(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096761
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/534 20060101AFI20220623BHJP
A61F 13/535 20060101ALI20220623BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20220623BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20220623BHJP
A61F 13/537 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
A61F13/534 100
A61F13/535 200
A61F13/53 100
A61F13/535 100
A61F13/15 323
A61F13/537 220
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020209909
(22)【出願日】2020-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】000110044
【氏名又は名称】株式会社リブドゥコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】中岡 健次
(72)【発明者】
【氏名】吉川 善史
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA04
3B200BB04
3B200BB05
3B200BB17
3B200BB30
3B200CA02
3B200CA11
3B200DA12
3B200DA16
3B200DB02
3B200DB05
3B200DB11
3B200DB12
3B200DB23
3B200EA05
3B200EA07
3B200EA08
3B200EA22
(57)【要約】
【課題】吸収性能に優れた吸収性物品を提供する。
【解決手段】吸収性物品は、透液性のトップシートと、不透液性のバックシートと、これらのトップシートとバックシートとの間に配置された吸収体とを有し、前記吸収体が、上層吸収体と、前記上層吸収体のバックシート側に配置された下層吸収体とから構成されており、前記上層吸収体がアセテート繊維から形成されており、前記下層吸収体が吸水性樹脂粉末とパルプとを含有し、前記吸収体は、前部、股部および後部を有し、前記股部の少なくとも一部では前記上層吸収体の幅が前記下層吸収体の幅よりも広く形成されており、前記後部の少なくとも一部では前記上層吸収体の幅が前記下層吸収体の幅よりも狭く形成されており、前記吸収体の前後方向の両端部には、上層吸収体が配置されていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性のトップシートと、不透液性のバックシートと、これらのトップシートとバックシートとの間に配置された吸収体とを有し、
前記吸収体が、上層吸収体と、前記上層吸収体のバックシート側に配置された下層吸収体とから構成されており、
前記上層吸収体が、アセテート繊維から形成されており、
前記下層吸収体が、吸水性樹脂粉末とパルプとを含有し、
前記吸収体は、前部、股部および後部を有し、
前記股部の少なくとも一部では、前記上層吸収体の幅が前記下層吸収体の幅よりも広く形成されており、
前記後部の少なくとも一部では、前記上層吸収体の幅が前記下層吸収体の幅よりも狭く形成されており、
前記吸収体の前後方向の両端部には、上層吸収体が配置されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収体は、前記上層吸収体と前記下層吸収体の積層体が、被覆シートで包囲されている請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記上層吸収体は、少なくとも股部、前方端および後方端が、被覆シートで包囲されている請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収体は、前方端および後方端において、前記上層吸収体の幅が前記下層吸収体の幅よりも広く形成されている請求項1~3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の吸収性物品の製造方法であって、
アセテート繊維をシート状に成形し、上層吸水層を作製する工程、
吸水性樹脂粉末とパルプとの混合物をシート状に成形し、下層吸水層を作製する工程、
前記上層吸水層と下層吸水層とを積層し、積層体を作製する工程、
前記積層体を裁断し、吸収体を作製する工程、および、
前記吸収体を、バックシートおよびトップシートで挟み、これらを固定する工程を有することを特徴とする吸収性物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収パッド、使い捨ておむつ、生理用ナプキンなどの吸収性物品に関し、特に吸収性物品の吸収性能の改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
失禁パッド、使い捨ておむつ、生理用ナプキンなどの吸収性物品は、身体から排泄される尿や経血などの体液を吸収、保持する吸収体を有している。前記吸収体は、一般に吸水性樹脂粉末を含有しており、体液等は吸収体内部において吸水性樹脂粉末に吸収されて保持される。このような吸水性物品において、吸収体を多層構造としたものが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、表面シート、裏面シート及び吸収体を備えた吸収性物品において、前記吸収体が繊維集合体と隣接部材とを有し、前記繊維集合体が繊維と多数の粒子状の吸水性ポリマーとを含んで構成されており、多数の粒子状の前記吸水性ポリマーが、前記繊維集合体が吸液する前は、該繊維集合体の非肌当接面側に偏在し、該繊維集合体が吸液した後は少なくともその一部が該繊維集合体から脱離して、該繊維集合体と前記隣接部材との間に介在されることを特徴とする吸収性物品が記載されている(特許文献1(請求項1)参照)。
【0004】
特許文献2には、表面シート、裏面シート及び吸収体を備える吸収性物品であって、前記吸収体が、幅方向において幅方向中央部と幅方向両側部とに区画され、長手方向において長手方向中間部と長手方向両端部とに区画され、前記吸収体が、1)幅方向中央部において長手方向中間部と長手方向両端部との表面シート側に、中央部吸収コア上層を有し、2)幅方向両側部において長手方向中間部と長手方向両端部との表面シート側に、両側部吸収コア層を有し、3)長手方向中間部の幅方向中央部と長手方向両端部の少なくとも幅方向中央部とにおいて、捲縮を有する親水性繊維と吸水材とを含有する低密度骨格層を有し、前記低密度骨格層は中央部吸収コア上層及び両側部吸収コア層のそれぞれの密度より小さい密度を有し、前記低密度骨格層は少なくとも長手方向中間部の厚みが両側部吸収コア層のそれぞれの厚みより大きい厚みを有し、前記中央部吸収コア上層は前記両側部吸収コア層の坪量より小さい坪量を有する吸収性物品が記載されている(特許文献2(請求項1)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-22328号公報
