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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096755
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】電池システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20220623BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20220623BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
H02J7/00 H
H02J7/00 302C
H01M10/44 P
H01M10/48 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020209900
(22)【出願日】2020-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152294
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 雅宜
(72)【発明者】
【氏名】原田 知典
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 貴紀
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA04
5G503BA04
5G503BB01
5G503DA07
5G503DA12
5H030AA10
5H030AS01
5H030BB01
5H030BB23
5H030FF42
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】従来には存在しない新しい発想により蓄電池の長寿命化を図ること。
【解決手段】
蓄電池11と、この蓄電池11の充放電を制御するコントローラ30よりなる電池システムにおいて、コントローラ30は、蓄電池11に対して、負荷への電力供給のための放電動作途中において、定期的に、当該放電を停止させて短時間の充電動作を行うように制御することを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池と、この蓄電池の充放電を制御するコントローラよりなる電池システムにおいて、前記コントローラは、前記蓄電池に対して、負荷への電力供給のための放電動作途中において、定期的に、当該放電を停止させて短時間の充電動作を行うように制御することを特徴とする電池システム。
【請求項2】
前記電池システムは、補助電池をさらに含み、
前記コントローラは、前記補助電池を電力源として、前記蓄電池の充電動作を制御することを特徴とする請求項1の電池システム。
【請求項3】
前記蓄電池の充電動作期間において、前記補助電池により負荷への電力供給を行うよう制御することを特徴とする請求項1または請求項2の電池システム。
【請求項4】
前記蓄電池の短時間の充電動作において、当該充電後に休止期間を設けて、再び負荷への電力供給のための放電動作を行うよう制御することを特徴する請求項1の電池システム。
【請求項5】
前記蓄電池の短時間の充電動作期間が、前記蓄電池の負荷への電力供給のための放電動作時間の10%以下となるように制御することを特徴する請求項1の電池システム。
【請求項6】
前記蓄電池の短時間の充電動作期間における充電電流値は、負荷への電力供給のための放電電流値の2倍以上であることを特徴とする請求項1の電池システム。
【請求項7】
前記蓄電池は鉛蓄電池であることを特徴とする請求項1の電池システム。
【請求項8】
前記コントローラは、前記蓄電池の使用時間あるいは放電電流積算値に基づき、前記休止期間、前記短時間の充電動作期間、あるいは前記充電動作期間の電流値を調整することを特徴とする請求項1に記載の電池システム
【請求項9】
前記コントローラは、前記蓄電池の放電電流積算値に基づき、前記短時間の充電動作を行う頻度を調整することを特徴とする請求項1に記載の電池システム
【請求項10】
蓄電池に対して、負荷への電力供給のための放電動作途中において、定期的に、当該放電を停止させて短時間の充電動作を行うように制御することを特徴とする蓄電池の充放電制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は電池システムに関する。特に、鉛蓄電池のような二次電池の充放電を制御する電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サイクルユース蓄電システムで使用される蓄電池は、負荷稼働時に長時間の連続的な放電を行い、夜間などの負荷未使用時に充電を行うのが一般的な使い方である。蓄電池から放電される電力は、負荷に大きく依存しており、放電についての制御は困難であるとして、従来からあまり研究はなされておらず、もっぱら、充電の方法に関する研究が提案され続けてきた。
