IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

2022-96633筆記具用インキ組成物およびそれを用いた筆記具
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096633
(43)【公開日】2022-06-29
(54)【発明の名称】筆記具用インキ組成物およびそれを用いた筆記具
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/16 20140101AFI20220622BHJP
   B43K 7/00 20060101ALN20220622BHJP
【FI】
C09D11/16
B43K7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203837
(22)【出願日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2020209613
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 太郎
【テーマコード(参考)】
2C350
4J039
【Fターム(参考)】
2C350GA03
2C350HA08
4J039BA35
4J039BD04
4J039BE01
4J039BE22
4J039GA21
4J039GA27
4J039GA28
4J039GA34
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、被筆記面の隠蔽性ならびに発色鮮明性に優れた筆跡を所望の色調で得ることができ、また、安定したインキ吐出性も得られることから、筆跡中の線とびやカスレの発生が抑制され、筆感にも優れるなど、筆記性に優れた筆記具用インキ組成物ならびに筆記具を提供することである。
【解決手段】
板状酸化チタンと、着色剤と、溶媒と、を含んでなることを特徴とする筆記具用インキ組成物、およびそれを用いた筆記具とした。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状酸化チタンと、着色剤と、溶媒と、を含んでなることを特徴とする、筆記具用インキ組成物。
【請求項2】
前記板状酸化チタンの含有量が、前記インキ組成物の総質量を基準として、0.001質量%以上10質量%以下である、請求項1に記載のインキ組成物。
【請求項3】
前記着色剤が顔料であり、前記溶媒が水である、請求項1または2に記載のインキ組成物。
【請求項4】
界面活性剤をさらに含んでなる、請求項1~3のいずれか1項に記載のインキ組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のインキ組成物を収容してなることを特徴とする、筆記具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具用インキ組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、被筆記面の隠蔽性ならびに筆跡の発色鮮明性に優れる筆記具用インキ組成物に関するものである。また、本発明は、そのインキ組成物を用いた筆記具にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、隠蔽性を有する筆跡を得るために、酸化チタンやタルクなどの白色顔料を用いた筆記具用インキ組成物が知られている。さらに、上記顔料とは別の着色剤(補色顔料)を併用することで、隠蔽性を有しながらも、白色だけでなく様々な色彩の筆跡が得られることが知られており、そのようなインキ組成物も盛んに検討されている。
【0003】
しかしながら、従来の酸化チタンやタルクを用いた場合、十分な隠蔽性を得るためには、一定量以上含有させなければならない上、酸化チタンやタルクは、一般的な有機顔料に比べて比重が大きいことから、これら顔料の分散安定性を経時的に維持することは非常に難しく、さらに、沈降してしまった場合にはハードケーキとなって再分散ができなくなるという課題を有している。
そこで、組成物に対して用いる各種材料による改質や、分散剤の併用などによる、顔料の沈降防止が試みられている。
しかしながら、従来報告されている技術では、沈降速度を遅くすることはできるものの、長期間の経時では、ハードケーキとなることは避けられず、それらの対策は十分な結果に結びついていないのが実情である。さらに、いわゆる、ゲル化剤や増粘剤などを用いて、インキ粘度を高くしたり、構造粘性を発現させるなどの対策も検討されている。しかしながら、これらの対策手段を講じたインキ組成物においてもインキ増粘などの経時安定性やボールペンチップなどのペン先からのインキ吐出性が低下してしまい、線とびやカスレが生じてしまったり、筆感が悪くなるなど、筆記性に課題が生じてしまうことがあった。
【0004】
また、上述のように、補色顔料を併用して、隠蔽性を有しながらも、様々な色彩の筆跡を得たい場合には、従来の酸化チタンやタルクでは、一定量以上含有する必要があるため、得られる筆跡は、酸化チタンやタルクなどの影響を受けて、いわゆるパステル調などの白く薄い色になってしまうなど、所望の色調で、鮮やかな発色を有した筆跡が得られなかった。このため、隠蔽性を有しながらも、所望の色調で発色鮮明性に優れた筆跡を得ることは、解決すべき大きな課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-193363号公報
【特許文献2】特開2000-129187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、被筆記面の隠蔽性ならびに発色鮮明性に優れた筆跡を所望の色調で得ることができ、また、安定したインキ吐出性も得られることから、筆跡中の線とびやカスレの発生が抑制され、筆感にも優れるなど筆記性に優れた、筆記具用インキ組成物およびそれを用いた筆記具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
「1.板状酸化チタンと、着色剤と、溶媒と、を含んでなることを特徴とする、筆記具用インキ組成物。
2.前記板状酸化チタンの含有量が、前記インキ組成物の総質量を基準として、0.001質量%以上10質量%以下である、第1項に記載のインキ組成物。
3.前記着色剤が顔料であり、前記溶媒が水である、第1項または第2に記載のインキ組成物。
4.界面活性剤をさらに含んでなる、第1項~第3項のいずれか1項に記載のインキ組成物。
5.第1項~第4項のいずれか1項に記載のインキ組成物を収容してなることを特徴とする、筆記具。」である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被筆記面の隠蔽性ならびに発色鮮明性に優れた筆跡を、所望の色調で得ることができ、また、安定したインキ吐出性が得られることから、筆跡中の線とびやカスレの発生が抑制され、筆感にも優れるなど、筆記性に優れた筆記具用インキ組成物およびそれを用いた筆記具を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本明細書において、配合を示す「部」、「%」、「比」などは特に断らない限り質量基準であり、含有量とは、インキ組成物の質量を基準としたときの構成成分の質量%である。
