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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096607
(43)【公開日】2022-06-29
(54)【発明の名称】時計ムーブメント用のトゥールビヨン
(51)【国際特許分類】
   G04B 17/28 20060101AFI20220622BHJP
【FI】
G04B17/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021180988
(22)【出願日】2021-11-05
(31)【優先権主張番号】01611/20
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(71)【出願人】
【識別番号】521486103
【氏名又は名称】マニュファクテュール ドゥ オルロジュリー オーデマ ピゲ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グザヴィエ ギヨーム
(57)【要約】
【課題】時計ムーブメント用のトゥールビヨンを提供すること。
【解決手段】本発明は、時計ムーブメントに回転可能に取り付けられることを意図したケージを含む上記時計ムーブメント用のトゥールビヨン1に関し、上記ケージは、テンプ軸の周りのテンプベアリングに枢動可能に取り付けられたテンプピボットを含むテンプ8を含む調整機構と、アンカー軸の周りのアンカーベアリングに枢動可能に取り付けられ、一方では、上記調整機構と協働し、他方では、脱進機軸の周りの脱進機ベアリングに枢動可能に取り付けられた脱進機ピボットを含む脱進機車20と協働するように配置されたアンカーピボットを含むアンカー18とを支える。アンカー18及び脱進機車20は、テンプ8に対してアンカー軸とテンプ軸との間の距離、及び脱進機軸とテンプ軸との間の距離がテンプ8の外径よりも大きくなるように配置される。本発明はまた、そのようなトゥールビヨン1を含むムーブメント、及びそのようなムーブメントを含む時計に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計ムーブメント用のトゥールビヨン(1)であって、前記時計ムーブメントに回転可能に取り付けることを意図したケージを備え、前記ケージは、テンプ軸(A)の周りのテンプベアリング(14、15)に枢動可能に取り付けられたテンプピボット(12)を含むテンプ(8)を含む調整機構と、アンカー軸(B)の周りのアンカーベアリング(25、26)に枢動可能に取り付けられ、一方では、前記調整機構と協働し、他方では、脱進機軸(C)の周りの脱進機ベアリング(29、30)に枢動可能に取り付けられた脱進機ピボット(28)を含む脱進機車(20)と協働するように配置されたアンカーピボット(24)を含むアンカー(18)とを支える、トゥールビヨンにおいて、前記アンカー(18)及び前記脱進機車(20)は、前記テンプ(8)に対して、前記アンカー軸(B)と前記テンプ軸(A)との間の距離(d1)、及び前記脱進機軸(C)と前記テンプ軸(A)との間の距離(d2)が前記テンプ(8)の外径(R)よりも大きくなるように配置されていることを特徴とする、トゥールビヨン。
【請求項2】
前記アンカーピボット(24)及び前記脱進機ピボット(28)は、前記アンカーピボット(24)及び前記脱進機ピボット(28)の厚さ方向に沿って、少なくとも部分的に前記テンプ(8)と同じレベルに配置されており、前記アンカーベアリング(25、26)及び前記脱進機ベアリング(29、30)は、前記テンプベアリング(14、15)によって規定された2つの平行な平面(P、P’)の間に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のトゥールビヨン。
【請求項3】
前記ケージは、前記テンプベアリング(14、15)を支える下部ブリッジ(2)と上部ブリッジ(4)とを含み、前記トゥールビヨンは、前記下部ブリッジ(2)と一体の脱進機ブリッジ(42)をも備え、前記脱進機ブリッジ(42)は、前記アンカーベアリング(25、26)の1つと前記脱進機ベアリング(29、30)の1つとを支えるように配置されており、前記アンカーベアリング(25、26)のもう1つ及び前記脱進機ベアリング(29、30)のもう1つは、前記下部ブリッジ(2)によって支えられていることを特徴とする、請求項1及び2のいずれか一項に記載のトゥールビヨン。
【請求項4】