【0003】
また、蓄電池は電極の劣化が原因となって寿命になることが多い。特に、蓄電池の代表格である鉛蓄電池の場合は、放電時に析出する硫酸鉛が電極表面上に肥大化して固着してしまい、その結果、電池容量の早期低下という問題が発生していた。このような問題に対して、従来は、電極材料にカーボンを添加するとか(特許文献1)、あるいは、充電方法を工夫するような改善(特許文献2)が行われてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6043734号
【特許文献2】特許第3391227号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明が解決しようする課題は、従来の改善とは異なる新しい切り口により、蓄電池の長寿命化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明に係る電池システムは、
蓄電池と、この蓄電池の充放電を制御するコントローラよりなる電池システムにおいて、前記コントローラは、前記蓄電池に対して、負荷への電力供給のための放電動作途中において、定期的に、当該放電を停止させて短時間の充電動作を行うように制御することを特徴とする。
【0007】
また、前記電池システムは補助電池をさらに含み、前記コントローラは前記補助電池を電力源として前記蓄電池の充電動作を制御することを特徴とする。
【0008】
また、前記蓄電池の充電動作期間において、前記補助電池により負荷への電力供給を行うよう制御することを特徴とする。
【0009】
また、前記蓄電池の短時間の充電動作において、当該充電後に休止期間を設けて、再び負荷への電力供給のための放電動作を行うよう制御することを特徴する。
【0010】
また、前記蓄電池の短時間の充電動作時間が、前記蓄電池の負荷への電力供給のための放電動作時間の10%以下となるように制御することを特徴する。
【0011】
また、前記蓄電池の短時間の充電動作期間における充電電流値は、負荷への電力供給のための放電電流値の2倍以上であることを特徴とする。
【0012】
また、前記蓄電池は鉛蓄電池であることを特徴とする。
【0013】
また、前記コントローラは、前記蓄電池の使用時間あるいは放電電流積算値に基づき、前記休止期間、前記短時間の充電動作期間、あるいは前記充電動作期間の電流値を調整することを特徴とする。
【0014】
また、前記コントローラは、前記蓄電池の放電電流積算値に基づき、前記短時間の充電動作を行う頻度を調整することを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明に係る蓄電池の充放電制御方法は、蓄電池に対して、負荷への電力供給のための放電動作途中において、定期的に、当該放電を停止させて短時間の充電動作を行うように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る電池システムは、蓄電池の放電動作時、すなわち、負荷への電力供給期間に着目して、当該期間において、短時間の充電動作を定期的に行うことで電極材料の劣化を防止するものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る電池システムの全体構成を示す。
図2】本発明に係る電池システムの充放電のタイミングチャートを示す。
図3】本発明に係る電池システムのメカニズムを示す。
図4】本発明に係る電池システムの動作の説明図を示す。
図5】本発明に係る電池システムの他の実施形態を示す。
図6】本発明に係る電池システムの他の実施形態を示す。
図7】本発明に係る電池システムの充放電のタイミングチャートを示す。
図8】本発明に係る電池システムの実験結果を示す。
図9】本発明に係る電池システムのコントローラの動作を示すイメージ図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明に係る電池システムの全体構成を示す。主電池装置10は主電源となる蓄電池11と、この蓄電池11の充放電を調整する蓄電池用調整回路12より構成される。また、補助電池装置20は、補助電池21と、この補助電池21の放電を調整する補助電池用調整回路22より構成される。蓄電池用調整回路12と補助電池用調整回路22は、コントローラ30により充放電のタイミングが制御される。主電池装置10と補助電池装置20から供給される電力はパワーコンディショナ(通称、PCS)40にて直流を交流に変換し、家庭用の電気機器などで利用できるように調整される。PCSの出力は家庭用電気機器などの負荷50に接続される。
【0019】
