(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096588
(43)【公開日】2022-06-29
(54)【発明の名称】ケーブルの端子圧着工具
(51)【国際特許分類】
H01R 43/042 20060101AFI20220622BHJP
【FI】
H01R43/042
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106261
(22)【出願日】2021-06-28
(62)【分割の表示】P 2020209674の分割
【原出願日】2020-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】517416112
【氏名又は名称】浦田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100134119
【弁理士】
【氏名又は名称】奥町 哲行
(72)【発明者】
【氏名】浦田 慎介
【テーマコード(参考)】
5E063
【Fターム(参考)】
5E063CA01
5E063CA07
5E063CB01
5E063CC04
5E063CD02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】特に太いケーブルの端子圧着のために、ダイスや芯棒の開閉作業の必要がなく、効率の良い圧着作業を行うことのできる圧着工具を提供する。
【解決手段】ケーブルの端子を圧着するための圧着工具本体部1と、ケーブルの端子を圧着する際に圧力を加えるピストン部2と、ピストン部における延出方向の先端に設けられたオスダイス3と、オスダイスと対向するように、端子の圧着の受けダイスとして延在するメスダイス4とを備え、本体部、メスダイスおよびオスダイスによって、ケーブルを挿入した際にケーブルが水平方向に解放できない閉塞された空間を有する圧着部を形成し、圧着部を含む水平面に対して、メスダイスに垂直方向に連続する溝部が設けられ、メスダイスとオスダイスとの空間の長手方向距離におけるメスダイスの空間の幅に対する比が1.1~1.4であり、端子の圧着前後にケーブルを垂直方向に挿入および抜去可能なように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルの端子を圧着するための圧着工具本体部と、
前記本体部の内部に設けられ、前記ケーブルの端子を圧着する際に前記本体部の先端から延出して圧力を加えるピストン部と、
前記ピストン部における延出方向の先端に設けられたオスダイスと、
前記本体部の先端二箇所で連結され、前記オスダイスと対向するように、前記端子の圧着の受けダイスとして延在するメスダイスと、を少なくとも備え、
前記本体部、前記メスダイスおよび前記オスダイスによって、前記ケーブルを挿入した際に該ケーブルが水平方向に解放できない閉塞された空間を有する圧着部を形成し、該圧着部を含む水平面に対して、前記メスダイスに垂直方向に連続する溝部が設けられ、前記メスダイスと前記オスダイスとの空間の長手方向距離における前記メスダイスの空間の幅に対する比が1.1~1.4であり、前記端子の圧着前後に前記ケーブルを垂直方向に挿入および抜去可能なように構成されていることを特徴とするケーブルの端子圧着工具。
【請求項2】
前記オスダイスが、前記ピストン部と一体型のものである、請求項1記載のケーブルの端子圧着工具。
【請求項3】
油圧ポンプと、該油圧ポンプに接続された油圧ホースと、該油圧ホースの先端に取り付けられた圧着ヘッドと、を備える油圧分離式圧着装置であって、
前記圧着ヘッドとして、請求項1又は2に記載のケーブルの端子圧着工具を用いたことを特徴とする油圧分離式圧着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的太いケーブルの端子圧着のために、ダイスや芯棒の開閉作業の必要がなく、効率の良い圧着作業を行うことのできるケーブルの端子圧着工具に関する。
