(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096781
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】周辺環境情報表示装置
(51)【国際特許分類】
G08B 21/02 20060101AFI20220623BHJP
G08B 5/00 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
G08B21/02
G08B5/00 L
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020209962
(22)【出願日】2020-12-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000195029
【氏名又は名称】星和電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100164013
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 隆一
(72)【発明者】
【氏名】卯滝 博
(72)【発明者】
【氏名】管 邦和
(72)【発明者】
【氏名】谷口 俊也
【テーマコード(参考)】
5C083
5C086
【Fターム(参考)】
5C083AA02
5C083CC08
5C083DD01
5C083HH23
5C083HH27
5C083HH28
5C083JJ30
5C083JJ53
5C086AA06
5C086AA09
5C086CB01
5C086CB07
5C086EA40
5C086EA45
5C086FA06
5C086FA15
(57)【要約】
【課題】熱中症発症の危険性やインフルエンザに罹りやすい環境情報を、色々な色で表示し、色弱者に対しても、その色に応じた情報を確実に理解できるようにする。
【解決手段】気温センサと湿度センサと、あらかじめ作成した暑さ指数テーブル及び暑さ指数に対応して複数の色を設定した第1の色表示テーブルを格納する記憶部と、気温センサと湿度センサとの測定値に対応する暑さ指数を暑さ指数テーブルから求め、その暑さ指数に対応した色を第1の色表示テーブルから選択する制御部と、第1の色表示テーブルから選択した色を表示する表示部とを含み、制御部は気温センサ、湿度センサ、記憶部及び表示部を制御する機能も有し、表示部は赤色、青色および緑色に発光する光源を配置した光源部と、その光源部から出射したそれぞれの光を混色し拡散させる面状照明部とを有し、光源部のそれぞれの光源の光強度を変化させることにより任意の色を表示可能とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周辺の気温を計測する気温センサと、
周辺の湿度を計測する湿度センサと、
気温及び相対湿度に対応した暑さ指数をあらかじめ求めて作成した暑さ指数テーブル及び前記暑さ指数に対応して複数の色を設定した第1の色表示テーブルを格納する記憶部と、
前記気温センサと前記湿度センサとの測定値から得られた気温測定値と相対湿度とを用いて、それらの測定値に対応する暑さ指数を前記暑さ指数テーブルから求め、その暑さ指数に対応した色を第1の色表示テーブルから選択する制御部と、
前記第1の色表示テーブルから選択した色を表示する表示部とを含み、
前記制御部は、前記気温センサ、前記湿度センサ、前記記憶部及び前記表示部を制御する機能も有し、
前記表示部は、赤色、青色および緑色に発光する光源を配置した光源部と、前記光源部から出射したそれぞれの光を混色し、導光拡散させる面状照明部とを有し、前記光源部のそれぞれの光源の光強度を変化させることにより任意の色を表示可能としたことを特徴とする周辺環境情報表示装置。
【請求項2】
あらかじめ設定した気温より低い環境条件における気温及び相対湿度に対応した低温乾燥指数をあらかじめ求めて作成した低温乾燥指数テーブルと、前記低温乾燥指数に対応して複数の色を設定して作成した第2の色表示テーブルとを、前記記憶部にさらに格納し、
前記制御部は、前記気温センサから得られた気温測定値があらかじめ設定した気温より低い環境条件であると判断した場合には、前記気温測定値及び相対湿度からそれらの測定値に対応する低温乾燥指数を前記低温乾燥テーブルから求め、さらにその低温乾燥指数に対応する色を前記第2の色表示テーブルから選択し、前記表示部に表示させることを特徴とする請求項1に記載の周辺環境情報表示装置。
【請求項3】
前記第1の色表示テーブルは、同じ暑さ指数に対して色覚健常者と色覚障害者とにより異ならせたことを特徴とする請求項1に記載の周辺環境情報表示装置。
【請求項4】
前記第2の色表示テーブルは、同じ低温乾燥指数に対して色覚健常者と色覚障害者とにより異ならせたことを特徴とする請求項2に記載の周辺環境情報表示装置。
【請求項5】
前記色覚健常者に対する表示色と前記色覚障害者に対する表示色とを、設定した時間ごとに切り替えながら、又は、連続的に変化させながら表示することを特徴とする請求項3または4に記載の周辺環境情報表示装置。
【請求項6】
前記面状照明部は2分割構成からなり、前記色覚健常者に対する表示色と前記色覚障害者に対する表示色とを、前記面状照明部に対してそれぞれ表示することを特徴とする請求項3または4に記載の周辺環境情報表示装置。
【請求項7】
外部のコンピュータと接続することにより、前記制御部は前記コンピュータの指令に基づき前記暑さ指数テーブル、前記第1の色表示テーブル、前記低温乾燥テーブル及び前記第2の色表示テーブルを任意に書き換え可能としたことを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項に記載の周辺環境情報表示装置。
【請求項8】
前記光源は、赤色、青色及び緑色を発光する発光ダイオード素子またはエレクトロルミネセント素子により構成されていることを特徴とする請求項1から7までのいずれか1項に記載の周辺環境情報表示装置。
【請求項9】
音声報知部をさらに有し、
前記制御部は、前記表示部により色表示すると同時に、その色表示に対応した音声情報を前記音声報知部により報知することを特徴とする請求項1から8までのいずれか1項に記載の周辺環境情報表示装置。
【請求項10】
全体形状が三角柱状であり、前記三角柱状の長手方向の2面または3面に前記面状照明部が設けられていることを特徴とする請求項1から9までのいずれか1項に記載の周辺環境情報表示装置。
【請求項11】
全体形状が四角柱状であり、前記四角柱状の長手方向の3面または4面に前記面状照明部が設けられていることを特徴とする請求項1から9までのいずれか1項に記載の周辺環境情報表示装置。
【請求項12】
