(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096742
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】調理器用トッププレート
(51)【国際特許分類】
H05B 6/12 20060101AFI20220623BHJP
F24C 15/10 20060101ALI20220623BHJP
C03C 17/22 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
H05B6/12 305
F24C15/10 B
C03C17/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020209877
(22)【出願日】2020-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593046429
【氏名又は名称】日電硝子加工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土谷 武史
(72)【発明者】
【氏名】横山 尚平
【テーマコード(参考)】
3K151
4G059
【Fターム(参考)】
3K151BA62
4G059AA01
4G059AC08
(57)【要約】
【課題】トーンジャンプのないグラデーションを有する調理器用トッププレートを提供する。
【解決手段】本発明の調理器用トッププレートは、ガラス基板と、ガラス基板の一方主面上に、外観色の濃度が連続的に変化する部分を装飾層とを備え、装飾層が、規則的に並べられた複数のパターン5を有し、各パターン5が塗膜の濃度が同一または異なる少なくとも2以上の領域(第1,第2の領域6,7)を含み、パターン5が、外観色の濃淡度が連続的に変化する方向に、パターン5における塗膜の平均濃度が連続的に変化するように並べられていることを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板と、
前記ガラス基板の一方主面上に、外観色の濃度が連続的に変化する部分を含む装飾層とを備え、
前記装飾層が、規則的に並べられた複数のパターンを有し、各前記パターンが塗膜の濃度が同一または異なる少なくとも2以上の領域を含み、
前記パターンが、前記外観色の濃淡度が連続的に変化する方向に、前記パターンにおける塗膜の平均濃度が連続的に変化するように並べられている、調理器用トッププレート。
【請求項2】
前記パターンが矩形状の形状を有する、請求項1に記載の調理器用トッププレート。
【請求項3】
前記パターンにおける少なくとも2以上の領域が、第1の領域と、第2の領域からなり、前記第1の領域が前記第2の領域を囲んでいる、請求項1または2に記載の調理器用トッププレート。
【請求項4】
前記第1の領域が矩形枠状の形状を有し、前記第2の領域が矩形状の形状を有する、請求項3に記載の調理器用トッププレート。
【請求項5】
前記第1の領域が複数の矩形枠状の形状を有する、請求項3または4に記載の調理器用トッププレート。
【請求項6】
前記第1の領域と前記第2の領域との面積比が0.9:1.1~1.8:0.2である、請求項3~5のいずれか1項に記載の調理器用トッププレート。
【請求項7】
隣り合う前記パターンの前記第2の領域同士の間隔が、0.5mm以上、1mm以下である、請求項3~6のいずれか1項に記載の調理器用トッププレート。
【請求項8】
前記装飾層が、着色された着色層と、前記複数のパターンからなるパターン層とを有し、前記着色層と前記パターン層とが積層されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の調理器用トッププレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理器用トッププレートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、調理器用トッププレートは、デザイン性の高い柄が求められている。例えば、下記の特許文献1には、装飾膜が設けられた調理器用トッププレートの一例が開示されている。この調理器用トッププレートにおいては、透明低膨張ガラスと遮光膜との間に装飾膜が設けられている。装飾膜の模様は、形成部分と非形成部分とによって構成されている。この模様は、散点模様や幾何学的模様とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