【背景技術】
【0002】
電気工事において、ケーブルや電線(以下、総称して「ケーブル」と称す)の被覆を剥ぎ取り、銅撚線の部分に端子を圧着する(かみしめる)作業が多くある。ケーブルは細いものから太いものまでさまざまな種類があり、その太さ専用の圧着端子とその太さに適した圧着工具(圧着装置)を使用して圧着作業が行われている。
【0003】
ケーブルの太さは銅撚線部分の断面積で呼称されており、その太さ(ケーブルの規格によって決まっている断面積)に適合した圧着工具が使用される。
【0004】
例えば、1.25mm2、2~8mm2のケーブルまでは、通常ハンドプレス式の圧着工具で圧着する。14~60mm2のケーブルでは、充電油圧式圧着工具が多用されている。ここまでの太さのケーブルに使用されるこれらの工具は、端子の圧着後に緩め(ハンドプレスや油圧のピストンを戻す操作)を行えば端子を逃すことができる。その理由は、圧着部がコの字型(圧着部において端子を備えるケーブル断面に対して水平方向に開きがある)の圧着工具(以下、この形態を「開放型」と称す)であるためケーブルを逃すスペースを備えるからである。
【0005】
太いケーブルの端子圧着には相応の圧力が必要になるため、開放型の圧着工具では強度が不十分となる。そのため、100mm2以上のケーブルに対しては、圧着部が端子を備えるケーブル断面に対して水平方向に開きのない閉塞型の圧着工具(通常圧着用のピストンおよびダイスを備える圧着工具)が多く使用される。この閉塞型の工具では、14~200mm2のケーブルまでの圧着が可能である。14~100mm2のケーブルまでは、圧着部の開放作業なしに端子を逃すことができる。しかし、200mm2のケーブルの端子を圧着した後は、閉塞した圧着部先端(ピストンと対向する側)の受けダイス(以下、「メスダイス」と称す)を開く作業が必要となる。ただし、このような工具は技術の進歩もあり比較的軽量で(製品の一例としては4.0kg)、メスダイスの開放作業もそれほど苦にはならないため一般的に行われている。
【0006】
しかし、一般的な屋内配線として常用されている中で最も太い思われる325mm2のケーブルの端子圧着工具となると、重量が7.4kgや7.9kgの製品等が例として挙げられる。充電油圧式やAC100V一体型油圧式の圧着工具は、重量が重いため大量作業には不向きである。現在でも、多くの場合、油圧ポンプに接続した油圧ホースの先端に圧着用ピストン、メスダイスおよび芯棒を含む圧着部を備えた圧着ヘッドを付けた油圧分離式圧着工具が使用され、325mm2のケーブルの端子の圧着作業が行われている。
【0007】
この圧着工具の圧着ヘッドは、重量が4.5kgと比較的軽量であるが、端子の圧着後には芯棒を抜き、メスダイスを抜くことで、ようやくケーブルを逃すことができる。芯棒もメスダイスもそれなりの重量があり、落下させる恐れもある。芯棒またはメスダイスの何れかを落下させた場合には現用装置の通電部に激突し短絡事故が発生する恐れがあり、実際にそのような事例も報告されている。そもそも、圧着作業のたびに芯棒およびメスダイスの抜き差しの作業を行うのは非効率である。
【0008】
充電式、分離式の何れの圧着工具に関わらず、油圧式圧着工具は、圧力の力でピストンを押し出し、押し出されたピストン先端部に付けられたオスダイスで端子を圧着する。
【0009】
一般的な屋内配線のケーブルの太さの最大が325mm2であり、これを圧着できる工具は強度の問題から閉塞型である必要がある。太いケーブルの端子に対応する開放型の圧縮工具にするには、非常に頑強で重量とサイズが大きくなってしまうという問題があるからである。そして、従来までは、閉塞型の油圧式圧着工具において端子圧着後に圧着部の開閉やダイスの取り外し後に、ケーブルを逃すことが常となっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、比較的太いケーブルの端子圧着のために、ダイスや芯棒の開閉作業の必要がなく、効率の良い圧着作業を行うことのできる圧着工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、鋭意研究した結果、圧着部においてケーブルを前後にできる余裕をとるためにメスダイスとオスダイスとの間隔を長くするとともに、ケーブルを逃すための溝を設けた圧着工具が、前記目的を達成し得ることの知見を得た。