全体形状は円柱状であり、前記円柱状の長手方向の全面が前記面状照明部からなることを特徴とする請求項1から9までのいずれか1項に記載の周辺環境情報表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設置場所周辺部の気温と相対湿度をもとに周辺環境情報を表示し、設置場所周辺部の人に対して予防行動を促す周辺環境情報表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化が進んでおり、最高気温が35℃以上となる猛暑日や30℃以上となる真夏日、さらには夕方から翌日の朝までの最低気温が25℃以上の熱帯夜となる日数が毎年増加している。また、都市部ではヒートアイランド現象により、夜間でも気温が下がりにくい場所が増えており、梅雨時から夏場にかけての湿度の高い時期には昼間だけでなく夜間でも熱中症で搬送される人が大きく増加している。
【0003】
熱中症は、高温多湿な環境下で、体内の水分や塩分のバランスが崩れたり、体温調整機能がうまく働かなくなることにより、体内に熱がたまり、筋肉痛や大量の発汗、さらには吐き気や倦怠感などの症状が現れる状態となることをいう。重症になると、意識障害などが起こるだけでなく死亡する場合もある。体温が上昇した場合、人の体は適度な体温を維持するために、汗をかいたり皮膚温度を上昇させたりして熱を体外へと放出するが、色々な要因によりこの機能が損なわれることで熱中症が生じる。
【0004】
熱中症になる要因には、環境要因、身体要因および行動要因の3つがある。気温が高い、湿度が高いなどの環境条件と、体調が良くない、暑さに体がまだ慣れていないなどの個人の体調による影響とが組み合わさることにより、熱中症の発生が高まる。屋外で活動しているときだけでなく、就寝中など室内でも熱中症を発症し、救急搬送される場合も多く生じている。消防庁の2018年データでみると、熱中症で搬送された人の半数以上が住居などの屋内で生じている。熱中症は、高齢者や乳幼児、肥満の人、糖尿病などの持病を持っている人、寝不足などの体調不良などの場合に起こりやすくなる。
【0005】
一方、温暖化の影響により、冬場においては逆に従来よりも低温で乾燥する日も生じている。低温で乾燥した場合には風邪やインフルエンザが流行しやすくなるだけでなく、肌荒れへの注意や火事に対する予防が必要である。
【0006】
少子高齢化社会の進展と温暖化による高温・高湿度となる日の増加とが加わって、熱中症になる患者は今後ますます増えることが予測され、熱中症を効果的に予防する装置等の開発が急務となっている。また、高齢者は環境に対して鈍感になることから、夏場の高温・高湿度状態や冬場の低温・乾燥状態におかれた場合でも、それに気づかない場合が多い。このため、積極的に気付かせるための対処が必要とされている。
【0007】
これに対して、予め定められた気温ごとに、熱中症の警告をすることができ、温度感覚を正確迅速に把握できない人にとっても、熱中症の予防対応がし易い熱中症予防温度計が開示されている。この温度計は、気温が予め定められた所定温度以上の複数の設定温度ごとに、人間の五感へ与える情報の強さを強くして段階的に警告を行うようにした構成が特徴である。この警告情報を感知する利用者は、情報の強さ変化により、温度に応じて熱中症の予防策を講じることができる(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
また、より正確に、より安価に熱中症の発生する危険性を予測し、熱中症を回避できるようにする気象観測装置が開示されている。この装置は、気象観測センサの気温と湿度のデータのみからWBGT熱中症指標等の指数情報を算出する手段と、それらの指数情報を即時に表示する手段により、指数情報の現場での把握を可能とすることを特徴としている。従来の装置では、熱中症対策に欠かせないWBGT熱中症指標については、気温、湿度のみならず、黒球温度を測定する必要があったが、この装置は気温と湿度のみからWBGT熱中症指標を得ることができるようにしている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
さらに、一定の区域で活動する多数の人に対し、熱中症が起こる危険の度合いを、リアルタイムで速やかに警告する装置も開示されている。この装置は、温度センサと湿度センサを用いて、温熱指標としてのWBGT指標を連動させ、予め設定した4段階の危険判定レベルを、文字による表示や、色の異なるランプの点灯によって示すように構成されている。具体的には、黒球温度を測定する温度センサと、乾球温度と湿球温度から相対湿度を検知する湿度センサと、温度センサと湿度センサの測定値から温熱指標を求める演算手段と、温熱指標を表示する表示手段とを有する構成からなる(例えば、特許文献3参照)。
【0010】
さらに、公園で遊ぶ子供たちの熱中症の危険度を測定して表示する公園用熱中症対策設備も開示されている。この設備は、子供の背丈の高さに設置された暑さ指数測定器の周囲を金網で囲んだ測定ユニットと、暑さ指数測定器により測定された公園の暑さ指数を電光表示する表示ボードを備えた表示ユニットとからなっている。そして、暑さ指数測定器は、乾球温度計と湿球温度計と黒球温度計と演算装置とを備えたものであり、黒球温度計を地表から90~110cmの高さに設置するようになっている。表示ボードは、幼児が理解可能な画像により危険度を表示するものとしている(例えば、特許文献4参照)。
【0011】
またさらに、絶対湿度の測定値に応じてインフルエンザの感染予防のための対応と、暑さ指数の測定値に応じて熱中症の発症予防のための対応の両方が取れるインフルエンザ予防用及び熱中症予防用の情報表示装置が開示されている。この装置は、液晶ディスプレイの表示モードをインフルエンザの感染予防のための情報を表示するインフルエンザモードと、熱中症の発症予防のための情報を表示する熱中症モードとに切り替えるモード切替手段を備えている。インフルエンザモードにあるときは、液晶ディスプレイに、絶対湿度の測定値をインフルエンザ予防の目安値まで高めるために必要な相対湿度の目標上昇幅と、その目標上昇幅だけ加湿するように促すメッセージとが表示される。一方、熱中症モードにあるときは、液晶ディスプレイに、暑さ指数の測定値を熱中症予防の目安値まで下げるために必要な室温の目標低下幅と、その目標低下幅だけ室温を下げるように促すメッセージとが表示される構成からなる(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003-344175号公報
【特許文献2】特開2009-271043号公報
【特許文献3】実用新案登録第3188285号
【特許文献4】特開2020-38069号公報
【特許文献5】実用新案登録第3202664号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1に記載の発明は、計測した気温をもとに熱中症の警告をする装置であり、警告方法としては光、音および振動を用いることが記載されている。そして、光による方法は、青色、オレンジ色、赤色、赤色点滅および光無しの5種類を用いることが記載されているが、光源や色変化をどのようにして行うかについて全く記載されていない。
【0014】
WBGT熱中症指標を求めるためには気温と湿度に加えて黒球温度も測定することが必要であるが、特許文献2に記載の発明は気温と湿度のみからWBGT熱中症指標を推定しても精度よく推定できることを開示している。しかし、指数情報の表示は文字表示のみであり、高齢者や児童あるいは色覚異常者などにとっては認識しにくい場合が生じるという課題を有する。