調理器用トッププレートの装飾膜のデザインとして、装飾膜がその外観色の濃淡度を連続的に変化させたグラデーションがある。このグラデーションを表現する方法として、スクリーン印刷で網点と呼ばれる小さな点の密度や大きさを変化させることによって表現する方法がある。しかしながら、網点を形成するためのスクリーン版の孔の寸法が小さく、塗料の粘度が高いと、塗料が孔を通過しないため、点が描画されず、描画の抜けが生じることがある。他方、スクリーン版の孔の寸法が大きく、塗料の粘度が低いと、孔を通過した塗料がスクリーン版の孔の寸法よりも広がり滲みになることがある。そのため、抜けや滲みにより、色や明るさの変化が連続性を欠いて境縞模様に見える状態(トーンジャンプ)が生じ、連続的に変化する柄が得られないという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、トーンジャンプのないグラデーションを有する調理器用トッププレートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る調理器用トッププレートは、ガラス基板と、ガラス基板の一方主面上に、外観色の濃度が連続的に変化する部分を含む装飾層とを備え、装飾層が、規則的に並べられた複数のパターンを有し、各パターンが塗膜の濃度が同一または異なる少なくとも2以上の領域を含み、パターンが、外観色の濃淡度が連続的に変化する方向に、パターンにおける塗膜の平均濃度が連続的に変化するように並べられていることを特徴としている。
【0007】
パターンが矩形状の形状を有することが好ましい。
【0008】
パターンにおける少なくとも2以上の領域が、第1の領域と、第2の領域からなり、第1の領域が第2の領域を囲んでいることが好ましい。この場合、第1の領域が矩形枠状の形状を有し、第2の領域が矩形状の形状を有することがより好ましい。また、第1の領域が複数の矩形枠状の形状を有することがさらにより好ましい。
【0009】
第1の領域と第2の領域との面積比が0.9:1.1~1.8:0.2であることが好ましい。
【0010】
隣り合うパターンの第2の領域同士の間隔が、0.5mm以上、1mm以下であることが好ましい。
【0011】
装飾層が、着色された着色層と、複数のパターンからなるパターン層とを有し、着色層とパターン層とが積層されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、トーンジャンプのないグラデーションを有する調理器用トッププレートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る調理器用トッププレートを示す模式的平面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る調理器用トッププレートを示す模式的断面図である。
【
図3】
図3(a)~
図3(e)は、本発明の第1の実施形態のパターン層におけるパターンの例を示す模式図である。
【
図4】
図4(a)~
図4(e)は、比較例におけるパターンの例を示す図である。
【
図5】比較例のトッププレートを示す模式的平面図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る調理器用トッププレートを示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照する場合がある。
【0015】
(調理器用トッププレート)
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る調理器用トッププレートを示す模式的平面図である。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る調理器用トッププレートを示す模式的断面図である。
【0016】
