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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096587
(43)【公開日】2022-06-29
(54)【発明の名称】締付工具
(51)【国際特許分類】
   B25B 13/02 20060101AFI20220622BHJP
【FI】
B25B13/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105561
(22)【出願日】2021-06-25
(31)【優先権主張番号】P 2020209112
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000161909
【氏名又は名称】京都機械工具株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】大西 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】井上 正貴
(72)【発明者】
【氏名】頼富 士朗
(57)【要約】
【課題】機械強度を担保しつつ、従来よりも軽量なソケットを提供する。
【解決手段】締付対象Zに嵌合する嵌合孔h1が形成された筒部10を有する締付工具であって、嵌合孔h1が軸方向から視て多角形状をなし、筒部10の外周面において嵌合孔h1の辺部11の中心M1に対応する辺対応箇所12と、当該外周面において嵌合孔h1の頂点部13に対応する点対応箇所14とが、当該外周面の外接円C1よりも径方向内側に位置するようにした。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
締付対象に嵌合する嵌合孔が形成された筒部を有する締付工具であって、
前記嵌合孔が軸方向から視て多角形状をなし、
前記筒部の外周面において前記嵌合孔の辺部の中心に対応する辺対応箇所と、当該外周面において前記嵌合孔の頂点部に対応する点対応箇所とが、当該外周面の外接円よりも径方向内側に位置する、締付工具。
【請求項2】
作業者に把持されるハンドルの角ドライブが差し込まれる差込角が形成された筒部を有する締付工具であって、
前記筒部の外周面において前記差込角の辺部の中心に対応する辺対応箇所と、当該外周面において差込角の頂点部に対応する点対応箇所とが、当該外周面の外接円よりも径方向内側に位置する、締付工具。
【請求項3】
前記外周面において外接円が通過する点における径方向に沿った厚み寸法が、前記辺対応箇所における径方向に沿った厚み寸法及び前記点対応箇所における径方向に沿った厚み寸法よりも大きい、請求項1又は2記載の締付工具。
【請求項4】
前記辺対応箇所又は前記点対応箇所の少なくとも一方が、前記外周面において中心軸側に向かって湾曲する湾曲領域に設けられている、請求項1乃至3のうち何れか一項に記載の締付工具。
【請求項5】
前記辺対応箇所又は前記点対応箇所の少なくとも一方が、前記外周面において中心軸に平行な平面領域に設けられている、請求項1乃至4のうち何れか一項に記載の締付工具。
【請求項6】
周方向における1箇所が、他の箇所よりも応力が集中する応力集中箇所として形成されている、請求項1乃至5のうち何れか一項に記載の締付工具。
【請求項7】
前記応力集中箇所が、前記嵌合孔の1つの前記頂点部と、これに対応する前記点対応箇所との間に形成されている、請求項6記載の締付工具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締付工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、締付工具を構成するソケットとして、特許文献1に示すように、外周面の一部を径方向内側に反らせることにより、軽量化を図ったものがある。
【0003】
具体的にこのソケットは、締付対象に嵌合する嵌合孔が軸方向から視て六角形状をなし、外周面において嵌合孔の6辺それぞれに対応する箇所を径方向内側に反らせている。
【0004】
一方、嵌合孔の頂点部に対応する箇所は、従来の技術常識では、締付作業中に大きな応力が加わる箇所であると考えられており、機械的強度を担保するべく厚みを持たせている。特許文献1に記載されたソケットは、その証左であり、ソケットの外周面において嵌合孔の6つの頂点部それぞれに対応する箇所は、外側に膨らむ弧状をなしている。
