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特開2022-96578電子ビーム検出装置と電子ビームの検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096578
(43)【公開日】2022-06-29
(54)【発明の名称】電子ビーム検出装置と電子ビームの検出方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/04 20060101AFI20220622BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20220622BHJP
   H01J 37/244 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
H01J37/04 A
B82Y30/00
H01J37/244
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068715
(22)【出願日】2021-04-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】202011497817.6
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】598098331
【氏名又は名称】ツィンファ ユニバーシティ
(71)【出願人】
【識別番号】500080546
【氏名又は名称】鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HON HAI PRECISION INDUSTRY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】66,Chung Shan Road,Tu-Cheng New Taipei,236(TW)
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】特許業務法人SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 科
(72)【発明者】
【氏名】陳 果
(72)【発明者】
【氏名】柳 鵬
(72)【発明者】
【氏名】姜 開利
(72)【発明者】
【氏名】▲ハン▼ 守善
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101GG03
5C101GG33
5C101GG42
5C101HH04
5C101KK06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡単に操作できる高精度の電子ビーム検出装置と検出方法を提供する。
【解決手段】厚さ方向に貫通する第一貫通孔1021を有する多孔炭素材料層102と、画像ディスプレイ104と、ファラデーカップ105より構成される電子ビーム検出装置10に於いて、第一貫通孔1021の断面積は、測定される電子ビームの断面積以下であり、多孔炭素材料層102は粒子間にナノメートル乃至マイクロメートルの間隙を有する複数の炭素材料粒子を含む。ファラデーカップ105は多孔炭素材料層102の一方に設置され、ファラデーカップの開口1051及び第一貫通孔1021が連通する。画像ディスプレイ104は多孔炭素材料層102と電気的に接続され、多孔炭素材料層102で生成する電荷の量に応じて異なる色の画像が形成される
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔炭素材料層と、画像ディスプレイと、ファラデーカップと、を含む電子ビーム検出装置であって、
前記多孔炭素材料層は多孔炭素材料層を厚さ方向に貫通する第一貫通孔を有し、前記第一貫通孔の断面積は測定される電子ビームの断面積以下であり、前記多孔炭素材料層は複数の炭素材料粒子を含み、複数の前記炭素材料粒子の間に間隙があり、前記間隙はナノメートルスケールまたはマイクロメートルスケールであり、
前記ファラデーカップは前記多孔炭素材料層の片側に設置され、前記ファラデーカップは開口を有し、前記開口及び前記第一貫通孔が連通し、
前記画像ディスプレイは前記多孔炭素材料層と電気的に接続され、前記画像ディスプレイには前記多孔炭素材料層で生成する電荷の量に応じて異なる色の画像が形成され、前記異なる色の画像によって、前記測定される電子ビームの画像が獲得されることを特徴とする電子ビーム検出装置。
【請求項2】