ここで、主電池装置10に含まれる蓄電池11は鉛蓄電池に代表される二次電池であり、充放電を繰り返して長期期間使用する電池であり、その出力に接続される蓄電池用調整回路12は電圧変換器やスイッチなどから構成される。ただし、本発明では、蓄電池は鉛蓄電池に限定されるものではなく、リチウムイオン電池やニッケルカドミニウム蓄電池など二次電池が広く採用される。
【0020】
図2は蓄電池11の充放電のタイムチャートを示す。横軸は時間、縦軸は電流値を示すが、縦軸のゼロラインよりも下方は放電電流値I1を表し、上方は充電電流値I2を表す。例えば、期間t1において蓄電池11は放電、すなわち、負荷への電力供給を行っている。蓄電池11は、負荷によって決まる時間ではなく、コントローラ30に設定されている一定の基準時間t1を経過すると、コントローラ30からの信号に従い、蓄電池11の放電は強制的に停止する。例えば、照明であれば、点灯を必要とするタイミングであっても、強制的に蓄電池からの放電を停止して充電動作に切り替えることとなる。この点で、従来の蓄電池は、点灯を必要とするタイミングであれば、蓄電量が枯渇するなどの理由がない限り、負荷への放電を継続させており、負荷(照明)を消灯しているタイミングにおいて二次電池の充電していたことと相違する。
【0021】
図に戻り、コントローラ30に設定された一定の充電期間t2を経過すると充電が停止し、その後、一定の休止期間t3を経て再び放電状態へと移行する。一例を示すと、t1は38分、t2は2分、t3は10分である。
【0022】
充電動作期間t2においては、補助電池装置20に内蔵されている補助電池21から放電電力により蓄電池11の充電を行う。さらに、負荷50に対する電力供給が停止しないように補助電池装置20から供給も適宜行われる。すなわち、補助電池21は、主蓄電池11に対する電力供給源であるとともに、負荷50に対する電力供給源の役割も担っている。補助電池21は、蓄電池であってもかまわないが、必ずしも蓄電池である必要はなく一次電池でもかまわない。
【0023】
蓄電池用調整回路12や補助電池用調整回路22は、半導体リレー素子を含むものであり、コントローラ30からの信号によりオンオフされることで充放電が制御される。このように、本発明に係る電池システムは、蓄電池の放電期間において、一定周期で短時間の強制的充電時間を設けることで蓄電池の長寿命化を達成するものである。
【0024】
図3は電解質に存在する電極とその電極に析出する硫酸鉛の状態を示している。蓄電池の放電動作(例えば38分)においては、電極に硫酸鉛が析出するが、その状態は必ずしも均一ではなくムラ(位置的不均一)が発生する。しかし、本発明のような放電動作を一時的かつ強制的に停止させて、短時間の充電(例えば2分)を行うことで、このような硫酸鉛の析出ムラを解消できることを見出したわけである。一定の周期で繰り返した後は、いわゆる蓄電を目的とした通常の充電を行うが、この充電において硫酸鉛の析出を除去することが可能となる。なお、ここでの通常の充電は、充電量を段階的に変化させる、いわゆる多段階充電が望ましい。
【0025】
図2に戻り、蓄電池11の充電時間t2は、放電時間t1の10%以下が望ましい。上記のように、ここでの充電は蓄電量の補充が目的ではないからである。また、充電期間の電流値I2は放電期間の電流値I1の2倍以上が望ましい。
【0026】
休止期間t3は、蓄電池11の電解液内のイオンの拡散防止のためには設けたほうが望ましい。特に蓄電池が新品の場合は効果的である。ただ、休止期間t3は必須ではなく、また、毎周期ごとに設けるのではなく、特定の周期ごとに設けることでもかまわない。
【0027】
図4は、図1に示した電池システムの充放電動作をより具体的に説明するものである。(a)は時間t1における動作状態、(b)は時間t2における動作状態、(c)は時間t3における動作状態をそれぞれ表す。
【0028】
(a)は、図2の時間t1に相当するもので主電池装置10の放電状態を示すものである。主電池装置10からの放電電流I10がパワーコンディショナ40に流れ、パワーコンディショナ40からの交流電流Iacが負荷50に流れている。
(b)は、図2の時間t2に相当するもので主電池装置10の充電状態を示すものである。補助電池装置20からの放電電流I21が主電池装置10に流れるとともに、さらに、補助電池装置20からの放電電流I22がパワーコンディショナ40に流れ、パワーコンディショナ40からの交流電流Iacが負荷50に流れている。これにより、主電池装置10が放電を停止しても負荷への電力供給を継続することができる。
(c)は、図2の時間t3に相当するものでは主電池装置10の休止状態を示すものである。主電池装置10からの放電は停止しているが、補助電池装置20からの放電電流I22が継続することで負荷50に対して電力供給を継続している。
【0029】
