定するように、受信されたインピーダンス間の比率を計算するように構成されている。更に別の代替形態として、コントローラ44は、例えば米国特許第8,456,182号(この開示は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、磁気に基づく追跡と、インピーダンスに基づく追跡との両方を使用することができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、遠位端28は、電極30と組織36との間の接触を示す接触信号を生成するように構成された接触力センサなどであるがこれらに限定されない追加のセンサを有してもよい。位置信号及び接触信号に基づいて、コントローラ44は、どのアブレーション電極30が組織36と接触しているかを表示するように構成されている。本実施例では、電極30a及び30bは、組織36と接触しており、医師22からの指示に応じて、コントローラ44は、電極30a及び30bを介して組織36にアブレーションパルス40を印加するように信号発生器38を制御するように構成されている。遠位端28の他の電極30は、アブレーションパルス40を受信しておらず、本明細書では「非活性化電極」と呼ばれるのに対し、本実施例で電極30a及び30bは、本明細書では「活性化電極」とも呼ばれることに留意されたい。
【0027】
いくつかの実施形態では、コントローラ44は、患者の解剖学的構造の画像54をディスプレイ48上に表示し、遠位端28の位置及び向きを画像54上に重ね合わせて表示する。代替的に又は追加的に、遠位端28に配設された追加のセンサから受信された信号に基づいて、コントローラ44は、組織36の温度及び/又はインピーダンスを追跡し、それに応じて信号発生器38を制御するように構成されている。
【0028】
いくつかの実施形態では、アブレーションシステム20は、コントローラ44と、信号発生器38と、ディスプレイ48と、を有する制御コンソール56を備える。カテーテル26は、ポート又はソケットなどの電気的インターフェース58を介してコンソール56に電気的に接続される。したがって、信号40は、インターフェース58を介して遠位端28に運ばれる。同様に、遠位端28の位置を追跡するための信号、並びに/又は組織36で検知された温度及び/若しくはインピーダンスを追跡するための信号は、インターフェース58を介してコントローラ44によって受信され得る。磁場発生器50及び外部電極52は、ケーブル60及び62を介してコンソール56にそれぞれ接続されている。
【0029】
いくつかの実施形態では、コントローラ44は、典型的には、アナログ要素とデジタル要素との両方を備える。したがって、コントローラ44は、カテーテル26からのアナログ信号及び信号発生器38からのアナログ信号を受信するための複数のアナログ・デジタル変換器(analog-to-digital converter、ADC)を備えてもよい。コントローラ44は、信号発生器38及び他のシステム構成要素にアナログ制御信号を伝送するための複数のデジタル・アナログ変換器(digital-to-analog converter、DAC)を更に備えてもよい。代替的に、これらの制御信号は、デジタル形式で伝送され得るが、ただし、信号発生器38がデジタル制御信号を受信するように構成されていることを条件とする。コントローラ44は、典型的には、受信された信号から所与の周波数で信号を抽出するためのデジタルフィルタを備える。
【0030】
典型的には、本明細書に記載されるコントローラ44の機能性は、少なくとも部分的にソフトウェアに実装される。例えば、コントローラ44は、少なくとも中央演算処理ユニット(central processing unit、CPU)と、任意の好適なタイプのランダムアクセスメモリ(random access memory、RAM)などの好適なメモリと、を含むプログラム済みデジタルコンピューティングデバイスを備えてもよい。ソフトウェアプログラムを含むプログラムコード、及び/又はデータは、CPUによる実行及び処理のためにRAMに読み込まれる。プログラムコード及び/又はデータは、例えば、ネットワークを介して、電子形態でコントローラにダウンロード可能である。あるいは又は更に、プログラムコード及び/又はデータは、磁気、光学、又は電子メモリなどの非一時的有形媒体上に提供及び/又は記憶されてもよい。このようなプログラムコード及び/又はデータは、プロセッサに提供されると、本明細書に記載されているタスクを行うように構成された、機械若しくは専用コンピュータを生じる。
【0031】
他の実施形態では、コントローラ44は汎用コントローラを備えてもよく、これは本明細書で説明される機能を実行するようにソフトウェアでプログラムされている。ソフトウェアは、例えばネットワーク上で、コントローラに電子形態でダウンロードすることができる、又は代替的に若しくは追加的に、磁気メモリ、光学メモリ若しくは電子メモリなどの、非一時的実体的媒体上に提供及び/又は記憶することができる。
