(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096857
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】車両運用管理システム、車両運用管理プログラムおよび車両運用管理方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20220623BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20220623BHJP
G16Y 20/20 20200101ALI20220623BHJP
G16Y 40/20 20200101ALI20220623BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G08G1/00 X
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020210082
(22)【出願日】2020-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】豊田 憲司
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 晃介
(72)【発明者】
【氏名】平塚 俊介
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA07
5H181BB04
5H181BB13
5H181BB17
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF14
5H181FF27
5H181LL09
5H181MB03
(57)【要約】
【課題】タイヤの故障等を抑制して生産性を向上できると共に、タイヤが有する耐久性を使い切って運用コストを低減することができる車両運用管理システムを提供する。
【解決手段】タイヤ(10a等)が装着された車両(V1等)の運行情報の履歴に基づいて、特定時点のタイヤ予測温度を算出するタイヤ温度予測部102と、特定時点における温度許容度を算出する温度許容度算出部104と、温度許容度が予め設定される許容範囲内にあるか否かを判定する判定部106と、温度許容度が許容範囲内であると判定された場合には、車両の運用を変更する車両運用変更情報を生成する情報生成部202と、生成された車両運用変更情報を車両または車両の運行を管理する外部システム300に対して送信する通信部201とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤが装着された車両の運行情報の履歴に基づいて、特定時点のタイヤ予測温度を算出するタイヤ温度予測部と、
予め設定した温度の閾値と前記タイヤ予測温度との比較により、前記特定時点における温度許容度を算出する温度許容度算出部と、
前記温度許容度が予め設定される許容範囲内にあるか否かを判定する判定部と、
前記温度許容度が前記許容範囲内であると判定された場合には、前記車両の運用を変更する車両運用変更情報を生成する情報生成部と、
生成された前記車両運用変更情報を前記車両または前記車両の運行を管理する外部システムに対して送信する通信部と、
を備える車両運用管理システム。
【請求項2】
前記車両運用変更情報は、前記車両による生産性を向上させるための情報を含む請求項1に記載の車両運用管理システム。
【請求項3】
前記運行情報は、前記車両についての将来の運行情報または仮想の運行情報を含み、前記特定時点は、予測を行う時点よりも所定時間経過後の時点である請求項1に記載の車両運用管理システム。
【請求項4】
前記タイヤ温度予測部、前記温度許容度算出部は、複数の車両のそれぞれに搭載され、
各温度許容度算出部は、各車両のタイヤのそれぞれについて温度許容度を算出し、
前記情報生成部は、前記判定部による各車両のタイヤの温度許容度についての判定結果に基づいて前記車両運用変更情報を生成する請求項1から請求項3の何れか1項に記載の車両運用管理システム。
【請求項5】
前記温度許容度を前記車両の速度許容度および荷重許容度の少なくとも一方に変換する変換部をさらに備え、
前記情報生成部は、前記速度許容度、前記荷重許容度に関連した前記車両運用変更情報を生成する請求項1から請求項4の何れか1項に記載の車両運用管理システム。
【請求項6】
前記変換部は、前記車両が走行する路面毎に予め設定された荷重または速度の上限を超えないように変換する請求項5に記載の車両運用管理システム。