【特許文献2】特開2017-221643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、吸収性能に優れた吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の吸収性物品は、透液性のトップシートと、不透液性のバックシートと、これらのトップシートとバックシートとの間に配置された吸収体とを有する。前記吸収体は、上層吸収体と、前記上層吸収体のバックシート側に配置された下層吸収体とから構成されており、前記上層吸収体がアセテート繊維から形成されており、前記下層吸収体が吸水性樹脂粉末とパルプとを含有している。そして、前記吸収体は、前部、股部および後部を有し、前記股部の少なくとも一部では前記上層吸収体の幅が前記下層吸収体の幅よりも広く形成されており、前記後部の少なくとも一部では前記上層吸収体の幅が前記下層吸収体の幅よりも狭く形成されており、前記吸収体の前後方向の両端部には、上層吸収体が配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の吸収性物品では、前記吸収体は、股部において下層吸収体の幅方向外方に到達した体液が上層吸収体によって前後方向に拡散され、この体液が前部および/または後部において下層吸収体に吸収される。また、上層吸収体がアセテート繊維から形成されているため、上層吸収体内部での尿等の拡散が早くなる。さらに、下層吸収体がパルプを含有するため、上層吸収体で拡散した尿等が下層吸収体へと移行しやすくなる。よって、本発明の吸収性物品では、股部における横漏れを防止することができ、かつ、後部の下層吸収体の幅方向外方部分に体液を素早く吸収させることができるため、吸収速度も向上する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、吸収性能に優れた吸収性物品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明で使用する吸収体の一例を示す平面図。
【
図4】本発明で使用する吸収体の他の一例を示す平面図。
【
図10】本発明の吸収性物品の他の例を示す平面図。
【
図13】本発明の吸収性物品の他の例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の吸収性物品は、透液性のトップシートと、不透液性のバックシートと、これらのトップシートとバックシートとの間に配置された吸収体とを有する。トップシートは、吸収体の肌面側に配され、バックシートは吸収体の非肌面側(外面側)に配されている。トップシートを透過した排泄物は、吸収体により収容される。バックシートは排泄物が外へ漏れるのを防いでいる。
【0012】
吸収性物品は、前後方向yと幅方向xを有する。前後方向yとは、吸収性物品を着用した際に着用者の股間の前後方向に延びる方向に相当する。幅方向xとは、吸収性物品と同一面上にあり前後方向yと直交する方向を意味し、吸収性物品を着用した際の着用者の左右方向に相当する。また、幅方向xと前後方向yにより形成される面に対して垂直方向が厚み方向zである。吸収性物品を着用者が着用した際に、着用者の肌に向かう側を肌面側とし、その反対側を外面側とする。
【0013】
1.吸収体
吸収体は、尿等の体液を吸収し、保持する。前記吸収体は、上層吸収体と、前記上層吸収体の外面側(バックシート側)に配置された下層吸収体とから構成されている。
【0014】
前記吸収体は、前部、股部および後部を有する。前記前部は、吸収性物品の着用の際に着用者の腹側に位置する部分である。前記後部は、吸収性物品の着用の際に着用者の背側に位置する部分である。なお、前部および後部は、用途に応じて変更してもよく、記前部を着用者の背側に、前記後部を着用者の腹側に位置させて使用してもよい。前記股部は、前記前部と前記後部との間に位置し、吸収性物品の着用の際に着用者の股下に位置する部分である。前記吸収体の前方端を0%、後方端を100%としたとき、前記股部の位置は、20%~80%である。
【0015】
そして、前記吸収体は、前記股部の少なくとも一部では前記上層吸収体の幅が前記下層吸収体の幅よりも広く形成されており、前記後部の少なくとも一部では前記上層吸収体の幅が前記下層吸収体の幅よりも狭く形成されており、かつ、前記吸収体の前後方向の両端部には、上層吸収体が配置されていることを特徴とする。
【0016】
(股部)
前記股部の少なくとも一部では前記上層吸収体の幅が前記下層吸収体の幅よりも広く形成されている。前記吸収体は、股部において下層吸収体の幅方向外方に到達した体液が上層吸収体によって前後方向に拡散され、この体液が前部および後部において下層吸収体に吸収される。特に、吸収体の後部では下層吸収体が上層吸収体よりも幅広に形成されているため、この部分の下層吸収体に体液が吸収されやすくなっている。また、上層吸収体がアセテート繊維から形成されているため、上層吸収体内部での尿等の拡散が早くなる。さらに、下層吸収体がパルプを含有するため、上層吸収体で拡散した尿等が下層吸収体へと移行しやすくなる。よって、本発明の吸収性物品では、股部における横漏れを防止することができ、かつ、後部の下層吸収体の幅方向外方部分に体液を素早く吸収させることができるため、吸収速度も向上する。
【0017】
前記上層吸収体の股部の最も幅が狭い部分の幅W12とこの部分の下層吸収体の幅W22との比(W12/W22)は、1.05以上が好ましく、より好ましくは1.10以上、さらに好ましくは1.15以上であり、1.30以下が好ましく、より好ましくは1.25以下、さらに好ましくは1.20以下である。前記比(W12/W22)が上記範囲内であれば、股部において下層吸収体の幅方向外方に到達した体液を、上層吸収体によって前後方向に拡散させ、後部の下層吸収体へ搬送することができる。
【0018】
また、前記幅W12と幅W22との差(W12-W22)は、5mm以上が好ましく、より好ましくは10mm以上、さらに好ましくは15mm以上であり、30mm以下が好ましく、より好ましくは25mm以下、さらに好ましくは20mm以下である。前記差(W12-W22)が上記範囲内であれば、股部において下層吸収体の幅方向外方に到達した体液を、上層吸収体によって前後方向に拡散させ、後部の下層吸収体へ搬送することができる。
【0019】
前記股部においては、前後方向の少なくとも一部において、前記上層吸収体の幅が前記下層吸収体の幅よりも広く形成されていればよい。前記股部の前後方向の長さを100%としたとき、前記上層吸収体の幅が前記下層吸収体の幅よりも広くなっている部分の長さが50%以上であることが好ましく、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上である。前記股部では、股部の前後方向全体にわたって、前記上層吸収体の幅が前記下層吸収体の幅よりも広く形成されていることが好ましい。