【0015】
特許文献3に記載の発明では、熱中症の危険度を色によって表示するために文字パネルと回転灯が設けられている。回転灯は注意を喚起するための色を表示するために4個が設けられた構成が開示されているのみであり、多様な色表示はできない。
【0016】
特許文献4に記載の発明は、熱中症指数を基にして危険度を犬の顔と文字表示とにより警告する構成が示されている。しかし、この表示方法では多様な表示色はできないし、多様な色の表示をすることについて開示も示唆もない。
【0017】
特許文献5に記載の発明は、熱中症モードにあるときに、暑さ指数の測定値が表示されるとともに、暑さ指数の測定値に対応する熱中症発症度の危険度を表す色域に付されてその危険度を顔の表情で表す顔アイコンとで危険度の度合いがバロメータ表示される表示領域を有している。色域としては、赤色、橙色、黄色、青色の4段階とすることも開示している。一方、インフルエンザの感染予防のための情報を表示するインフルエンザモードにおいては、絶対湿度の測定値をインフルエンザ予防の目安値まで高めるために必要な相対湿度の目標上昇幅と、その目標上昇幅だけ加湿するように促すメッセージとがディスプレイに表示するように構成されている。しかし、このディスプレイで多様な色表示をすることに関しては開示も示唆もない。
【0018】
色を表示する場合、色覚健常者(以下、「健常者」とよぶ。)は容易にその色を認識できても、色覚障害者(以下、「色弱者」とよぶ。)は健常者の認識する色とは異なった色と認識し、色に込められた情報を理解できない場合がある。色弱者が認識しやすい色を設定して表示するようにすれば、色弱者であってもその色表示が何を伝えようとしているかを容易に理解でき、素早い対処をすることができる。
【0019】
色覚障害とは、赤、緑、青を感じる視物質のどれかの機能が損なわれた状態をいう。色覚障害の大多数は、赤感受性の視物質の遺伝子に変異を生じた第1色覚障害(色覚障害全体の約25%)、及び、緑感受性の視物質の遺伝子に変異を生じた第2色覚障害(色覚障害全体の約75%)である。これらを合わせて赤緑色覚障害といっている。これらの色弱者に対しても、色表示のみで熱中症などの周辺環境の情報を容易に認識し理解できるようにすることが好ましい。
【0020】
本発明は、高温・高湿条件での熱中症発症の危険性や、低温・乾燥条件で風邪やインフルエンザに罹りやすい環境情報を、色々な色で表示することにより、色覚特性が健常者と異なる色弱者に対しても、その色に応じた情報を確実に理解できる周辺環境情報表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記従来の課題を解決するために、本発明の周辺環境情報表示装置は、周辺の気温を計測する気温センサと、周辺の湿度を計測する湿度センサと、気温及び相対湿度に対応した暑さ指数をあらかじめ求めて作成した暑さ指数テーブル及びその暑さ指数に対応して複数の色を設定した第1の色表示テーブルを格納する記憶部と、気温センサと湿度センサとの測定値から得られた気温測定値と相対湿度とを用いて、それらの測定値に対応する暑さ指数を暑さ指数テーブルから求め、その暑さ指数に対応した色を第1の色表示テーブルから選択する制御部と、第1の色表示テーブルから選択した色を表示する表示部とを含む。そして、制御部は気温センサ、湿度センサ、記憶部及び表示部を制御する機能も有し、表示部は赤色、青色および緑色に発光する光源を配置した光源部と、その光源部から出射したそれぞれの光を混色し、導光拡散させる面状照明部とを有し、光源部のそれぞれの光源の光強度を変化させることにより任意の色を表示可能とした構成からなる。
【0022】
このような構成とすることにより、暑さ指数に応じて任意の色を表示できるので、暑さ状態だけでなく熱中症を発症する可能性のある環境条件であるかを確実に認識させることができ、熱中症予防のための行動を素早くとることができる。
【0023】
また上記構成において、あらかじめ設定した気温より低い環境条件における気温及び相対湿度に対応した低温乾燥指数をあらかじめ求めて作成した低温乾燥指数テーブルと、前記低温乾燥指数に対応して複数の色を設定して作成した第2の色表示テーブルとを、前記記憶部にさらに格納し、制御部は気温センサから得られた気温測定値があらかじめ設定した気温より低い環境条件であると判断した場合には、気温測定値及び相対湿度からそれらの測定値に対応する低温乾燥指数を低温乾燥テーブルから求め、さらにその低温乾燥指数に対応する色を第2の色表示テーブルから選択し、表示部に表示させるようにしてもよい。
【0024】
このような構成とすることにより、夏場は熱中症を主体とした周辺環境情報を表示し、冬場においては低温乾燥状態についての周辺環境情報を表示することで風邪やインフルエンザ対策、肌荒れ防止対策、さらには火事防止対策を効果的に行うことができる。
【0025】
なお、低温乾燥指数と低温乾燥指数テーブルは、宮城県地域医療情報センター (http://www.mmic.or.jp/flu-list.php)が開示している絶対湿度データを引用して作成した。宮城県地域医療情報センターは、日本では絶対湿度(1立方メーターの空気中の水蒸気の量)がインフルエンザの流行に大きくかかわっていることを見出し、絶対湿度の数値に応じて、ほぼ安全、注意、及び警戒にランク付けしている。そこで、本発明では、絶対湿度を低温乾燥指数として表示している。
【0026】
上記構成において、第1の色表示テーブルは、同じ暑さ指数に対して健常者と色弱者とにより異ならせてもよい。また、第2の色表示テーブルは、同じ低温乾燥指数に対して健常者と色弱者とにより異ならせてもよい。
【0027】
色弱者の中で多い赤緑色覚障害は赤色を認識しにくいという特徴がある。このため、健常者は熱中症の危険度が高い場合に表示される赤色を容易に認識できても、赤緑色覚障害者には黒色に近い色に見えるため、その黒色を認識しにくい。このため赤緑色覚障害者に対して視認しやすい色で、危険度が高いと認識する色を設定して表示すれば注意を惹きつけやすくできる。その他の色弱者に対しても同様である。
【0028】
上記構成において、健常者に対する表示色と色弱者に対する表示色とを、設定した時間ごとに切り替えながら、又は、連続的に変化させながら表示するようにしてもよい。このようにすれば健常者と色弱者の双方に対して確実に注意を惹きつけることができる。なお、後述するように面状照明部を複数配置する場合には、光源もそれに合わせて複数配置し、一方の面状照明部で健常者用の色を表示しながら、他方の面状照明部では色弱者用の色の表示をするようにしてもよい。あるいは、一方の面状照明部と他方の面状照明部とで、交互に健常者用の色の表示と色弱者用の色の表示とを切り替えながら、または連続的に変化させながら表示するようにしてもよい。
【0029】
上記構成において、面状照明部は2分割構成からなり、健常者に対する表示色と色弱者に対する表示色とを、面状照明部に対してそれぞれ表示するようにしてもよい。このような構成とすることにより、健常者も色弱者も同じ面状照明部を見ながら、周辺環境状態を素早く認識することができる。なお、2分割は、1つの面状照明部を2つに分けた構成であってもよいし、全く別々の面状照明部を1つにまとめた構成であってもよい。