【請求項7】
前記変換部は、前記車両の車種ごとに予め設定した荷重または速度の上限を超えないように変換する請求項5に記載の車両運用管理システム。
【請求項8】
前記判定部で前記温度許容度が許容範囲外であると判定された場合には、前記情報生成部は、前記車両のタイヤの劣化の進行を抑止可能な劣化抑止情報を生成する請求項1から請求項7の何れか1項に記載の車両運用管理システム。
【請求項9】
タイヤが装着された車両の運行情報の履歴に基づいて、特定時点のタイヤ予測温度を算出するタイヤ温度予測ステップと、
予め設定した温度の閾値と前記タイヤ予測温度との比較により、前記特定時点における温度許容度を算出する温度許容度算出ステップと、
前記温度許容度が予め設定される許容範囲内にあるか否かを判定する判定ステップと、
前記温度許容度が前記許容範囲内であると判定された場合には、前記車両の運用を変更する車両運用変更情報を生成する情報生成ステップと、
生成された前記車両運用変更情報を前記車両または前記車両の運行を管理する外部システムに対して送信する送信ステップと、
を有し、車両運用管理システムで実行される車両運用管理プログラム。
【請求項10】
タイヤが装着された車両の運行情報の履歴に基づいて、特定時点のタイヤ予測温度を算出するタイヤ温度予測過程と、
予め設定した温度の閾値と前記タイヤ予測温度との比較により、前記特定時点における温度許容度を算出する温度許容度算出過程と、
前記温度許容度が予め設定される許容範囲内にあるか否かを判定する判定過程と、
前記温度許容度が前記許容範囲内であると判定された場合には、前記車両の運用を変更する車両運用変更情報を生成する情報生成過程と、
生成された前記車両運用変更情報を前記車両または前記車両の運行を管理する外部システムに対して送信する送信過程と、
を有する車両運用管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉱山用のダンプトラック等の車両に適用可能な車両運用管理システム、車両運用管理プログラムおよび車両運用管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鉱山などで使用されるダンプトラックのタイヤにセンサモジュールを設け、タイヤの内圧及び温度を測定している。そして、測定したタイヤの内圧及び温度の測定値に基づいて、タイヤの管理を行う技術が提案されている(特許文献1)。
【0003】
より具体的には、例えば、タイヤの内圧及び温度の測定値が許容範囲内でない場合には、測定値の送信元の車両に対してタイヤの劣化の進行を抑止するための劣化抑止情報を送信している。
【0004】
なお、劣化抑止情報としては、点検、積載量の減少、車両の速度の減少、タイヤ内圧調整、走行経路の変更に関する情報が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、タイヤは、車両の運用に伴って速度や荷重等の条件が厳しくなるに連れて、タイヤ温度が上昇することが知られている。
【0007】
そして、タイヤ温度が上昇すると、タイヤの故障確率も高くなるという相関がある。
【0008】
そこで、タイヤ空気圧監視システム(TPMS)を用いた温度のリアルタイムモニタリングを行い、タイヤ温度が過度に高くならないように運用を制御する技術が提案されている。
【0009】
ところが、タイヤの温度変化には時間遅れが発生することが知られている。特に、超大型鉱山用タイヤに代表される大きなサイズの場合には、タイヤの温度変化の時間遅れは数時間オーダーに達する。
【0010】
そのため、タイヤ温度について、リアルタイムモニタリングだけでは最終的に到達するタイヤ温度の把握は困難であるという不都合があった。
【0011】
さらに、上記技術によってもタイヤが有する耐久性を使い切ることは難しく、運用コストが嵩むという問題があった。
【0012】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、タイヤの故障等を抑制して生産性を向上できると共に、タイヤが有する耐久性を使い切って運用コストを低減することができる車両運用管理システム、車両運用管理プログラムおよび車両運用管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様に係る車両運用管理システムは、タイヤが装着された車両の運行情報の履歴に基づいて、特定時点のタイヤ予測温度を算出するタイヤ温度予測部と、予め設定した温度の閾値と前記タイヤ予測温度との比較により、前記特定時点における温度許容度を算出する温度許容度算出部と、前記温度許容度が予め設定される許容範囲内にあるか否かを判定する判定部と、前記温度許容度が前記許容範囲内であると判定された場合には、前記車両の運用を変更する車両運用変更情報を生成する情報生成部と、生成された前記車両運用変更情報を前記車両または前記車両の運行を管理する外部システムに対して送信する通信部と、を備えることを要旨とする。
