(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096790
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】熱間圧延鋼帯の蛇行制御方法、蛇行制御装置及び熱間圧延設備
(51)【国際特許分類】
B21B 37/68 20060101AFI20220623BHJP
B21B 37/00 20060101ALI20220623BHJP
B21B 37/58 20060101ALI20220623BHJP
B21B 38/08 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
B21B37/68 Z
B21B37/00
B21B37/58 B
B21B38/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020209974
(22)【出願日】2020-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】小宮 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】桐野 嵩史
【テーマコード(参考)】
4E124
【Fターム(参考)】
4E124AA06
4E124BB18
4E124CC01
4E124CC02
4E124EE01
4E124EE14
4E124GG01
(57)【要約】
【課題】「センサ方式蛇行制御」における蛇行制御目標値を適切な蛇行量として制御量を大きくし、適切な蛇行制御を行うことができる熱間圧延鋼帯の蛇行制御方法、蛇行制御装置及び熱間圧延設備を提供する。
【解決手段】熱間圧延鋼帯の蛇行制御方法は、蛇行量測定ステップ(ステップS1)と、レベリング制御演算ステップ(ステップS2)とを含む。レベリング制御演算ステップ(ステップS2)では、走行する鋼帯10の尾端部10aが圧延機Fi-1を抜けてから蛇行量測定装置5を抜けるまでの制御区間Aにおいて、制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロール開度差Siを、蛇行制御目標値を鋼帯10の尾端部10aがi-2番目以前の圧延機Fi-2、Fi-3、・・・、F1のうちのいずれかを抜けたときの蛇行量とした(1)式により演算する。
S
i=α
AC(δ-δ
i-2、δ
i-3、・・・、δ
1のうちのいずれか)+S
i-1 …(1)
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作側及び駆動側の圧下量を調整するレベリング装置をそれぞれが有するn(n≧3)台の圧延機を備えた仕上圧延設備で圧延される熱間圧延鋼帯の蛇行を制御する熱間圧延鋼帯の蛇行制御方法であって、
最上流に設置されている圧延機から数えてi(3≦i≦n、iは特定の数)番目の制御対象の圧延機Fiとi-1番目の圧延機Fi-1との間に設置された蛇行量測定装置により、走行する熱間圧延鋼帯の蛇行量を測定する蛇行量測定ステップと、
レベリング制御演算装置により、走行する前記熱間圧延鋼帯の尾端部が前記i-1番目の圧延機Fi-1を抜けてから前記蛇行量測定装置を抜けるまでの制御区間Aにおいて、前記蛇行量測定ステップで測定された前記熱間圧延鋼帯の蛇行量に基づいて、i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差Siを、蛇行制御目標値を前記熱間圧延鋼帯の尾端部がi-2番目以前の圧延機Fi-2、Fi-3、・・・、F1のうちのいずれかを抜けたときの蛇行量とした(1)式により演算し、演算されたロール開度差をi番目の制御対象の圧延機Fiに設けられたレベリング装置に送出するレベリング制御演算ステップとを含むことを特徴とする熱間圧延鋼帯の蛇行制御方法。
Si=αAC(δ-δi-2、δi-3、・・・、δ1のうちのいずれか)+Si-1 …(1)
ここで、Si:i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロール開度差、Si-1:鋼帯の尾端部がi-1番目の圧延機Fi-1を抜けたときの、i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロール開度差、αA:制御区間Aにおける、蛇行量測定装置によって測定された蛇行量に対する制御ゲイン、δi-2、δi-3、・・・、δ1:鋼帯の尾端部がi-2番目以前の圧延機Fi-2、Fi-3、・・・、F1を抜けたときの、蛇行量測定装置によって測定された蛇行量、δ:制御区間Aにおける、蛇行量測定装置によって測定された蛇行量、C:蛇行量に対するレベリング量の変化量である。
【請求項2】
前記i番目の制御対象の圧延機Fiに設けられた荷重検出器により検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から操作側及び駆動側の差荷重を求める差荷重算出ステップを含み、
前記レベリング制御演算ステップでは、走行する前記熱間圧延鋼帯の尾端部が前記i-1番目の圧延機Fi-1を抜けてから前記蛇行量測定装置を抜けるまでの制御区間Aにおいては、前記i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロール開度差Siを前記(1)式により演算することに代えて、前記差荷重算出ステップで求められた操作側及び駆動側の差荷重と、前記蛇行量測定ステップで測定された前記熱間圧延鋼帯の蛇行量とに基づいて、i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差Siを、制御目標値を前記熱間圧延鋼帯の尾端部がi-2番目以前の圧延機Fi-2、Fi-3、・・・、F1のうちのいずれかを抜けたときの蛇行量及び差荷重制御目標値を前記熱間圧延鋼帯の尾端部がi-1番目の圧延機Fi-1を抜けたときの差荷重とした(3)式により演算し、演算されたロール開度差をi番目の制御対象の圧延機Fiに設けられたレベリング装置に送出するレベリング制御演算ステップとを含むことを特徴とする請求項1に記載の熱間圧延鋼帯の蛇行制御方法。
Si=αAC(δ-δi-2、δi-3、・・・、δ1のうちのいずれか)+βAD(ΔP-ΔPi-1)+Si-1 …(3)
ここで、Si:i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロール開度差、Si-1:鋼帯の尾端部がi-1番目の圧延機Fi-1を抜けたときの、i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロール開度差、αA:制御区間Aにおける、蛇行量測定装置によって測定された蛇行量に対する制御ゲイン、βA:制御区間Aにおける、i番目の制御対象の圧延機Fiに設けられた荷重検出器から検出された差荷重に対する制御ゲイン、δi-2、δi-3、・・・、δ1:鋼帯の尾端部がi-2番目以前の圧延機Fi-2、Fi-3、・・・、F1を抜けたときの、蛇行量測定装置によって測定された蛇行量、ΔPi-1:鋼帯の尾端部がi-1番目の圧延機Fi-1を抜けたときの、i番目の制御対象の圧延機Fiに設けられた荷重検出器から検出された差荷重、δ:制御区間Aにおける、蛇行量測定装置によって測定された蛇行量、ΔP:制御区間Aにおける、i番目の制御対象の圧延機Fiに設けられた荷重検出器から検出された差荷重、C:蛇行量に対するレベリング量の変化量、D:ロール径、ロール長、ロール本数、圧延材の幅などで決まる定数である。
【請求項3】
前記レベリング制御演算ステップでは、走行する前記熱間圧延鋼帯の尾端部が前記蛇行量測定装置を抜けてからi番目の制御対象の圧延機Fiを抜けるまでの制御区間Bにおいて、前記差荷重算出ステップで求められた操作側及び駆動側の差荷重に基づいて、前記i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロール開度差Siを(4)式により演算し、演算されたロール開度差をi番目の制御対象の圧延機Fiに設けられたレベリング装置に送出することを特徴とする請求項2に記載の熱間圧延鋼帯の蛇行制御方法。
Si=βBD(ΔP-ΔPi-1)+SB …(4)
ここで、Si:i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロール開度差、SB:鋼帯の尾端部が蛇行量測定装置を抜けたときの、i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロール開度差、βB:制御区間Bにおける、i番目の制御対象の圧延機Fiに設けられた荷重検出器から検出された差荷重に対する制御ゲイン、ΔPi-1:鋼帯の尾端部がi-1番目の圧延機Fi-1を抜けたときの、i番目の制御対象の圧延機Fiに設けられた荷重検出器から検出された差荷重、ΔP:制御区間Bにおける、i番目の制御対象の圧延機Fiに設けられた荷重検出器から検出された差荷重、D:ロール径、ロール長、ロール本数、圧延材の幅などで決まる定数である。