【0030】
上記構成において、外部のコンピュータと接続することにより、制御部はそのコンピュータの指令に基づき暑さ指数テーブル、第1の色表示テーブル、低温乾燥テーブル及び第2の色表示テーブルを任意に書き換えるようにしてもよい。これにより、色々な色覚障害の人に対して、きめ細かな色の表示を行うための第1の色表示テーブルや第2の色表示テーブルの作成が容易にできる。また、暑さ指数や低温乾燥指数から周辺環境がほぼ安全レベルの状態である場合には、その色表示を、例えば色々な色に変化する表示をすれば、利用者は安全レベルであるという認識に加えて、リラックス効果も得ることができる。さらに、注意状態あるいは危険状態である場合、単に注意を促す色の表示や危険を示す色の表示をするだけでなく、異なる色を連続的にあるいは間欠的に変化させて表示すれば、より確実に注意状態や危険状態を知らせることができる。
【0031】
上記構成において、光源は赤色、青色及び緑色を発光する発光ダイオード素子またはエレクトロルミネセント素子により構成されていてもよい。これらの素子は小型長寿命でかつ省電力であるので長期間の使用に耐え、装置の信頼性を高くすることができる。なお、発光ダイオード素子(LED)の場合、例えば赤の色の波長が635nm、緑の色の波長が525nm、青の色の波長が467nmの素子を用いてもよい。これらの組合せにより任意の色を表示することができる。
【0032】
上記構成において、音声報知部をさらに有し、制御部は表示部で色表示すると同時に、その色表示に対応した音声情報を音声報知部により報知するようにしてもよい。これにより、表示部での色の表示だけでなく音声による報知もされるので、熱中症になる可能性が高い環境状態や、風邪やインフルエンザに罹りやすい環境状態を素早く認識できる。これにより、空調機器を作動させたり、窓を開閉する動作を行う対応を促すことができる。なお、音声情報の報知は暑さ指数や低温乾燥指数が、警戒状態や危険状態になったときのみに行うようにしてもよい。音声情報としては、例えばブザー音、間欠的なブザー音、メロディー、あるいは、人の話し声などを用いることができる。
【0033】
上記構成において、全体形状が三角柱状であり、三角柱状の長手方向の2面または3面に面状照明部が設けられているようにしてもよい。面状照明部が2面に設けられた場合には、面状照明部が設けられていない面を壁などに向けて壁掛けスタイルにすることもできる。また、3面に面状照明部が設けられた場合には、机上などに置くことで広範囲での視認が可能となる。
【0034】
上記構成において、全体形状が四角柱状であり、四角柱状の長手方向の3面または4面に面状照明部が設けられているようにしてもよい。3面に設けられた場合には、他の1面を壁に向けて壁掛けスタイルとしながら広い範囲で視認できるようにすることができる。また、4面に設けた場合には、机上などに置くことでより広範囲での視認が可能となる。
【0035】
上記構成において、全体形状は円柱状であり、円柱状の長手方向の全面が面状照明部からなるようにしてもよい。このようにすれば机上などに置いた場合に、より広範囲での視認が可能となる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の周辺環境情報表示装置は、赤色、緑色及び青色の3色の光源を用いて色表示を行う構成なので、健常者のみでなく色弱者に対しても一番視認しやすい色を容易に合成して表示することができ、色弱者に対しても熱中症予防や低温乾燥による警戒度合いの表示を的確に行えるという大きな効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】第1の実施の形態に係る周辺環境情報表示装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】同実施の形態に係る周辺環境情報表示装置の外観斜視図である。
【
図3】同実施の形態に係る周辺環境情報表示装置の外観写真であり、(a)は組み立てた状態を斜め方向から撮影した写真であり、(b)は水色を表示した状態の写真である。
【
図4】同実施の形態の変形例1に係る周辺環境情報表示装置の概略斜視図である。
【
図5】同実施の形態の変形例2に係る周辺環境情報表示装置の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
(第1の実施の形態)
【0039】
本発明の第1の実施の形態に係る周辺環境情報表示装置について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本第1の実施の形態に係る周辺環境情報表示装置10の構成を示すブロック図である。
図2は、周辺環境情報表示装置10の外観斜視図である。また、
図3は、試作した周辺環境情報表示装置の外観写真であり、(a)は組み立てた状態を斜め方向から撮影した写真であり、(b)は水色を表示した状態の写真である。以下、これらの図を用いて本第1の実施の形態に係る周辺環境情報表示装置10の構成について説明する。
【0040】
本実施の形態に係る周辺環境情報表示装置10は、周辺の気温を計測する気温センサ11と、周辺の湿度を計測する湿度センサ12と、気温及び相対湿度に対応した暑さ指数をあらかじめ求めて作成した暑さ指数テーブル及びその暑さ指数に対応して複数の色を設定した第1の色表示テーブルを格納する記憶部13と、気温センサ11と湿度センサ12との測定値から得られた気温測定値と相対湿度とを用いて、それらの測定値に対応する暑さ指数を暑さ指数テーブルから求め、その暑さ指数に対応した色を第1の色表示テーブルから選択する制御部14と、第1の色表示テーブルから選択した色を表示する表示部15とを含み構成されている。
【0041】
制御部14は気温センサ11、湿度センサ12、記憶部13及び表示部15を制御する機能も有し、電源18と接続している。電源18は、制御部14を介して気温センサ11、湿度センサ12、記憶部13および表示部15に所定の電力を供給する。
【0042】
本実施の形態に係る周辺環境情報表示装置10では、表示部15は、赤色、青色および緑色に発光する光源を配置した4つの光源部16a、16b、16c、16dと、その光源部16a、16b、16c、16dから出射したそれぞれの光を混色し、導光拡散させて表示する2つの面状照明部17a、17bとを有し、光源部16a、16b、16c、16dのそれぞれの光源の光強度を変化させることにより任意の色を表示可能としている。この光源には、赤色、青色及び緑色を発光する発光ダイオード素子(LED)を用いているが、エレクトロルミネセント素子(EL)を用いてもよい。赤色、青色および緑色のそれぞれの光源を配置した光源部16a、16b、16c、16dで発光した光を混色し、導光拡散させて照明すれば、任意の色の光を面状照明部17a、17bの全面に均一な輝度で表示することができる。
【0043】