図1に示すように、調理器用トッププレート1(以下、「調理器用トッププレート1」を、単に「トッププレート1」とする)は、ガラス基板2を備える。
図2に示すように、ガラス基板2は、対向し合う第1の主面2a及び第2の主面2bを有する。第1の主面2aは、鍋やフライパンなどの調理器具が載せられる側の面である。第2の主面2bは、調理器の内部側において光源や加熱装置と対向する面である。従って、第1の主面2a及び第2の主面2bは、表裏の関係にある。
【0017】
本実施形態においては、ガラス基板2は平板状である。もっとも、トッププレート1の用途に応じて、ガラス基板2に適宜の貫通孔などが設けられていてもよい。
【0018】
ガラス基板2は、波長450nm~700nmにおける少なくとも一部の光を透過する。ガラス基板2は、有色透明であってもよいが、トッププレート1の美観性をより一層高める観点から、無色透明であることが好ましい。なお、本明細書において、「透明」であるとは、波長450nm~700nmにおける可視波長域の光透過率が70%以上であることをいう。
【0019】
ガラス基板2の第2の主面2b上には、装飾層3が設けられている。
図1に示すように、装飾層3は、外観色の濃度が連続的に変化する部分、すなわちグラデーションの柄を含むように設けられている。具体的には、
図2に示すように、装飾層3はパターン層4を有する。パターン層4は、パターニングされた無機顔料層である。パターン層4は、ガラス及び無機顔料を含む。
【0020】
より詳細には、パターン層4は複数のパターン5からなる。複数のパターン5は規則的に設けられている。各パターン5は、塗膜の濃度が同一または異なる少なくとも2以上の領域(具体的には
図3に示す第1の領域6及び第2の領域7)を有し、外観色の濃淡度が連続的に変化する方向に、各パターン5における塗膜の平均濃度が連続的に変化するように並べることで複数のパターン5の色の明るさを徐々に変化させることにより、装飾層3の濃淡(色)を連続的に変化させている。パターン層4は、例えば、スクリーン印刷により形成することができる。
【0021】
図3(a)~
図3(e)は、第1の実施形態のパターン層におけるパターンの例を示す模式図である。なお、パターン5の各領域の境界を線により示しているが、実際には、各領域の境界は線により区切られていないことを指摘しておく。
【0022】
図3(a)~
図3(e)に示すように、各パターン5は、第1の領域6及び第2の領域7を有する。第1の領域6は第2の領域7を囲んでいる。第1の領域6は矩形枠状の形状を有する。第2の領域7は矩形状の形状を有する。
【0023】
ここで、本実施形態では、各パターンの色の明るさ(濃淡)は、黒色の網点の密度により表現されている。なお、本実施形態では、網点の密度は、単位面積あたりの網点の大きさを変えて調整しているが、単位面積あたりの網点の数を変えることで調整することもできる。
図3(a)に示すパターン5の第1の領域6及び第2の領域7は100%黒である。
図3(b)に示すパターン5の第1の領域6は0%黒よりも濃く、100%黒よりも薄い黒、すなわちグレーである。第2の領域7は100%黒である。
図3(c)に示すパターン5の第1の領域6は0%黒、すなわち白である。第2の領域7は100%黒である。
図3(d)に示すパターン5の第1の領域6は0%黒、すなわち白である。第2の領域7は0%黒よりも濃く、100%黒よりも薄い黒、すなわちグレーである。
図3(e)に示すパターン5の第1の領域6及び第2の領域7は0%黒、すなわち白である。もっとも、各パターン5の色彩度は、黒色以外の色の網点により表現することもできる。なお、上記において記載したグレー、あるいは白は、後述する着色層が白色であることを前提とした場合のものである。
【0024】
パターン層4においては、上記のようなパターン5が連続的に配置されている。パターン層4の外観色の濃淡度が連続的に変化する、すなわちグラデーションの方向に、
図3(a)~
図3(e)における、色の濃淡が近いパターン同士が隣り合って隙間なく形成されている。例えば、
図3(a)に示すパターン5と
図3(b)に示すパターン5が隣り合っており、
図3(b)に示すパターン5と
図3(c)に示すパターン5とが隣り合っている。あるいは、