【0005】
また、嵌合孔とは反対側を向く差込角に着目した場合、従来の技術常識では、ソケットの外周面において差込角の角部に対応する箇所に大きな応力が加わると考えられている。
【0006】
かかる技術常識にメスを入れ、嵌合孔の頂点部に対応する箇所に厚みを持たせることに疑問を持ち、機械的強度を本当に必要とする箇所がどこにあるかを鋭意検討してなされたのが本願発明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3135906号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そして、本願発明者は、上述した鋭意検討の結果、機械的強度を本当に必要とする箇所が、嵌合孔や差込角の頂点部に対応する箇所とは別にあることを見出した。
【0009】
そこで、本願発明は、機械強度を担保しつつ、従来よりもさらに軽量な締付工具を提供することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明に係る締付工具は、締付対象に嵌合する嵌合孔が形成された筒部を有する締付工具であって、前記嵌合孔が軸方向から視て多角形状をなし、前記先端筒部の外周面において前記嵌合孔の辺部の中心に対応する辺対応箇所と、当該外周面において前記嵌合孔の頂点部に対応する点対応箇所とが、当該外周面の外接円よりも径方向内側に位置することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明に係る締付工具は、作業者に把持されるハンドルの角ドライブが差し込まれる差込角が形成された筒部を有する締付工具であって、前記筒部の外周面において前記差込角の辺部の中心に対応する辺対応箇所と、当該外周面において差込角の頂点部に対応する点対応箇所とが、当該外周面の外接円よりも径方向内側に位置することを特徴とするものである。
【0012】
このように構成された締付工具によれば、筒部の外周面における辺対応箇所と点対応箇所とが、当該外周面の外接円よりも径方向内側に位置しているので、軸方向から視て、辺対応箇所と点対応箇所との間に外接円が通過する点、すなわち中心からの距離が最も遠くなる点が存在することになる。そして、詳細な解析データは後述するが、この点近傍こそが、筒部の外周面において機械的強度が本当に必要な箇所である。
従って、上述した構成によれば、ソケット等の筒部機械的強度を担保しつつ、辺対応箇所のみならず、点対応箇所をも外接円よりも径方向内側に位置させているので、従来よりも筒部のさらなる軽量化を図れる。
【0013】
機械的強度を確実に担保できるようにするためには、前記外周面において外接円が通過する点における径方向に沿った厚み寸法が、前記辺対応箇所における径方向に沿った厚み寸法及び前記点対応箇所における径方向に沿った厚み寸法よりも大きいことが好ましい。
【0014】
具体的な実施態様としては、前記辺対応箇所又は前記点対応箇所の少なくとも一方が、前記外周面において中心軸側に向かって湾曲する湾曲領域に設けられている態様を挙げることができる。
これならば、辺対応箇所や点対応箇所を湾曲領域に設けることで、より軽量なものとすることができる。
【0015】
また、別の実施態様としては、前記辺対応箇所又は前記点対応箇所の少なくとも一方が、前記外周面において中心軸に平行な平面領域に設けられている態様を挙げることができる。
これならば、辺対応箇所や点対応箇所を湾曲領域に設ける場合に比べて、製造の負荷を低減することができる。
【0016】
ところで、ソケットの形状が周方向に沿って規則的な形状であると、作業時にソケットに加わる応力が複数箇所に分散される。
この場合、ソケットが破断する程の大きな応力が加わると、どの箇所から破壊するかを予期することができなかったり、仮に複数箇所が破断する場合には、破片が周囲に飛散したりする懸念がある。
【0017】
そこで、安全に破断させるためには、周方向における1箇所が、他の箇所よりも応力が集中する応力集中箇所として形成されていることが好ましい。
このような構成であれば、大きな応力が加わったとしても、応力集中箇所から破断するので、破片が飛散することなどを防ぐことが可能となり、安全に破断させることができる。