前記アンカー(18)及び前記脱進機車(20)は、前記アンカー軸(B)と前記テンプ軸(A)との間の前記距離(d1)が、前記脱進機軸(C)と前記テンプ軸(A)との間の前記距離(d2)に等しくなるように配置されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載のトゥールビヨン。
【請求項5】
前記テンプピボット(12)、前記アンカーピボット(24)及び前記脱進機ピボット(28)は、実質的に同じ厚さであり、前記テンプピボット(12)、前記アンカーピボット(24)、及び前記脱進機ピボット(28)の厚さ方向に沿って、実質的に同じレベルに配置されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載のトゥールビヨン。
【請求項6】
前記アンカー(18)は、ガードピンを含まず、一方では、前記脱進機車(20)と交互に協働することを意図した入口パレット(27a)及び出口パレット(27b)を含み、他方では、前記テンプ(8)と一体のピン(48)と協働することを意図し、フォーク入口を規定する第1及び第2のホーン(52、54)を含み、それ自体がローラー(50)と一体であるフォークを含み、前記ローラー(50)は、前記ローラー(50)の厚さ方向に沿って、前記ピン(48)と少なくとも部分的に同じレベルに配置され、前記ローラー(50)は、ノッチ(56)が前記ピン(48)に隣接する領域に設けられている、ほぼ円筒形のアンチオーバーバンキング壁を有し、前記アンカー(18)、前記ローラー(50)、及び前記ピン(48)は、使用位置において、前記アンチオーバーバンキング壁が、前記第1及び第2のホーン(52、54)用のストッパを規定し得るように成形及び寸法決定され、前記アンカー(18)、前記ローラー(50)及び前記ピン(48)は、前記使用位置において、前記ピン(48)が少なくとも部分的に前記フォーク入口に位置する場合にのみ、前記第1及び第2のホーン(52、54)のそれぞれが前記ノッチ(56)の内部に貫通できるようにさらに成形及び寸法決定されていることを特徴とする、請求項1から5までいずれか一項に記載のトゥールビヨン。
【請求項7】
前記フォークの前記第1及び第2のホーン(52、54)のそれぞれは、前記フォークの入口を規定する内壁と、ノッキング状況において、問題の前記ホーン(52、54)の外壁上の前記ピン(48)の接触点と、前記内壁に最も近い前記外壁の端部との間の距離が、前記ピン(48)と、前記アンチオーバーバンキング壁と問題の前記ホーン(52、54)に最も近い前記ノッチ(56)との間の接合部のそれとの間の距離よりも大きいように成形及び寸法決定された外壁とを有することを特徴とする、請求項6に記載のトゥールビヨン。
【請求項8】
前記アンカー(18)は、前記入口(27a)及び出口(27b)パレットを前記フォークに接続し、前記使用位置において、2つの極端な位置の間で旋回することができ、前記アンカー(18)の最大移動角度を規定するレバー(18a)を含み、前記第1及び第2のホーン(52、54)のそれぞれの前記外壁は、前記内壁に最も近いその端部から始まり、安全面を規定する第1の部分を有し、前記レバー(18a)に対して、前記安全面が、前記アンチオーバーバンキング壁に面して配置されたときに、前記アンチオーバーバンキング壁に対して実質的に接線方向であり、その後、前記レバー(18a)に対して0から45°程度の角度を有し、ノッキング状況において、少なくとも前記外壁上の前記ピン(48)の接触点まで延在する第2の部分が続くような平均角度を有することを特徴とする、請求項6から7までのいずれか一項に記載のトゥールビヨン。
【請求項9】
前記アンカー(18)及び前記脱進機車(20)は、使用位置において、前記アンカー軸(B)と前記テンプ軸(A)との間の前記距離(d1)が前記アンカー軸(B)と前記脱進機軸(C)との間の距離の少なくとも2倍に等しくなるように配置されることを意図されていることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一項に記載のトゥールビヨン。
【請求項10】
前記ケージの前記下部ブリッジ(2)が、前記ケージを回転して駆動するように配置された外部周辺歯(32)を備えることを特徴とする、請求項3から9までのいずれか一項に記載のトゥールビヨン。
【請求項11】
前記脱進機車(20)が脱進機ピニオン(22)と一体であり、前記脱進機ピニオン(22)が前記脱進機車(20)の上に位置し、脱進機ブリッジ(42)に面していることを特徴とする、請求項3から10までのいずれか一項に記載のトゥールビヨン。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか一項に記載のトゥールビヨンを含む時計ムーブメント。
