(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096650
(43)【公開日】2022-06-29
(54)【発明の名称】アンモニア分解ユニット一体型水素供給ステーション
(51)【国際特許分類】
F17C 13/00 20060101AFI20220622BHJP
【FI】
F17C13/00 301Z
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021204529
(22)【出願日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】17/124,594
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】591035368
【氏名又は名称】エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】ジョーセフ ピー.コーエン
(72)【発明者】
【氏名】シモーネ エル.コーサレ
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー アール.キベロス
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172AB11
3E172AB20
3E172BA01
3E172BA04
3E172BD03
3E172BD05
3E172DA61
3E172EA02
3E172EA35
3E172EA46
3E172EA50
3E172KA03
(57)【要約】
【課題】水素供給ステーションとアンモニア分解ユニットとを備えるシステムを提供する。
【解決手段】システムであって、アンモニアを水素と窒素に分離するアンモニア分解ユニットと、ガス動作弁(GOV)を備えるアンモニア分解ユニットから車両タンクに水素を供給するための水素供給ステーションと、アンモニア分解ユニットからの水素を圧縮する1つ以上の水素圧縮ユニットと、圧縮された水素を車両タンクに分注するための1つ以上の分注ユニットであって、各々が水素を車両タンクに通すためのノズルを備える、分注ユニットと、を備え、アンモニア分解ユニットからの窒素が、例えば、GOVのうちの1つ以上の動作、水素圧縮ユニットのうちの1つ以上をブランケティングするため、分注ユニットのうちの1つ以上をブランケティングするためおよび/または排出するため、ノズルの凍結を防止するために使用の間にノズルのうちの1つ以上を乾燥させるために使用される、システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、アンモニアを水素と窒素に分離するアンモニア分解ユニットと、ガス動作弁(GOV)を備える前記アンモニア分解ユニットから車両タンクに水素を供給するための水素供給ステーションと、前記アンモニア分解ユニットからの前記水素を圧縮する1つ以上の水素圧縮ユニットと、前記圧縮された水素を車両タンクに分注するための1つ以上の分注ユニットであって、各々が前記水素を前記車両タンクに通すためのノズルを備える、分注ユニットと、を備え、
前記アンモニア分解ユニットからの窒素が、以下の
a)前記GOVのうちの1つ以上の前記動作、
b)前記水素圧縮ユニットのうちの1つ以上をブランケティングするため、
c)前記分注ユニットのうちの1つ以上をブランケティングするためおよび/または排出するため、
d)ノズルの凍結を防止するために使用の間に前記ノズルの1つ以上を乾燥させるため、のうちの1つ以上に使用される、システム。
【請求項2】
前記アンモニア分解ユニットから得られる前記窒素の水分含有量は、露点が-20℃以下になるようなものである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記供給ステーションが1つ以上の水素貯蔵タンクを備え、前記アンモニア分解ユニットからの窒素を使用して動作する充填-GOVによって、前記水素貯蔵タンクのうちの1つ以上の充填が制御される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記アンモニア分解ユニットからの窒素を使用して動作する分注-GOVによって、前記分注ユニットのうちの1つ以上への水素の流れが制御される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記システムが1つ以上の圧縮ユニットを備え、前記アンモニア分解ユニットからの窒素を使用して動作する圧縮-GOVによって前記圧縮ユニットのうちの1つ以上への水素の流れが制御される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記GOVのうちの1つ以上が電子制御弁(ECV)によって作動される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記GOVのうちの1つ以上の前記動作に使用される前記窒素が、0.4~0.9MPaの圧力である、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記1つ以上のGOVの前記動作に使用される前に、前記アンモニア分解ユニットからの窒素が貯蔵される器具用窒素サージ容器を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