【0010】
本発明による筆記具用インキ組成物(以下、場合により、「インキ組成物」または「組成物」と表すことがある。)は、板状酸化チタンと、着色剤と、溶媒とを含んでなる。以下、本発明によるインキ組成物を構成する各成分について説明する。
【0011】
<板状酸化チタン>
本発明による筆記具用インキ組成物は、板状酸化チタンを含んでなる。
板状酸化チタンとしては、粉体や予め溶媒中に分散されたものが適用できる。
【0012】
本発明の板状酸化チタンとは、板の形状を有する酸化チタンであり、2つの主面(該板状酸化チタンにおける最も広い面)を有する板状の酸化チタンである。なお、主面の形状は、特に限定されないが、略三角形状、略四角形状、略五角形状、略六角形状、略七角形状、略八角形状、略円状等が挙げられる。また、板状酸化チタンは、平板状(平らで湾曲していない板)のみならず、湾曲した板状のものや、厚みが一定ではない板状のものも含まれる。本発明の板状酸化チタンとしては、平板状であることが好ましい。
【0013】
本発明において、板状酸化チタンは、前記の通り、板状形状を有するものである。このため、本発明による筆記具用インキを用いて、紙などの浸透面や、フィルムなどの非浸透性の記録媒体に筆記した際、板状酸化チタンが筆記面に対して並行に載置され、少ない添加量でも隙間を作りづらく、緻密な隠蔽層を形成することができ、略球状であるような従来の酸化チタンを用いた場合に比べて、被筆記面の隠蔽性に優れた筆跡を得ることができる。また、少量でも被筆記面の隠蔽性に優れることから、得られる筆跡の色調は、被筆記面の色に影響されにくく、よって、所望の色調で鮮明な発色の筆跡が得られる。また、板状酸化チタンは、同様に板状形状を有するような酸化チタン以外のタルクやカオリンなどに比べても、被筆記面の隠蔽性に優れる傾向にあるため、被筆記面の色を効果的に隠蔽することで所望な色調で鮮明な発色の筆跡が得られる。
【0014】
また、本願のインキ組成物は、板状酸化チタンとともに、着色剤を含んでなるものであるが、得られる筆跡は、比較的比重の大きい板状酸化チタンは筆跡の下部へと、そして、比較的比重の軽い着色剤は筆跡の上部へと、偏在する。このとき、板状酸化チタンは、上述の通り、その形状から、被筆記面に対して並行に載置され、緻密な隠蔽層を形成することができることから、その緻密な酸化チタンの隠蔽層上に、着色剤が存在するようになる。このため、略球状であるような従来の酸化チタンを用いた場合と比較して、筆跡中で、酸化チタンと着色剤が混在し難い状態となる。よって、得られる筆跡は、酸化チタンの影響を受け難く、着色剤本来の色調に対して、白く薄い色調になることが従来よりも低減され、さらに、緻密な酸化チタンの隠蔽性層により、被筆記面の色の影響も受けにくくなり、所望の着色剤本来の色調で、発色鮮明性に優れた筆跡を得ることが可能となる。
【0015】
また、本発明による筆記具用インキ組成物は、板状酸化チタンを含んでなることにより、ボールペンチップをペン先としたボールペンに用いたときには、垂れ下がり防止効果(ペン先からのインキ漏れ抑制)にも優れる。
これは、理由は定かではないが、板状酸化チタンが板状の粒子形状を有すること、さらには、板状の一次粒子が互いに面間が平行的に配向して複数枚重なることにより葉状二次粒子(積層構造の粒子形態を有する板状酸化チタン)を形成すること、また、前記薄片一次粒子が葉状二次粒子形態で三次凝集した三次凝集粒子を形成することで、ボールとチップ先端の内壁との間の隙間に物理的な障害を起こして、インキ漏れを抑制するためと考えられる。
なお、前記の葉状二次粒子や三次凝集粒子は、微弱な凝集により形成された構造のため、筆記時にはボールの回転などの物理作用により凝集構造は解砕されるので、筆記時のインキ流動性を阻害することなく、良好に筆記することが可能であり、垂れ下がり防止と筆記性を両立することができる。
【0016】
また、本発明による筆記具用インキ組成物は、板状酸化チタンを含んでなることにより、上述の通り、紙やフィルムなどの記録媒体に筆記した際に、酸化チタンが筆記面に対して並行に載置され、少ない添加量でも隙間を作りづらく、緻密な隠蔽層を形成することができる。ゆえに、従来の略球状であるような酸化チタンを用いた筆記具用インキと比較して、板状酸化チタンの添加量をきわめて少なくすることができる。このため、筆記具を長期間使用せずに放置しておいた場合においても、板状酸化チタンがその自重により筆記具のインクタンクの底面や壁面に沈降しにくく、保存安定性に優れる。
また、例え、板状酸化チタンが筆記具のインクタンクの底面や壁面に沈降した場合でも、板状酸化チタンの添加量がきわめて少ないことにより、沈降・堆積した場合でも板状酸化チタンの量が少なく自重が軽く、凝集度合いが小さいため、ハードケーキになりにくい。このため、インキを攪拌することにより再び容易に分散されるなど、再分散性に優れたインキ組成物を得ることができる。従来の略球状酸化チタンを用いる際は、必要な隠蔽性を得るために酸化チタンを一定量以上添加する必要があった。酸化チタンを従来必要な量添加すると、粘度が高くなりやすく、インキ流動性が損なわれるため書き味が低下したり、インキの追従性が不足することから線トビやかすれが発生しやすく、ペン先の耐ドライアップ性に課題が生じやすい傾向にあった。また酸化チタンは硬い無機顔料であるため、ボールペンに用いる際にはボール座の摩耗を促進させる傾向にあった。本発明の板状酸化チタンを用いると、固形分を従来よりもきわめて低く抑えることができるため、従来課題であった各種性能を良化させることができる。
以上より、本願のインキ組成物は、板状酸化チタンが沈降しにくく、凝集した場合においても再分散性が良好であるため、従来の酸化チタンを用いたインキ組成物と比べて、優れた隠蔽性や発色性を得ながらも、インキ粘度を低く抑えられる傾向にあり、ペン先からのインキ吐出性を良化しやすく、よって、筆跡中の線とびやカスレの発生を抑制し、書き味にも優れる。さらに耐ドライアップ性や耐摩耗性など、筆記性に優れたインキ組成物となる。
【0017】
また、本発明による筆記具用インキ組成物は、前記の通り、従来の酸化チタンを用いた筆記具用インキと比較して、板状酸化チタンの添加量をきわめて少なくすることができる。ゆえに、特に、ボールペンチップをペン先としたボールペンに用いた場合には、筆記時にザラつき感が発生しにくく、また、ボールペンチップのボール座の摩耗を抑制できる。このため、初期と同等の優れた筆記感を長期的に維持できる。
【0018】
さらに、本発明による筆記具用インキ組成物は、紙などに筆記した際に、板状酸化チタンがその粒子形状から紙面に対して並行に載置される。このため、重ね書きをした際にも板状酸化チタンが紙面を引っ掻くことがないので、紙面を削ることなく筆記することができる。
【0019】