前記炭素材料粒子はカーボンファイバー、カーボンマイクロワイヤー、カーボンナノチューブ、カーボンナノボール、カーボンミクロボールのいずれか一種または多種であることを特徴とする、請求項1に記載の電子ビーム検出装置。
【請求項3】
前記多孔炭素材料層はカーボンナノチューブアレイ或いはカーボンナノチューブネットワーク構造体であることを特徴とする、請求項1に記載の電子ビーム検出装置。
【請求項4】
前記電子ビーム検出装置はさらに基板を含み、
前記基板は対向する第一表面及び第二表面を有し、且つ基板を厚さ方向に貫通する第二貫通孔を有し、前記多孔炭素材料層が前記基板の前記第一表面に設置され、前記ファラデーカップは前記基板の前記第二表面に設置され、前記第一貫通孔、前記第二貫通孔及び前記開口が連通することを特徴とする、請求項1に記載の電子ビーム検出装置。
【請求項5】
請求項1~4の任意の電子ビームの検出装置を提供する第一ステップと、
前記多孔炭素材料層に対して測定される電子ビームを移動させる第二ステップと、
前記画像ディスプレイの画像を観察し、前記画像の色によって測定される電子ビームの画像を獲得する第三ステップと、
を含むことを特徴とする電子ビームの検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ビーム検出装置と電子ビームの検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子は電界の力によって加速され、エネルギーが増加し、真空中で結合されて電子ビームを形成する。電子ビーム技術は、超高温合金の成形、製造、精製、溶接、表面改質、超合金のコーティング製備の分野で広く用いられており、さらに、航空宇宙、防衛、軍事産業、原子力産業などのさまざまな分野で広く用いられている。従来の技術では、電子ビームの画像を描くために、電子ビームの断面の形状および半径を検出することが必要である。
【0003】
しかし、従来の電子ビーム検出装置と検出方法は精度が低く、且つ従来の電子ビーム検出装置の構造が複雑である。したがって、簡単に操作できる高精度の電子ビーム検出装置と検出方法を提供することは非常に重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国特許出願公開第101239712号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第101284662号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第101314464号明細書
【特許文献4】中国特許出願公開第103172044号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これによって、簡単な構造を有する高精度の電子ビーム検出装置と検出方法を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
電子ビーム検出装置は多孔炭素材料層と、画像ディスプレイと、ファラデーカップと、を含み、前記多孔炭素材料層は多孔炭素材料層を厚さ方向に貫通する第一貫通孔を有し、前記第一貫通孔の断面積は測定される電子ビームの断面積以下であり、前記多孔炭素材料層は複数の炭素材料粒子を含み、複数の前記炭素材料粒子の間に間隙があり、前記間隙はナノメートルスケールまたはマイクロメートルスケールであり、前記ファラデーカップは前記多孔炭素材料層の片側に設置され、前記ファラデーカップは開口を有し、前記開口及び前記第一貫通孔が連通し、前記画像ディスプレイは前記多孔炭素材料層と電気的に接続され、前記画像ディスプレイには前記多孔炭素材料層で生成する電荷の量に応じて異なる色の画像が形成され、前記異なる色の画像によって、前記測定される電子ビームの画像が獲得される。
【0007】
前記炭素材料粒子はカーボンファイバー、カーボンマイクロワイヤー、カーボンナノチューブ、カーボンナノボール、カーボンミクロボールのいずれか一種または多種である。
【0008】
前記多孔炭素材料層はカーボンナノチューブアレイ或いはカーボンナノチューブネットワーク構造体である。
【0009】
前記電子ビーム検出装置はさらに基板を含み、前記基板は対向する第一表面及び第二表面を有し、且つ基板を厚さ方向に貫通する第二貫通孔を有し、前記多孔炭素材料層が前記基板の前記第一表面に設置され、前記ファラデーカップは前記基板の前記第二表面に設置され、前記第一貫通孔、前記第二貫通孔及び前記開口が連通する。
【0010】
電子ビームの検出方法は前記電子ビームの検出装置を提供する第一ステップと、前記多孔炭素材料層に対して測定される電子ビームを移動させる第二ステップと、前記画像ディスプレイの画像を観察し、前記画像の色によって測定される電子ビームの画像を獲得する第三ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0011】