【0020】
(後部)
前記後部の少なくとも一部では、前記上層吸収体の幅が前記下層吸収体の幅よりも狭く形成されている。このように構成することで、前記股部の下層吸収体の幅方向外方にて上層吸収体に取り込まれた体液を、後部の下層吸収体に取り込みやすくなる。そのため、股部における横漏れをより確実に防止できる。また、上層吸収体によって、後部の下層吸収体の全体に、体液を素早く分散させることができるため、吸収速度が向上する。
【0021】
前記下層吸収体の後部の最も幅が広い部分の幅W23とこの部分の上層吸収体の幅W13との比(W23/W13)は、1.0以上が好ましく、より好ましくは1.1以上、さらに好ましくは1.2以上であり、2.0以下が好ましく、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.3以下である。前記比(W23/W13)が上記範囲内であれば、股部における下層吸収体の幅方向外方に到達した体液が、上層吸収体によって搬送され、後部の吸収体の全体に素早く吸収させることができる。
【0022】
また、前記幅W13と幅W23との差(W23-W13)は、10mm以上が好ましく、より好ましくは30mm以上、さらに好ましくは50mm以上であり、150mm以下が好ましく、より好ましくは100mm以下、さらに好ましくは80mm以下である。前記差(W23-W13)が上記範囲内であれば、股部における下層吸収体の幅方向外方に到達した体液が、上層吸収体によって搬送され、後部の吸収体の全体に素早く吸収させることができる。
【0023】
前記後部においては、前後方向の少なくとも一部において、前記上層吸収体の幅が前記下層吸収体の幅よりも狭く形成されていればよい。前記後部の前後方向の長さを100%としたとき、前記上層吸収体の幅が前記下層吸収体の幅よりも狭くなっている部分の長さが50%以上であることが好ましく、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上である。
【0024】
(前部)
前記前部では、前記上層吸収体の幅が前記下層吸収体の幅よりも広く形成されていてもよいし、前記上層吸収体の幅が前記下層吸収体の幅と同じ幅に形成されていてもよいし、前記上層吸収体の幅が前記下層吸収体の幅よりも狭く形成されていてもよい。前記前部の構成としては、例えば、前部の前後方向全体にわたって、前記上層吸収体の幅が前記下層吸収体の幅よりも広く形成されている態様;前後方向の少なくとも一部において、前記上層吸収体の幅が前記下層吸収体の幅よりも狭く形成されている態様が挙げられる。
【0025】
(前方端、後方端)
前記吸収体の前方端および後方端には、上層吸収体が配置されている。すなわち、上層吸収体は、吸収体の前方端の少なくとも一部、および、後方端の少なくとも一部に配置されており、上層吸収体が吸収体の前後方向全体に連続するように配置されている。このように配置することで、上層吸収体によって体液を前後方向に素早く拡散させることができ、吸収体の吸収速度が向上する。
【0026】
前記吸収体の前方端において、吸収体の幅方向の長さを100%としたとき、上層吸収体が配置されている部分の長さは、50%以上が好ましく、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上である。前記吸収体の前方端において、吸収体の幅方向全体に上層吸収体が配置されていることが好ましい。
【0027】
前記吸収体の後方端において、吸収体の幅方向の長さを100%としたとき、上層吸収体が配置されている部分の長さは、50%以上が好ましく、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上である。前記吸収体の後方端において、吸収体の幅方向全体に上層吸収体が配置されていることが好ましい。
【0028】
前記吸収体の前方端および後方端には、下層吸収体が配置されていることが好ましい。すなわち、下層吸収体は、吸収体の前方端の少なくとも一部、および、後方端の少なくとも一部に配置されており、下層吸収体が吸収体の前後方向全体にわたって配置されていることが好ましい。
【0029】
前記吸収体の前方端において、吸収体の幅方向の長さを100%としたとき、下層吸収体が配置されている部分の長さは、50%以上が好ましく、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上であり、100%以下が好ましい。
【0030】
前記吸収体の後方端において、吸収体の幅方向の長さを100%としたとき、下層吸収体が配置されている部分の長さは、50%以上が好ましく、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上であり、100%以下が好ましい。
【0031】
前記吸収体は、前方端および後方端において、前記上層吸収体の幅が前記下層吸収体の幅よりも広く形成されていることが好ましい。このように構成することで、下層吸収体の前方端や後方端の側縁に到達した体液を、上層吸収体によって、再度下層吸収体の内方へ送ることができ、吸収体の四隅の液溜りを抑制できる。
【0032】
前記上層吸収体の前方端の幅W10と下層吸収体の前方端の幅W20との比(W10/W20)は、1.05以上が好ましく、より好ましくは1.10以上、さらに好ましくは1.15以上であり、1.30以下が好ましく、より好ましくは1.25以下、さらに好ましくは1.20以下である。前記比(W10/W20)が上記範囲内であれば、下層吸収体の前方端の側縁に到達した体液を、上層吸収体によって、再度下層吸収体の内方へ送ることができ、吸収体の四隅の液溜りを抑制できる。
【0033】
また、前記幅W10と幅W20との差(W10-W20)は、5mm以上が好ましく、より好ましくは10mm以上、さらに好ましくは15mm以上であり、30mm以下が好ましく、より好ましくは25mm以下、さらに好ましくは20mm以下である。前記差(W10-W20)が上記範囲内であれば、下層吸収体の前方端の側縁に到達した体液を、上層吸収体によって、再度下層吸収体の内方へ送ることができ、吸収体の四隅の液溜りを抑制できる。
【0034】
前記上層吸収体の後方端の幅W14と下層吸収体の後方端の幅W24との比(W14/W24)は、1.05以上が好ましく、より好ましくは1.10以上、さらに好ましくは1.15以上であり、1.30以下が好ましく、より好ましくは1.25以下、さらに好ましくは1.20以下である。前記比(W14/W24)が上記範囲内であれば、下層吸収体の後方端の側縁に到達した体液を、上層吸収体によって、再度下層吸収体の内方へ送ることができ、吸収体の四隅の液溜りを抑制できる。
【0035】
