(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096786
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】スチームトラップ管理システム及び診断装置
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20220623BHJP
F16T 1/48 20060101ALI20220623BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20220623BHJP
G01H 17/00 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
F16T1/48 C
F16T1/48 D
G05B23/02 T
G01H17/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020209969
(22)【出願日】2020-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】000137889
【氏名又は名称】株式会社ミヤワキ
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100136353
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 建吾
(72)【発明者】
【氏名】吉川 成雄
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
3C223
【Fターム(参考)】
2G024AD01
2G024BA22
2G024BA27
2G024CA13
2G024FA06
2G024FA11
2G064AA11
2G064AB02
2G064AB22
2G064BA02
2G064BD02
2G064DD02
3C223AA01
3C223BA03
3C223BB02
3C223CC02
3C223DD03
3C223EB01
3C223EB02
3C223FF02
3C223FF03
3C223FF12
3C223FF13
3C223FF14
3C223FF42
3C223FF44
3C223FF45
3C223GG01
3C223HH02
(57)【要約】
【課題】発火可能性のあるバッテリを用いた機器等の持ち込みが禁止されている施設内に設置されているスチームトラップを対象とする点検を適切に実施することが可能な、スチームトラップ管理システムを得る。
【解決手段】診断装置1は、メモリカードスロット17に挿入されたメモリカード50に診断データ91を書き込むメモリカードコントローラ16を有する。データ処理装置2は、メモリカードスロット43に挿入されたメモリカード50から診断データ91を読み出すメモリカードコントローラ42と、メモリカード50から読み出された診断データ91をメモリカードコントローラ42から取得する取得部61と、取得部61が取得した診断データ91をサーバ装置3に送信する通信部47と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスチームトラップの各々の状態を管理するスチームトラップ管理システムであって、
可搬型の診断装置と、
データ処理装置と、
サーバ装置と、
を備え、
前記診断装置は、
前記複数のスチームトラップの各々の温度及び振動を測定し、その測定の結果を示す測定データを出力する測定部と、
前記測定データに基づいて前記複数のスチームトラップの各々の状態を診断し、その診断の結果を示す診断データを出力する診断部と、
可搬型の記録媒体が着脱可能に挿入される第1のスロットと、
前記第1のスロットに挿入された前記記録媒体に対して、前記診断データの書き込み処理を実行する第1のコントローラと、
を有し、
前記データ処理装置は、
前記記録媒体が着脱可能に挿入される第2のスロットと、
前記第2のスロットに挿入された前記記録媒体に対して、前記診断データの読み出し処理を実行する第2のコントローラと、
前記記録媒体から読み出された前記診断データを、前記第2のコントローラから取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記診断データを、前記サーバ装置に送信する診断データ送信部と、
を有し、
前記サーバ装置は、
前記診断データ送信部が送信した前記診断データを受信する診断データ受信部
を有する、スチームトラップ管理システム。
【請求項2】
前記サーバ装置は、
前記診断部が使用する診断パラメータを設定する設定部と、
前記設定部が設定した前記診断パラメータを、前記データ処理装置に送信する診断パラメータ送信部と、
をさらに有し、