【0014】
このような構成によれば、タイヤ寿命を延ばすことができ、故障を抑制することができる。また、車両による生産性を向上することができる。
【0015】
また、前記車両運用変更情報は、前記車両による生産性を向上させるための情報を含むようにできる。
【0016】
これにより、車両による生産性をより向上することができる。
【0017】
また、前記運行情報は、前記車両についての将来の運行情報または仮想の運行情報を含み、前記特定時点は、予測を行う時点よりも所定時間経過後の時点であるようにできる。
【0018】
これにより、実際の運用に則した温度予測を行うことができる。
【0019】
また、前記タイヤ温度予測部、前記温度許容度算出部は、複数の車両のそれぞれに搭載され、各温度許容度算出部は、各車両のタイヤのそれぞれについて温度許容度を算出し、前記情報生成部は、前記判定部による各車両のタイヤの温度許容度についての判定結果に基づいて前記車両運用変更情報を生成するようにできる。
【0020】
これにより、複数の車両の各タイヤの状況に則した車両運用変更情報を送信できる。
【0021】
また、前記温度許容度を前記車両の速度許容度および荷重許容度の少なくとも一方に変換する変換部をさらに備え、前記情報生成部は、前記速度許容度、前記荷重許容度に関連した前記車両運用変更情報を生成するようにできる。
【0022】
これにより、車両の速度許容度および荷重許容度に則した車両運用変更情報を送信できる。
【0023】
また、前記変換部は、前記車両が走行する路面毎に予め設定された荷重または速度の上限を超えないように変換できる。
【0024】
これにより、車両が走行する路面に則した変換を行うことができる。
【0025】
また、前記変換部は、前記車両の車種ごとに予め設定した荷重または速度の上限を超えないように変換できる。
【0026】
これにより、車両の車種に則した変換を行うことができる。
【0027】
また、前記判定部で前記温度許容度が許容範囲外であると判定された場合には、前記情報生成部は、前記車両のタイヤの劣化の進行を抑止可能な劣化抑止情報を生成するようにできる。
【0028】
これにより、車両のタイヤの劣化を抑止することができる。
【0029】
また、本発明の他の態様に係る車両運用管理プログラムは、タイヤが装着された車両の運行情報の履歴に基づいて、特定時点のタイヤ予測温度を算出するタイヤ温度予測ステップと、予め設定した温度の閾値と前記タイヤ予測温度との比較により、前記特定時点における温度許容度を算出する温度許容度算出ステップと、前記温度許容度が予め設定される許容範囲内にあるか否かを判定する判定ステップと、前記温度許容度が前記許容範囲内であると判定された場合には、前記車両の運用を変更する車両運用変更情報を生成する情報生成ステップと、生成された前記車両運用変更情報を前記車両または前記車両の運行を管理する外部システムに対して送信する送信ステップと、を有し、車両運用管理システムで実行されることを要旨とする。
【0030】
これにより、タイヤ寿命を延ばすことができ、故障を抑制することができる。また、車両による生産性を向上することができる。
【0031】
また、本発明の他の態様に係る車両運用管理方法は、タイヤが装着された車両の運行情報の履歴に基づいて、特定時点のタイヤ予測温度を算出するタイヤ温度予測過程と、予め設定した温度の閾値と前記タイヤ予測温度との比較により、前記特定時点における温度許容度を算出する温度許容度算出過程と、前記温度許容度が予め設定される許容範囲内にあるか否かを判定する判定過程と、前記温度許容度が前記許容範囲内であると判定された場合には、前記車両の運用を変更する車両運用変更情報を生成する情報生成過程と、生成された前記車両運用変更情報を前記車両または前記車両の運行を管理する外部システムに対して送信する送信過程と、を有することを要旨とする。
【0032】