本実施の形態に係る周辺環境情報表示装置10の場合には、1つの面状照明部に2つの光源部が接続されている。例えば、面状照明部17aに対しては、上方に光源部16a、下方に光源部16bが接続されており、面状照明部17bに対しては、上方に光源部16c、下方に光源部16dが接続されている。この構成の場合、例えば面状照明部17aの光源部16a、16bは同時に同じ色を照明するようにしてもよいし、光源部16aは健常者用の色表示、光源部16bは色弱者用の色表示として、互いに照明する時間を切り替えるようにしてもよい。面状照明部17bについても同様である。
【0044】
図2に示すように、本実施の形態に係る周辺環境情報表示装置10は、全体形状が三角柱状であり、三角柱状の長手方向の2面に面状照明部17a、17bが設けられている。枠体19は、全体が三角柱状をしており、長手方向の2面に開口部が設けられている。枠体19は、金属や樹脂からなるもので構成され、例えば金属の場合にはアルミニウム製としてもよいし、樹脂の場合には例えばポリカーボネート樹脂などを用いることができる。面状照明部17a、17bは、枠体19の開口部に配設されている。制御部14、記憶部13、電源18及び光源部16a、16b、16c、16dは、枠体19中に配置されている(図示せず)。
【0045】
気温センサ11と湿度センサ12のセンサ部は、本実施の形態では枠体19の下部に露出するようにして配置されている(図示せず)。ただし、これらのセンサ部は下部に配置することに限定されず、面状照明部17a、17bが配設されていない面に露出するように設けてもよい。なお、それぞれのセンサ部は露出するように配置するだけでなく、枠体19の内部に配置してもよいが、周辺部の正確な気温と湿度を計測するためには外部に露出していることが好ましい。
【0046】
電源18は、本実施の形態では外部のAC100V~220V電源に電線(図示せず)を経由して接続されており、制御部14などに必要とする電力を供給している。なお、電源18は充電可能な電池を設けて充電方式としてもよい。充電方式とすれば、必要とする場所に手軽に持ち運ぶこともできる。
【0047】
本実施の形態に係る周辺環境情報表示装置10は、気温センサ11と湿度センサ12のセンサ部が枠体19の下部に配置されているので、面状照明部17a、17bが設けられていない面を壁などに向けて壁掛けスタイルにすることもできる。枠体19の下部には3つの脚部20が設けられているので机上に置くこともできる。
【0048】
図3は、試作した周辺環境情報表示装置10の外観写真である。(a)は組み立てた状態を斜め方向から撮影した写真であり、(b)は面状照明部17a、17bで水色を表示した状態の写真である。本実施の形態に係る周辺環境情報表示装置10においては、面状照明部17a、17bの照明領域は約100mm×300mmである。ただし、照明領域は形状に合わせて任意の大きさにすることができる。
このような構成からなる周辺環境情報表示装置10の表示方法について以下説明する。
【0049】
本実施の形態に係る暑さ指数テーブルを表1に示す。この暑さ指数テーブルは、日本生気象学会「日常生活における熱中症予防指針 Ver.3 確定版 2013年4月」に掲載された資料を引用して作成したものである。予防指針のテーブルは、気温や湿度から熱中症指数を推定することができ、室内で日射がない条件(黒球温度が乾球温度と等しい)で求めたものである。したがって、本実施の形態に係る周辺環境情報表示装置10は、室内使用を前提とする。ただし、室外での暑さ指数テーブルについても、気温と湿度とを基に推定することができるので別途作成すればよく、本発明は室内使用に限定されるものではない。
【0050】
なお、暑さ指数は熱中症指数(WBGT値)と同じ意味で用いており、単位は℃である。ただし、表1に示すテーブルを含めて気温との区別を明確にするために以下では無次元で表記する。
【0051】
【0052】
表1に示すように、暑さ指数テーブルは暑さ指数が21以下(ほぼ安全)、22~24(注意)、25~27(警戒)、28~30(厳重警戒)、31~35(危険)、36以上(非常に危険)の6段階に分けている。一般的な分類は、25以下(注意)、25~28(警戒)、28~31(厳重警戒)、31以上(危険)の4分類であるが、本実施の形態に係る周辺環境情報表示装置10では、注意と危険の範囲を2分割して、よりきめ細かな表示を行えるようにしている。この暑さ指数テーブルは記憶部13に格納されている。
【0053】
暑さ指数に対応して複数の色を設定した第1の色表示テーブルを表2に示す。この第1の色表示テーブルも同様に記憶部13に格納されている。本実施の形態に係る周辺環境情報表示装置10では、この第1の色表示テーブルの一部については、同じ暑さ指数に対して健常者と色弱者とにより異ならせている。
【0054】
色弱者は、男性では20人に1人の割合、女性では500人に1人の割合で存在する。そして、第1色覚障害者(色弱者全体の約25%)は、赤色を赤色と認識できず黒色と認識し、緑色は焦げ茶色と認識する。また、第2色覚障害者(色弱者全体の約75%)は、赤色を焦げ茶色と認識し、緑色は濃い焦げ茶色と認識する。さらに、第1色覚障害者と第2色覚障害者は、青緑色をほぼ黒色と認識してしまう。このため、色覚障害者は赤色と緑色とが同じような色に見えるため、これらを区別できない。(出典:「色使いのガイドライン 平成17年4月 発行:神奈川県保健福祉部地域保健福祉課 参考HP:http://www.nig.ac.jp/color」
このような色弱者の視覚特性を考慮して表2に示す色表示テーブルを作成した。以下、表2に示す色表示テーブルについて説明する。
【0055】
【0056】
表2では、暑さ指数、表示内容、点灯状態、点灯間隔、表示色、光配合割合、及び、健常者と色弱者とが認識する色を、それぞれ記載している。光配合割合は、赤(R)、緑(G)及び青(B)の光強度を1~99の99段階にわけたときの数値であり、例えば99は最も光強度が大きい場合で、1は最も光強度が小さい場合である。本実施の形態では、スイッチをオフにして初めて光源が消灯となる。また、面状照明部17a、17bは、光源が消灯となっている場合ではやや灰色がかった白色である。このため、黒色の表示はできない。
【0057】
暑さ指数が21以下のほぼ安全レベルの場合の表示色は、安全と認識されやすい色である緑色に設定した。健常者は、表示色の緑色を緑色と認識する。しかも、緑色は樹木の緑を連想して気持ちを和らげることができる。一方、色弱者は緑色を薄い茶色と認識する場合が多い。薄い茶色であれば安全と認識されやすい。
【0058】
暑さ指数が22~24の注意レベルの表示色は黄色に設定した。健常者は黄色を容易に認識し、注意レベルであるということを理解できる。色弱者は、黄色を薄い黄緑色と認識する場合が多く、同様に注意レベルであることを理解できる。
【0059】
暑さ指数が25~27の警戒レベルの表示色は橙色に設定した。健常者は橙色を橙色と容易に認識する。色弱者は橙色を薄いベージュ色と認識する場合が多いようである。また、暑さ指数が28~30の厳重警戒レベルの表示色は、橙色とほぼ白色の2色に設定した。健常者は、橙色を橙色と容易に認識するが、色弱者は橙色を薄いベージュ色と認識する場合が多いようである。色弱者への認識を高めるために、ほぼ白色の表示色も用いており、ほぼ白色については色弱者も健常者と同じようにほぼ白色と認識する。これにより色弱者についても厳重警戒レベルであることを理解できるようにしている。