前記データ処理装置は、
前記診断パラメータ送信部が送信した前記診断パラメータを受信する診断パラメータ受信部
をさらに有し、
前記第2のコントローラは、前記第2のスロットに挿入された前記記録媒体に対して、診断パラメータ受信部が受信した前記診断パラメータの書き込み処理をさらに実行し、
前記第1のコントローラは、前記第1のスロットに挿入された前記記録媒体に対して、前記診断パラメータの読み出し処理をさらに実行する、請求項1に記載のスチームトラップ管理システム。
【請求項3】
前記記録媒体は半導体メモリカードである、請求項1又は2に記載のスチームトラップ管理システム。
【請求項4】
複数のスチームトラップの各々の状態を管理するスチームトラップ管理システムが備える可搬型の診断装置であって、
前記複数のスチームトラップの各々の温度及び振動を測定し、その測定の結果を示す測定データを出力する測定部と、
前記測定データに基づいて前記複数のスチームトラップの各々の状態を診断し、その診断の結果を示す診断データを出力する診断部と、
可搬型の記録媒体が着脱可能に挿入される第1のスロットと、
前記第1のスロットに挿入された前記記録媒体に対して、前記診断データの書き込み処理を実行する第1のコントローラと、
を備える、診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチームトラップの状態を管理するためのスチームトラップ管理システム及び診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気配管系を備えたプラント等においては、熱交換又は放熱等によって配管系内に復水(ドレン)が生じることがある。この復水を配管系内に滞留させると運転効率が低下する原因となるため、一般には、配管系の適所にスチームトラップを設置し、このスチームトラップによって復水を配管系の外部に排出するようにしている。
【0003】
経年劣化又は作動不良等によってスチームトラップのシール性能が損なわれると、蒸気配管系内の蒸気がスチームトラップを介して外部に漏出し、無駄な蒸気損失を招くこととなる。そのため、1年に1回等の定期的に、スチームトラップの状態を点検する作業が行われる。
【0004】
下記特許文献1には、スチームトラップの状態を診断するための計測装置及び診断装置が開示されている。計測装置は可搬型の計測装置であり、診断装置はタブレット端末又はノートパソコン等であり、計測装置と診断装置とは相互に無線通信が可能である。計測装置は、各スチームトラップの表面温度を計測する温度センサと、各スチームトラップの振動強度を計測する振動センサと、温度センサ及び振動センサから出力された計測データを記憶する記憶部と、当該計測データを診断装置に送信する通信部と、表示部とを備えている。診断装置は、計測装置から受信した計測データに基づいて各スチームトラップの状態(正常又は異常)を診断し、その診断の結果を示す診断データを計測装置に送信する。計測装置は、診断装置から受信した診断データに基づいて、各スチームトラップに関する診断の結果を表示部に表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
点検対象であるスチームトラップが設置されているプラント等の施設によっては、安全性確保の理由から、発火可能性のあるバッテリを用いた機器の持ち込みが禁止され、又は、電波干渉による誤動作防止等の理由から、無線通信機器の持ち込みが禁止されている場合がある。
【0007】
従って、上記特許文献1において、診断装置が発火可能性のあるリチウムイオンバッテリ等を用いたタブレット端末又はノートパソコン等である場合には、診断装置をそのような施設内に持ち込むことができない。また、上記特許文献1では、診断装置は計測装置と無線通信を行うため、診断装置をそのような施設内に持ち込むことができない。その結果、上記特許文献1に開示された計測装置及び診断装置によると、そのような施設に設置されているスチームトラップを対象とする点検を実施することができない。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みて成されたものであり、発火可能性のあるバッテリを用いた機器の持ち込み、又は、無線通信機器の持ち込みが禁止されている施設内に設置されているスチームトラップを対象とする点検を適切に実施することが可能な、スチームトラップ管理システム及び診断装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係るスチームトラップ管理システムは、複数のスチームトラップの各々の状態を管理するスチームトラップ管理システムであって、可搬型の診断装置と、データ処理装置と、サーバ装置と、を備え、前記診断装置は、前記複数のスチームトラップの各々の温度及び振動を測定し、その