【0012】
本発明は、前記知見に基づきなされたもので、下記の発明を提供するものである。
1.ケーブルの端子を圧着するための圧着工具本体部と、
前記本体部の内部に設けられ、前記ケーブルの端子を圧着する際に前記本体部の先端から延出して圧力を加えるピストン部と、
前記ピストン部における延出方向の先端に設けられたオスダイスと、
前記本体部の先端二箇所で連結され、前記オスダイスと対向するように、前記端子の圧着の受けダイスとして延在するメスダイスと、を少なくとも備え、
前記本体部、前記メスダイスおよび前記オスダイスによって、前記ケーブルを挿入した際に該ケーブルが水平方向に解放できない閉塞された空間を有する圧着部を形成し、該圧着部を含む水平面に対して、前記メスダイスに垂直方向に連続する溝部が設けられ、前記メスダイスと前記オスダイスとの空間の長手方向距離における前記メスダイスの空間の幅に対する比が1.1~1.4であり、前記端子の圧着前後に前記ケーブルを垂直方向に挿入および抜去可能なように構成されていることを特徴とするケーブルの端子圧着工具。
【0013】
2.前記オスダイスが、前記ピストン部と一体型のものである、前記1記載のケーブルの端子圧着工具。
【0014】
3.油圧ポンプと、該油圧ポンプに接続された油圧ホースと、該油圧ホースの先端に取り付けられた圧着ヘッドと、を備える油圧分離式圧着装置であって、
前記圧着ヘッドとして、前記1又は2に記載のケーブルの端子圧着工具を用いたことを特徴とする油圧分離式圧着装置。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る圧着工具としての圧着ヘッドの全体構造を示す概略図であり、
図1(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は背面図、(d)は平面図である。
【
図2】
図1の圧着ヘッドを適用するケーブルの圧着端子の一例を示す概略外形図である。
図2(a)、(b)および(c)は、それぞれ圧着前の端子の形態を示す正面図、左側面図およびその平面図であり、
図2(d)、(e)および(f)は、それぞれ圧着後の端子の形態を示す正面図、左側面図およびその平面図である。
【
図3】
図1の圧着ヘッドに用いられるメスダイスを示す概略図である。
図3(a)、(b)、(c)および(d)は、それぞれメスダイスを示す正面図、右側面図、背面図および平面図である。
【
図4】
図1の圧着ヘッドにおいて
図3のメスダイスとともにロックピンが使用されることを示す概略説明図である。
【
図5】
図1の圧着ヘッドに用いられるオスダイスを示す概略図である。
図5(a)、(b)、(c)および(d)は、それぞれオスダイスを示す正面図、背面図、右側面図および平面図である。
【
図6】
図1の圧着ヘッド本体部を示す概略説明図である。
図6(a)、(b)、(c)、および(d)は、それぞれ本体部の正面図、右側面図、背面図、および平面図である。
図6(e)および(f)は、それぞれ本体部のより好適な実施形態を示す正面図および右側面図の一部(正面:圧着部側)である。
【
図7】
図1に示す実施形態の圧着工具によるケーブルの端子圧着作業フローを示す概略説明図である。
図7(1)~(5)は、各工程における本実施形態の圧着工具における圧着部を示す概略平面図である。
【
図8】従来の圧着工具の一例を示す概略説明図である。
図8(a)、(b)、(c)、および(d)は、それぞれ端子挿入前の本体にメスダイス、芯棒およびオスダイスが挿入設置された圧着ヘッドを示す正面図、右側面図、背面図および平面図であり、
図8(e)は、芯棒の正面・右側面を示す概略図であり、