また、前記幅W14と幅W24との差(W14-W24)は、5mm以上が好ましく、より好ましくは10mm以上、さらに好ましくは15mm以上であり、30mm以下が好ましく、より好ましくは25mm以下、さらに好ましくは20mm以下である。前記差(W14-W24)が上記範囲内であれば、下層吸収体の後方端の側縁に到達した体液を、上層吸収体によって、再度下層吸収体の内方へ送ることができ、吸収体の四隅の液溜りを抑制できる。
【0036】
1-2.上層吸収体
前記上層吸収体は、アセテート繊維から形成されている。上層吸収体がアセテート繊維から形成されているため、上層吸収体内部において尿等の体液が拡散しやすいため、体液が吸収体に素早く吸収される。
【0037】
前記アセテート繊維としては、アセテート繊維は、セルロースを酢酸エステル化することにより得られる半合成繊維である。前記アセテート繊維としては、セルロースのヒドロキシ基の74%以上、92%未満が酢酸エステル化されたセルロースジアセテート繊維(エステル化度:2.22以上2.76未満)、セルロースのヒドロキシ基の92%以上が酢酸エステル化されたセルロールトリアセテート繊維(エステル化度:2.76以上)が挙げられ、セルロースジアセテート繊維が好ましい。なお、エステル化度は、セルロースにおけるグルコース単位当たりのアセチル基で置換されたヒドロキシ基の平均個数である。
【0038】
前記アセテート繊維(モノフィラメント)の繊度は、0.1dtex以上が好ましく、より好ましくは1.0dtex以上、さらに好ましくは1.5dtex以上であり、16dtex以下が好ましく、より好ましくは10dtex以下、さらに好ましくは7.0dtex以下、特に好ましくは5.0dtex以下である。繊度が0.1dtex以上であれば、上層吸収体のクッション性がより向上し、16dtex以下であれば上層吸収体の風合いがより良好となる。
【0039】
アセテート繊維の断面形状は、特に限定されず、円型、楕円型、三角型、L型、Y型、X型、W型、八葉型、偏平型(ブ-メラン型、波型、まゆ型、直方体型など)、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。体液を吸収した後のドライ性を向上させる観点から、アセテート繊維の断面形状は、円型、楕円型が好ましい。
【0040】
前記アセテート繊維の形態としては、原綿(繊維集合体)、マルチフィラメント糸、マルチフィラメント糸を合糸したトウ、これらのマルチフィラメント糸やトウを開繊したものが挙げられ、原綿が好ましい。
【0041】
前記上層吸収体は、アセテート繊維以外の他の繊維を含有していてもよい。この場合、上層吸収体中のアセテート繊維の含有率は、50質量%以上、70質量%が好ましく、90質量%以上がより好ましい。なお、前記上層吸収体は、アセテート繊維のみから構成されていることが最も好ましい。前記他の繊維としては、セルロース繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリアミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、アクリル繊維などが挙げられる。
【0042】
前記上層吸収体は、後述する吸水性樹脂粉末を含有しないことが好ましく、吸水性材料を含有しないことがより好ましい。
【0043】
前記上層吸収体の平面視形状は、特に限定されないが、長方形状が好ましい。
【0044】
前記上層吸収体の目付けは、5g/m2以上が好ましく、より好ましくは10g/m2以上、さらに好ましくは15g/m2以上であり、100g/m2以下が好ましく、より好ましくは70g/m2以下、さらに好ましくは50/m2以下である。上層吸収体の目付けが、5g/m2以上であれば尿等が上層吸収体で素早く拡散するため、尿等が表面材に残らず、モレが抑制され、100g/m2以下であれば尿等の下層吸収体への移行よりも拡散が過度に起こることが抑制され、吸収体全体を有効に使用でき、モレが抑制される。
【0045】
前記上層吸収体の厚さは、0.1mm以上が好ましく、より好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは1.0mm以上であり、3.0mm以下が好ましく、より好ましくは2.0mm以下、さらに好ましくは1.5mm以下である。厚さが0.1mm以上であれば尿等が上層吸収体で素早く拡散するため、尿等が表面材に残らず、モレが抑制され、3.0mm以上であれば尿等の下層吸収体への移行よりも拡散が過度に起こることが抑制され、吸収体全体を有効に使用でき、モレが抑制される。吸収体の厚さは、シックネスゲージ(株式会社テクロック社製、SM-130)を用い、終圧が2.2N以下となるように厚みを測定する。アンビルと測定子は、測定対象との接触面が平らで直径10mmのものを用いる。
【0046】
1-3.下層吸収体
前記下層吸収体は、吸収性材料として、吸水性樹脂粉末とパルプとを含有する。前記下層吸収体は、前記上層吸収体と直接、または、接着剤を介して積層される。
【0047】
前記吸水性樹脂粉末としては、従来吸収性物品に使用されているものが使用できる。前記吸水性樹脂粉末は、特に限定されないが、アクリル酸を構成成分とする架橋重合体であって、そのカルボキシ基の少なくとも一部が中和されているものを使用することが好ましい。前記架橋重合体を構成するアクリル酸成分の含有率は、50質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、99質量%以下が好ましく、97質量%以下がより好ましい。アクリル酸成分の含有率が前記範囲内であれば、得られる吸水性樹脂粉末が、所望の吸収性能を発現しやすくなる。
【0048】
架橋重合体のカルボキシ基の少なくとも一部を中和する陽イオンとしては、特に限定されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属イオン等を挙げることができる。これらの中でも、架橋重合体のカルボキシ基の少なくとも一部が、ナトリウムイオンで中和されていることが好ましい。なお、架橋重合体のカルボキシ基の中和は、重合して得られる架橋重合体のカルボキシ基を中和するようにしてもよいし、予め、中和された単量体を用いて架橋重合体を形成するようにしてもよい。
【0049】
架橋重合体のカルボキシ基の中和度は、55モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましい。中和度が低すぎると、得られる吸水性樹脂粉末の吸収性能が低下する場合がある。また、中和度の上限は、特に限定されず、カルボキシ基のすべてが中和されていてもよい。なお、中和度は、下記式で求められる。
中和度(モル%)=100×「架橋重合体の中和されているカルボキシ基のモル数」/「架橋重合体が有するカルボキシ基の総モル数(中和、未中和を含む)」
【0050】
前記吸水性樹脂粉末には、防腐剤、防かび剤、抗菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、芳香剤、消臭剤、無機質粉末及び有機質繊維状物などの添加剤を配合してもよい。
【0051】