測定の結果を示す測定データを出力する測定部と、前記測定データに基づいて前記複数のスチームトラップの各々の状態を診断し、その診断の結果を示す診断データを出力する診断部と、可搬型の記録媒体が着脱可能に挿入される第1のスロットと、前記第1のスロットに挿入された前記記録媒体に対して、前記診断データの書き込み処理を実行する第1のコントローラと、を有し、前記データ処理装置は、前記記録媒体が着脱可能に挿入される第2のスロットと、前記第2のスロットに挿入された前記記録媒体に対して、前記診断データの読み出し処理を実行する第2のコントローラと、前記記録媒体から読み出された前記診断データを、前記第2のコントローラから取得する取得部と、前記取得部が取得した前記診断データを、前記サーバ装置に送信する診断データ送信部と、を有し、前記サーバ装置は、前記診断データ送信部が送信した前記診断データを受信する診断データ受信部を有する。
【0010】
この態様によれば、診断部は、測定部が出力した測定データに基づいて各スチームトラップの状態を診断し、第1のコントローラは、診断部が出力した診断データを、第1のスロットに挿入された記録媒体に書き込む。作業者が第1のスロットから記録媒体を取り出し、その記録媒体をデータ処理装置の第2のスロットに挿入すると、第2のコントローラは記録媒体から診断データを読み出し、診断データ送信部は当該診断データをサーバ装置に送信する。従って、スチームトラップが設置されている施設内にデータ処理装置を持ち込めない場合であっても、作業者が施設内に診断装置のみを持ち込むことによって診断装置が各スチームトラップの診断を実施し、データ処理装置は、記録媒体に蓄積された診断データを施設外で診断装置から取得してサーバ装置に送信することができる。その結果、この態様によれば、発火可能性のあるバッテリを用いた機器の持ち込み、又は、無線通信機器の持ち込みが禁止されている施設内に設置されているスチームトラップを対象とする点検を、適切に実施することが可能となる。
【0011】
上記態様において、前記サーバ装置は、前記診断部が使用する診断パラメータを設定する設定部と、前記設定部が設定した前記診断パラメータを、前記データ処理装置に送信する診断パラメータ送信部と、をさらに有し、前記データ処理装置は、前記診断パラメータ送信部が送信した前記診断パラメータを受信する診断パラメータ受信部をさらに有し、前記第2のコントローラは、前記第2のスロットに挿入された前記記録媒体に対して、診断パラメータ受信部が受信した前記診断パラメータの書き込み処理をさらに実行し、前記第1のコントローラは、前記第1のスロットに挿入された前記記録媒体に対して、前記診断パラメータの読み出し処理をさらに実行する。
【0012】
この態様によれば、サーバ装置が設定した診断パラメータを、データ処理装置から記録媒体経由で診断装置に送信することができる。これにより、診断装置において診断パラメータを更新することが可能となる。
【0013】
上記態様において、前記記録媒体は半導体メモリカードである。
【0014】
この態様によれば、汎用の半導体メモリカードを用いた簡易な運用によって、診断装置とデータ処理装置との間で診断データ等の授受を行うことが可能となる。
【0015】
本発明の一態様に係る診断装置は、複数のスチームトラップの各々の状態を管理するスチームトラップ管理システムが備える可搬型の診断装置であって、前記複数のスチームトラップの各々の温度及び振動を測定し、その測定の結果を示す測定データを出力する測定部と、前記測定データに基づいて前記複数のスチームトラップの各々の状態を診断し、その診断の結果を示す診断データを出力する診断部と、可搬型の記録媒体が着脱可能に挿入される第1のスロットと、前記第1のスロットに挿入された前記記録媒体に対して、前記診断データの書き込み処理を実行する第1のコントローラと、を備える。
【0016】
この態様によれば、診断部は、測定部が出力した測定データに基づいて各スチームトラップの状態を診断し、第1のコントローラは、診断部が出力した診断データを、第1のスロットに挿入された記録媒体に書き込む。作業者が第1のスロットから記録媒体を取り出し、その記録媒体をデータ処理装置の第2のスロットに挿入すると、データ処理装置の第2のコントローラは記録媒体から診断データを読み出し、データ処理装置の診断データ送信部は当該診断データをサーバ装置に送信する。従って、スチームトラップが設置されている施設内にデータ処理装置を持ち込めない場合であっても、作業者が施設内に診断装置のみを持ち込むことによって診断装置が各スチームトラップの診断を実施し、データ処理装置は、記録媒体に蓄積された診断データを施設外で診断装置から取得してサーバ装置に送信することができる。その結果、この態様によれば、発火可能性のあるバッテリを用いた機器の持ち込み、又は、無線通信機器の持ち込みが禁止されている施設内に設置されているスチームトラップを対象とする点検を、適切に実施することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、発火可能性のあるバッテリを用いた機器の持ち込み、又は、無線通信機器の持ち込みが禁止されている施設内に設置されているスチームトラップを対象とする点検を、適切に実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係るスチームトラップ管理システムの構成を簡略化して示すブロック図である。