【0060】
警戒レベルと厳重警戒レベルの表示色は、両方ともに橙色を用いているのでこのままでは誤認識する恐れがある。これを防ぐために、警戒レベルは点滅なしとし、厳重警戒レベルについては0.8秒間隔の点滅とした。これにより、健常者も色弱者も警戒レベルと厳重警戒レベルの違いを容易に理解できるようにしている。
【0061】
暑さ指数が31~35の危険レベルと暑さ指数が36以上の非常に危険レベルの両方ともに、それらの表示色は赤色と紫色の2色に設定した。健常者は赤色を赤色と、紫色は紫色と認識する。一方、色弱者は、赤色をほぼ黒色と認識する場合が多く、誤認あるいは認識しにくい場合がある。しかし、紫色は、濃い青色と認識する場合が多く、この色を危険色であると指定しておけば容易に危険であることを理解できる。危険レベルと非常に危険レベルの両方ともに同じ表示色を使っているので、点灯間隔を変えて違いを明確にするようにしている。危険レベルの場合には0.8秒間隔、非常に危険レベルの場合には0.4秒間隔で点滅させることで、それぞれを容易に理解できるようにしている。この点灯間隔は適宜調節することができる。
【0062】
なお、ほぼ安全レベルから警戒レベルの表示も間欠的に行ってもよい。あるいは、安全レベルと認識しやすい複数の色、例えば青色から青緑色、紫色を連続的に変化させて表示してもよい。このような表示を行うことで、安全レベルでは色によるリラックス効果を得ることもできる。これらは第1の色表示テーブルにあらかじめ設定しておくことができる。
【0063】
なお、この第1の色表示テーブルは例示であって、表示する色については表2に示す色に限定されない。健常者と色弱者ともに別の色を選定してもよい。また、色弱者については、第1色覚障害者と第2色覚障害者のそれぞれについて最も認識しやすい色を選定してもよい。
【0064】
第1の色表示テーブルを用いて表示部15に選択した色を表示する方法を以下に説明する。制御部14は、気温センサ11と湿度センサ12との測定値から気温測定値と相対湿度とを求める。そして、その気温測定値と相対湿度に対応する暑さ指数を暑さ指数テーブルから求める。さらに、制御部14は、その暑さ指数に対応した色を第1の色表示テーブルから選択する。そして、制御部14は、選択した色を表示するために、光源部16a,16b、16c、16dのR、G、Bの光源の光強度を設定し、各光源を発光させる。その光は混色され、導光拡散されて面状照明部17a、17bにより表示される。
【0065】
表示する場合に、健常者に対する表示色と色弱者に対する表示色とを、面状照明部17a、17bのそれぞれに、設定した時間ごとに切り替えながら、又は、連続的に変化させながら表示してもよい。このためには、第1の色表示テーブルに切り替え時間や変化させる色などをあらかじめ設定しておき、制御部14は第1の色表示テーブルで表示する色の選択と同時に、切り替え時間などの制御情報も取得して、光源部16a,16b、16c、16dを作動させれば、所定の表示を行うことができる。このような表示をすれば、同じ面状照明部17a、17bに、健常者に対する表示色と色弱者に対する表示色とが一定時間ごとに表示されるので、色弱者にとって表示色が何を示しているかがより理解されやすくなる。
【0066】
あるいは、2つの面状照明部17a、17bの長手方向に直交する方向に2分割をして上側の光源部16a、16cは健常者に対する表示色とし、下側の光源部16b、16dは色弱者に対する表示色として面状照明部17a、17bにそれぞれの光を表示するようにしてもよい。このようにすれば、同じ面状照明部17a、17bで同時に両方の色を表示するので、色弱者にとって表示色に込められた表示内容の理解がしやすい。
【0067】
また、本実施の形態に係る周辺環境情報表示装置10は、外部のコンピュータ(図示せず)と接続する機能を有している。そして、制御部14は、コンピュータの指令に基づき暑さ指数テーブルや第1の色表示テーブルを任意に書き換えることができるようにしている。第1色覚障害者と第2色覚障害者のどちらの色弱者についても、それぞれともに障害の度合いは人により異なる場合が多い。そのため、表2に示すように一律に色を設定してもすべての色弱者に最適な色表示になるとは限らない。そこで、外部のコンピュータに接続できるようにして、色表示を任意に変更設定できるようにしている。
【0068】
これにより、色弱者の障害度合に応じて認識しやすい最適な色表示を任意に行うことができる。また、健常者と色弱者の両方に対して、ほぼ安全レベルにおいては、楽しくなる、あるいは、リラックスできるような色表示を行うこともできる。さらに、周辺環境情報表示装置10を設置する場所に応じた最適な色表示を選択することもできる。例えば、明るい場所に設置する場合には、それぞれの表示色の光強度を強めてより視認しやすくしたり、比較的暗い場所に設置する場合には表示色の光強度を弱めたり、あるいは夜間においてはさらに光強度を弱くするようにしてもよい。
【0069】
また、音声報知部をさらに有し、制御部14は表示部15で色表示すると同時に、その色表示に対応した音声情報を音声報知部により報知するようにしてもよい、このように音声情報を付加すれば、健常者も色弱者のどちらにとっても周辺環境をより認識しやすくできる。
(変形例1)
【0070】
図4は、本実施の形態の変形例1に係る周辺環境情報表示装置30の概略斜視図である。この変形例1の周辺環境情報表示装置30は、全体形状が四角柱状である。本変形例の場合には、四角柱状の長手方向の4面に面状照明部31a、31b、31c、31dが設けられている。これに伴い、光源部もそれぞれの面状照明部31a、31b、31c、31dに合わせて上下に2個ずつ配置されているが、枠体32の内部に配置されている。本変形例のブロック構成は、
図1に示した第1の実施の形態と同じであるので、以下では同じ符号を付して説明する。
【0071】
気温センサ11と湿度センサ12のセンサ部は、枠体32の下部に配置されている。枠体32の下部には脚部33が設けられており、机上などに置くことができる。記憶部13、制御部14及び電源18も枠体32中に配置されている。また、光源部の個数と面状照明部の個数が2倍になったことを除けば、第1の実施の形態に係る周辺環境情報表示装置10で示したブロック図と同じ構成であるので、作動状態についての説明を省略する。
【0072】
本変形例の周辺環境情報表示装置30では、4面に面状照明部31a、31b、31c、31dを配置しているので机上に置けば、どこからでも明瞭に視認することができる。また、4つの面状照明部31a、31b、31c、31dと8つの光源部(図示せず)とを有効に活用することで、健常者に対する表示色と色弱者に対する表示色とを、設定した時間ごとに切り替えながら、又は、連続的に変化させながら表示することも容易である。
【0073】