従来技術と比べて、本発明により提供される電子ビーム検出装置は多孔炭素材料層を採用し、電子ビーム検出装置を使用する際、測定される電子ビームは多孔炭素材料層に対して移動するので、多孔炭素材料層に照射される電子ビームのサイズを変化させる。画像ディスプレイの画像の色によって、電子ビームの画像を獲得でき、電子ビーム検出装置の構造及び電子ビームの検出方法は非常にシンプルである。また、測定される電子ビームの電子は、多孔炭素材料層の炭素材料粒子の間隙で何度も屈折して反射され、多孔炭素材料層から放出することはできない。このとき、多孔炭素材料層の電子吸収率は99.99%以上に達し、ほぼ100%に達することができる。多孔炭素材料層を電子の絶対的な黒体と見なすことができる。したがって、電子ビームの全体が多孔炭素材料層に照射される場合、電子ビームが多孔炭素材料層にまったく照射されない場合、及び電子ビームの一部が多孔炭素材料層に照射される場合で、画像ディスプレイの画像の色は大きく異なり、肉眼で見分けやすい。したがって、電子ビーム検出装置および電子ビーム検出装置を用いた検出方法の検出精度も非常に高い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第一実施例の電子ビーム検出装置の構造を示す図である。
図2】本発明の第一実施例の電子ビーム検出装置の分割構造の概略図である。
図3】本発明の第一実施例の多孔炭素材料層が超配列カーボンナノチューブアレイである場合、図1の電子ビーム検出装置の電子吸収率は、超配列カーボンナノチューブアレイの高さによって変化することを示す図である。
図4】本発明の多孔炭素材料層がファラデーカップの表面に直接配置された電子ビーム検出装置の構造を示す図である。
図5】本発明の第一実施例の電子ビーム検出装置の超配列カーボンナノチューブアレイのトポグラフィーである。
図6図1の電子ビーム検出装置を用いて、測定される電子ビームを検出したときの画像写真である。
図7】本発明の第二実施例の電子ビームの検出方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0014】
図1及び図2を参照すると、本発明の第一実施例は、電子ビーム検出装置10を提供する。電子ビーム検査装置10は、多孔炭素材料層102と、基板103と、画像ディスプレイ104と、ファラデーカップ105と、を含む。画像ディスプレイ104は、多孔炭素材料層102と電気的に接続される。
【0015】
多孔炭素材料層102は、第一貫通孔1021を有する。第一貫通孔1021の断面積は、測定される電子ビームの断面積以下である。第一貫通孔1021は、多孔炭素材料層102を厚さ方向に貫通する。基板103は、対向する第一表面及び第二表面を有し、且つ第二貫通孔1031を有する。第二貫通孔1031は基板103を厚さ方向に貫通する。ファラデーカップ105は開口1051を有する。多孔炭素材料層102が基板103の第一表面に設置され、ファラデーカップ105は基板103の第二表面に設置される。第一貫通孔1021、第二貫通孔1031および開口1051が連通する。ファラデーカップ105は、第一貫通穴1021、第二貫通孔1031、および開口1051を通過して測定される電子ビームの電子を集めるために使用される。
【0016】
多孔炭素材料層102は複数の炭素材料粒子を含む。複数の炭素材料粒子の間に微小な間隙がある。複数の炭素材料粒子間の間隙は、ナノメートルスケールまたはマイクロメートルスケールである。マイクロメートルスケールとは、間隙のサイズが1000ミクロン以下であることを意味する。一つの例において、間隙のサイズが100ミクロン以下である。ナノメートルレベルとは、間隙のサイズが1000ナノメートル以下であることを意味する。一つの例において、間隙のサイズが100ナノメートル以下である。好ましくは、多孔炭素材料層102における炭素材料粒子間の間隙は、複数の微孔を形成する。一つの例において、微孔の孔径は5μm~50μmである。一つの例において、微孔の孔径は、5μm~30μmである。
【0017】
好ましくは、多孔炭素材料層102は、純粋な炭素構造を有する。これは、多孔炭素材料層102が、他の不純物を含まない複数の炭素材料粒子のみから構成され、炭素材料粒子も純粋な炭素材料粒子であることを意味する。
【0018】