【0032】
システム20のこの特定の構成は、本発明の実施形態で対処する特定の問題を説明し、またこのようなシステムの性能の向上においてこれらの実施形態の適用を明示するため、例として示される。しかしながら、本発明の実施形態は、この特定の種類の例示的なシステムに限定されるものではなく、本明細書に記載される原理は、医療用アブレーション処置に使用される他の種類のアブレーションシステムにも同様に適用することができる。
【0033】
投げ縄タイプのカテーテルを使用した双極アブレーションの実施
図2A及び図2Bは、本発明の実施形態による、カテーテル26の遠位端28の2つの形状の概略描写図である。図1の項目と同じ項目は、同じラベルでマーキングされる。
【0034】
いくつかの実施形態では、カテーテル26の遠位端28は、可撓性アーム上に取り付けられた複数の電極30を有する「投げ縄」タイプのカテーテルを備え、このカテーテルは、患者24の組織36の形状に適合するように構成されている。例えば、心臓34の肺静脈(pulmonary vein、PV)をアブレーションするとき、遠位端28は、PV分離処置を実行するように、PVの内径に一致するように構成されている。
【0035】
他の実施形態では、遠位端28は、任意の他の好適なタイプのカテーテル、例えば、バスケットカテーテルなどであるがこれらに限定されないマルチアームカテーテルを備えてもよい。両方の実施形態では、電極30は、例えば、アームの長手方向軸に沿って、又は遠位端の異なるアームにおいて、任意の好適な構成を使用して遠位端28に配設されることに留意されたい。
【0036】
次に、図2Aを参照する。いくつかの実施形態では、遠位端28はループを形成するが、電極30のいずれもが、近接して位置付けられていないか、又は互いに接触していない。
【0037】
次に、図2Bを参照する。いくつかの実施形態では、遠位端28は、図2Aのものと比較してよりタイトなループを形成するように構成されている。この構成では、電極30bと接触して、又はこれに近接して電極30cが配置される。
【0038】
図2Bの実施例では、電極30aと電極30bとの間に1つ又は2つ以上の双極アブレーションパルス40を印加したとき、電極30bを流れる電流の少なくとも一部は、電極30cを通じて(例えば、寄生的に)漏れる場合がある。実際に組織36に印加される電力の低減の結果として、電極30aと電極30bとの間の双極アブレーションは不十分である可能性が高い。
【0039】
非活性化電極上の電圧を検知することによるアブレーション電極間の近接の推定
図3は、本発明の一実施形態による発生器38の概略描写図である。いくつかの実施形態では、発生器38は、(上記の図1に示すように)コンソール56内に一体化されてもよく、又はシステム20の任意の他の好適なモジュールに位置付けられてもよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、発生器38は、本明細書に詳細に記載するように、パルス発生器38とカテーテル26のそれぞれの電極30との間でアブレーションパルス40を伝導するように構成された複数のチャネルを備える。
【0041】
いくつかの実施形態では、発生器38は、パルス発生回路(pulse-generation circuits、PGC)119、129、139、及び149を備え、これらのパルス発生回路は、電極30a、30、30b、及び30cにそれぞれ、1つ又は2つ以上の双極アブレーションパルス40を印加するように接続され、及びそのように構成されている。
【0042】
いくつかの実施形態では、PGC119は、本明細書では変圧器110と呼ばれる出力変圧器に接続されたパルス発生装置(pulse generating apparatus、PGA)117を備え、このパルス発生装置は、本明細書では、PGA117とカテーテル26の電極30aとの間でアブレーションパルス40を転送するように構成されている。PGC119は、PGC119とカテーテル26の電極30aとの間で接続及び切断するための導電体(例えば、電気導線又は電気トレース)から作製されたチャネル1(図3に「Ch.1」として示される)を更に備える。
【0043】
本実施例では、変圧器110の第1のコイルは、PGA117からアブレーションパルスの1つ又は2つ以上を受信し、チャネル1を介してカテーテル26の対応するチャネルに接続された、変圧器110の第2のコイルが、1つ又は2つ以上のアブレーションパルス40を電極30aに印加する。
【0044】
いくつかの実施形態では、PGC119は、変圧器110とチャネル1との間で接続及び切断するように構成されたスイッチ112及び114を備え、スイッチ114は、変圧器110と電気トレース113との間で接続及び切断するように更に構成されている。スイッチ114が閉じられているとき(図3に示すように)、変圧器110は、1つ又は2つ以上のアブレーションパルスを電極30aに転送し、この電極30aは、ここでは、アブレーションパルス40を組織36に印加するために活性化されることに留意されたい。