【請求項4】
操作側及び駆動側の圧下量を調整するレベリング装置をそれぞれが有するn(n≧3)台の圧延機を備えた仕上圧延設備で圧延される熱間圧延鋼帯の蛇行を制御する熱間圧延鋼帯の蛇行制御装置であって、
最上流に設置されている圧延機から数えてi(3≦i≦n、iは特定の数)番目の制御対象の圧延機Fiとi-1番目の圧延機Fi-1との間に設置された、走行する熱間圧延鋼帯の蛇行量を測定する蛇行量測定装置と、
走行する前記熱間圧延鋼帯の尾端部が前記i-1番目の圧延機Fi-1を抜けてから前記蛇行量測定装置を抜けるまでの制御区間Aにおいて、前記蛇行量測定装置で測定された前記熱間圧延鋼帯の蛇行量に基づいて、i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差Siを、蛇行制御目標値を前記熱間圧延鋼帯の尾端部がi-2番目以前の圧延機Fi-2、Fi-3、・・・、F1のうちのいずれかを抜けたときの蛇行量とした(1)式により演算し、演算されたロール開度差をi番目の制御対象の圧延機Fiに設けられたレベリング装置に送出するレベリング制御演算装置とを備えることを特徴とする熱間圧延鋼帯の蛇行制御装置。
Si=αAC(δ-δi-2、δi-3、・・・、δ1のうちのいずれか)+Si-1 …(1)
ここで、Si:i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロール開度差、Si-1:鋼帯の尾端部がi-1番目の圧延機Fi-1を抜けたときの、i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロール開度差、αA:制御区間Aにおける、蛇行量測定装置によって測定された蛇行量に対する制御ゲイン、δi-2、δi-3、・・・、δ1:鋼帯の尾端部がi-2番目以前の圧延機Fi-2、Fi-3、・・・、F1を抜けたときの、蛇行量測定装置によって測定された蛇行量、δ:制御区間Aにおける、蛇行量測定装置によって測定された蛇行量、C:蛇行量に対するレベリング量の変化量である。
【請求項5】
前記n台の圧延機の各々は、操作側及び駆動側の圧延荷重を検出する荷重検出器を備え、
前記レベリング制御演算装置は、走行する前記熱間圧延鋼帯の尾端部が前記i-1番目の圧延機Fi-1を抜けてから前記蛇行量測定装置を抜けるまでの制御区間Aにおいては、前記i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロール開度差Siを前記(1)式により演算することに代えて、前記荷重検出器で検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求まる操作側及び駆動側の差荷重と、前記蛇行量測定装置で測定された前記熱間圧延鋼帯の蛇行量とに基づいて、i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差Siを、蛇行制御目標値を前記熱間圧延鋼帯の尾端部がi-2番目以前の圧延機Fi-2、Fi-3、・・・、F1のうちのいずれかを抜けたときの蛇行量及び差荷重制御目標値を前記熱間圧延鋼帯の尾端部がi-1番目の圧延機Fi-1を抜けたときの差荷重とした(3)式により演算し、演算されたロール開度差をi番目の制御対象の圧延機Fiに設けられたレベリング装置に送出することを特徴とする請求項4に記載の熱間圧延鋼帯の蛇行制御装置。
Si=αAC(δ-δi-2、δi-3、・・・、δ1のうちのいずれか)+βAD(ΔP-ΔPi-1)+Si-1 …(3)
ここで、Si:i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロール開度差、Si-1:鋼帯の尾端部がi-1番目の圧延機Fi-1を抜けたときの、i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロール開度差、αA:制御区間Aにおける、蛇行量測定装置によって測定された蛇行量に対する制御ゲイン、βA:制御区間Aにおける、i番目の制御対象の圧延機Fiに設けられた荷重検出器から検出された差荷重に対する制御ゲイン、δi-2、δi-3、・・・、δ1:鋼帯の尾端部がi-2番目以前の圧延機Fi-2、Fi-3、・・・、F1を抜けたときの、蛇行量測定装置によって測定された蛇行量、ΔPi-1:鋼帯の尾端部がi-1番目の圧延機Fi-1を抜けたときの、i番目の制御対象の圧延機に設けられた荷重検出器から検出された差荷重、δ:制御区間Aにおける、蛇行量測定装置によって測定された蛇行量、ΔP:制御区間Aにおける、i番目の制御対象の圧延機Fiに設けられた荷重検出器から検出された差荷重、C:蛇行量に対するレベリング量の変化量、D:ロール径、ロール長、ロール本数、圧延材の幅などで決まる定数である。
【請求項6】
前記レベリング制御演算装置は、走行する前記熱間圧延鋼帯の尾端部が前記蛇行量測定装置を抜けてからi番目の制御対象の圧延機Fiを抜けるまでの制御区間Bにおいて、前記荷重検出器で検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求められた差荷重に基づいて、前記i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロール開度差Siを(4)式により演算し、演算されたロール開度差をi番目の制御対象の圧延機Fiに設けられたレベリング装置に送出することを特徴とする請求項5に記載の熱間圧延鋼帯の蛇行制御装置。
Si=βBD(ΔP-ΔPi-1)+SB …(4)
ここで、Si:i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロール開度差、SB:鋼帯の尾端部が蛇行量測定装置を抜けたときの、i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロール開度差、βB:制御区間Bにおける、i番目の制御対象の圧延機Fiに設けられた荷重検出器から検出された差荷重に対する制御ゲイン、ΔPi-1:鋼帯の尾端部がi-1番目の圧延機Fi-1を抜けたときの、i番目の制御対象の圧延機Fiに設けられた荷重検出器から検出された差荷重、ΔP:制御区間Bにおける、i番目の制御対象の圧延機Fiに設けられた荷重検出器から検出された差荷重、D:ロール径、ロール長、ロール本数、圧延材の幅などで決まる定数である。
【請求項7】
請求項4乃至6のうちいずれか一項に記載の熱間圧延鋼帯の蛇行制御装置を備えることを特徴とする熱間圧延設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間圧延鋼帯の蛇行制御方法、蛇行制御装置及び熱間圧延設備に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、熱間圧延鋼帯の製造ライン(ホットストリップミル)では、加熱されたスラブが粗圧延工程や仕上圧延工程などの製造工程を経て、所定の板幅及び板厚の鋼板が製造される。
仕上圧延工程では、
図8に示すように、複数台(例えば7台)の圧延機F1~F7からなる仕上圧延設備1で熱間圧延鋼帯(以下、単に鋼帯という)10が同時に仕上圧延されるタンデム圧延を行い、所定の板厚の鋼板を製造する。
【0003】
タンデム圧延では、
図9に示すように、鋼帯10の幅方向の板厚分布、鋼帯10の幅方向の温度差、及び鋼帯10の幅方向の曲がりによって、鋼帯10が幅方向に移動する蛇行と呼ばれる現象が生じることがある。各圧延機F1~F7の幅方向(鋼帯10の幅方向と同じ方向)の中心CL1から鋼帯10の幅方向の中心CL2までの距離を蛇行量δと呼ぶ。ここでは、鋼帯10が、各圧延機F1~F7の操作側に蛇行している場合を「+」とし、各圧延機F1~F7の駆動側に蛇行している場合を「-」とする。各圧延機F1~F7の駆動側とは、搬送ロール(図示せず)のモータ(図示せず)に接続されている側を表し、各圧延機F1~F7の操作側とは、駆動側と幅方向の反対側を表す。なお、
図8及び
図9における矢印は、圧延時における鋼帯10の進行方向を示している。
【0004】
ここで、鋼帯10の尾端部10aの蛇行が大きくなった場合、鋼帯10を幅方向に拘束するためのガイドと接触して、鋼帯10が折れ込み、その状態で圧延されることで絞りと呼ばれるトラブルが生じることがある。絞りが発生すると、鋼帯10を圧延する各圧延機F1~F7のワークロール1a(
図8参照)に疵が入りロール交換が必要になる。ロール交換のために一時的に操業を停止する必要があり、絞りが頻繁に発生する場合には、大きなダウンタイムとなる。そのため、鋼帯10の蛇行を低減し、絞りの発生を抑制することは熱間圧延鋼帯のタンデム圧延では重要な課題となっている。