前記下層吸収体における吸水性樹脂粉末の目付は、50g/m2以上が好ましく、500g/m2以下が好ましい。
【0052】
前記パルプとしては、木材を原料とする木材パルプ;葉、草、藁などを原料とする非木材パルプ;古紙などを原料とする古紙パルプ;使用済みの吸収性物品などから回収した再生パルプなどが挙げられる。
【0053】
前記下層吸収体におけるパルプの目付は、100g/m2以上が好ましく、500g/m2以下が好ましい。
【0054】
前記下層吸収体は、吸水性樹脂粉末およびパルプに加えて他の吸水性材料を含有してもよい。他の吸水性材料としては、例えば、セルロース繊維、レーヨンなどが挙げられる。
【0055】
前記下層吸収体は、繊維基材を含有してもよい。前記繊維基材としては、熱融着繊維などを挙げることができる。熱融着性繊維は、保形性を高めるために使用される。熱融着繊維の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維や複合繊維などが用いられる。
【0056】
前記下層吸収体の平面視形状は、特に限定されないが、羽子板形状、砂時計形状が好ましい。また、前記下層吸収体は、1層でもよいし、2層以上の多層としてもよい。なお、下層吸収体を多層とする場合には、最もトップシート側に配置される下層吸収体は、幅方向略中央部に厚さ方向に貫通する貫通孔を有することが好ましい。
【0057】
前記下層吸収体の厚さは、1mm以上が好ましく、より好ましくは3mm以上、さらに好ましくは5mm以上であり、15mm以下が好ましく、より好ましくは10mm以下、さらに好ましくは8mm以下である。層吸収体の厚さが1mm以上であれば着用感が良く、かつ、吸収体での吸収量が向上し、15mm以下であれば着用時の違和感をより抑制できる。
【0058】
1-4.被覆シート
前記上層吸収体および/または前記下層吸収体は、被覆シートに固定されているか、または、被覆シートで包囲されていることが好ましい。
【0059】
前記被覆シートの材質は、透液性を有し、かつ、アセテート繊維、吸水性樹脂粉末およびパルプの飛散を抑制できるものであれば特に限定されない。前記被覆シートの材質としては、ティッシュペーパー、透液性の不織布等が挙げられる。
【0060】
前記被覆シートの目付は、7g/m2以上が好ましく、20g/m2以下が好ましい。
【0061】
前記吸収体の態様としては、上層吸収体と下層吸収体とを積層した積層体が被覆シートで包囲されている態様;上層吸収体が第一被覆シートで包囲されており、下層吸収体が第二被覆シートで包囲されている態様;上層吸収体が第一被覆シートに固定されており、下層吸収体が第二被覆シートで包囲されている態様;上層吸収体が第一被覆シートに固定されており、下層吸収体が第二被覆シートに固定されている態様が挙げられる。
【0062】
前記積層体、上層吸収体または下層吸収体を被覆シートで包囲する態様としては、一枚の被覆シートで包囲する態様;上部被覆シートと下部被覆シートの2枚の被覆シートで包囲する態様;3枚以上の被覆シートで包囲する態様が挙げられる。
【0063】
前記上層吸収体を被覆シートで包囲する場合、少なくとも股部、前方端および後方端を被覆シートで包囲することが好ましい。これらの部分を被覆シートで包囲することで、吸収体形状が安定し型崩れしにくくなる。
【0064】
上層吸収体または下層吸収体を被覆シートに固定する方法としては、接着剤で固着する方法が挙げられる。
なお、上述したように、前記吸収体の前方端および後方端において、前記上層吸収体の幅が前記下層吸収体の幅よりも広く形成されている場合は、前方端および後方端において、下層吸収体の外方に延出している上層吸収体の少なくとも一部が、被覆シートに接着剤で固着されていることが好ましい。外方に延出している部分を被覆シートに固着することで、延出部分の形状を維持しやすくなり、吸収体の四隅の液溜りをより抑制できる。
【0065】
前記吸収体は、厚さ方向に押圧加工(エンボス加工)が施されていることが好ましい。押圧加工を施すことで、上層吸収体および下層吸収体の位置を固定することができる。また、押圧加工を施すことで、吸収体内部の空気を抜くことができ、包装袋にコンパクトに収納することができる。
【0066】
前記押圧加工により形成されるエンボス部の形状や配置は特に限定されない。例えば、四角格子状、菱形格子状などの直線を組み合わせた形状;フィッシュ形状;任意の形状で散点状に設けることが挙げられる。エンボス部の1つ1つの形状は、円形、楕円形、長円形、多角形、波形、星形等などが挙げられる。散点状に設ける場合、これらは規則的な配置パターンで設けられてもよく、ランダムな配置パターンで設けられてもよい。例えば、千鳥状、格子状などが挙げられる。押圧加工は、1回のみでもよいし、多数回行ってもよい。例えば、菱形格子状のエンボス部を形成した後、さらにフィッシュ形のエンボスを形成してもよい。
【0067】
前記上層吸収体と前記下層吸収体との間には、接着剤を配置してもよいし、接着剤を配置していなくてもよい。前記上層吸収体と前記下層吸収体との間に、接着剤を配置しない場合、上層吸収体を構成するアセテート繊維が自由に動くことができる。そのため、着用時により体にフィットしやすくなり、尿等の体液の漏れをより抑制できる。
【0068】
前記上層吸収体と前記下層吸収体との間に接着剤を配置する場合、上層吸収体と下層吸収体との密着性を高めることができ、上層吸収体の内部を拡散した体液等を素早く下層吸収体に移行させることができる。上層吸収体と下層吸収体との間に接着剤を配置する場合、スパイラルスプレー、カーテンスプレー等の塗布面積が広く、接着剤層の透液性を確保できる塗布方法を採用することが好ましい。
【0069】
1-5.吸収体の具体例
次に、吸収体の具体例について、
図1~6を参照して説明する。なお、図では、矢印xを幅方向とし、矢印yを前後方向と定義付ける。また、矢印x,yにより形成される面上の方向を、平面方向と定義付ける。また、矢印x,yにより形成される面に対して垂直方向が上下方向zを表す。
【0070】
(具体例1)
図1は、本発明で使用する吸収体の一例を示す平面図である。
図2は、
図1のA-A線の模式的断面図である。
図3は、
図1のB-B線の模式的断面図である。
【0071】
図1~3に記載の吸収体10は、1層の上層吸収体11と、前記上層吸収体11の外面側(バックシート側)に配置された1層の下層吸収体12とから構成されており、前記上層吸収体11がアセテート繊維から形成されており、前記下層吸収体12が吸水性樹脂粉末とパルプとを含有する。前記上層吸収体11の平面視形状は長方形状であり、前記下層吸収体12の平面視形状は羽子板状である。
【0072】
前記吸収体10は、前部P、股部Qおよび後部Rを有する。そして、前記股部Qの少なくとも一部では前記上層吸収体11の幅が前記下層吸収体12の幅よりも広く形成されており、前記後部Rの少なくとも一部では前記上層吸収体11の幅が前記下層吸収体12の幅よりも狭く形成されている。また、前部Pでは、前記上層吸収体11の幅が前記下層吸収体12の幅よりも広く形成されている。
【0073】