【0045】
いくつかの実施形態では、PGC119の構造は、発生器38の他のPGC内で繰り返される。例えば、PGC129は、(i)PGA117について上述したようなアブレーションパルスを生成するためのPGA127と、(ii)チャネル1の同じ特徴を有するチャネル2と、(iii)チャネル2を介して、PGA127と電極30との間でアブレーションパルス40を転送するように構成された変圧器120と、を備える。同様に、PGC139は、(i)PGA117について上述したようなアブレーションパルスを生成するためのPGA137と、(ii)チャネル1の同じ特徴を有するチャネル3と、(iii)チャネル3を介して、PGA137と電極30bとの間でアブレーションパルス40を転送するように構成された変圧器130と、を備える。
【0046】
いくつかの実施形態では、PGC149は、(i)PGA117について上述したようなアブレーションパルスを生成するためのPGA147と、(ii)チャネル1の同じ特徴を有するチャネル4と、(iii)チャネル4を介してPGA147と電極30cとの間でアブレーションパルス40を転送するように構成された変圧器140と、を備える。図3の実施例では、発生器38は、各PGAとカテーテル26のそれぞれの電極との間で接続及び切断するための10個のPCG(ここでは、PGC119、129、139、及び149のみが示されている)を有することに留意されたい。
【0047】
他の実施形態では、発生器38は、カテーテル26の対応する数の電極間で接続及び切断するための任意の他の好適な数のPGCを有してもよい。更に他の実施形態では、上述したPGAの代わりに、発生器38は、単一のパルス発生器(図示せず)を備えてもよく、単一のパルス発生器は、コントローラ44によって制御され、変圧器110、120、130、及び140にアブレーションパルスを供給するように構成されている。
【0048】
いくつかの実施形態では、発生器は、各PGCに対して同様のルーティング及びスイッチング構成を備える。例えば、スイッチ122及び124は、変圧器120とチャネル2との間で接続及び切断するように構成され、スイッチ132及び134は、変圧器130とチャネル3との間で接続及び切断するように構成され、スイッチ142及び144は、変圧器140とチャネル10との間で接続及び切断するように構成されている。
【0049】
いくつかの実施形態では、発生器38は、本明細書ではバックパッチ(back-patch、BP)111と呼ばれる電気導体を備え、バックパッチは、発生器38の変圧器間で電気的に接続するように構成されている。BP111は、アブレーションパルス40の印加中の電圧測定の基準として機能し得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、発生器38は、BP111と変圧器110、120、130、及び140との間でそれぞれ接続及び切断するためのスイッチ118、128、138、及び148を更に備える。図3の実施例では、スイッチ118及び138は、BP111と変圧器110及び130との間で接続するために閉じられ、スイッチ128及び148は、BP111と変圧器129及び140との間をそれぞれ切断するために開かれる。
【0051】
いくつかの実施形態では、発生器38は、(i)隣接する電極30a及び30の変圧器110と変圧器120との間で接続及び切断するためのスイッチ116と、(ii)隣接する電極30及び30bの変圧器120と変圧器130との間で接続及び切断するためのスイッチ126と、(ii)電極30b及び隣接する電極の変圧器130と追加の変圧器(図示せず)との間で接続及び切断するためのスイッチ136と、(iv)トレース113を介して変圧器140と変圧器110との間で接続及び切断するためのスイッチ146と、を更に備える。
【0052】
いくつかの実施形態では、コントローラ44は、(i)変圧器110及びチャネル1を介して電極30aに、及び(ii)変圧器130及びチャネル3を介して電極30bに、アブレーションパルス40を印加するように発生器38を制御するように構成されている。この動作モードでは、電極30aにアブレーションパルス40を印加するようにスイッチ112、114、及び118が閉じられ、同様に、電極30bにアブレーションパルス40を印加するようにスイッチ132、134、及び138が閉じられることに留意されたい。
【0053】
本実施例では、コントローラ44は、チャネル1とチャネル3との間で逆位相で活性化された約900Vの振幅を有する双極アブレーションパルス40を印加するように発生器38を制御するように構成されている。例えば、チャネル1が電極30aのチャネル3に約+900Vを出力するとき、電極30bに約-900Vを出力する。したがって、電極30aと電極30bとの間に印加される双極アブレーションパルス40の合計振幅は、約1,800Vである。
