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  • 特開-有機金属前駆体化合物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096611
(43)【公開日】2022-06-29
(54)【発明の名称】有機金属前駆体化合物
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/40 20060101AFI20220622BHJP
   C23C 16/34 20060101ALI20220622BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
C23C16/40
C23C16/34
H01L21/316 X
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183735
(22)【出願日】2021-11-10
(31)【優先権主張番号】10-2020-0177372
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】521283889
【氏名又は名称】イージーティーエム カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジ、スン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】バイク、スン ヨウン
(72)【発明者】
【氏名】リー、タエ ヨウン
【テーマコード(参考)】
4K030
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA11
4K030AA13
4K030AA18
4K030AA24
4K030BA01
4K030BA10
4K030BA18
4K030BA22
4K030BA38
4K030BA42
4K030JA10
5F058BA06
5F058BA09
5F058BA20
5F058BC03
5F058BC09
5F058BF02
5F058BF27
5F058BF29
5F058BF30
5F058BF36
5F058BF37
(57)【要約】      (修正有)
【課題】従来のハフニウム化合物と異なるヘテロレプティック(heteroleptic)構造を有することで、安定性を有し、より薄い薄膜が形成され得る有機金属前駆体化合物、および薄膜の製造方法を提供する。
【解決手段】有機金属前駆体化合物は、周期表上で4族に属する金属元素を有する前駆体化合物であり、具体的には、例えばビス(ジメチルアミノ)(iso-プロポキシ)(メチルシクロペンタジエニル)ハフニウムである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化1で表される、有機金属前駆体化合物であって、
【化1】
前記化1において、
、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基及び炭素数6~12のフェニル基の中から選択され、
Mは、周期表上で4族に属する金属元素の中から選択され、
、R及びRは、それぞれ独立して、水素、炭素数1~5の線状のアルキル基及び炭素数3~5の分枝状アルキル基の中から選択され、
は、それぞれ独立して、下記化2aまたは2bで表される有機基の中から選択され、
【化2a】
【化2b】
前記化2a及び2bにおいて、
、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~5の線状のアルキル基及び炭素数3~5の分枝状アルキル基の中から選択される、有機金属前駆体化合物。
【請求項2】
前記化1において、Mは、Ti、Zr、Hf及びRfの中から選択される、請求項1に記載の有機金属前駆体化合物。
【請求項3】
前記有機金属前駆体化合物は、下記化3で表され、
【化3】
前記化3において、
、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素及び炭素数1~5のアルキル基の中から選択される、請求項1に記載の有機金属前駆体化合物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の有機金属前駆体化合物を反応器に導入するステップを含む、薄膜の製造方法。
【請求項5】
前記薄膜の製造方法は、
原子層蒸着(Atomic Layer Deposition)または化学気相蒸着(Chemical Vapor Deposition)である、請求項4に記載の薄膜の製造方法。
【請求項6】
前記薄膜の製造方法は、
酸化剤、窒化剤及び還元剤の少なくとも一つを導入するステップをさらに含む、請求項4に記載の薄膜の製造方法。
【請求項7】
前記薄膜は、