【0018】
ソケットを複雑な形状にすることなく応力集中箇所を形成するためには、前記応力集中箇所が、前記嵌合孔の1つの前記頂点部と、これに対応する前記点対応箇所との間に形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
このように構成された本発明によれば、ソケット等の筒部の機械強度を担保しつつ、従来よりも軽量な締付工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一実施形態に係る締付工具を示す模式図。
図2】ソケットの先端筒部に加わる応力を解析した解析データ。
図3】本実施形態のソケットを模式的に示す斜視図である。
図4】本実施形態の軸方向から視た先端筒部を模式的に示す平面図。
図5】ソケットの基端筒部に加わる応力を解析した解析データ。
図6】本実施形態の軸方向から視た基端筒部を模式的に示す平面図。
図7】その他の実施形態のソケットを模式的に示す斜視図。
図8】その他の実施形態のソケットの内部を模式的に示す断面図。
図9】その他の実施形態のソケットを模式的に示す斜視図。
図10】その他の実施形態のソケットを模式的に示す斜視図。
図11】その他の実施形態のソケットの内部を模式的に示す断面図。
図12】その他の実施形態の軸方向から視た先端筒部を模式的に示す平面図。
図13】その他の実施形態の軸方向から視た先端筒部を模式的に示す平面図。
図14】その他の実施形態の軸方向から視た先端筒部を模式的に示す平面図。
図15】その他の実施形態の軸方向から視た先端筒部を模式的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係る締付工具を図面に基づいて説明する。
【0022】
本発明に係る締付工具200は、図1に示すように、ボルトやナット等の締付対象Zの締付作業に用いられるソケットレンチであり、作業者に把持されるハンドルXと、ハンドルXに取り付けられるソケット100とを備えている。なお、締付工具200としては、手動工具(ハンドツール)であっても良いし、電動工具、エア工具、油圧工具などの動力工具であっても良い。
この締付工具200は、ソケット100に特徴があるので、以下に詳述する。
【0023】
ソケット100は、図1に示すように、締付対象Zが嵌合する嵌合孔h1と、嵌合孔h1とは反対を向くとともにハンドルXのヘッドに設けられた角ドライブX1が差し込まれる差込角h2とが形成された筒状をなすものであり、嵌合孔h1が形成された先端筒部10と、差込角h2が形成された基端筒部20とを有している。
【0024】
先端筒部10及び基端筒部20は、同軸状に設けられている。先端筒部10の外形寸法や基端筒部20の外形寸法は特に限定されず、先端筒部10の外形寸法が、基端筒部20の外形寸法よりも小さくても構わないし、基端筒部20の外形寸法よりも大きくても構わないし、互いに同じ寸法であっても良い。なお、ここでいう外形寸法とは、軸方向から視た外接円の径寸法である。
【0025】
嵌合孔h1は、締付対象Zに嵌め込まれるものであり、軸方向から視た形状である平面形状が多角形状をなすものである。なお、ここでいう多角形状とは、複数の頂点部と、互いに隣り合う頂点部を結ぶ複数の辺部とを有する形状であり、四角形状、六角形状、2つの六角形状を30度ずらして重ねた十二角形状(二重六角形状)、3つの四角形状を30度ずらして重ねた十二角形状(三重四角形状)などを挙げることができる。
【0026】
本実施形態の嵌合孔h1は、平面形状が六角形状をなすものであるが、締付対象Zの形状が種々あるように、嵌合孔h1の平面形状も種々のものを採用して構わない。
【0027】
差込角h2は、ハンドルXの角ドライブX1が差し込まれるものであり、軸方向から視た形状である平面形状が多角形状をなすものである。
【0028】
本実施形態の差込角h2は、平面形状が四角形状をなすものである。なお、差込角h2のサイズは、角ドライブX1のサイズが種々あるように、適宜変更して構わない。
【0029】
なお、本実施形態では図1に示すように、嵌合孔h1と差込角h2とが連通しており、基端筒部20には、これらの嵌合孔h1及び差込角h2との間に介在してこれらを連通する連通孔h3が設けられている。
【0030】