前記吸収体10は、前方端および後方端に、上層吸収体11が配置されている。そして、前記吸収体10の前方端において、吸収体10の幅方向全体に上層吸収体11が配置されており、前記吸収体10の後方端において、吸収体10の幅方向全体に上層吸収体11が配置されている。
【0074】
また、前記吸収体10は、前方端および後方端に、下層吸収体12が配置されている。そして、前方端および後方端において、前記上層吸収体11の幅が前記下層吸収体12の幅よりも広く形成されている。
【0075】
なお、
図1~3に記載の吸収体10では、上層吸収体11および下層吸収体12は、被覆シートに固定、包囲されていないが、前記上層吸収体11および下層吸収体12は、それぞれ被覆シートに固定されているか、または、被覆シートで包囲されていてもよい。また、上層吸収体11および下層吸収体12の積層体を被覆シートで包囲してもよい。さらに
図1~3に記載の吸収体10は、上層吸収体11を1層、下層吸収体12を1層有しているが、下層吸収体12を多層としてもよい。
【0076】
(具体例2)
図4は、本発明の吸収性物品の他の一例を示す平面図である。
図5は、
図4のA-A線の模式的断面図である。
図6は、
図4のB-B線の模式的断面図である。下記の説明において、
図1~3の具体例と重複する部位は、同一の符号を付し、説明は省略する。
【0077】
図4~6に記載の吸収体10は、1層の上層吸収体11と、前記上層吸収体11の外面側(バックシート側)に配置された1層の下層吸収体12とから構成されている。前記上層吸収体11の平面視形状は長方形状であり、前記下層吸収体12の平面視形状は砂時計状である。すなわち、下層吸収体12は、股部の幅が狭く形成されており、前部および後部の幅が、前記股部の幅よりも広く形成されている。
【0078】
前記吸収体10は、股部Qの少なくとも一部では前記上層吸収体11の幅が前記下層吸収体12の幅よりも広く形成されており、前記後部Rの少なくとも一部では前記上層吸収体11の幅が前記下層吸収体12の幅よりも狭く形成されている。また、前部Pの少なくとも一部では、前記上層吸収体11の幅が前記下層吸収体12の幅よりも狭く形成されている。
【0079】
前記吸収体10は、前方端および後方端に、上層吸収体11が配置されている。そして、前記吸収体10の前方端において、吸収体10の幅方向全体に上層吸収体11が配置されており、前記吸収体10の後方端において、吸収体10の幅方向全体に上層吸収体11が配置されている。
【0080】
また、前記吸収体10は、前方端および後方端に、下層吸収体12が配置されている。そして、前方端および後方端において、前記上層吸収体11の幅が前記下層吸収体12の幅よりも広く形成されている。
【0081】
なお、
図4~6に記載の吸収体10では、上層吸収体11および下層吸収体12は、被覆シートに固定、包囲されていないが、前記上層吸収体11および下層吸収体12は、それぞれ被覆シートに固定されているか、または、被覆シートで包囲されていてもよい。また、上層吸収体11および下層吸収体12の積層体を被覆シートで包囲してもよい。さらに
図4~6に記載の吸収体10は、上層吸収体11を1層、下層吸収体12を1層有しているが、下層吸収体12を多層としてもよい。
【0082】
2.トップシート
前記トップシートは、吸収性物品の着用の際に着用者側に位置するシートである。前記トップシートは、透液性であればその材料は特に限定されない。前記トップシートの平面視形状は特に限定されず、吸収体の形状や、立ち上がりフラップ(サイドシート)の有無に応じて調整すればよい。
【0083】
前記トップシートとしては、親水性の不織布、織布、編布が挙げられる。前記親水性の不織布としては、セルロース、レーヨン、コットン等の親水性繊維から形成された不織布;ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル、ポリアミド等の疎水性繊維から形成された不織布であって、疎水性繊維の表面が界面活性剤により親水化された不織布が挙げられる。
【0084】
3.バックシート
前記バックシートは、吸収性物品の着用の際に着用者とは反対側、すなわち外側に位置するシートである。前記バックシートは、不透液性であればその材料は特に限定されない。なお、本発明において、不透液性には撥水性も含まれる。前記バックシートの平面視形状は特に限定されず、吸収体の形状に応じて調整すればよい。
【0085】
前記バックシートとしては、疎水性の不織布、プラスチックフィルム、プラスチックフィルムと不織布との積層体が挙げられる。前記疎水性の不織布としては、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル、ポリアミド等の疎水性繊維から形成された不織布が挙げられる。前記プラスチックフィルムとしては、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル、ポリアミド等の樹脂から形成されたフィルムが挙げられる。前記プラスチックフィルムに積層される不織布は、親水性、疎水性のいずれでもよい。
【0086】
4.レッグギャザー
前記吸収体物品の両側部には、前記トップシートと前記バックシートとの間に、前後方向に延びるレッグ用弾性部材が配置されていてもよい。レッグ用弾性部材を伸長状態でトップシートおよびバックシートに固定することで、レッグ用弾性部材の収縮力により、レッグギャザーが形成される。なお、レッグ用弾性部材は、吸収性物品の幅方向において、吸収体の両側端の外方側に配置されていることが好ましい。
【0087】
レッグ用弾性部材としては、ポリウレタンゴム糸、ポリウレタンゴムフィルム、天然ゴム等を使用できる。また、レッグ用弾性部材は、ホットメルト接着剤等の接着剤で固定されることが好ましく、ゴム系のホットメルト接着剤で固定することがより好ましい。前記レッグ用弾性部材の個数、前後方向の長さ等は、適宜調節すればよい。
【0088】
5.立体ギャザー
前記吸収性物品の両側部には、前記トップシートの肌面側に立ち上がりフラップが配置されていることが好ましい。前記立ち上がりフラップは、立ち上がりの起点となる基部と、立ち上がりの先端となる自由端を有する。立ち上がりフラップを設けることで、尿等の体液の横漏れを防止できる。
【0089】
前記立ち上がりフラップは、フラップ形成シートから構成することができる。フラップ形成シートは、液不透過性のプラスチックフィルムや液不透過性の不織布等により構成することができ、バックシートに使用可能なシート材料を用いることができる。
【0090】
フラップ形成シートは、トップシートの幅方向の両側に設けられたサイドシートによって形成されていてもよい。この場合、サイドシートがトップシートとサイド結合部で接合され、サイドシートのサイド接合部よりも幅方向の内方部分をフラップ形成シートとすることができる。
【0091】
前記立ち上がりフラップの自由端には、前後方向に延びるフラップ用弾性部材が伸長状態で配置されていることが好ましい。フラップ用弾性部材の収縮力によって、立ち上がりフラップの起立が促進される。フラップ用弾性部材は、前記フラップ形成シートの自由端を折り返し、折り返されたフラップ形成シートの間に配置することが好ましい。すなわち、自由端で折り返されたフラップ形成シートの自由端を挟んだ一方部と他方部の間にフラップ用弾性部材を配置することが好ましい。