ここで、充電期間t2と休止期間t3においては、負荷への電力供給は必要とはならない場合もある。例えば、図1に示す電池システムを多数並べて使用するような場合は、充電期間t2と休止期間t3のタイミングをずらして設定することで使用上問題がないからである。例えば、一つの照明灯に一つの電池システムを設けて、多数(例えば100個)の照明灯を配置する環境において、1の照明灯が充電期間t2や休止期間t3であっても、残り99の照明灯が点灯していることで、当該環境における照明機能を維持できるからです。
【0030】
図5は本発明の電池システムの他の実施形態を示す。図1と異なる点は、図1での補助電池が蓄電池であって、蓄電池同志相互に強制的充電を行うことにある。電池システムは、全体として、第一電池装置10Aと第二電池装置10Bより構成されており、第一電池装置10Aは第一蓄電池11Aと第一蓄電池用調整回路12Aより構成され、第二電池装置10Bは第二蓄電池11Bと第二蓄電池用調整回路12Bより構成される。
【0031】
この実施形態においては、第一電池装置10Aと第二電池装置10Bは、基本的に、主蓄電池と補助電池の機能を相互に交代するものであり、第一電池装置10Aが主蓄電池となる場合は、第二電池装置10Bは補助電池の機能をなし、第二電池装置10Bが主蓄電池となる場合は、第一電池装置10Aは補助電池の機能を果たす。具体的には、第一電池装置10Aが主の場合には、第一蓄電池11Aの強制的な短時間の充電期間(図2に示すt2)においては第二蓄電池11Bが供給電力源となり、これを一定数(例えば100回)のサイクルだけ繰り返す。そして、設定されたタイミング(100回)を終えると、第二蓄電池11Bが主となり第一蓄電池11Aが補助となって交代する。このように、双方の蓄電池が主と補助の機能を一定サイクルで繰り返すことで、より長時間の安定的な使用を可能とする。
【0032】
図6は、本発明に係る電池システムの他の実施形態を示す。
この実施形態は、一つの負荷に対して、4つの電池装置10(10A、10B、10C、10D)を並列的に配置している。各電池装置10は、蓄電池と蓄電池用調整回路を内蔵している。この実施形態において、例えば、第一電池装置10Aが強制的な短時間の充電期間に相当するときは、他の電池装置、例えば、第二電池装置10Bが第一電池装置10Aに対する供給電力源となり、それ以外の電池装置10C、10Dは、負荷に対する供給電となる。次に、第二電池装置10Bが強制的な短時間の充電期間を行うようになり、他の電池装置、例えば、第三電池装置10Cが第二電池装置10Bに対する供給電力源となり、それ以外の電池装置10A、10Dは、負荷に対する供給電となる。このように、複数の電池装置は強制的な短時間の充電期間が相互に重ならないように設定することで、全ての電池装置を効率的に運用することができる。このような実施形態は、例えば電気自動車など多数の蓄電池を必要とする用途において有用である。
【0033】
さらに、図7は、図6に示す実施形態の電池システムにおいて、充放電の関係がさらに異なる形態を示す。横軸は時間、縦軸は各電池システムの電流量を表す。時間T0は初期状態であり各電池装置は充電動作も放電動作もしていない。時間T1において、各電池装置は一斉に放電を開始する。図においては、各電池装置の電流レベル(縦軸)0がゼロレベルであり下方は放電状態、上方は充電状態を表す。時間T2において、第一電池装置は短期的な充電動作状態となり、他の電池装置、すなわち、第二電池装置、第三電池装置、第四電池装置は、それぞれ放電電流が上昇する。これは、第一電池装置が放電を停止しているため、他の電池装置がその分を補っているからである。時間T3において、第一電池装置の充電動作が停止すると、他の電池装置の放電レベルも時間T1からT2のレベルに復帰する。以下、短期的な充電動作を、第二電池装置→第三電池装置→第四電池装置と変化しながら同様の動作を繰り返すことになる。この実施形態は、図6に示すものと異なり、一の電池装置が充電状態にあるとき、他の全ての電池システムが放電を増量していることにある。
【0034】
図8は本発明の効果を示すための実験の説明図であり、(a)は2個の電池システムを用いて、本発明の充放電方法と従来の充放電方法を同時に行った事例を示し、(b)は1個の電池システムを用いて、途中までは従来の充放電方法、その後、同一の蓄電池を利用して、本発明の充放電方法を行った事例を示す。両方とも、縦軸は電池の満充電における容量(%)を表し、横軸は実験サイクル数を表し、黒丸は本発明方法、黒四角は従来方法をそれぞれ示す。
【0035】
まず、(a)において、初期状態(サイクル数0)において、本発明方法及び従来方法はともに電池の容量は100%であり(図では両者が重なっているので黒丸は把握しにくい)、この状態は新品の蓄電池といえる。その後、従来方法は1.7時間かけて24アンペアの放電と4時間の充電を1セットとして、それを18回繰り返して1サイクルとした。つまり、1サイクル終了後の電池残容量(満容量)は93%であり(図においてサイクル数1におけるプロット)、一方、発明方法は、38分の放電と2分の強制充電を1セットとして、それを3回繰り返して1サイクルとした。1サイクル終了後の本発明方法による電池残容量(満容量)は92%である(図においてサイクル数1におけるプロット)。