図8(f)は、メスダイスの正面・平面・背面を示す概略図であり、
図8(g)は、オスダイスの正面・背面・右側面・平面を示す概略図である。
【
図9】従来の圧着工具によるケーブルの端子圧着作業フローを示す概略説明図である。
図9(1)~(9)は、各工程における従来の圧着工具における圧着部を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について、その好ましい実施形態に基づき、図面を用いて詳細に説明する。
【0017】
太さが325mm2のような比較的太いケーブルの端子に対しては、例えば、油圧ポンプと、該油圧ポンプに接続された油圧ホースと、該油圧ホースの先端に取り付けられた圧着ヘッドと、を備える油圧分離式圧着装置が使用されている。
【0018】
本発明の一実施形態に係るケーブルの端子圧着工具は、このような油圧分離式圧着装置等に使用される圧着ヘッド10である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係る圧着ヘッド10は、次の(1)~(4)の部材を少なくとも備えるものである。
(1)ケーブルの端子(
図2参照)を圧着するための圧着ヘッド本体部1
(2)圧着ヘッド本体部1の内部に設けられ、ケーブルの端子を圧着する際に本体部1の先端tから延出して圧力を加えるピストン部2
(3)ピストン部2における延出方向の先端に設けられたオスダイス3
(4)本体部1の先端二箇所でロックピンLによって連結され、オスダイス3と対向するように、ケーブルの端子の圧着の受けダイスとして延在するメスダイス4
【0020】
そして、本体部1、メスダイス4およびオスダイス3によって、ケーブルを挿入した際にそのケーブルが水平方向に解放できない閉塞された空間を有する圧着部が形成されている。圧着の際に、ケーブルの端子を垂直方向に下側から上側へ圧着部の当該空間に挿入し(圧着前)、圧着後にはケーブルの端子を当該空間から垂直方向に下側へ引き抜く。このケーブルの引抜の工程では、実際にはケーブルを引き抜くというより、圧着工具本体をケーブルより引き抜く場合がほとんどである(後述する圧着作業フローにおける
図7の(5)ケーブル引抜の図における圧着工具の動きを示す矢印参照)。また、引き抜く方向はケーブルの入線方向により上下左右(特に上下)など様々である。
【0021】
メスダイス4には、前記圧着部を含む水平面に対して、垂直方向に連続する溝部gが設けられている。この溝部gは、
図1(d)に示すように、平面視でメスダイス4の左右対称に2箇所有する。この溝部gが存することにより、圧着前後のケーブルの端子の挿入・抜去を可能にする。このため、溝部gの形態は、特に制限されるものではないが、メスダイス4の幅と合わせて、少なくともケーブルの端子の形態の幅の大きさよりも大きな形状のものが設けられる。
【0022】
また、メスダイス4とオスダイス3との空間の長手方向距離におけるメスダイス4の空間の幅に対する比は、1.1~1.4の範囲に設定されている。さらに、ケーブルの圧着端子の挿入・抜去のし易さからの作業効率の向上の点から、当該比が1.2~1.3の範囲内にあることが好ましい。
ここで、メスダイス4とオスダイス3との空間の長手方向距離(d)におけるメスダイス4の空間の幅(w)に対する比とは、
図3(d)に示されるd/wのことを意味する。
【0023】
本実施形態に係る圧着ヘッド10は、前記の構成からなるため、ケーブルの端子の圧着前後に、これを垂直方向に挿入および抜去可能となる。そのため、比較的太いケーブルの端子圧着のために、ダイスや芯棒の開閉作業の必要がなく、効率の良い圧着作業を行うことができる。
【0024】
ここで、圧着ヘッド10によるケーブルの端子の圧着は、ピストン部2の動作によりオスダイス3とともに端子を油圧ポンプ等の圧力で押圧することにより行われる。
その際の圧着端子の外形は、
図2に示すように、圧着ヘッド10による圧着により変化する。すなわち、圧着前の端子の外形(