【
図4】スチームトラップ管理システムにおける処理の流れを示すシーケンス図である。
【
図5】スチームトラップ管理システムにおける処理の流れを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0020】
<システムの構成>
図1は、本発明の実施の形態に係るスチームトラップ管理システム100の構成を簡略化して示すブロック図である。スチームトラップ管理システム100は、可搬型の診断装置1と、ノートパソコン又はタブレット端末等のデータ処理装置2と、クラウドサーバ等のサーバ装置3とを備えている。データ処理装置2とサーバ装置3とは、公衆回線網等の任意の通信ネットワーク4を介して、IP等の任意の通信方式によって相互に無線通信が可能である。
【0021】
蒸気配管系を備えたプラント等においては、配管系内に生じた復水(ドレン)を配管系の外部に排出するために、配管系の適所に複数のスチームトラップが設置されている。スチームトラップは、1年に1回等の定期点検によって、その状態が点検される。定期点検の作業者は、可搬型の診断装置1を携帯してプラント内を移動することにより、診断装置1によって各スチームトラップを順に点検する。なお、スチームトラップの点検は、定期点検に限らず、不定期な点検であっても良い。以下では、定期点検を例に取り説明する。
【0022】
診断装置1は、制御部11、測定部12、操作部13、表示部14、記憶部15、メモリカードコントローラ16、及びメモリカードスロット17を有している。
【0023】
測定部12は、温度センサ21及び振動センサ22を含む。温度センサ21は、熱電対、増幅回路、及びAD変換回路等を用いて構成されている。作業者が診断装置1の探針(図略)を測定対象であるスチームトラップに押し当てることにより、温度センサ21は、スチームトラップの表面温度を測定し、その測定結果を示す温度データを出力する。振動センサ22は、圧電素子、増幅回路、及びAD変換回路等を用いて構成されている。作業者が上記探針を測定対象であるスチームトラップに押し当てることにより、振動センサ22は、測定対象であるスチームトラップの振動強度を測定し、その測定結果を示す振動データを出力する。
【0024】
操作部13は、作業者が各種の情報を入力するための操作スイッチ等によって構成されている。表示部14は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等を用いて構成されている。但し、タッチパネル式ディスプレイを使用することにより、操作部13と表示部14とが一体として構成されても良い。
【0025】
記憶部15は、フラッシュメモリ等の書き換え可能な半導体メモリ等を用いて構成されている。
【0026】
メモリカードコントローラ16は、メモリカードスロット17に挿入されたメモリカード50に対して、データの書き込み処理及び読み出し処理を実行する。メモリカード50は、フラッシュメモリ等を用いた任意の半導体メモリカードであり、例えば汎用のマイクロSDカードである。
【0027】
図2,3は、診断装置1の外観を示す斜視図である。この例では、診断装置1の側面にメモリカードスロット17が配置されている。メモリカードスロット17内にメモリカード50を差し込んだ状態(
図3)からメモリカード50をさらに押し込むことによって、メモリカード50がメモリカードスロット17内に完全に収容される。耐熱性かつ防水性を有するカバー(図略)によってメモリカードスロット17の露出面(カード挿入口)が覆われることにより、メモリカード50が保護される。
【0028】
図1を参照して、制御部11は、CPU等を用いて構成されている。制御部11は、当該CPUが所定のプログラムを実行することによって実現される機能として、診断部31を有している。診断部31は、測定部12から入力された測定データ(温度データ及び振動データ)に基づいて各スチームトラップの状態を診断し、その診断の結果を示す診断データ91を出力する。例えば、診断部31は、測定部12から入力された温度データと予め設定された所定の温度しきい値とを比較し、また、測定部12から入力された振動データと予め設定された所定の振動しきい値とを比較する。診断部31は、これら二つの比較結果の組合せに応じて、各スチームトラップが正常であるか異常(蒸気漏出、ドレン排出不良、又は閉塞)であるかを診断する。なお、温度しきい値及び振動しきい値は、診断部31がスチームトラップの診断を行う際に使用する診断パラメータである。診断パラメータは、スチームトラップの種別毎に最適な値を設定及び更新することができる。
