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  • 特開-抗原ポリペプチド 図1
  • 特開-抗原ポリペプチド 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096812
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】抗原ポリペプチド
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/195 20060101AFI20220623BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20220623BHJP
   G01N 33/569 20060101ALI20220623BHJP
   C12N 15/31 20060101ALN20220623BHJP
【FI】
C07K14/195 ZNA
G01N33/53 N
G01N33/569 F
C12N15/31
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020210009
(22)【出願日】2020-12-18
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 多賀子
(72)【発明者】
【氏名】浦川 李花
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA11
4H045DA86
4H045EA50
4H045FA33
4H045FA74
(57)【要約】      (修正有)
【課題】安定性が向上した歯周病原菌抗原ポリペプチドの提供。
【解決手段】(A)特定のアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は(B)(A)のアミノ酸配列において、1個若しくは2個以上のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加されたアミノ酸配列を有し、かつ抗原性を有するポリペプチド。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は
(B)配列番号1に示すアミノ酸配列において、1個若しくは2個以上のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加されたアミノ酸配列を有し、かつ抗原性を有するポリペプチド。
【請求項2】
前記(B)のポリペプチドが、配列番号1に示すアミノ酸配列のN末端側に23個以上のアミノ酸の付加を有しないポリペプチドである、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
(C)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は
(D)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1個若しくは2個以上のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加されたアミノ酸配列を有し、かつ抗原性を有するポリペプチド。
【請求項4】
前記(D)のポリペプチドが、配列番号2に示すアミノ酸配列のN末端側に226個以上のアミノ酸の付加を有しないポリペプチドである、請求項3に記載のポリペプチド。
【請求項5】
さらに、タグを含む、請求項1~4のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のポリペプチドを含む歯周病原菌抗体価測定用試薬。
【請求項7】
請求項6に記載の歯周病原菌抗体価測定用試薬を含む歯周病原菌抗体価測定用キット。
【請求項8】
生体試料を請求項1~5のいずれかに記載のポリペプチドと接触させることを含む、
生体試料中の歯周病原菌に対する抗体価を測定する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、抗原ポリペプチド及びその応用技術等に関する。
【背景技術】
【0002】
歯周病は、歯周病原菌が歯周組織に感染することによって発症する炎症性疾患である。一般に、歯周病の診断は、歯周ポケット検査、触診・出血検査、動揺度検査、X線写真検査等の結果を総合して行われているが、これらの検査手法は歯科医師等の経験・技能等に基づいて行われるため、検査結果及び診断結果に差異が生じる可能性があり、客観性に欠くという問題がある。そのため、客観的に歯周病の診断を行う手法の開発が望まれている。
【0003】
客観的に歯周病の診断を行う手法としては、例えば、歯周病原菌に対する血清中のIgG抗体価を歯周病の感染度又は重篤度の指標とする方法が報告されており、本発明者らが開発した手法では、歯周病原菌であるポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)から単離された特定の1次構造を有するポリペプチド又はその改変ポリペプチド(歯周病原菌抗原ポリペプチド)を用いることにより、多様な免疫型を有する広範囲の患者の歯周病を高い精度で検査することができ、かつ自動化された機器等により高速処理を行うことが可能となる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6310631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、安定性が向上した歯周病原菌抗原ポリペプチドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定のアミノ酸配列を有するポリペプチドは、安定性が優れていることを見出し、さらに改良を重ねた。
【0007】
本開示は、例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
(A)配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は
(B)配列番号1に示すアミノ酸配列において、1個若しくは2個以上のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加されたアミノ酸配列を有し、かつ抗原性を有するポリペプチド。
項2.
前記(B)のポリペプチドが、配列番号1に示すアミノ酸配列のN末端側に23個以上のアミノ酸の付加を有しないポリペプチドである、項1に記載のポリペプチド。
項3.
(C)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は
(D)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1個若しくは2個以上のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加されたアミノ酸配列を有し、かつ抗原性を有するポリペプチド。
項4.
前記(D)のポリペプチドが、配列番号2に示すアミノ酸配列のN末端側に226個以上のアミノ酸の付加を有しないポリペプチドである、項3に記載のポリペプチド。
項5.