【0054】
本開示の文脈において、任意の数値又は数値の範囲について用いられる「約」又は「およそ」という用語は、構成要素の部分又は構成要素の集合が、本明細書で述べるその意図された目的に沿って機能することを可能とする、好適な寸法の許容誤差を示すものである。
【0055】
いくつかの実施形態では、上述したアブレーション中、変圧器110と変圧器130との間での接続に役立つBP111上の電圧振幅は、実質的にゼロである。同様に、変圧器120及び140はアイドル状態であり、チャネル2及び4に接続された電極は、いずれのアブレーションパルスも受信していない。
【0056】
いくつかの実施形態では、電極30a及び電極30bとの間に双極アブレーションパルス40を印加するとき、コントローラ44は信号を受信するように構成されている。この信号は、(i)電極30cに接続されたチャネル10の点145と、(ii)基準点141などのBP111上の任意の好適な基準点との間で測定される電圧を示す。
【0057】
いくつかの実施形態では、遠位端28が図2Aに示すように配置されるとき、電極30、30a、30b、及び30cは、互いに十分に遠く(例えば、隣接する電極の任意の対の間で約2mm以上)である。したがって、電極30aと電極30bとの間に約1800Vが印加されると(例えば、約+900Vの電圧が電極30aに印加され、同時に、約-900Vが電極30bに印加される)とき、点141と点145との間で測定される電圧は、約0である。
【0058】
いくつかの実施形態では、電極30a及び30bなどの活性化電極を流れる電流を測定するとき、各活性化電極上で測定された典型的なインピーダンスは、典型的に一定であり、例えば、約100Ωである。
【0059】
他の実施形態では、遠位端28が図2Bに示されるように配置されるとき、電極30b及び30cは互いに近接しており、例えば、約1mmよりも小さい距離、又は更には互いに直接接触している。
【0060】
いくつかの実施形態では、図2Bの実施例では、電極30aと電極30bとの間に約1800Vが印加されると、アブレーションパルス40に関連付けられた電流が電極30b内に流れることができる。しかしながら、電極30bと電極30cとの間の近接(又は物理的な接触)に起因して、30bから電極30cの間に電圧が形成されている。更に、電極30b及び電極30cが互いに接触して配置される(意図せず)とき、「組み合わされた」電極(電極30b及び30cを含む)の表面積は、電極30bの表面積よりも大きくなる。したがって、組み合わされた電極上で測定されたインピーダンスは、上記の図2Aに記載される実施例で測定された約100Ωとは実質的に異なる。更に、組み合わされた電極を流れる測定された電流は、上記の図2Aに記載された実施例では、電極30bを流れる測定された電流と実質的に異なる。
【0061】
追加的に又は代替的に、点141と点145との間で測定される電圧は、実質的にゼロよりも大きい。例えば、(i)電極30bと電極30cとの間の距離が約1mmであるとき、点141と点145との間で測定される電圧は約400Vであり、(ii)電極30b及び30cが直接接触しているとき、点141と点145との間で測定される電圧は約800Vよりも大きい。
【0062】
いくつかの実施形態では、コントローラ44は、点141と点145との間で測定された電圧が既定の基準に違反していることを検出したことに応じて、通知を発行するように構成されている。例えば、コントローラ44は、点141と点145との間で測定された電圧の閾値を保持するように、及び測定された電圧が閾値電圧を超える(すなわち、閾値電圧よりも大きい)場合に通知を発行するように構成されている。追加的に又は代替的に、コントローラ44は、点141と点145との間で測定された電圧の既定のパルス形状を保持するように構成されている。パルス形状は既定の波形を有してもよく、例えば、波形は測定時間の関数としてプロットされた電圧振幅を含んでもよい。
【0063】
いくつかの実施形態では、コントローラ44は、本明細書で距離閾値とも呼ばれる、予め割り当てられた電極間距離閾値(例えば、約1.5mm)を保持するように構成されている。点141と点145との間で測定された電圧に基づいて、コントローラ44は、電極30bと電極30cとの間の距離が距離閾値よりも小さいかどうかを検出するように構成されている。
【0064】
いくつかの実施形態では、電極30bと電極30cとの間の距離が小さくなると、測定された電圧は増加するため、コントローラ44は、測定された電圧に基づいて、電極30bと電極30cとの間の距離を推定するように構成されている。例えば、測定された電圧が約400V~550Vであるとき、電極30bと電極30cとの間の距離は、約1mmよりも小さい。
【0065】