【0029】
制御部11は、各スチームトラップの診断データ91を、記憶部15に記憶するとともにメモリカードコントローラ16に入力する。メモリカードコントローラ16は、入力された診断データ91を、メモリカードスロット17に挿入されているメモリカード50に書き込む。
【0030】
データ処理装置2は、制御部41、メモリカードコントローラ42、メモリカードスロット43、操作部44、表示部45、記憶部46、及び通信部47を有している。
【0031】
メモリカードコントローラ42は、メモリカードスロット43に挿入されたメモリカード50に対して、データの書き込み処理及び読み出し処理を実行する。
【0032】
点検対象であるスチームトラップが設置されているプラント等の施設によっては、安全性確保の理由から、発火可能性のあるバッテリを用いた機器の持ち込みが禁止され、又は、電波干渉による誤動作防止等の理由から、無線通信機器の持ち込みが禁止されている場合がある。診断装置1は、発火可能性のない乾電池を電源として使用しており、また、無線通信機能を有していない(又は搭載されている無線通信機能をオフに設定できる)ため、作業者は診断装置1をそのような施設内に持ち込むことができる。
【0033】
一方、データ処理装置2は、発火可能性のあるリチウムイオンバッテリ等を電源として使用しているため、作業者はデータ処理装置2をそのような施設内に持ち込むことができない。この場合、作業者は、営業車又は現場事務所等の待機場所にデータ処理装置2を保管し、診断装置1のみを携帯して各スチームトラップを順に点検する。この場合、各スチームトラップの診断データ91はメモリカード50内に保存される。作業者は、待機場所に戻った後、診断装置1のメモリカードスロット17からメモリカード50を取り出し、そのメモリカード50をデータ処理装置2のメモリカードスロット43に挿入する。メモリカードコントローラ42は、メモリカードスロット43に挿入されたメモリカード50から、各スチームトラップの診断データ91を読み出す。
【0034】
操作部44は、作業者が各種の情報を入力するためのキーボード又はマウス等によって構成されている。表示部45は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等を用いて構成されている。但し、タッチパネル式ディスプレイを使用することにより、操作部44と表示部45とが一体として構成されても良い。
【0035】
記憶部46は、HDD、SSD、又はフラッシュメモリ等の書き換え可能な任意の記憶装置を用いて構成されている。
【0036】
通信部47は、IP等の任意の通信方式に対応した通信機器を用いて構成されている。
【0037】
制御部41は、CPU等を用いて構成されている。制御部41は、当該CPUが所定のプログラムを実行することによって実現される機能として、取得部61を有している。
【0038】
取得部61は、メモリカードコントローラ42がメモリカード50から読み出した複数のスチームトラップの診断データ91を、メモリカードコントローラ42から取得する。取得部52は、取得した診断データ91を、記憶部46に記憶する。また、制御部41は、記憶部46に記憶された複数のスチームトラップの診断データ91を通信部47に入力し、通信部47は、通信ネットワーク4を介してサーバ装置3に、複数のスチームトラップの診断データ91を一括して送信する。
【0039】
サーバ装置3は、制御部71、通信部72、及び記憶部73を有している。
【0040】
通信部72は、IP等の任意の通信方式に対応した通信機器を用いて構成されており、通信ネットワーク4を介してデータ処理装置2の通信部47と相互に通信可能である。
【0041】
また、サーバ装置3へのアクセス権を有する任意の通信装置(例えばデータ処理装置2と同種の他のデータ処理装置)は、通信ネットワーク4を介してサーバ装置3にアクセス可能である。大規模なプラントでは数千個から数万個のスチームトラップが設置されている場合もあり、この場合には複数の作業者が手分けをして全スチームトラップの点検を行う。これら複数の作業者の各々が、診断装置1及びデータ処理装置2を保有している。各作業者が診断装置1からメモリカード50経由でデータ処理装置2に診断データ91を送信し、各データ処理装置2が通信ネットワーク4を介してサーバ装置3にアクセスすることにより、各診断装置1による診断データ91がサーバ装置3に集約され、サーバ装置3によって複数の診断データ91が統合及び一元管理される。また、各データ処理装置2が通信ネットワーク4を介してサーバ装置3にアクセスすることにより、サーバ装置3が一元管理している複数の診断データ91及び解析データ92を、各作業者が各データ処理装置2によって閲覧等することが可能となる。