なお、本変形例の周辺環境情報表示装置30では、4面に面状照明部31a、31b、31c、31dを設けたが、3面に設けるようにしてもよい。そして、気温センサ11と湿度センサ12のセンサ部を、面状照明部が設けられていない面に取り付けてもよい。
(変形例2)
【0074】
図5は、本実施の形態の変形例2に係る周辺環境情報表示装置40の概略斜視図である。この変形例2の周辺環境情報表示装置40は、全体形状は円柱状である。円柱状の長手方向の全面が1つの面状照明部41からなる。これに伴い光源部も面状照明部41に合わせて上下の2個のみとしているが、枠体42の内部に配置されているので図示されていない。本変形例のブロック構成は、
図1に示した第1の実施の形態と同じであるので、以下では同じ符号を付して説明する。
【0075】
気温センサ11と湿度センサ12のセンサ部は、枠体42の下部に配置されている。枠体42の下部には脚部43が設けられており、机上などに置くことができる。記憶部13、制御部14及び電源18も枠体42中に配置されている。また、光源部の個数と面状照明部の個数が減ったことを除けば、第1の実施の形態に係る周辺環境情報表示装置10で示したブロック図と同じ構成であるので、作動状態についての説明を省略する。
この周辺環境情報表示装置40は、机上に置けばどこからでも容易に視認することができるという特徴を有する。
(第2の実施の形態)
【0076】
本発明の第2の実施の形態の周辺環境情報表示装置について説明する。第1の実施の形態に係る周辺環境情報表示装置10が、暑さ指数を基にした熱中症の予防のための表示を健常者と色弱者とに分けて最適な色表示を行うようにした構成に対して、本実施の形態に係る周辺環境情報表示装置は、さらに、低温乾燥状態で風邪やインフルエンザに罹りやすい、あるいは肌荒れ、さらには火事発生などの予防のための表示を行う機能を追加したことを特徴とする。
【0077】
装置構成は、第1の実施の形態の周辺環境情報表示装置10と同じであり、記憶部13に低温乾燥テーブルと第2の色表示テーブルとを追加して格納し、制御部14はこれらのテーブルも読み込み処理する機能が追加されている。それ以外については同じであるので、装置構成についての説明は省略する。以下では、第1の実施の形態の
図1のブロック図に基づいて説明する。
【0078】
本実施の形態に係る周辺環境情報表示装置は、あらかじめ設定した気温より低い環境条件における気温及び相対湿度に対応した低温乾燥指数をあらかじめ求めて作成した低温乾燥指数テーブルと、前記低温乾燥指数に対応して複数の色を設定して作成した第2の色表示テーブルとを、記憶部13にさらに格納する。そして、制御部14は気温センサ11から得られた気温測定値が、あらかじめ設定した気温より低い環境条件であると判断した場合には、気温測定値及び相対湿度から、それらの測定値に対応する低温乾燥指数を低温乾燥テーブルから求め、さらにその低温乾燥指数に対応する色を第2の色表示テーブルから選択し、表示部15に表示させる機能を追加した構成からなる。
【0079】
【0080】
表3は、気温及び相対湿度に対応した低温乾燥指数を低温乾燥テーブルとしたものであり、記憶部13に格納されている。もちろん、記憶部13とは別の記憶部を設けて、その記憶部に格納してもよい。本実施の形態では、あらかじめ設定した気温は20℃とした。したがって、気温測定値が21℃以上では、第1の実施の形態に係る周辺環境情報表示装置10と同様に暑さ指数に基づき設定した色表示を行う。しかし、気温測定値が20℃以下になった場合には、低温乾燥指数を基に設定した色を表示してインフルエンザや風邪に関する注意を促す。なお、低温乾燥テーブルは、上述したように宮城県地域医療情報センターが開示しているデータを一部引用したものである。
【0081】
【0082】
表4は、低温乾燥指数を基に設定した具体例の第2の色表示テーブルである。低温乾燥指数が11以上のほぼ安全レベルにおいては、その表示色として緑色を設定した。これは、第1の色表示テーブルのほぼ安全レベルの表示色と同じであるので説明を省略する。
【0083】
低温乾燥指数が7~11未満の注意レベルの場合には、濃い青色を表示色として設定した。表示色の濃い青色は、色弱者も健常者と同じように濃い青色と認識する場合が多い。濃い青色は海や湖などの色を連想し、寒色系であるので、低温乾燥の注意レベルと理解されやすい。
【0084】
低温乾燥指数が7未満の警戒レベルの場合の表示色は、青緑色と濃い青色との2色を設定した。青緑色については、健常者は青緑色と認識するが、色弱者は薄い青紫色と認識する場合が多いようである。また、濃い青色については、健常者も色弱者もほぼ同じ濃い青色と認識する。したがって、健常者にとっては、濃い青色と青緑色とにより警戒レベルであると理解する。一方、色弱者は、薄い青紫色と濃い青色とを認識することで警戒レベルと理解しやすい。さらに、警戒レベルの場合には、点灯間隔を0.6秒とした点滅表示することで、警戒レベルであることをより確実に理解できるようにしている。
【0085】
なお、この第2の色表示テーブルは例示であって、表示する色については表4に示す色に限定されない。健常者と色弱者ともに別の色を選定してもよい。また、表4に示す光配合割合は、赤(R)、緑(G)及び青(B)の光強度を1~99の99段階にわけたときの数値であり、例えば99は最も光強度が大きい場合で、1は最も小さい場合である。この光配合割合は、表4に示すような99段階に分けることに限定されず、1~256までの256段階に分けて設定してもよい。
【0086】
また、ほぼ安全レベルと注意レベルについても連続的な表示だけでなく、点滅表示にしてもよい。例えば、ほぼ安全レベルは5秒点灯、1秒消灯とし、注意レベルは3秒点灯、1秒消灯などのようにすれば目を引きやすくできる。なお、上記の消灯は、R、G、Bともに1を表示することをいう。
【0087】
このためには、第2の色表示テーブルに切り替え時間や変化させる色などをあらかじめ設定しておき、制御部14は第2の色表示テーブルで表示する色の選択に伴い、切り替え時間などの制御情報も取得して、光源部16a,16b、16c、16dを作動させれば所定の表示を行うことができる。
【0088】
さらに、本実施の形態の周辺環境情報表示装置についても、第1の実施の形態と同じように、第1の色表示テーブルは、同じ暑さ指数に対して健常者と色弱者とにより異ならせてもよいし、第2の色表示テーブルは、同じ低温乾燥指数に対して健常者と色弱者とにより異ならせてもよい。
【0089】
また、健常者に対する表示色と色弱者に対する表示色とを、設定した時間ごとに切り替えながら、又は、連続的に変化させながら表示するようにしてもよい。さらに、面状照明部は2分割構成からなり、健常者に対する表示色と色弱者に対する表示色とを、面状照明部に対してそれぞれ表示するようにしてもよい。
【0090】
また、外部のコンピュータと接続することにより、制御部はコンピュータの指令に基づき暑さ指数テーブル、第1の色表示テーブル、低温乾燥テーブル、及び、第2の色表示テーブルを任意に書き換え可能としてもよい。
光源は、赤色、青色及び緑色を発光する発光ダイオード素子またはエレクトロルミネセント素子により構成されていてもよい。
【0091】