ビス(ジメチルアミノ)(iso-プロポキシ)(メチルシクロペンタジエニル)ハフニウム酸化物(HfOx)膜である、請求項4に記載の薄膜の製造方法。
【請求項8】
前記ビス(ジメチルアミノ)(iso-プロポキシ)(メチルシクロペンタジエニル)ハフニウムは、
(シクロペンタジエニル)トリス(ジメチルアミノ)ハフニウムよりGPC(Growth Per Cycle)値が0.2ずつ低い水準である、請求項7に記載の薄膜の製造方法。
【請求項9】
前記薄膜の製造方法は、
前記有機金属前駆体化合物を基板上に移送するステップをさらに含み、
前記移送は、
蒸気圧を利用して揮発移送方法、直接液体注入方法(Direct Liquid Injection)及び液体移送方法(Liquid Delivery System)の少なくとも一つによって遂行される、請求項4に記載の薄膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機金属前駆体化合物及びそれを用いた薄膜製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜とは、機械加工で実現不可能な厚さの薄い膜を意味し得、このような薄膜の形成は、所望の電気的な特性を半導体に与える過程であり、そこで、半導体工程中、最も重要であり得る。さらに、半導体薄膜の形成は、大きく化学的な方法で絶縁膜(あるいは金属膜)等を形成するCVD(Chemical Vapor Deposition)と物理的な方法で金属膜をなすようにするPVD(Physical Vapor Deposition)とに分けられ得、その他に酸素を用いた酸化膜、膜を構成させる溶液をウエハの表面に噴射させ、ウエハを回転させて形成するSOG(Spin on Glass)、溶液を分解させて電気的に銅膜を形成するダマシン方式、及び反応原料を含む反応ガス間の化学反応で形成された粒子を基板の表面に蒸着するALD(Atomic Layer Deposition)を含むことができる。
【0003】
一方、近年は、前述したCVD及びPVDの短所が克服され、より膜の薄い厚さと信頼性を同時に満たすことができるALD(Atomic Layer Deposition)技法が注目を集めている。
【0004】
より具体的に、半導体素子の製造において、ジルコニウム、ハフニウム含有膜等の薄膜は、一般に、金属有機物化学気相蒸着(Metal Organic Chemical Vapor Deposition、MOCVD)または原子層蒸着(Atomic Layer Deposition、ALD)工程を利用して形成され得る。半導体製造技術の発展によって非常に薄く均一な薄膜が要求され、これによって、薄膜の原子単位まで調節できる原子層蒸着工程の重要度が高くなっている。さらに、ALDは、吸着方式であることで、PVDの弱点である段差被覆性(Step Coverage)がほとんどないだけではなく、膜の内部に形成される空隙(void)や、表面に直径が極めて小さく空くピンホール(Pinhole)もほとんど現れない。さらに、ALDは、膜全体が均質な格子造成(整合蒸着能力)を有し、ナノ単位の一定の厚さにコーティングが可能であるという長所があり、従来の蒸着方法より向上した方法であり得る。
【0005】
このような、原子層蒸着工程を通して高品質の薄膜を蒸着するためには、適した前駆体を選択することが非常に重要である。前駆体は、薄膜の物理的、電気的特性に影響を与える。薄膜を形成する原子層蒸着工程に適した前駆体は、低い粘度と高い蒸気圧を有しなければならず、適した反応性を有し、熱的に安定でなければならない。
【0006】
例えば、現在、高誘電率の薄膜を形成するために原子層蒸着工程に使用される有機4族前駆体化合物として、ジルコニウム前駆体化合物であるトリス(ジメチルアミノ)シクロペンタジエニルジルコニウム(IV)[CpZr(NMe2)3](いわゆるZAC)と、ハフニウム前駆体化合物であるトリス(ジメチルアミノ)シクロペンタジエニルハフニウム(IV)[CpHf(NMe2)3](いわゆるHAC)がある。
【0007】
このような、前駆体は常温で液体状態であるので工程適用に適し、酸化物膜の形成工程で、付加的な反応物と反応性に優れた長所があるが、長期保管時、自己分解されやすく、熱的に不安定で良質の薄膜を製造するのに限界がある。そこで、均質な塗布性を有し、薄膜内の不純物残存の問題が解決され得る前駆体が要求されている実情である。
【0008】
背景技術は、本発明についての理解をより容易にするために作成された。背景技術に記載の事項が先行技術として存在すると認めるものと理解されてはならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一方、本発明の発明者らは、3種類のリガンドからなる錯化合物構造に注目した。このとき、従来の化合物のリガンドのうち1個が置き換えられる場合、各引力の強度が弱くなることで、化合物の粘度が低くなり得るということを認知した。