【0005】
鋼帯の蛇行を防止する方法の一つとして、圧延機のレベリング量を変更する方法がある。レベリング量とは、圧延機の操作側と駆動側のロールギャップの開度差のことである。ここでは、操作側のロールギャップの開度が大きい場合を「+」、駆動側のロールギャップの開度が大きい場合を「-」とする。
【0006】
例えば、圧延中に圧延機のレベリング量を+側に変更すると、操作側より駆動側の圧下量が相対的に大きくなるため、操作側よりも駆動側の鋼帯が長くなり、圧延機出側では鋼帯は操作側に蛇行する。逆に、圧延中に圧延機のレベリング量を-側に変更すると、駆動側より操作側の圧下量が相対的に大きくなるため、駆動側よりも操作側の鋼帯が長くなり、圧延機出側では鋼帯は駆動側に蛇行する。
【0007】
従来にあっては、このレベリング量を変更することにより鋼帯の蛇行を防止するものとして、例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3に示すものが提案されている。
特許文献1に示す熱間圧延における尾端蛇行制御方法は、いわゆる「差荷重方式蛇行制御」を実施するものであり、各スタンドの圧延機のオペサイドとドライブサイドとの差荷重に基づき、蛇行制御を行う。そして、前スタンドの蛇行制御量を当該スタンドの蛇行制御量に一定比率で加算するフィードフォワード制御を行うものである。
【0008】
また、レベリング量を制御する方式として、もう一つは「センサ方式蛇行制御」が知られており、この「センサ方式蛇行制御」は、制御対象の圧延機のレベリング量を、制御対象の圧延機とその圧延機の一つ前の圧延機との間に設置された蛇行量測定装置により測定された鋼板の蛇行量に比例するように変更するものである。
【0009】
また、特許文献2に示す熱間仕上圧延における鋼板尾端蛇行制御方法は、「センサ方式蛇行制御」と「差荷重方式蛇行制御」とを組み合わるもので、制御対象の圧延スタンドとその上流(前)の圧延スタンドとの間に鋼板の水平方向の回転速度を検出する回転速度検出センサを設け、鋼板の尾端部が回転速度検出センサを通過した後は、制御対象の圧延スタンドのドライブサイドとワークサイドの差荷重を用いて蛇行制御を行うものである。
【0010】
また、特許文献3に示す被圧延材の蛇行制御方法は、圧延スタンドF5を被圧延材の尾端が通過すると、第1の制御ゲインよりも低い第2の制御ゲインでフィードバック制御を行って「センサ方式蛇行制御」を実施する。また、圧延スタンドF6を被圧延材の尾端が通過すると、第1の制御ゲインでフィードバック制御を行って「センサ方式蛇行制御」を実施すると共に、第3の制御ゲインよりも低い第4の制御ゲインでフィードバック制御を行って「差荷重方式蛇行制御」を実施する。更に、蛇行量検出センサを被圧延材の尾端が通過すると、「センサ方式蛇行制御」を終了すると共に、第3の制御ゲインでフィードバック制御を行って「差荷重方式蛇行制御」を実施する。また、圧延スタンドF7を被圧延材の尾端が通過すると、「差荷重方式蛇行制御」を終了するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010-247177号公報
【特許文献2】特開2018-157766号公報
【特許文献3】特開2013-212523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、前述した「センサ方式蛇行制御」(特許文献2や特許文献3における「差荷重方式蛇行制御」を併用するものも含む)は、制御対象の圧延機のレベリング量を、制御対象の圧延機とその圧延機の一つ前の圧延機との間に設置された蛇行量測定装置により測定された鋼板の蛇行量に比例するように変更するものである。この「センサ方式蛇行制御」による蛇行制御方法は、特許文献1における「差荷重方式蛇行制御」による蛇行制御方法に比べ、高応答な蛇行制御を行うことができる。
【0013】
そして、この「センサ方式蛇行制御」による蛇行制御方法においては、蛇行制御目標値を、走行する鋼板の尾端部が制御対象の圧延機の1つ上流側(前側)の圧延機を通過した時の鋼板の蛇行量とするのが一般的に行われる。
【0014】
しかしながら、蛇行制御目標値を、走行する鋼板の尾端部が制御対象の圧延機の1つ上流側(前側)の圧延機を通過した時の鋼板の蛇行量とすると、制御対象の圧延機の2つ以上上流側(前側)の圧延機で生じた蛇行量が反映されなくなり、当該蛇行制御における制御量が小さくなり、適切な蛇行制御を行えない場合があるという課題があった。
【0015】
従って、本発明はこの課題を解決するためになされたものであり、その目的は、「センサ方式蛇行制御」における蛇行制御目標値を適切な蛇行量として制御量を大きくし、適切な蛇行制御を行うことができる熱間圧延鋼帯の蛇行制御方法、蛇行制御装置及び熱間圧延設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る熱間圧延鋼帯の蛇行制御方法は、操作側及び駆動側の圧下量を調整するレベリング装置をそれぞれが有するn(n≧3)台の圧延機を備えた仕上圧延設備で圧延される熱間圧延鋼帯の蛇行を制御する熱間圧延鋼帯の蛇行制御方法であって、
最上流に設置されている圧延機から数えてi(3≦i≦n、iは特定の数)番目の制御対象の圧延機Fiとi-1番目の圧延機Fi-1との間に設置された蛇行量測定装置により、走行する熱間圧延鋼帯の蛇行量を測定する蛇行量測定ステップと、
レベリング制御演算装置により、走行する前記熱間圧延鋼帯の尾端部が前記i-1番目の圧延機Fi-1を抜けてから前記蛇行量測定装置を抜けるまでの制御区間Aにおいて、前記蛇行量測定ステップで測定された前記熱間圧延鋼帯の蛇行量に基づいて、i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差を、蛇行制御目標値を前記熱間圧延鋼帯の尾端部がi-2番目以前の圧延機Fi-2、Fi-3、・・・、F1のうちのいずれかを抜けたときの蛇行量とした(1)式により演算し、演算されたロール開度差をi番目の制御対象の圧延機Fiに設けられたレベリング装置に送出するレベリング制御演算ステップとを含むことを要旨とする。
【0017】
Si=αAC(δ-δi-2、δi-3、・・・、δ1のうちのいずれか)+Si-1 …(1)
ここで、Si:i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロール開度差、Si-1:鋼帯の尾端部がi-1番目の圧延機Fi-1を抜けたときの、i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロール開度差、αA:制御区間Aにおける、蛇行量測定装置によって測定された蛇行量に対する制御ゲイン、δi-2、δi-3、・・・、δ1:鋼帯の尾端部がi-2番目以前の圧延機Fi-2、Fi-3、・・・、F1を抜けたときの、蛇行量測定装置によって測定された蛇行量、δ:制御区間Aにおける、蛇行量測定装置によって測定された蛇行量、C:蛇行量に対するレベリング量の変化量である。
【0018】
また、本発明の別の態様に係る熱間圧延鋼帯の蛇行制御装置は、操作側及び駆動側の圧下量を調整するレベリング装置をそれぞれが有するn(n≧3)台の圧延機を備えた仕上圧延設備で圧延される熱間圧延鋼帯の蛇行を制御する熱間圧延鋼帯の蛇行制御装置であって、
最上流に設置されている圧延機から数えてi(3≦i≦n、iは特定の数)番目の制御対象の圧延機Fiとi-1番目の圧延機Fi-1との間に設置された、走行する熱間圧延鋼帯の蛇行量を測定する蛇行量測定装置と、
走行する前記熱間圧延鋼帯の尾端部が前記i-1番目の圧延機Fi-1を抜けてから前記蛇行量測定装置を抜けるまでの制御区間Aにおいて、前記蛇行量測定装置で測定された前記熱間圧延鋼帯の蛇行量に基づいて、i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差を、蛇行制御目標値を前記熱間圧延鋼帯の尾端部がi-2番目以前の圧延機Fi-2、Fi-3、・・・、F1のうちのいずれかを抜けたときの蛇行量とした(1)式により演算し、演算されたロール開度差をi番目の制御対象の圧延機Fiに設けられたレベリング装置に送出するレベリング制御演算装置とを備えることを要旨とする。
【0019】
Si=αAC(δ-δi-2、δi-3、・・・、δ1のうちのいずれか)+Si-1 …(1)
ここで、Si:i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロール開度差、Si-1:鋼帯の尾端部がi-1番目の圧延機Fi-1を抜けたときの、i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロール開度差、αA:制御区間Aにおける、蛇行量測定装置によって測定された蛇行量に対する制御ゲイン、δi-2、δi-3、・・・、δ1:鋼帯の尾端部がi-2番目以前の圧延機Fi-2、Fi-3、・・・、F1を抜けたときの、蛇行量測定装置によって測定された蛇行量、δ:制御区間Aにおける、蛇行量測定装置によって測定された蛇行量、C:蛇行量に対するレベリング量の変化量である。