追加的に又は代替的に、コントローラ44は、活性電極(本実施例では、電極30b)を通って流れる電流、及び/又は非活性電極(電極30cなど)を通って流れる電流が、それぞれの既定の基準に違反していることを検出したことに応じて、通知を発行するように構成されている。
【0066】
いくつかの実施形態では、点141と点145との間の電圧を示す信号を測定するために、コントローラ44は、変圧器140から電極30cを切断するように構成されている。上記は例えば、スイッチ142及び144を開くことによる。
【0067】
図4は、本発明の一実施形態による、双極アブレーション処置中にアブレーション電極30b及び30c間の接触及び近接を検出するための方法を概略的に示す流れ図である。
【0068】
この方法は、カテーテル26を心臓34又は患者24の身体内の任意の他の好適な器官に挿入する、カテーテル挿入工程100で開始する。上記の図1図3に記載したように、カテーテル26は、心臓34の組織36と接触して配置されるために、遠位端28に配設された少なくとも電極30a、30b、及び30cを備える。
【0069】
組織アブレーション工程102において、コントローラ44は、上記の図1図2A、及び図2Bに記載したように、電極30a及び30bと接触している組織36をアブレーションするために、電極30aと電極30bとの間に1つ又は2つ以上の双極アブレーションパルス40を印加するように発生器38を制御する。
【0070】
信号受信工程104において、アブレーションパルス40を印加するとき、コントローラ44は、上記の図3に記載したように、電極30cと、基準として機能するBP111との間の電圧を構成する、点141と点145との間で測定された電圧を示す信号を受信する。
【0071】
第1の決定工程106において、電圧閾値などの電気的パラメータの1つ又は2つ以上の閾値を保持しているコントローラ44は、測定されたパラメータがそれぞれの閾値を超えるかどうかをチェックする。追加的に又は代替的に、コントローラ44は、距離閾値を保持し、測定された電圧に基づいて電極30bと電極30cとの間の距離を推定することができる。いくつかの実施形態では、コントローラ44は、推定された距離が距離閾値よりも小さいか又はそれよりも大きいかどうかをチェックする。
【0072】
いくつかの実施形態では、工程106において、コントローラ44は、点141と点145との間で測定された電圧が電圧閾値よりも大きく、及び/又は推定された距離が距離閾値よりも小さいことを検出してもよい。このような実施形態では、方法は、双極アブレーションパルス40の印加を停止するためのコントローラ44による発行通知を伴って、警告及び調整工程108に進む。追加的に又は代替的に、コントローラ44は、電極30aと電極30bとの間に双極アブレーションパルス40を印加することを停止するように発生器38を自動的に制御してもよい。
【0073】
いくつかの実施形態では、コントローラ44はまた、活性電極(例えば、電極30b)及び非活性電極(例えば、電極30c)が互いに接触しているか、又は互いに近接し過ぎて位置付けられているため、組織36に対する遠位端28の電極の位置を調整する通知を医師22に発行してもよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、組織36に対する遠位端28の電極の位置を調整した後、コントローラ44は、組織36に追加の双極アブレーションパルス40を印加する必要性を推定してもよく、より多くの切除が必要な場合には、方法は、上述したようにアブレーションパルスを印加するために、工程102にループバックする。
【0075】
他の実施形態では、工程106において、コントローラ44は、点141と点145との間で測定された電圧が電圧閾値よりも小さく、及び/又は推定された距離が距離閾値よりも大きいことを検出してもよい。このような実施形態では、方法は、アブレーション継続工程109に進み、コントローラ44は、アブレーション計画に従って、電極30aと電極30bとの間に1つ又は2つ以上の双極アブレーションパルス40を印加し続けるように発生器38を制御する。
【0076】
第2の決定工程110において、コントローラ44は、例えば、十分な双極アブレーションパルス40が組織36に印加されたとき、アブレーション処置が完了したかどうかをチェックする。アブレーション処置が完了していない場合、方法は工程109にループバックする。アブレーションが完了した場合、方法は、カテーテル抽出工程112に進み、これは、医師22が患者24の身体からカテーテル26を抽出するように、方法を終了する。
【0077】
本明細書に記載される実施形態は、複数の電極を有する可撓性カテーテル、例えば投げ縄タイプを使用した双極アブレーション処置を主に対象としているが、本明細書に記載される方法及びシステムはまた、カテーテルの電極間の既定の距離を維持するために、カテーテルの他の種類のカテーテルを使用する双極アブレーション処置などの、他の用途においても使用することができる。更に、本明細書に記載される実施形態は、不可逆電気穿孔法、及び電気外科的処置などであるがこれらに限定されない様々な種類の電気穿孔法においても使用することができる。