【請求項13】
前記トゥールビヨンが、前記脱進機車(20)と一体の脱進機ピニオン(22)を備えた、請求項12に記載のムーブメントであって、固定秒車(44)を備え、前記脱進機ピニオン(22)、及び前記固定秒車(44)が、前記テンプ(8)と実質的に同じレベルに配置されていること特徴とする、ムーブメント。
【請求項14】
請求項12から13までのいずれか一項に記載のムーブメントを含む時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計ムーブメントに回転可能に取り付けられることを意図したケージを含む上記時計ムーブメント用のトゥールビヨンに関し、上記ケージは、テンプ軸の周りのテンプベアリングに枢動可能に取り付けられたテンプピボットを含むテンプを含む調整機構と、アンカー軸の周りのアンカーベアリングに枢動可能に取り付けられ、一方では、上記調整機構と協働し、他方では、脱進機軸の周りの脱進機ベアリングに枢動可能に取り付けられた脱進機ピボットを含む脱進機車と協働するように配置されたアンカーピボットを含むアンカーとを支える。
【0002】
本発明はまた、そのようなトゥールビヨンを含む時計ムーブメント、及びそのようなムーブメントを含む時計に関する。
【背景技術】
【0003】
このようなトゥールビヨンは、時計で広く使用されている機構であり、調整機構に任意の垂直位置をとらせるため、地球の引力による速度の変化が互いに打ち消し合うことを可能にする。これにより、時計の精度を向上させることができる。
【0004】
伝統的なトゥールビヨンの一例は、Federation des Ecoles Techniques(スイス)、ISBN 2-940025-10-Xによって発行された、C-A.Reymondinらの著書「Theorie d’horlogerie」(時計製造の理論)の167ページに記載されている。
【0005】
トゥールビヨンは秒車とピニオンのように機能する。つまり、トゥールビヨンは、ケージの下に固定された中央のピニオンを介して三番車と噛み合う。ケージ内では、調整機構の振動運動は、同様にケージに取り付けられた脱進機車によって維持され、脱進機車ピニオンは、ケージの下にある固定秒車の外部周辺歯と噛み合い、ムーブメントフレームと一体になっている。
【0006】
伝統的に、アンカーと脱進機車のピボット配置は、その振動運動を妨げないように、テンプの下に配置されている。この目的のために、アンカーと脱進機車は、ケージの下部ブリッジとテンプの下に延在する下部ブリッジと一体のブリッジとにそれぞれ配置されたベアリングに枢動可能に取り付けられている。ただし、結果として、標準のトゥールビヨンは、テンプとアンカー及び脱進機車によってそれぞれ占有される2つのレベル又は層のために、特定の厚さになる。
【0007】
したがって、そのようなトゥールビヨンを含む時計は、それを収容するのに十分な厚さでなければならず、これは、標準のトゥールビヨンが超薄型時計と容易に互換性がないことを意味する。
【0008】
超薄型時計と互換性のあるトゥールビヨンを使用するために、さまざまな解決策が提案されている。1つの解決策は、テンプ、アンカー、及び脱進機車の安全機能を減らすことである。しかし、これは調整機構の有効性を損なう。別の解決策は、例えば上部ケージなどの特定の部分を省略することを含む。ただし、この場合、テンプの自由の欠如によって引き起こされる混乱は無視できない。
【0009】
本発明は、標準的なトゥールビヨンと比較して厚みが薄く、超薄型ムーブメントでの使用と互換性があり、上記調整機構の安全機能を損なうことなくトゥールビヨンケージ内の調整機構の従来の配置を維持するトゥールビヨンを提案することによって、これらの欠点を改善することを目的とする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Federation des Ecoles Techniques(スイス)、ISBN 2-940025-10-X発行、C-A.Reymondinら著、「Theorie d’horlogerie」(時計製造の理論)、167ページ