【0020】
また、本発明の別の態様に係る熱間圧延設備は、前述の熱間圧延鋼帯の蛇行制御装置を備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る熱間圧延鋼帯の蛇行制御方法、蛇行制御装置及び熱間圧延設備によれば、「センサ方式蛇行制御」における蛇行制御目標値を適切な蛇行量として制御量を大きくし、適切な蛇行制御を行うことができる熱間圧延鋼帯の蛇行制御方法、蛇行制御装置及び熱間圧延設備を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る蛇行制御装置を備えた仕上圧延設備の概略構成図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る蛇行制御装置による処理の流れを示すフローチャートである。
【
図3】
図1に示す仕上圧延設備における制御対象の圧延機Fiの近傍及び鋼帯を平面側から見た模式図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る蛇行制御装置を備えた仕上圧延設備の概略構成図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る蛇行制御装置による処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】比較例による鋼板尾端部の位置と鋼帯の蛇行量及び制御量との関係を示すグラフである。
【
図7】本発明例による鋼板尾端部の位置と鋼帯の蛇行量及び制御量との関係を示すグラフである。
【
図9】鋼帯の蛇行現象を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。また、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
(第1実施形態)
図1には、本発明の第1実施形態に係る蛇行制御装置を備えた仕上圧延設備の概略構成が示されている。
【0024】
熱間圧延鋼帯の熱間圧延設備では、加熱炉(図示せず)で加熱されたスラブが粗圧延工程、仕上圧延工程及び冷却工程を経て、所定の板幅及び板厚の鋼板が製造され、巻き取られる。つまり、熱間圧延設備は、加熱炉と、粗圧延設備(図示せず)と、仕上圧延設備1(
図1参照)と、冷却設備(図示せず)と、巻取設備(図示せず)とを備えている。
仕上圧延工程では、
図1に示す仕上圧延設備1で熱間圧延鋼帯(以下、単に鋼帯という)10が同時に仕上圧延されるタンデム圧延が行われる。仕上圧延設備1は、鋼帯10を仕上圧延するn台(n≧3)の圧延機F1~Fnを備えている。各圧延機F1~Fnには、操作側及び駆動側の圧下量を調整するレベリング装置2と、操作側及び駆動側の圧延荷重を検出する荷重検出器3とが設けられている。
【0025】
各レベリング装置2は、各圧延機F1~Fnの操作側に取り付けられた圧下装置(図示せず)による圧下量と、各圧延機F1~Fnの駆動側に取り付けられた圧下装置(図示せず)による圧下量とを調整する。
また、荷重検出器3は、各圧延機F1~Fnの操作側と駆動側との双方に取り付けられて操作側及び駆動側のそれぞれの圧延荷重を検出する。
【0026】
また、仕上圧延設備1は、鋼帯10の蛇行を制御する蛇行制御装置4を備えている。蛇行制御装置4は、最上流に設置されている圧延機から数えてi(3≦i≦n、iは特定の数)番目の圧延機Fiを制御対象として鋼帯10の蛇行量を制御するものであり、走行する鋼帯10の尾端部10a(
図9参照)が制御対象の圧延機Fiよりも一つ上流側(前側)に設置されたFi-1番目の圧延機Fi-1を抜けてから後述の蛇行量測定装置5を抜けるまでの制御区間Aにおいて、「センサ方式蛇行制御」によって鋼帯10の蛇行を制御するものである。
【0027】
ここで、「センサ方式蛇行制御」は、制御対象の圧延機Fiのレベリング量(i番目の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差)を、蛇行量測定装置5で測定された蛇行量に比例するように変更するものである。鋼帯10の蛇行が操作側に生じていれば、操作側が閉まるように(「-」側に)レベリング量を変更し、鋼帯10の蛇行が駆動側に生じていれば、駆動側が閉まるように(「+」側に)レベリング量を変更する。
【0028】
そして、蛇行制御装置4は、最上流に設置されている圧延機F1から数えてi(3≦i≦n、iは特定の数)番目の圧延機Fiとi-1番目の圧延機Fi-1との間に設置された、走行する鋼帯10の蛇行量を測定する蛇行量測定装置5を備えている。蛇行量測定装置5は、ラインセンサカメラやエリアセンサカメラで構成され、例えば、鋼帯10の幅方向の輝度分布を測定しこの輝度分布から蛇行量を算出する。
【0029】
また、蛇行制御装置4は、制御区間Aにおいて、蛇行量測定装置5によって測定された鋼帯10の蛇行量に基づいて、i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差を、i番目の制御対象の圧延機における操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差を、蛇行制御目標値を鋼帯10の尾端部10aがi-2番目以前の圧延機Fi-2、Fi-3、・・・、F1のうちのいずれかを抜けたときの蛇行量とした(1)式により演算し、演算されたロール開度差をi番目の制御対象の圧延機Fiに設けられたレベリング装置2に送出するレベリング制御演算装置6を備えている。
【0030】
Si=αAC(δ-δi-2、δi-3、・・・、δ1のうちのいずれか)+Si-1 …(1)
ここで、Si:i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロール開度差、Si-1:鋼帯10の尾端部10aがi-1番目の圧延機Fi-1を抜けたときの、i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロール開度差、αA:制御区間Aにおける、蛇行量測定装置5によって測定された蛇行量に対する制御ゲイン、δi-2、δi-3、・・・、δ1:鋼帯10の尾端部10aがi-2番目以前の圧延機Fi-2、Fi-3、・・・、F1を抜けたときの、蛇行量測定装置5によって測定された蛇行量、δ:制御区間Aにおける、蛇行量測定装置によって測定された蛇行量、C:蛇行量に対するレベリング量の変化量である。
【0031】
なお、第1実施形態では、具体的には、蛇行制御目標値を鋼帯10の尾端部10aがi-2番目の圧延機Fi-2を抜けたときの蛇行量としてあり、前述の(1)式は、Si=αAC(δ-δi-2)+Si-1となる。
レベリング制御演算装置6は、演算処理機能を有するコンピュータシステムであり、ハードウェアに予め記憶された各種専用のコンピュータプログラムを実行することにより、レベリング制御演算機能(後に述べるステップS2)をソフトウェア上で実現できるようになっている。
【0032】
レベリング装置2は、レベリング制御演算装置6から送出されたロール開度差に基づいて、制御対象の圧延機Fiのロール開度差がレベリング制御演算装置6から送出されたロール開度差となるように、制御対象の圧延機Fiの操作側に取り付けられた圧下装置による圧下量と、圧延機Fiの駆動側に取り付けられた圧下装置による圧下量とを調整する。これにより、鋼帯10の蛇行量が抑制される。
【0033】
このように、第1実施形態に係る蛇行制御装置4にあっては、走行する鋼帯10の尾端部10aがi-1番目の圧延機Fi-1を抜けてから蛇行量測定装置5を抜けるまでの制御区間Aにおいて、蛇行量測定装置5によって測定された鋼帯10の蛇行量に基づいて、i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差を、蛇行制御目標値を鋼帯10の尾端部10aがi-2番目以前の圧延機Fi-2、Fi-3、・・・、F1のうちのいずれかを抜けたときの蛇行量とした前述の(1)式により演算し、演算されたロール開度差をi番目の制御対象の圧延機Fiに設けられたレベリング装置2に送出するレベリング制御演算装置6を備えている。
【0034】
これにより、「センサ方式蛇行制御」における蛇行制御目標値を適切な蛇行量として制御量を大きくし、適切な蛇行制御を行うことができる。
この理由について、
図3を参照して具体的に説明する。
図3は、
図1に示す仕上圧延設備1における制御対象の圧延機Fiの近傍及び鋼帯10を平面側から見た模式図である。