図3(b)に示すパターン5同士が隣り合っており、該パターン5同士において、第1の領域6の色の濃淡が異なっていてもよい。または、
図3(b)に示すパターン5同士が隣り合っており、該パターン5同士において、第2の領域7の色の濃淡が異なっていてもよい。さらには、第1の領域6及び第2の領域7の色の濃淡が異なっていてもよい。これにより、
図3(a)に示すパターン5及び
図3(c)に示すパターン5の間において、色の濃淡を徐々に変化させることができる。
【0025】
図2に示すように、装飾層3は、着色層8をさらに有する。着色層8は任意の色に着色されている。本実施形態では、着色層8は白色(ベタ印刷)である。着色層8とパターン層4とは積層されている。より具体的には、着色層8は、ガラス基板2の第2の主面2b上に、パターン層4を覆うように設けられている。着色層8は、例えば、耐熱樹脂層である。この場合、着色層8は、樹脂及び無機顔料を含む。着色層8が耐熱樹脂層である場合、樹脂としては、シリコーン樹脂などを用いることが好ましい。もっとも、着色層8は無機顔料層であってもよい。
【0026】
パターン層4と着色層8とが積層されていることにより、装飾層3における、パターン層4の0%黒の部分は白色となる。装飾層3における、パターン層4の0%黒よりも濃く、100%黒よりも薄い部分は、黒の濃淡に応じたグレーとなる。もっとも、装飾層3は、必ずしも着色層8を有していなくともよい。例えば、パターン層4と、適宜の遮光層とにより、色が表現されていてもよい。この場合、パターン層4が、遮光層よりもガラス基板2側に位置していればよい。
【0027】
本実施形態の特徴は、装飾層3の各パターン5が第1の領域6及び第2の領域7を含み、装飾層3における外観色の濃度が連続的に変化する部分の、規則的に並べられた複数のパターン5における第1の領域6と第2の領域7とにおいて、塗膜の濃度に差があることにある。それによって、
図4に示す比較例のパターン105よりも、濃淡の階調数を増やせることになる。そのため、滲みや描画の抜けによって設定よりも色が変化したパターン5になったとしても、
図4に示すパターン105の場合よりも、設定よりも色が大きく変化するパターンの割合を少なくできる。また、第1の領域6及び第2の領域7のうち一方の領域において、滲みや描画の抜けが生じたとしても、他の領域においては色の変化は小さいため、パターン5の色の変化としては、設定した色の変化に対する誤差を小さくできる。そのため、隣り合うパターン5との色の濃度(濃淡)の違いを小さくすることができ、トーンジャンプを抑制でき、デザイン性の高いグラデーションの柄をより確実に設けることができる。加えて、パターン層4の厚みや濃度を変更しなくても、パターン層4を一回のスクリーン印刷により容易に形成することができるため、生産性を高めることができる。以下、これらの詳細を説明する。
【0028】
本実施形態のパターン層4においては、各パターン5が第1の領域6及び第2の領域7を含むため、
図4に示すパターン105の場合に比べて濃淡の階調数は多くなる。具体的は、
図3の場合、濃度の階調数は25階調であり、
図4の場合は5階調である。そのため、例えば、
図3(b)に示すパターン5の第1の領域6や
図3(d)に示すパターン5の第2の領域7に、滲みや描画の抜けによって、設定よりも色が変化したとしても、階調数に対して設定よりも色が変化するパターン数の割合を少なくできる。そのため、トーンジャンプを抑制でき、デザイン性の高いグラデーションの柄をより確実に設けることができる。
【0029】
また、本実施形態のパターン層4においては、例えば、
図3(a)に示すパターン5と、
図3(b)に示すパターン5とが隣り合って隙間なく形成されている。これらのパターンにおいては、第1の領域6同士の色の濃淡は異なる。他方、第2の領域7同士の色の濃淡は同じである。あるいは、パターン層4においては、
図3(d)に示すパターン5と
図3(e)に示すパターン5とが隣り合っている。これらのパターンにおいては、第1の領域6同士の色の濃淡は同じである。他方、第2の領域7同士の色の濃淡は異なる。これらのように、隣り合うパターン5において、第1の領域6及び第2の領域7のうち一方の色の濃淡が変化しており、他方の色の濃淡が変化していない。このように、第1の領域6及び第2の領域7の色の濃淡が異なる。この濃淡は、例えば、網点の密度による色の表現に用いられるパーセンテージの差によって表されてもよい。