炭素材料粒子は、線状粒子と球状粒子の一方または両方を含む。線状粒子の断面の最大直径は1000ミクロン以下である。線状粒子は、カーボンファイバー、カーボンマイクロワイヤー、カーボンナノチューブなどであってもよい。球状粒子の最大直径は1000ミクロン以下である。球状粒子は、カーボンナノボールまたはカーボンミクロボールであり得る。好ましくは、炭素材料粒子はカーボンナノチューブであり、多孔炭素材料層102はカーボンナノチューブ構造体である。カーボンナノチューブ構造体はカーボンナノチューブアレイまたはカーボンナノチューブネットワーク構造体である。
【0019】
カーボンナノチューブ構造体がカーボンナノチューブアレイである場合、カーボンナノチューブアレイにおけるカーボンナノチューブの延伸方向が基板103と交差して角を形成する。角は0度より大きく90度以下である。これは、カーボンナノチューブアレイにおける複数のカーボンナノチューブ間の小さな間隙によって、電子ビームの電子がカーボンナノチューブアレイから放出されることを防ぎ、カーボンナノチューブアレイの電子ビーム収集率を改善し、電子ビームの検出精度を高める。本実施例において、カーボンナノチューブ構造体は超配列カーボンナノチューブアレイであり、超配列カーボンナノチューブアレイにおけるカーボンナノチューブの延伸方向は、基板103の表面に垂直である。
【0020】
超配列カーボンナノチューブアレイにおけるカーボンナノチューブの延伸方向は基本的に同じである。もちろん、超配列カーボンナノチューブアレイにはランダムに配置されたカーボンナノチューブがいくつかあり、これらのカーボンナノチューブは、超配列カーボンナノチューブアレイにおけるほとんどのカーボンナノチューブの全体的な配向に大きな影響を与えない。超配列カーボンナノチューブアレイには、基本的にアモルファスカーボンや残留触媒金属粒子などの不純物が含まれない。超配列カーボンナノチューブアレイにおけるカーボンナノチューブは、分子間力によって互いに密接に接触してアレイを形成する。超配列カーボンナノチューブアレイのサイズ、厚さ、および表面積は制限されておらず、実際のニーズに応じて選択できる。超配列カーボンナノチューブアレイの製造方法は、特許文献1に掲載されている。スペースを節約するために、ここでのみ引用されているが、特許文献1のすべての技術的開示も、本発明の技術的開示の一部と見なされるべきである。カーボンナノチューブアレイは、超配列カーボンナノチューブアレイに限定されず、他のカーボンナノチューブアレイであってもよい。
【0021】
カーボンナノチューブネットワーク構造体におけるカーボンナノチューブ間に形成される微孔は非常に小さい。微孔のサイズはマイクロメートルスケールである。カーボンナノチューブネットワーク構造体は、カーボンナノチューブスポンジ状構造体、カーボンナノチューブフィルム構造体、カーボンナノチューブペーパー、または複数のカーボンナノチューブを織りまたは絡み合わせることによって形成されたネットワーク構造体であってもよく、または他のカーボンナノチューブネットワーク構造体であってもよい。
【0022】
カーボンナノチューブスポンジ状構造体は、複数のカーボンナノチューブが絡み合って形成されたスポンジ状のカーボンナノチューブ構造体である。カーボンナノチューブスポンジ状構造体は自立構造を有する多孔構造体である。
【0023】
カーボンナノチューブワイヤーは複数のカーボンナノチューブを含む。複数のカーボンナノチューブは分子間力で端と端が接続されている巨視的な線状構造体である。カーボンナノチューブワイヤーは、非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤまたはねじれ状カーボンナノチューブワイヤである。非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは複数のカーボンナノチューブを含む。複数のカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブワイヤの中心軸に平行に配列されている。一つの例において、非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは複数のカーボンナノチューブのみからなる。非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤの長手方向に沿って、対向する両端に相反する力を印加することにより、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤを形成することができる。ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは複数のカーボンナノチューブを含む。複数のカーボンナノチューブは、基本的に平行に配列され、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤの中心軸を軸に螺旋状に配列されている。複数のカーボンナノチューブは延伸方向に沿って、分子間力で端と端が接続されている。一つの例において、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは複数のカーボンナノチューブのみからなる。