さらに、タグを含む、項1~4のいずれかに記載のポリペプチド。
項6.
項1~5のいずれかに記載のポリペプチドを含む歯周病原菌抗体価測定用試薬。
項7.
項6に記載の歯周病原菌抗体価測定用試薬を含む歯周病原菌抗体価測定用キット。
項8.
生体試料を項1~5のいずれかに記載のポリペプチドと接触させることを含む、
生体試料中の歯周病原菌に対する抗体価を測定する方法。
【発明の効果】
【0008】
安定性に優れた抗原ポリペプチドが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ELISAの測定結果を示す。
図2】ELISAの測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。
本開示に包含されるポリペプチドは、(A)配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドである。本明細書において、当該ポリペプチドを、「本開示の(A)のポリペプチド」と表記することがある。
配列番号1に示すアミノ酸配列は、配列番号3に示すアミノ酸配列の24~860番目のアミノ酸配列に相当する。
【0011】
また、本開示は、(B)配列番号1に示すアミノ酸配列において、1個若しくは2個以上のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドをも包含する。本明細書において、当該ポリペプチドを、「本開示の(B)のポリペプチド」と表記することがある。
【0012】
また、本開示は、(C)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドをも包含する。本明細書において、当該ポリペプチドを、「本開示の(C)のポリペプチド」と表記することがある。
配列番号2に示すアミノ酸配列は、配列番号3に示すアミノ酸配列の227~860番目のアミノ酸配列に相当する。
【0013】
また、本開示は、(D)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1個若しくは2個以上のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドをも包含する。本明細書において、当該ポリペプチドを、「本開示の(D)のポリペプチド」と表記することがある。
【0014】
本明細書において、本開示の(A)のポリペプチド、本開示の(B)のポリペプチド、本開示の(C)のポリペプチド、及び本開示の(D)のポリペプチドを総称して、「本開示のポリペプチド」と表記することがある。
【0015】
本開示の(B)のポリペプチドは、配列番号1に示すアミノ酸配列において、1個若しくは2個以上のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドである。配列番号1に示すアミノ酸配列において、欠失、置換、若しくは付加されたアミノ酸の個数の上限は、例えば、250個、200個、150個、100個、50個、45個、40個、35個、30個、25個、20個、19個、18個、17個、16個、15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、又は2個であってもよい。
【0016】
アミノ酸の欠失、置換、又は付加などの変異を特定のアミノ酸配列に加える技術は当該技術分野において公知であり、任意の手法を用いて行うことができる。例えば、制限酵素処理、エキソヌクレアーゼやDNAリガーゼ等による処理、位置指定突然変異導入法、ランダム突然変異導入法等を利用して行うことができる。
【0017】
本開示の(B)のポリペプチドは、例えば、配列番号1に示すアミノ酸配列と85%以上の同一性を示すアミノ酸配列からなるポリペプチドであってもよい。同一性は、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、又は99%以上であってもよい。
【0018】
アミノ酸配列の同一性は、全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)の相同性アルゴリズムBLAST(Basic local alignment search tool)http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/においてデフォルトのパラメータを用いることにより、算出することができる。
【0019】
また、本開示の(B)のポリペプチドは、配列番号1に示すアミノ酸配列のN末端側に23個以上のアミノ酸の付加を有しないポリペプチドであってもよい。換言すれば、本開示の(B)のポリペプチドは、配列番号1に示すアミノ酸配列のN末端側にアミノ酸の付加を有する場合、当該付加されたアミノ酸の個数が1~22個のポリペプチドであってもよい。当該アミノ酸の個数の上限又は下限は、例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、又は21個であってもよい。より具体的には、例えば、2~21個であってもよい。
