(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096762
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】水力発電装置
(51)【国際特許分類】
F03B 5/00 20060101AFI20220623BHJP
F03B 7/00 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
F03B5/00
F03B7/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020209911
(22)【出願日】2020-12-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】高島 和久
(72)【発明者】
【氏名】丸尾 澪良
【テーマコード(参考)】
3H072
【Fターム(参考)】
3H072AA13
3H072AA26
3H072BB01
3H072BB06
3H072CC01
3H072CC08
(57)【要約】
【課題】張力の調整と、軸平行方向の位置調整を兼ね備えた調整機構を有する水力発電装置を得る。
【解決手段】水車の回転軸の一端に設けられた第一の回転体と、発電機と直結した増速機の回転軸に設けられた第二の回転体と、第一の回転体から第二の回転体に動力を伝達する伝達部材とを備える水力発電装置であって、増速機の回転軸に関して軸平行方向における位置調整を行う第一の調整機構と、増速機の回転軸に関して水車の回転軸との距離に相当する軸垂直方向における位置調整を行う第二の調整機構とを有する調整機構をさらに備え、第一の調整機構は、回転角運動を直線距離運動に変換させる機構により、軸平行方向における位置調整を可能とし、第二の調整機構は、回転角運動を直線距離運動に変換させる機構により、軸平行方向における位置調整を可能とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水車の回転軸の一端に設けられた第一の回転体と、
発電機と直結した増速機の回転軸に設けられた第二の回転体と、
前記第一の回転体から前記第二の回転体に動力を伝達する伝達部材と
を備える水力発電装置であって、
前記増速機の回転軸に関して軸平行方向における位置調整を行う第一の調整機構と、前記増速機の回転軸に関して前記水車の回転軸との距離に相当する軸垂直方向における位置調整を行う第二の調整機構とを有する調整機構をさらに備え、
前記第一の調整機構は、回転角運動を直線距離運動に変換させる機構により、前記軸平行方向における位置調整を可能とし、
前記第二の調整機構は、回転角運動を直線距離運動に変換させる機構により、前記軸平行方向における位置調整を可能とする
水力発電装置。
【請求項2】
前記第一の調整機構は、
基部となる平板Aと、
前記平板A上を前記軸平行方向に移動する平板Bと、
前記平板Bに固定された平板Cと、
前記平板Aに固定されている平板Dおよび平板Eと、
前記平板Dおよび前記平板Eに相通され、回転により前記平板Bを前記軸平行方向に移動させて前記軸平行方向における位置調整を可能とする第一の回転-直線運動変換部品と、
前記軸平行方向における位置調整の終了後に、前記平板Bを前記平板Aに固定する固定部材と
を備え、
前記第二の調整機構は、
前記軸垂直方向に移動する平板Fと、
前記平板Fに相通され、回転により前記平板Fを前記軸垂直方向に移動させて前記平板Bとの距離を調整することで、前記軸垂直方向における位置調整を可能とする第二の回転-直線運動変換部品と、
前記軸垂直方向における位置調整の終了後に、前記平板Bと前記平板Fの間に複数のスペーサを配し、前記平板Fと前記スペーサを相通して、前記平板Fを前記平板Bに固定する固定部材と
を備える
請求項1に記載の水力発電装置。
【請求項3】
前記第一の回転-直線運動変換部品、および前記第二の回転-直線運動変換部品には、取手が備わっている
請求項2に記載の水力発電装置。
【請求項4】
前記平板Bが前記軸平行方向以外に移動することを規制するガイド板
をさらに備える請求項2または3に記載の水力発電装置。
【請求項5】
前記平板Fに設けられた穴に相通され、前記平板Fが前記軸垂直方向以外に移動することを規制するピン
をさらに備える請求項2から4のいずれか1項に記載の水力発電装置。
【請求項6】
前記第一の回転体および前記第二の回転体は、プーリーであり、
前記伝達部材は、ベルトである
請求項1から5のいずれか1項に記載の水力発電装置。
【請求項7】
前記第一の回転体および前記第二の回転体は、歯車であり、
前記伝達部材は、チェーンである