図3に示すように、鋼帯10は上流側から下流側に向けて圧延機Fi-2、圧延機Fi-1、制御対象の圧延機Fiの順に圧延されて走行する。そして、鋼帯10の尾端部10aは圧延機Fi-2、圧延機Fi-1、圧延機Fiの順に抜ける。この際に、鋼帯10の尾端部10aが圧延機Fi-2を抜けたときの蛇行量測定装置5で測定される蛇行量δ
i-2と、鋼帯10の尾端部10aが圧延機Fi-1を抜けたときの蛇行量測定装置5で測定される蛇行量δ
i-1とを比較すると、
図3に示すように、鋼帯10の尾端部10aが圧延機Fi-1を抜けたときの蛇行量δ
i-1の方が大きい。つまり、鋼帯10の尾端部10aが圧延機Fi-1を抜けたときの鋼帯10の中心箇所P1の各圧延機F1~Fnの幅方向(鋼帯10の幅方向と同じ方向)の中心CLからの距離は、鋼帯10の尾端部10aが圧延機Fi-2を抜けたときの鋼帯10の中心箇所P2の各圧延機F1~Fnの中心CLからの距離よりも大きい。鋼帯10の尾端部10aが圧延機Fi-2、圧延機Fi-1、圧延機Fiの順に通過する際に、鋼帯10の蛇行量が上流側から下流側に向けて徐々に大きくなるからである。鋼帯10の尾端部10aが圧延機F1、圧延機F2、・・・、圧延機Fi-2の順に通過する際も、鋼帯10の蛇行量は上流側から下流側に向けて徐々に大きくなる。
【0035】
この際に、制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差Siを、蛇行制御目標値を鋼帯10の尾端部10aがi-1番目の圧延機Fi-1を抜けたときの蛇行量とした下記(2)式により演算すると、その際の蛇行制御量は下記演算式の右辺第1項(αAC(δ-δi-1))と右辺第2項(Si-1)との和となる。この蛇行制御量は、第1実施形態におけるレベリング制御演算装置6による蛇行制御量(前述した(1)式における右辺第1項(αAC(δ-δi-2、δi-3、・・・、δ1のうちのいずれか)と右辺第2項(Si-1)との和よりも小さい。前述したように、δi-1は、δi-2、δi-3、・・・、δ1のうちのいずれかよりも大きいからである。
【0036】
Si=αAC(δ-δi-1)+Si-1・・・(2)
このように、制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差を、蛇行制御目標値を鋼帯10の尾端部10aがi-1番目の圧延機Fi-1を抜けたときの蛇行量として演算すると、鋼帯10の尾端部10aがi-2番目以前の圧延機Fi-2、Fi-3、・・・、F1のうちのいずれかを抜けたけたときからi-1番目の圧延機Fi-1を抜けるときまでの蛇行量の変化が反映されず、蛇行制御量が小さくなり、蛇行制御した後の鋼帯10の蛇行量が適切な値とならない。つまり、蛇行制御した後の鋼帯10の中心の圧延機F1~Fnの中心CLまでの距離が0に近づかない。
【0037】
これに対して、第1実施形態においては、制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差を、蛇行制御目標値を鋼帯10の尾端部10aがi-2番目以前の圧延機Fi-2、Fi-3、・・・、F1のうちのいずれかを抜けたときの蛇行量とした前述の(1)式により演算しており、鋼帯10の尾端部10aがi-2番目以前の圧延機Fi-2、Fi-3、・・・、F1のうちのいずれかを抜けたけたときからi-1番目の圧延機Fi-1を抜けるときまでの蛇行量の変化を反映し、蛇行制御量が大きくなり、蛇行制御した後の鋼帯10の蛇行量を適切な値とすることができる。蛇行制御した後の鋼帯10の中心の圧延機F1~Fnの中心CLまでの距離を0に近づけることができる。
【0038】
この理由から、第1実施形態に係る蛇行制御装置4によれば、「センサ方式蛇行制御」における蛇行制御目標値を適切な蛇行量として制御量を大きくし、適切な蛇行制御を行うことができる。
次に、第1実施形態に係る蛇行制御方法を示す蛇行制御装置4による処理の流れを
図2に示すフローチャートを参照して説明する。
【0039】
先ず、鋼帯10の仕上圧延が開始され、鋼帯10の先端部が制御対象の圧延機Fiを通過したら、ステップS1において、最上流に設置されている圧延機F1から数えてi(3≦i≦n、iは特定の数)番目の制御対象の圧延機Fiとi-1番目の圧延機Fi-1との間に設置された蛇行量測定装置5が走行する鋼帯10の蛇行量を測定する(蛇行量測定ステップ)。
【0040】
次いで、ステップS2に移行し、レベリング制御演算装置6は、走行する鋼帯10の尾端部10aがi-1番目の圧延機Fi-1を抜けてから蛇行量測定装置5を抜けるまでの制御区間Aにおいて、ステップS2(蛇行量測定ステップ)で測定された鋼帯10の蛇行量に基づいて、i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差Siを、蛇行制御目標値を前記熱間圧延鋼帯の尾端部がi-2番目以前の圧延機Fi-2、Fi-3、・・・、F1のうちのいずれかを抜けたときの蛇行量とした前述の(1)式により演算し、演算されたロール開度差をi番目の制御対象の圧延機Fiに設けられたレベリング装置2に送出する(レベリング制御演算ステップ)。
【0041】
なお、第1実施形態では、具体的には、蛇行制御目標値を鋼帯10の尾端部10aがi-2番目の圧延機Fi-2を抜けたときの蛇行量としてあり、前述の(1)式は、Si=αAC(δ-δi-2)+Si-1となる。
次いで、ステップS3に移行し、レベリング装置2は、レベリング制御演算装置6から送出されたロール開度差に基づいて、制御対象の圧延機Fiのロール開度差がレベリング制御演算装置6から送出されたロール開度差となるように、制御対象の圧延機Fiの操作側に取り付けられた圧下装置による圧下量と、圧延機Fiの駆動側に取り付けられた圧下装置による圧下量とを調整する(圧下量調整ステップ)。これにより、制御対象の圧延機Fiのレベリング量が変更され、鋼帯10の蛇行量が抑制される。
【0042】
これにより、蛇行制御装置4による処理が終了する。
このように、第1実施形態に係る蛇行制御方法によれば、走行する鋼帯10の尾端部10aがi-1番目の圧延機Fi-1を抜けてから蛇行量測定装置5を抜けるまでの制御区間Aにおいて、蛇行量測定装置5によって測定された鋼帯10の蛇行量に基づいて、i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差を、蛇行制御目標値を鋼帯10の尾端部10aがi-2番目以前の圧延機Fi-2、Fi-3、・・・、F1のうちのいずれかを抜けたときの蛇行量とした前述の(1)式により演算し、演算されたロール開度差をi番目の制御対象の圧延機Fiに設けられたレベリング装置2に送出するレベリング制御演算ステップを含んでいる。これにより、「センサ方式蛇行制御」における蛇行制御目標値を適切な蛇行量として制御量を大きくし、適切な蛇行制御を行うことができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る蛇行制御装置について
図4及び
図5を参照して説明する。
図4には、本発明の第2実施形態に係る蛇行制御装置を備えた仕上圧延設備の概略構成が示されている。
図5には、本発明の第2実施形態に係る蛇行制御装置による処理の流れを示すフローチャートが示されている。
【0043】
第2実施形態に係る蛇行制御装置4は、第1実施形態に係る蛇行制御装置4と基本構成は同様であるが、第1実施形態に係る蛇行制御装置4が、走行する鋼帯10の尾端部10aがi-1番目の圧延機Fi-1を抜けてから蛇行量測定装置5を抜けるまでの制御区間Aにおいて、「センサ方式蛇行制御」によって鋼帯10の蛇行を制御する。これに対して、第2実施形態に係る蛇行制御装置4は、制御区間Aにおいて、「センサ方式の蛇行制御」及び「差荷重方式の蛇行制御」を併用する点で相違している。
【0044】
ここで、「差荷重方式の蛇行制御」は、制御対象の圧延機Fiのレベリング量(圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差)を、圧延機Fiに設けられた荷重検出器3により検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から検出された操作側及び駆動側の差荷重に比例するように変更するものである。操作側の圧延荷重が駆動側の圧延荷重よりも大きい場合、差荷重は「+」、駆動側の圧延荷重が操作側の圧延荷重よりも大きい場合、差荷重は「-」とする。そして、鋼帯10に幅方向の板厚偏差、幅方向の温度差がない場合、鋼帯10が圧延機F1~Fnの中心を通板されていれば、差荷重は生じない。そして、鋼帯10の蛇行が操作側に生じたときに差荷重は「+」となり、鋼帯10の蛇行が駆動側に生じたときに差荷重は「-」となる。この「差荷重方式の蛇行制御」では、差荷重が「+」であれば操作側が閉まるようにレベリング量を変更し、差荷重が「-」であれば駆動側が閉まるようにレベリング量を変更する。