前記板状酸化チタンの平均粒子径は、1μm~50μmであることが好ましく、5μm~40μmであることがより好ましい。板状酸化チタンの平均粒子径が、上記数値の範囲内であれば、ボールペンチップや繊維束やポーラス体などのペン先から、インキが良好に吐出でき、筆記性が良好で、さらに、隠蔽性と発色性に優れた筆跡を得ることができる。上記効果の向上を考慮すると、10μm~35μmであることが特に好ましい。
また、板状酸化チタンの平均厚みは、0.001μm~10μmであることが好ましく、0.005μm~5μmであることがより好ましい。板状酸化チタンの平均厚みが、上記数値の範囲内であれば、ボールペンチップや繊維束やポーラス体などのペン先から安定してインキを吐出ができ、筆記性に優れながらも、良好な筆跡を得ることができる。上記効果の向上を考慮すると、0.005μm~2μmであることがさらに好ましく、0.01μm~1μmであることが特に好ましい。
また、板状酸化チタンのアスペクト比(平均粒子径/平均厚み)は、2以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、50以上であることが、より好ましく、100以上であることがさらに好ましい。アスペクト比が上記数値の範囲内であれば、添加量を抑えながらも、隠蔽性や発色性に優れた筆跡が得られやすい。また、ペン先からのインキ吐出性も良化できるため、筆跡中の線とびやカスレの発生が抑制され、さらに筆感も良化するなど、より優れた筆記性を得ることができる。さらに、インキ中の分散安定性や、ボールペンチップや繊維束やポーラス体などのペン先からのインキ吐出性を考慮すると、板状酸化チタンのアスペクト比は、500以下であることが好ましく、400以下であることがより好ましく、350以下であることが特に好ましい。
特に、本願においては、上述のような、特定の平均粒子径と特定のアスペクト比(平均粒子径/平均厚み)を有する板状酸化チタンを用いることが好ましく、つまりは、平均粒子径が1μm~50μmであって、アスペクト比(平均粒子径/平均厚み)が2以上である板状酸化チタンを用いることが好ましい。これにより、板状形状を有する酸化チタンであるために得られる効果を十分に得ることができ、本発明の目的を十分に達成することができる。
なお、前記板状酸化チタンの平均粒子径とは、主面の輪郭線上の2点間の距離のうち、最大の長さと最小の長さとの平均値をいう。
また、前記板状酸化チタンの平均厚みとは、複数個の板状酸化チタンの厚み(2つの主面間の最小距離であって平板状粒子を横から見たときの厚み)の平均値をいう。
これらの具体的な測定手順としては、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、所定個数(例えばランダムに抽出された少なくとも10個(好ましくは20個~100個))の板状酸化チタンを観察し、各々の板状酸化チタンの粒子径および厚みを求める。また、各々の板状酸化チタンの粒子径を厚みで除した値(粒子径/厚み)を各板状酸化チタンのアスペクト比として算出する。そして、上記所定個数の板状酸化チタンの粒子径、厚みおよびアスペクト比を算術平均することにより、平均粒子径、平均厚みおよび平均アスペクト比を求めることができる。
【0020】
また、本発明に用いる板状酸化チタンは層状構造であることが好ましく、TiO八面体が平面的に稜共有した層状結晶が水分子などを挟んで数十~数百層積層した結晶構造を有するものであることがより好ましい。
また、本発明において、層状構造である板状酸化チタンは、Cu-Kα特性X線を用いた粉末X線回折により確認することができ、ブラッグ角2θにおいて、10.0±0.3°、19.7±0.3°、29.6±0.3°に層状構造に起因する回折ピークが観察されるものであることが好ましい。
板状酸化チタンが、上述のような層状構造であることで、本発明による筆記具用インキを用いて、紙などの浸透面や、フィルムなどの非浸透性の記録媒体に筆記した際、被筆記面の隠蔽性と筆跡の発色性が向上しやすく、また、着色剤本来の色調に対して、白く薄い色調になることが低減され、所望の着色剤本来の色調で、発色鮮明性に優れた筆跡が得られやすいためである。
さらに、本発明の板状酸化チタンは、上記効果の更なる向上を考慮すると、レピドクロサイト型の層状チタン酸から得られるものであることが好ましい。
【0021】
本発明に用いることができる板状酸化チタンとしては、例えば、市販品では、石原産業株式会社製の板状酸化チタン(LPTシリーズ)、住友化学株式会社製の板状酸化チタン(ルクセレンシルクシリーズ)などが挙げられる。
【0022】
本発明の筆記具用インキ組成物に用いる板状酸化チタンの添加量としては、インキ組成物の総質量を基準として、0.001質量%以上10質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、0.005質量%以上5質量%以下であり、さらに好ましくは、0.01質量%以上5質量%未満であり、特に好ましくは、0.02質量%以上4質量%以下であり、特に好ましくは、0.02質量%以上1質量%以下であり、最も好ましくは0.02質量%以上0.5質量%以下である。板状酸化チタンの添加量が、上記数値の範囲内であれば、被筆記面の隠蔽性やインキ垂下り性能を向上することができるとともに、顔料の分散性、インキ吐出性も向上できる。さらに、酸化チタンの白さが強調されて、筆跡の色調が、着色材本来の色調から、白っぽく薄い色調になることを抑制することができ、筆跡の発色隠蔽性を向上することができる。また、板状酸化チタンの添加量が、上記数値の範囲内にあると、被筆記面の隠蔽性が十分に得られ、筆跡の発色性に対しても影響が少ないので、好ましい。
【0023】
また、本発明によるインキ組成物は、板状酸化チタンと着色剤を含んでなるが、板状酸化チタンの添加量としては、着色剤を基準として、質量比で、1:0.001~1:1であることが好ましく、1:0.002~1:0.7であることがより好ましく、1:0.003~1:0.2であることが特に好ましい。本発明に用いる板状酸化チタンはきわめて少ない添加量で隠蔽性を得ることができるため、板状酸化チタンの添加量に対して着色剤の比率を従来よりも大幅に高くすることができる。この範囲にあると、酸化チタンの影響を受けて筆跡が薄くなることを抑えることができ、このため、得られる筆跡が所望の色調による鮮やかな発色と優れた隠蔽性を両立させることができる。さらに筆記性にも優れる。また、比重の重い酸化チタンの沈降性を抑制し、顔料の分散保持や経時安定性に優れたインキ組成物を得ることができるため、好ましい。
【0024】
<着色剤>
本発明による筆記具用インキ組成物は、着色剤を含んでなる。
着色剤としては、通常、筆記具用インキ組成物に用いる顔料、染料を使用することができる。
なお、本願における着色剤には、板状酸化チタンは含まないものとする。
【0025】