この連通孔h3は、嵌合孔h1や差込角h2よりも軸方向から視たサイズが小さいものであり、本実施形態では平面形状が円形状をなす。ただし、連通孔h3の形状は、適宜変更して構わない。
【0031】
ここで、図2に示すデータは、先端筒部の外周面の平面形状が円形状のソケットを用いて締付対象を締め付けた場合に、このソケットに加わる応力を解析した解析データである。なお、先端筒部の外周面において、黒い箇所よりも白い箇所の方が大きな応力が加わっていることを示している。
【0032】
この解析データから分かるように、先端筒部の外周面において、嵌合孔の頂点部に対応する箇所Aに比べて、その隣接箇所Bの方が大きな応力が加わっていることが見て取れる。すなわち、先端筒部の外周面において、嵌合孔の頂点部に対応する箇所Aよりも、その隣接箇所Bの方が、機械的強度を持たす必要がある。なお、この図2においては、隣接箇所Bは、頂点部に対応する箇所Aの左側に隣接しているが、締付対象を緩める作業においては、隣接箇所Bが、頂点部に対応する箇所Aの右側に隣接して現れる。
【0033】
そこで、本実施形態のソケット100は、先端筒部10の機械的強度を担保しつつも軽量化を図るべく、図3及び図4に示すように、先端筒部10の外周面において嵌合孔h1の辺部11の中心M1に対応する辺対応箇所12と、当該外周面において嵌合孔h1の頂点部13に対応する点対応箇所14とが、当該外周面の外接円C1よりも径方向内側に位置するように構成してある。なお、図4においては、理解容易のため、先端筒部10の外周面の輪郭を他の箇所の輪郭よりも太い線で記載してある。
【0034】
より具体的に説明すると、嵌合孔h1は先端筒部10の内周面により形成されており、嵌合孔h1の辺部11はそれぞれ、軸方向から視て、内周面の1つの頂点部13からその隣の頂点部13まで直線部分である。なお、ここでの頂点部13は、締付対象Zが面接触するように構成されており、具体的には角張らずに径方向外側に膨らませた丸溝形状(R形状)をなしている。
【0035】
そして、辺対応箇所12は、嵌合孔h1の中心O1から辺部11の中心M1を通過する第1仮想線L1と、先端筒部10の外周面との交差箇所である。
【0036】
一方、点対応箇所14は、嵌合孔h1の中心O1から先端筒部10の内周面の頂点部13を通過する第2仮想線L2と、先端筒部10の外周面との交差箇所である。
【0037】
上述した構成により、先端筒部10の外周面において、辺対応箇所12と点対応箇所14との間に外接円C1が通過する通過箇所P1が存在することになる。
【0038】
かかる構成において、通過箇所P1における径方向に沿った厚み寸法が、辺対応箇所12における径方向に沿った厚み寸法及び点対応箇所14における径方向に沿った厚み寸法よりも大きい。言い換えれば、通過箇所P1は、辺対応箇所12及び点対応箇所14よりも肉厚である。
【0039】
然して、図2に示す解析データに鑑みれば、この通過箇所P1こそが、締付作業時において、辺対応箇所12や点対応箇所14よりも大きな応力が加わる箇所である。
【0040】
ここで、本実施形態では、辺対応箇所12及び点対応箇所14が、先端筒部10の外周面のうち中心軸側に向かって湾曲する湾曲領域S1、S2に設けられている。
【0041】
より具体的に説明すると、辺対応箇所12は第1湾曲領域S1に設けられており、ここでの第1湾曲領域S1は、辺対応箇所12から所定の角度範囲に亘って形成されている。
【0042】
一方、点対応箇所14は第2湾曲領域S2に設けられており、ここでの第2湾曲領域S2は、点対応箇所14から所定の角度範囲に亘って形成されている。
【0043】
第1湾曲領域S1と及び第2湾曲領域S2は、周方向に沿って交互に形成されており、互いに隣り合う第1湾曲領域S1と第2湾曲領域S2との間に上述した通過箇所P1が設けられている。
【0044】
本実施形態では、互いに隣り合う第1湾曲領域S1と第2湾曲領域S2とが交差するように形成されており、これらの交差箇所が、上述した通過箇所P1である。
【0045】
ここで、図5に示すデータは、基端筒部の外周面の平面形状が円形状のソケットを用いて締付対象を締め付けた場合に、このソケットに加わる応力を解析した解析データである。なお、差込角の内周面において、黒い箇所よりも白い箇所の方が大きな応力が加わっていることを示している。なお、この図5の解析データにおいて、一見すると、角ドライブのサイズが差込角よりも大きいように見受けられるが、これは、角ドライブを模した試験片として同図5の下段に示す形状のものを用いたためである。