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的のため、本発明は、時計ムーブメントに回転可能に取り付けられることを意図したケージを含む時計ムーブメント用のトゥールビヨンに関し、上記ケージは、テンプ軸の周りのテンプベアリングに枢動可能に取り付けられたテンプピボットを含むテンプを含む調整機構と、アンカー軸の周りのアンカーベアリングに枢動可能に取り付けられ、一方では、上記調整機構と協働し、他方では、脱進機軸の周りの脱進機ベアリングに枢動可能に取り付けられた脱進機ピボットを含む脱進機車と協働するように配置されたアンカーピボットを含むアンカーとを支える。
【0012】
本発明によれば、アンカー及び脱進機車は、アンカー軸と脱進機軸との間の距離、及び脱進機軸とテンプ軸との間の距離が、テンプの外径よりも大きくなるように、テンプに対して配置される。
【0013】
したがって、アンカーと脱進機車のピボット配置は、テンプの直径を超えて延在するように配置され得る。
【0014】
特に有利なことに、アンカーピボット及び脱進機ピボットは、上記アンカーピボット及び脱進機ピボットの厚さ方向に沿って、テンプと同じレベルに少なくとも部分的に配置され、アンカーベアリング及び脱進機ベアリングは、テンプベアリングによって規定される2つの平行な平面の間に配置される。
【0015】
したがって、アンカーと脱進機車のピボット配置は、上記のテンプの配置を変更する必要なしにトゥールビヨンの厚さを低減できるように、テンプの外側、実質的にテンプと同じレベルに配置することができる。
【0016】
本発明はまた、上で規定されたトゥールビヨンを含むムーブメント、及びそのようなムーブメントを含む時計に関する。本発明によるこのムーブメント及びこの時計は、それらが超薄型であり得るという利点を有する。
【0017】
本発明の他の特徴及び利点は、非限定的な例として提供され、以下の添付の図面を参照して作成された、本発明の実施例の以下の詳細な説明を読むことから明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明によるトゥールビヨンの平面図である。
図2】ノッキング位置にあるアンカーと脱進機車とを支える下部ブリッジの平面図を示す。
図3図1の断面図である。
図4】トゥールビヨン及び固定秒車の平面図である。
図5図4の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図を参照すると、本発明は、時計ムーブメントのフレーム要素(図示せず)上の軸Aの周りに回転可能に取り付けられることを意図され、平行で互いに柱6によって結合された下部ブリッジ2及び上部ブリッジ4を含む、時計ムーブメント用のトゥールビヨン1に関する。
【0020】
従来のように、ケージは、テンプ8とテンプばね10とを含む調整機構を備えている。テンプ8は、下部2及び上部4ブリッジによってそれぞれ支持される耐衝撃ベアリングなどのテンプベアリング14、15においてテンプ軸Aの周りに枢動可能に取り付けられたテンプピボット12と一体の円形フェロー8aを備えている。テンプ8はケージの内側にあり、テンプ軸Aはケージの回転軸に対応している。フェロー8aは、テンプ8の外径Rで示される最大半径を有する。テンプばね10は、テンプ8の上に配置されている。テンプばね10の一端は、テンプピボット12と一体であり、他端は、上部ブリッジ4に取り付けられたスタッドホルダー16と一体である。
【0021】
ケージはまた、アンカー18と、脱進機車20及び上記脱進機車20と一体の脱進機ピニオン22(図5を参照)とを含む脱進機車及びピニオンを支持する。
【0022】
特に図3を参照すると、アンカー18は、アンカー軸Bの周りに、石などのアンカーベアリング25、26に枢動可能に取り付けられたアンカーピボット24を備えている。アンカー18は、一方では上記調整機構と、他方ではその2つのパレット27a、27bによって脱進機車20と協働するように配置されている。アンカー18については、以下で詳細に説明する。
【0023】
特に図5を参照すると、脱進機車20は、脱進機軸Cの周りに、石などの脱進機ベアリング29、30に枢動可能に取り付けられた脱進機ピボット28を備えている。上記脱進機ピボット28はまた、脱進機ピニオン22を備えている。
【0024】
ここに示す例では、ケージは、下部ブリッジ2を形成する円形クラウンの周りに設けられた外部周辺歯32を介して、ムーブメントの歯車列によって回転して駆動される。ケージは、ここに示されているトゥールビヨンがフライングトゥールビヨン型であるように、ボールベアリング34を介して時計ムーブメントのフレーム要素と組み立てられることを意図している。図5を参照すると、ボールベアリング34は、下部ブリッジ2とハブ36との間の回転取り付けを提供するピン38によってケージと一体のハブ36と、時計ムーブメントのフレーム要素と一体にすることを意図した外輪40とを備えている。そのようなボールベアリングは当業者に知られており、詳細な説明を必要としない。