顔料としては、溶媒に分散可能であれば特に制限されるものではない。例えば、無機顔料、有機顔料、加工顔料などが挙げられるが、具体的にはカーボンブラック、アニリンブラック、群青、黄鉛、酸化チタン(板状酸化チタンを除く)、酸化鉄、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系、キノフタロン系、スレン系、トリフェニルメタン系、ペリノン系、ペリレン系、ジオキサジン系、アルミ顔料、パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料などが挙げられる。その他、染料などで樹脂粒子を着色したような着色樹脂粒子や、色材を媒体中に分散させてなる着色体を公知のマイクロカプセル化法などにより樹脂壁膜形成物質からなる殻体に内包又は固溶化させたマイクロカプセル顔料を用いても良い。また、顔料は、予め界面活性剤や樹脂を用いて微細に安定的に水媒体中に分散された水分散顔料製品などを用いてもよい。
染料としては、溶媒に溶解可能であれば特に制限されるものではない。例えば、直接染料、酸性染料、塩基性染料、含金染料、および各種造塩タイプ染料等が採用可能である。
これらの顔料および染料は、単独もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、本願においては、着色剤の色彩は問わないが、板状酸化チタンの効果を十分に得ることを考慮すると、無彩色(白色を除く)や有彩色を呈する着色剤を用いることが好ましく、黒色や有彩色を呈する着色剤を用いることがより好ましく、特には、有彩色を呈する着色剤を用いることが好ましい。
【0026】
これらの着色剤の中でも、板状酸化チタンの上に偏在しやすく、筆跡の耐水性、耐光性を向上できることから、顔料を用いることが好ましい。
さらに、本発明による筆記具用インキ組成物を用いて、紙などの浸透面や、フィルムなどの非浸透性の記録媒体に筆記した際、筆跡の下部には板状酸化チタンが、筆跡の上部には着色剤が偏在しやすくなることから、着色剤は、板状酸化チタンよりも比重が軽いものが好ましく、板状酸化チタンよりも平均粒子径が小さいものが好ましく、被筆記面の隠蔽性ならびに発色鮮明性に優れた筆跡を所望の色調で得られやすくなる。
板状酸化チタンの比重に対する、着色剤の比重の比率(着色剤の比重/板状酸化チタンの比重)としては、0.001~0.9であることが好ましく、0.01~0.9であることがより好ましく、0.1~0.8であることがより好ましく、0.2~0.6であることがより好ましい。
また、板状酸化チタンの平均粒子径に対する、着色剤の平均粒子径の比率(着色剤の平均粒子径/板状酸化チタン平均粒子径)としては、0.0005~5.0であることが好ましく、0.001~2.0であることがより好ましく、0.001~0.5であることがより好ましく、0.002~0.3であることがより好ましい。
【0027】
<溶媒>
本発明に用いる溶媒は、従来の筆記具用水性インキ組成物や筆記具用油性インキ組成物に用いられる溶媒を使用することができる。
具体的には水が挙げられ、水としては特に制限なく、例えば、水道水、イオン交換水、限外ろ過水または蒸溜水などが挙げられる。
また、ポリエチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコール溶剤や、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコールエーテル溶剤、さらには、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール溶剤なども挙げられる。
これらの溶媒は、単独もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
中でも、本発明においては、水または、水と水に溶解可能な有機溶剤(水溶性有機溶剤)からなる混合溶媒を用いることが好ましく、板状酸化チタンの分散安定性や、被筆記面の隠蔽性向上の効果や、筆跡の発色性向上の効果を効率良く得ることを考慮すると、本発明のインキ組成物は、筆記具用水性インキ組成物として調整することが好ましい。
【0029】
<その他の添加剤>
本発明によるインキ組成物は、必要に応じて任意の添加剤を含むことができる。好適に用いることができる添加剤については、説明すると以下の通りである。
【0030】
<界面活性剤>
本発明によるインキ組成物は、筆記具用水性インキ組成物として調整する場合には、界面活性剤を含んでなることが好ましい。
前記界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤などが挙げられ、アセチレン結合を構造中に有した界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤、脂肪酸塩なども挙げられる。
板状酸化チタンは、上述の通り、従来の酸化チタンに比べて、添加量を抑えながらも、優れた隠蔽性や発色性を得ることができるため、本願のインキ組成物は、優れたインキ吐出性が得られ、さらには筆感にも優れるものである。特に、ボールペンに用いる場合には、従来の略粒状の酸化チタンと比較して、板状酸化チタンが配向した状態で吐出されるため、ボールとボール座の摩耗を抑制できる傾向にあるため、優れた書き味を得ることができる。しかしながら、一方で、酸化チタンは、硬い粒子でもあることから、紙やフィルムなどの記録媒体に筆記した際に抵抗となる傾向があり、ボールの回転時に当該ボールの回転を阻害する恐れも有する。このため、本願のインキ組成物をボールペンに用いる場合には、潤滑剤としての効果も有するような界面活性剤をさらに用いることが好ましく、これにより書き味をより良化することができる。
前記界面活性剤としては、リン酸エステル系界面活性剤、脂肪酸塩を用いることが好ましく、特には、リン酸エステル系界面活性剤を用いることが好ましい。これは、リン酸エステル系界面活性剤のリン酸基がボールペンチップやボールなどの金属に対して吸着することで、より潤滑性が得られやすいためであり、筆記時の線とびを抑制し、ドライアップ時においてもカスレを抑制しやすい。
【0031】
リン酸エステル系界面活性剤の種類としては、スチレン化フェノール系、ノニルフェノール系、ラウリルアルコール系、トリデシルアルコール系、オクチルフェノール系、短鎖アルコール系等が上げられる。この中でも、フェニル骨格を有すると立体障害により潤滑性に影響が出やすいため、フェニル骨格を有さないリン酸エステル系界面活性剤を用いる方が、好ましい。
これらのリン酸エステル系界面活性剤は、単独もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
本発明においてリン酸エステル系界面活性剤は、HLB値が5~15であることが好ましく、8~14であることがより好ましく、10~13であることが特に好ましい。また、本発明においてリン酸エステル系界面活性剤が有するアルキル基またはアルキルアリル基の炭素数が6~30であることが好ましく、8~18であることがより好ましく、10~14であることが特に好ましい。これは、特定のHLB値または炭素数をもつ直鎖系のリン酸エステル系界面活性剤は、線とびやかすれなどが改善された良好な筆跡が安定して得られるなど優れた筆記安定性をもたらし、また、本発明に用いられる他の分散剤とともに分散効果を相乗的に改良し、同時に潤滑効果をもたらすことができるためである。