【0020】
本開示の(D)のポリペプチドは、配列番号2に示すアミノ酸配列において、1個若しくは2個以上のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドである。配列番号2に示すアミノ酸配列において、欠失、置換、若しくは付加されたアミノ酸の個数の上限は、例えば、250個、200個、150個、100個、50個、45個、40個、35個、30個、25個、20個、19個、18個、17個、16個、15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、又は2個であってもよい。
【0021】
本開示の(D)のポリペプチドは、例えば、配列番号2に示すアミノ酸配列と85%以上の同一性を示すアミノ酸配列からなるポリペプチドであってもよい。同一性は、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、又は99%以上であってもよい。
【0022】
また、本開示の(D)のポリペプチドは、配列番号2に示すアミノ酸配列のN末端側に226個以上のアミノ酸の付加を有しないポリペプチドであってもよい。換言すれば、本開示の(D)のポリペプチドは、配列番号2に示すアミノ酸配列のN末端側にアミノ酸の付加を有する場合、当該付加されたアミノ酸の個数が1~225個のポリペプチドであってもよい。当該アミノ酸の個数の上限又は下限は、例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、110個、120個、130個、140個、150個、160個、170個、180個、190個、200個、210個、又は220個であってもよい。より具体的には、例えば、2~220個であってもよい。
【0023】
本開示のポリペプチドは、配列番号3に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドを含まないことが好ましい。本開示のポリペプチドは、配列番号3に示すアミノ酸配列を含むポリペプチドを含まないことが好ましい。
【0024】
本開示の(B)のポリペプチド及び(D)のポリペプチドは、抗原性を有することが好ましい。
【0025】
本明細書において、「抗原性を有する」とは、歯周病原菌に対する抗体と、抗原抗体反応することを意味する。抗体としては、例えば、IgG抗体、IgM抗体、IgA抗体等のイムノグロブリン抗体が挙げられ、イムノグロブリン抗体のいずれかと抗原抗体反応すればよい。中でもIgG抗体が好ましい。
【0026】
抗原性は、ELISA法により評価することができる。より具体的には、後述する実施例に示すように、抗原性を評価するポリペプチドを抗原、歯周病原菌に対する抗体を含む歯周病患者の陽性血清を1次抗体として、これらの抗原抗体反応がELISA法により検出された場合には、当該ポリペプチドは抗原性を有すると判断される。
【0027】
本開示のポリペプチドは、配列番号1又は配列番号2に示すアミノ酸配列の情報に基づいて、一般的なタンパク質の化学合成法(例えば、液相法及び固相法)を用いて製造することができる。また、上述したポリペプチドは、当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを利用して、遺伝子工学的な手法で製造することができる。
【0028】
本開示のポリペプチドは、さらに、タグを含んでいてもよい。タグとしては、例えば、Hisタグ、SBP(Streptavidin Binding Peptide)タグ等のペプチドタグ;GST(Glutathione-S-transferase)タグ、MBP(Maltose Binding Protein)タグ等のポリペプチドタグ等が挙げられる。中でもポリペプチドタグが好ましく、GSTタグがより好ましい。
【0029】
タグは、本開示のポリペプチドのN末端側に結合していてもよく、C末端側に結合していてもよい。中でも、タグは、本開示のポリペプチドのN末端側に結合していることが好ましい。
タグを含む好ましいポリペプチドとしては、例えば、本開示の(A)、(B)、(C)、及び(D)のポリペプチドのN末端側又はC末端側に、更にタグを含むポリペプチドが挙げられる。
【0030】
タグを付加する方法としては、特に限定されず、慣用の方法および反応条件を採用することができる。
【0031】
本開示のポリペプチドは、さらに、標識物質を有していてもよい。標識物質としては、例えば、西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリフォスファターゼ(ALP)、β-D-ガラクトシダーゼ、ビオチン、金コロイド、ラテックスビーズなどが挙げられる。