【0010】
結局、本発明の発明者らは、従来のハフニウム化合物のアミンリガンドのうち1個のリガンドがアルコキシリガンドに置き換えられる場合、化合物として安定性も有し、粘度を下げることができるということを見出した。さらに、前述したように置き換えられた構造を有するハフニウム化合物は、アルコキシリガンドがより結合力の強力なリガンドであることで、熱的安定性が向上するということを見出した。
【0011】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、従来のハフニウム化合物と異なるヘテロレプティック(heteroleptic)構造を有することで、安定性を有し、より薄い薄膜が形成され得る有機金属前駆体化合物を提供することである。
【0012】
本発明の課題は、以上において言及した課題に制限されず、言及されていないまた他の課題は、下記の記載から当業者に明確に理解され得るだろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述したような課題を解決するために、本発明は、下記化1で表される、有機金属前駆体化合物を提供する。
【化1】
このとき、前記化1において、
、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基及び炭素数6~12のフェニル基の中から選択され、
Mは、周期表上で4族に属する金属元素の中から選択され、
、R及びRは、それぞれ独立して、水素、炭素数1~5の線状のアルキル基及び炭素数3~5の分枝状アルキル基の中から選択され、
は、それぞれ独立して、下記化2aまたは2bで表される有機基の中から選択され、
【化2a】
【化2b】
前記化2a及び2bにおいて、
、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~5の線状のアルキル基及び炭素数3~5の分枝状アルキル基の中から選択され得る。
本発明の特徴によれば、前記化1において、Mは、Ti、Zr、Hf及びRfの中から選択され得るが、これに制限されるものではない。
【0014】
本発明の他の特徴によれば、有機金属前駆体化合物は、下記化3で表される有機金属前駆体化合物であってよい。
【化3】
このとき、前記化3において、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素及び炭素数1~5のアルキル基の中から選択され得る。
【0015】
さらに、前述したような課題を解決するために、本発明は、前述した化1または化3の有機金属前駆体化合物を反応器に導入するステップを含む、薄膜の製造方法を提供する。
【0016】
本発明の特徴によれば、薄膜の製造方法は、原子層蒸着(Atomic Layer Deposition)または化学気相蒸着(Chemical Vapor Deposition)であってよいが、これに制限されるものではなく、基板上に薄膜を形成できる多様な方法をいずれも含むことができる。
【0017】
本発明の他の特徴によれば、薄膜の製造方法は、酸化剤、窒化剤及び還元剤の少なくとも一つを導入するステップをさらに含むことができる。
【0018】
本発明のまた他の特徴によれば、薄膜は、ビス(ジメチルアミノ)(iso-プロポキシ)(メチルシクロペンタジエニル)ハフニウム酸化物(HfOx)膜であってよく、このようなビス(ジメチルアミノ)(iso-プロポキシ)(メチルシクロペンタジエニル)ハフニウム酸化物(HfOx)膜は、(シクロペンタジエニル)トリス(ジメチルアミノ)ハフニウムよりGPC(Growth Per Cycle)値が約0.2ずつ低い水準であってよい。
【0019】
本発明の他の特徴によれば、薄膜の製造方法は、前駆体化合物を基板上に移送するステップをさらに含み、このとき、移送は、蒸気圧を利用して揮発移送方法、直接液体注入方法(Direct Liquid Injection)及び液体移送方法(Liquid Delivery System)の少なくとも一つによって遂行され得るが、これに制限されるものではなく、本発明の一実施例に係る有機金属前駆体化合物が基板上に移送され得る多様な方法をいずれも含むことができる。
【0020】
以下、実施例を通して本発明をより詳細に説明する。ただし、これらの実施例は、本発明を例示的に説明するためのものに過ぎないので、本発明の範囲は、これらの実施例により限定されるものと解釈されてはならない。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、3個のアミンリガンド(amine ligand)の中で1個がアルコキシリガンド(alkoxy ligand)に置き換えられた3種類のリガンド(heteroleptic ligand)からなる錯化合物であることで、従来の代表的な有機4族金属前駆体化合物であるトリス(ジメチルアミノ)シクロペンタジエニルハフニウム(IV)[CpHf(NMe2)3](いわゆるHAC)より粘度が低くてよく、これによって、蒸着装備内でさらに円滑な供給が可能である。