【0024】
カーボンナノチューブフィルムの構造体は、複数のカーボンナノチューブフィルムを積層して形成される。隣接するカーボンナノチューブフィルムは分子間力によって結合される。カーボンナノチューブフィルム構造体におけるカーボンナノチューブの間に、小さな間隙が形成される。カーボンナノチューブフィルムは、ドローン構造カーボンナノチューブフィルム、綿毛構造カーボンナノチューブフィルム、またはプレシッド構造カーボンナノチューブフィルムであってもよい。
【0025】
ドローン構造カーボンナノチューブフィルムは、複数のカーボンナノチューブを含む。好ましくは、ドローン構造カーボンナノチューブフィルムは、複数のカーボンナノチューブからなる。複数のカーボンナノチューブはドローン構造カーボンナノチューブフィルムの表面に基本的に平行に配列される。具体的には、複数のカーボンナノチューブは、分子間力で端から端まで接続され、同じ方向に沿って配列されている。ドローン構造カーボンナノチューブフィルムは、カーボンナノチューブアレイから直接引っ張ることによって得ることができる。ドローン構造カーボンナノチューブフィルムは自立構造体である。ドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおける多数のカーボンナノチューブは、分子間力でお互いに結合しているので、ドローン構造カーボンナノチューブフィルムは特定の形状を有し、自立構造体を形成する。ドローン構造カーボンナノチューブフィルムの厚さは0.5ナノメートルから100ミクロンまでである。ドローン構造カーボンナノチューブフィルムの幅はカーボンナノチューブアレイのサイズに関連し、ドローン構造カーボンナノチューブフィルムの長さは制限されない。ドローン構造カーボンナノチューブフィルムの製造方法は、特許文献1に掲載されている。スペースを節約するために、ここでのみ引用されているが、特許文献1のすべての技術的開示も、本発明の技術的開示の一部と見なされるべきである。ドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおける多数のカーボンナノチューブは、分子間力によって端から端まで接続されている。一つの例において、カーボンナノチューブフィルム構造体は、複数のドローン構造カーボンナノチューブフィルムが積層されて形成される。隣接する前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは、それぞれ0°~90°(0°を含まず)の角度で交差している。複数のドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが交差してネットワークフィルム構造体を形成している。
【0026】
綿毛構造カーボンナノチューブフィルムは、絡み合って均一に分布している複数のカーボンナノチューブを含む。好ましくは、綿毛構造カーボンナノチューブフィルムは、絡み合って均一に分布している複数のカーボンナノチューブからなる。カーボンナノチューブは、分子間力によって互いに接近して、相互に絡み合い、カーボンナノチューブネット状構造体が形成され、自立構造体を有する綿毛構造カーボンナノチューブフィルムが形成される。綿毛構造カーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブは、絡み合い、等方的に配列されている。綿毛構造カーボンナノチューブフィルムは、カーボンナノチューブアレイを処理することによって得ることができる。綿毛構造カーボンナノチューブフィルムの製造方法は、特許文献2に掲載されている。スペースを節約するために、ここでのみ引用されているが、特許文献2のすべての技術的開示も、本発明の技術的開示の一部と見なされるべきである。
【0027】
プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムは複数のカーボンナノチューブを含む。好ましくは、プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムは複数のカーボンナノチューブからなる。複数のカーボンナノチューブは、等方的に配列されているか、所定の方向に沿って配列されているか、または、異なる複数の方向に沿って配列されている。隣接するカーボンナノチューブ同士が分子間力で相互に結合され接続される。カーボンナノチューブフィルムは、押し器具を利用して、所定の圧力をかけて前記カーボンナノチューブアレイを押し、該カーボンナノチューブアレイを圧力で倒すことにより形成された、シート状の自立構造を有するものである。カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの配列方向は、押し器具の形状及びカーボンナノチューブアレイを押す方向により決められる。