これにより、タイヤ寿命を延ばすことができ、故障を抑制することができる。また、車両による生産性を向上することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、タイヤの故障等を抑制して生産性を向上できると共に、タイヤが有する耐久性を使い切って運用コストを低減することができる車両運用管理システム、車両運用管理プログラムおよび車両運用管理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】実施形態に係る車両運用管理システムの概略構成を示す概略構成図である。
【
図2】実施形態に係る車両運用管理システムの機能構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】車両の運用例(その1)を示す説明図である。
【
図4】車両の運用例(その2)を示す説明図である。
【
図5】実施形態に係る車両運用管理システムで実行される車両運用管理処理の処理手順の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1および
図2を参照して、本発明の実施形態に係る車両運用管理システムS1について説明する。
【0036】
なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0037】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0038】
(車両運用管理システムの概略構成)
図1の概略構成図を参照して、実施形態に係る車両運用管理システムS1の概略構成について説明する。
【0039】
車両運用管理システムS1は、複数の車両V1(V2、V3・・・)と、各車両V1(V2、V3・・・)のタイヤ10(10a、10b・・・)に関する情報を管理するタイヤ情報管理センター200と、車両V1(V2、V3・・・)の運用を管理する車両運用センター300とから構成される。
【0040】
車両V1(V2、V3・・・)は、特には限定されないが、例えば、採鉱現場600(
図3等参照)において各種鉱物資源を所定の目的地まで運搬する鉱山用ダンプトラックなどで構成できる。
【0041】
なお、後出の
図3等に示すように、車両V1(V2、V3・・・)の荷台には、ショベルカー500によって、所定荷重の鉱物資源が積載される。
【0042】
また、鉱物資源を積載した車両V1(V2、V3・・・)は、路面状況、傾斜状況、走行距離等が異なる複数の走行経路1,2等に分けられて運用される。
【0043】
各車両V1(V2、V3・・・)は、各タイヤ10(10a、10b・・・)内に設置されて温度情報、内圧情報等を取得するセンサモジュールSN1と、センサモジュールSN1から温度情報、内圧情報等を、無線回線N1を介して取得して各種処理を行う車載器150を備えている。
【0044】
車載器150の詳細な構成については後述する。
【0045】
タイヤ情報管理センター200は、車載器150との間で無線回線N2を介して各種情報の授受を行う通信部201、後述する情報生成部202等を構成するCPU250、各種情報を表示するモニタ等で構成される表示部203、各種情報を記憶するハードディスク装置等で構成されるデータ記憶部204等を備える。
【0046】
また、車両運用センター300は、無線回線N3を介してタイヤ情報管理センター200で生成された車両運用変更情報を受信し、無線回線N4を介して各車両V1(V2、V3・・・)に対して車両運用変更情報を所定のタイミングで送信するよう構成されている。
【0047】
(車両運用管理システムの機能構成)
図2の機能ブロック図に示すように、車両V1等の運行情報を格納するフラッシュメモリ等で構成される運行情報格納部101を備える。
【0048】
また、格納されている運行情報の履歴に基づいて、特定時点のタイヤ予測温度を算出するCPU等で構成されるタイヤ温度予測部102を備える。
【0049】
また、予め設定した温度の閾値とタイヤ予測温度とを比較して、特定時点における温度許容度を算出するCPU等で構成される温度許容度算出部104を備える。なお、予め設定した温度の閾値は、フラッシュメモリ等で構成される温度閾値格納部103に格納される。
【0050】
また、温度許容度が予め設定される許容範囲内にあるか否かを判定するCPU等で構成される判定部106を備える。なお、許容範囲のデータは、フラッシュメモリ等で構成される許容範囲格納部105に格納される。
【0051】
また、判定部106の判定結果をタイヤ情報管理センター200に無線回線N2を介して送信する通信部107を備える。