【0032】
本開示のポリペプチドは、配列番号3に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドと比較して、向上した安定性を有することが好ましい。安定性は、後述した実施例に示すように、ELISA法により測定される吸光度の経時的な変化により評価される。本開示のポリペプチドは、配列番号3に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドと比較して、吸光度の経時的な減少が抑制されていることが好ましい。
【0033】
本開示は、本開示のポリペプチドを含む歯周病原菌抗体価測定用試薬をも包含する。本明細書において、当該試薬を、「本開示の試薬」と表記することがある。
【0034】
本開示の試薬は、本開示のポリペプチドの他、他の成分を含有してもよい。他の成分としては、生理食塩水、PBS、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、ホウ酸緩衝液、Good Bufferなどの溶媒;カゼイン、スキムミルク、ウシ血清アルブミン(BSA)、ゼラチン、血液タンパク質又は植物タンパク質を有効成分とするもの、マウス、ウサギ、ヤギ、牛胎児等の正常動物血液成分、正常ヒト血清成分などのタンパク成分安定化剤;各種防腐剤;界面活性剤;亜鉛やマグネシウム等の金属の塩などの酵素の活性化剤などが挙げられる。
【0035】
本開示は、本開示のポリペプチドを含む歯周病原菌抗体価測定用試薬を含む歯周病原菌抗体価測定キットをも包含する。本明細書において、当該キットを、「本開示のキット」と表記することがある。
【0036】
当該キットには、本開示の試薬の他、必要に応じてその他の試薬、器具等が含まれていてもよい。例えば、ブロッキング液、洗浄液、標識物質を含む抗体、基質液(発色・蛍光・発光)などが挙げられる。また、当該キットは、本開示の試薬の他、ブロッキング液、洗浄液、標識物質を含む抗体、基質液(発色・蛍光・発光)などを含む部材(メンブレン等)等を含むものであってもよい。
【0037】
本開示は、生体試料を本開示のポリペプチドと接触させることを含む、生体試料中の歯周病原菌に対する抗体価を測定する方法をも包含する。本明細書において、当該測定方法を、「本開示の測定方法」と表記することがある。
【0038】
生体試料としては、特に限定されず、例えば、歯周病原菌に対する抗体(例えば、IgG抗体、IgA抗体、IgM抗体等)を含み得る試料が挙げられる。採取の容易さ、取扱い易さ等の観点からは、生体試料としては、血液、唾液、歯肉溝滲出液、糞便、涙液、鼻腔ぬぐい液、又は羊水が好ましい。また、歯周病原菌に対する抗体を含み得る試料としては、肝臓などの臓器を用いることもできる。
血液を生体試料として用いる場合には、血漿又は血清がより好ましく、血清がさらにより好ましい。血漿を生体試料として用いる場合には、ろ紙や血漿分離機等により分離された血漿であってもよい。なお、対象から採取した生体試料を保存する方法、条件等については特に制限されず、常法に従って行うことができる。
【0039】
生体試料を採取される対象としては、ヒトのみならず、歯周病原菌の感染が起こり得る生体であれば特に制限されず、非ヒト哺乳動物であってもよい。ヒトとしては特に制限されず、健常者であってもよく、歯周病に罹患したヒト(歯周病患者)であってもよく、歯周病の罹患が疑われるヒトであってもよい。歯周病または歯周病原菌との関連性のある疾患(例えば、関節リウマチ、心疾患、動脈硬化性疾患、糖尿病、認知症、非アルコール性脂肪肝(NASH/NAFLD)、肥満、早産など)を有するヒトやその疑いがあるヒトであってもよい。また、非ヒト哺乳動物としては、ペット、家畜、実験動物等として飼育される哺乳動物が例示される。例えば、イヌ、ネコ、サル、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウサギ、マウス、ラット、ラクダ、リャマ等が挙げられる。
【0040】
対象から生体試料を採取する方法としては特に制限されず、常法に従って行えばよい。また、採取した生体試料は、そのまま用いてもよく、凍結乾燥等して保存した後、当該凍結乾燥物を後述する適当な溶媒に溶解して用いてもよく、また、採取した生体試料を、そのまま冷凍保存した後、あるいは後述する適当な溶媒に溶解する等して冷凍保存した後、使用時に解凍して用いてもよい。
【0041】