【0092】
また、前記立ち上がりフラップは、前記基部が、前記上層吸収体の側端部よりも幅方向内方に配置されていることが好ましい。このように構成することで、トップシート上の尿等の体液を、上層吸収体へと誘導することができ、漏れを抑制できる。
【0093】
6.吸収性物品
本発明の吸収性物品としては、失禁パッド、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、使い捨ておむつ本体や生理用ナプキンに取り付けてしようする使い捨て補助パッドなどが挙げられる。
【0094】
前記吸収性物品が、失禁パッド、生理用ナプキンまたは使い捨て補助パッドである場合、例えば、透液性のトップシートと不透液性のバックシートとの間に、吸収体が配置される。失禁パッド、生理用ナプキンまたは使い捨て補助パッドの形状としては、砂時計型、ひょうたん型などが挙げられる。また、必要に応じて、前記透液性のトップシートの幅方向両側に不透液性の立ち上がりフラップが設けられていてもよい。
【0095】
前記吸収性物品が使い捨ておむつである場合、使い捨ておむつとしては、例えば、後背部または前腹部の左右に一対の止着部材が設けられ、当該止着部材により着用時にパンツ型に形成するテープ型使い捨ておむつ;前腹部と後背部とが接合されることによりウエスト開口部と一対の脚開口部とが形成されたパンツ型使い捨ておむつなどが挙げられる。
【0096】
吸収性物品が、使い捨ておむつである場合、使い捨ておむつは、例えば、内側シートと外側シートとからなる積層体が前腹部と後背部とこれらの間に位置する股部とからなるおむつ本体を形成し、前記股部に、前記吸水体が配置されていてもよい。また、使い捨ておむつは、例えば、トップシートとバックシートとの間に、吸収体が配置された積層体からなり、この積層体が前腹部と後背部とこれらの間に位置する股部とを有していてもよい。前記内側シートは、親水性または撥水性であることが好ましく、前記外側シートは、撥水性であることが好ましい。
【0097】
前記使い捨ておむつには、両側縁部に沿って、立ち上がりフラップが設けられていることが好ましい。立ち上がりフラップを設けることにより、体液の横漏れを防ぐことができる。立ち上がりフラップは、トップシートの幅方向両側に設けられたサイドシートの内方端が立ち上げられて、形成されてもよい。前記立ち上がりフラップおよびサイドシートは、撥水性であることが好ましい。
【0098】
前記吸収性物品が使い捨ておむつである場合、尿パッドを併用した際に、吸収体の股部では下層吸収体の幅方向外方に延出する上層吸収体によって、股部周辺の隙間を低減することができる。そのため、尿パットを併用した場合でも、横漏れを効果的に防止できる。
【0099】
7.吸収性物品の製造方法
前記吸収性物品の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を採用すればよい。
【0100】
前記吸収性物品の製造方法は、アセテート繊維をシート状に成形し、上層吸水層を作製する工程;吸水性樹脂粉末とパルプとの混合物をシート状に成形し、下層吸水層を作製する工程;前記上層吸水層と下層吸水層とを積層し、積層体を作製する工程;前記積層体を裁断し、吸収体を作製する工程;および、前記吸収体を、バックシートおよびトップシートで挟み、これらを固定する工程を有することが好ましい。
【0101】
上層吸水層と下層吸水層との積層体を作製し、この積層体を裁断して吸収体を製造することで、アセテート繊維をスムーズに切断することができ、上層吸収体と下層吸収体を有する吸収体を容易に作製できる。
【0102】
前記上層吸水層を作製する工程では、アセテート繊維をシート状に成形する。具体的には、アセテートトウを開繊し、アセテート繊維を捕集して、繊維集合体層を形成する。
【0103】
前記上層吸水層は、被覆シート状に固着してもよいし、被覆シートで包囲してもよい。また、上層吸水層を、後述する下層吸水層の上面に直接形成してもよい。
【0104】
前記下層吸水層を作製する工程では、吸水性樹脂粉末とパルプとの混合物をシート状に成形する。前記下層吸水層を作製する方法は、パルプをシート状に成形し、ここに吸水性樹脂粉末を散布する方法;パルプと吸水性樹脂粉末とを混合し、この混合物をシート状に成形する方法等が挙げられる。
【0105】
前記下層吸水層は、被覆シート状に固着してもよいし、被覆シートで包囲してもよい。また、下層吸水層を、バックシート状に直接形成してもよい。
【0106】
前記積層体を作製する工程では、前記上層吸水層と下層吸水層とを積層する。なお、前記上層吸水層を作製する工程、下層吸水層を作製する工程、および、積層体を作製する工程は、それぞれ別々に行ってもよいし、同時に行ってもよい。具体的には、上層吸水層および下層吸水層を別々に作製し、これらを積層する態様;下層吸水層を作製し、この下層吸水層の上面に上層吸水層を作製して、積層体を作製する態様;上層吸水層を作製し、この上層吸水層の下面に下層吸水層を作製して、積層体を作製する態様等が挙げられる。
【0107】
前記吸収体を作製する工程では、積層体を所望の形状に裁断する。積層体を裁断する方法は特に限定されず、公知の方法を採用すればよい。
【0108】
最後に、前記吸収体を、バックシートおよびトップシートで挟み、これらを固定する。前記吸収体とバックシート、および/または、吸収体とトップシートを、接着剤で固着し、固定する。前記バックシートとトップシートとは、周縁部で接着させることが好ましい。なお、吸収性物品が、トップシートの幅方向両側に設けられたサイドシートを有する場合、前記バックシートとサイドシートとを接着すればよい。
【0109】
8.具体例
次に、本発明の吸収性物品について、使い捨て補助パッドを例に挙げ、
図7~15を参照して説明する。なお、図では、矢印xを幅方向とし、矢印yを前後方向と定義付ける。また、矢印x,yにより形成される面上の方向を、平面方向と定義付ける。また、矢印x,yにより形成される面に対して垂直方向が上下方向zを表す。
【0110】
8-1.第1実施態様
図7は、吸収性物品(使い捨て補助パッド)の平面図を表す。
図8は、
図7の吸収性物品のA-A線の模式的断面図を表す。
図9は、
図7の吸収性物品のB-B線の模式的断面図を表す。
【0111】
補助パッド1は、液透過性のトップシート2と、不透液性のバックシート3と、これらの間に配置された吸収体10とを有している。前記吸収体10は、1層の上層吸収体11と、前記上層吸収体11の外面側に配置された1層の下層吸収体12から構成されている。前記上層吸収体11はアセテート繊維から形成されている。前記下層吸収体12が吸水性樹脂粉末とパルプとを含有する。前記上層吸収体11の平面視形状は長方形状であり、前記下層吸収体12の平面視形状は羽子板状である。前記上層吸収体11は、被覆シート13に固定されている。
【0112】