【0033】
本発明において、リン酸エステル系界面活性剤のHLB値とは、リン酸エステル系界面活性剤の原料非イオン性界面活性剤のHLB値を意味するものであり、一般式として、HLB=7+11.7log(Mw/Mo)、(Mw:親水基の分子量、Mo:親油基の分子量)から求めることができる。
【0034】
リン酸エステル系界面活性剤の具体例としては、プライサーフシリーズ(第一工業製薬株式会社)などが挙げられ、直鎖アルコール系のリン酸エステル系界面活性剤としては、プライサーフA212C、同A208B、同A213B、同A208F、同A215C、同A219B、同A208Nが挙げられ、スチレン化フェノール系のリン酸エステル系界面活性剤としては、プライサーフALが挙げられ、ノニルフェノール系としては、プライサーフ207H、同A212E、同A217Eが挙げられ、オクチルフェノール系としては、プライサーフA210Gが挙げられる。。
【0035】
リン酸エステル系界面活性剤を添加する場合、その含有率は、インキ組成物の総質量を基準として0.1質量%~2.0質量%が好ましく、0.5質量%~1.5質量%であることがより好ましい。
【0036】
前記脂肪酸の具体例としては、リノール酸やオレイン酸が挙げられ、具体例としては、OSソープ、NSソープ、FR-14、FR-25(花王株式会社)等が挙げられる。
【0037】
<デキストリン>
また、本発明によるインキ組成物は、筆記具用水性インキ組成物として調整する場合には、デキストリンを含んでなることが好ましい。
デキストリンは、ペン先に被膜を形成して、その被膜によりインキ中の水分の蒸発を防ぐ効果を有する。
本発明のインキ組成物は、板状酸化チタンを含んでなり、前記板状酸化チタンは溶媒に溶解せずに分散状態であることから、本発明のインキ組成物を収容した筆記具は、その筆記先端を大気に触れた状態で放置すると、当該筆記先端の隙間(インキが吐出される隙間)から溶媒が乾燥し続け、筆記先端内のインキが乾燥固化してしまい、ドライアップ時の書き出しにおいて非常に悪く、筆跡カスレが発生してしまったり、さらには、インキ流路などが詰まってしまい、インキの残量はあるものの、再び筆記ができなくなる恐れがあった。
特に、本発明によるインキ組成物をボールペンに用いる場合には、筆記先端が乾燥すると、酸化チタンが硬い粒子であるため、ボールの回転阻害を起こしやすく、ボールが回転しづらくなり、ドライアップ時の書き出しも劣りやすくなる傾向にある。このため、本願のインキ組成物は、優れた筆跡を得るためには、耐ドライアップ性能を向上させることが好ましい。デキストリンは、上述の通り、ペン先に被膜を形成してその被膜によって、インキ中の溶媒の蒸発を防ぐ効果を有するため、本発明のインキ組成物において、デキストリンを用いることは非常に効果的である。特に本発明のインキ組成物においては、板状酸化チタンを用いることで従来の略球状の酸化チタンと比較してその添加量をきわめて少なくすることができ、デキストリンをさらに組み合わせることで優れた耐ドライアップ性を得ることができる。
なお、デキストリンは、数個のα-グルコースがグリコシド結合によって重合した物質の総称で、食物繊維の一種であり、デンプンの加水分解により得られるものである。
【0038】
また、デキストリンは、グリコール溶剤を用いることで、溶解安定できる傾向にある。このため、デキストリンを用いる場合、前記水溶性有機溶剤には、グリコ-ル系溶剤を用いるのが良い。また、グリコール系溶剤は、吸湿効果もあるため、これを含有することで、筆記先端のインキが、乾燥時に、デキストリンによって形成される被膜の固化を和らげて、書き出し時の筆記性を向上できるため、好ましい。
【0039】
デキストリンの含有量は、インキ組成物全量に対し、0.1~5.0質量%が好ましい。これは、0.1質量%より少ないと、耐ドライアップ性能の効果が十分得られない傾向があり、5.0質量%を越えると、インキ中で溶解しづらい傾向があるためである。よりインキ中の溶解性について考慮すれば、0.1~3.0質量%が好ましく、よりドライアップ性能について考慮すれば、1.0~3.0質量%が最も好ましい。
【0040】
デキストリンの重量平均分子量については、5000~100000がより好ましい。重量平均分子量が100000を超えると、チップ先端に形成される被膜が硬く、ドライアップ時の書き出しにおいて、筆跡がカスレやすくなる傾向があり、一方、重量平均分子量が5000未満だと、吸湿性が高くなりやすく、チップ先端に被膜が柔らかくなりやすく、溶媒の蒸発を十分に抑制できずに、インキが乾燥固化して筆記不能の原因になってしまうため、5000~100000がより好ましい。また、重量平均分子量が20000より小さいと、被膜が薄くなりやすい傾向があるため、重量平均分子量が、20000~100000が最も好ましい。
【0041】
<インキ粘度調整剤>
また、本発明によるインキ組成物は、筆記具用水性インキ組成物として調整する場合には、インキ粘度調整剤を含んでなることが好ましい。
これは、本発明によるインキ組成物を筆記具に用いた場合、板状酸化チタン粒子などの沈降防止や、均一で良好な分散状態を維持しやすくする効果が期待できるためである。また、ボールペンに用いる場合には、インキ粘度調整剤としては、剪断減粘性付与剤を用いることが好ましい。これは、剪断減粘性付与剤を用いることで、インキ組成物の静置時の粘度を高く保ち、均一で良好な分散状態を維持しやすく、板状酸化チタン粒子などの沈降を防ぎながらも、筆記時には、チップ先端のボールの回転による剪断力をインキ組成物にあたえ、インキ組成物の粘度を低下させ、良好なインキ吐出性をもたらし、にじみなどなく、発色良好な筆跡を得ることができるためである。特に本発明の板状酸化チタンは、略球状であるような従来の酸化チタンとは異なり、板状形状であることから、インキの粘性抵抗を効率よく受け、沈降抑制効果がより優れる傾向にあるため、よって、本発明のインキ組成物において、板状酸化チタンとともに剪断減粘性付与剤を用いることが好ましい。
【0042】
剪断減粘性付与剤としては、架橋型アクリル酸重合体や、キサンタンガム、ウェランガム、サクシノグリカン、グアーガム、ローカストビーンガム、λ-カラギーナン、セルロース誘導体、ダイユータンガムなどの多糖類や、会合型増粘剤が挙げられる。これらのうち、板状酸化チタンの分散安定性など考慮すると、多糖類を用いることが好ましく、さらには、本発明によるインキ組成物をボールペンで用いる場合には、優れた分散安定性と良好な筆跡が得られやすい、キサンタンガムまたはサクシノグリカンを用いることが好ましく、特にはキサンタンガムを用いることが好ましい。
これらの剪断減粘性付与剤は、単独もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
本発明において、インキ粘度調整剤を含んでなる場合、本発明のインキ組成物のインキ粘度は、20℃環境下、剪断速度1.92sec-1で、100~5000mPa・sであることが好ましく、インキ粘度が上記数値範囲内であれば、インキ流動性、分散安定性に優れ、良好なインキ吐出性を有し、筆跡のカスレ、にじみなどない良好な筆跡を得ることができる。