請求項1から5のいずれか1項に記載の水力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、張力の調整と、軸平行方向の位置調整を兼ね備えた調整機構を有する水力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の水力発電装置の一例として、内筒と外筒との間に設けられ、水流によって回転する羽根車軸と、羽根車軸に直結された第一のスプロケットと、流路外に設けられた発電機と、発電機と連結された変速機と、変速機と直結された第二のスプロケットと、第一のスプロケットと第二のスプロケットとを連結するチェーン、ベルト等の伝達部材と、からなる軸流水車式発電装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような従来の水力発電装置では、水流によって回転する羽根車軸の動力は、第一のスプロケットから伝達部材を介して第二のスプロケットに伝達され、変速機で変速された後に、発電機に伝達される構造となっている。
【0004】
第一のスプロケットから第二のスプロケットに動力を伝達するための伝達部材は、通常、適正な張力を発生させる必要がある。そして、特許文献1に係る従来の水力発電装置では、変速機の回転軸を中心にして第二のスプロケットを円運動させることにより、高さ位置を変えて張力を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術には以下のような課題がある。
特許文献1に係る従来の水力発電装置では、伝達部材の張力に関してのみ、調整構造を有しており、軸平行方向の位置調整は無い。しかしながら、伝達部材は、軸平行方向の調整も重要となる。
【0007】
軸平行方向の位置がずれると伝達部材が傾く。このため、摩擦伝導式ベルトの場合には、すべりによる動力損失、あるいは、局部摩耗による寿命低下、異音、振動等が発生する。また、歯付きベルトあるいは金属チェーンの場合には、歯飛びによる動力損失、あるいは、局部摩耗による寿命低下、異音、振動等が発生する。
【0008】
軸平行方向の位置に関しては、あらかじめ装置部品の精度によって一定以下の傾きに抑制することも可能である。しかしながら、求められる角度精度としては、場合によっては0.1度以下が要求されることもある。
【0009】
従って、第一のスプロケットから第二のスプロケットに至るまでの部品のバラツキを考慮すると、要求の傾き角度を満たさないことが懸念される。また、仮に要求の傾き角度を満たしたとしても、高精度の部品、組立等が要求され、これらの費用増加を招くことが懸念される。
【0010】
また、特許文献1に係る従来の水力発電装置では、伝達部材の調整用として、水車軸と発電機・変速機軸とは別軸の張力調整装置を用いている。このため、この軸構造の形成のための軸、軸受け等の部品と、張力調整軸から変速機に動力を伝達するための歯車等の複雑な伝達部材が必要となる。この結果、組立工数がかかり、部品費用、組立費用の増大を招く懸念がある。
【0011】
本開示は、このような問題点を解決するためになされたものであって、張力の調整と、軸平行方向の位置調整を兼ね備えた調整機構を有する水力発電装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示に係る水力発電装置は、水車の回転軸の一端に設けられた第一の回転体と、発電機と直結した増速機の回転軸に設けられた第二の回転体と、第一の回転体から第二の回転体に動力を伝達する伝達部材とを備える水力発電装置であって、増速機の回転軸に関して軸平行方向における位置調整を行う第一の調整機構と、増速機の回転軸に関して水車の回転軸との距離に相当する軸垂直方向における位置調整を行う第二の調整機構とを有する調整機構をさらに備え、第一の調整機構は、回転角運動を直線距離運動に変換させる機構により、軸平行方向における位置調整を可能とし、第二の調整機構は、回転角運動を直線距離運動に変換させる機構により、軸平行方向における位置調整を可能とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、張力の調整と、軸平行方向の位置調整を兼ね備えた調整機構を有する水力発電装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の実施の形態1による水力発電装置の斜視図である。
【
図2】本開示の実施の形態1による第一の回転体、第二の回転体、および伝達部材の模式図である。
【
図3】本開示の実施の形態1における発電装置の斜視図である。
【
図4】本開示の実施の形態1における
図3の斜視図を背面側から見た斜視図である。
【
図5】本開示の実施の形態1における軸平行方向の位置調整を説明するための模式図である。
【
図6】本開示の実施の形態1における伝達部材の張力調整を説明するための模式図である。
【
図7】本開示の実施の形態2における発電装置の斜視図である。
【
図8】本開示の実施の形態2における
図7の斜視図を背面側から見た斜視図である。
【
図9】本開示の実施の形態3における発電装置の斜視図である。
【
図10】本開示の実施の形態3における
図9の斜視図を背面側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この開示の各実施の形態について図面を参照して説明するが、各図面において同一、または、相当部材、部位については、同一符号を付して説明する。
【0016】
実施の形態1.