さらに、装置の形状として全体形状が三角柱状であり、三角柱状の長手方向の2面または3面に面状照明部が設けられている構成であってもよい。あるいは、全体形状が四角柱状であり、四角柱状の長手方向の3面または4面に面状照明部が設けられている構成であってもよい。さらには、全体形状は円柱状であり、円柱状の長手方向の全面が面状照明部からなる構成としてもよい。これらの構成とする場合の具体的な内容は第1の実施の形態で説明したので省略する。
【0092】
また、音声報知部をさらに有し、制御部は表示部で色表示すると同時に、その色表示に対応した音声情報を音声報知部により報知するようにしてもよい。特に、低温乾燥指数が警戒レベルになった場合や暑さ指数が危険レベルになった場合に音声で報知すればより確実に認識させることができ、対応を素早く行うことができる。
【0093】
なお、本発明の第1および第2の実施の形態に係る周辺環境情報表示装置に限定されることはなく、さらに種々の追加機能を付加してもよい。例えば、気圧センサをさらに付加してもよい。気圧センサにより気圧変動を計測し、気温測定値と相対湿度に気圧変動値を加えることで、暑さ指数がさらに高まるのか、あるいは低下していくのか、などの予測もできる。
【0094】
また、インターネット接続機能を設けてもよい。インターネットに接続し、設置場所周辺の気温、湿度の情報を入手し、制御部は周辺環境情報表示装置の気温と湿度の測定値に加えて、インターネットにより入手した気温と湿度を用いて周辺環境情報表示装置がある場所の気温と相対湿度測定値として、この測定値を基に暑さ指数を求めてもよい。
【0095】
また、第1の実施の形態と第2の実施の形態に係る周辺環境情報表示装置では、気温センサと湿度センサとを1個ずつ設けたが、本発明はこれに限定されない。例えば、本体とは別の場所にも設けてもよい。例えば、本体から離れた場所に複数の気温センサと湿度センサとを設け、これらのセンサの気温測定値及び相対湿度と、本体の気温センサと湿度センサによる気温測定値及び相対湿度との平均値を、気温測定値及び相対湿度として、これらの数値を基に暑さ指数テーブルから暑さ指数を求めてもよい。同様に、これらの数値を基に低温乾燥指数テーブルから低温乾燥指数を求めてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の周辺環境情報表示装置は、屋内における熱中症予防や低温乾燥時の風邪予防などの健康医療分野に有用である。
【符号の説明】
【0097】
10、30、40 周辺環境情報表示装置
11 気温センサ
12 湿度センサ
13 記憶部
14 制御部
15 表示部
16a、16b、16c、16d 光源部
17a、17b、31a、31b、31c、31d、41 面状照明部
18 電源
19、32、42 枠体
20、33、43 脚部
【手続補正書】
【提出日】2022-01-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周辺の気温を計測する気温センサと、
周辺の湿度を計測する湿度センサと、
気温及び相対湿度に対応した暑さ指数をあらかじめ求めて作成した暑さ指数テーブル及び前記暑さ指数に対応して複数の色を設定し、かつ、同じ暑さ指数に対して色覚健常者と色覚異常者とにより異ならせた第1の色表示テーブルを格納する記憶部と、
前記気温センサと前記湿度センサとの測定値から得られた気温測定値と相対湿度とを用いて、それらの測定値に対応する暑さ指数を前記暑さ指数テーブルから求め、その暑さ指数に対応した色を第1の色表示テーブルから選択する制御部と、
前記第1の色表示テーブルから選択した色を表示する表示部とを含み、
前記制御部は、前記気温センサ、前記湿度センサ、前記記憶部及び前記表示部を制御する機能も有し、
前記表示部は、赤色、青色および緑色に発光する光源を配置した光源部と、前記光源部から出射したそれぞれの光を混色し、導光拡散させる面状照明部とを有し、前記光源部のそれぞれの光源の光強度を変化させることにより任意の色を表示可能としたことを特徴とする周辺環境情報表示装置。
【請求項2】
あらかじめ設定した気温より低い環境条件における気温及び相対湿度に対応した低温乾燥指数をあらかじめ求めて作成した低温乾燥指数テーブルと、前記低温乾燥指数に対応して複数の色を設定して作成した第2の色表示テーブルとを、前記記憶部にさらに格納し、
前記制御部は、前記気温センサから得られた気温測定値があらかじめ設定した気温より低い環境条件であると判断した場合には、前記気温測定値及び相対湿度からそれらの測定値に対応する低温乾燥指数を前記低温乾燥指数テーブルから求め、さらにその低温乾燥指数に対応する色を前記第2の色表示テーブルから選択し、前記表示部に表示させることを特徴とする請求項1に記載の周辺環境情報表示装置。
【請求項3】
前記第2の色表示テーブルは、同じ低温乾燥指数に対して色覚健常者と色覚障害者とにより異ならせたことを特徴とする請求項2に記載の周辺環境情報表示装置。
【請求項4】
前記色覚健常者に対する表示色と前記色覚障害者に対する表示色とを、設定した時間ごとに切り替えながら、又は、連続的に変化させながら表示することを特徴とする請求項1または3に記載の周辺環境情報表示装置。
【請求項5】
前記面状照明部は2分割構成からなり、前記色覚健常者に対する表示色と前記色覚障害者に対する表示色とを、前記面状照明部に対してそれぞれ表示することを特徴とする請求項1または3に記載の周辺環境情報表示装置。
【請求項6】
外部のコンピュータと接続することにより、前記制御部は前記コンピュータの指令に基づき前記暑さ指数テーブル及び、前記第1の色表示テーブルを任意に書き換え可能としたことを特徴とする請求項1に記載の周辺環境情報表示装置。
【請求項7】
外部のコンピュータと接続することにより、前記制御部は前記コンピュータの指令に基づき前記暑さ指数テーブル、前記第1の色表示テーブル、前記低温乾燥指数テーブル及び前記第2の色表示テーブルを任意に書き換え可能としたことを特徴とする請求項2または3に記載の周辺環境情報表示装置。
【請求項8】
前記光源は、赤色、青色及び緑色を発光する発光ダイオード素子またはエレクトロルミネセント素子により構成されていることを特徴とする請求項1から7までのいずれか1項に記載の周辺環境情報表示装置。
【請求項9】
音声報知部をさらに有し、
前記制御部は、前記表示部により色表示すると同時に、その色表示に対応した音声情報を前記音声報知部により報知することを特徴とする請求項1から8までのいずれか1項に記載の周辺環境情報表示装置。
【請求項10】
全体形状が三角柱状であり、前記三角柱状の長手方向の2面または3面に前記面状照明部が設けられていることを特徴とする請求項1から9までのいずれか1項に記載の周辺環境情報表示装置。
【請求項11】
全体形状が四角柱状であり、前記四角柱状の長手方向の3面または4面に前記面状照明部が設けられていることを特徴とする請求項1から9までのいずれか1項に記載の周辺環境情報表示装置。
【請求項12】
全体形状は円柱状であり、前記円柱状の長手方向の全面が前記面状照明部からなることを特徴とする請求項1から9までのいずれか1項に記載の周辺環境情報表示装置。