【0045】
蛇行制御装置4の蛇行量測定装置5は、最上流に設置されている圧延機F1から数えてi(3≦i≦n、iは特定の数)番目の制御対象の圧延機Fiとi-1番目の圧延機Fi-1との間に設置されて、走行する鋼帯10の蛇行量を測定する蛇行量測定装置5を備えている。蛇行量測定装置5は、ラインセンサカメラやエリアセンサカメラで構成され、例えば、鋼帯10の幅方向の輝度分布を測定しこの輝度分布から蛇行量を算出する。
【0046】
また、蛇行制御装置4は、走行する鋼帯10の尾端部10aがi-1番目の圧延機Fi-1を抜けてから蛇行量測定装置5を抜けるまでの制御区間Aにおいて、「センサ方式の蛇行制御」及び「差荷重方式の蛇行制御」を併用する。更に、鋼帯10の尾端部10aが蛇行量測定装置5を抜けてからi番目の制御対象の圧延機Fiを抜けるまでの制御区間Bにおいて、「差荷重方式の蛇行制御」によって鋼帯10の蛇行を制御する。
【0047】
このため、蛇行制御装置4のレベリング制御演算装置6は、前述の制御区間Aにおいて、荷重検出器3で検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求まる操作側及び駆動側の差荷重と、蛇行量測定装置5で測定された鋼帯10の蛇行量とに基づいて、i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差Siを、蛇行制御目標値を鋼帯10の尾端部10aがi-2番目以前の圧延機Fi-2、Fi-3、・・・、F1のうちのいずれかを抜けたときの蛇行量及び差荷重制御目標値を鋼帯10の尾端部10aがi-1番目の圧延機Fi-1を抜けたときの差荷重とした(3)式により演算し、演算されたロール開度差をi番目の制御対象の圧延機Fiに設けられたレベリング装置に送出する。
【0048】
Si=αAC(δ-δi-2、δi-3、・・・、δ1のうちのいずれか)+βAD(ΔP-ΔPi-1)+Si-1 …(3)
ここで、Si:i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロール開度差、Si-1:鋼帯の尾端部がi-1番目の圧延機Fi-1を抜けたときの、i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロール開度差、αA:制御区間Aにおける、蛇行量測定装置によって測定された蛇行量に対する制御ゲイン、βA:制御区間Aにおける、i番目の制御対象の圧延機Fiに設けられた荷重検出器から検出された差荷重に対する制御ゲイン、δi-2、δi-3、・・・、δ1:鋼帯の尾端部がi-2番目以前の圧延機Fi-2、Fi-3、・・・、F1を抜けたときの、蛇行量測定装置によって測定された蛇行量、ΔPi-1:鋼帯の尾端部がi-1番目の圧延機Fi-1を抜けたときの、i番目の制御対象の圧延機に設けられた荷重検出器から検出された差荷重、δ:制御区間Aにおける、蛇行量測定装置によって測定された蛇行量、ΔP:制御区間Aにおける、i番目の制御対象の圧延機Fiに設けられた荷重検出器から検出された差荷重、C:蛇行量に対するレベリング量の変化量、D:ロール径、ロール長、ロール本数、圧延材の幅などで決まる定数である。
【0049】
なお、第2実施形態では、具体的には、蛇行制御目標値を鋼帯10の尾端部10aがi-2番目の圧延機Fi-2を抜けたときの蛇行量としてあり、前述の(3)は、Si=αAC(δ-δi-2)+βAD(ΔP-ΔPi-1)+Si-1となる。
また、レベリング制御演算装置6は、前述の制御区間Bにおいて、荷重検出器3で検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求められた差荷重に基づいて、i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロール開度差Siを(4)式により演算し、演算されたロール開度差をi番目の制御対象の圧延機Fiに設けられたレベリング装置に送出する。
【0050】
Si=βBD(ΔP-ΔPi-1)+SB …(4)
ここで、Si:i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロール開度差、SB:鋼帯の尾端部が蛇行量測定装置を抜けたときの、i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロール開度差、βB:制御区間Bにおける、i番目の制御対象の圧延機Fiに設けられた荷重検出器から検出された差荷重に対する制御ゲイン、ΔPi-1:鋼帯の尾端部がi-1番目の圧延機Fi-1を抜けたときの、i番目の制御対象の圧延機Fiに設けられた荷重検出器から検出された差荷重、ΔP:制御区間Bにおける、i番目の制御対象の圧延機Fiに設けられた荷重検出器から検出された差荷重、D:ロール径、ロール長、ロール本数、圧延材の幅などで決まる定数である。
【0051】
レベリング制御演算装置6は、演算処理機能を有するコンピュータシステムであり、ハードウェアに予め記憶された各種専用のコンピュータプログラムを実行することにより、レベリング制御演算機能(後に述べるステップS13)をソフトウェア上で実現できるようになっている。
【0052】
レベリング装置2は、レベリング制御演算装置6から送出されたロール開度差に基づいて、制御対象の圧延機Fiのロール開度差がレベリング制御演算装置6から送出されたロール開度差となるように、制御対象の圧延機Fiの操作側に取り付けられた圧下装置による圧下量と、圧延機Fiの駆動側に取り付けられた圧下装置による圧下量とを調整する。これにより、鋼帯10の蛇行量が抑制される。
【0053】
このように、第2実施形態に係る蛇行制御装置4にあっては、走行する鋼帯10の尾端部10aがi-1番目の圧延機Fi-1を抜けてから蛇行量測定装置5を抜けるまでの制御区間Aにおいて、荷重検出器3で検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求まる操作側及び駆動側の差荷重と、蛇行量測定装置5で測定された鋼帯10の蛇行量とに基づいて、i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差Siを、蛇行制御目標値を鋼帯10の尾端部10aがi-2番目以前の圧延機Fi-2、Fi-3、・・・、F1のうちのいずれかを抜けたときの蛇行量及び差荷重制御目標値を鋼帯10の尾端部10aがi-1番目の圧延機Fi-1を抜けたときの差荷重とした前述の(3)式により演算し、演算されたロール開度差をi番目の制御対象の圧延機Fiに設けられたレベリング装置2に送出するレベリング制御演算装置6を備えている。
【0054】
これにより、「センサ方式蛇行制御」における蛇行制御目標値を適切な蛇行量として制御量を大きくし、適切な蛇行制御を行うことができる。
この理由については、第1実施形態の説明における
図3を用いた説明と同様である。
つまり、第2実施形態においては、制御区間Aにおいて、制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差Siを、蛇行制御目標値を鋼帯10の尾端部10aがi-2番目以前の圧延機Fi-2、Fi-3、・・・、F1のうちのいずれかを抜けたときの蛇行量及び差荷重制御目標値を鋼帯10の尾端部10aがi-1番目の圧延機Fi-1を抜けたときの差荷重とした前述の(3)式により演算しており、鋼帯10の尾端部10aがi-2番目以前の圧延機Fi-2、Fi-3、・・・、F1のうちのいずれかを抜けたけたときからi-1番目の圧延機Fi-1を抜けるときまでの蛇行量の変化を反映し、蛇行制御量が大きくなり、蛇行制御した後の鋼帯10の蛇行量を適切な値とすることができる。蛇行制御した後の鋼帯10の中心の圧延機F1~Fnの中心CLまでの距離を0に近づけることができる。
【0055】
次に、第2実施形態に係る蛇行制御方法を示す蛇行制御装置4による処理の流れを
図5に示すフローチャートを参照して説明する。
先ず、鋼帯10の仕上圧延が開始され、鋼帯10の先端部が制御対象の圧延機Fiを通過したら、ステップS11において、制御対象の圧延機Fiとi-1番目の圧延機Fi-1との間に設置された蛇行量測定装置5が走行する鋼帯10の蛇行量を測定する(蛇行量測定ステップ)。
【0056】
次いで、ステップS12に移行し、レベリング制御演算装置6は、制御対象の圧延機Fiに設けられた荷重検出器3により検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から操作側及び駆動側の差荷重を求める(差荷重検出ステップ)。