図1は、本開示の実施の形態1による水力発電装置1の斜視図である。本実施の形態1による水力発電装置1のうち、水車本体2は、水流による圧力によって回転する翼部3、翼部3を保持する円板部4、水車回転軸5、これらを保持するフレーム6、および水車回転軸5の一端に直結された第一の回転体7から構成されている。
【0017】
一方、発電装置8は、発電機9、発電機9と直結された増速機10、および増速機回転軸11に直結された第二の回転体12から構成されている。発電装置8は、後述する調整機構13に取り付けられている。
【0018】
次に、発電システムについて説明する。翼部3が水流による圧力を受けると、水車本体2の水車回転軸5と水車回転軸5に直結された第一の回転体7とが回転する。この回転による動力は、伝達部材14により、第二の回転体12に伝達される。伝達された動力は、第二の回転体12と直結された増速機10で増速されて、発電機9に伝達されることで、発電が行われる。
【0019】
伝達部材14は、動力を伝達するために、第一の回転体7および第二の回転体12と密着する必要がある。このため、伝達部材14は、変形可能な部材、例えば、ベルト、金属チェーンなどで構成されている。
【0020】
伝達部材14がベルトの場合には、第一の回転体7と第二の回転体12は、プーリーで構成される。また、伝達部材14が金属チェーンの場合には、第一の回転体7と第二の回転体12は、スプロケット等の歯車で構成される。ベルトとプーリーとは、摩擦伝導式、歯付き式などを選択することができる。
【0021】
図2は、本開示の実施の形態1による第一の回転体7、第二の回転体12、および伝達部材14の模式図である。伝達部材14は、適正な動力伝達が必要となるため、適正な張力を発生させること、および軸方向の傾きを抑制すること、が必要となる。
【0022】
適正な張力を発生させるためには、第一の回転体7の軸と第二の回転体12の軸との垂直方向の距離ΔHを適正な距離とする必要がある。また、軸方向の傾きを抑制するためには、第一の回転体7の軸と第二の回転体12の軸との平行方向の距離差ΔLを許容値以内に収めることが求められる。
【0023】
図3は、本開示の実施の形態1における発電装置8の斜視図である。また、
図4は、本開示の実施の形態1における
図3の斜視図を背面側から見た斜視図である。発電装置8は、
図3および
図4に示すように、調整機構13に取り付けられている。
【0024】
調整機構13のうち、第一の回転体7と第二の回転体12との軸平行方向の位置を調整する第一の調整機構は、平板15~平板19、およびねじ21~ねじ23を備えて構成されている。平板15は、基部となる平板である。平板16は、平板15上を軸平行方向に移動する平板である。平板17は、平板16に固定された平板である。平板18および平板19は、平板15に固定されている平板である。
【0025】
ねじ21およびねじ22は、平板18、平板19に相通され、回転により平板16を軸平行方向に移動させる第一の回転-直線運動変換部品である。さらに、ねじ23は、軸平行方向の位置調整が終了した後に、平板16を平板15に固定する固定部材である。ここで、軸平行方向とは、増速機回転軸11に関して平行な方向であり、
図2においてΔLを調整して位置調整を可能とする方向のことである。
【0026】
また、調整機構13のうち、伝達部材14の張力を調整する第二の調整機構は、平板24、ねじ27、複数のスペーサ28、ねじ29、ガイド板20、およびピン26を備えて構成されている。平板24は、伝達部材14の張力を調整する軸垂直方向に移動可能な部材である。ねじ27は、平板24に相通され、回転により平板24を伝達部材14の張力を調整する軸垂直方向に移動させる第二の回転-直線運動変換部品である。ここで、軸垂直方向とは、増速機回転軸11に関して水車回転軸5との距離に相当する方向であり、
図2においてΔHを調整して位置調整を可能とする方向のことである。