【0030】
複数のパターン5が上記のように配置されていることにより、第1の領域6及び第2の領域7のうち一方の領域において、上述したような滲みや描画の抜けが生じ、設定よりも大きな濃淡の差になったとしても、他方の領域においては色の変化を小さくできる。これにより、隣り合うパターン5の色の濃淡の違いを小さくすることができ、パターン5間全体の色の変化としては、設定した色の変化に対する誤差を小さくすることができる。よって、トーンジャンプを抑制することができ、グラデーションの柄をより確実に形成することができる。
【0031】
なお、装飾層3における外観色の濃度が連続的に変化する部分においては、全ての隣り合うパターン5の色の濃淡が異なっている必要はない。トッププレート1のサイズや、形成されるグラデーションに応じて、連続する複数のパターン5において色の濃淡が変化していない部分が、適宜設けてられていてもよい。装飾層3における外観色の濃度が連続的に変化する部分の少なくとも一部の隣り合うパターン5において、第1の領域6及び第2の領域7のうち少なくとも一方の色の濃淡が同じであることが好ましい。それによって、滲みや描画の抜けが生じ、設定よりも大きな濃淡の差になったとしても、他方の領域においては色の変化を小さくできる。これにより、隣り合うパターン5の色の違いを小さくすることができ、パターン5間全体の色の変化としては、設定した色の変化に対する誤差を小さくすることができる。よって、トーンジャンプを効果的に抑制することができ、グラデーションの柄をより確実に形成することができる。
【0032】
もっとも、第1の領域6及び第2の領域7における色の濃淡が異なっていればよい。第1の領域6及び第2の領域7の双方の領域の色が変化していても、一方の領域の色の変化は他方の領域の変化よりも小さくできるため、隣り合うパターン5間の色の変化の誤差を小さくすることができる。それによって、トーンジャンプを抑制することができ、グラデーションの柄をより確実に形成することができる。
【0033】
複数のパターン5における第1の領域6及び第2の領域7のうち少なくとも一方が、全ての第1の領域6及び第2の領域7の色のうち最も濃い色または最も薄い色であることが好ましい。本実施形態においては、最も濃い色は100%黒であり、最も薄い色は0%黒である。例えば、第1の領域6及び第2の領域7のうち、100%黒とした領域では、該領域全てに塗料が塗布される設定である。そのため、設定した色と実際の色とにおいて、塗料の滲みによる色の誤差は生じない。よって、隣り合うパターン5における100%黒の領域同士においては、濃淡の差は生じない。従って、隣り合うパターン5間の色の変化の誤差をより一層小さくすることができる。それによって、トーンジャンプをより一層確実に抑制することができ、グラデーションの柄をより一層確実に形成することができる。
【0034】
他方、第1の領域6及び第2の領域7のうち、0%黒とした領域では、網点は描画されない設定である。そのため、設定した色と実際の色とにおいて、網点描画の抜けによる色の誤差は生じない。よって、隣り合うパターン5における0%黒の領域同士においては、濃淡の差が生じない。従って、隣り合うパターン5間の色の変化の誤差をより一層小さくすることができる。それによって、トーンジャンプをより一層確実に抑制することができ、グラデーションの柄をより一層確実に形成することができる。
【0035】
装飾層3におけるパターン層4の膜厚は、2μm以上、10μm以下であることが好ましい。この場合には、パターン層4の印刷の精度を十分に高めることができ、かつパターン層4の剥離が生じ難い。
【0036】
着色層8の厚みは、特に限定されないが、例えば、5μm以上、10μm以下程度である。
【0037】
また、パターン5の大きさは、0.3mm以上、3mm以下であることが好ましい。この場合には、パターン層4の印刷の精度を十分に高めることができ、個々のパターン5が視覚により認識され難くなり、グラデーションの柄をより確実に認識されるようにすることができる。