【0022】
さらに、本発明は、結合力のさらに強いリガンドに置き換えられたことで、熱的安定性が高くなり、分解後、残余物が減少した効果を有する。
【0023】
そこで、本発明は、基板上に薄膜蒸着過程において、より効率的に薄膜を蒸着することができ、これによって形成された薄膜の品質は、従来の薄膜より品質に優れ得る。
【0024】
本発明に係る効果は、以上において例示された内容により制限されず、さらに多様な効果が本明細書内に含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施例に係る有機金属前駆体化合物を用いた薄膜の製造方法に対するフローチャートである。
図2】本発明の一実施例に係る有機金属前駆体化合物の熱重量分析(TGA、thermogravimetic analysis)試験結果を示したものである。
図3】本発明の一実施例に係る有機金属前駆体化合物の走査熱量分析(DSC、differential scanning calorimetry)試験結果を示したものである。
図4】本発明の一実施例に係る有機金属前駆体化合物の蒸着温度による薄膜蒸着特性変化を観察した結果を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の利点及び特徴、そして、それらを達成する方法は、添付の図面と共に詳細に後述されている実施例を参照すると、明確になるだろう。しかし、本発明は、以下において開示される実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態に具現され、単に、本実施例は、本発明の開示が完全なものとなるようにし、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範疇により定義されるだけである。
【0027】
明細書全体にわたって、同じ参照符号は、同じ構成要素を指す。本発明の実施例を説明するための図面に開示された形状、大きさ、比率、角度、個数等は、例示的なものであるので、本発明は、図示された事項に制限されるものではない。また、本発明を説明するにあたって、関連した公知技術についての具体的な説明が本発明の要旨を不要に濁す恐れがあると判断される場合、その詳細な説明は省略する。本明細書上において言及された「含む」、「有する」、「なされる」等が使用される場合、「~だけ」が使用されない以上、他の部分が加えられ得る。構成要素を単数で表現した場合、特に明示的な記載事項がない限り、複数を含む場合を含む。
【0028】
構成要素を解釈するにあたって、別途の明示的な記載がなくても誤差範囲を含むものと解釈する。
【0029】
本発明の様々な実施例のそれぞれの特徴は、部分的または全体的に互いに結合または組み合わせ可能であり、当業者が十分に理解できるように技術的に多様な連動及び駆動が可能であり、各実施例が互いに対して独立して実施可能であってもよく、関連関係で共に実施可能であってもよい。
【0030】
本明細書の解釈の明確さのために、以下においては、本明細書において使用される用語を定義する。
【0031】
本明細書において使用される用語「上に」及び「の上に」という表現は、相対的な位置概念を言及するために使用されるものを意味し得る。従って、言及された層に他の構成要素または層が直接的に存在する場合だけではなく、その間に他の層(中間層)及び他の構成要素が介在または存在し得る。
【0032】
本明細書において使用される用語「約」は、言及された意味に固有の製造及び物質許容誤差が提示されるとき、その数値でまたはその数値に近接した意味で使用され、本明細書の理解を助けるために、正確または絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防止するために使用される。また、本明細書の全体において、「~するステップ」または「~のステップ」は、「~のためのステップ」を意味しない。
【0033】
[本発明の一実施例に係る有機金属前駆体化合物及びそれを用いた薄膜の製造方法]
以下においては、図1を参照して、本発明の一実施例に係る有機金属前駆体化合物及びそれを用いた薄膜の製造方法について説明する。
【0034】
本発明の一実施例に係る有機金属前駆体化合物は、下記の化1で表される、有機金属前駆体化合物を提供できる。
【化1】
前記化1において、
、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基及び炭素数6~12のフェニル基の中から選択され得るが、これに制限されるものではない。
Mは、周期表上で4族に属する金属元素の中から選択され得るが、これに制限されるものではなく、多様な金属元素をいずれも含むことができる。