【0027】
複数のスペーサ28は、平板16と平板24との間に配置されており、調整した張力を維持する役目を果たす。ねじ29は、平板24とスペーサ28を相通して、平板24を平板16に固定する固定部材の役目を果たす。
【0028】
ガイド板20は、平板16の軸平行方向以外の移動を規制する役目を果たす。さらに、ピン26は、平板24に設けられた穴25に相通され、伝達部材14の張力を調整するための軸垂直方向以外の方向への平板24の移動を規制する役目を果たす。
【0029】
次に、第一の回転体7と第二の回転体12との軸平行方向の位置を調整する第一の調整機構、および第一の回転体7と第二の回転体12との軸垂直方向の位置を調整することで伝達部材14の張力を調整する第二の調整機構を兼ね備えた調整機構13の組立方法について説明する。
【0030】
まず、平板18と平板19を平板15に固定し、平板15をフレーム6に固定する。その一方で、平板16に平板17を固定し、平板16にピン26を挿入し、発電装置8を搭載した平板24を、ピン26が穴25に挿通できるように位置合わせしながら、平板16上に搭載する。
【0031】
次に、平板16を平板15上に配置し、ガイド板20を平板15に固定し、ねじ21、ねじ22、および、ねじ27を取り付ける。最後に、伝達部材14を第一の回転体7および第二の回転体12に係止する。なお、ここで説明した組立方法は一例であって、組立方法あるいは順序を変更しても問題は無い。
【0032】
次に、調整機構13の調整方法について説明する。まず始めに、第一の回転体7と第二の回転体12との軸平行方向の位置を調整する機構について、
図5を用いて説明する。
図5は、本開示の実施の形態1における軸平行方向の位置調整を説明するための模式図である。
【0033】
ねじ21を向かって右方向に回転させると、ねじ21の端部31によって、平板16が方向1として示した矢印方向、すなわち、水車の幅方向中心に近づく方向、に押される。この結果、平板16が方向1の矢印方向に移動する。
【0034】
一方、ねじ22を向かって右方向に回転させると、ねじ22の端部32によって、平板16が方向2として示した矢印方向、すなわち、水車の幅方向中心から遠ざかる方向、に押される。この結果、平板16が方向2の矢印方向に移動する。方向1および方向2が、軸平行方向に相当する。
【0035】
このような調整により、伝達部材14の傾き(すなわち、
図2で示したΔLに相当する値)を所定の値以下となるように、ねじ21およびねじ22を適宜調整し、調整完了後に、ねじ23で平板15に平板16を固定する。
【0036】
平板16におけるねじ23の挿通穴33は、長穴となっている。このため、調整により平板B16を軸平行方向に移動させた後であっても、ねじ23を用いた締結が可能な構造となっている。
【0037】
なお、平板16の移動を円滑に行うために、平板15、平板16、平板17、ガイド板20のそれぞれの接触面、および、ねじ21とねじ22のオネジ部、平板18と平板19のメネジ部、ねじ21の端部31とねじ22の端部32には、潤滑材を塗布するなどの処置を施してもよい。
【0038】
次に、伝達部材14の張力を調整する機構について、
図6を用いて説明する。
図6は、本開示の実施の形態1における伝達部材14の張力調整を説明するための模式図である。
【0039】
ねじ27を向かって右方向に回転させていくと、ねじ27の端部34が平板16に当接する。当接後も、ねじ27を向かって右方向にさらに回転させていくことで、平板24が方向3として示した矢印方向、すなわち、伝達部材14の張力を増加させる方向、に移動する。
【0040】
一方、この状態から、ねじ27を向かって左方向に回転させていくと、平板24が方向4として示した矢印方向、すなわち、伝達部材14の張力を減少させる方向、に移動する。方向3および方向4が、軸垂直方向に相当する。
【0041】