【0078】
したがって、上記に述べた実施形態は、例として引用したものであり、また本発明は、上記に具体的に示し説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記の明細書に記載される様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の記載を一読すると当業者が着想すると思われるそれらの変形及び修正であって、先行技術に開示されていない変形及び修正を含む。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部と見なすものとする。
【0079】
〔実施の態様〕
(1) 非活性化電極の電圧形態における変化を検知することによって、アブレーション電極間の接触及び近接を検出するためのシステムであって、前記システムが、
カテーテルであって、患者の身体内への挿入のために構成されており、前記カテーテルの遠位端に配設され、前記身体内の組織と接触するように構成された少なくとも第1の電極、第2の電極、及び第3の電極を含む、カテーテルと、
パルス発生器であって、前記第1の電極及び前記第2の電極と接触している前記組織をアブレーションするために、前記第1の電極と前記第2の電極との間に1つ又は2つ以上の双極アブレーションパルスを印加するように構成されている、パルス発生器と、
コントローラであって、(i)前記第1の電極と前記第2の電極との間に前記1つ又は2つ以上の双極アブレーションパルスを印加するように、前記パルス発生器を制御することと、(ii)前記アブレーションパルスの印加中に、前記第3の電極と基準との間で測定された電圧を示す信号を受信することと、(iii)前記電圧が既定の基準に違反していることを検出したことに応じて、通知を発行することと、を行うように構成されている、コントローラと、を備える、システム。
(2) 前記電圧が前記既定の基準に違反していることを検出する際、前記コントローラが、(i)前記第1の電極及び前記第2の電極のうちの少なくとも1つと、(ii)前記第3の電極との間の距離が距離閾値よりも小さいことを検出するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記パルス発生器が、前記基準と前記第1の電極、前記第2の電極、及び前記第3の電極との間にそれぞれ接続され、前記第1の電極、前記第2の電極、及び前記第3の電極に前記双極アブレーションパルスをそれぞれ印加するように構成された、それぞれの出力変圧器を有する第1、第2、及び第3のパルス発生回路を含む、実施態様1に記載のシステム。
(4) 前記第3の電極と前記基準との間の前記電圧を示す前記信号の測定のために、前記コントローラが、前記第3の出力変圧器から前記第3の電極を切断するように構成されている、実施態様3に記載のシステム。
(5) 非活性化電極の電圧形態における変化を検知することによって、アブレーション電極間の接触及び近接を検出するための方法であって、前記方法が、
患者の身体内にカテーテルを挿入することであって、前記カテーテルが、前記身体内の組織と接触させるために前記カテーテルの遠位端に配設された少なくとも第1の電極、第2の電極、及び第3の電極を含む、挿入することと、
前記第1の電極及び前記第2の電極と接触している前記組織をアブレーションするために、前記第1の電極と前記第2の電極との間に1つ又は2つ以上の双極アブレーションパルスを印加することと、
前記アブレーションパルスの印加中に、前記第3の電極と基準との間で測定された電圧を示す信号を受信することと、
前記電圧が既定の基準に違反していることを検出したことに応じて通知を発行することと、を含む、方法。
【0080】
(6) 前記電圧が前記既定の基準に違反していることを検出することが、(i)前記第1の電極及び前記第2の電極のうちの少なくとも1つと、(ii)前記第3の電極との間の距離が距離閾値よりも小さいことを検出することを含む、実施態様5に記載の方法。
(7) 1つ又は2つ以上の双極アブレーションパルスを印加することが、前記基準と前記第1の電極、前記第2の電極、及び前記第3の電極との間にそれぞれ接続された、それぞれの出力変圧器を有する第1、第2、及び第3のパルス発生回路を含むパルス発生器において、前記第1の電極、前記第2の電極、及び前記第3の電極に前記双極アブレーションパルスをそれぞれ印加することを含む、実施態様5に記載の方法。
(8) 前記信号を受信することが、前記第3の電極と前記基準との間の前記電圧を示す前記信号の測定のために、前記第3の出力変圧器から前記第3の電極を切断することを含む、実施態様7に記載の方法。
図1
図2A
図2B
図3
図4
【外国語明細書】