図2(a)~(c))から、圧着後の端子の外形(
図2(d)~(f))となる。圧着前の端子の外形は、製造メーカーにより若干の誤差があるが、被圧着部が略円柱状(
図2(c)参照)である。これに対して、圧着後の端子の外形は、使用工具や作業者により誤差があるが、被圧着部がやや凹部を有する平坦な面ができ(
図2(d)の二重四角破線部)、緩やかな角を備えた略角柱状(
図2(f)参照)に変化する。なお、圧着時には、本体部1の正面中央部からピストン部2が所定の長さに押し出されて、オスダイス3とメスダイス4とにより端子が挟まれた状態にある。
【0025】
メスダイス4は、
図3(d)に示すように、オスダイス3が間に介在するように、本体部1の先端tの左右両端の二箇所に接続されている。この接続には、メスダイス4が本体部1から外れないようにピンが用いられる。
【0026】
本実施形態では、
図4に示すように、特に本体部1より脱落しないように、メスダイス4との接合部分に、脱落防止用の係合可能な構造を備えたロックピンL(
図4参照)が使用されている。
【0027】
メスダイス4は、本外部1からの末端部(オスダイス3と対向する最も遠い部分:凹状の受け部底点の平面視したときの幅)の厚みが可能な範囲で極力薄くされていることが好ましい。メスダイス4の寸法は、特に制限されないが、325mm2の圧着端子専用のメスダイスとして、JIS規格適合寸法であること、また圧着後の325mm2の圧着端子を開閉操作なしでメスダイス4より引抜を可能とする寸法であることが要求される。
【0028】
オスダイス3は、
図5に示すように、本実施形態ではピストン部2の先端に取り付けられるものが用いられるが、本体部1より脱落がないようにピストン部との一体型のものも用いることができる。
【0029】
オスダイス3は、150~325mm2の圧着端子兼用のものが用いられることが多いが、これに限られずメーカーにより様々のものを用いてもよい。オスダイス3の寸法も、特に制限されないが、325mm2、250mm2の圧着端子兼用のオスダイスとして、JIS規格適合寸法であることが望ましい。ただし、必ずしもJIS規格適合品のものを使わなければならないわけではない。
【0030】
本実施形態に係る圧着ヘッド10の本体部1としては、
図6に示すものが用いられる。圧着ヘッド本体部1は、既述の通り、ケーブルの端子を圧力により押し出して圧着するためのオスダイス3がピストン部2の先端に備えられている。
図6(a)に示されるように、落下防止のため、オスダイス3は、通常正面視で圧着ヘッド本体部1の中央部に設けられるピストン部2と一体型のものが望ましい。
【0031】
ただし、本実施形態の圧着ヘッド10を他の油圧分離式のアタッチメント(250mm2以下の端子圧着やケーブルカッターやパンチャー等)と互換性を持たせられる場合は、ピストン部に対して脱着式のオスダイスを用いることもできる。
【0032】
圧着ヘッド10の本体部1の周辺には、その他、図示しないが、リモコン付グリップが取り付けられており、その取付け位置は重量バランスを考慮した適切なところに設けられる。また、本体部1の全長を抑える点から、カプラーが下方に設けられている。また、本実施形態に係る圧着ヘッド10には、必要に応じて、絶縁カバーを取り付けることもできる。
【0033】
なお、本発明に係るメスダイス4の溝部gを備える構造は、主に太いケーブルの圧着に利用されることが効果的であるが、形状としては比較的細いケーブル(60mmsq以下) の圧着工具、圧着装置にも適用が可能である。
【0034】
次に、本実施形態の圧着ヘッド10を用いてケーブルの端子を圧着する場合の圧着作業フローについて示す。
図7に示すように、圧着ヘッド10では、ケーブルの端子挿入からケーブルの引抜までに、5つの工程(
図7の(1)~(5))によって圧着作業を行うことができる。すなわち、(1)端子挿入、(2)仮押さえ、(3)圧着、(4)減圧、および(5)ケーブル引抜の工程である。(5)ケーブル引抜の工程では、図の矢印の方向に、圧着ヘッド10におけるメスダイス4等の圧着部をずらしながら移動させることでケーブルの引抜を容易に行うことができる。