、R及びRは、それぞれ独立して、水素、炭素数1~5の線状のアルキル基及び炭素数3~5の分枝状アルキル基の中から選択され得るが、これに制限されるものではない。
【0035】
は、それぞれ独立して、下記化2aまたは2bで表される有機基の中から選択され、
【化2a】
【化2b】
前記化2a及び2bにおいて、
、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~5の線状のアルキル基及び炭素数3~5の分枝状アルキル基の中から選択され得るが、これに制限されるものではない。
【0036】
一方、本発明の一実施例に係る有機金属前駆体化合物は、前述したように、化1で表される有機金属前駆体化合物であってよいが、好ましくは、下記の化3で表される有機金属前駆体化合物であってよい。
【化3】
前記化3において、
、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素及び炭素数1~5のアルキル基の中から選択され得るが、これに制限されるものではない。
【0037】
一方、本発明の一実施例に係る有機金属前駆体化合物は、Ti、Zr、Hf及びRfの少なくとも一つの4族金属を含むことができ、金属前駆体として、最も好ましい形態は、ハフニウム(Hf)を含むことができる。即ち、本発明の一実施例に係る有機金属前駆体化合物は、前記化3のビス(ジメチルアミノ)(iso-プロポキシ)(メチルシクロペンタジエニル)ハフニウムであってよい。
【0038】
また、前記化1の有機金属前駆体化合物は、常温で固体または液体であってよいが、好ましくは液体であってよい。また、揮発性及び熱的安定性が高く、多様な酸化剤と共に高い反応性及びALD工程時に広い工程温度区間(ALD window)を有する。
【0039】
このような、前記化1の有機金属前駆体化合物は、薄膜製造方法に利用され得、薄膜製造方法は、原子層蒸着(Atomic Layer Deposition)または化学気相蒸着(Chemical Vapor Deposition)であってよいが、これに制限されるものではなく、基板上に前記化1の有機金属前駆体化合物を蒸着させることのできる多様な方法をいずれも含むことができる。
【0040】
このとき、化学気相蒸着法は、反応性のガス(gas)を反応器に注入して適当な活性及び反応エネルギーを加えて基板の表面に所望の薄膜を形成する技術である。工程時、大量生産が可能でコストが少ない長所があり、様々な種類の元素及び化合物の蒸着が可能であり、工程条件の制御範囲が非常に広くて多様な特性の薄膜を容易に得ることができ、優れた段差被覆性(Step coverage)を得ることができる。
【0041】
さらに、原子層蒸着法は、薄膜形成に必要な元素を交互に供給して自己制限的反応(Self-limiting reaction)により薄膜を形成させる技術である。原子層蒸着法は、非常に薄い膜を蒸着することができ、所望の厚さと組成を精密に制御できる。大面積の基板でも均一な厚さの膜を形成することができ、高い縦横比でも優れた段差被覆性(Step coverage)を示す。また、薄膜に不純物が少ないという長所を有している。
【0042】
より具体的に、図1を参照すると、本発明の一実施例に係る薄膜製造方法である原子層蒸着法は、真空、活性または不活性状態で基板を50~500℃の温度に加熱するステップ(S110)、20~100℃の温度に加熱された有機金属前駆体化合物を反応器に導入するステップ(S120)、及び導入された有機金属前駆体化合物を基板上に吸着させて有機化合物層を基板上に形成するステップ(S130)を含むことができる。このとき、有機化合物層を基板上に形成するステップは、基板に熱エネルギー、プラズマまたは電気的バイアスを印加して有機化合物が分解され、有機化合物層、即ち、基板上に薄膜が形成され得る。
【0043】
結局、本発明の一実施例に係る有機金属前駆体化合物は、前述した薄膜の製造方法において反応器に導入するステップ(S120)で利用され得る。
【0044】
さらに、前述した薄膜の製造方法、即ち、原子層蒸着法は、有機金属前駆体化合物を基板上に移送するステップをさらに含むことができる。このとき、供給する方法は、蒸気圧を利用して揮発移送方法、直接液体注入方法(Direct Liquid Injection)及び液体移送方法(Liquid Delivery System)の少なくとも一つであってよいが、これに制限されるものではなく、本発明の一実施例に係る有機金属前駆体化合物が基板上に移送され得る多様な方法をいずれも含むことができる。
【0045】
また、本発明の一実施例に係る有機金属前駆体化合物は、水蒸気(HO)、酸素(O)及びオゾン(O)の少なくとも一つの反応ガスと混合されて基板上に移送されるか、反応ガスが本発明の一実施例に係る有機金属前駆体化合物とは別に基板上に移送されて蒸着工程が遂行され得る。
【0046】