このような調整により、伝達部材14の張力が適正な値となるように(すなわち、
図2で示したΔHが適正な値となるように)、ねじ27を適宜調整する。さらに、伝達部材14の張力を維持するために、平板16と平板24との間にスペーサ28を配し、ねじ29で固定する。
【0042】
なお、スペーサ28としては、厚みが異なる種類のものを準備しておき、必要に応じて極薄のシムなどと組み合わせて使っても問題無い。また、平板24の移動を円滑に行うために、平板24とピン26の接触面、およびねじ27のオネジ部、平板24のメネジ部、ねじ27の端部34に潤滑材を塗布するなどの処置を施してもよい。
【0043】
上述したような
図1から
図6の構造では、通常行う伝達部材14の張力調整に加えて、軸平行方向の調整も可能としている。このため、伝達部材14の張力の適正化に加えて、軸方向の傾きも許容値以内に容易に調整できる。
【0044】
従って、摩擦伝導式ベルトを使用する場合には、すべりのよる動力損失の抑制、局部摩耗による寿命低下、異音、振動等の抑制を図ることができる。また、歯付きベルトあるいは金属チェーンを使用する場合には、歯飛びが無くなることで動力損失が無くなり、局部摩耗による寿命低下、異音、振動等の抑制を図ることができる。
【0045】
また、本実施の形態1に係る調整機構13は、発電装置8の直下に、軸平行方向と張力の両方を調整できる一体化装置として設けられている。この調整機構13は、主に、平板、ねじ、ピン、スペーサ等、一般的に単純形状を有する部品で構成されており、構造も簡素化されている。このため、複雑な形状部品での構成と比較して、部品費用および組立工数を削減することができる。
【0046】
また、軸平行方向の調整と張力の調整のための平板16と平板24の移動は、ねじ21、ねじ22、ねじ27の回転角運動を直線距離運動に変換することで行っている。このため、ねじの呼び、ピッチの選択、および回転角度調整で、直線移動距離をコンマ数mm単位まで小さくすることができる。
【0047】
このため、平板の微小移動による調整が可能となり、極めて所望の精度での調整に近づけることができる。このことから、経時変化によるベルトの傾き増加あるいは張力低下が発生した場合にも、許容値を超えるまでの時間を長くすることができる。この結果、メンテナンスまでの時間を延ばすことができ、長寿命化やメンテナンス工数削減につなげることができる。
【0048】
実施の形態2.
図7は、本開示の実施の形態2における発電装置35の斜視図である。また、
図8は、本開示の実施の形態2における
図7の斜視図を背面側から見た斜視図である。なお、先の実施の形態1と同じ構成要素については、同じ符号を付し説明を省略する。
【0049】
本実施の形態2では、軸平行方向の位置調整用、および軸垂直方向の位置調整による張力の調整用として、直線状の取手36がついたねじ37、ねじ38、ねじ39を用いている。ねじ37は平板40に組み込まれており、ねじ38は平板41に組み込まれており、ねじ39は平板42に組み込まれている。
【0050】
直線状の取手36がついたねじ37、ねじ38、ねじ39のそれぞれは、先の実施の形態1におけるねじ21、ねじ22、ねじ27と同等の役目を果たす。すなわち、ねじ37、38は、第一の回転-直線運動変換部品に相当し、ねじ39は、第二の回転-直線運動変換部品に相当する。
【0051】
本実施の形態2では、軸平行方向の位置調整、および軸垂直方向の位置調整による張力の調整を、直線状の取手36がついた、それぞれのねじ37、ねじ38、ねじ39で行うことができる。このため、先の実施の形態1と同様の効果に加えて、調整時に直線状の取手36に加える力を低減でき、より簡単に軸平行方向の調整、および張力の調整を実現することができる。
【0052】
なお、調整終了後には、ねじ37、ねじ38、ねじ39を装置から外して、同構造の別の発電装置35の調整に用いることもできる。
【0053】
実施の形態3.