次いで、ステップS13に移行し、レベリング制御演算装置6は、走行する鋼帯10の尾端部10aがi-1番目の圧延機Fi-1を抜けてから蛇行量測定装置5を抜けるまでの制御区間Aにおいて、ステップS11(蛇行量測定ステップ)で検出された鋼帯10の蛇行量とステップS12(差荷重検出ステップ)で求められた差荷重とに基づいて、制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差Siを、蛇行制御目標値を鋼帯10の尾端部10aがi-2番目以前の圧延機Fi-2、Fi-3、・・・、F1のうちのいずれかを抜けたときの蛇行量及び差荷重制御目標値を鋼帯10の尾端部10aがi-1番目の圧延機Fi-1を抜けたときの差荷重とした前述の(3)により演算し、演算されたロール開度差を制御対象の圧延機Fiに設けられたレベリング装置2に送出する(レベリング制御演算ステップ)。
【0057】
なお、第2実施形態では、具体的には、蛇行制御目標値を鋼帯10の尾端部10aがi-2番目の圧延機Fi-2を抜けたときの蛇行量としてあり、前述の(3)は、Si=αAC(δ-δi-2)+βAD(ΔP-ΔPi-1)+Si-1となる。
また、このレベリング制御演算ステップでは、レベリング制御演算装置6は、
走行する鋼帯10の尾端部10aが蛇行量測定装置5を抜けてから制御対象の圧延機Fiを抜けるまでの制御区間Bにおいて、ステップS12(差荷重検出ステップ)で求められた差荷重に基づいて、制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロール開度差Siを、前述の(4)式により演算し、演算されたロール開度差を制御対象の圧延機Fiに設けられたレベリング装置2に送出する。
【0058】
次いで、ステップS14に移行し、レベリング装置2は、レベリング制御演算装置6から送出されたロール開度差に基づいて、制御対象の圧延機Fiのロール開度差がレベリング制御演算装置6から送出されたロール開度差となるように、制御対象の圧延機Fiの操作側に取り付けられた圧下装置による圧下量と、圧延機Fiの駆動側に取り付けられた圧下装置による圧下量とを調整する(圧下量調整ステップ)。これにより、制御対象の圧延機Fiのレベリング量が変更され、鋼帯10の蛇行量が抑制される。
【0059】
これにより、蛇行制御装置4による処理が終了する。
このように、第2実施形態に係る蛇行制御方法によれば、走行する鋼帯10の尾端部10aがi-1番目の圧延機Fi-1を抜けてから蛇行量測定装置5を抜けるまでの制御区間Aにおいて、ステップS11(蛇行量測定ステップ)で検出された鋼帯10の蛇行量とステップS12(差荷重検出ステップ)で求められた差荷重とに基づいて、制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差Siを、蛇行制御目標値を鋼帯10の尾端部10aがi-2番目以前の圧延機Fi-2、Fi-3、・・・、F1のうちのいずれかを抜けたときの蛇行量及び差荷重制御目標値を鋼帯10の尾端部10aがi-1番目の圧延機Fi-1を抜けたときの差荷重とした前述の(3)により演算し、演算されたロール開度差を制御対象の圧延機Fiに設けられたレベリング装置2に送出するレベリング制御演算ステップを含んでいる。
【0060】
これにより、「センサ方式蛇行制御」における蛇行制御目標値を適切な蛇行量として制御量を大きくし、適切な蛇行制御を行うことができる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに種々の変更、改良を行うことができる。
例えば、第1実施形態及び第2実施形態のいずれにおいても、i番目の制御対象の圧延機Fiのロール開度差を演算するに際し、蛇行制御目標値を鋼帯10の尾端部10aがi-2番目の圧延機Fi-2を抜けたときの蛇行量とする必要はなく、前述したように、蛇行制御目標値を鋼帯10の尾端部10aがi-2番目以前の圧延機Fi-2、Fi-3、・・・、F1のうちのいずれかを抜けたときの蛇行量とすればよい。
【0061】
また、第1実施形態においては、鋼帯10の尾端部10aが蛇行量測定装置5を抜けてからi番目の制御対象の圧延機Fiを抜けるまでの制御区間において、どのように制御するか説明されていないが、第2実施形態と同様に、「差荷重方式の蛇行制御」によって鋼帯10の蛇行を制御する。つまり、蛇行制御装置4のレベリング制御演算装置は、この制御区間において、荷重検出器3で検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求められた差荷重に基づいて、i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロール開度差Siを前述の(4)式により演算し、演算されたロール開度差をi番目の制御対象の圧延機Fiに設けられたレベリング装置に送出する。
【0062】
また、第1実施形態において、制御対象の圧延機Fiから最終段の圧延機Fnまでの間に単数又は複数の圧延機の圧延機が存在する場合には、当該圧延機の各々及び最終段の圧延機Fnを制御対象の圧延機とする。そして、蛇行制御装置は、制御対象の各々の圧延機について、走行する鋼帯10の尾端部10aが制御対象の圧延機よりも一つ上流側に設置された圧延機を抜けてから蛇行量測定装置(制御対象の圧延機と一つ上流側の圧延機との間に設置されている)を抜けるまでの制御区間において、「センサ方式蛇行制御」によって鋼帯10の蛇行を制御する。つまり、蛇行制御装置のレベリング制御演算装置は、この制御区間において、蛇行量測定装置で検出された鋼帯10の蛇行量に基づいて、制御対象の圧延機における操作側及び駆動側のロール開度差を前述の(1)式により演算し、演算されたロール開度差をi番目の制御対象の圧延機Fiに設けられたレベリング装置に送出する。また、蛇行制御装置は、制御対象の各々の圧延機について、走行する鋼帯10の尾端部10aが蛇行量測定装置を抜けてから制御対象の圧延機に至るまでの制御区間において、「差荷重方式の蛇行制御」によって鋼帯10の蛇行を制御する。つまり、蛇行制御装置のレベリング制御演算装置は、この制御区間において、荷重検出器で検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求められた差荷重に基づいて、制御対象の圧延機における操作側及び駆動側のロール開度差を前述の(4)式により演算し、演算されたロール開度差をi番目の制御対象の圧延機Fiに設けられたレベリング装置に送出する。
【0063】
また、第2実施形態において、制御対象の圧延機Fiから最終段の圧延機Fnまでの間に単数又は複数の圧延機の圧延機が存在する場合には、当該圧延機の各々及び最終段の圧延機Fnを制御対象の圧延機とする。そして、蛇行制御装置は、制御対象の各々の圧延機について、走行する鋼帯10の尾端部10aが制御対象の圧延機よりも一つ上流側に設置された圧延機を抜けてから蛇行量測定装置(制御対象の圧延機と一つ上流側の圧延機との間に設置されている)を抜けるまでの制御区間において、「センサ方式蛇行制御」及び「差荷重方式の蛇行制御」を併用して鋼帯10の蛇行を制御する。つまり、蛇行制御装置のレベリング制御演算装置は、この制御区間において、蛇行量測定装置で検出された鋼帯10の蛇行量及び荷重検出器で検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求められた差荷重に基づいて、制御対象の圧延機における操作側及び駆動側のロール開度差を前述の(3)式により演算し、演算されたロール開度差をi番目の制御対象の圧延機Fiに設けられたレベリング装置に送出する。また、蛇行制御装置は、制御対象の各々の圧延機について、走行する鋼帯10の尾端部10aが蛇行量測定装置を抜けてから制御対象の圧延機に至るまでの制御区間において、「差荷重方式の蛇行制御」によって鋼帯10の蛇行を制御する。つまり、蛇行制御装置のレベリング制御演算装置は、この制御区間において、荷重検出器で検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求められた差荷重に基づいて、i番目の制御対象の圧延機Fiにおける操作側及び駆動側のロール開度差を前述の(4)式により演算し、演算されたロール開度差をi番目の制御対象の圧延機Fiに設けられたレベリング装置に送出する。
【実施例0064】
本発明者らは、
図4に示す仕上圧延設備1を用いて鋼帯10を仕上圧延し、比較例及び本発明例による鋼帯10の尾端部10aの位置と蛇行量測定装置5によって検出された鋼帯10の蛇行量及びレベリング制御演算装置6における蛇行制御量との関係について調査した。ここで、鋼帯10の幅は1200mm、仕上圧延設備1の入側の鋼帯10の板厚は28mm、仕上圧延設備1の出側の鋼帯10の板厚は1.8mmとした。また、仕上圧延設備1の出側の鋼帯10の圧延速度が120mpmとした。
【0065】
ここで、
図3に示す仕上圧延設備1は、7台の圧延機F1~F7を備え、圧延機F7と圧延機F6との間に設置された蛇行量測定装置5により、走行する鋼帯10の蛇行量を測定した。