また、本発明の一実施例に係る有機金属前駆体化合物は、アンモニア(NH)、ヒドラジン(N)、二酸化窒素(NO)及び窒素(N)プラズマの少なくとも一つの反応ガスと混合されて、基板上に移送されるか、反応ガスが本発明の一実施例に係る有機金属前駆体化合物とは別に基板上に移送されて蒸着工程が遂行され得る。
【0047】
即ち、本発明の一実施例に係る有機金属前駆体化合物を用いた薄膜の製造方法は、前述したように酸素及び窒素を含む反応ガス、即ち、酸化剤または窒化剤と混合されて基板上に移送され得る。より具体的に、酸化剤は、水酸化基を含む酸化剤だけではなく、酸素(O)ラジカルを発生できる活性化された酸化剤を意味し得る。例えば、活性化された酸化剤は、プラズマ生成器により形成されたオゾン(O3)、プラズマO2、リモートプラズマO2及びプラズマN2Oを含むことができ、酸素ガスが処理されてオゾンを形成すると、O2ガス中の一部がO3に転換されて約5%~15%のモル比を有するO2/O3の混合気体が生成される。また、酸化剤は、HOやHのような水酸化基及びNOやNOのような酸素を含む他の化合物を含むことができる。
【0048】
そこで、本発明の一実施例に係る有機金属前駆体化合物は、前述した酸化剤、窒化剤及び還元剤の少なくとも一つと反応して、基板上に金属、酸化金属及び窒化金属の少なくとも一つの原子膜を形成することができる。
【0049】
例えば、本発明の一実施例に係る有機金属前駆体化合物を用いた薄膜の製造方法において、基板上に形成された薄膜は、4族金属を含む本発明の一実施例に係る有機金属前駆体化合物と酸化剤が反応することで、原子層単位のジルコニウム酸化物(ZrOx)膜またはハフニウム酸化物(HfOx)膜であってよいが、好ましくは、ハフニウム酸化物(HfOx)膜であってよい。
【0050】
また、本発明の一実施例に係る有機金属前駆体化合物を用いた薄膜の製造方法において、基板上に形成された薄膜は、原子層単位のジルコニウム窒化物(ZrNx)膜またはハフニウム窒化物(HfNx)膜であってよい。
【0051】
一方、本発明の一実施例に係る有機金属前駆体化合物を用いた薄膜の製造方法は、アルゴン(Ar)、窒素(N)、ヘリウム(He)及び水素(H)の少なくとも一つのキャリアガスまたは希釈ガスを導入させることで、基板上に吸着されていない有機金属前駆体化合物及び酸化剤が除去され得る。
【0052】
そこで、本発明の一実施例に係る有機金属前駆体化合物を用いた薄膜の製造方法においては、アルゴン(Ar)、窒素(N)、ヘリウム(He)及び水素(H)の少なくとも一つのキャリアガスまたは希釈ガスを反応器に導入して、未反応有機金属前駆体化合物及び酸化剤を除去するステップをさらに含むことができ、未反応有機金属前駆体化合物は、基板上に吸着されていない前駆体分子を意味し得る。
【0053】
以上の過程を通して、本発明の一実施例に係る有機金属前駆体化合物は、薄膜製造方法、即ち、原子層蒸着法に利用され得る。
【0054】
[本発明の一実施例に係る有機金属前駆体化合物の特性の検証]
以下においては、図2から図4を参照して、本発明の一実施例に係る特性を説明する。
【0055】
まず、本発明の一実施例に係る、有機金属前駆体化合物は、下記の化3で表されるビス(ジメチルアミノ)(iso-プロポキシ)(メチルシクロペンタジエニル)ハフニウムであってよい。
【化3】
前記化3において、
、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素及び炭素数1~5のアルキル基の中から選択され得るが、これに制限されるものではない。
【0056】
さらに、前記化3で表されるビス(ジメチルアミノ)(iso-プロポキシ)(メチルシクロペンタジエニル)ハフニウムは、下記の過程によって収得され得る。
【0057】
まず、前記化3で表されるビス(ジメチルアミノ)(iso-プロポキシ)(メチルシクロペンタジエニル)ハフニウムを収得するために、無水及び不活性の状態で火炎乾燥された1000mLシュレンクフラスコにヘキサン(Hexane)200ml及びn-ブチルリチウム2.5Mの153.6mlを入れて-30℃で撹拌する(混合された溶液でのブチルリチウムの濃度は、0.0384mol)。その後、低温を維持しながらジメチルアミン(Dimethylamine)17.73g(0.393mol)をゆっくり添加した後、反応溶液を徐々に-10℃に昇温させる。その後、ジメチルアミンが混合された反応溶液を5時間撹拌した後、また-30℃に冷却させてハフニウムクロリド(Hafnium chloride)30g(0.093mol)をゆっくり添加する。その後、常温までゆっくり昇温させて12時間撹拌した後、反応を終了する。その後、反応が終了した反応混合物をろ過して、生成された白色の固体を除去した後に得たろ液を-30℃まで冷却させる。その後、冷却されたろ液をゆっくり常温まで昇温させてメチルシクロペンタジエン(Methylcyclopentadiene)7.65g(0.095mol)をゆっくり添加して12時間の間撹拌した後、反応を終了する。その後、反応が終了した反応混合物溶液を-30℃に冷却させてイソプロピルアルコール(Isopropylalcohol)5.59g(0.093mol)をゆっくり添加する。その後、反応が終了した反応混合物を減圧下に溶媒を除去し、蒸留を通して前記化3で表されるビス(ジメチルアミノ)(iso-プロポキシ)(メチルシクロペンタジエニル)ハフニウム9.71g(0.048mol)を収率52%で収得した。