【0038】
また、パターン5の形状は矩形形状である。パターン5の形状を矩形形状とすることで、複数のパターン5の配置を容易に周期的にすることができ、容易に色の設定を行うことができる。従って、グラデーションを容易に設けることができる。もっとも、パターン5の形状は矩形形状に限定されない。例えば、外形が三角形、多角形、円形または楕円形の形状をであってもよい。
【0039】
ところで、本実施形態においては、隣り合うパターン5の第1の領域6同士が接触している。よって、隣り合うパターン5の第2の領域7同士の間隔は、一方の第1の領域6における内周縁と、他方の第1の領域6における内周縁との距離と等しい。隣り合うパターン5の第2の領域7同士の間隔は、0.5mm以上であることが好ましい。それによって、パターン層4の印刷の精度を十分に高めることができる。他方、隣り合うパターン5の第2の領域7同士の間隔は、1mm以下であることが好ましい。それによって、個々のパターン5が視覚により認識され難くなり、グラデーションの柄をより確実に認識されるようにすることができる。なお、メッシュの孔のサイズは40μm以上、160μm以下である。
【0040】
本実施形態では、パターン5における第1の領域6は矩形枠状の形状であり、第2の領域7は矩形状の形状である。さらに、第1の領域6の中心と第2の領域7の中心とは一致している。これらにより、複数のパターン5の配置を容易に周期的にすることができ、容易に色の設定を行うことができる。従って、グラデーションを容易に設けることができる。もっとも、第1の領域6及び第2の領域7の形状は上記に限定されない。例えば、第1の領域6は、外形が三角形、多角形、円形または楕円形の枠状の形状を有していてもよい。第2の領域7は、三角形、多角形、円形または楕円形の形状を有していてもよい。第1の領域6の中心と第2の領域7の中心とは、必ずしも一致していなくともよい。
【0041】
また、パターン5における第1の領域6は、第2の領域7を囲むように、輪環状に複数の矩形枠状の形状を有していてもよい。この場合には、濃淡階調数を増やすことができるため、トーンジャンプを抑制することができ、グラデーションの柄をより確実に設けることができる。
【0042】
あるいは、パターン5において、第1の領域6は必ずしも第2の領域7を完全に囲んでいなくともよい。例えば、第1の領域6がコの字形の形状であり、第2の領域7の矩形状の形状の一辺が囲まれていなくともよい。
【0043】
また、第1の領域6と第2の領域7との面積比が0.9:1.1~1.8:0.2であることが好ましい。上記面積比が、0.75:1.25~1.25:0.75であることがより好ましい。これらの場合には、パターン層4の印刷の精度を十分に高めることができる。さらに、個々のパターン5が視覚により認識され難くなり、グラデーションの柄をより確実に認識されるようにすることができる。
【0044】
パターン層4は、例えば、以下のようにして形成することができる。まず、ガラス粉末と無機顔料との混合粉末に溶媒を加えてペースト化し、塗料を得る。得られた塗料をガラス基板2の第2の主面2b上に、40μm以上、160μm以下のオープニングを有するスクリーン版を用いたスクリーン印刷などにより塗布し、乾燥させる。その後、焼成することによりパターン層4を形成することができる。なお、焼成温度及び焼成時間は、使用するガラス粉末の組成などに応じて適宜設定することができる。
【0045】
着色層8が無機顔料層である場合には、パターン層4と同様にして形成することができる。なお、着色層8においてはパターニングはなされない。着色層8が耐熱樹脂層である場合には、例えば、以下のようにして形成することができる。まず、耐熱樹脂と、無機顔料粉末と、さらに必要に応じて溶媒を含むペーストを用意する。次に、用意したペーストをガラス基板2の第2の主面2b上にパターン層4を覆うように塗布し、乾燥させる。着色層8の組成によっては、乾燥後に焼成を行ってもよい。それによって、着色層8を形成することができる。なお、耐熱樹脂としては、シリコーン樹脂を用いることが好ましい。
【0046】