生体試料を溶解させる溶媒としては、例えば、生理食塩水、PBS、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、ホウ酸緩衝液、Good Bufferなどが挙げられる。これらの溶媒は、カゼイン、スキムミルク、ウシ血清アルブミン(BSA)、ゼラチン、血液タンパク質又は植物タンパク質を有効成分とするもの、マウス、ウサギ、ヤギ、牛胎児等の正常動物血液成分、正常ヒト血清成分などのタンパク成分安定化剤;各種防腐剤;界面活性剤;亜鉛やマグネシウム等の金属の塩などの酵素の活性化剤などを含むものであってもよい。
【0042】
本開示の測定方法によれば、本開示のポリペプチドと生体試料とを接触させることにより、生体試料中に存在する歯周病原菌に対する抗体(例えば、IgG抗体、IgA抗体、IgM抗体等)を、本開示のポリペプチドとの抗原抗体反応を利用して検出することができる。
【0043】
本開示の測定方法は、さらに、生体試料を本開示のポリペプチドと接触させることにより生じる生体試料中に存在する歯周病原菌に対する抗体と本開示のポリペプチドとの抗原抗体反応物(抗体及び本開示のポリペプチドを含む複合体)を検出する工程を含んでいてもよい。
【0044】
抗原抗体反応物を検出する方法は、特に限定されず、慣用の方法および反応条件を採用することができる。例えば、当該抗原抗体反応物に、標識物質を含む抗イムノグロブリン抗体(例えば、抗IgG抗体等)を接触させ当該標識物質を検出する方法や、本開示のポリペプチドが標識物質を含む場合、当該標識物質を検出する方法などが挙げられる。
【0045】
本開示の測定方法は、必要に応じて、例えば、抗原の固相への固定化工程、洗浄工程、ブロッキング工程、基質反応工程などを含んでいてもよい。これらは、慣用の方法および反応条件を採用することができる。
【0046】
本開示の測定方法は、ELISA法やドットブロット法、イムノクロマト法などの免疫学的手法が好ましく用いられる。
【0047】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。また、本開示は、本明細書に説明した構成要件を任意の組み合わせを全て包含する。
【0048】
また、上述した本開示の各実施形態について説明した各種特性(性質、構造、機能等)は、本開示に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各特性のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例0049】
本開示の内容を以下の実験例を用いて具体的に説明する。しかし、本開示はこれらに何ら限定されるものではない。下記において、特に言及する場合を除いて、実験は大気圧及び常温条件下で行っている。また特に言及する場合を除いて、「%」は「体積%」を意味する。
【0050】
ELISA
以下の3種の抗原タンパク質をELISAに付した。なお、いずれの抗原タンパク質もN末端側にGSTタグを付加したものを使用した。
35N(配列番号3)
No. 15(配列番号1)(35Nにおける24~860番目のアミノ酸に相当)
No. 7(配列番号2)(35Nにおける227~860番目のアミノ酸に相当)
【0051】
抗原タンパク質の量は35Nを0.25または0.5ng/100μlに調製し、他のタンパク質は35Nと同等のモル数となるように調製した。
【0052】
タンパク質固相用のGlutathione を固相した96wellプレートをTween20(0.05~0.1%)を含むPBSにて3回洗浄した後、調製したタンパク溶液100μlを添加し室温で1時間反応させた。Tween20(0.05~0.1%)を含むPBSにて3回洗浄した後、500~620倍に希釈した陽性血清(歯周病患者の血清)を100μl添加し室温で1時間反応させた。Tween20(0.05~0.1%)を含むPBSにて3回洗浄した後、1000~2000倍に希釈した、西洋ワサビペルオキシダーゼ(以下、HRP)結合ヤギ抗ヒトIgG抗体反応液(MILLIPORE)を100μl添加し室温で反応させた。Tween20(0.05~0.1%)を含むPBSにて3回洗浄した後、発色基質のABTS150μlを添加し、室温で反応させた後、プレートリーダーを用いて405nmの吸光度を測定した。なお、STEP2_6、STEP2_7、STEP3_11の各測定のタイミングでは、抗原や試薬の濃度等同じ条件で実施した。吸光度の測定は、最初の測定を初期値とし、初期から2年までの間で3回の試験で測定した(STEP2_6、STEP2_7、STEP3_11)。結果を、図1及び2に示す。なお、図1及び2には、STEP2_6、STEP2_7、STEP3_11におけるNo. 15あるいはNo. 7の吸光度を1とした時の35Nの吸光度の比率を示す。
【0053】
STEP2_6、STEP2_7、STEP3_11の測定の間には、抗原タンパクの凍結融解が行われており、35Nは、No. 15及びNo. 7と比較して、保管期間や凍結融解の回数に伴う反応性の低下が大きいことが分かった。
図1
図2
【配列表】
2022096812000001.app