【0044】
<有機樹脂粒子>
また、本発明によるインキ組成物は、有機樹脂粒子を含んでなることが好ましい。
有機樹脂粒子を用いることにより、有機樹脂粒子がボールとボール座の間に入り、クッション効果により書き味が向上するだけでなく、ボール座の摩耗抑制効果や、ペン先からのインキ漏れ抑制効果を付与することができる。特に、本発明によるインキ組成物をボールペンに用いる場合には、上記したように、板状酸化チタンは、配向した状態で吐出されるため、略球状形状の従来の酸化チタンに比べて、ボールとボール座の摩耗を抑制できる傾向にあるが、一方で、酸化チタンは硬い粒子であるために、筆記時のボール回転を阻害する恐れを有する。このため、有機樹脂粒子をさらに含んでなることで、有機樹脂粒子のクッション効果の相互作用が働き、ボール座の摩耗抑制が向上し、より優れた書き味を持続的に得ることができる傾向にある。このため、本発明によるインキ組成物に、有機樹脂粒子をさらに用いることは効果的であり、好ましい。
さらに、本発明によるインキ組成物は、前述のように、板状酸化チタンが凝集粒子を形成することで、ボールとチップ先端の内壁との間の隙間に物理的な障害を起こして、インキ漏れを抑制することができるが、有機樹脂粒子をさらに用いることで、板状酸化チタンが板状形状であるがために生じる凝集体の隙間も有機樹脂粒子が埋めることができるようになる。このため、板状酸化チタンと有機樹脂粒子とを用いることで、二つの相互作用が働き、インキ漏れ抑制効果をより一層得ることができる。よって、この点においても、本発明によるインキ組成物において、有機樹脂粒子を更に含んでなることは、効果的であり、好ましい。
有機樹脂粒子は、具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのオレフィン系樹脂粒子や、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミン・メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ナイロン樹脂などの化学構造中に窒素原子を含む含窒素樹脂粒子や、アクリル系樹脂粒子、スチレン系樹脂粒子、エポキシ樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子、セルロース樹脂粒子などが挙げられる。その中でも、板状酸化チタンとの相互作用により、インキ漏れ抑制効果が得られやすいことを考慮すれば、オレフィン系樹脂粒子、含窒素樹脂粒子を用いることが好ましく、より考慮すれば、オレフィン系樹脂粒子が好ましい。
これらの有機樹脂粒子は、単独もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
前記オレフィン系樹脂粒子の材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなどのポリオレフィン、ならびにそれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、書き味の向上やペン先からのインキ漏れ抑制効果を考慮すれば、ポリエチレンを用いることが好ましく、具体的には、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低分子ポリエチレン、変性ポリエチレン、変性高密度ポリエチレンなどが挙げられる。その中でもインキ漏れ抑制効果を考慮すれば、低密度ポリエチレン、低分子ポリエチレン、変性ポリエチレンが好ましく、特に低密度ポリエチレンは、他種のポリエチレンよりも融点が低く、柔らかい性質があるため、ポリエチレン粒子が密着しやすく、粒子間の隙間を生じづらく、インキ漏れしづらいため、低密度ポリエチレンが好ましく、さらに、低密度ポリエチレンは、柔らかいため、書き味を向上するなど、好適に用いることが可能である。オレフィン系樹脂粒子は、必要に応じてポリオレフィン以外の材料を含んでいてもよい。
【0046】
さらに、本発明によるインキ組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、防腐剤、濡れ剤、消泡剤、防錆剤、pH調整剤、気泡抑制剤、気泡吸収剤、定着剤などの各種添加剤を含むことができる。
【0047】
pH調整剤としては、アンモニア、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなどの塩基性無機化合物、酢酸ナトリウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどの塩基性有機化合物、乳酸およびクエン酸などが挙げられ、インキ組成物の経時安定性を考慮すれば、塩基性有機化合物を用いることが好ましく、より考慮すれば、弱塩基性であるトリエタノールアミンを用いることが好ましい。これらのpH調整剤は1種または、2種以上の混合物として使用してもかまわない。
【0048】
防錆剤としては、ベンゾトリアゾールおよびその誘導体、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、チオ硫酸ナトリウム、サポニン、またはジアルキルチオ尿素などが挙げられる。
【0049】
防腐剤としては、フェノール、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6-テトラクロロ-4-(メチルスルフォニル)ピリジン、2-ピリジンチオール-1-オキシドナトリウム、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0050】
キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(GEDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)およびそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩またはアミン塩などが挙げられる。
【0051】
また、本発明において、ペン先からの水分蒸発抑制効果をより一層向上するため、尿素、ソルビット、トリメチルグリシンなどのN,N,N-トリアルキルアミノ酸、ヒアルロン酸類などの保湿剤を用いても構わない。
【0052】
さらに、定着剤として、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、ポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂などを添加することができる。
【0053】
本発明によるインキ組成物の粘度は、使用される筆記具に適当な粘度に設定することができる。
本発明のインキ組成物を、剪断減粘性付与剤を用いて、ボールペンなどに用いる場合には、インキ組成物の粘度は、100mPa・s~5000mPa・sであることが好ましく、1000mPa・s~3500mPa・sであることがより好ましく、1500mPa・s~3000mPa・sであることがさらに好ましい。インキ組成物の粘度が上記数値範囲内であると、板状酸化チタンの分散安定性が経時的に維持されやすく、インキ分散安定性に優れ、ボールペンチップからの良好なインキ吐出性を有し、優れた筆記性を得ることができ、さらに、筆跡の隠蔽性、発色性に優れた筆跡を得ることができる。