無機顔料は、例えば、Cuを含む黒色の無機顔料粉末、TiO2粉末、ZrO2粉末、ZrSiO4粉末などの白色の無機顔料粉末、Coを含む青色または緑色の無機顔料粉末、Coを含む緑色の無機顔料粉末、Ti-Sb-Cr系、Ti-Ni系の黄色の無機顔料粉末、Co-Si系の赤色の無機顔料粉末、Feを含む茶色の無機顔料粉末などが挙げられる。
【0047】
Cuを含む黒色の無機顔料粉末の具体例としては、例えば、Cu-Cr系の無機顔料粉末が挙げられる。Cu-Cr系の無機顔料粉末の具体例としては、Cu(Cr,Mn)2O4粉末などが挙げられる。
【0048】
Coを含む青色の無機顔料粉末の具体例としては、例えば、Co-Al系、Co-Al-Ti系の無機顔料粉末が挙げられる。Co-Al系の無機顔料粉末の具体例としては、CoAl2O4粉末などが挙げられる。Co-Al-Ti系の無機顔料粉末の具体例としては、CoAl2O4:TiO2:Li2O粉末などが挙げられる。
【0049】
Coを含む緑色の無機顔料粉末の具体例としては、例えば、Co-Al-Cr系、Co-Ni-Ti-Zn系の無機顔料粉末が挙げられる。Co-Al-Cr系の無機顔料粉末の具体例としては、Co(Al,Cr)2O4粉末などが挙げられる。Co-Ni-Ti-Zn系の無機顔料粉末の具体例としては、(Co,Ni,Zn)2TiO4粉末などが挙げられる。
【0050】
Feを含む茶色の無機顔料粉末の具体例としては、例えば、Fe-Zn系の無機顔料粉
末が挙げられる。Fe-Zn系の無機顔料粉末の具体例としては、(Zn,Fe)Fe2O4粉末などが挙げられる。
【0051】
これらの無機顔料は、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0052】
本実施形態のトッププレート1におけるグラデーションの柄は、装飾層3の厚みが異ならされることにより設けられているものではない。トッププレート1におけるグラデーションの柄は、規則的に並べられた複数のパターン5により設けられている。そのため、トッププレート1のグラデーションの柄を設けるために必要なスクリーン版は、1枚のみである。よって、1回のスクリーン印刷により、デザイン性の高いグラデーションの柄を形成することができる。従って、生産性を効果的に高めることができる。
【0053】
なお、色の濃淡を変化させるために、複数回のスクリーン印刷を行う場合には、装飾層の膜厚が厚くなりすぎるおそれがある。この場合、装飾層の剥離が生じ易くなる。これに対して、本実施形態においては、1回のスクリーン印刷によりグラデーションの柄を形成することができるため、パターン層4の膜厚を好適な範囲とすることができる。よって、装飾層3におけるパターン層4の剥離が生じ難い。
【0054】
ところで、トッププレート1では、加熱及び冷却が繰り返しなされる。そのため、ガラス基板2は、高い耐熱性及び低い熱膨張係数を有するものであることが好ましい。具体的には、ガラス基板2の軟化温度は、700℃以上であることが好ましく、750℃以上であることがより好ましい。また、ガラス基板2の30℃~750℃における平均線熱膨張係数は、-10×10-7/℃~+60×10-7/℃の範囲内であることが好ましく、-10×10-7/℃~+50×10-7/℃の範囲内であることがより好ましく、-10×10-7/℃~+40×10-7/℃の範囲内であることがさらに好ましい。従って、ガラス基板2は、ガラス転移温度が高く、低膨張なガラスや、低膨張の結晶化ガラスからなるものであることが好ましい。低膨張の結晶化ガラスの具体例としては、例えば、日本電気硝子社製の「N-0」が挙げられる。なお、ガラス基板2としては、ホウケイ酸ガラスなどを用いてもよい。
【0055】
ガラス基板2の厚みは、特に限定されない。ガラス基板2の厚みは、光透過率などに応じて適宜設定することができる。ガラス基板2の厚みは、例えば、2mm~8mm程度とすることができる。
【0056】
以下、実施例及び比較例を参照して、本発明の効果をさらに示す。
【0057】
(実施例)
ガラス粉末と無機顔料との混合粉末に溶媒を加えてペースト化し、塗料を得た。得られた塗料をガラス基板2の第2の主面2b上に、メッシュ孔93μmのスクリーン版を用いて、スクリーン印刷によって塗布し、乾燥させた。その後、焼成することによりパターン層4を形成した。
【0058】