【0028】
プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが配向せずに配置される場合には、該カーボンナノチューブフィルムは、等方的に配列されている複数のカーボンナノチューブを含み、隣接するカーボンナノチューブ同士が分子間力で相互に引き合わさって接続される。また、該カーボンナノチューブフィルムは、平面等方性を有し、該カーボンナノチューブフィルムは、平面を有する押し器具を利用して、カーボンナノチューブアレイが成長している基板に垂直な方向に沿って、カーボンナノチューブアレイを押すことにより形成される。プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが配向して配列される場合には、該カーボンナノチューブフィルムは、同じ方向に沿って配列した複数のカーボンナノチューブを含む。ローラー形状を有する押し器具を利用して、同じ方向に沿ってカーボンナノチューブアレイを同時に押すと、基本的に同じ方向に配列したカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブフィルムが形成される。また、ローラー形状を有する押し器具を利用して、異なる方向に沿って、カーボンナノチューブアレイを同時に押すと、異なる方向に沿って、選択的な方向に配列したカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブフィルムが形成される。プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムの製造方法は、特許文献3に掲載されている。スペースを節約するために、ここでのみ引用されているが、特許文献3のすべての技術的開示も、本発明の技術的開示の一部と見なされるべきである。
【0029】
カーボンナノチューブペーパーは、基本的に同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブを含む。複数のカーボンナノチューブは、延伸方向に分子間力で端と端が接続されている。複数のカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブペーパーの表面に基本的に平行である。カーボンナノチューブペーパーの製造方法は、特許文献4に掲載されている。スペースを節約するために、ここでのみ引用されているが、特許文献4のすべての技術的開示も、本発明の技術的開示の一部と見なされるべきである。
【0030】
カーボンナノチューブ構造体は純粋であり、カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブの比表面積は大きく、カーボンナノチューブ構造自体は大きな粘度を持っている。したがって、カーボンナノチューブ構造体は自身の接着力によって、基板103の表面に固定されることができる。カーボンナノチューブ構造体を基板103の表面によりよく固定するために、カーボンナノチューブ構造体も接着剤によって基板103の表面に固定される。本実施例において、カーボンナノチューブ構造体は純粋であり、カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブの比表面積は大きく、カーボンナノチューブ構造体はそれ自体の接着力によって基板103の表面に固定されている。
【0031】
電子ビームのエネルギーが高くなるにつれて、多孔炭素材料層102におけるその通過深さはより深くなり、逆に電子ビームのエネルギーが低くなるにつれて、通過深さはより浅くなる。好ましくは、電子ビームのエネルギーが20keV以下である場合、多孔炭素材料層102の厚さは200μm~600μmである。この厚さ範囲では、電子ビームは多孔炭素材料層102を容易に通過せず、多孔炭素材料層102から外部に反射されにくい。また、この厚さ範囲において、多孔炭素材料層102は高い電子吸収率を有する。一つの例において、多孔炭素材料層102の厚さは300μm~500μmである。もう一つの例において、多孔炭素材料層102の厚さは250μm~400μmである。
【0032】