【0025】
本発明によれば、アンカー18及び脱進機車20は、テンプ8に対して、アンカー軸Bと脱進機軸Aとの間の距離d1(図3を参照)及び脱進機軸Cとテンプ軸Aとの間の距離d2(図5を参照)がテンプ8の外径Rよりも大きくなるように配置されている。
【0026】
特に好ましくは、アンカーピボット24及び脱進機ピボット28は、少なくとも部分的に、好ましくは全体的に、上記アンカーピボット24及び脱進機ピボット28の厚さ方向に沿って、テンプ8と同じレベルに配置されており、アンカーベアリング25、26及び脱進機ベアリング29、30は、それぞれテンプベアリング14、15の底部によって規定される2つの平行な平面P、P’の間に配置されている。
【0027】
好ましくは、テンプピボット12、アンカーピボット24及び脱進機ピボット28は、実質的に同一の厚さであり、上記ピボット12、24、28の厚さ方向に沿って、実質的に同じレベルに配置される。
【0028】
この目的のために、トゥールビヨン1はまた、テンプ8の外側に延在し、下部ブリッジ2と一体の脱進機ブリッジ42を備えている。脱進機ブリッジ42は、アンカーベアリングの1つ、すなわち上部アンカーベアリング26を支持するように配置されており、脱進機ベアリングの1つ、すなわち上部脱進機ベアリング30、他方のアンカーベアリング、すなわち下部アンカーベアリング25、及び他方の脱進機ベアリング、すなわち下部脱進機ベアリング29は、下部ブリッジ2を形成する円形クラウンによって支持されている。下部ブリッジ2を形成する円形クラウンの直径は、アンカーピボット24及び脱進機ピボット28が上記テンプ8の直径の外側に配置され得るように、下部ブリッジがテンプ8の外側に十分に延在するように選択される。
【0029】
もちろん、下部ブリッジと上部ブリッジの構成、及びトゥールビヨンに望ましい厚さに応じて、他の実施例も提供され得る。例えば、上部ブリッジがプレートの形をとる場合、上部アンカー及び脱進機ベアリングを上部ブリッジに取り付けることができ、下部アンカー及び脱進機ベアリングは、下部ブリッジ、又は上部ブリッジと一体の脱進機ブリッジのいずれかに、アンカーが調整機構と協働できるように必要な高さで取り付けられる。下部及び上部ブリッジと一体の、アンカー及び脱進機車用の特定のブリッジを提供することも可能であり、重要なことは、ケージによって支えられたアンカー及び脱進機ブリッジが、アンカーピボット24及び脱進機ピボット28がテンプ8の直径を超えて突出し、アンカー18が調整機構と協働することができるように必要な高さになるように、テンプ8の外側に延在することである。
【0030】
脱進機ブリッジ42は、脱進機軸Bと脱進機軸Aとの間の距離d1が脱進機軸Cと脱進機軸Aとの間の距離d2に等しくなるようにアンカー18及び脱進機車20が配置されるように、好ましくは、軸Aと同軸の円弧の形状を有する。
【0031】
有利なことに、標準的なトゥールビヨン設計とは異なり、脱進機ピニオン22は、脱進機車20の上の脱進機ピボット28の周りに脱進機ブリッジ42に面して配置されている。図4及び図5を参照すると、テンプ又はトゥールビヨンの軸Aを中心とし、ムーブメントフレームの要素と一体であり、脱進機ピニオン22と協働するように配置された固定秒車44が提供される。標準的なトゥールビヨンの設計とは異なり、固定秒車44は、ケージの直径よりも直径が大きく、特に下部ブリッジ2の直径よりも大きく、固定秒車44がトゥールビヨン1を取り囲むようになっている。固定秒車44はさらに、脱進機ピニオン22と噛み合うように配置された内部周辺歯46を有する。その結果、脱進機ピニオン22は、テンプ8と実質的に同じレベルに配置され、固定秒車44もまた、標準的なトゥールビヨンのケージの下に配置される代わりに、テンプ8と実質的に同じレベルに配置される。これにより、アセンブリの寸法をさらに小さくすることができる。
【0032】
新しい脱進機配置(脱進機軸/アンカー軸距離及びアンカー軸/脱進機軸距離)の開発を可能にした新しいアンカー脱進機アセンブリの申請者の設計により、アンカーピボット24をテンプ8の直径の外側に配置することが可能になった。そのような脱進機アセンブリは、出願人によって出願され、参照により本出願に組み込まれる特許出願EP20180912に記載されている。
【0033】