図9は、本開示の実施の形態3における発電装置43の斜視図である。また、
図10は、本開示の実施の形態3における
図9の斜視図を背面側から見た斜視図である。なお、先の実施の形態1と同じ構成要素については、同じ符号を付し説明を省略する。
【0054】
本実施の形態3では、軸平行方向の位置調整用、および軸垂直方向の位置調整による張力の調整用として、円形状の取手44がついたねじ45、ねじ46、ねじ47を用いている。ねじ45は平板48に組み込まれており、ねじ46は平板49に組み込まれており、ねじ47は平板50に組み込まれている。
【0055】
円形状の取手44がついたねじ45、ねじ46、ねじ47のそれぞれは、先の実施の形態1におけるねじ21、ねじ22、ねじ27と同等の役目を果たす。すなわち、ねじ45、46は、第一の回転-直線運動変換部品に相当し、ねじ47は、第二の回転-直線運動変換部品に相当する。
【0056】
本実施の形態3では、先の実施の形態2における直線状の取手36を、円形状の取手44に変更した点が異なっている。このような構成によっても、先の実施の形態2と同様の効果を得ることができる。
【0057】
上述した実施の形態1~3における水車は、いわゆる開放型水車であるが、本開示による調整機構は、この方式に限るものではなく、他の水車方式、例えば、プロペラ、螺旋等の水車方式にも適用できることは言うまでもない。
【0058】
また、上述した実施の形態1~3における発電装置は、発電機と増速機を備え、第二の回転体は、増速機に直結している場合について説明した。しかしながら、本開示による水力発電装置は、このような構成の限るものではなく、増速が不要、あるいは、増速が必要であったとしても微小であれば、増速機の代わりに第一の回転体と第二の回転体の直径を変えることで増速させ、第二の回転体を発電機に直結させる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 水力発電装置、2 水車本体、5 水車回転軸、7 第一の回転体、8 発電装置、9 発電機、10 増速機、11 増速機回転軸、12 第二の回転体、13 調整機構、14 伝達部材、15 平板(平板A)、16 平板(平板B)、17 平板(平板C)、18 平板(平板D)、19 平板(平板E)、20 ガイド板、21 ねじ(第一の回転-直線運動変換部品)、22 ねじ(第一の回転-直線運動変換部品)、23 ねじ(固定部材)、24 平板(平板F)、26 ピン、27 ねじ(第二の回転-直線運動変換部品)、28 スペーサ、29 ねじ(固定部材)、35 発電装置、36 直線状の取手、37 ねじ(第一の回転-直線運動変換部品)、38 ねじ(第一の回転-直線運動変換部品)、39 ねじ(第二の回転-直線運動変換部品)、40 平板(平板D)、41 平板(平板E)、42 平板(平板B)、43 発電装置、44 円形の取手、45 ねじ(第一の回転-直線運動変換部品)、46 ねじ(第一の回転-直線運動変換部品)、47 ねじ(第二の回転-直線運動変換部品)、48 平板(平板D)、49 平板(平板E)、50 平板(平板B)。
【手続補正書】
【提出日】2021-10-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
本開示に係る水力発電装置は、水車の回転軸の一端に設けられた第一の回転体と、発電機と直結した増速機の回転軸に設けられた第二の回転体と、第一の回転体から第二の回転体に動力を伝達する伝達部材とを備える水力発電装置であって、増速機の回転軸に関して軸平行方向における位置調整を行う第一の調整機構と、増速機の回転軸に関して水車の回転軸との距離に相当する軸垂直方向における位置調整を行う第二の調整機構とを有する調整機構をさらに備え、第一の調整機構は、回転角運動を直線距離運動に変換させる機構により、軸平行方向における位置調整を可能とし、第二の調整機構は、回転角運動を直線距離運動に変換させる機構により、軸平行方向における位置調整を可能とし、第一の調整機構は、基部となる平板Aと、平板A上を軸平行方向に移動する平板Bと、平板Bに固定された平板Cと、平板Aに固定されている平板Dおよび平板Eと、平板Dおよび平板Eに相通され、回転により平板Bを軸平行方向に移動させて軸平行方向における位置調整を可能とする第一