【0046】
この解析データから分かるように、基端筒部の外周面において、差込角の頂点部に対応する箇所Cに比べて、その隣接箇所Dの方が大きな応力が加わっていることが見て取れる。すなわち、基端筒部の外周面において、差込角の頂点部に対応する箇所Cよりも、その隣接箇所Dの方が、機械的強度を持たす必要がある。なお、この図5においては、隣接箇所Dは、頂点部に対応する箇所Cの右側に隣接しているが、ソケットの締付方向が反対であれば、隣接箇所Dが、頂点部に対応する箇所Cの右側に隣接して現れる。
【0047】
そこで、本実施形態のソケット100は、基端筒部20の機械的強度を担保しつつも軽量化を図るべく、図3及び図6に示すように、基端筒部20の外周面において差込角h2の辺部21の中心M2に対応する辺対応箇所22と、当該外周面において差込角h2の頂点部23に対応する点対応箇所24とが、当該外周面の外接円C2よりも径方向内側に位置するように構成してある。なお、図6においては、理解容易のため、基端筒部20の外周面の輪郭を他の箇所の輪郭よりも太い線で記載してある。
【0048】
より具体的に説明すると、差込角h2は基端筒部20の内周面により形成されており、差込角h2の辺部21はそれぞれ、軸方向から視て、内周面の1つの頂点部23からその隣の頂点部23までの直線部分である。なお、ここでの頂点部23は、角ドライブX1が面接触するように構成されており、具体的には角張らずに径方向外側に膨らませた丸溝形状(R形状)をなしている。
【0049】
そして、辺対応箇所22は、差込角h2の中心O2から辺部21の中心M2を通過する第3仮想線L3と、基端筒部20の外周面との交差箇所である。
【0050】
一方、点対応箇所24は、差込角h2の中心O2から基端筒部20の内周面の頂点部23を通過する第4仮想線L4と、基端筒部20の外周面との交差箇所である。
【0051】
上述した構成により、基端筒部20の外周面において、辺対応箇所22と点対応箇所24との間に外接円C2が通過する通過箇所P2が存在することになる。
【0052】
かかる構成において、通過箇所P2における径方向に沿った厚み寸法が、辺対応箇所22における径方向に沿った厚み寸法及び点対応箇所24における径方向に沿った厚み寸法よりも大きい。言い換えれば、通過箇所P2は、辺対応箇所22及び点対応箇所24よりも肉厚である。
【0053】
然して、図5に示す解析データに鑑みれば、この通過箇所P2こそが、締付作業時において、辺対応箇所22や点対応箇所24よりも大きな応力が加わる箇所である。
【0054】
ここで、本実施形態では、辺対応箇所22及び点対応箇所24が、基端筒部20の外周面のうち中心軸側に向かって湾曲する湾曲領域T1、T2に設けられている。
【0055】
より具体的に説明すると、辺対応箇所22は第1湾曲領域T1に設けられており、ここでの第1湾曲領域T1は、辺対応箇所22から所定の角度範囲に亘って形成されている。
【0056】
一方、点対応箇所24は第2湾曲領域T2に設けられており、ここでの第2湾曲領域T2は、点対応箇所24から所定の角度範囲に亘って形成されている。
【0057】
第1湾曲領域T1と第2湾曲領域T2とは、周方向に沿って交互に形成されており、互いに隣り合う第1湾曲領域T1と第2湾曲領域T2との間に上述した通過箇所P2が設けられている。
【0058】
本実施形態では、互いに隣り合う第1湾曲領域T1と第2湾曲領域T2との間に、外側に膨らむ膨出領域T3が設けられており、この膨出領域T3に通過箇所P2が設けられている。
【0059】
このように構成された締付工具200によれば、ソケット100の辺対応箇所12と点対応箇所14とが、先端筒部10の外接円よりも径方向内側に位置しているので、機械的強度を必要とする通過箇所P1の厚み寸法を、通過箇所P1及び点対応箇所14よりも厚み寸法よりも大きくすることができる。これにより、先端筒部10の機械的強度を担保しつつも、軽量化を図れる。
【0060】
さらに、辺対応箇所22と点対応箇所24とが、基端筒部20の外接円よりも径方向内側に位置しているので、機械的強度を必要とする通過箇所P2の厚み寸法を、通過箇所P2及び点対応箇所24よりも厚み寸法よりも大きくすることができる。これにより、基端筒部20の機械的強度を担保しつつも、軽量化を図れる。