残留アンモニアおよび/または水素が、窒素が前記1つ以上のGOVの前記動作に使用される前に、前記窒素から除去される、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記アンモニア分解ユニットからの窒素が、前記水素圧縮ユニットのうちの1つ以上を、圧縮ユニットごとに50~450SCFH(1.4~12.6Nm3/hr)の流量の窒素でブランケティングするために使用される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記アンモニア分解ユニットの上流で水素が圧縮される、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
水素が30MPa以上の圧力に圧縮される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
請求項1に記載のシステムを使用して、車両タンクに水素を供給するプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一体型アンモニア分解ユニットを有する水素供給ステーションを備えるシステムに関するものであり、このようなシステムを使用して車両タンクに燃料を供給するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
水素供給ステーションにおける水素駆動車両の燃料供給のためのいくつかの構成およびシステムは、当該技術分野において既知である。例えば、US2004/163731(A1)は、自己完結型移動式ガス供給ステーションを開示している。
【0003】
圧縮水素や液体水素を供給することによって、または水素を含む化学物質の「キャリア」から、ステーションでまたはその近くで水素を分離することによってのいずれかで、このようなステーションに水素が送達され得る。
【0004】
例えば、US2009/304574(A1)は、水素供給ステーションが液体アンモニアを受け取り、触媒分解によって当該アンモニアから水素が生産される構成および方法を記載している。その後、このようにして生産された水素は圧縮され、充填ドックに送られる。通常、アンモニア分解ユニットで生産された窒素も、廃棄ガスとして空気中に排出される。
【0005】
アンモニアをキャリアとして使用して水素供給ステーションに水素を送達する、このようなシステムをさらに改善する必要性が依然として存在することが見出されている。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明は、ユニット間の相乗効果をさらに利用し、ひいては、より高度なシステム全体の統合性を提供する、水素供給ステーションとアンモニア分解ユニットとを備えるシステムを提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、アンモニア分解ユニットからの窒素をさらに水素供給ステーションの動作に使用すれば、この目的を達成することができるという知見に基づくものである。
【0008】
本発明のいくつかの好ましい態様を以下に概説する。
【0009】
態様1.システムであって、アンモニアを水素と窒素に分離するアンモニア分解ユニットと、ガス動作弁(GOV)を備えるアンモニア分解ユニットから車両タンクに水素を供給するための水素供給ステーションと、アンモニア分解ユニットからの水素を圧縮する1つ以上の水素圧縮ユニットと、圧縮された水素を車両タンクに分注するための1つ以上の分注ユニットであって、各々が水素を車両タンクに通すためのノズルを備える、分注ユニットと、を備え、
アンモニア分解ユニットからの窒素が、以下の
a)GOVのうちの1つ以上の動作、
b)当該水素圧縮ユニットのうちの1つ以上をブランケティングするため、
c)当該分注ユニットのうちの1つ以上をブランケティングするためおよび/または排出するため、
d)ノズルの凍結を防止するために使用の間に当該ノズルの1つ以上を乾燥させるため、のうちの1つ以上に使用される、システム。
【0010】
態様2.アンモニア分解ユニットから得られる窒素の水分含有量は、露点が-20℃以下になるような、態様1に記載のシステム。
【0011】
態様3.供給ステーションが1つ以上の水素貯蔵タンクを備え、アンモニア分解ユニットからの窒素を使用して動作する充填-GOVによって、当該水素貯蔵タンクのうちの1つ以上の充填が制御される、態様1または2に記載のシステム。
【0012】