【0052】
タイヤ情報管理センター200は、通信部201により判定部106の判定結果等のデータを受信する。
【0053】
また、タイヤ情報管理センター200は、判定部106の判定結果が、温度許容度は許容範囲内であると判定された場合に、車両V1等の運用を変更する車両運用変更情報を生成するCPU250等で構成される情報生成部202を備える。
【0054】
なお、通信部201は、無線回線N3を介して外部システムとしての車両運用センター300に、情報生成部202で生成された車両運用変更情報を送信する。また、車両運用センター300は、車両V1等に対して、無線回線N4を介して車両運用変更情報を所定のタイミングで送信する。
【0055】
車両運用変更情報は、車両V1等による生産性を向上させるための情報を含むようにできる。
【0056】
また、運行情報は、車両についての将来の運行情報または仮想の運行情報を含むようにできる。さらに、特定時点は、予測を行う時点よりも所定時間経過後の時点であるようにできる。
【0057】
なお、タイヤ温度予測部102、温度許容度算出部104等を備える車載器150は、複数の車両V1、V2、V3・・・のそれぞれに搭載される。
【0058】
そして、各温度許容度算出部104は、各車両V1、V2、V3・・・のタイヤ10(10a、10b・・・)のそれぞれについて温度許容度を算出する。
【0059】
また、タイヤ情報管理センター200の情報生成部202は、判定部106による各車両V1、V2、V3・・・のタイヤの温度許容度についての判定結果に基づいて車両運用変更情報を生成する。
【0060】
生成された車両運用変更情報は、各車両V1、V2、V3・・・、または車両運用センター300に送信され、車両運用変更情報に基づいた各車両V1、V2、V3・・・の運用の変更(例えば、速度の増減、走行ルートの変更等)が行われる。
【0061】
また、車載器150は、温度許容度を車両V1、V2、V3・・・の速度許容度および荷重許容度の少なくとも一方に変換する変換部108をさらに備えるようにできる。
【0062】
その場合には、情報生成部202は、速度許容度、荷重許容度に関連した車両運用変更情報を生成する。これにより、車両V1、V2、V3・・・の速度許容度および荷重許容度に則した車両運用変更情報を送信できる。
【0063】
なお、変換部108は、車両V1、V2、V3・・・が走行する路面毎に予め設定された荷重または速度の上限を超えないように変換するようにできる。これにより、車両V1、V2、V3・・・が走行する路面に則した変換を行うことができる。
【0064】
また、変換部108は、車両V1、V2、V3・・・の車種ごとに予め設定した荷重または速度の上限を超えないように変換するようにしてもよい。これにより、車両V1、V2、V3・・・の車種に則した変換を行うことができる。
【0065】
また、判定部106で温度許容度が許容範囲外であると判定された場合には、情報生成部202は、車両V1、V2、V3・・・のタイヤ10(10a、10b・・・)の劣化の進行を抑止可能な劣化抑止情報を生成するようにできる。これにより、車両V1、V2、V3・・・のタイヤ10(10a、10b・・・)の劣化を抑止することができる。
【0066】
なお、車両V1、V2、V3・・・は、車両運用変更情報等に基づいて自動運転する自動運転装置を装備する車種でもよいし、車両運用変更情報等に基づいて運転手が手動で運転する車種であってもよい。
【0067】
(車両の運用例(その1)について)
図3を参照して、車両の運用例(その1)について説明する。
【0068】
図3に示す車両運用管理システムS1の運用例では、車両V1、V2、V3・・・は、採鉱現場600において、ショベルカー500によって鉱物資源を積載され、走行経路1または走行経路2を通って、目的地610まで運搬するものとする。
【0069】
ここで、走行経路1は、タイヤ10(10a、10b・・・)への負担が比較的大きい(例えば、路面状態が悪い、勾配が大きい、起伏が激しい等)が、一方で距離は比較的短く、生産性を向上可能な経路であるものと仮定する。
【0070】
また、走行経路2は、タイヤ10(10a、10b・・・)への負担が比較的小さい(例えば、路面状態が良い、勾配が小さい、起伏が少ない等)が、一方で距離は比較的長く、生産性は低めの経路であるものと仮定する。
【0071】
そして、判定部106の判定結果が、温度許容度は許容範囲内であると判定された場合には、車両運用センター300から、車両V1、V2、V3・・・に対して、車両運用変更情報D1が送信される。