【0061】
また、辺対応箇所12、先端点対応箇所、辺対応箇所22、及び点対応箇所24が、それぞれ湾曲領域S1、S2、T1、T2に設けられているので、ソケット100をより軽量にすることができる。
【0062】
そのうえ、基端筒部20の内周面に肉抜き部30が設けられているので、さらなる軽量化を図れる。
【0063】
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではない。
【0064】
例えば、本発明に係るソケット100としては、図7に示すように、先端筒部10及び基端筒部20の間に介在し、例えば外周面の平面形状が円形状をなす中間筒部40を有していてもよい。
この場合、前記実施形態では、嵌合孔h1と差込角h2とを連通する連通孔h3が基端部筒部に設けられていたが、図8に示すように、連通孔h3が中間筒部40に設けられていても良い。
なお、中間筒部40としては、図9に示すように、先端筒部10や基端筒部20よりも軸方向に長いものであっても良い。また、この中間筒部40としては、図示していないが、外周面の一部を径方向内側に例えば湾曲させる等して凹ませても良い。
【0065】
さらに、連通孔h3は必ずしも必要ではなく、例えば図10及び図11に示すように、嵌合孔h1と差込角h2とが直接的に連通していても良い。
【0066】
また、前記実施形態では、先筒端部の辺対応箇所12や点対応箇所14が湾曲領域S1、S2に設けられていたが、図12に示すよう、辺対応箇所12及び点対応箇所14の一部又は全部が、先端筒部の外周面において中心軸に平行な平面領域F1、F2に設けられていても良い。
さらに、基端筒部の辺対応箇所22や点対応箇所24においても同様であり、それらの一部又は全部が、先端筒部の外周面において中心軸に平行な平面領域に設けられていても良い。
【0067】
そのうえ、前記実施形態では、辺対応箇所12や点対応箇所14の全てが外接円C1よりも径方向内側に設けられていたが、例えば辺対応箇所12や点対応箇所14を周方向において1つ置きに外接円C1よりも径方向内側に設けるなど、辺対応箇所12や点対応箇所14の一部のみが外接円C1よりも径方向内側に設けられていても良い。なお、辺対応箇所22や点対応箇所24と外接円C2との位置関係についても同様のことがいえる。
【0068】
加えて、前記実施形態では、嵌合孔h1や差込角h2の頂点部13、24がR形状をなし、締付対象Zと面接触するように構成されていたが、嵌合孔h1や差込角h2の一方又は両方の頂点部13、24は、角張った形状をなし、締付対象Zと線接触するように構成されていても良い。
【0069】
また、前記実施形態では、ソケット100を軽量化する態様を説明したが、軽量化の対象はソケット100に限らず、締付工具200を構成する例えばエクステンションバー、ユニバーサルジョイント、変換アダプタなど、少なくとも嵌合孔h1又は差込角h2の少なくとも一方が設けられた筒部であれば良い。
【0070】
さらに、前記実施形態の締付工具200は、ハンドルXとソケット100とが別体であったが、本発明に係る締付工具200は、ハンドルXとソケット100とが一体のものであっても良い。
【0071】
加えて、締付工具200としてはメガネレンチであっても良く、この場合、締付対象Zに嵌合する嵌合孔h1が先端部に形成されており、この先端部が請求項でいう筒部に相当する。
【0072】
ところで、これまでに述べた実施形態においては、ソケットの形状が周方向に沿って規則的な形状(より具体的には点対称形状)であり、作業時にソケットに加わる応力が複数箇所に分散される設計となっている。
このような形状の場合、ソケットが破断する程の大きな応力が加わると、どの箇所から破壊するかを予期することができなかったり、仮に複数箇所が破断する場合には、破片が周囲に飛散したりする懸念がある。
【0073】
そこで、安全に破断させるためには、ソケット100が、図13図15に示すように、周方向に沿って不規則な形状をなしていても良い。より具体的には、ソケット100としては、周方向における1箇所が、他の箇所よりも応力が集中する応力集中箇所SCとして形成されているものであっても良い。
【0074】