図3を参照すると、多孔炭素材料層102が超配列カーボンナノチューブアレイである場合、電子ビーム検出装置10の電子吸収率は、超配列カーボンナノチューブアレイの高さによって変化する。図3に示すように、カーボンナノチューブアレイの高さが増加するにつれて、電子ビーム検出装置10の電子吸収率が増加することが分かる。カーボンナノチューブアレイの高さが500μmである場合、電子ビーム検出装置10の電子吸収率は0.95を超え、基本的に1.0に近い。超配列カーボンナノチューブアレイの高さが540μmより大きい場合、超配列カーボンナノチューブアレイの高さが増加し続けても、電子ビーム検出装置10の電子吸収率は基本的に変化しない。多孔炭素材料層102が超配列カーボンナノチューブアレイである場合、好ましくは、超配列カーボンナノチューブアレイの高さは400μm~540μmである。
【0033】
好ましくは、基板103は平坦な構造体である。基板103の材料は絶縁材料である。基板103の材料は、たとえば、ガラス、プラスチック、シリコンウェーハ、二酸化シリコンウェーハ、石英ウェーハ、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、シリコン、酸化物層を有するシリコン、或いは石英などである。基板103の形状およびサイズは、必要性に応じて設計できる。本実施例において、基板103は、直方体のシリコン基板である。
【0034】
基板103は省略できる要素であり、必須ではない。一つの例において、図4を参照すると、電子ビーム検出装置10は、基板103を含まない。多孔炭素材料層102は、ファラデーカップ105の表面に直接設置され、且つ多孔炭素材料層102の第一貫通孔1021はファラデーカップ105の開口1051と連通している。
【0035】
画像ディスプレイ104は、多孔炭素材料層102で生成する電荷の量に応じて異なる色の画像を形成することに用いられる。画像ディスプレイ104における異なる色の画像によって、測定される電子ビームの画像を得ることができる。画像ディスプレイ104のモデルは、実際の必要に応じて選択できる。本実施例において、画像ディスプレイ104はLCDディスプレイである。
【0036】
さらに、電子ビーム検出装置10は、電気計器106を含むことができる。電気計器106は第一端子および第二端子を含む。第一端子は多孔炭素材料層102に電気的に接続され、第二端子は接地される。電気計器106は、多孔炭素材料層102で生成された電荷を検出し、数値変換を実行して電気信号を形成するために使用される。電気計器106は、電流計または電圧計であってもよい。本実施例において、電気計器106は電流計であり、多孔炭素材料層102における電荷が形成された電流値を検出することに用いる。
【0037】
【0038】
電子ビームを検出する場合、測定される電子ビームは真空チャンバーに入り、測定される電子ビームは多孔炭素材料層102に対して移動し、多孔炭素材料層102を走査する。測定される電子ビーム全体が多孔炭素材料層102に照射されると、測定される電子ビームの電子は、多孔炭素材料層102の炭素材料粒子の間隙で何度も屈折して反射され、多孔炭素材料層から放出することはできない。このとき、多孔炭素材料層102の電子吸収率は99.99%以上に達し、ほぼ100%に達する。多孔炭素材料層102を電子の絶対的な黒体と見なすことができる。したがって、測定される電子ビーム全体が多孔炭素材料層102に照射される際、電子ビーム全体の電子が多孔炭素材料層102に吸収され、多孔炭素材料層102で生成する電荷が最も多い。これにより、画像ディスプレイ104によって得られた画像の色は最も暗い。測定される電子ビームの一部が多孔炭素材料層102に照射され、他の部分が第一貫通孔1021に照射される際、第一貫通孔1021に照射される電子ビームの一部は、第二貫通孔1031および開口1051を通ってファラデーカップ105に入る。この場合、電子ビームの全体が多孔炭素材料層102に照射されるときと比較して、多孔炭素材料層102で生成する電荷が減少し、画像ディスプレイ104で得られる画像の色も変化して、明るくなる。さらに、第一貫通孔1021に照射される電子ビームが多いほど、多孔炭素材料層102で生成する電荷は少なくなる。第一貫通孔1021の断面積は、測定される電子ビームの断面積以下であるため、第一貫通孔1021の全体が測定される電子ビームで覆われている場合、多孔炭素材料層102に照射される電子ビームの断面積は最も少ない。このとき、多孔炭素材料層102で生成する電荷は最も少なく、画像ディスプレイ104で得られる画像の色が最も明るい。さらに、測定される電子ビームが第一貫通孔1021に照射されるときの画像ディスプレイ104の色と、測定される電子ビームの全体が多孔炭素材料層102に照射されるときの画像ディスプレイ104の色との違いは非常に明らかであり、裸眼で非常に容易に区別できる。従って、測定される電子ビームが多孔炭素材料層102に対して二次元走査を行う場合、画像ディスプレイ104の色の違いによって、測定される電子ビームのサイズおよび形状を容易に得ることができる。