態様4.アンモニア分解ユニットからの窒素を使用して動作する分注-GOVによって、当該分注ユニットのうちの1つ以上への水素の流れが制御される、態様1~3のいずれか1つに記載のシステム。
【0013】
態様5.システムが1つ以上の圧縮ユニットを備え、アンモニア分解ユニットからの窒素を使用して動作する圧縮-GOVによって当該圧縮ユニットのうちの1つ以上への水素の流れが制御される、態様1~4のいずれか1つに記載のシステム。
【0014】
態様6.当該GOVのうちの1つ以上が電子制御弁(ECV)によって作動される、態様1~5のいずれか1つに記載のシステム。
【0015】
態様7.GOVのうちの1つ以上の動作に使用される窒素が、0.4~0.9MPaの圧力である、態様1~6のいずれか1つに記載のシステム。
【0016】
態様8.当該1つ以上のGOVの動作に使用される前に、アンモニア分解ユニットからの窒素が貯蔵される器具用窒素サージ容器を備える、態様1~7のいずれか1つに記載のシステム。
【0017】
態様9.残留アンモニアおよび/または水素が、それが当該1つ以上のGOVの動作に使用される前に、窒素から除去される、態様1~8のいずれか1つに記載のシステム。
【0018】
態様10.アンモニア分解ユニットからの窒素が、当該水素圧縮ユニットのうちの1つ以上を、圧縮ユニットごとに50~450SCFH(1.4~12.6Nm3/hr)の流量の窒素でブランケティングするために使用される、態様1~9のいずれか1つに記載のシステム。
【0019】
態様11.アンモニア分解ユニットの上流で水素が圧縮される、態様1~10のいずれか1つに記載のシステム。
【0020】
態様12.水素が30MPa以上の圧力に圧縮される、態様11に記載のシステム。
【0021】
態様13.態様1~12のいずれか1つに記載のシステムを使用して、車両タンクに水素を供給するプロセス。
【0022】
本発明のシステムは、水素だけでなく、アンモニア分解ユニットで生成された窒素も利用し、ひいては、システムをより良好に統合し、動作コストを削減する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明は以下、添付の図とともに記載され、同様の数字は、同様の要素を示す。
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の一体型システムの一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
第1の実施形態では、本発明のシステムは、アンモニアを水素と窒素に分離するアンモニア分解ユニットと、ガス動作弁(GOV)を備えるアンモニア分解ユニットから車両タンクに水素を供給するための水素供給ステーションと、アンモニア分解ユニットからの水素を圧縮する1つ以上の水素圧縮ユニットと、圧縮された水素を車両タンクに分注するための1つ以上の分注ユニットであって、各々が水素を車両タンクに通すためのノズルを備える、分注ユニットとを備え、アンモニア分解ユニットからの窒素は、GOVのうちの1つ以上の動作に使用される。
【0026】
第2の実施形態では、本発明のシステムは、アンモニアを水素と窒素に分離するアンモニア分解ユニットと、ガス動作弁(GOV)を備えるアンモニア分解ユニットから車両タンクに水素を供給するための水素供給ステーションと、アンモニア分解ユニットからの水素を圧縮する1つ以上の水素圧縮ユニットと、圧縮された水素を車両タンクに分注するための1つ以上の分注ユニットであって、各々が水素を車両タンクに通すためのノズルを備える、分注ユニットとを備え、アンモニア分解ユニットからの窒素は、当該水素圧縮ユニットの1つ以上をブランケティングするために使用される。
【0027】
第3の実施形態では、本発明のシステムは、アンモニアを水素と窒素に分離するアンモニア分解ユニットと、ガス動作弁(GOV)を備えるアンモニア分解ユニットから車両タンクに水素を供給するための水素供給ステーションと、アンモニア分解ユニットからの水素を圧縮する1つ以上の水素圧縮ユニットと、圧縮された水素を車両タンクに分注するための1つ以上の分注ユニットであって、各々が水素を車両タンクに通すためのノズルを備える、分注ユニットとを備え、アンモニア分解ユニットからの窒素は、当該分注ユニットの1つ以上をブランケティングおよび/または排出するために使用される。
【0028】
第4の実施形態では、本発明のシステムは、アンモニアを水素と窒素に分離するアンモニア分解ユニットと、ガス動作弁(GOV)を備えるアンモニア分解ユニットから車両タンクに水素を供給するための水素供給ステーションと、アンモニア分解ユニットからの水素を圧縮する1つ以上の水素圧縮ユニットと、圧縮された水素を車両タンクに分注するための1つ以上の分注ユニットであって、各々が水素を車両タンクに通すためのノズルを備える、分注ユニットとを備え、アンモニア分解ユニットからの窒素は、ノズルの凍結を防止するために使用の間に当該ノズルの1つ以上を乾燥させるために使用される。
【0029】