有利なことに、特に図2を参照すると、アンカー18は、厚さを節約するためのガードピンを有さず、一方では、脱進機車20と交互に協働することを意図した入口パレット27a及び出口パレット27bを含み、他方では、テンプ8によって支えられ、フォーク入口を規定する第1のホーン52及び第2のホーン54を含むピン48と協働することを意図したフォークを含む。テンプ8と一体のローラー50は、ローラー50の厚さ方向に沿って、ピン48と同じレベルに少なくとも部分的に配置されている(図3を参照)。ローラー50は、ピン48に隣接する領域にノッチ56が設けられている、ほぼ円筒形のアンチオーバーバンキング壁を有する。アンカー18、ローラー50及びピン48は、使用位置において、上記アンチオーバーバンキング壁が、第1及び第2のホーン52、54のストッパを規定することができるように成形及び寸法決定されており、上記アンカー18、上記ローラー50及び上記ピン48は、使用位置において、ピン48が少なくとも部分的にフォーク入口に位置する場合にのみ、上記ホーン52、54のそれぞれがノッチ56の内部に貫通することができるようにさらに成形及び寸法決定されている。
【0034】
フォークのホーン52、54のそれぞれは、上記のフォークの入口を規定する内壁と、ノッキング状況において、問題のホーン52、54の外壁上のピン48の接触点と、内壁に最も近い上記外壁の端部との間の距離が、ピン48と、アンチオーバーバンキング壁と問題のホーン52、54に最も近いノッチ56との間の接合部のそれとの間の距離よりも大きいように成形及び寸法決定されている外壁と、を有する。
【0035】
したがって、それらの従来の機能に加えて、ホーン52、54は、オーバーバンキング保護を提供することを目的としている。ホーン52、54は、そのオーバーバンキング防止機能においてガードピンに取って代わり、ガードピンの典型的な幅よりも広い幅を有する。したがって、ノッチ48は、従来の脱進機に比べて拡大されなければならず、その結果、ローラー50自体も拡大されなければならない。これらの変更は、レバー18aをより長くすることを伴う。
【0036】
レバー18aは、入口及び出口パレット27a、27bをフォークに接続し、使用位置において2つの極端な位置の間で旋回することができ、アンカー18の最大移動角度を規定し、ホーン52、54のそれぞれの外壁は、内壁に最も近いその端部から始まり、安全面を規定する第1の部分を有し、そして、レバー18aに対して上記安全面は、アンチオーバーバンキング壁に面して配置されたときに、アンチオーバーバンキング壁に対して実質的に接線方向であり、その後にレバー18aに対して0から45°程度の角度を有し、ノッキング状況において、少なくとも上記外壁上のピン48の接触点まで延在する第2の部分が続くような平均角度を有する。
【0037】
この脱進機アセンブリでは、アンカー18の振動振幅は変化しない。テンプ8のノッキング角度(図2に示す位置)は、標準構成よりも大きく、等時性に適している。
【0038】
アンカー18及び脱進機車20は、アンカー軸Bとテンプ軸Aとの間の距離が、新しい脱進機の配置を規定するアンカー軸Bと脱進機軸Cとの間の距離の少なくとも2倍に等しくなるように、使用位置に配置されることが意図されている。
【0039】
本発明によるトゥールビヨンは、標準的なトゥールビヨンと同様に機能する。
【0040】
アンカーの特定の形状のおかげで、新しい脱進機の配置が規定され、アンカーピボットと脱進機ピボットとをテンプの外側に移動できるようになった。したがって、脱進機とアンカーピボットをテンプピボットと実質的に同じレベルに配置することにより、標準的なトゥールビヨンで脱進機が通常占める層又はレベルを排除することができる。結果として、本発明によるトゥールビヨンケージの厚さは減少する。
【0041】
さらに、本発明の解決策は、テンプ、アンカー及び脱進機車の間の安全機能、又は調整機構の品質係数を犠牲にすることなく、ケージの厚さを低減することを可能にする。また、テンプの動作を妨げないようにし、標準のテンプピボットと従来の耐衝撃ベアリングを保持する。
【0042】
さらに、好ましい実施例によれば、従来の中央秒ピニオンの排除及びケージの高さでの固定秒車の配置により、さらなる厚さの節約が可能になる。
【0043】
したがって、本発明は、超薄型トゥールビヨンを得ることを可能にし、したがって、超薄型ムーブメントでのその使用を可能にするか、又は時計機構を最適化するためにスペースを節約する。
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】