前記吸収体10は、前部P、股部Qおよび後部Rを有する。そして、前記股部Qの少なくとも一部では前記上層吸収体11の幅が前記下層吸収体12の幅よりも広く形成されており、前記後部Rの少なくとも一部では前記上層吸収体11の幅が前記下層吸収体12の幅よりも狭く形成されている。また、前部Pでは、前記上層吸収体11の幅が前記下層吸収体12の幅よりも広く形成されている。
【0113】
前記吸収体10は、前方端および後方端に、上層吸収体11が配置されている。そして、前記吸収体10の前方端において、吸収体10の幅方向全体に上層吸収体11が配置されており、前記吸収体10の後方端において、吸収体10の幅方向全体に上層吸収体11が配置されている。
【0114】
また、前記吸収体10は、前方端および後方端に、下層吸収体12が配置されている。そして、前方端および後方端において、前記上層吸収体11の幅が前記下層吸収体12の幅よりも広く形成されている。前方端および後方端において、下層吸収体12の幅方向外方に延出している上層吸収体11の少なくとも一部は、被覆シート13に接着剤(図示しない)で固着されている。
【0115】
補助パッド1は、前記トップシート2の幅方向xの両側縁には、補助パッド1の前後方向yに延在するサイドシート6が接合している。サイドシート6は、液不透過性のプラスチックフィルムや撥水性不織布等により構成される。サイドシート6は、立ち上がり基部61においてトップシート2と接合されており、この立ち上がり基部61よりも内方側が立ち上がり可能な自由端となっている。サイドシート6の自由端には、フラップ用弾性部材7が設けられており、フラップ用弾性部材の収縮力によって立ち上がりフラップが形成される。
【0116】
8-2.第2実施態様
図10は、吸収性物品(使い捨て補助パッド)の平面図を表す。
図11は、
図10の吸収性物品のA-A線の模式的断面図を表す。
図12は、
図10の吸収性物品のB-B線の模式的断面図を表す。下記の説明において、
図7~9の実施態様と重複する部位は、同一の符号を付し、説明は省略する。
【0117】
図10~11に示した補助パッド1は、補助パッド1は、液透過性のトップシート2と、不透液性のバックシート3と、これらの間に配置された吸収体10とを有している。
【0118】
吸収体10は、1層の上層吸収体11と、前記上層吸収体11の外面側(バックシート側)に配置された1層の下層吸収体12とから構成されている。前記上層吸収体11の平面視形状は長方形状であり、前記下層吸収体12の平面視形状は砂時計状である。すなわち、下層吸収体12は、股部の幅が狭く形成されており、前部および後部の幅が、前記股部の幅よりも広く形成されている。前記上層吸収体11は、被覆シート13に固定されている。
【0119】
前記吸収体10は、股部Qの少なくとも一部では前記上層吸収体11の幅が前記下層吸収体12の幅よりも広く形成されており、前記後部Rの少なくとも一部では前記上層吸収体11の幅が前記下層吸収体12の幅よりも狭く形成されている。また、前部Pの少なくとも一部では、前記上層吸収体11の幅が前記下層吸収体12の幅よりも狭く形成されている。
【0120】
前記吸収体10は、前方端および後方端に、上層吸収体11が配置されている。そして、前記吸収体10の前方端において、吸収体10の幅方向全体に上層吸収体11が配置されており、前記吸収体10の後方端において、吸収体10の幅方向全体に上層吸収体11が配置されている。
【0121】
また、前記吸収体10は、前方端および後方端に、下層吸収体12が配置されている。そして、前方端および後方端において、前記上層吸収体11の幅が前記下層吸収体12の幅よりも広く形成されている。前方端および後方端において、下層吸収体12の幅方向外方に延出している上層吸収体11の少なくとも一部は、被覆シート13に接着剤(図示しない)で固着されている。
【0122】
8-3.第3実施態様
図13は、吸収性物品(使い捨て補助パッド)の平面図を表す。
図14は、
図13の吸収性物品のA-A線の模式的断面図を表す。
図15は、
図13の吸収性物品のB-B線の模式的断面図を表す。下記の説明において、
図7~12の実施態様と重複する部位は、同一の符号を付し、説明は省略する。
【0123】
図13~15に示した補助パッド1は、補助パッド1は、液透過性のトップシート2と、不透液性のバックシート3と、これらの間に配置された吸収体10とを有している。
【0124】
吸収体10は、1層の上層吸収体11と、前記上層吸収体11の外面側(バックシート側)に配置された2層の下層吸収体12および下層吸収体14とから構成されている。前記上層吸収体11の平面視形状は長方形状であり、前記下層吸収体12の平面視形状は砂時計状であり、前記下層吸収体14の平面視形状は長方形状である。前記上層吸収体11は、被覆シート13に固定されている。また、前記下層吸収体14は、被覆シート15で包囲されている。
【0125】
前記吸収体10は、股部Qの少なくとも一部では前記上層吸収体11の幅が前記下層吸収体12の幅よりも広く形成されており、前記後部Rの少なくとも一部では前記上層吸収体11の幅が前記下層吸収体12の幅よりも狭く形成されている。また、前部Pの少なくとも一部では、前記上層吸収体11の幅が前記下層吸収体12の幅よりも狭く形成されている。
【0126】
前記吸収体10は、前方端および後方端に、上層吸収体11が配置されている。そして、前記吸収体10の前方端において、吸収体10の幅方向全体に上層吸収体11が配置されており、前記吸収体10の後方端において、吸収体10の幅方向全体に上層吸収体11が配置されている。
【0127】
また、前記吸収体10は、前方端および後方端に、下層吸収体12が配置されている。そして、前方端および後方端において、前記上層吸収体11の幅が前記下層吸収体12の幅よりも広く形成されている。前方端および後方端において、下層吸収体12の幅方向外方に延出している上層吸収体11の少なくとも一部は、被覆シート13に接着剤(図示しない)で固着されている。
【0128】
前記下層吸収体12は、幅方向中央部に、前後方向に延びる貫通孔12aを有している。前記下層吸収体14の面積は、前記貫通孔12aの面積よりも大きく形成されており、前記貫通孔12aの下方に配置されている。なお、
図13では、下層吸収体14の平面視形状を長方形状としているが、下層吸収体14の平面視形状は、砂時計形状や羽子板形状でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明の吸収体は、例えば、人体から排出される体液を吸収するために用いられる吸収性物品に好適に使用でき、特に失禁パッド、使い捨ておむつ、生理用ナプキンなどの吸収性物品として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0130】
1:吸収性物品(補助パッド)、2:トップシート、3:バックシート、6:サイドシート、61:立ち上がり基部、7:フラップ用弾性部材、10:吸収体、11:上層吸収体、12:下層吸収体、13:被覆シート、14:下層吸収体、15:被覆シート。