本明細書に記載されるすべての実施形態において、本発明のシステムは、水素だけでなく、アンモニア分解ユニット内で生成される窒素もシステム内でさらに使用されるという有利な相乗効果を提供する。これは、例えば、圧縮機をブランケティングするためおよび/またはシステムのGOVを動作させるために、外部の窒素源が不要となるため、システムの運用コストを低減する。
【0030】
本発明のさらなる利点は、アンモニア分解によって得られた窒素は水分含有量が非常に低く、水分含有量を減らす必要がなく、GOVの動作に特に適していることである。通常、計装用ガスを得るために空気圧縮機が使用されるが、計装用ガスの流れに水が混入することが多く、弁を損傷する可能性がある。
【0031】
好ましくは、本発明のシステムは、例えば、a)およびb)、a)およびc)、a)およびd)、b)およびc)、またはc)およびd)などの窒素使用オプションa)~d)のうち少なくとも2つを備え、さらに好ましくはa)、b)およびc)、a)、b)およびd)、またはb)、c)およびd)などの窒素使用オプションのうち少なくとも3つを備え、なおさらに好ましくはすべての窒素使用オプションa)~d)を備える。
【0032】
例えば、本発明のシステムでは、アンモニア分解ユニットからの窒素を、少なくとも、1つ以上のGOVの動作と、1つ以上の当該水素圧縮ユニットのブランケティングに使用することができる。
【0033】
アンモニア分解ユニットから得られる窒素の水分含有量は、露点が-20℃以下になるようなものであり、露点が-30℃以下であればより好ましい。
【0034】
好ましくは、供給ステーションは、1つ以上の水素貯蔵タンクをさらに備え、当該水素貯蔵タンクのうちの1つ以上の充填は、アンモニア分解ユニットからの窒素を用いた充填-GOVによって制御される。
【0035】
さらに、好ましくは、供給ステーションは1つ以上の分注ユニットを備え、当該分注ユニットのうちの1つ以上への水素の流れは、アンモニア分解ユニットからの窒素を用いて動作する分注-GOVによって制御される。
【0036】
なおさらに、本システムは、1つ以上の圧縮ユニットを備え、当該圧縮ユニットのうちの1つ以上への水素の流れは、アンモニア分解ユニットからの窒素を用いて動作する圧縮-GOVによって制御される。
【0037】
好ましくは、本発明のシステムで使用される1つ以上のGOV、より好ましくはすべてのGOVが、電子制御弁(ECV)によって作動される。
【0038】
時には空気圧作動式弁とも呼ばれるGOVとして、Tescom社やSwagelok社などの弁、例えば、Tescom社のVAC製品ラインやSwagelok社の作動式H83ボール弁を使用することが可能である。
【0039】
1つ以上のGOVの動作に使用される窒素は、0.55~0.7MPaの圧力など、0.4~0.9MPaの圧力であることが好ましい。
【0040】
好ましくは、窒素は、0.55~0.7MPaの圧力など、0.4~0.9MPaの圧力でアンモニア分解ユニットから引き出される。
【0041】
しかしながら、アンモニア分解ユニットから引き出された窒素が異なる圧力を有する場合、その圧力は上記の範囲に収まるように適合されなければならない場合がある。例えば、アンモニア分解ユニットから引き出された窒素が0.1MPaの圧力を有する場合、上述のように所望の範囲内に収まるように圧力を増加させる必要がある。
【0042】
好ましくは、当該1つ以上のGOVの動作に使用される前に、システムは、アンモニア分解ユニットからの窒素が貯蔵される器具用窒素サージ容器を備える。
【0043】
窒素サージ容器は、生産速度と使用率を一致させるために使用される。アンモニア分解ユニットでの窒素生産は、通常、ほぼ一定の速度で行われる。
【0044】
例えば、窒素生産速度は、2500~7500kg/1日の容量範囲の車両に水素を分注する場合(8~24時間分注/1日の場合)、窒素生産速度は150~6,000kg/hr、300~4,000kg/hrなどとすることができる。また、電力も生成される場合、窒素生産速度はより高くなり、例えば、300~1,000kg/hrなど、または600kg/hr以上になる。
【0045】
窒素使用率は、弁が作動していないときのゼロから、弁が作動しているときの10sl/秒を超えるまで変化する。窒素サージタンクからは、適切な使用率で窒素が引き出される。
【0046】
必要に応じて、窒素使用オプションa)~d)のうちの1つ以上の動作で使用する前に、残留アンモニアおよび/または水素を窒素から除去する。
【0047】
アンモニア分解ユニットからの窒素が当該水素圧縮ユニットの1つ以上をブランケティングするために使用される場合(窒素使用オプションb)、通常、圧縮ユニットごとに50~450SCFH(1.4~12.6Nm3/hr)、例えば、100~300SCFH(2.8~8.4Nm3/hr)の流量の窒素が使用される。
【0048】