【0058】
そこで、図2を参考にすると、本発明の一実施例に係る有機金属前駆体化合物の熱重量分析(TGA、thermogravimetic analysis)試験結果が示される。このとき、TGA試験は、残留成分(residue)量を測定するために、熱分析器を熱重量分析モードにして実施し、その結果は、表1に示される。
【表1】
【0059】
より具体的に、本発明の一実施例に係る有機金属前駆体化合物、即ち、化3で表される化合物は、177.29℃で50%の残留量を有し、300℃以上、即ち、350℃では、残留量がほとんどない0.74(%)であるものと示される。即ち、本発明の一実施例に係る有機金属前駆体化合物は、気化時、分解されることなく熱的安定性を有することができる。
【0060】
図3を参照すると、本発明の一実施例に係る有機金属前駆体化合物の走査熱量分析(DSC、differential scanning calorimetry)試験結果が示される。このとき、DSC試験は、熱分解温度を測定するために、熱分析器を示差走査熱量分析モードにして実施し、その結果は、表2に示される。
【表2】
【0061】
より具体的に、本発明の一実施例に係る有機金属前駆体化合物、即ち、化3で表される化合物は、344.47℃で分解されるものと示される。
【0062】
また、表2に示されたように、本発明の一実施例に係る有機金属前駆体化合物、即ち、化3で表される化合物は、5.74cPの粘度を有するものと示される。即ち、本発明の一実施例に係る有機金属前駆体化合物、即ち、化3で表される化合物は、従来のハフニウム化合物の粘度、即ち、9.51cPより低い粘度を有することで、蒸着装備内でより円滑な供給が可能であり得る。
【0063】
以上の結果によって、本発明の一実施例に係る有機金属前駆体化合物は、薄膜の形成過程で従来の化合物より優れた蒸着効果を有することができる。
【0064】
より具体的に、図4を参照すると、本発明の一実施例に係る有機金属前駆体化合物の蒸着温度による薄膜蒸着特性変化を観察した結果が示される。このとき、比較例として、(シクロペンタジエニル)トリス(ジメチルアミノ)ハフニウムが使用された。さらに、蒸着温度による薄膜蒸着特性変化を観察するために、酸化剤としてオゾン(ozone)が使用され、有機金属前駆体化合物を常温で液体移送方法(Liquid Delivery System type、Vaporizer温度:150℃)で注入時間(precursor feeding 17秒)を固定した後、蒸着温度を140℃から280℃まで変化させて蒸着特性を評価した。
【0065】
本発明の一実施例に係る有機金属前駆体化合物(実施例1)は、比較例1と類似したALD window区間(200℃~280℃)を有するものと示されるが、GPC(Growth Per Cycle)値が比較例1より約0.2ずつ低いものと示される。
【0066】
そこで、本発明の一実施例に係る有機金属前駆体化合物は、基板上に向上したステップカバレッジ(step coverage)を有することで、蒸着率(deposition rate)が増加し、パターンローディング率(pattern loading rate)の効果が減少して、さらに微細な薄膜厚さ調節が可能であり得る。
【0067】
以上の結果によって、本発明の一実施例に係る有機金属前駆体化合物は、半導体工程を含む多様な薄膜形成において、より向上した安定性及び信頼性を提供することができる。
【0068】
以上、添付の図面を参照して、本発明の実施例をさらに詳細に説明したが、本発明は、必ずしもこのような実施例に限定されるものではなく、本発明の技術思想を外れない範囲内で多様に変形実施され得る。従って、本発明に開示された実施例は、本発明の技術思想を限定するためのものではなく、説明するためのものであり、このような実施例によって本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。それゆえ、以上において記述した実施例は、全ての面で例示的なものであり、限定的ではないものと理解すべきである。本発明の保護範囲は、下記の特許請求の範囲によって解釈されるべきであり、それと同等な範囲内にある全ての技術思想は、本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4