この応力集中箇所SCとしては、例えば、嵌合孔h1の1つの頂点部13と、これに対応する点対応箇所14との距離を、嵌合孔h1の他の頂点部13と、これらに対応する点対応箇所14との距離よりも短くすることにより形成することができる。
【0075】
より具体的に説明すると、図13に示す構成おいては、1つの第2湾曲領域S2を、他の第2湾曲領域S2よりも、より中心軸側に凹ませている。
これにより、その1つの第2湾曲領域に設定されている点対応箇所14と、対応する頂点部13との距離が、他の第2湾曲領域に設定されている点対応箇所14と、対応する頂点部13との距離よりも短くなる。
その結果、その1つの第2湾曲領域に設定されている点対応箇所14と、対応する頂点部13との間(図13における斜線箇所)が、応力集中箇所SCとして形成される。
【0076】
また、図14に示す構成においては、嵌合孔h1の中心O1と先端筒部10の外周面の中心O1’とを偏心させている。より具体的な実施態様としては、嵌合孔h1の中心O1と先端筒部10の外周面の中心O1’とが互いに重なり合っている状態から、嵌合孔h1の中心O1を、1つの点対応箇所14に近づけるように偏心させる態様を挙げることができる。
これにより、その1つの点対応箇所14と、対応する頂点部13との距離が、他の点対応箇所14と、対応する頂点部13との距離よりも短くなる。
その結果、その1つの点対応箇所14と、対応する頂点部13との間(図14における斜線箇所)が、応力集中箇所SCとして形成される。
【0077】
さらに、図15に示す構成においては、嵌合孔h1の1つの頂点部13を、他の頂点部13よりも窪ませている。
これにより、この1つの頂点部13と、対応する点対応箇所14との距離が、他の頂点部13と、対応する点対応箇所14との距離よりも短くなる。
その結果、その1つの頂点部13と、対応する点対応箇所との間(図15における斜線箇所)が、応力集中箇所SCとして形成される。
【0078】
また、応力集中箇所SCとしては、図示していないが、例えば先端筒部10の外周面における1つの第2湾曲領域に、溝やエッジなどを設けることにより形成されていても良い。
【0079】
なお、応力集中箇所SCは、必ずしも先端筒部10に設けられている必要はなく、基端筒部20に設けられていても良い。
さらに、応力集中箇所SCは、必ずしも1つの頂点部13と、これに対応する点対応箇所14との間に形成されている必要はなく、例えば1つの辺部11と、これに対応する辺対応箇所12との間に形成されていても良い。
【0080】
このように応力集中箇所SCを形成することで、ソケット100に大きな応力が加わったとしても、応力集中箇所SCから破断するので、破片が飛散することなどを防ぐことが可能となり、安全に破断させることができる。
【0081】
また、前記実施形態では、第1湾曲領域S1と第2湾曲領域S1とが重なり合う稜線や、第1湾曲領域T1と第2湾曲領域T2とが重なり合う稜線など、ソケット100の外周面に形成された種々の稜線が急峻であり、グリップ性に富むといった作用効果を奏し得る。
一方で、ソケット100の手触りをソフトにするためには、上述した稜線の一部又は全部にR加工を施しても良い。
【0082】
その他、本発明は前記各実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0083】
200・・・締付工具
100・・・ソケット
Z ・・・締付対象
X ・・・ハンドル
X1 ・・・角ドライブ
h1 ・・・嵌合孔
h2 ・・・差込角
h3 ・・・連通孔
10 ・・・先端筒部
11 ・・・辺部
12 ・・・辺対応箇所
13 ・・・頂点部
14 ・・・点対応箇所
C1 ・・・外接円
O1 ・・・中心
M1 ・・・中心
L1 ・・・第1仮想線
L2 ・・・第1仮想線
P1 ・・・通過箇所
S1 ・・・第1湾曲領域
S2 ・・・第2湾曲領域
20 ・・・基端筒部
21 ・・・辺部
22 ・・・辺対応箇所
23 ・・・頂点部
24 ・・・点対応箇所
C2 ・・・外接円
O2 ・・・中心
M2 ・・・中心
L3 ・・・第3仮想線
L4 ・・・第4仮想線
P2 ・・・通過箇所
T1 ・・・第1湾曲領域
T2 ・・・第2湾曲領域
T3 ・・・膨出領域
30 ・・・肉抜き部
SC ・・・応力集中箇所
図1
図2
図3
図4
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