【0072】
この際に、車両運用変更情報D1は、車両V1等による生産性を向上させるための情報を含んでいる。より具体的には、走行経路1、2のうち、より生産性の高い経路を選択して走行させる制御情報や指示情報を含むようにできる。
【0073】
これにより、例えば車両V1は、車両運用変更情報D1に基づいて、生産性が比較的高い走行経路1を選択して走行する。なお、車両V1が自動運転装置を搭載している場合には、車両運用変更情報D1に基づいて走行経路1を自動走行し、手動の場合には車両運用変更情報D1に基づく指示(例えば、「走行経路1を走行してください」等のメッセージなど)に従って、運転手の運転により走行経路1を走行する。
【0074】
一方、判定部106の判定結果が、温度許容度は許容範囲外であると判定された場合には、車両運用センター300から、車両V1、V2、V3・・・に対して、車両運用変更情報D2が送信される。
【0075】
この際に、車両運用変更情報D2は、タイヤ10(10a、10b・・・)の劣化の進行を抑止可能な劣化抑止情報を含んでいる。より具体的には、走行経路1、2のうち、タイヤへの負担がより少ない経路を選択して走行させる制御情報や指示情報を含むようにできる。
【0076】
これにより、例えば車両V1は、車両運用変更情報D2に基づいて、タイヤへの負担がより少ない走行経路2を選択して走行する。なお、車両V1が自動運転装置を搭載している場合には、車両運用変更情報D2に基づいて走行経路2を自動走行し、手動の場合には車両運用変更情報D2に基づく指示に従って、運転手の運転により走行経路1を走行する。
【0077】
また、他の車両V2、V3・・・についても同様の処理が行われる。
【0078】
このように、車両運用管理システムS1の適用により、タイヤ10(10a、10b・・・)の故障等を抑制して生産性を向上できると共に、タイヤ10(10a、10b・・・)が有する耐久性を使い切って運用コストを低減することが可能となる。
【0079】
なお、上記の例では、説明の簡易化のために、2つの走行経路1、2を用いる場合について述べたが、これには限定されず3つ以上の走行経路を用いる場合にも適用することができる。
【0080】
(車両の運用例(その2)について)
図4を参照して、車両の運用例(その2)について説明する。
【0081】
図4に示す車両運用管理システムS1の運用例では、車両V1、V2、V3・・・は、採鉱現場600において、ショベルカー500によって鉱物資源を積載され、荷重状態1または荷重状態2で、目的地610まで運搬するものとする。なお、走行経路は同一であると仮定する。
【0082】
ここで、荷重状態1は、積載量が比較的多く、タイヤ10(10a、10b・・・)への負担が比較的大きいが、一方で生産性の向上可能な状態であるものとする。
【0083】
また、荷重状態2は、積載量が比較的少なく、タイヤ10(10a、10b・・・)への負担が比較的小さいが、一方で生産性は低めの状態であるものとする。
【0084】
そして、判定部106の判定結果が、温度許容度は許容範囲内であると判定された場合には、車両運用センター300から、車両V1、V2、V3・・・に対して、車両運用変更情報D3が送信される。
【0085】
この際に、車両運用変更情報D3は、車両V1等による生産性を向上させるための情報を含んでいる。より具体的には、荷重状態1、2のうち、より生産性の高い状態を選択して走行させる制御情報や指示情報を含むようにできる。
【0086】
これにより、例えば車両V1は、車両運用変更情報D3に基づいて、生産性が比較的高い荷重状態1を選択して走行する。なお、ショベルカー500の動作が自動化されている場合には、車両運用変更情報D3に基づいて、荷重状態1となるように車両V1への積載量を増やすよう自動調整することができる。また、ショベルカー500が手動で操作される場合には、作業者に対して、車両運用変更情報D3に基づいて、例えば「荷重状態1となるように積載量を増やしてください」等のメッセージを提示するようにできる。
【0087】
一方、判定部106の判定結果が、温度許容度は許容範囲外であると判定された場合には、車両運用センター300から、車両V1、V2、V3・・・に対して、車両運用変更情報D4が送信される。
【0088】
この際に、車両運用変更情報D4は、タイヤ10(10a、10b・・・)の劣化の進行を抑止可能な劣化抑止情報を含んでいる。より具体的には、荷重状態1、2のうち、タイヤへの負担がより少ない状態を選択して走行させる制御情報や指示情報を含むようにできる。