【0036】
同様に実験を続けることで、従来方法(■)は、2サイクルで残容量91%→3サイクルで残容量90%→4サイクル数で残容量88%と減少している。一方、本発明方法(●)は、2サイクルで残容量95%→3サイクルで残容量96%→4サイクル数で残容量96%→5サイクルで残容量97%→6サイクル数で残容量97%→7サイクル数で残容量100%→8サイクルで残容量101%と上昇していることがわかる。この残容量は満充電したときの蓄電量であり、従来方法は蓄電能力が低下しているのに対し、発明方法はほぼ初期値にまで回復していることが示される。
【0037】
次に、(b)について、初期状態(サイクル数0)において電池容量は100%である。5サイクルまでは、前記(a)と同じ従来方法、すなわち1.7時間かけて24アンペアの放電と、4時間の充電を1セットとして、それを18回繰り返して1サイクルとし、6サイクル以降は本発明方法、すなわち、38分の放電と2分の強制充電を1セットとして、それを3回繰り返して1サイクルとして実験を行った。
【0038】
実験より、従来方法(■)のときは、1サイクルで残容量92%→2サイクルで残容量90%→3サイクル数で残容量90%→4サイクル数で残容量94%→5サイクルで残容量91%と初期容量からは減少していることがわかる。一方、本発明方法(●)のときは、6サイクルで残容量95%→7サイクルで残容量96%→8サイクル数で残容量96%→9サイクル数で残容量97%→10サイクルで残容量97%→11サイクルで残容量100%→12サイクル数で残容量101%と上昇していることがわかる。この結果、発明方法を採用することで、従来方法により低下した蓄電能力をほぼ初期値まで回復させていることが示される。
【0039】
コントローラは、蓄電池の使用時間あるいは放電電流積算値に基づき、休止期間、短時間の充電動作期間、あるいは充電動作期間の電流値を調整することができる。図9はこのような制御を説明するためのイメージ図である。縦マスは満充電における容量であって初期を100%としたときの比率を表し、横マスは放電電流の積算値を表す。また、各マスには(a,b,c)の形で数値が保存されており、aは短時間充電の時間t2(図2参照以下同じ)、bは短時間充電に続く休止期間の時間t3、cは短時間充電の電流値I2をそれぞれ表し、コントローラは予めこのような数値設定されたテーブルを格納している。
【0040】
例えば、初期状態である放電電流積算値が0Ahの場合、満充電の容量は100%であって、このときは(a1,b1,c1)が格納されており、数値例を挙げると、a1は1分、b1は0分、c1は40Aとなる。そして、放電電流積算値が5000Ahに到達した時点で、蓄電池の満充電率が100%を維持していれば、コントローラは、短時間充電の時間t2をa2に変えて、短時間充電に続く休止期間の時間t3はb1、短時間充電の電流値はc1のままとする。一方、放電電流積算値が5000Ahに到達した時点で、蓄電池の満充電率が90%に減少していた場合、コントローラは、短時間充電の時間t2をa2に変えるとともに、短時間充電に続く休止期間の時間t3と短時間充電の電流値も、それぞれb2とc2に変更させる。このように、コントローラは、放電電流の積算値が所定値に到達した際に、蓄電池の満充電の容量を測定して、それに応じて、短時間充電の時間、短時間充電に続く休止期間の時間、短時間充電の電流値を修正している。さらに、蓄電池の満充電が所定値、例えば60%に到達したときには、当該蓄電池を寿命として警告表示などさせることができる。
【0041】
さらに、コントローラは、蓄電池の放電電流の積算値に基づき、短時間充電動作を行う頻度を調整することもできる。これも前記と同様に、コントローラは放電電流値の積算値に対応したテーブルを格納することとなる。これは、表現を変えるならば、図2に示すt1の時間ということになる、例えば、放電電流の積算値が、0Ahの場合に120分、2500Ahの場合に60分、5000Ahの場合に40分・・・ということになる。
【0042】
また、これらのパラメータは、不定期、例えば、1か月か1週間に一度の蓄電池の劣化診断行い、パラメータを調整することができる。
【0043】
以上、説明したように本発明の電池システムは、負荷に対する放電を必要とするタイミングであっても、強制的に当該放電を停止して短時間の充電動作を行い、それを定期的に繰り返すことで蓄電池の長寿命化を図ることができる。
【符号の説明】
【0044】
10 主電池装置
11 蓄電池
12 蓄電池用調整回路
20 補助電池装置
21 補助電池
22 補助電池用調整回路
30 コントローラ
40 パワーコンディショナ
50 負荷
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9