の回転-直線運動変換部品と、軸平行方向における位置調整の終了後に、平板Bを平板Aに固定する固定部材とを備え、第二の調整機構は、軸垂直方向に移動する平板Fと、平板Fに相通され、回転により平板Fを軸垂直方向に移動させて平板Bとの距離を調整することで、軸垂直方向における位置調整を可能とする第二の回転-直線運動変換部品と、軸垂直方向における位置調整の終了後に、平板Bと平板Fの間に複数のスペーサを配し、平板Fとスペーサを相通して、平板Fを平板Bに固定する固定部材とを備え、第一の調整機構により平板Bを軸平行方向に移動させることで軸平行方向における平板Bの位置調整を完了させた後に平板Bを平板Aに固定可能であり、第二の調整機構により平板Fを軸垂直方向に移動させて平板Bとの距離を調整することで軸垂直方向における位置調整を完了させた後に平板Fを平板Bに固定可能であり、平板Fに関する軸平行方向における位置調整と固定、および平板Fに関する軸垂直方向における位置調整と固定を可能とするものである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水車の回転軸の一端に設けられた第一の回転体と、
発電機と直結した増速機の回転軸に設けられた第二の回転体と、
前記第一の回転体から前記第二の回転体に動力を伝達する伝達部材と
を備える水力発電装置であって、
前記増速機の回転軸に関して軸平行方向における位置調整を行う第一の調整機構と、前記増速機の回転軸に関して前記水車の回転軸との距離に相当する軸垂直方向における位置調整を行う第二の調整機構とを有する調整機構をさらに備え、
前記第一の調整機構は、回転角運動を直線距離運動に変換させる機構により、前記軸平行方向における位置調整を可能とし、
前記第二の調整機構は、回転角運動を直線距離運動に変換させる機構により、前記軸垂直方向における位置調整を可能とし、
前記第一の調整機構は、
基部となる平板Aと、
前記平板A上を前記軸平行方向に移動する平板Bと、
前記平板Bに固定された平板Cと、
前記平板Aに固定されている平板Dおよび平板Eと、
前記平板Dおよび前記平板Eに相通され、回転により前記平板Bを前記軸平行方向に移動させて前記軸平行方向における位置調整を可能とする第一の回転-直線運動変換部品と、
前記軸平行方向における位置調整の終了後に、前記平板Bを前記平板Aに固定する固定部材と
を備え、
前記第二の調整機構は、
前記軸垂直方向に移動する平板Fと、
前記平板Fに相通され、回転により前記平板Fを前記軸垂直方向に移動させて前記平板Bとの距離を調整することで、前記軸垂直方向における位置調整を可能とする第二の回転-直線運動変換部品と、
前記軸垂直方向における位置調整の終了後に、前記平板Bと前記平板Fの間に複数のスペーサを配し、前記平板Fと前記スペーサを相通して、前記平板Fを前記平板Bに固定する固定部材と
を備え、
前記第一の調整機構により前記平板Bを前記軸平行方向に移動させることで前記軸平行方向における前記平板Bの位置調整を完了させた後に前記平板Bを前記平板Aに固定可能であり、
前記第二の調整機構により平板Fを前記軸垂直方向に移動させて前記平板Bとの距離を調整することで前記軸垂直方向における位置調整を完了させた後に前記平板Fを前記平板Bに固定可能であり、
前記平板Fに関する前記軸平行方向における位置調整と固定、および前記平板Fに関する前記軸垂直方向における位置調整と固定を可能とする
水力発電装置。
【請求項2】
前記第一の回転-直線運動変換部品、および前記第二の回転-直線運動変換部品には、取手が備わっている
請求項1に記載の水力発電装置。
【請求項3】
前記平板Bが前記軸平行方向以外に移動することを規制するガイド板
をさらに備える請求項1または2に記載の水力発電装置。
【請求項4】
前記平板Fに設けられた穴に相通され、前記平板Fが前記軸垂直方向以外に移動することを規制するピン
をさらに備える請求項1から3のいずれか1項に記載の水力発電装置。
【請求項5】
前記第一の回転体および前記第二の回転体は、プーリーであり、
前記伝達部材は、ベルトである
請求項1から4のいずれか1項に記載の水力発電装置。
【請求項6】
前記第一の回転体および前記第二の回転体は、歯車であり、
前記伝達部材は、チェーンである
請求項1から4のいずれか1項に記載の水力発電装置。