【0089】
これにより、例えば車両V1は、車両運用変更情報D4に基づいて、タイヤ10(10a、10b・・・)の劣化の進行を抑止可能な荷重状態2を選択して走行する。なお、ショベルカー500の動作が自動化されている場合には、車両運用変更情報D4に基づいて、荷重状態2となるように車両V1への積載量を減らすよう自動調整することができる。また、ショベルカー500が手動で操作される場合には、作業者に対して、車両運用変更情報D4に基づいて、例えば「荷重状態2となるように積載量を減らしてください」等のメッセージを提示するようにできる。
【0090】
また、他の車両V2、V3・・・についても同様の処理が行われる。
【0091】
このように、車両運用管理システムS1の適用により、タイヤ10(10a、10b・・・)の故障等を抑制して生産性を向上できると共に、タイヤ10(10a、10b・・・)が有する耐久性を使い切って運用コストを低減することが可能となる。
【0092】
なお、上記の例では、説明の簡易化のために、2種類の荷重状態1、2を適用する場合について述べたが、これには限定されず3種類以上の荷重状態を適用するようにしてもよい。
【0093】
(車両運用管理処理について)
図5のフローチャートを参照して、車両運用管理システムS1で実行される車両運用管理処理の処理手順について説明する。
【0094】
この処理が開始されると、まずステップS10で車両V1、V2、V3・・・の運行情報の履歴を読み出してステップS11に移行する。
【0095】
ステップS11では、特定時点のタイヤ予測温度を算出してステップS12に移行する。
【0096】
次いで、ステップS12では、温度許容度を算出してステップS13に移行する。
【0097】
ステップS13では、温度許容度は許容範囲であるか否かが判定される。
【0098】
判定結果が「No」の場合にはステップS14に移行して、タイヤ10(10a、10b・・・)の劣化の進行を抑止可能な劣化抑止情報を生成してステップS15に移行する。
【0099】
ステップS15では、劣化抑止情報を車両V1、V2、V3・・・または車両運用センター300に送信して処理を終了する。
【0100】
また、判定結果が「Yes」の場合にはステップS16に移行して、車両運用変更情報を生成してステップS17に移行する。
【0101】
ステップS17では、車両運用変更情報を車両V1、V2、V3・・・または車両運用センター300に送信して処理を終了する。
【0102】
この車両運用管理処理により、タイヤ10(10a、10b・・・)の故障等を抑制して生産性の向上を実現できると共に、タイヤ10(10a、10b・・・)が有する耐久性を使い切って運用コストを低減することが可能となる。
【0103】
なお、上述の運行情報としては、タイヤ内温度センサ、TPMS(タイヤプレッシャーモニタリングシステム)、荷重、内圧、車速、摩耗状態、外気温、天候、車種などの情報を使用することができる。
【0104】
また、予測するタイヤ温度の位置は、故障への影響が比較的大きいベルト端などが好ましい。
【0105】
車両運用変更情報に含まれる情報としては、タイヤ荷重、積載量の変更、車両速度の変更、車両が通るルートの変更、車両の配車タイミング(停車時間、インターバル等)の変更、タイヤの内圧の変更等に関する情報などが挙げられる。
【0106】
また、劣化抑止情報としては、車両に対する走行ルート変更の指示、走行ルートからの離脱指示、減速指示に関する情報などが挙げられる。
【0107】
なお、上述の「特定時点」については、各車両V1、V2、V3・・・で統一するのが運用上は好ましい。
【0108】
また、温度予測する特定時点は、例えば1~2時間毎などとすることができる。
【0109】
また、温度予測については、特開2007-210527号公報、特開2007-210528号公報、特開2018-86892号公報等に開示の技術などを適用することができる。
【0110】
(車両運用変更情報の具体例などについて)
車両運用変更情報の具体例としては、以下が挙げられる。
【0111】
A)荷重の調整
各車両V1、V2、V3・・・の温度許容度(温度マージン)に最適なペイロードに調整するように、ディスパッチャからショベルカー500に土砂の積載量を指示する。
【0112】
なお、積載する荷重データは、ショベルカー500側で計測することができる。
【0113】