ブランケティング用の窒素は、圧縮ユニットのクランクケース内のオイル上の領域に注入され、密封リングを越えて漏出した水素が、クランクケース内の酸素と置換されて可燃性雰囲気を作り出すのを防ぐことができる。この窒素流の典型的な流量は、3.5Nm3/hrである。
【0049】
ブランケティング用の窒素はまた、圧縮機のフレームとシリンダとの間のディスタンスピースにも注入され、密封リングを越えて漏出した水素が酸素を置換してディスタンスピース内に可燃性雰囲気を作り出すのを防ぐことができる。この窒素の典型的な流量は、ディスタンスピースごとに0.26Nm3/hrである。したがって、4つのディスタンスピースを有する圧縮機は、1.2Nm3/hrを使用することになる。
【0050】
ブランケティング用の窒素のさらなる使用は、圧縮ユニットの圧力パッキング領域内であり得る。この領域では、密封リングを越えて水素が漏出しないように、窒素が加圧緩衝物として使用される。各パッキンで通常0.29Nm3/hr使用するので、4つのパッキンを有する圧縮機では1.16Nm3/hr使用することになる。
【0051】
ブランケティング用窒素の注入は、圧縮ユニットが稼動している間、および圧縮ユニットがアイドル状態である間の両方で使用され得る。
【0052】
アンモニア分解ユニットからの水素は、アンモニア分解ユニットの上流で圧縮され、好ましくは30MPa以上の圧力まで圧縮される。水素は、H35燃料の場合は40MPa以上、H70燃料の場合は90MPa以上まで加圧される。
【0053】
本発明はさらに、上記の実施形態のいずれか1つのシステムを使用して、車両タンクに水素を供給するためのプロセスに関する。
【実施例0054】
図1は、アンモニア分解ユニット1を使用してアンモニアを水素および窒素に分解する、本発明のシステムおよびプロセスの実施形態を示す。アンモニア分解ユニット1からの窒素は、GOV6,7,8,9の動作および水素圧縮ユニット3のブランケティングの両方で使用される。
【0055】
アンモニアは、好ましくは緑色アンモニア源からアンモニア分解ユニット1に送られる。アンモニア分解ユニット1は、NH3をN2およびH2に分離する。分解ユニット1は、5~40bargの圧力範囲で動作してもよく、最も一般的には7~20bargの範囲で動作する。
【0056】
アンモニア分解ユニット1からの窒素は、通常約0.7MPaでデバイスを出る。窒素洗浄ユニット2で残留アンモニアおよび/または水素を除去する任意選択の洗浄を行った後、窒素の一部はGOV6,7,8,9の動作にさらに使用するために窒素サージ容器5に誘導され、一部はブランケティング用の水素圧縮機3に方向付けられる。
【0057】
窒素サージ容器5に方向付けられた窒素は、貯蔵のために0.55~0.7MPaの圧力になるように、窒素圧縮機4内で任意選択で圧縮され得る。
【0058】
圧縮機3のブランケティングのために、クランクケース内のオイル上の領域に窒素を注入して、密封リングを越えて漏出した水素がクランクケース内の酸素を置換して可燃性雰囲気を作り出すのを防ぐ。この窒素流の典型的な流量は、3.5Nm3/hrである。また、窒素は、圧縮機のフレームとシリンダとの間のディスタンスピースにも注入され、密封リングを越えて漏出した水素が酸素を置換してディスタンスピース内に可燃性雰囲気を作り出すのを防ぐ。この窒素の典型的な流量は、ディスタンスピースごとに0.26Nm3/hrである。4つのディスタンスピースを有する圧縮機は、1.2Nm3/hrを使用することになる。
【0059】
窒素のさらなる使用は、圧縮機の圧力パッキング領域内である。この領域では、密封リングを越えて水素が漏出しないように、窒素が加圧緩衝物として使用される。各パッキンで通常0.29Nm3/hr使用するので、4つのパッキンを有する圧縮機では1.16Nm3/hr使用することになる。窒素注入は、圧縮機が稼動している間、および圧縮機がアイドル状態である間の両方で使用される。
【0060】
充填-GOV6,7は、供給ステーションのどの水素貯蔵バンクが高圧水素を受け取るかを選択するために使用される。充填-GOV6,7ならびに分注-GOV8,9や圧縮機-GOV(図示せず)などのシステム内の任意の他のGOVは、アンモニア分解ユニット1からの窒素を用いて動作し、適切な電磁弁(ECV)12,13,14,15が開くと作動する。車両の充填準備が整うと、適切なカスケード弁8,9が窒素サージ容器からのN2を使用して開いて、貯蔵タンク10、11からのH2がH2分注器16に流れ、最終的には車両タンク(図示せず)に流れることを可能にする。カスケード方式は、当業者に周知であり、例えば、US8,899,278に記載され、その第1列目の第17行目から始まる。
【0061】
アンモニア分解ユニット1からのH
2は、
図1に示す往復式H
2圧縮機3などの1つ以上の圧縮機における1つ以上の圧縮段階に供され、H35燃料の場合、40MPa以上、またはH70燃料の場合、90MPa以上に加圧される。その後、圧縮された水素は、上述のように充填-GOV6,7によって制御される水素貯蔵バンク10,11のうちの1つに方向付けられる。