なお、この場合のインキ粘度は、ブルックフィールド社製DV-II粘度計(CPE-42ローター)を用いて、20℃環境下、剪断速度1.92(sec-1)で測定することができる。
また、本発明のインキ組成物を、マーキングペンなどに用いる場合には、粘度は、1mPa・s~50mPa・sであることが好ましく、1mPa・s~20mPa・sであることがより好ましく、2mPa・s~10mPa・sであることがさらに好ましい。本発明のインキ組成物は、板状酸化チタンを用いているため、該酸化チタンの添加量を抑えて、優れた隠蔽性や発色鮮明性を有する筆跡を得ることができ、板状酸化チタンを用いた本発明のインキ組成物は、上述のような粘度範囲である低粘度インキにも、容易に調整することができる。
なお、この場合のインキ粘度は、B型回転粘度計(東京計器(株)製、BLアダプター使用)を用いて、20℃環境下、回転数30rpmの条件下で測定することができる。
【0054】
また、本発明によるインキ組成物のpHは、pH6~pH10であることが好ましく、pH7~pH9であることがより好ましい。インキ組成物のpHが上記数値範囲内であれば、インキの変色やインキ粘度が高くなることなどがなく、インキに影響がなく、用いることができる。本発明において、pHの値は、例えばIM-40S型pHメーター(東亜ディーケーケー株式会社製)により20℃にて測定することができる。
【0055】
本発明によるインキ組成物は、従来知られている任意の方法により製造することができる。具体的には、前記各成分を必要量配合し、プロペラ撹拌、ホモディスパー、またはホモミキサーなどの各種撹拌機やビーズミルなどの各種分散機などにて混合し、製造することができる。
【0056】
<筆記具>
本発明によるインキ組成物は、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップなどのペン芯またはボールペンチップなどをペン先としたマーキングペンやボールペン、金属製のペン先を用いた万年筆などの筆記具に用いることができる。
【0057】
本発明のインキ組成物を用いることができる筆記具としては、インキ組成物を直に充填する構成のものであってもよく、インキ組成物を充填することのできるインキ収容体またはインキ吸蔵体を備えるものであってもよい。また、板状酸化チタン粒子などを再分散させるために、インキ収容体にはインキを撹拌する撹拌ボールなどの撹拌体を内蔵してもよい。
【0058】
また、本発明のインキ組成物を用いることができる筆記具におけるペン先の出没機構は、特に限定されず、ペン先を覆うキャップを備えたキャップ式や、ノック式、回転式およびスライド式などの軸筒内にペン先を収容可能な出没式などが挙げられる。上述の通り、板状酸化チタンは、ボールペンチップをペン先としたボールペンに用いたときには、インキ吐出性に優れながらも、垂れ下がり防止効果(ペン先からのインキ漏れ抑制)も図れることから、インキ漏れ抑制に考慮する必要のある出没式筆記具、特に出没式ボールペンに、本発明によるインキ組成物を効果的に用いることができる。
【0059】
また、筆記具におけるインキ供給機構についても特に限定されるものではなく、例えば、(1)繊維束などからなるインキ誘導芯をインキ流量調節部材として備え、インキ組成物をペン先に供給する機構、(2)櫛溝状のインキ保留部を有する流量調節部材を備え、これを介在させ、インキ組成物をペン先に供給する機構、(3)弁機構によるインキ流量調節部材を備え、インキ組成物をペン先に供給する機構、および(4)ペン先を具備したインキ収容体または軸筒より、インキ組成物を直接、ペン先に供給する機構などを挙げることができる。
【0060】
一実施形態において、筆記具は、ボールペンであり、インキ逆流防止体を備えたボールペンであることが好ましい。
【0061】
ボールペンとしては、ボールペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、軸筒内部に直接インキを収容し、櫛溝状のインキ流量調節部材や繊維束からなるインキ流量調節部材を介在させ、インキ流量調節部材とチップが連結されてなる構造を備えるボールペン、軸筒内にインキを充填したインキ収容管を有し、インキ収容管はボールを先端部に装着したチップに連通しており、さらにインキの端面には逆流防止用の液栓が密接しているボールペンを例示できる。
【0062】
ボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック、樹脂、ゴム等からなるものが用いられるのが一般的である。またボール径は一般に0.2~3.0mm、好ましくは0.25~1.5mm、より好ましくは0.25~1.0mmのものが適用できる。
【0063】
本発明によるインキ組成物をボールペンに用いた場合、そのボール径とインキ消費量とは特定の関係を満たすことが好ましく、ボールペンの100mあたりのインキ消費量をA(mg)、前記ボール径をB(mm)とした場合、100≦A/B≦800の関係とすることが好ましく、200≦A/B≦700の関係とすることが好ましい。
板状酸化チタンを用いた本願のインキ組成物は、ボール径とインキ消費量とは特定の関係を上記範囲と設定しやすく、これにより、インキ流動性を良好とし、優れたペン先からのインキ吐出性が得られ、発色性、隠蔽性に優れた筆跡をより得ることが可能となる。
【0064】
なお、インキ消費量については、20℃、筆記用紙JIS P3201筆記用紙上に筆記角度70°、筆記荷重100gの条件にて、筆記速度4m/分の速度で、試験サンプル5本を用いて、らせん筆記試験を行い、その100mあたりのインキ消費量の平均値を、100mあたりのインキ消費量と定義する。
【0065】
また、ボールペンチップにおけるボールの縦軸方向の移動可能量(クリアランス)は、ボールペンの製造時または使用開始時に、20~60μmとするのが好ましく、30~50μmとすることが好ましい。これは、上記範囲であれば、板状酸化チタンのペン先からの吐出性を向上させることができ、良好なインキ吐出性が得られ、十分な隠蔽性良好な筆跡が得られやすい。さらに、板状酸化チタンの垂れ下がり防止効果(ペン先からのインキ漏れ抑制)も十分に図れることができる。また、クリアランスが上記範囲内であれば、前記の比A/Bも調整しやすい。
【0066】
ボールペンチップのボールの縦軸方向への移動可能量(クリアランス)とは、ボールがボールペンチップ本体の縦軸方向への移動可能な距離を示す。ここで、移動可能量は、ボールおよびボール座が使用によって摩耗するため、使用に応じて一般的に増大していく傾向にある。そして、移動可能量はインク吐出量と関係する。したがって、一般的に、ボールペンの製造時または使用開始時における移動可能量は、上記の範囲に設定されるので、安定した筆記特性を達成するために、ボールペンの使用終了時まで、上記範囲内であることが好ましい。