【0042】
制御部71は、CPU等を用いて構成されている。制御部71は、当該CPUが所定のプログラムを実行することによって実現される機能として、取得部81、解析部82、及び設定部83を有している。
【0043】
取得部81は、通信部72がデータ処理装置2から受信した複数のスチームトラップの診断データ91を、通信部72から取得する。取得部81は、取得した診断データ91を、記憶部73に記憶する。解析部82及び設定部83の処理内容については後述する。
【0044】
記憶部73は、HDD、SSD、又はフラッシュメモリ等の書き換え可能な任意の記憶装置を用いて構成されている。記憶部73は、診断データ91及び解析データ92を記憶している。
【0045】
<点検作業>
図4は、スチームトラップの点検作業に関して、スチームトラップ管理システム100における処理の流れを示すシーケンス図である。
【0046】
定期点検の作業者は、診断装置1を携帯してプラント内を移動することにより、診断装置1によって各スチームトラップを順に点検する。作業者は、診断装置1の探針を測定対象であるスチームトラップに押し当てることにより、当該スチームトラップの温度及び振動強度を測定する(ステップS1)。これにより、測定部12から制御部11に測定データ(温度データ及び振動データ)が入力され、診断部31は、測定部12から入力された測定データに基づいて、測定対象であるスチームトラップの状態を診断する(ステップS2)。
【0047】
制御部11は、診断部31による診断の結果を示す診断データ91を、表示部14に入力する。これにより、測定対象であるスチームトラップに関する診断結果が、表示部14に表示される。
【0048】
また、制御部11は、診断データ91を記憶部15に記憶する。さらに、制御部11は、診断データ91をメモリカードコントローラ16に入力する。メモリカードコントローラ16は、入力された診断データ91を、メモリカードスロット17に挿入されているメモリカード50に書き込む(ステップS3)。作業者がプラント内を移動しながら診断装置1によって各スチームトラップを順に点検することにより、測定対象である各スチームトラップに関してステップS1~S3の処理が繰り返し実行される。
【0049】
作業者は、全てのスチームトラップの点検が完了すると、データ処理装置2を保管している待機場所に戻る。その後、作業者は、診断装置1のメモリカードスロット17からメモリカード50を取り出し、そのメモリカード50をデータ処理装置2のメモリカードスロット43に挿入する。メモリカードコントローラ42は、メモリカードスロット43に挿入されたメモリカード50から、複数のスチームトラップの診断データ91を読み出す(ステップS4)。
【0050】
取得部61は、メモリカードコントローラ42がメモリカード50から読み出した複数のスチームトラップの診断データ91を、メモリカードコントローラ42から取得する。取得部61は、取得した診断データ91を、記憶部46に記憶する。また、制御部41は、記憶部46に記憶された複数のスチームトラップの診断データ91を、通信部47に入力する。通信部47は、通信ネットワーク4を介してサーバ装置3に、複数のスチームトラップの診断データ91を一括して送信する(ステップS5)。
【0051】
サーバ装置3の通信部72は、データ処理装置2の通信部47から送信された、複数のスチームトラップの診断データ91を受信する。取得部81は、通信部72がデータ処理装置2から受信した複数のスチームトラップの診断データ91を、通信部72から取得する。取得部81は、取得した診断データ91を記憶部73に記憶する(ステップS6)。定期点検の度に同様の処理が実行されることにより、過去に実施された定期点検における診断データ91が記憶部73に蓄積され、サーバ装置3によって一元的に管理されることとなる。
【0052】
解析部82は、記憶部73に蓄積された診断データ91に基づいて種々の解析処理を実行し(ステップS7)、その解析処理によって得られた解析データ92を記憶部73に記憶する(ステップS8)。例えば、解析部82は、管理されている全てのスチームトラップの中から、診断結果が異常(蒸気漏出、ドレン排出不良、又は閉塞)であるスチームトラップをリストアップすることにより、不良トラップリストを作成する。また、解析部82は、管理されているスチームトラップの総数に対する、診断結果が異常であるスチームトラップの総数の割合として、不良率を算出する。また、解析部82は、蒸気漏出が発生しているスチームトラップに関して各々の蒸気漏出量を合計することにより、総漏出量及びそれによる損失額を算出する。また、解析部82は、数年分又はそれ以上の長期間の診断データ91が記憶部73に蓄積されている場合には、これらの解析結果の時系列の推移を集計し、その集計の結果を時系列データとして表又はグラフの形式で出力する。これにより、プラントの管理者等は、スチームトラップの経年劣化の進行状況等を把握することが可能となる。