【0039】
本実施例において、多孔炭素材料層102は、超配列カーボンナノチューブアレイである。図5は超配列カーボンナノチューブアレイの形態図である。形態図において、中央の明るい色は、超配列カーボンナノチューブアレイの第一貫通穴1021に対応する。他の暗い色の画像は、超配列カーボンナノチューブアレイのカーボンナノチューブ部分に対応する。図5に示すように、本実施例における第一貫通穴1021のサイズは、20ミクロンであることが得られる。
【0040】
図6を参照すると、本実施例の電子ビーム検出装置10を用いて測定される電子ビームを検出した場合、測定される電子ビームの電子ビームスポットの形態を示す。画像ディスプレイ104により得られた画像は、中央部分の色はより明るく、他の部分の色はより暗い。二つの色は非常に異なり、裸眼で簡単に区別できる。真ん中の明るい色の画像が測定される電子ビームの画像である。図6に示すように、電子ビームスポットの最大径が300ミクロンであることがわかる。
【0041】
図7を参照すると、本発明の実施例2は上記の電子ビーム検出装置10を使用する電子ビームの検出方法を提供する。電子ビームの検出方法は、以下のステップを含む。
S1、電子ビーム検出装置10を提供する。
S2、多孔炭素材料層102に対して測定される電子ビームを移動させる。
S3、画像ディスプレイ104の画像を観察し、画像の色によって測定される電子ビームの画像を獲得する。
【0042】
ステップ(S1)において、電子ビーム検出装置10は、第一実施例に記載される電子ビーム検出装置10である。
【0043】
【0044】
ステップ(S3)において、測定される電子ビーム全体が多孔炭素材料層102に照射される際、電子ビーム全体の電子が多孔炭素材料層102に吸収され、多孔炭素材料層102で生成する電荷が最も多い。これにより、画像ディスプレイ104によって得られた画像の色は最も暗い。測定される電子ビームの一部が多孔炭素材料層102に照射され、他の部分が第一貫通孔1021に照射される際、第一貫通孔1021に照射される電子ビームの一部は、第二貫通孔1031および開口1051を通ってファラデーカップ105に入る。この場合、電子ビームの全体が多孔炭素材料層102に照射されるときと比較して、多孔炭素材料層102で生成する電荷が減少し、画像ディスプレイ104で得られる画像の色も変化して、明るくなる。さらに、第一貫通孔1021に照射される電子ビームが多いほど、多孔炭素材料層102で生成する電荷は少なくなる。第一貫通孔1021の断面積は、測定される電子ビームの断面積以下であるため、第一貫通孔1021の全体が測定される電子ビームで覆われている場合、多孔炭素材料層102に照射される電子ビームの断面積は最も少ない。このとき、多孔炭素材料層102で生成する電荷は最も少なく、画像ディスプレイ104で得られる画像の色が最も明るい。さらに、測定される電子ビームが第一貫通孔1021に照射されるときの画像ディスプレイ104の色と、測定される電子ビームの全体が多孔炭素材料層102に照射されるときの画像ディスプレイ104の色との違いは非常に明らかであり、裸眼で非常に容易に区別できる。
【0045】
本発明の電子ビーム検出装置及び電子ビーム検出装置を用いた検出方法は、以下の効果を有する。電子ビーム検出装置は多孔炭素材料層を採用し、電子ビーム検出装置を使用する際、測定される電子ビームは、多孔炭素材料層に対して移動するので、多孔炭素材料層に照射される電子ビームのサイズは変化する。画像ディスプレイの画像の色によって、電子ビームの画像を獲得でき、電子ビーム検出装置の構造及び電子ビームの検出方法は非常にシンプルである。また、多孔炭素材料層の電子に対する吸収率はほぼ100%に達することができ、絶対的な黒体と呼ぶことができる。したがって、電子ビームの全体が多孔炭素材料層に照射される場合、電子ビームが多孔炭素材料層にまったく照射されない場合、及び電子ビームの一部が多孔炭素材料層に照射される場合で、画像ディスプレイの画像の色は大きく異なり、裸眼で見分けやすい。したがって、電子ビーム検出装置および電子ビーム検出装置を用いた検出方法の検出精度も非常に高い。
【符号の説明】
【0046】
10 電子ビーム検出装置
102 多孔炭素材料層
1021 第一貫通孔
103 基板
1021 第二貫通孔
104 画像ディスプレイ
105 ファラデーカップ
1051 開口
106 電気計器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7