【0067】
一実施形態において、筆記具は、マーキングペンであり、ペン先は、特に限定されず、例えば、繊維チップ、フェルトチップまたはプラスチックチップなどであってよく、さらに、その形状は、砲弾型、チゼル型または筆ペン型などであってよい。
【実施例0068】
下記の配合組成および方法により、筆記具用インキ組成物を得た。
(実施例1)
・板状酸化チタン 0.5質量%
(石原産業株式会社製、商品名:LPT-106、平均粒子径10~35μm、平均厚み0.1μm、平均アスペクト比100~350)
・着色剤 6.5質量%
(マゼンタ色顔料分散体(顔料分20%、水溶性アクリル樹脂4%含有)、マゼンタ色顔料:Pigment Red 122、平均粒子径0.12μm、比重1.5g/cm
・着色剤 23.5質量%
(イエロー顔料顔料分散体(顔料分20%、水溶性アクリル樹脂4%含有)、イエロー色顔料:Pigment Yellow 110、平均粒子径0.16μm、比重1.8g/cm
・リン酸エステル系界面活性剤 1.0質量%
(第一工業製薬株式会社製、商品名:プライサーフA215C)
・デキストリン 1.5質量%
(三和澱粉工業株式会社製、商品名:サンデック#70FN)
・剪断減粘性付与剤 18.5質量%
(キサンタンガム、商品名:ケルデント、固形分含有量2.6%)
・有機樹脂粒子 0.25質量%
(低密度ポリエチレン樹脂粒子、三井化学株式会社製、商品名:ケミパールM200、固形分含有量40%、平均粒子径:6μm)
・イオン交換水 残部
【0069】
剪断減粘性付与剤を除く各成分を混合し、ディスパーで攪拌などしてベースインキを作製した。その後、上記作製したベースインキを加温しながら、剪断減粘性付与剤を投入してホモジナイザー攪拌機を用いて均一な状態となるまで充分に混合攪拌して、実施例1のインキ組成物を得た。
さらに、IM-40S型pHメーター(東亜ディーケーケー株式会社製)を用いて、20℃におけるインキ組成物のpH値を測定した結果、pH値は8.6であった。また、得られたインキ組成物の粘度をE型回転粘度計(機種:DV-II+Pro、ローター:CPE-42、ブルックフィールド社製)により、20℃環境下にて剪断速度1.92sec-1(回転数0.5rpm)の条件にてインキ粘度を測定したところ、2100mPa・sであった。
【0070】
なお、板状酸化チタンとして用いた商品名LPT-106は、レピドクロサイト型の層状チタン酸から得られるものであり、TiO八面体が平面的に稜共有した層状結晶が水分子などを挟んで数十~数百層積層した層状構造であった。また、Cu-Kα特性X線を用いた粉末X線回折により、ブラッグ角2θにおいて、10.0±0.3°、19.7±0.3°、29.6±0.3°に層状構造に起因する回折ピークが観察された。
【0071】
(実施例2~9、比較例1~3)
インキ組成物の配合を表1、表2に示した配合とした以外は、実施例1と同じ方法にて、実施例2~9、比較例1~3の筆記具用インキ組成物を得た。
【0072】
なお、比較例で使用した材料の詳細は以下の通りである。
・略球状酸化チタン
(石原産業株式会社製、商品名:CR-50、ルチル型、平均粒子径:0.25μm)
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
実施例1~9および比較例1~3で得られたインキ組成物(1.0g)を、直径0.5mmの超硬合金製ボールを回転自在に抱持したボールペンチップ(ボールの縦軸方向の移動量(クリアランス)25μm)を先端に有するインキ収容体の内部に充填させたレフィルを作製し、このレフィルを株式会社パイロットコーポレーション製のゲルインキボールペン(商品名:JUICE)に装着し、ボールペンを得た。得られたボールペンを試験用ボールペンとし、以下の試験を行った。
なお、実施例1のインキ組成物を用いた試験用ボールペンの100mあたりのインキ消費量は、140mgであった。
【0076】
(被筆記面の隠蔽性の評価)
上記試験用ボールペンにより、筆記試験用紙の一部を塗りつぶし、得られた筆跡の被筆記面に対する隠蔽性を目視により観察した。なお、筆記試験用紙として、フィルム(黄色、ポリエステル製)を用いた。
A:筆跡は、被筆記面を十分に隠蔽しており、良好な筆跡が得られている。
B:筆跡は、被筆記面を隠蔽しているものの十分でなく、被筆記面の色がやや透過している。
C:筆跡は視認できるが、被筆記面をほとんど隠蔽しておらず、被筆記面の色が透過している。
D:筆跡の視認ができず、被筆記面を全く隠蔽していない。
【0077】
(筆跡発色鮮明性の評価)
上記試験用ボールペンにより、筆記試験用紙に筆記し、得られた筆跡の色調および発色鮮明性を目視により観察した。なお、筆記試験用紙としてJIS P3201、筆記用紙Aを用いた。
A:筆跡は、所望の色調で、極めて鮮やかに発色している。
B:筆跡は、所望の色調に比べ、極わずかに白く薄くなるものの、鮮やかに発色している。
C:筆跡は、所望の色調に比べてわずかに白く薄くなり、やや鮮明性に劣る発色である。
D:筆跡は、所望の色調に比べて白く薄くなり、鮮明性に劣るものであった。
【0078】
(筆記性(1)の評価(線トビカスレの有無))
上記試験用ボールペンにより、筆記試験用紙に螺旋状の丸を連続筆記し、得られた筆跡の状況を目視にて観察した。なお、筆記試験用紙としてJIS P3201、筆記用紙Aを用いた。
A:筆跡は発色良好で線とびやカスレなどない、良好な筆跡が得られた。
B:筆跡に線とびやカスレがわずかに確認されたが、発色良好な筆跡が得られた。
C:筆跡に線とびやカスレが確認されたが、実用上問題のないレベルであった。
D:筆跡に線とびやカスレが多数確認されたり、良好な筆跡が得られなかったり、筆記不能となるものが見られた。
【0079】
(筆記性(2)の評価(筆感))
上記試験用ボールペンにより、筆記試験用紙に螺旋状の丸を連続筆記し、得られた筆跡の状況を目視にて観察した。なお、筆記試験用紙としてJIS P3201、筆記用紙Aを用いた。
A:極めて滑らかな書き味であった。
B:滑らかな書き味であった。
C:僅かに書き味が重く感じたが、実用上問題のないレベルであった。
D:重く、滑りが悪い書き味であった。
【0080】
なお、実施例1~9および比較例1~3で得られたインキ組成物(1.0g)を、直径0.5mmの超硬合金製ボールを回転自在に抱持したボールペンチップ(ボールの縦軸方向の移動量(クリアランス)40μm)を先端に有するインキ収容体の内部に充填させたレフィルを作製し、このレフィルを株式会社パイロットコーポレーション製のゲルインキボールペン(商品名:JUICE)に装着し、ボールペンを得た。得られたボールペンを試験用ボールペンとし、被筆記面の隠蔽性、筆跡発色鮮明性、筆記性を評価したところ、表1、表2と同じ結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の筆記具用インキ組成物は、万年筆、ボールペン、筆ペン、カリグラフィーペン、各種マーカー類など、各種筆記具に用いることができる。さらに、前記インキ組成物を収容した筆記具として好適に用いることができる。