また、レベリング制御演算装置6は、本発明例においては、鋼帯10の尾端部10aが圧延機F6を抜けてから蛇行量測定装置5を抜けるまでの制御区間Aにおいて、荷重検出器3で検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求まる操作側及び駆動側の差荷重と、蛇行量測定装置5で測定された鋼帯10の蛇行量とに基づいて、制御対象の圧延機F7における操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差S
7を、蛇行制御目標値を鋼帯10の尾端部10aが圧延機F5を抜けたときの蛇行量及び差荷重制御目標値を鋼帯10の尾端部10aが圧延機F6を抜けたときの差荷重とした下記の(5)式により演算し、演算されたロール開度差を制御対象の圧延機F7に設けられたレベリング装置2に送出した。
【0066】
S7=αAC(δ-δ5)+βAD(ΔP-ΔP6)+S6 …(5)
ここで、S7:制御対象の圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差、S6:鋼帯10の尾端部10aが圧延機F6を抜けたときの、制御対象の圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差、αA:制御区間Aにおける、蛇行量測定装置5によって測定された蛇行量に対する制御ゲイン、βA:制御区間Aにおける、制御対象の圧延機F7に設けられた荷重検出器3から検出された差荷重に対する制御ゲイン、δ5:鋼帯10の尾端部10aが制御対象の圧延機F7の2つ前の圧延機F5を抜けたときの、蛇行量測定装置5によって測定された蛇行量、ΔP6:鋼帯10の尾端部10aが圧延機F6を抜けたときの、制御対象の圧延機F7に設けられた荷重検出器3から検出された差荷重、δ:制御区間Aにおける、蛇行量測定装置5によって測定された蛇行量、ΔP:制御区間Aにおける、制御対象の圧延機F7に設けられた荷重検出器3から検出された差荷重、C:蛇行量に対するレベリング量の変化量、D:ロール径、ロール長、ロール本数、圧延材の幅などで決まる定数である。
【0067】
また、レベリング制御演算装置6は、本発明例において、鋼帯10の尾端部10aが蛇行量測定装置5を抜けてから制御対象の圧延機F7を抜けるまでの制御区間Bにおいて、荷重検出器3で検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求められた差荷重に基づいて、制御対象の圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差S7を下記(6)式により演算し、演算されたロール開度差を制御対象の圧延機F7に設けられたレベリング装置に送出した。
【0068】
S7=βBD(ΔP-ΔP6)+SB …(6)
ここで、S7:制御対象の圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差、SB:鋼帯10の尾端部10aが蛇行量測定装置5を抜けたときの、制御対象の圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差、βB:制御区間Bにおける、制御対象の圧延機F7に設けられた荷重検出器3から検出された差荷重に対する制御ゲイン、ΔP6:鋼帯10の尾端部10aが圧延機F6を抜けたときの、制御対象の圧延機F7に設けられた荷重検出器3から検出された差荷重、ΔP:制御区間Bにおける、制御対象の圧延機F7に設けられた荷重検出器3から検出された差荷重、D:ロール径、ロール長、ロール本数、圧延材の幅などで決まる定数である。
【0069】
一方、レベリング制御演算装置6は、比較例においては、鋼帯10の尾端部10aが圧延機F6を抜けてから蛇行量測定装置5を抜けるまでの制御区間Aにおいて、荷重検出器3で検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求まる操作側及び駆動側の差荷重と、蛇行量測定装置5で測定された鋼帯10の蛇行量とに基づいて、制御対象の圧延機F7における操作側及び駆動側のロールギャップの開度差であるロール開度差S7を、蛇行制御目標値を鋼帯10の尾端部10aが制御対象の圧延機F7の1つ前の圧延機F6を抜けたときの蛇行量及び差荷重制御目標値を鋼帯10の尾端部10aが圧延機F6を抜けたときの差荷重とした下記の(7)式により演算し、演算されたロール開度差を制御対象の圧延機F7に設けられたレベリング装置2に送出した。
【0070】
S7=αAC(δ-δ6)+βAD(ΔP-ΔP6)+S6 …(7)
ここで、S7:制御対象の圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差、S6:鋼帯10の尾端部10aが圧延機F6を抜けたときの、制御対象の圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差、αA:制御区間Aにおける、蛇行量測定装置5によって測定された蛇行量に対する制御ゲイン、βA:制御区間Aにおける、制御対象の圧延機F7に設けられた荷重検出器3から検出された差荷重に対する制御ゲイン、δ6:鋼帯10の尾端部10aが圧延機F6を抜けたときの、蛇行量測定装置5によって測定された蛇行量、ΔP6:鋼帯10の尾端部10aが圧延機F6を抜けたときの、制御対象の圧延機F7に設けられた荷重検出器3から検出された差荷重、δ:制御区間Aにおける、蛇行量測定装置5によって測定された蛇行量、ΔP:制御区間Aにおける、制御対象の圧延機F7に設けられた荷重検出器3から検出された差荷重、C:蛇行量に対するレベリング量の変化量、D:ロール径、ロール長、ロール本数、圧延材の幅などで決まる定数である。
【0071】
また、レベリング制御演算装置6は、比較例において、鋼帯10の尾端部10aが蛇行量測定装置5を抜けてから制御対象の圧延機F7を抜けるまでの制御区間Bにおいて、荷重検出器3で検出された操作側及び駆動側の圧延荷重から求められた差荷重に基づいて、制御対象の圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差S7を下記(8)式により演算し、演算されたロール開度差を制御対象の圧延機F7に設けられたレベリング装置に送出した。
【0072】
S7=βBD(ΔP-ΔP6)+SB …(8)
ここで、S7:制御対象の圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差、SB:鋼帯10の尾端部10aが蛇行量測定装置5を抜けたときの、制御対象の圧延機F7における操作側及び駆動側のロール開度差、βB:制御区間Bにおける、制御対象の圧延機F7に設けられた荷重検出器3から検出された差荷重に対する制御ゲイン、ΔP6:鋼帯10の尾端部10aが圧延機F6を抜けたときの、制御対象の圧延機F7に設けられた荷重検出器3から検出された差荷重、ΔP:制御区間Bにおける、制御対象の圧延機F7に設けられた荷重検出器3から検出された差荷重、D:ロール径、ロール長、ロール本数、圧延材の幅などで決まる定数である。
【0073】
比較例による鋼帯10の尾端部10aの位置と蛇行量測定装置5によって検出された鋼帯10の蛇行量及びレベリング制御演算装置6における蛇行制御量との関係について
図6に示す。ここで、「蛇行制御量」は、制御区間Aでは、(7)式における右辺第1項(α
AC(δ-δ
6))と右辺第1項(β
AD(ΔP-ΔP
6))と右辺第3項(S
6)であり、制御区間Bでは、(8)式における右辺第1項(β
BD(ΔP-ΔP
6))と右辺第2項(S
B)の和である。
【0074】
また、本発明例による鋼帯10の尾端部10aの位置と蛇行量測定装置5によって検出された鋼帯10の蛇行量及びレベリング制御演算装置6における蛇行制御量との関係について
図7に示す。ここで、「蛇行制御量」は、制御区間Aでは、(7)式における右辺第1項(α
AC(δ-δ
5))と右辺第1項(β
AD(ΔP-ΔP
6))と右辺第3項(S
6)であり、制御区間Bでは、(8)式における右辺第1項(β
BD(ΔP-ΔP
6))と右辺第2項(S
B)の和である。
【0075】
本発明例によるレベリング制御演算装置6における蛇行制御量と、比較例によるレベリング制御演算装置6における蛇行制御量とは、(α
AC(δ-δ
5))-(α
AC(δ-δ
6))の分だけ、本発明例によるレベリング制御演算装置6における蛇行制御量が大きくなっている。このことは、これは、
図6と
図7とを対比してみればわかる。
従って、本発明例によるレベリング制御演算装置6における蛇行制御量は、比較例によるレベリング制御演算装置6における蛇行制御量よりも大きくなっており、高い応答性を得て、適切な蛇行制御を得ることができた。