また、ショベルカー500が自動運転化された場合には、各車両V1、V2、V3・・・の温度許容度(温度マージン)などに応じて、積載する土砂量などを適宜調整することが可能となる。
【0114】
B)インターバル、停車時間の変更
例えば、何分停車したらタイヤの温度がどの程度低下するかの未来予測が可能である。そこで、最低限必要な停車時間を算出し、その時間帯は走行ルートを外れる、或いは停車するように指示または制御する。
【0115】
また、車両V1、V2、V3・・・を自動運転する場合には、走行ルート上での停車や減速を実行させた場合であっても、後続の車両に追い抜きを行わせることにより、無用な渋滞を発生させずにインターバルや停車を実現することができる。
【0116】
C)走行ルートの変更
走行ルートごとのシビリティを評価(走行距離、混雑状況(走行速度、走行時間等に基づく)、路面の濡れ具合などを判定)して、各車両V1、V2、V3・・・の温度許容度(温度マージン)によって走行ルート(走行経路)を指定するようにできる(
図3の例を参照)。
【0117】
例えば、鉱山には、ロングルートとショートルートがあるので、これらを適宜指定するように指示または制御することができる。
【0118】
これにより、必要以上にショートルートを指示する必要がなくなり、渋滞を抑制することもできる。また、鉱山の生産性を向上することもできる。
【0119】
なお、各車両V1、V2、V3・・・等が自動化されると、走行ルートごと、或いは混雑状況に応じた走行速度も予想できるようになる。そのため必ずしも、ロングルート、ショートルートの距離だけでなく、タイヤ温度にクリティカル(厳格)な走行速度による配車計画が立てることが可能となる。
【0120】
また、走行ルートごとの混雑状況は、モニタリングにより把握し、渋滞気味の走行ルートに敢えて配車することにより、車両速度を低下させるように指示または制御することができる。
【0121】
また、ローディングポイントとダンピングポイントを複数用意し、それぞれを繋ぐルートに幾つかの選択肢(例えば、ロングルート、ショートルートなど、状況によっては3つ以上のルート)を用意することができる。
【0122】
例えば、ルートごとにシビリティランクを決定しておき、運びたい土砂量等による予想到達温度と、ルートのシビリティランクの組み合わせにより、好適なルートを提案するようにできる。
【0123】
なお、ローディングポイントとは、ショベルで土砂をダンプトラックに積む場所を意味する。また、ダンピングポイントとは、ダンプトラックが積んでいた土砂を降ろす場所を意味する。また、シビリティランクとは、例えばシフトごとのルートの平均スピードまたはサイクル毎の平均スピードでのランク付け、または走路の平均的な斜度に対して車両の走破可能速度に対しての実際の平均速度の比率でランク付けしたものなどをいう。
【0124】
D)その他
例えば、鉱山内では、埃の舞い上がりの低減などを目的に、ウォータートラックが散水を行っている。そこで、タイヤ温度が高い車両を検知した場合には、ウォータートラックを配車して、路面を濡らすことでタイヤ温度を低減させるように指示または制御するようにできる。
【0125】
以上述べたように、本実施形態に係る車両運用管理システムS1によれば、タイヤの故障等を抑制して生産性を向上できると共に、タイヤが有する耐久性を使い切って運用コストを低減することができる。
【0126】
以上、本発明の車両運用管理システム、車両運用管理プログラムおよび車両運用管理方法を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【0127】
例えば、上述の実施形態では、車両運用管理システムS1を構成する各部分が車載器150上に設けられる場合を示したが、これには限定されない。即ち、例えば車両運用管理システムS1の少なくとも一部をクラウドコンピューティングシステムなどで構成し、判定結果等の情報を車両V1、V2、V3・・・等に伝達するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0128】
S1 車両運用管理システム
SN1 センサモジュール
V1、V2、V3・・・ 車両
10(10a、10b・・・)タイヤ
101 運行情報格納部
102 タイヤ温度予測部
103 温度の閾値格納部
104 温度許容度算出部
105 許容範囲格納部
106 判定部
107 通信部
108 変換部
150 車載器
200 タイヤ情報管理センター
300 外部システム(車両運用センター)