【0035】
圧着ヘッド10による上記工程の作業フローによれば、以下の効果がある。
すなわち、圧着後にダイス等の開閉操作なしで端子から引き抜ける。
ダイス等の分離がないため落下による短絡事故等の危険性がない。
本体に付属のグリップを備えた場合、リモコン操作が可能である。
状況によりダイスを外しての端子引抜も可能である。
本体の厚みが従来の圧着工具よりも薄い形態では、狭隘箇所での圧着が容易となる。
油圧分離式圧着装置の油圧ホースが下向きで全長が短い形態では、狭隘箇所での圧着が容易になる。
【0036】
本発明に係る圧着工具の効果をより明瞭に示すべく、参考までに、従来の圧着工具について示す。
図8に示すように、従来の圧着工具20は、本体部21と、ピストンに取り付けられたオスダイス22と、本体部21先端の圧着部に挿入される着脱可能なメスダイス23と、本体21先端の圧着部においてメスダイス23を固定させる芯棒24と、を備えている。
【0037】
従来の圧着工具20は、本発明とは異なり、メスダイス23に溝部が存在せず、メスダイス23の凹状の受け部底点とオスダイス22との距離が短く、またメスダイス23および芯棒24の抜去が可能な開閉式の形態となっている。なお、
図8に記載の形状等は本出願人の実測・確認によるおよそのものであり、通常絶縁カバー(図示せず)が設けられる。
【0038】
また、参考までに、従来の圧着工具を用いてケーブルの端子を圧着する場合の圧着作業フローについて示す。
【0039】
図9に示すように、従来の圧着工具では、ケーブルの端子挿入から圧着、次回の圧着のためのダイス等の復旧までに、9つの工程(
図9の(1)~(9))が必要である。すなわち、(1)端子挿入、(2)仮押さえ、(3)圧着、(4)減圧、(5)芯棒抜去、(6)メスダイス抜去、(7)ケーブル引抜、(8)メスダイス挿入、および(9)芯棒挿入の工程が必要となる。
【0040】
このような従来の圧着工具による作業フローでは、以下のようなことが生じていた。
圧着後のメスダイス・芯棒抜去が面倒であることや、それらを落下させる危険がある。過去にダイス等の落下による短絡事故が発生している。圧着ヘッド本体とリモコンが別のため、ダイス等の抜去もあいまって一人作業が困難である。狭隘箇所での芯棒引抜が困難な場合が多々ある。本体の厚みがあり、狭隘箇所での圧着が困難な場合が多々ある。油圧分離式圧着工具の場合、油圧ホースが邪魔で狭隘箇所での圧着が困難な場合が多々ある。
【0041】
本発明の圧着工具では、前記の通り、従来の圧着工具に比して、作業フローの工程数が少なく、従来の圧着工具の作業フローによる問題点もなく、優れた効果を有している。
【0042】
本発明によれば、前述した実施形態に係る圧着ヘッド10を、油圧ポンプと、該油圧ポンプに接続された油圧ホースと、該油圧ホースの先端に取り付けられた圧着ヘッドとを備える油圧分離式圧着装置における当該圧着ヘッドとして用いることで、優れた効果を有する油圧分離式圧着装置を提供することができる。
【0043】
以上詳述した通り、本実施形態の圧着ヘッド10について説明したが、本発明においては、このような油圧分離式圧着工具に限られず、充電式、一体型等他の実施形態にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、比較的太いケーブルの端子圧着のために、ダイスや芯棒の開閉作業の必要がなく、効率の良い圧着作業を行うことのできるケーブルの端子圧着工具として、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0045】
10:圧着ヘッド(一実施形態のケーブルの端子圧着工具)
1:本体部(圧着ヘッド本体部)
t:本体部先端
2:ピストン部
3:オスダイス
4:メスダイス
g:溝部
L:ロックピン
20:従来例(既存品)の圧着工具
21:本体部
22:オスダイス
23:メスダイス
24:芯棒