このとき、パターン層4における各パターン5の第1の領域6を、外形が1.7mm角の正方形である枠状の形状とした。第2の領域7を、1.2mm角の正方形の形状とした。複数のパターン5は、それぞれ、
図3(a)~
図3(e)に示すいずれかとした。
【0059】
実施例においては、第1の領域6と第2の領域7との面積比は1:1である。よって、
図3(c)に示すパターン5は、全体として50%黒である。他方、
図3(a)に示すパターン5は、全体として100%黒である。
図3(e)に示すパターン5は、全体として0%黒である。
【0060】
図3(b)に示すパターン5は、全体として50%黒よりも濃く、100%黒よりも薄い色である。該パターン5においては、第2の領域7を100%黒に固定する一方で、第1の領域6における濃淡を調整することにより、パターン5全体としての濃淡を調整した。
図3(d)に示すパターン5は、全体として0%黒よりも濃く、50%黒よりも薄い色である。該パターン5においては、第1の領域6を0%黒に固定する一方で、第2の領域7における濃淡を調整することにより、パターン5全体としての濃淡を調整した。
【0061】
パターン層4の形成に際しては、複数のパターン5を、色の濃淡が徐々に変化するように配置した。
【0062】
次に、シリコーン樹脂と、無機顔料粉末との混合物に溶媒を加えてペーストを得た。次に、得られたペーストをガラス基板2の第2の主面2b上に、パターン層4を覆うように塗布した。次に、塗布したペーストを乾燥させた。これにより、着色層8を形成した。以上により、装飾層3を形成することにより、グラデーションの柄を形成した。
【0063】
(比較例)
パターン層におけるパターンを、
図4(a)~
図4(e)に示す各パターン105としたこと以外においては、実施例と同様にして、ガラス基板2の第2の主面2b上に装飾層を形成した。
図4(a)、
図4(b)、
図4(c)、
図4(d)及び
図4(e)に示す各パターン105においては、それぞれ、100%黒、75%黒、50%黒、25%黒及び0%黒としている。各パターン105の形状は、1.7mm角の正方形である。これらのパターン105を、パターン層の色の濃淡が徐々に変化するように配置した。
【0064】
図5は、比較例のトッププレートを示す模式的平面図である。比較例のトッププレート101における装飾層の柄においては、
図5中の矢印Aに示すようにトーンジャンプしていた。一方で、実施例においては、
図1に示すようなグラデーションの柄を得ることができた。このように、本発明においては、デザイン性の高いグラデーションの柄をより確実に設けることができる。
【0065】
(第2の実施形態)
図6は、本発明の第2の実施形態に係る調理器用トッププレートを示す模式的断面図である。本実施形態は、装飾層3がガラス基板2の第1の主面2a上に設けられている点において、第1の実施形態と異なる。具体的には、ガラス基板2の第1の主面2a上に着色層8が設けられている。着色層8上にパターン層4が設けられている。なお、着色層8は必ずしも設けられていなくともよい。例えば、パターン層4と、適宜の遮光層または耐熱樹脂層とにより、色が表現されていてもよい。
【0066】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、
図3(a)~
図3(e)に示す複数のパターン5が規則的に配置されている。よって、デザイン性の高いグラデーションの柄をより確実に設けることができる。さらに、スクリーン印刷によって容易にパターン層4を形成することができるため、生産性を効果的に高めることができる。
【0067】
第1の実施形態及び第2の実施形態に示したように、本発明におけるガラス基板2の一方主面は、第1の主面2aであってもよく、第2の主面2bであってもよい。もっとも、第1の実施形態のように、装飾層3は、ガラス基板2の第2の主面2b上に設けられていることが好ましい。この場合には、装飾層3が調理器の内部側に位置する。従って、装飾層3が剥離し難い。
【符号の説明】
【0068】
1…トッププレート
2…ガラス基板
2a…第1の主面
2b…第2の主面
3…装飾層
4…パターン層
5…パターン
6…第1の領域
7…第2の領域
8…着色層
101…トッププレート
105…パターン