【0053】
<診断パラメータの更新作業>
上記の通り、診断装置1の診断部31がスチームトラップの診断を行う際に使用する診断パラメータ(温度しきい値及び振動しきい値)は、スチームトラップの種別毎に最適な値を設定及び更新することができる。
【0054】
図5は、診断パラメータの更新作業に関して、スチームトラップ管理システム100における処理の流れを示すシーケンス図である。サーバ装置3の設定部83は、スチームトラップの種別毎に最適な値の診断パラメータを設定する(ステップS11)。設定部83は、設定した診断パラメータを通信部72に入力する。
【0055】
通信部72(診断パラメータ送信部)は、入力された診断パラメータを、通信ネットワーク4を介してデータ処理装置2に送信する(ステップS12)。
【0056】
データ処理装置2の通信部47(診断パラメータ受信部)は、通信部72が送信した診断パラメータを受信する。制御部41は、通信部47が受信した診断パラメータを記憶部46に記憶する。
【0057】
メモリカードスロット43にメモリカード50が挿入されると、制御部41は、記憶部46から診断パラメータを読み出し、その診断パラメータをメモリカードコントローラ42に入力する。
【0058】
メモリカードコントローラ42は、入力された診断パラメータを、メモリカードスロット43に挿入されているメモリカード50に書き込む(ステップS13)。
【0059】
作業者は、データ処理装置2のメモリカードスロット43からメモリカード50を取り出し、そのメモリカード50を診断装置1のメモリカードスロット17に挿入する。メモリカードスロット17にメモリカード50が挿入されると、メモリカードコントローラ16は、メモリカード50から診断パラメータを読み出す(ステップS14)。制御部11は、メモリカードコントローラ16から診断パラメータを取得し、診断部31が保持している既存の診断パラメータを、メモリカードコントローラ16から取得した新たな診断パラメータによって更新する(ステップS15)。
【0060】
<まとめ>
本実施の形態に係るスチームトラップ管理システム100によれば、診断部31は、測定部12が出力した測定データに基づいて各スチームトラップの状態を診断し、メモリカードコントローラ16(第1のコントローラ)は、診断部31が出力した診断データ91を、メモリカードスロット17(第1のスロット)に挿入されたメモリカード50(記録媒体)に書き込む。作業者がメモリカードスロット17からメモリカード50を取り出し、そのメモリカード50をデータ処理装置2のメモリカードスロット43(第2のスロット)に挿入すると、メモリカードコントローラ42(第2のコントローラ)はメモリカード50から診断データ91を読み出し、通信部47(診断データ送信部)は当該診断データ91をサーバ装置3に送信する。従って、スチームトラップが設置されている施設内にデータ処理装置2を持ち込めない場合であっても、作業者が施設内に診断装置1のみを持ち込むことによって診断装置1が各スチームトラップの診断を実施し、データ処理装置2は、メモリカード50に蓄積された診断データ91を施設外で診断装置1から取得してサーバ装置3に送信することができる。その結果、本実施の形態に係るスチームトラップ管理システム100によれば、発火可能性のあるバッテリを用いた機器の持ち込み、又は、無線通信機器の持ち込みが禁止されている施設内に設置されているスチームトラップを対象とする点検を、適切に実施することが可能となる。
【0061】
また、本実施の形態に係るスチームトラップ管理システム100によれば、サーバ装置3が設定した診断パラメータを、データ処理装置2からメモリカード50経由で診断装置1に送信することができる。これにより、診断装置1において診断パラメータを更新することが可能となる。
【0062】
また、本実施の形態に係るスチームトラップ管理システム100によれば、マイクロSDカード等の汎用のメモリカード50(半導体メモリカード)を用いた簡易な運用によって、診断装置1とデータ処理装置2との間で診断データ91等の授受を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0063】
1 診断装置
2 データ処理装置
3 サーバ装置
12 測定部
16,42 メモリカードコントローラ
17,43 メモリカードスロット
31 診断部
47,72 通信部
61 取得部
83 設定部
91 診断データ
100 スチームトラップ管理システム